説明

放射線照射場における腐食環境評価方法及び放射線照射場における腐食緩和方法

【課題】従来に比べてより正確に放射線場における腐食電位を評価することのできる放射線照射場における腐食環境評価方法を提供するとともに、従来に比べてより放射線照射場における腐食を緩和することのできる放射線照射場における腐食緩和方法を提供する。
【解決手段】構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じたアノード電流の発生量を推測し、かつ、構造材近傍における高温水の拡散層中における放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を予め求め、当該放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じたカソード電流の発生量を推測して腐食電位を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の放射線場の高温水に晒される構造材の腐食環境を評価し、腐食を緩和するための放射線照射場における腐食環境評価方法及び放射線照射場における腐食緩和方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントにおける原子炉構造材の腐食緩和方法としては、水素注入が知られており実機プラントに適用されている。この水素注入は、原子炉構造材表面の酸化種を低減することによって腐食環境緩和を図ることを目的として実施されている。また、このような水素注入による効果により、カソード電流密度の低減が作用して腐食電位が低下するモデルが構築され、原子炉内全体の水質評価との組み合わせにより原子炉内の腐食電位分布をシミュレーションする方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。
【0003】
また、原子力プラントにおける他の原子炉構造材の腐食緩和方法としては、貴金属注入が知られている(例えば、特許文献1参照)。この貴金属注入による腐食環境への効果を評価する方法としては、原子炉構造材表面に貴金属粒子が付着した場合に、冷却水を構成する化学種が電子の授受を行うことで、腐食電位の低下効果を発現するモデル等が構築されている。また、貴金属が存在することによる原子炉内の腐食電位の低下分布をシミュレーションする方法やこれを用いた原子力プラントの管理方法等が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0004】
上記の原子力プラントにおける原子炉構造材の腐食緩和方法の他に、アノード電流を増加させることで腐食電位の低下を図る方法が提案されている(例えば、特許文献4、5参照)。この方法では、酸化チタン等の触媒物質を原子炉構造材に付着させ、原子炉内で発生しているチェレンコフ光や放射線またはプラントの熱を利用して励起電流を発生させ、原子炉構造材の腐食電位を低下させる。この方法ではチェレンコフ光の光量がアノード電流の発生に大きく寄与しており、腐食電位の評価には放射線線量率に依存するチェレンコフ光の評価が重要となってくる。
【0005】
一方、沸騰水型原子炉(BWR)での腐食電位評価では、シュラウドの内外面等の高線量場では、材料表面における水の拡散層中での放射線分解が議論されてきており、通常の電気化学で評価を行う原子炉構造材から離間した沖合い部分の水の中の環境物質(例えば酸素、水素、過酸化水素等)の濃度、つまり所謂一般的な環境物質の水中濃度、のみの評価ではなく、拡散層内の放射線分解生成物の発生や反応の影響を評価することが検討されている。
【0006】
上記した従来の技術では、光の照射等によりアノード電流が生成する酸化チタン等の触媒物質を原子炉構造材へ付着させた場合の腐食電位低下効果を詳細に評価する方法がないために、腐食電位分布を精度良くシミュレーションすることができなかった。
【0007】
また、原子炉水と材料表面の拡散層内の放射線分解による濃度変化が議論されてきているが、その腐食電位に及ぼす影響は、原子炉の部位に置き換えて定量的には議論されていない。
【0008】
拡散層における放射線分解生成物の濃度変化について考慮されていない従来の評価方法では、腐食電位の評価の場合は、拡散層内での物質移行のみが考慮されていた。この評価方法は、以下の解析方法に準じている。
【0009】
混成電位の定義で、電気化学システムにおいてアノード電流とカソード電流が等しくなった場合を腐食電位としているのでアノード電流とカソード電流間には以下の(1)式が成り立つ。
【0010】
【数1】

