説明

放射線測定器

【課題】作業員の放射線計測の熟練度や知識に依存せず放射能の誤認を防止することができる放射線測定器を提供する。
【解決手段】放射線測定器1は、放射線を検出した場合、検出信号を発生する放射線センサ10と、検出信号を計数する第1のカウンタ15と、周期信号を所定周期で発生する発振器16と、検出信号と周期信号との論理積を出力するAND回路17と、AND回路17の出力信号を計数する第2のカウンタ18と、第2のカウンタ18の計数値が所定値未満である場合、第1のカウンタ15の計数値を表示し、第2のカウンタ18の計数値が所定値以上である場合、第1のカウンタ15の実際の計数値とは異なる値を表示する表示器23とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出して計数する放射線測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの放射性物質を取り扱う施設において事故が発生した場合、広範囲にわたり強い放射能を有する放射性物質が飛散する可能性がある。このため環境中の放射性物質の有無を広範囲にわたり調査し、放射性物質が存在する場合には除去する必要がある。
【0003】
放射性物質の有無に対する測定は多大な人手を要するため、放射線計測の知識や経験が少ない作業員が実施することが考えられる。この場合、以下の課題が生じ得る。
【0004】
放射線測定器で放射線を検出すると、電気パルスが発生しこのパルスを後段の計数回路で計数する。放射能が強い場合は多数の放射線を計数するため、電気パルスと電気パルスとの間隔が狭まり、パルス同士が重なる(以下、「パイルアップ」という。)状態となる。
【0005】
パイルアップした場合、重なり合った複数のパルスは1つのパルスとみなされるため、実際に放射線検出器が検出した放射線数に比べて計数回路が計数した数は少なくなる。また、全ての電気パルスがパイルアップすると計数はゼロとなる。このため、実際には強い放射能を有する放射性物質が存在する環境であっても、放射能が弱いと判断されてしまう恐れある。この結果、放射性物質は除去されず、被曝につながる恐れがある。
【0006】
従来、パイルアップの検出やパイルアップを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0007】
また、計測時間内の計数が計数回路の容量を超えると桁があふれ(以下、「オーバフロー」という。)、計数回路で出力される計数は計数回路に入力された計数より小さくなる。例えば、計測時間内の計数が256の場合、8ビット計数回路では最大計測値(計測容量)が255であるため、計測値は0となる。この場合、パイルアップと同様に放射能は弱いと判断され、被曝につながる恐れがある。
【0008】
従来、オーバフローによる誤計測を回避するため、計数回路がオーバフローした場合、その旨を表示する技術が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−072252号公報
【特許文献2】特開2009−18154号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】http://www.clearpulse.co.jp/jpn/product/plist_E/plistE1.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の技術は、パイルアップ検出やパイルアップ防止を行う一方、装置の複雑化、大型化を招いていた。また、オーバフローが発生した場合には、オーバフローした旨を表示するが、計数の表示はオーバフローしており、やはり放射線測定器の取り扱いを熟知していない作業員にとってはオーバフローの判断が困難であった。
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、作業員の放射線計測の熟練度や知識に依存せず放射能の誤認を防止することができる放射線測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る放射線測定器は、上述した課題を解決するために、放射線を検出した場合、検出信号を発生する放射線センサと、前記検出信号を計数する第1のカウンタと、周期信号を所定周期で発生する発振器と、前記検出信号と前記周期信号との論理積を出力するAND回路と、前記AND回路の出力信号を計数する第2のカウンタと、前記第2のカウンタの計数値が第1の所定値未満である場合、前記第1のカウンタの計数値を表示し、前記第2のカウンタの計数値が第1の所定値以上である場合、前記第1のカウンタの実際の計数値とは異なる値を表示する表示器とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る放射測定器においては、作業員の放射線計測の熟練度や知識に依存せず放射能の誤認を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における放射線測定器の回路構成図。
