説明

放射線画像変換パネル及び放射線画像検出装置

【課題】放射線画像検出装置によって取得される放射線画像の画質を向上させる。
【解決手段】放射線画像検出装置1は、放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有した蛍光体18を備える放射線画像変換パネル2と、放射線画像変換パネルから発せられる蛍光を検出するセンサパネル3と、を備えている。蛍光体18は、蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶35の群を含み、各柱状結晶35は、少なくとも先端部35Aがテーパ状に形成されており、その側面のうち少なくとも先端部35Aにおける側面が反射膜40で被覆されている。各柱状結晶35の先端側にあたる蛍光体18の表面がセンサパネル3に対向するように、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とが貼り合わされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル及び放射線画像検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、放射線画像を検出してデジタル画像データを生成するFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線画像検出装置が実用化されており、従来のイメージングプレートに比べて即時に画像を確認できるといった理由から急速に普及が進んでいる。この放射線画像検出装置には種々の方式のものがあり、その一つとして、間接変換方式のものが知られている。
【0003】
間接変換方式の放射線画像検出装置は、放射線露光によって蛍光を発するCsIやGOS(GdS)などの蛍光物質によって形成されたシンチレータを有する放射線画像変換パネルと、光電変換素子の2次元配列を有するセンサパネルとを備え、典型的には、シンチレータとセンサパネルとの間に接着層を介在させ、放射線画像変換パネルとセンサパネルとが貼り合わされている。被写体を透過した放射線は、放射線画像変換パネルのシンチレータによって一旦光に変換され、シンチレータの蛍光はセンサパネルの光電変換素子群によって光電変換され、電気信号(デジタル画像データ)が生成される。
【0004】
間接変換方式の放射線画像検出装置において、放射線をセンサパネル側から入射させるようにした、いわゆる表面読取型(ISS:Irradiation Side Sampling)の放射線画像検出装置も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この放射線画像検出装置によれば、シンチレータのセンサパネル近傍における蛍光の発生量が多くなり、感度の向上が図られる。それにより、放射線露光量を低減し、被写体の被曝量を低減することができる。
【0005】
また、気相堆積法により、支持体上でCsI等の蛍光物質の結晶を柱状に成長させてなる柱状結晶の群によってシンチレータを形成する技術も知られている(例えば、特許文献2、3参照)。気相堆積法によって形成される柱状結晶は、結合剤等の不純物を含まず、また、そこで発生した蛍光を結晶の成長方向に導光する光ガイド効果を有しており、蛍光の拡散を抑制する。それにより、放射線画像検出装置の感度及び画像の鮮鋭度の向上が図られる。
【0006】
蛍光物質として用いられるCsIは潮解性を有するため、CsIを用いて形成されるシンチレータは、一般に、防湿性を有する保護膜によって被覆される。ところで、保護膜がシンチレータの柱状結晶間に入り込むことがある。保護膜としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムや、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)により形成されるパリレン膜などが用いられるが、これらは典型的には柱状結晶間に介在する空気よりも屈折率が高いため、保護膜が柱状結晶間に入り込むと、空気との屈折率差による全反射を利用した柱状結晶の光ガイド効果が低下してしまう。
【0007】
特許文献2に記載されたシンチレータにおいては、柱状結晶の光ガイド効果を維持するために、柱状結晶の先端部が平坦とされていると共に、保護膜よりも低屈折率な充填材によって柱状結晶間が埋められている。保護膜がフィルムである場合には、柱状結晶の先端部が平坦とされることにより、柱状結晶が保護膜に刺さり難くなり、また、保護膜がCVD法により形成される膜である場合には、柱状結晶の先端部が平坦とされることにより、柱状結晶間の隙間の間口が狭くなって成膜初期に間口が塞がれ、柱状結晶間に保護膜が入り込みにくくなる。また、柱状結晶間に保護膜が入り込んだとしても、低屈折率な充填材で柱状結晶間が埋められていることにより、保護膜が柱状結晶の側面に接触することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−330677号公報
【特許文献2】特開2010−025620号公報
【特許文献3】特開2011−017683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
柱状結晶の先端部が平坦であると、柱状結晶の先端からの蛍光の出射角が大となる場合がある。シンチレータとセンサパネルとの間には保護膜や接着層が介在して距離が置かれるため、柱状結晶の先端から比較的大きな出射角で出射された蛍光は、その柱状結晶が対向する光電変換素子とは別の周囲の光電変換素子に入射する虞があり、それによって画像の鮮鋭度が低下する虞がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、放射線画像検出装置によって取得される放射線画像の画質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有した蛍光体を備える放射線画像変換パネルであって、前記蛍光体は、前記蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を含み、前記各柱状結晶は、少なくとも先端部が先細のテーパ状に形成されており、その側面のうち少なくとも前記先端部における側面が反射膜で被覆されている放射線画像変換パネル。
(2) 上記(1)の放射線画像変換パネルと、前記放射線画像変換パネルから発せられる蛍光を検出するセンサパネルと、を備え、前記各柱状結晶の先端側にあたる前記蛍光体の表面を前記センサパネルに対向させて前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている放射線画像検出装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柱状結晶の先端部が先細のテーパ状に形成されて絞られており、先端部の側面が反射膜によって被覆されているので、柱状結晶の先端からの蛍光の出射角が大となることが抑制され、柱状結晶の先端から出射された蛍光が、その柱状結晶が対向する光電変換素子とは別の周囲の光電変換素子に入射する可能性が低減され、画像の鮮鋭度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を模式的に示す図である。