【0011】
電流密度を求めるためには以下のButler-Volmerの式が用いられる。
【数2】

【0012】
ターフェルの関係式から(2)式は(3)式に変換できる。
【数3】

【0013】
水素注入を実施した場合には原子炉水中の酸素や過酸化水素の濃度が低減され、1ppb以下の極低濃度になる場合もありえる。このような場合には電気化学反応は、沖合いからの反応物質の原子炉構造材への供給により律速される。以下のFickの第1法則により拡散による電流密度が定義される。
【0014】
【数4】

【0015】
最大の電流密度、すなわち限界電流密度は以下の(5)式、(6)式により表される。
【数5】

【0016】
(4)から(6)式の関係を(3)式に代入することにより以下の統合されたButler-Volmer式((7)式)を導くことができる。
【数6】

【0017】
(7)式により求まる電流密度と、ステンレス鋼の腐食による電流密度を考慮することにより(1)式により定義される腐食電位が求まることになる。
【特許文献1】特許第2624906号公報
【特許文献2】特開平7−174883号公報
【特許文献3】特開2000−121780号公報
【特許文献4】特開2001−4789号公報
【特許文献5】特開2003−232886号公報
【特許文献6】特開平10−111286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したとおり、従来の評価方法では(4)式から明らかなように、材料表面での拡散層内においては、物質の拡散移行を定義しているのみであり、その拡散層内における物質の生成や消滅は考慮されていない。通常の放射線の無い系では、上述の方式で腐食電位は表現できるが、放射線場においては拡散層内では、物質の移行のみではなく、下記の(8)式に示される放射線分解生成物の生成と反応による消滅が濃度変化に寄与してくる。
【0019】
【数7】

【0020】
拡散層内における放射線の影響は(8)式から明らかなように、放射線強度が高いほど影響が大きい。
【0021】
また、上記したのは水中の成分濃度、例えば酸素、過酸化水素、水素等の環境に存在する成分の影響(主にカソード電流に影響する)であるが、一方、放射線が高くなるほどチェレンコフ光の発生が大きくなり、酸化チタンの処理を行った場合等はアノード電流が多く発生し腐食電位に変化を及ぼしてくる。従来はこのような放射線によるアノードの変化は考慮しておらず、一定の値を用いている。例えばアノード電流の不働態部における電流密度は以下のように模擬されており、放射線の影響は加味されていない。
【数8】

