説明

放射線治療装置

【課題】 治療部位の形状に近似させた照射野を木目細かく形成すること。
【解決手段】 複数枚のリーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnを密に配列して形成された絞り体群141A、141Bの一対が放射線の照射軸を間にして対峙するように配置され、各絞り体群のリーフを、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って各別に移動させることにより、所望の放射線照射野を設定するものにおいて、対峙する絞り体群の内の一方を、他方の絞り体群に対して、リーフの厚み方向へその1枚の厚みの範囲内の寸法だけずらせて配置するようにした。
これにより、多分割絞り装置を大型化せずに、木目細かく治療部位の形状に近似させた照射野を形成することができ、治療空間を狭めることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば悪性腫瘍などの疾患の治療に供される放射線治療装置に係り、被検体に対する放射線の照射範囲(以下、放射線照射野という。)を精度よく設定するようにした多分割絞り装置を備えた放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療装置では、放射線防護の見地から、被検体の治療部位に限定的に放射線を照射するように、タングステンなどの放射線を透過させない材料から成る絞り装置が備えられている。この絞り装置は、治療部位の形状に近似させた照射野を、半影を生ずることなくより木目細かく形成することが求められることから、放射線の照射方向に沿って重なるように配置される第1の絞り体と第2の絞り体とから構成される。
【0003】
そして、放射線源に近い側に設けられる第1の絞り体は、放射線の照射軸を間にして対峙するように配置される一対の単体として形成されており、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って互いに接近、離反するように駆動される。一方、放射線源より遠い側に設けられる第2の絞り体は、第1の絞り体の移動方向に対して直交する方向に放射線の照射軸を間にして対峙するように配置される一対のブロックとして形成され、この第2の絞り体の各ブロックは、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って互いに接近、離反するように格別に移動する複数枚のリーフを密接して配列したものとなっている。
【0004】
この第2の絞り体は多分割絞り装置と称され、例えば図7に示すように、数十枚のリーフ1A1〜1An、1B1〜1Bnを密に隣接させて集合体とした一対のブロック1A、1Bを、対称的に配置した構成となっており、各リーフ1A1〜1An、1B1〜1Bnは円弧状の軌道面を有し、リーフ毎に設けられた駆動装置によって、各別に円弧状の軌道面に沿って移動可能に駆動されるようになっている。従って、対峙する単体から成る第1の絞り体を、X方向に互いに接近、離反するように移動させるとともに、対峙するリーフ1A1〜1An、1B1〜1Bnのブロック1A、1Bから成る第2の絞り体の各リーフを、それぞれ個別にY方向に互いに接近、離反するように移動させることを組合せることによって、治療部位の形状に近似させた不規則形状の照射野Uを形成し、なおかつ、対峙するリーフの端面は円弧状の軌道面に沿って移動するので、照射野Uに放射線の半影が生ずることはない。
【0005】
放射線治療装置において、放射線を病巣にのみ照射し健常組織に照射させないようにすることは極めて重要なことであり、その意味において多分割絞り装置は極めて重要な役割を担っている。しかしながら、病巣の形状は多種多様であり、多分割絞り装置によって病巣の形状に合わせた照射野を形作ることもまた困難を極めている。一つの解決策として考えられることは、絞り体ブロック1A、1Bのリーフ1A1〜1An、1B1〜1Bnを細分化することである。すなわち、絞り体を構成するリーフの幅を薄くしてリーフの枚数を可能な限り増やすことである。
【0006】
しかしながら、絞り体を細分化するためにリーフの枚数を増やそうとすると、リーフの幅を狭くしなければならず、リーフは通常2〜3mm程度の厚みに形成されているので、それよりも薄くしようとすると、そりが生じたりして所望の精度を得ることが困難になるなど製造上の問題が発生することになる。
【0007】
また、不規則な照射野を形成するために、各リーフはそれぞれが単独に移動できなければならず、そのための駆動手段を各別に設ける必要もあるので、密に隣接して配列されている多数のリーフを個々に移動させるための、支持機構や駆動機構および移動量を検出する検出機構などの配置にも困難を生ずることになってくる。さらに、隣接する各リーフの間からの放射線の漏洩を防止するためには、各隣接するリーフ同士の隙間をできるだけ小さく、例えば0.05〜0.1mm程度にする必要があるが、この寸法を確保するための加工精度や組み立て精度を得ることも極めて困難となるものであった。
【0008】