【図2】パイルアップが生じていない場合のコンパレータ、発振器およびAND回路で発生するパルスの様子を示す説明図であり、(A)は放射線センサより出力される電気パルスを示す図、(B)は波形整形回路において整形され出力される整形パルスを示す図、(C)はコンパレータより出力される検出パルスを示す図、(D)は発振器より出力される周期パルスを示す図、(E)はAND回路より出力される出力信号を示す図。
【図3】パイルアップが生じた場合のコンパレータ、発振器およびAND回路で発生するパルスの様子を示す説明図であり、(A)は放射線センサより出力される電気パルスを示す図、(B)は波形整形回路において整形され出力される整形パルスを示す図、(C)はコンパレータより出力される検出パルスを示す図、(D)は発振器より出力される周期パルスを示す図、(E)はAND回路より出力される出力信号を示す図。
【図4】第1実施形態の変形例としての放射線測定器の回路構成図。
【図5】第2実施形態における放射線測定器の第1のカウンタの回路構成図。
【図6】第2実施形態の変形例としての放射線測定器の回路構成図。
【図7】第3実施形態における放射線測定器の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明に係る放射線測定器の第1実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態における放射線測定器1の回路構成図である。
【0018】
放射線測定器1は、放射線計測部として、放射線センサ10、波形整形回路12、コンパレータ13、弁別レベル設定器14、および第1のカウンタ15を有する。
【0019】
放射線センサ10は、放射線を検出した場合、電気パルスを発生する。波形整形回路12は、発生した電気パルスを後段の回路で計数可能な整形パルスに変換する。コンパレータ13は、波形整形回路12から出力される整形パルスを弁別する。弁別レベル設定器14は、設定電圧をコンパレータ13に出力する。第1のカウンタ15は、コンパレータ13の出力である検出パルスを一定時間計数する。
【0020】
放射線測定器1は、パイルアップを防止するためのパイルアップ防止部として、発振器16、AND回路17、第2のカウンタ18、比較回路19、係数設定回路20、およびセレクタ21を有する。
【0021】
発振器16は、所定周期で周期パルス(周期信号)を連続して発生する。AND回路17は、コンパレータ13から出力される検出パルスと発振器16から出力される周期パルスの論理積を出力する。第2のカウンタ18は、AND回路17から出力される出力信号を一定時間計数する。比較回路19は、第2のカウンタ18の値が設定値22以上で真、設定値未満で偽の論理信号を出力する。係数設定回路20は、第2のカウンタ18から出力される計数値に所定の係数を設定する。セレクタ21(表示制御回路)は、比較回路19の出力が偽の場合、第1のカウンタ15の計数値を出力する。また、セレクタ21は、比較回路19の出力が真の場合、係数が掛けられた第2のカウンタ18の計数値を出力する。
【0022】
また、放射線測定器1は、セレクタ21から出力される各カウンタ15、18の値を表示する表示器23を有する。
【0023】
次に、第1実施形態における放射線測定器1の作用を説明する。
【0024】
図2は、パイルアップが生じていない場合のコンパレータ13、発振器16およびAND回路17などで発生するパルスの様子を示す説明図である。図2(A)は放射線センサ10より出力される電気パルス31を示す図、(B)は波形整形回路12において整形され出力される整形パルス32を示す図である。図2(C)はコンパレータ13より出力される検出パルス33を示す図、(D)は発振器16より出力される周期パルス34を示す図、(E)はAND回路17より出力される出力信号35を示す図である。
【0025】
放射線センサ10は放射線を検出すると、図2(A)に示すように電気パルス31を発生する。波形整形回路12は、電気パルス31を図2(B)に示す幅数μsの整形パルス32に整形する。コンパレータ13は、整形パルス32の波高値が弁別レベル設定器14において設定された電圧より大きい場合、図2(C)に示す出力1を示す検出パルス(検出信号)33を出力する。整形パルス32の幅が数μsのため、コンパレータ13の出力(検出パルス33)は幅が数μsのパルスとなる。コンパレータ13の出力は、第1のカウンタ15に出力される。第1のカウンタ15は、検出パルス33を一定期間計数する。
【0026】