【0022】
本発明は、上記従来技術の事情に鑑みてなされたもので、従来に比べてより正確に放射線場における腐食電位を評価することのできる放射線照射場における腐食環境評価方法を提供するとともに、従来に比べてより放射線照射場における腐食を緩和することのできる放射線照射場における腐食緩和方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の放射線照射場における腐食環境評価方法の一態様は、原子炉の放射線場の高温水に晒される構造材の腐食環境を、アノード電流とカソード電流の発生量によって変化する腐食電位を用いて評価する放射線照射場における腐食環境評価方法であって、前記構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記アノード電流の発生量を推測し、かつ、前記構造材表面における前記高温水の拡散層中における放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を予め求め、当該放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測することを特徴とする。
【0024】
本発明の放射線照射場における腐食緩和方法の一態様は、原子炉の放射線場の高温水に晒される構造材の腐食環境を、アノード電流とカソード電流の発生量によって変化する腐食電位を用いて評価し、前記構造材の腐食を緩和する方法であって、前記構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を用いて、評価部位に付着した触媒物質の量と評価部位における放射線線量率とに応じた前記アノード電流の発生量を推測し、かつ、前記構造材表面における前記高温水の拡散層中における放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を予め求め、当該放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測し、推測された前記アノード電流と、推測された前記カソード電流とから求められる前記腐食電位に基づいて、前記構造材に付着させる触媒物質の量を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来に比べてより正確に放射線場における腐食電位を評価することのできる放射線照射場における腐食環境評価方法を提供するとともに、従来に比べてより放射線照射場における腐食を緩和することのできる放射線照射場における腐食緩和方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の放射線照射場における腐食環境評価方法及び放射線照射場における腐食緩和方法の詳細を図面を参照して実施形態について説明する。
【0027】
図1は、放射線照射場での腐食電位の変化をエバンス図を用いて説明したものである。同図において、点線1が、放射線照射が無い場合のカソード電流を示し、一点鎖線2が、放射線照射が無い場合のアノード電流(触媒のない場合のアノード電流)を示している。この場合、これらの交点3が、腐食電位と混成電位モデルで定義される。
【0028】
放射線照射場では、カソード電流は、拡散層内での放射線分解を考慮することにより、点線4で示すように増加する。一方、アノード電流は、光や放射線により励起され、一点鎖線5で示すように増加する。これにより、これらの交点6により定義される腐食電位は、放射線照射が無い場合の交点3から変化する。なお、同図において符号7はカソード電流の放射線照射による増加分、符号8はアノード電流の放射線照射による増加分を示している。
【0029】
上記の説明において、アノード電流は、酸化チタン等の放射線や光等により励起し電流が増加する触媒がある場合を示しており、放射線照射がない場合に比較して電流が増加している。原子炉水中の酸素に代表されるカソード電流についても、放射線照射場においての、材料表面近傍の拡散層中での放射線分解反応や放射線分解生成物の反応を考慮することにより増加している。
【0030】
図2は、放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示したもので、実線9はアノード電流、点線10はカソード電流の限界電流値を示している。また、同図において交点14は、これらの電流値が等しくなる点である。酸化チタン等の触媒によるアノード電流の発生量は光量に依存している。そして、光の発生量はガンマ線に代表される放射線の強さに依存するので、放射線線量率が増加することにより実線9で示されるアノード電流が増加することになる。
【0031】
一方、原子炉水(高温水)中の放射線分解生成物である過酸化水素や酸素の構造材表面の濃度は、拡散層中における水の放射線分解により変化するので、放射線線量率が高いほど高くなる。この関係を予め求めておく。放射線場における拡散層内の成分濃度は以下の式で表すことができる。
【0032】
【数9】