このような事情から、第2の絞り体を、放射線の照射方向に沿って間隔を置いて2段に配置するとともに、上段に位置する絞り体の隣接する各リーフの接触面と、下段に位置する絞り体の隣接する各リーフの接触面とを、放射線束の広がる方向に沿って重ならないように位置をずらせて配置して構成するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このようにすることによって、リーフの厚みが現状のままであっても、見かけ上リーフの厚みを1/2にしたことに相当するので、照射野の形状をより一層細かくすることが可能となり、照射野の形状を治療部位の形状により近似させて、放射線を健常組織に照射させないようにすることができる。
【特許文献1】特開2002−210026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載されているものによれば、リーフの幅を薄くしてリーフの枚数を増やすことに伴う問題点をある程度解消することができる。しかし、第2の絞り体を、放射線の照射方向に沿って間隔を置いて2段に配置する構成であるため、リーフを個々に移動させるための支持機構や駆動機構および移動量を検出する検出機構などの全てが、通常の2倍の数だけ必要になり、構造が複雑化するとともに絞り装置自体が大型化するという新たな問題を含むことになるものであった。また、絞り装置が大型化すると放射線治療装置としての治療空間を狭めることにもなるという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、第2の絞り体を、2段にすることなく1段のままとし、さらにリーフの枚数を増加させなくても、治療部位の形状に近似させた照射野を木目細かく形成することのできる多分割絞り装置を備えた放射線治療装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、それぞれ複数枚のリーフを密に配列して形成された絞り体群の一対が放射線の照射軸を間にして対峙するように配置され、前記各絞り体群のリーフを、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って各別に移動させることにより、所望の放射線照射野を設定する多分割絞り装置を備えた放射線治療装置において、前記多分割絞り装置の対峙する一対の絞り体群の内の一方を、他方の絞り体群に対して、前記リーフの厚み方向へその1枚の厚みの範囲内の寸法だけずらせて配置したことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線治療装置において、前記絞り体群の内の一方を、他方の絞り体群に対してずらせる寸法は、前記リーフの厚みの略2分の1であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、それぞれ複数枚のリーフを密に配列して形成された絞り体群の一対が放射線の照射軸を間にして対峙するように配置され、前記各絞り体群のリーフを、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って各別に移動させることにより、所望の放射線照射野を設定する多分割絞り装置を備えた放射線治療装置において、前記多分割絞り装置の対峙する一対の絞り体群の内の少なくとも一方を、他方の絞り体群に対して、前記リーフの厚み方向へその1枚の厚みの範囲内の寸法だけ移動可能に構成したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の放射線治療装置において、前記多分割絞り装置の対峙する絞り体群は、放射線源を中心に含む同心円上を、前記リーフの移動方向に対して直交する方向に円弧状の軌道面に沿って移動するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記課題を解決するための手段の項にも示したとおり、本発明の特許請求の範囲に記載する各請求項の発明によれば、次のような効果を奏する。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、リーフの枚数を増やすことなく、リーフの枚数を増加したのと同等の効果が得られ、多様な形状を呈する治療部位の形状により近似させた木目細かい照射野の形成を容易にし、その照射野へ向けて放射線の照射を行なうことにより、健常組織への放射線の照射を防止して、真に治療を必要とする病巣へのみ放射線を照射することができる。よって、被検者を不要な放射線照射から防護し、安全性が向上される。また、多分割絞り装置を大型化することもないので、治療空間を狭めることもないなど、極めて有用な放射線治療装置を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、リーフの枚数が同じであっても、リーフの厚みの略1/2の幅に相当する分だけ照射野の形状を細かく形成することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、対峙する一対の絞り体群の内の少なくとも一方を他方の絞り体群に対してリーフの厚み方向へ移動可能にしたので、リーフの枚数を増やすことなく、リーフの枚数を増加したのと同等の効果が得られ、照射野の形状をより木目細かくして所望の形状に近づけることができる。また、移動量の微調整も可能なので照射野の形状をより細かく形成することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、照射野に放射線の半影が発生するのを防止し、より正確な治療を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る多分割絞り装置を備えた放射線治療装置の一実施例について、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。なお、これらの図において、同一部分には同一符号を付して示してある。