【図2】図1の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を模式的に示す図である。
【図3】図1の放射線画像検出装置の放射線画像変換パネルの構成を模式的に示す図である。
【図4】図3の放射線画像変換パネルの蛍光体のIV‐IV断面を示す図である。
【図5】図3の放射線画像変換パネルの蛍光体のV‐V断面を示す図である。
【図6】図3の放射線画像変換パネルの蛍光体から出射される蛍光を模式的に示す図。
【図7】図3の放射線画像変換パネルの製造方法の一例を示す図。
【図8】図3の放射線画像変換パネルの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態を説明するための、放射線画像検出装置の一例の構成を示し、図2は、図1の放射線画像検出装置のセンサパネルの構成を示す。
【0015】
放射線画像検出装置1は、放射線露光によって蛍光を発するシンチレータ(蛍光体)18を有する放射線画像変換パネル2と、放射線画像変換パネル2のシンチレータ18の蛍光を光電変換する光電変換素子26の2次元配列を有するセンサパネル3と、を備えている。
【0016】
放射線画像変換パネル2は、支持体11を有し、シンチレータ18は支持体11上に形成されている。放射線画像変換パネル2は、センサパネル3とは別に構成され、支持体11とは反対側のシンチレータ18の面をセンサパネル3の光電変換素子26の2次元配列に対向させ、シンチレータ18と光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層を介してセンサパネル3に貼り合わされている。
【0017】
本例の放射線画像検出装置1は、ISS型の放射線画像検出装置であり、放射線は、センサパネル3側から照射され、センサパネル3を透過してシンチレータ18に入射する。放射線が入射したシンチレータ18において蛍光が発生し、ここで発生した蛍光がセンサパネル3の光電変換素子26によって光電変換される。このように構成された放射線画像検出装置1においては、蛍光を多く発生させるシンチレータ18の放射線入射側が光電変換素子26に隣設されるため、感度が向上する。
【0018】
センサパネル3は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ素子28が絶縁性基板に形成されたTFT基板16を有し、光電変換素子26の2次元配列はTFT基板16上に形成されている。そして、TFT基板16上には、これらの光電変換素子26を覆い、TFT基板16の表面を平坦化するための平坦化層23が形成されている。そして、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせるための接着層25が平坦化層23上に形成されている。平坦化層23及び接着層25が上記の樹脂層を形成する。なお、樹脂層として、透明な液体又はゲルからなるマッチングオイルなども用いることができる。樹脂層の厚みは、感度、及び画像の鮮鋭度の観点から、50μm以下であることが好ましく、5μm〜30μmであることがより好ましい。
【0019】
各光電変換素子26は、シンチレータ18の蛍光が入射されることにより電荷を生成する光導電層20と、この光導電層20の表裏面に設けられた一対の電極とで構成されている。光導電層20のシンチレータ層18側の面に設けられた電極22は、光導電層20にバイアス電圧を印加するためのバイアス電極であり、反対側の面に設けられた電極24は、光導電層20で生成された電荷を収集する電荷収集電極である。
【0020】
スイッチ素子28は、光電変換素子26の2次元配列に対応してTFT基板16に2次元に配列されており、各光電変換素子26の電荷収集電極24は、TFT基板16の対応するスイッチ素子28に接続されている。各電荷収集電極24に収集された電荷は、スイッチ素子28を介して読み出される。
【0021】
TFT基板16には、一方向(行方向)に延設され各スイッチ素子28をオン/オフさせるための複数本のゲート線30と、ゲート線30と直交する方向(列方向)に延設されオン状態のスイッチ素子28を介して電荷を読み出すための複数の信号線(データ線)32が設けられている。そして、TFT基板16の周縁部には、個々のゲート線30及び個々の信号線32が接続された接続端子38が配置されている。この接続端子38は、図2に示すように、接続回路39を介して回路基板(図示せず)に接続される。この回路基板は、外部回路としてのゲート線ドライバ、及び信号処理部を有する。
【0022】
各スイッチ素子28は、ゲート線ドライバからゲート線30を介して供給される信号により行単位で順にオン状態とされる。そして、オン状態とされたスイッチ素子28によって読み出された電荷は、電荷信号として信号線32を伝送されて信号処理部に入力される。これにより、電荷が行単位で順に読み出され、上記の信号処理部において電気信号に変換され、デジタル画像データが生成される。
【0023】
以下、放射線画像変換パネル2及びそのシンチレータ18について詳細に説明する。
【0024】
図3は、放射線画像変換パネル2の構成を模式的に示す。
【0025】
放射線画像変換パネル2は、支持体11と、支持体11上に形成されたシンチレータ18とを有している。
【0026】
支持体11としては、カーボン板、CFRP(carbon fiber reinforced plastic)、ガラス板、石英基板、サファイア基板、鉄、スズ、クロム、アルミニウムなどから選択される金属シート、等を用いることができるが、その上にシンチレータ18を形成することができる限りにおいて上記のものに限定されない。
【0027】
シンチレータ18を形成する蛍光物質には、例えば、CsI:Tl、NaI:Tl(タリウム賦活ヨウ化ナトリウム)、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、等を用いることができ、なかでも、発光スペクトルがa−Siフォトダイオードの分光感度の極大値(550nm付近)と適合する点で、CsI:Tlが好ましい。
【0028】
シンチレータ18は、支持体11とは反対側に設けられた柱状部34と、支持体11側に設けられた非柱状部36とで構成されている。柱状部34及び非柱状部36は、詳細は後述するが、気相堆積法によって支持体11上で層状に重なって連続的に形成されている。なお、柱状部34及び非柱状部36は同じ蛍光物質により形成されるが、Tl等の賦活剤の添加量は異なっていてもよい。
【0029】