ここでxは拡散層内の位置、cは成分濃度を示す。
【0033】
図2では、アノード電流とカソード電流を比較することにより腐食電位の低下について評価可能となる。アノード電流がカソード電流を上回る場合においてエバンス図からも推定できるように腐食電位の低下が可能となる。図2においては、実線9で示されるアノード電流と点線10で示されるカソード電流の交点14より右側、すなわち放射線線量率が高いほど、電流値が、アノード電流>カソード電流であるので腐食電位が低下する領域である。
【0034】
以上のとおり、従来は、評価の指標にされてこなかった放射線線量率を用いて、図2のような放射線線量率と、発生するアノード電流及びカソード電流の関係を求めておくことにより、放射線線量率の相違による腐食環境の正確な評価が行えるとともに、腐食電位を低下させるための放射線線量率の条件が求まる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照して説明する。図3は放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示したものである。図3では、原子炉水の流速が異なる場合のカソード電流値の放射線線量率による変化を示しており、点線10は、原子炉水の流速が小さい場合のカソード電流、点線11は、原子炉水の流速が大きい場合のカソード電流を示している。拡散層厚さは以下のように求めることができる。
δ=d/0.023Re0.8Sc0.4
ここで、Reはレイノルズ数、Scはシュミット数でありそれぞれは以下のように表される。
Re:レイノルズ数(Udν-1)
Sc: シュミット数(νD-1
U:流速 (ms-1)
ν:動性粘度 (m2-1)
d:代表径
【0036】
この式から原子炉水の流速が速い場合においては、拡散層厚さが低下することが分かる。拡散層厚さが低下することは、拡散層内における放射線分解生成物の変化量、すなわち沖合いと表面近傍との差が減少し、例えば材料表面における放射線分解生成物である酸素や過酸化水素の濃度の上昇は比較的少なくなる。形状と原子炉水の流速が決定するとカソード電流が決定できる非放射線場とは異なり、カソード電流に放射線線量率依存性があることになる。非放射線場では流速が遅いと沖合いからの物質の移行に時間がかかるために濃度が減少し腐食電位は低くなる。一方、放射線場では拡散層での反応時間が長くなるために生成物濃度が増加して、逆に腐食電位が高くなる可能性が出てくる。
【0037】
図3のような放射線線量率と発生するアノード電流及びカソード電流と流速の関係を求めておくことにより、それぞれの原子炉水の流速における腐食環境の正確な評価が行えるとともに、腐食電位を低下させるための放射線線量率の条件あるいは一定の放射線線量率においての腐食電位を低下させるための流速の条件が求まる。
【0038】
次に、第3実施形態について図4を参照して説明する。図4は、放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示したもので、特に、発生するアノード電流の発生量が異なる場合の関係を示したものである。アノード電流の発生量は、構造材表面における触媒物質、例えば酸化チタンの付着量に依存するので、酸化チタンの付着量の相違により、それぞれの放射線線量率におけるアノード電流の電流値が異なり、腐食電位を低下させるための放射線線量率の領域が異なってくる。図4において実線9は、構造材表面に付着した触媒量が多い場合に発生するアノード電流値、実線12は、構造材表面に付着した触媒量が少ない場合に発生するアノード電流値を示している。
【0039】
図4のような放射線線量率と発生するアノード電流と触媒(酸化チタン等)の付着量とカソード電流の関係を求めておくことにより、それぞれの触媒の付着量における腐食環境の正確な評価が行えるとともに、腐食電位を低下させるための放射線線量率の条件あるいは一定の放射線線量率においての腐食電位を低下させるための触媒付着量が求まる。
【0040】
次に、第4実施形態について図5を参照して説明する。図5は放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示したものであり、図4に示した発生するアノード電流が異なる場合、及び図3に示した原子炉水の流速が異なる場合の関係を1つのグラフ上に示したものである。なお、同図において、実線13は、構造材表面に付着した触媒量が中程度(実線9と実線12との間の付着量)の場合に発生するアノード電流値を示しており、符号14〜18で示される点は、それぞれの条件においてアノード電流とカソード電流が同等となる点を示している。アノード電流の発生量は、材料表面における触媒、例えば酸化チタンの付着量に依存するので、それぞれの放射線線量率におけるアノード電流の電流値が異なり、また、原子炉水の流速は、カソード電流発生量に影響するため、これらの条件の相違により、腐食電位を低下させることのできる放射線線量率の領域が異なる。
【0041】
図5のような放射線線量率と発生するアノード電流と触媒(酸化チタン等)の付着量とカソード電流と原子炉水の流速の関係を求めておくことにより、それぞれの条件における腐食環境の正確な評価が行えるとともに、それぞれの触媒の付着量における腐食電位を低下させるための放射線線量率及び原子炉水の流速の条件、あるいは一定放射線線量率においての腐食電位を低下させるための触媒の付着量と原子炉水の流速の関係が求まる。図6〜図8は、図5から求まる幾つかの条件における原子炉水の流量と放射線線量率と腐食電位の高い領域、腐食電位の低い領域について示したものであり、これらの図に示す点14〜18は、図5に示した点14〜18に相当するものである。
【0042】
図6〜図8に示すようにデータを評価することにより、腐食電位が高い条件と低い条件が整理できると共に、図7に示されるように、原子炉水の流速によらず放射線線量率により腐食電位の高低が評価できる場合が出てくることがわかる。このことは酸化チタン等の触媒の付着量を最適化することにより、腐食電位低減箇所の原子炉水の流量が変化しても腐食電位を低く維持するように設定することが可能であることを示しており、流動解析等の煩雑な手段を採用せずとも目的とする腐食電位に設定できることを示している。このことは、従来は流速が変化すると、変動してしまう腐食電位について、プラントでの原子炉水の流速が変化しても腐食電位が変化しない条件を提供できることを示しており、酸化チタン等の触媒による応力腐食割れ対策のロバスト性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】放射線照射場での腐食電位の変化を説明するためのエバンス図。