【0021】
図1は、本発明に係る多分割絞り装置が適用される放射線治療装置の使用状態を示した外観図であり、先ず、この図を参照して、放射線治療装置の概略的な構成について説明する。
【0022】
放射線治療装置は、大別すると、放射線源からの放射線を被検体へ照射する放射線照射装置10と、被検体Pを載置して放射線の照射部位の位置決めをする治療台20と、放射線照射装置10および治療台20を始め、放射線治療装置を構成する各機器を有機的に制御する制御装置30とから構成されている。
【0023】
放射線照射装置10は、床に据付られた固定架台11と、固定架台11に回転可能に支持された回転架台12と、回転架台12の一端から横方向へ延びた先端部に設けられた照射ヘッド13と、照射ヘッド13に組み込まれた絞り装置14とを有している。そして、回転架台12は固定架台11の水平な回転中心軸Hの周りに、略360度にわたって回転可能であり、絞り装置14も、照射ヘッド13から照射される放射線の照射軸Iの周りに回転可能となっている。なお、回転架台12の回転中心軸Hと放射線の照射軸Iとの交点をアイソセンタ(isocenter)ICと称している。また、回転架台12は、放射線の固定照射はもとより、それ以外の各種の照射態様例えば、回転照射、振子照射、間欠照射などに対応した回転が可能なように構成されている。
【0024】
一方、治療台20は、アイソセンタICを中心とする円弧に沿って、矢印G方向に所定角度範囲にわたって回転可能に床に設置されている。そして、治療台20の上部には、上部機構21に支持された被検体Pを載置するための天板22が設けられている。この上部機構21は、天板22を矢印eで示す前後方向と、矢印fで示す左右方向に移動させる機構を備えている。
【0025】
また、上部機構21は、昇降機構23に支持されている。この昇降機構23は、例えばリンク機構で構成されるもので、矢印dで示す上下方向にそれ自体が昇降することによって、上部機構21および天板22を所定範囲だけ昇降させるものである。さらに、昇降機構23は、下部機構24に支持されている。この下部機構24は、アイソセンタICから距離L離れた位置を中心として、矢印Fで示す方向に昇降機構23を回転させる機構を備えている。よって、昇降機構23とともに、上部機構21および天板22が矢印F方向に所定角度回転可能である。
【0026】
なお、治療に際して被検体Pの位置決めや絞り装置14による放射線照射野の設定などは、医師などの医療スタッフDにより制御装置30に備えられている操作部を操作することによって行われる。
【0027】
ところで、放射線治療を実施する際には、悪性腫瘍などの治療部位にのみ放射線を集中的に照射して、正常組織にダメージを与えないようにすることが重要である。この、正常組織に極力放射線を照射しないように、放射線照射位置を規制するのが絞り装置14であり、絞り装置14は放射線の照射軸Iの周りに回転可能に、照射ヘッド13に組み込まれている。
【0028】
次に、絞り装置14について、図2ないし図6を参照して説明する。なお、図2および図3は、絞り装置14の全体構成の概要を示した側面図であり、これらは、絞り装置14を互いに直交する方向から見た図となっていて、絞り装置14の容器は図示されていない。また、図4は、絞り装置14によって照射野を形成する様子の詳細を説明するために示した平面図である。
【0029】
絞り装置14は、タングステンなどの重金属から成る通常2種類の絞り体140、141が、放射線源Sからの放射線の照射方向に重なるように設けられるとともに、各絞り体140、141は、図2および図3にそれぞれ符号140A、140B、141A、141Bを付して示してあるように、対をなすように分割されて対向配置されている。ここで符号A、Bは、各絞り体140、141が対であることを分かり易くするために便宜上付したものである。
【0030】
さて、放射線源Sに近い側に設けられる第1の絞り体140A、140Bは、図2によく示されているように、単体として構成されているとともに、各絞り体140A、140Bの端面を放射線の照射軸Iを間にして対峙させるように対向配置され、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って矢印Xの方向へ移動して、互いに接近、離反するように、駆動装置142A、142Bによって駆動されるようになっている。
【0031】