検出パルス33は、同時にAND回路17に出力される。AND回路17は、コンパレータ13の検出パルス33と発振器16の周期パルス34との論理積を演算する。すなわち、AND回路17は、コンパレータ13の出力が1である間(検出パルス33が出力される間)、発振器16より出力される周期パルス34を出力信号35として第2のカウンタ18に出力する。第2のカウンタ18は、AND回路17の出力を一定期間計数する。周期パルス34の幅は、整形パルス32の幅より充分小さく(例えば検出パルス33の1/5程度)、整形パルス32が発生している間は必ず周期パルス34が第2のカウンタ18に出力されるように設定される。
【0027】
比較回路19は、第2のカウンタ18の計数値と設定値22とを比較する。設定値22には、放射線測定器1がパイルアップ状態となっているか否かを判断可能な値が任意に選択されて設定される。比較回路19は、第2のカウンタ18の計数値が設定値22未満、すなわちパイルアップ状態ではなく出力信号35の計数が小さい場合、偽を出力する。
【0028】
セレクタ21は出力が偽である場合、第1のカウンタ15の値を表示器23に出力し、表示器23は放射線の入力数に対応した実際の計数値を表示する。
【0029】
ここで、図3は、パイルアップが生じた場合のコンパレータ13、発振器16およびAND回路17などで発生するパルスの様子を示す説明図である。
【0030】
図3(A)に示すように放射線センサ10における電気パルス31の計数が高い場合、図3(B)に示すように整形パルス32は重なりパイルアップ状態となる。この結果、図3(C)に示すようにコンパレータ13の検出パルス33も重なり幅の広いパルスになる。放射線が強いにもかかわらず検出パルス33の数は減り、第1のカウンタ15により一定期間計数される計数値は小さくなる。
【0031】
AND回路17は、コンパレータ13の出力が1である間(検出パルス33が出力される間)、発振器16より出力される周期パルス34を出力信号35として第2のカウンタ18に出力する。すなわち、第1のカウンタ15の計数値は小さくなるが、検出パルス33の幅に比例して出力信号35は増えるため第2のカウンタ18の計数値は大きくなる。
【0032】
比較回路19は、第2のカウンタ18と設定値22とを比較する。比較回路19は、第2のカウンタ18の計数値が設定値22以上の場合、すなわちパイルアップ状態となり出力信号35の計数が大きい場合、真を出力する。
【0033】
セレクタ21は出力が真である場合、係数設定回路20において係数が掛けられた第2のカウンタ18の値(第2のカウンタ18の計数値に基づく値)を表示器23に出力し、表示器23は検出された実際の放射線の計数を反映した値を表示する。すなわち、パイルアップ状態となり計数値が小さい第1のカウンタ15の出力は表示されない。なお、係数設定回路20は、第1のカウンタ15の計数値から第2のカウンタ18の計数値に切り替わる場合に、出力される値に連続性を持たせるために設けられ、係数は適宜設定される。
【0034】
第1実施形態における放射線測定器1は、整形パルス32がパイルアップしていることを第2のカウンタ18の計数値より検出する。パイルアップが検出された場合、放射線測定器1は第1のカウンタ15から第2のカウンタ18の計測値に切り替えることで、表示器23に表示される計数表示は小さくならず、実際の放射能の状態を反映した大きな値を表示する。これにより、放射線測定器1は、作業員の知識や熟練度によらずに放射線を測定でき、パイルアップによる計測値の誤認を防止できる。
【0035】
なお、第1実施形態における放射線測定器1は、第2のカウンタ18の計数値が設定値22より大きい場合、第1のカウンタ15の値を実際の計数値ではなく所定値に設定し表示器23に表示させてもよい。
【0036】
図4は、第1実施形態の変形例としての放射線測定器41の回路構成図である。なお、第1実施形態の放射線測定器1と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
放射線測定器41は、放射線計測部として、放射線センサ10、波形整形回路12、コンパレータ13、弁別レベル設定器14、および第1のカウンタ15を有する。また、放射線測定器41は、パイルアップを防止するためのパイルアップ防止部として、発振器16、AND回路17、第2のカウンタ18、および比較回路42を有する。さらに、放射線測定器41は、表示器23を有する。
【0038】
比較回路42は、第2のカウンタ18の値が設定値22以上で真、設定値未満で偽の論理信号を第1のカウンタ15に出力する。第1のカウンタ15は、比較回路42の出力が真の場合、予め設定された値に設定される。
【0039】
第1実施形態の変形例としての放射線測定器41の作用を説明する。
【0040】