柱状部34は、上記の蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶35の群によって形成されている。隣り合う柱状結晶35の間には空隙が置かれ、柱状結晶35は互いに独立して存在する。
【0030】
非柱状部36は、蛍光物質の結晶が比較的小さい結晶の群によって形成されている。非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりするため、結晶間に明確な空隙は生じ難い。なお、非柱状部36には、上記の蛍光物質の非晶質体が含まれる場合もある。
【0031】
支持体11上に形成されたシンチレータ18は、防湿性を有する保護膜19によって被覆されている。シンチレータ18は、支持体11及び保護膜19によって封止され、吸湿による劣化が抑制される。
【0032】
保護膜19としては、例えばパリレンを用いることができる。パリレンは、気相堆積法によって容易にシンチレータ18の全面に薄膜を形成することができる。また、保護膜としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等も用いることができる。
【0033】
放射線画像変換パネル2は、支持体11とは反対側のシンチレータ18の面、即ち柱状部34の各柱状結晶の先端をセンサパネル3の光電変換素子26の2次元配列に対向させ、センサパネル3に貼り合わされている。従って、シンチレータ18の放射線入射側には、柱状結晶35の群からなる柱状部34が配置される。
【0034】
柱状部34の柱状結晶35に発生した蛍光は、柱状結晶35とその周囲の間隙(空気)との屈折率差に起因して柱状結晶35内で全反射を繰り返すことで拡散を抑制され、その柱状結晶35が対向する光電変換素子26に導光される。それにより、画像の鮮鋭度が向上する。
【0035】
そして、柱状部34の柱状結晶35に発生した蛍光のうち、センサパネル3とは反対側、即ち支持体11側に向かう蛍光については、非柱状部36においてセンサパネル3側に向けて反射される。それにより、蛍光の利用効率が高まり、感度が向上する。
【0036】
また、柱状部34の柱状結晶35は、その成長初期においては比較的細く、結晶の成長が進むにつれて太くなる。柱状部34の非柱状部36との接合部分においては、細径の柱状結晶35が林立し、比較的大きい空隙が結晶の成長方向に多数延在しており、空隙率が大きい。一方の非柱状部36は、小径の球状結晶37若しくはその凝集体によって形成され、個々の空隙は比較的小さく、柱状部34に比べて緻密であって空隙率は小さい。支持体11との柱状部34との間に非柱状部36が介在することにより、支持体11とシンチレータ18との密着性が向上する。それにより、支持体11とセンサパネル3のTFT基板16との線膨張差に起因する反りや衝撃などによって作用する応力に対する耐性が向上し、シンチレータ18が支持体11から剥離することが防止される。
【0037】
図4は、シンチレータ18の図3におけるIV‐IV断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0038】
図4に明らかなように、柱状部34においては、柱状結晶35が結晶の成長方向に対しほぼ均一な断面径を示し、かつ、柱状結晶35の周囲に間隙を有し、柱状結晶35が互いに独立して存在することがわかる。柱状結晶35の結晶径(柱径)は、光ガイド効果、機械的強度、そして画素欠陥防止の観点から、2μm以上8μm以下であることが好ましい。柱径が小さすぎると、柱状結晶35の機械的強度が不足し、衝撃等により損傷する懸念があり、柱径が大きすぎると、光電変換素子26毎の柱状結晶35の数が少なくなり、結晶にクラックが生じた際にその素子が欠陥となる確率が高くなる懸念がある。光電変換素子26のサイズにもよるが、典型的には、光電変換素子26毎の柱状結晶の数は数十〜数百本である。
【0039】
ここで、柱径は、柱状結晶35の成長方向上面から観察した結晶の最大径を示す。具体的な測定方法としては、柱状結晶35の成長方向上面からSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することで柱径を測定する。柱状結晶35が100本から200本観察できる倍率(約2000倍程度)で観察し、1撮影に含まれる結晶全てに対し、柱径の最大値を測定して平均した値を採用している。柱径(μm)は小数点以下2桁まで読み、平均値をJIS Z 8401に従い小数点以下2桁目を丸めた値とする。
【0040】
図5は、シンチレータ18の図3におけるV‐V断面を示す電子顕微鏡写真である。
【0041】
図5に明らかなように、非柱状部36においては、結晶同士が不規則に結合したり重なり合ったりして結晶間の明確な空隙は、柱状部34ほどは認めらない。非柱状部36を形成する結晶の径は、密着性及び光反射の観点から、0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましい。結晶径が小さすぎると、空隙が0に近づき、光反射の機能が低下する懸念があり、結晶径が大きすぎると、平坦性が低下し、支持体11との密着性が低下する懸念がある。また、非柱状部36を形成する結晶の形状は、光反射の観点から、略球状であることが好ましい。
【0042】
ここで、結晶同士が結合している場合の結晶径の測定は、隣接する結晶間に生じる窪み(凹)同士を結んだ線を結晶間の境界と見なし、結合した結晶同士を最小多角形となるように分離して柱径及び柱径に対応する結晶径を測定し、柱状部34における結晶径と同様にして平均値をとり、その値を採用した。
【0043】
柱状部34及び非柱状部36の厚みについて、柱状部34の厚みをt1とし、非柱状部36の厚みをt2としたとき、(t2/t1)が0.01以上0.25以下であることが好ましく、0.02以上0.1以下であることがより好ましい。(t2/t1)が上記範囲にあることで、蛍光効率、光拡散防止及び光反射が好適な範囲となり、感度及び画像の鮮鋭度が向上する。
【0044】
また、柱状部34の厚みt1は、放射線のエネルギーにもよるが、柱状部34における十分な放射線吸収及び画像の鮮鋭度の観点から、200μm以上700μm以下であることが好ましい。柱状部34の厚みが小さすぎると、放射線を十分に吸収することができず、感度が低下する虞があり、厚みが大きすぎると光拡散が生じ、柱状結晶の光ガイド効果によっても画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0045】
非柱状部36の厚みt2は、支持体11との密着性及び光反射の観点から、5μm以上125μm以下であることが好ましい。非柱状部36の厚みが小さすぎると、支持体11との十分な密着性が得られない虞があり、また厚みが大きすぎると、非柱状部36における蛍光の寄与、及び非柱状部36での光反射による拡散が増大し、画像の鮮鋭度が低下する懸念がある。
【0046】