一方、放射線源Sから遠い側に設けられる第2の絞り体141A、141Bも、図3によく示されているように円弧状の軌道面を有し、各絞り体141A、141Bの端面を放射線の照射軸Iを間にして対峙させるように対向配置され、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って、第1の絞り体140A、140Bに対して直交する方向、すなわち、矢印Yの方向に移動して、互いに接近、離反するように、駆動装置143A、143Bによって駆動されるようになっている。ただし、第2の絞り体141A、141Bは、複数のリーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnを密に隣接させた集合体として構成した多分割絞り装置であり、その詳細は図4に示されている。
【0032】
すなわち、第2の絞り体141A、141Bの各リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnには、それぞれに駆動装置143A1〜143An、143B1〜143Bnが設けられており、各駆動装置143A1〜143An、143B1〜143Bnによって、リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnが各別に放射線源Sを中心に含む同心円に沿う円弧状の軌道面に沿って矢印Y方向に接近、離反するように駆動されるようになっている。
【0033】
従って、第1の絞り体140A、140Bを、X方向に互いに接近、離反するように移動させるとともに、第2の絞り体141A、141Bの各リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnを、それぞれ個別にY方向に互いに接近、離反するように移動させることを組合せることによって、図5に示すような、治療部位の形状Tに近似させた不規則形状の照射野Uが形成される。
【0034】
ところで、第2の絞り体141A、141Bは、通常左右対称に形成されているとともに、各リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnは、同じ位置で向き合うように位置が固定されていた。すなわち、従来の多分割絞り装置では、図7に示して説明したように、各リーフ1A1〜1An、1B1〜1Bn同士は、互いに同じ位置で向き合うように固定的に対向配置されていた。
【0035】
これに対して本発明では、図6に示すように、リーフ141A1〜141Anを有する絞り体141Aと、リーフ141B1〜141Bnを有する絞り体141Bとを、各リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnの向き合う端面を、1枚のリーフの厚み(幅)寸法Wの範囲内で予めずらせて固定して配置したものである。この図6は、図4におけるリーフ部分を拡大して示したものであり、例えば第2の絞り体の一方141Bを、他方141Aに対してリーフの厚みWの1/2だけ同じ方向へずらせて配置した場合を示している。
【0036】
すなわち、分かり易くするために図6では、一方の絞り体141Bのリーフ141B1〜141Bnを太線で示してあるが、このリーフ141B1〜141Bnの端面を、対向するリーフ141A1〜141Anの端面に対して、W/2だけずらせたものである。なお、図6では、矢印Rで示すように、絞り体141Bをリーフ141An側へずらせてあるが、逆に矢印Rとは反対向きにリーフ141A1側へずらせても構わない。
【0037】
このようにすることによって、リーフの厚みWの1/2の幅に相当する分だけ照射野Uの形状を細かく形成することができる。ただし、一方の絞り体141Bを単純にずらせただけでは、放射線を遮断できるようになる部分の他に放射線を透過させることになる部分も生ずるので、新たに放射線を透過させるようになる部分については、各リーフ141B1〜141Bnの絞り体141A側に向き合う端面位置を調節することによって所望の照射野に近づけるようにすればよい。
【0038】
なお、第2の絞り体141A、141Bのリーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnの厚み寸法Wは、全て同じであるように説明したが、両端部に位置するリーフ141A1、141An、141B1、141Bnについては、それらの内側に位置する他のリーフの厚み(幅)寸法Wよりも厚く形成しておくことが好ましい。その理由は、第2の絞り体141A、141Bの一方または両方を相互にずらせた際に、照射野Uの端に隙間ができないようにするためである。
【0039】
本発明は上述の一実施例に限ることなく種々の形態での実施が可能である。例えば、一方の絞り体を他方の絞り体に対してずらせて設置する範囲は、リーフの厚みWの範囲内であれば適宜に選定してもよい。
【0040】
また、一方の絞り体を他方の絞り体に対して、リーフの厚み(幅)方向に所定の寸法だけ固定的にずらせて配置することに代えて、例えば第2の絞り体の一方141Bを、他方の絞り体141Aに対してリーフの厚みW分だけ任意に移動させる機構を備えれば、照射野Uの形状を所望の形状に近づけるように、微調整を可能にしてより細かく形成することができる。すなわち、図2、図3を参照して説明した照射野を設定するために、Y方向に互いに接近、離反するように移動させる第2の絞り体141A、141Bの一方または両方を、リーフ141A1〜141An、141B1〜141Bnの移動方向に対して、直交する方向(すなわち、第1の絞り体140A、140Bが互いに接近、離反するのと同じX方向)へ若干移動可能にしようとするものである。