比較回路42は、第2のカウンタ18の計数値と設定値22とを比較する。第2のカウンタ18の計数値が設定値22未満でありパイルアップ状態ではない場合、比較回路42は偽を出力し第1のカウンタ15の実際の計数値が表示器23に出力される。表示器23は、放射線の検出数に対応した計数値を表示する。
【0041】
第2のカウンタ18の計数値が設定値22以上となり、パイルアップ状態となる場合、比較回路42は真を出力する。比較回路42は、第1のカウンタ15の計数値を予め設定された値に設定する。予め設定された値は、例えば第1のカウンタ15の最大値であり、パイルアップして小さくなった第1のカウンタ15の計数値より大きい値である。設定された第1のカウンタ15の計数値は表示器23に出力され表示される。
【0042】
放射線測定器41は、パイルアップ状態を検出した場合、第1のカウンタ15の計数値を予め設定された大きな値に設定することにより、表示器23に表示される計数値は小さくはならない。このため、放射線測定器41は大きな値を表示することで、放射能が強いことを作業員に認識させることができ、計測における誤認を防止できる。
【0043】
また、放射線測定器41は、第1実施形態の放射線測定器1に設けられるセレクタ21を省略できるため、構成を簡素化できる。
【0044】
[第2実施形態]
本発明に係る放射線測定器51の第2実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0045】
図5は、第2実施形態における放射線測定器51の第1のカウンタ60の回路構成図である。
【0046】
第2実施形態における放射線測定器51が第1実施形態と異なる点は、第1のカウンタ60内に第1のカウンタ60のオーバフローによる作業員の誤認を防止するための構成を有する点である。第1のカウンタ60以外の構成は、第1実施形態の放射線測定器1とほぼ同様であるため、図示を省略する。また、第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
放射線測定器51は、放射線計測部として、放射線センサ10、波形整形回路12、コンパレータ13、弁別レベル設定器14(図1参照)、および第1のカウンタ60を有する。また、放射線測定器51は、パイルアップを防止するためのパイルアップ防止部として、発振器16、AND回路17、第2のカウンタ18、および比較回路19(図1参照)を有する。また、放射線測定器51は、表示器23(図1参照)を有する。なお、放射線測定器51は、パイルアップ防止部を省略してもよい。
【0048】
第1のカウンタ60は、オーバフローを防止するオーバフロー防止部として、カウンタ61、比較回路62、およびセレクタ63を有する。
【0049】
カウンタ61は、コンパレータ13の出力を一定時間計数する。比較回路62は、カウンタ61の計数値がカウンタ61の最大値65に到達した場合に真、最大値65未満である場合に偽の論理信号を出力する。セレクタ63は比較回路62の出力が偽の場合、カウンタ61の実際の計数値を出力する。また、セレクタ63は比較回路62の出力が真の場合、カウンタ61の最大値65を出力する。
【0050】
次に、第2実施形態における放射線測定器51の作用を説明する。
【0051】
放射線センサ10は放射線を検出すると、電気パルス31を発生する。波形整形回路12は、電気パルス31を幅数μsの整形パルス32に整形する。コンパレータ13は、整形パルス32の波高値が弁別レベル設定器14において設定された電圧より大きい場合、出力1を示す検出パルス(検出信号)33を出力する。コンパレータ13の出力は、第1のカウンタ60のカウンタ61に出力される。カウンタ61は、検出パルス33を一定期間計数する。
【0052】
比較回路62は、カウンタ61の計数値を最大値65と比較する。カウンタ61の計数値が最大値65未満である場合、偽を出力する。セレクタ63は、カウンタ61の実際の放射線の計数値を表示器23に出力する。表示器23は、カウンタ61の計数値を表示する。
【0053】
一方、比較回路62は、カウンタ61の計数値が最大値65である場合、すなわちカウンタ61が計測可能な最大値に到達した場合には、真を出力する。セレクタ63は、カウンタ61の最大値65を所定のタイミングまで(例えば、次の測定を開始するまで)表示器23に出力する。表示器23は、カウンタ61の最大値65を表示する。
【0054】
この結果、カウンタ61がオーバフローして計数値が最大値65より小さくなることはなく、カウンタ61の値は最大値65に保持される。
【0055】
第2実施形態における放射線測定器51は、第1のカウンタ60(カウンタ61)が最大値65に到達したことを検出し、第1のカウンタ60の値を実際の計数値から最大値65に切り替えることで、表示器23に出力される値はオーバフローした値とならず、作業員の誤認を防止できる。