図6は、柱状結晶35の先端から出射される蛍光を示す。なお、図6には、柱状結晶35の先端部が先細のテーパ形状に形成されているもの(FIG.6A)、及び、比較のため、先端部が平坦に形成されているもの(FIG.6B)を示している。
【0047】
柱状結晶35の先端部35Aは、先細のテーパ形状に形成されている。そして、柱状結晶35の側面は、シンチレータ18に発生する蛍光に対して反射性を有する反射膜40によって被覆されている。反射膜40は、柱状結晶35の側面において、先端からテーパ形状とされた部分を越えて基端側にまで及んでいる。なお、先端部35Aの先端面は、反射膜40によって覆われることなく露呈している。
【0048】
反射膜40としては、例えばアルミニウムやアルミニウム合金などの金属反射膜を用いることができる。アルミニウム合金としては、Mg,Cr,Zr,Ti,Mnから選ばれる元素を含むアルミニウム合金を例示することができる。シンチレータ18を形成する蛍光物質として用いられるCsIは上記の通り潮解性を有しており、潮解が生じた場合にCsI中のハロゲン(I:ヨウ素)が拡散してアルミニウムが腐食することがあるが、上記のアルミニウム合金は耐食性に優れ、反射性能を維持することができる。
【0049】
シンチレータ18とセンサパネル3との間には、保護膜19及び接着層25が介在しており、柱状結晶35の先端面から出射された蛍光は、その出射角に応じて、センサパネル3の面方向にズレてセンサパネル3に入射する。柱状結晶35の先端部35Aが先細のテーパ状に形成されている場合の、柱状結晶35の先端からの蛍光の出射角φ1(FIG.6A参照)と、柱状結晶の先端部が平坦に形成されている場合の柱状結晶の先端からの蛍光の出射角φ2(FIG.6B参照)とを比べると、前者の場合の出射角φ1は小さくなる傾向にあり、センサパネル3の面方向へのズレが抑制される。先端部35Aが先細のテーパ状に形成されている柱状結晶35の先端から出射された蛍光が、その柱状結晶35が対向する光電変換素子26とは別の周囲の光電変換素子26に入射する可能性が低減され、画像の鮮鋭度が向上する。特に、シンチレータ18とセンサパネル3との間に接着層25を介在させて放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせる場合には、シンチレータ18とセンサパネル3との間の間隔が接着層25の厚みだけ増すことになり、それに伴って、センサパネル3に入射するまでズレが大きくなるので、柱状結晶35の先端部35Aが先細のテーパ状に形成し、先端部35Aの側面を反射膜40で被覆することは有用である。
【0050】
次に、図7を参照してシンチレータ18の製造方法の一例について説明する。以下では、蛍光物質としてCsI:Tlを用いた場合を例に説明する。
【0051】
シンチレータ18は、気相堆積法によって支持体11の表面に直接形成される。気相堆積法によれば、非柱状部36及び柱状部34をこの順に連続して一体に形成することができる。真空度0.01〜10Paの環境下で、CsI:Tlを抵抗加熱式のるつぼに通電するなどの手段で加熱して気化させ、支持体11の温度を室温(20℃)〜300℃としてCsI:Tlを支持体11上に堆積させる。
【0052】
支持体11上にCsI:Tlの結晶相を形成する際、当初は直径の比較的小さな球状結晶を堆積させて非柱状部36を形成する(FIG.7A)。そして、真空度及び支持体11の温度の少なくとも一方の条件を変更し、非柱状部36を形成した後に連続して柱状部34を形成する。具体的には、真空度を上げる、及び/又は支持体11の温度を高くすることによって、柱状結晶35を成長させる(FIG.7B)。
【0053】
柱状結晶35を成長させる工程の終期において、支持体11の温度を制御することにより、柱状結晶35の先端部35Aをテーパ形状に形成する。支持体11の温度を110℃とした場合に柱状結晶35の先端の角度は約170度、140℃とした場合に約60度、200℃とした場合に約70度、260℃とした場合に約120度となることが知られている(特許文献2参照)。
【0054】
次いで、柱状結晶35の先端部35Aの表面にアルミニウムからなる反射膜40を形成する(FIG.7C)。成膜方法としては、真空蒸着法やスパッタ法などを用いることができる。ここで、柱状結晶間の隙間は、典型的には数μm以下と非常に狭いが、柱状結晶35の先端部35Aをテーパ形状とすることによって、柱状結晶間の隙間の間口が広がり、反射膜40を柱状結晶間の深部まで成膜することができる。それにより、柱状結晶35の光ガイド効果を高めることができる。また、アルミニウムの反射膜40は防湿性を有しており、これにより被覆された柱状結晶35の耐湿性も高めることができる。反射膜40を柱状結晶間の深部まで形成するために、柱状結晶35の先端部35Aは、その先端の角度が90未満のテーパ形状に形成することが好ましい。
【0055】
なお、反射膜40の成膜方法としては、上記の通り真空蒸着法やスパッタ法を用いることができるが、好ましくはスパッタ法が用いられる。成膜速度が高すぎると、先端近傍において柱状結晶間の隙間が塞がってしまい、隙間の深部まで反射膜40を成膜することができない懸念がある。この点で、成膜速度が比較的低いスパッタ法を用いることが好ましい。また、CsIの熱膨張率が40PPM、Alの熱膨張率が30PPMと、いずれも比較的高いことから、柱状結晶35に対する反射膜40の付着力も重要である。スパッタ法のほうが、真空蒸着法よりも、ターゲット原子(分子)の運動エネルギーが大きく、付着力に優れる膜を形成することができるので、この点でもスパッタ法を用いることが好ましい。
【0056】
次いで、化学機械研磨法などによって柱状結晶35の先端部35Aの先端側の一部を除去し、あわせて先端を被覆している反射膜40を除去し、先端部35Aの先端面を露呈させる(FIG.7D)。ここで、柱状結晶35の先端部35Aにおいて除去されるのは、先端側の一部であり、これが除去された後も先端部35Aはテーパ形状を維持する。
【0057】
次いで、気相堆積法によってシンチレータ18の全面にパリレンからなる保護膜19を形成する(FIG.7E)。ここで、柱状結晶35の先端部35Aをテーパ形状とすることによって、柱状結晶間の隙間の間口が広がり、保護膜19を柱状結晶間の隙間の深部まで形成することができる。それにより、柱状結晶35の耐湿性を高めることができる。また、テーパ形状の先端部35Aは、平坦なものに比べて強度の点で若干不利となるが、反射膜40及び保護膜19を柱状結晶間の隙間の深部まで形成することによって、先端部35Aを含めて柱状結晶35を補強し、その強度を高めることができ、それによって、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせる際に柱状結晶35の先端部35Aが損傷することを防止することもできる。なお、反射膜40によって柱状結晶間の隙間は狭まっており、保護膜19は、反射膜40よりも先端側の深さ位置までしか及ばない。換言すれば、反射膜40は、保護膜19よりも柱状結晶35の基端側に及んでいる。それにより、保護膜19が、柱状結晶35の側面に直接に接することはなく、柱状結晶35の光ガイド効果が低下することが防止される。