【0041】
このような第2の絞り体141A、141Bを移動させるためには、第1の絞り体140A、140Bと同様の機構を用いて、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って、第2の絞り体141A、141Bのいずれか一方を矢印Xの方向へ移動させるか、夫々に設けたリードスクリューをモータで駆動するようにすればよい。そして、その移動量はエンコーダやポテンショメータなどで検出することによって、容易に位置の検出や調整が可能となる。なお、第2の絞り体141A、141Bの両方を矢印Xの方向へ移動させる場合には、互いに反対方向(すなわち、図6に示した矢印Rの方向とその逆方向との両方向)へ移動させるようにする。また、対峙する第2の絞り体141A、141Bの、矢印X方向への移動についても、放射線源Sを中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って移動するようにしているので、照射野に放射線の半影を生じさせることはない。
【0042】
以上詳述したように本発明によれば、多分割絞り装置を2段にすることなく、1段のままでリーフの枚数を増加させたのとほぼ同等に、照射野を木目細かい形状に形成することができる。すなわち、多様な形状を呈する治療部位の形状により近似させた照射野の形成を容易にし、その照射野へ向けて放射線の照射を行なうことにより、健常組織への放射線の照射を防止して、真に治療を必要とする病巣へのみ放射線を照射することができる。また、第2の絞り体141A、141Bの一方または両方を移動させる場合に、移動量の微調整を可能とすることによって、照射野Uの形状を所望の形状により近づけることができる。よって、被検者を不要な放射線照射から防護し、安全性が向上される。さらに、多分割絞り装置を大型化することもないので、治療空間を狭めることもないなど、極めて有用な放射線治療装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る放射線治療装置の使用状態を示した外観図である。
【図2】放射線治療装置に備えられている絞り装置の説明図である。
【図3】図2に直交する方向から見た絞り装置の説明図である。
【図4】本発明に係る放射線治療装置に備えられている多分割絞り装置の一実施例を説明した平面図である。
【図5】多分割絞り装置によって形成される放射線照射野の説明図である。
【図6】本発明の実施例における多分割絞り装置のリーフの配置構成と効果を説明した説明図である。
【図7】従来の多分割絞り装置の対向配置されたリーフを説明した説明図である。
【符号の説明】
【0044】
141A、141B 絞り体
141A1〜141An リーフ
141B1〜141Bn リーフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数枚のリーフを密に配列して形成された絞り体群の一対が放射線の照射軸を間にして対峙するように配置され、前記各絞り体群のリーフを、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って各別に移動させることにより、所望の放射線照射野を設定する多分割絞り装置を備えた放射線治療装置において、
前記多分割絞り装置の対峙する一対の絞り体群の内の一方を、他方の絞り体群に対して、前記リーフの厚み方向へその1枚の厚みの範囲内の寸法だけずらせて配置したことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
前記絞り体群の内の一方を、他方の絞り体群に対してずらせる寸法は、前記リーフの厚みの略2分の1であることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置。
【請求項3】
それぞれ複数枚のリーフを密に配列して形成された絞り体群の一対が放射線の照射軸を間にして対峙するように配置され、前記各絞り体群のリーフを、放射線源を中心に含む同心円上を円弧状の軌道面に沿って各別に移動させることにより、所望の放射線照射野を設定する多分割絞り装置を備えた放射線治療装置において、
前記多分割絞り装置の対峙する一対の絞り体群の内の少なくとも一方を、他方の絞り体群に対して、前記リーフの厚み方向へその1枚の厚みの範囲内の寸法だけ移動可能に構成したことを特徴とする放射線治療装置。
【請求項4】
前記多分割絞り装置の対峙する絞り体群は、放射線源を中心に含む同心円上を、前記リーフの移動方向に対して直交する方向に円弧状の軌道面に沿って移動するものであることを特徴とする請求項3に記載の放射線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−206822(P2008−206822A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47656(P2007−47656)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】