【0056】
なお、第2実施形態における放射線測定器51は、カウンタ61の計数値が最大値65に到達した場合、第1のカウンタ15の値を最大値65に設定し表示器23に表示させてもよい。
【0057】
図6は、第2実施形態の変形例としての放射線測定器71の回路構成図である。なお、第2実施形態の放射線測定器51と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
第1のカウンタ72は、オーバフローを防止するオーバフロー防止部として、カウンタ61、および比較回路73を有する。
【0059】
比較回路73は、カウンタ61の計数値がカウンタ61の最大値65に到達した場合に真、最大値65未満である場合に偽の論理信号をカウンタ61に出力する。カウンタ61は、比較回路73の出力が偽の場合、カウンタ61の実際の計数値を出力する。比較回路73の出力が真の場合、比較回路73は、カウンタ61の計数値を最大値65に設定する。
【0060】
放射線測定器71は、第2実施形態における放射線測定器51と同様の効果を奏する上、セレクタ63を省略でき構成を簡素化できる。
【0061】
なお、第2実施形態においては、カウンタ61と比較される値は最大値65に限らず他の大きい値であってもよい。
【0062】
[第3実施形態]
本発明に係る放射線測定器の第3実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0063】
図7は、第3実施形態における放射線測定器81の回路構成図である。
【0064】
第3実施形態における放射線測定器81が第1および第2実施形態と異なる点は、放射線測定器81のメンテナンス性を向上させるため、USB変換器82、USBハブ83、USBメモリ84を有する点である。第1実施形態と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
放射線測定器81は、放射線計測部として、放射線センサ10、波形整形回路12、コンパレータ13、弁別レベル設定器14、および第1のカウンタ15を有する。また、放射線測定器81は、パイルアップを防止するためのパイルアップ防止部として、発振器16、AND回路17、第2のカウンタ18、および比較回路19を有する。
【0066】
さらに、放射線測定器81は、USB変換器82、USBハブ83、およびUSBメモリ84を有する。USB変換器82は、セレクタ21から出力される測定データをUSB規格のシリアルデータに変換し出力する。USBハブ83(出力装置)は、放射線測定器81とデータ処理表示部90とを接続し、データの送受信などを行う。USBメモリ84(記憶装置)は、放射線測定器81の固有情報を格納する。固有情報は、例えば放射線センサ10の感度などの校正値、放射線測定器81の製造番号、使用・保守履歴などの情報である。
【0067】
放射線測定器81に接続されるデータ処理表示部90は、放射線測定器81の測定データを処理したり表示したりする。
【0068】
次に、第3実施形態における放射線測定器81の作用について説明する。
【0069】
USB変換器82は、セレクタ21より出力される測定データをUSB規格のシリアルデータに変換し、USBハブ83に出力する。シリアルデータは、USBハブ83を介してデータ処理表示部90に送信される。データ処理表示部90においては、セレクタ21より出力される測定データ(第1および第2のカウンタ15、18の計数値)と、USBメモリ84に格納された放射線測定器81の固有情報を読み出し、所要のデータ処理を行う。
【0070】
データ処理表示部90は、例えば放射線センサ10の感度をUSBメモリ84より読み出し、放射線測定器81固有の放射線センサ10の感度でセレクタ21より出力される第1のカウンタ15の計数値を校正する。
【0071】
第3実施形態における放射線測定器81は、放射線測定器81の固有情報がUSBメモリ84に格納されているため、放射線測定器81やデータ処理表示部90が故障し、放射線測定器81やデータ処理表示部90を交換する必要がある場合であっても、この固有情報に基づいてスムーズに測定に移行することができる。
【0072】
例えば、USBメモリ84から読み出された放射線測定器81の校正値をもとに、データ処理表示部90において放射線センサ10の計数値を校正して測定データを表示することができる。このため、機器の交換が必要になる場合には放射線測定器81自体を校正する必要がなく、予備の放射線測定器81またはデータ処理表示部90があれば迅速に交換して使用することができる。
【0073】
また、放射線測定器81は、放射線測定器81の校正方法を知らない作業員であっても、繁雑な作業を要することなく交換して使用することができる。
【0074】