【0058】
以上によりシンチレータ18を効率よく、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、シンチレータ18の製膜における真空度や支持体温度を制御することで、簡易に種々の仕様のシンチレータを設計通りに製造することができるという利点をも有する。
【0059】
以上、説明したように、柱状結晶35の先端部35Aが先細のテーパ状に形成されて絞られており、先端部35Aの側面が反射膜40によって被覆されているので、柱状結晶35の先端からの蛍光の出射角が大となることが抑制され、柱状結晶35の先端から出射された蛍光が、その柱状結晶35が対向する光電変換素子26とは別の周囲の光電変換素子26に入射する可能性が低減され、画像の鮮鋭度が向上する。
【0060】
なお、上述した放射線画像検出装置1においては、柱状結晶35の先端部35Aのみがテーパ形状に形成されているが、図8に示すように、柱状結晶35の先端から成長方向の略中央までの部分をテーパ形状に形成してもよく(FIG.8A)、また柱状結晶35の全体をテーパ形状に形成してもよい(FIG.8B)。テーパ形状が柱状結晶35の基端側に及ぶ程、柱状結晶間の隙間の間口が広がり、反射膜40や保護膜19を隙間の深部まで形成することができる。但し、柱状結晶35の全体をテーパ形状とすると、発光量が不足することが懸念され、柱状結晶35の先端から成長方向の略中央までの部分をテーパ形状とするのが好ましい。
【0061】
また、上述した放射線画像検出装置1においては、シンチレータ18とセンサパネル3との間に接着層25を介して放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせているが、放射線画像変換パネル2とセンサパネル3とを貼り合わせる方法に特に制限はなく、放射線画像変換パネル2のシンチレータ18とセンサパネル3の光電変換素子26の群とが光学的に結合されればよく、シンチレータ18とセンサパネル3とを直接密着させる方法を採ることもできる。
【0062】
また、上述した放射線画像検出装置1においては、センサパネル3側から放射線が入射されるものとして説明したが、放射線画像変換パネル2側から放射線が入射される構成を採ることもできる。
【0063】
上述の放射線画像検出装置は、放射線画像を高感度、高精細に検出しうるため、低放射線照射量で鮮鋭な画像を検出することを要求される、マンモグラフィなどの医療診断用のX線撮影装置をはじめ、様々な装置に組み込んで使用することができる。例えば、工業用のX線撮影装置として非破壊検査に用いたり、或いは、電磁波以外の粒子線(α線、β線、γ線)の検出装置として用いたりすることができ、その応用範囲は広い。
【0064】
以下、センサパネル3を構成する各要素に用いることのできる材料について説明する。
【0065】
[光電変換素子]
上述した光電変換素子26の光導電層20(図1参照)としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が用いられることが多いが、例えば特開2009−32854号公報に記載された有機光電変換(OPC;Organic photoelectric conversion)材料も用いることができる。このOPC材料により形成された膜(以下、OPC膜という)を光導電層20として使用できる。OPC膜は、有機光電変換材料を含み、蛍光体層から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含むOPC膜であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、蛍光体層による発光以外の電磁波がOPC膜に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線がOPC膜で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0066】
OPC膜を構成する有機光電変換材料は、蛍光体層で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、蛍光体層の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と蛍光体層の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ蛍光体層から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、蛍光体層の放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0067】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、アリーリデン系有機化合物、キナクリドン系有機化合物、及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、蛍光体層の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、OPC膜で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0068】
バイアス電極22及び電荷収集電極24の間に設けられる有機層の少なくとも一部をOPC膜によって構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び層間接触改良部位等の積み重ね若しくは混合により形成することができる。
【0069】
上記有機層は、有機p型化合物又は有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これらに限らず、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いることができる。
【0070】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これらに限らず、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いることができる。
【0071】
p型有機色素又はn型有機色素としては、公知のものを用いることができるが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)等が挙げられる。
【0072】