【図2】放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示す図。
【図3】原子炉水の流速が異なる場合の放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示す図。
【図4】触媒の付着量が異なる場合の放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示す図。
【図5】原子炉水の流速及び触媒の付着量が異なる場合の放射線線量率とアノード電流及びカソード電流の限界電流値の関係を示す図。
【図6】原子炉水流速と放射線線量率の関係で腐食電位の高い領域と低い領域を示す図。
【図7】原子炉水流速と放射線線量率の関係で腐食電位の高い領域と低い領域を示す図。
【図8】原子炉水流速と放射線線量率の関係で腐食電位の高い領域と低い領域を示す図。
【符号の説明】
【0044】
1……非放射線照射場でのカソード電流、2……非放射線照射場でのアノード電流(触媒のない場合のアノード電流)、3……非放射線照射場での腐食電位、4……放射線照射場におけるカソード電流、5……放射線照射場における触媒のある場合のアノード電流、6……放射線照射場における腐食電位、7……放射線照射場におけるカソード電流の増加、8……放射線照射場の触媒におけるアノード電流の増加、9……触媒により発生するアノード電流値(触媒量が多い場合で電流発生が多い場合)、10……構造材表面でのカソード電流(流速小の場合)、11……構造材表面でのカソード電流(流速大の場合)、12……触媒により発生するアノード電流値(触媒量が少ない場合で電流発生が少ない場合)、13……触媒により発生するアノード電流値(触媒量が中程度で電流発生が中程度の場合)、14〜18……それぞれの条件においてアノード電流とカソード電流が同等となる点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の放射線場の高温水に晒される構造材の腐食環境を、アノード電流とカソード電流の発生量によって変化する腐食電位を用いて評価する放射線照射場における腐食環境評価方法であって、
前記構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記アノード電流の発生量を推測し、
かつ、
前記構造材表面における前記高温水の拡散層中における放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を予め求め、当該放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測する
ことを特徴とする放射線照射場における腐食環境評価方法。
【請求項2】
請求項1記載の放射線照射場における腐食環境評価方法であって、
前記高温水の流速によって変化する前記拡散層の厚さに起因する当該拡散層内の放射線分解生成物の濃度変化と放射線線量率との関係を予め求め、当該放射線分解生成物の濃度変化と放射線線量率との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測する
ことを特徴とする放射線照射場における腐食環境評価方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放射線照射場における腐食環境評価方法であって、
前記構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を用いて、評価部位に付着した触媒物質の量と評価部位における放射線線量率とに応じた前記アノード電流の発生量を推測する
ことを特徴とする放射線照射場における腐食環境評価方法。
【請求項4】
原子炉の放射線場の高温水に晒される構造材の腐食環境を、アノード電流とカソード電流の発生量によって変化する腐食電位を用いて評価し、前記構造材の腐食を緩和する方法であって、
前記構造材に付着した触媒物質の作用で発生する電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を予め求め、当該電流量と放射線線量率と触媒物質の量との関係を用いて、評価部位に付着した触媒物質の量と評価部位における放射線線量率とに応じた前記アノード電流の発生量を推測し、
かつ、
前記構造材表面における前記高温水の拡散層中における放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を予め求め、当該放射線線量率と放射線分解生成物の濃度との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測し、
推測された前記アノード電流と、推測された前記カソード電流とから求められる前記腐食電位に基づいて、前記構造材に付着させる触媒物質の量を決定することを特徴とする放射線照射場における腐食緩和方法。
【請求項5】
請求項4記載の放射線照射場における腐食緩和方法であって、
前記高温水の流速によって変化する前記拡散層厚さに起因する拡散層内の放射線分解生成物の濃度変化と放射線線量率との関係を予め求め、当該放射線分解生成物の濃度変化と放射線線量率との関係を用いて、評価部位における放射線線量率に応じた前記カソード電流の発生量を推測する
ことを特徴とする放射線照射場における腐食緩和方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−281826(P2009−281826A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133493(P2008−133493)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】