なお、記憶装置としてのUSBメモリ84は、放射線測定器81またはデータ処理表示部90に内蔵してもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1、41、51、71、81 放射線測定器
10 放射線センサ
12 波形整形回路
13 コンパレータ
14 弁別レベル設定器
15、60、72 第1のカウンタ
16 発振器
17 AND回路
18 第2のカウンタ
19、42、62、73 比較回路
20 係数設定回路
21、63 セレクタ
22 設定値
23 表示器
61 カウンタ
65 最大値
82 USB変換器
83 USBハブ
84 USBメモリ
90 データ処理表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出した場合、検出信号を発生する放射線センサと、
前記検出信号を計数する第1のカウンタと、
周期信号を所定周期で発生する発振器と、
前記検出信号と前記周期信号との論理積を出力するAND回路と、
前記AND回路の出力信号を計数する第2のカウンタと、
前記第2のカウンタの計数値が第1の所定値未満である場合、前記第1のカウンタの計数値を表示し、前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上である場合、前記第1のカウンタの実際の計数値とは異なる値を表示する表示器とを備えたことを特徴とする放射線測定器。
【請求項2】
前記表示器は、前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上である場合、前記第2のカウンタの計数値に基づく値を表示する請求項1記載の放射線測定器。
【請求項3】
前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上であるか否かを判定する比較回路と、
前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上である場合、前記表示器に対し前記第2のカウンタ計数値を出力する表示制御回路をさらに備えた請求項2記載の放射線測定器。
【請求項4】
前記表示器は、前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上である場合、前記第1のカウンタの計数値を第2の所定値に設定し、前記第2の所定値が設定された前記第1のカウンタの値を表示する請求項1記載の放射線測定器。
【請求項5】
前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上であるか否かを判定し、前記第2のカウンタの計数値が前記第1の所定値以上である場合、前記第1のカウンタの計数値を前記第2の所定値に設定する比較回路をさらに備えた請求項4記載の放射線測定器。
【請求項6】
前記表示器は、前記第1のカウンタが最大計数値に到達した場合、予め設定された第3の所定値を表示する請求項1〜5のいずれか一項記載の放射線測定器。
【請求項7】
前記第3の所定値は、前記第1のカウンタの最大値である請求項6記載の放射線計測器。
【請求項8】
前記第1のカウンタの計数値が最大値に到達したか否かを判定する比較回路と、
前記第1のカウンタの計数値が前記最大値に到達した場合、前記第3の所定値を前記表示器に出力する表示制御回路をさらに備えた請求項6または7記載の放射線測定器。
【請求項9】
前記第1のカウンタの計数値が最大値に到達したか否かを判定し、前記第1のカウンタの計数値が前記最大値に到達した場合、前記第1のカウンタの計数値を前記第3の所定値に設定し、前記第1のカウンタの値を前記表示器に表示させる比較回路をさらに備えた請求項6または7記載の放射線測定器。
【請求項10】
前記放射線測定器の固有情報を格納する記憶装置と、
前記第1のカウンタの計測値を前記記憶装置に格納された前記固有情報とともに外部機器に出力する出力装置をさらに備えた請求項1記載の放射線測定器。
【請求項11】
放射線を検出した場合、検出信号を発生する放射線センサと、
前記検出信号を計数するカウンタと、
前記カウンタの計数値が最大値未満である場合、前記カウンタの実際の計数値を表示し、前記カウンタの計数値が最大値に到達した場合、前記カウンタの実際の計数値とは異なる所定値を表示する表示器とを備えたことを特徴とする放射線測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76676(P2013−76676A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217997(P2011−217997)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】