1対の電極間に、p型半導体層とn型半導体層とを有し、該p型半導体とn型半導体の少なくともいずれかが有機半導体であり、かつ、それらの半導体層の間に、該p型半導体及びn型半導体を含むバルクヘテロ接合構造層を中間層として有する光電変換膜(感光層)を好適に用いることができる。このように、光電変換膜において、バルクへテロ接合構造層を含ませることにより有機層のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。なお、上記バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報において詳細に説明されている。
【0073】
光電変換膜の厚みは、蛍光体層からの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、電荷分離に寄与しない割合を考慮すると、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
上述したOPC膜に関するその他の構成は、例えば、特開2009−32854号公報の記載が参考となる。
【0074】
[スイッチ素子]
スイッチ素子28の活性層としては、例えばアモルファスシリコン等の無機半導体材料が使われることが多いが、例えば特開2009−212389号公報に記載されたように、有機材料を使用することができる。有機TFTはいかなるタイプの構造でもよいが、最も好ましいのは電界効果型トランジスタ(FET)構造である。このFET構造は、絶縁性基板上面の一部にゲート電極を設け、更に該電極を覆い、かつ電極以外の部分で基板と接するように絶縁体層を設けている。更に絶縁体層の上面に半導体活性層を設け、その上面の一部に透明ソース電極と透明ドレイン電極とを隔離して配置している。なお、この構成はトップコンタクト型素子と呼ばれるが、ソース電極とドレイン電極とが半導体活性層の下部にあるボトムコンタクト型素子も好ましく用いることができる。また、キャリアが有機半導体膜の膜厚方向に流れる縦型トランジスタ構造であってもよい。
【0075】
(活性層)
ここでいう有機半導体材料とは、半導体の特性を示す有機材料のことであり、無機材料からなる半導体と同様に、正孔(ホール)をキャリアとして伝導するp型有機半導体材料(あるいは単にp型材料、正孔輸送材料とも言う。)と、電子をキャリアとして伝導するn型有機半導体材料(あるいは単にn型材料、電子輸送材料とも言う。)がある。有機半導体材料は一般にp型材料の方が良好な特性を示すものが多く、また、一般に大気下でのトランジスタ動作安定性もp型トランジスタの方が優れているため、ここでは、p型有機半導体材料について説明する。
【0076】
有機薄膜トランジスタの特性の一つに、有機半導体層中のキャリアの動きやすさを示すキャリア移動度(単に移動度とも言う)μがある。用途によっても異なるが、一般に移動度は高い方がよく、1.0×10-7cm2/Vs以上であることが好ましく、1.0×10-6cm2/Vs以上であることがより好ましく、1.0×10-5cm2/Vs以上であることが更に好ましい。移動度は電界効果トランジスタ(FET)素子を作製したときの特性や飛行時間計測(TOF)法により求めることができる。
【0077】
前記p型有機半導体材料は、低分子材料でも高分子材料でも良いが、好ましくは低分子材料である。低分子材料は、昇華精製や再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの様々な精製法が適用できるため高純度化が容易であること、分子構造が定まっているため秩序の高い結晶構造を取りやすいこと、などの理由から高い特性を示すものが多い。低分子材料の分子量は、好ましくは100以上5000以下、より好ましくは150以上3000以下、更に好ましくは200以上2000以下である。
【0078】
このようなp型有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物又はナフタロシアニン化合物を例示することができ、具体例を以下に示す。なお、Mは金属原子、Buはブチル基、Prはプロピル基、Etはエチル基、Phはフェニル基をそれぞれ表す。
【0079】
【化1】

【0080】
(活性層以外のスイッチ素子の構成要素)
ゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極を構成する材料としては、必要な導電性を有するものであれば特に制限はないが、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、SnO2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明導電性酸化物、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸)などの透明導電性ポリマー、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらの電極材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
【0081】
絶縁層に用いられる材料としては、必要な絶縁効果を有するものであれば特に制限はないが、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナなどの無機材料、ポリエステル(PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)など)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリレート、エポキシ樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ノボラック樹脂、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、などの有機材料が挙げられる。これらの絶縁膜材料は、例えば真空蒸着法、スパッタリング、溶液塗布法等の方法で成膜することができる。
上述した有機TFTに関するその他の構成は、例えば、特開2009−212389号公報の記載が参考となる。
【0082】
また、スイッチ素子28の活性層には、例えば特開2010−186860号公報に記載された非晶質酸化物も使用することができる。ここで、特開2010−186860号に記載された電界効果型トランジスタが有する非晶質酸化物含有の活性層について示す。この活性層は、電子又はホールの移動する電界効果型トランジスタのチャネル層として機能する。
【0083】
活性層は、非晶質酸化物半導体を含んだ構成とされている。この非晶質酸化物半導体は、低温で成膜可能であるために、可撓性のある基板上に好適に形成される。活性層に用いられる非晶質酸化物半導体としては、好ましくはIn、Sn、Zn、又はCdよりなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む非晶質酸化物であり、より好ましくは、In、Sn、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物、更に好ましくは、In、Znよりなる群より選ばれる少なくとも1種を含む非晶質酸化物である。
【0084】
活性層に用いられる非晶質酸化物としては、具体的には、In、ZnO,SnO、CdO,Indium−Zinc−Oxide(IZO)、Indium−Tin−Oxide(ITO)、Gallium−Zinc−Oxide(GZO)、Indium−Gallium−Oxide(IGO)、Indium−Gallium−Zinc−Oxide(IGZO)が挙げられる。
【0085】
活性層の成膜方法としては、酸化物半導体の多結晶焼結体をターゲットとして、気相成膜法を用いるのが好ましい。気相成膜法の中でも、スパッタリング法、パルスレーザー蒸着法(PLD法)が適している。更に、量産性の観点から、スパッタリング法が好ましい。例えば、RFマグネトロンスパッタリング蒸着法により、真空度及び酸素流量を制御して成膜される。
【0086】
成膜された活性層は、周知のX線回折法によりアモルファス膜であることが確認される。活性層の組成比は、RBS(ラザフォード後方散乱)分析法により求められる。
【0087】
また、この活性層の電気伝導度は、好ましくは10−4Scm−1以上10Scm−1未満であり、より好ましくは10−1Scm−1以上10Scm−1未満である。この活性層の電気伝導度の調整方法としては、公知の酸素欠陥による調整方法や、組成比による調整方法、不純物による調整方法、酸化物半導体材料による調整方法が挙げられる。
上述した非晶質酸化物に関するその他の構成は、例えば、特開2010−186860号公報の記載が参考となる。
【0088】
[絶縁性基板]
絶縁性基板12としては、例えば、ガラス、石英、プラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。また、フレキシブルでかつ低熱膨張、高強度といった、既存のガラスやプラスチックでは得られない特性を有するアラミド、バイオナノファイバーなどを用いて形成されたフレキシブル基板も好適に使用しうる。
【0089】
(アラミド)
アラミド材料は、ガラス転移温度315℃という高い耐熱性、ヤング率が10GPaという高い剛性、熱膨張率が−3〜5ppm/℃という高い寸法安定性を有する。このため、アラミド製のフィルムを用いると、一般的な樹脂フィルムを用いる場合と比べて、半導体層の高品質の成膜が容易に行える。また、アラミド材料の高耐熱性により、電極材料を高温硬化させて低抵抗化できる。更に、ハンダのリフロー工程を含むICの自動実装にも対応できる。また更に、ITO(indium tin oxide)やガス・バリア膜、ガラス基板と熱膨張係数が近いために、製造後の反りが少ない。そして、割れにくい。ここで、ハロゲンを含まないハロゲンフリー(JPCA−ES01−2003の規定に適合)なアラミド材料を用いることが環境負荷低減の点で好ましい。アラミドフィルムは、ガラス基板やPET基板と積層されてもよいし、デバイスの筐体に貼り付けられてもよい。
【0090】
アラミドの分子間の凝集力(水素結合力)の高さによる溶媒への低溶解性を分子設計によって解決することにより、無色透明で薄いフィルムへの成形が容易とされたアラミド材料についても、好適に用いることができる。モノマーユニットの秩序性、及び芳香環上の置換基種・位置を制御する分子設計により、アラミド材料の高剛性や寸法安定性に繋がる直線性の高い棒状の分子構造を維持しつつ、溶解性が良い成形の容易さが得られる。この分子設計により、ハロゲンフリーをも実現できる。
【0091】
また、フィルムの面内方向の特性が最適化されたアラミド材料についても、好適に用いることができる。成型中に逐次変化するアラミドフィルムの強度に応じて、溶液キャスト、縦延伸、横延伸の工程ごとに張力条件を制御することにより、直線性の高い棒状分子構造であって物性に異方性が生じやすいアラミドフィルムの面内方向の特性をバランスできる。
【0092】
具体的に、溶液キャスト工程では、溶媒の乾燥速度の制御による面内厚み方向の物性の等方化、溶媒を含んだ状態のフィルムの強度とキャスト・ドラムからの剥離強度の最適化、を図る。縦延伸工程では、延伸中に逐次変化するフィルムの強度、溶媒の残留量に応じた延伸条件を精密に制御する。横延伸工程では、加熱によって変化するフィルム強度の変化に応じた横延伸の条件の制御、フィルムの残留応力を緩和するための横延伸の条件の制御を図る。このようなアラミド材料の使用により、成型後のアラミドフィルムがカールしてしまう問題を解決できる。
【0093】
上記の成形容易さに対する工夫、及びフィルム面内方向の特性のバランスに対する工夫のいずれにおいても、アラミドならではの直線性の高い棒状の分子構造が維持されているので、熱膨張係数を低く維持できる。製膜時の延伸条件の変更などにより、熱膨張係数を更に低減することも可能である。
【0094】
(バイオナノファイバー)
ナノファイバーは、光の波長に対して十分に小さなコンポーネントは光散乱を生じないことから、透明でフレキシブルな樹脂材料の補強として用いることができる。そして、ナノファイバーの中でも、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと、可視光波長に対して約1/10のサイズでかつ、高強度、高弾性、低熱膨である特徴を有しており、このバクテリアセルロースと透明樹脂との複合材料(バイオナノファイバーということがある)を好適に用いることができる。
【0095】
バクテリアセルロースシートにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を約60〜70%と高い比率で含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示す透明バイオナノファイバーが得られる。このバイオナノファイバーにより、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(約3〜7ppm)、鋼鉄並の強度(約460MPa)、及び高弾性(約30GPa)が得られる。
上述したバイオナノファイバーに関する構成は、例えば、特開2008−34556号公報の記載が参考となる。
【0096】
[平坦化層及び接着層]
シンチレータ18と光電変換素子26とを光学的に結合させる樹脂層としての平坦化層23及び接着層25は、シンチレータ18の蛍光を減衰させることなく光電変換素子26に到達させ得るものであれば特に制限はない。平坦化層23としては、ポリイミドやパリレンなどの樹脂を用いることができ、製膜性が良好なポリイミドを用いることが好ましい。接着層25としては、例えば、熱可塑性樹脂、UV硬化接着剤、加熱硬化型接着剤、室温硬化型接着剤、両面接着シート、等が挙げられるが、画像の鮮鋭度を低下させないという観点から、素子サイズに対して十分に薄い接着層を形成し得る低粘度エポキシ樹脂製の接着剤を用いることが好ましい。
【0097】
以上、説明したように、本明細書には、下記(1)から(6)の放射線画像変換パネルが開示されている。
【0098】
(1) 放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有した蛍光体を備える放射線画像変換パネルであって、前記蛍光体は、前記蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を含み、前記各柱状結晶は、少なくとも先端部がテーパ状に形成されており、その側面のうち少なくとも前記先端部における側面が反射膜で被覆されている放射線画像変換パネル。
(2) 上記(1)の放射線画像変換パネルであって、前記蛍光体を被覆する保護膜を更に備え、前記保護膜は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでいる放射線画像変換パネル。
(3) 上記(2)の放射線画像変換パネルであって、前記反射膜は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでいる保護膜よりも前記柱状結晶の基端側に及んでいる放射線画像変換パネル。
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の放射線画像変換パネルであって、前記反射膜が、金属反射膜である放射線画像変換パネル。
(5) 上記(4)の放射線画像変換パネルであって、前記金属反射膜は、アルミニウム又はアルミニウム合金の膜である放射線画像変換パネル。
(6) 上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の放射線画像変換パネルであって、前記各柱状結晶の先端の角度が90度未満である放射線画像変換パネル。
【0099】
また、本明細書には、下記(7)から(10)の放射線画像検出装置が開示されている。
【0100】
(7) 上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の放射線画像変換パネルと、前記放射線画像変換パネルから発せられる蛍光を検出するセンサパネルと、を備え、前記各柱状結晶の先端側にあたる前記蛍光体の表面を前記センサパネルに対向させて前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている放射線画像検出装置。
(8) 上記(7)の放射線画像検出装置であって、前記各柱状結晶の先端側にあたる前記蛍光体の表面と前記センサパネルとの間に接着層を介在させて、前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている放射線画像検出装置。
(9) 上記(7)又は(8)の放射線画像検出装置であって、前記センサパネル側に放射線入射面を有する放射線画像検出装置。
(10) 上記(7)又は(8)の放射線画像検出装置であって、前記放射線画像変換パネル側に放射線入射面を有する放射線画像検出装置。
【符号の説明】
【0101】
1 放射線画像検出装置
2 放射線画像変換パネル
3 センサパネル
11 支持体
16 TFT基板
18 シンチレータ
19 保護膜
20 光導電層
22 電極
23 平坦化層
24 電極
25 接着層
26 光電変換素子
28 スイッチ素子
30 ゲート線
32 信号線
34 柱状部
35 柱状結晶
35A 先端部
36 非柱状部
38 接続端子
40 反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線露光によって蛍光を発する蛍光物質を含有した蛍光体を備える放射線画像変換パネルであって、
前記蛍光体は、前記蛍光物質の結晶が柱状に成長してなる柱状結晶の群を含み、
前記各柱状結晶は、少なくとも先端部がテーパ状に形成されており、その側面のうち少なくとも前記先端部における側面が反射膜で被覆されている放射線画像変換パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記蛍光体を被覆する保護膜を更に備え、
前記保護膜は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでいる放射線画像変換パネル。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記反射膜は、前記柱状結晶の群の先端部間に入り込んでいる保護膜よりも前記柱状結晶の基端側に及んでいる放射線画像変換パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記反射膜が、金属反射膜である放射線画像変換パネル。
【請求項5】
請求項4に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記金属反射膜は、アルミニウム又はアルミニウム合金の膜である放射線画像変換パネル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルであって、
前記各柱状結晶の先端の角度が90度未満である放射線画像変換パネル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルと、
前記放射線画像変換パネルから発せられる蛍光を検出するセンサパネルと、
を備え、
前記各柱状結晶の先端側にあたる前記蛍光体の表面を前記センサパネルに対向させて前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている放射線画像検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の放射線画像検出装置であって、
前記各柱状結晶の先端側にあたる前記蛍光体の表面と前記センサパネルとの間に接着層を介在させて、前記放射線画像変換パネルと前記センサパネルとが貼り合わされている放射線画像検出装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の放射線画像検出装置であって、
前記センサパネル側に放射線入射面を有する放射線画像検出装置。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の放射線画像検出装置であって、
前記放射線画像変換パネル側に放射線入射面を有する放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159305(P2012−159305A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17307(P2011−17307)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】