説明

放射線画像消去装置、

【課題】装置の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる。
【解決手段】放射線画像消去装置は、放射線画像が蓄積記録された蓄積性蛍光体シートに、紫外線領域の波長成分を含む第1の消去光を照射する第1の光源と、前記蓄積性蛍光体シートに対して前記第1の光源と同一の高さに配置され、前記第1の光源により前記第1の消去光が照射された前記蓄積性蛍光体シートに、前記第1の消去光の波長成分より長波長の波長成分を含む第2の消去光を照射する第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源の向き又は位置を切り替える駆動手段と、前記第1の消去光及び前記第2の消去光が、この順序で前記蓄積性蛍光体シートに照射されるように、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像消去装置に係り、特に、蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を消去する放射線画像消去装置、放射線画像消去プログラム、及び放射線画像読取消去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の蛍光体に放射線(X線、α線、β線、γ線、紫外線、電子線等)を照射すると、この放射線のエネルギーの一部がその蛍光体中に蓄積されて、その後その蛍光体に可視光等の励起光を照射すると、蓄積されたエネルギーに応じて蛍光体が輝尽発光を示す。
【0003】
このような性質を示す蛍光体は蓄積性蛍光体あるいは輝尽性蛍光体と呼ばれる。これまでに蓄積性蛍光体としては各種のものが知られているが、その代表的なものとしてユーロピウムなどの希土類元素により付活されているハロゲン化バリウム蛍光体、セリウムなどの希土類元素により付活されているオキシハライド蛍光体などが知られている。また、それらの蛍光体に各種の添加物が導入された蓄積性蛍光体も知られている。
【0004】
この蓄積性蛍光体を、バインダを用い、あるいは用いることなくシート状に成形して蓄積性蛍光体シートとし、この蓄積性蛍光体シートを用いて人体等に関する放射線画像情報を記録し、これを励起光で走査して輝尽発光させ、この輝尽発光を光電的に読み取って画像信号を得、次いでこの画像信号を処理して診断適正の良い画像を得る方法が、放射線画像記録再生方法として提案されている(例えば、特許文献1等)。この放射線画像記録再生方法においては、励起光と輝尽発光光の波長域を分離し、きわめて微弱な輝尽発光光を効率良く検出するために、600〜700nmの波長域の励起光により300〜500nmの輝尽発光光を検出するのが好ましく、このため、蓄積性蛍光体としても600〜700nmの光で励起すると300〜500nmの輝尽発光光を発するものが好ましく用いられるとされている。なお、上記の蓄積性蛍光体シートには、一般的なシート状のものの他、ベルト状に成形されたもの、あるいはドラム状に成形されたものなど多様な形態があるが、本明細書では、これらを総称して「シート」と言う。
【0005】
上記の蓄積性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像は消去することができるため、蓄積性蛍光体シートは繰り返して使用できるとの利点がある。従って、放射線画像記録再生方法においては、蓄積性蛍光体シートは一般に繰り返して使用される。ただし、蓄積性蛍光体シートから一旦蓄積記録された放射線画像を読み出す時に、充分な強度の励起光を照射すれば、記録されていた放射線画像情報に対応する蓄積放射線エネルギーは外部に放出され、消滅するはずであるが、実際には読み出し時に照射する励起光のみでは完全な消去はできない。従って、蓄積性蛍光体シートを繰り返し使用するときは、前回撮影の放射線画像が残って次回に形成される放射線画像のノイズになるという問題がある。
【0006】
また、蓄積性蛍光体中には RaやK等の放射線同位元素が微量混入しているため、これらの放射性同位元素から放射される放射線によって、蓄積性蛍光体シートは放置しておいても放射線エネルギーを蓄積し、これもノイズの原因になる。さらに宇宙線や環境中の放射性同位体からの放射線等の環境放射線によって放射線エネルギーが蓄積性蛍光体シートに蓄積される。これらの蓄積性蛍光体シートの放置の間に蓄積される放射線エネルギー(これを「カブリ」という)もまた次回撮影の放射線画像像に対してノイズとなるものであるから、このカブリも次の撮影前には消去しなければならない。
【0007】
上記のような蓄積性蛍光体シートを繰り返し循環使用する放射線画像記録再生方法において、蓄積性蛍光体シートに残留している前回撮影の放射線画像に起因するノイズ、およびカブリに起因するノイズの発生を防止するために、蓄積性蛍光体シートに新たに放射線画像情報を記録する前に、蓄積性蛍光体シートに、蓄積性蛍光体の励起光波長領域の光を含む波長の光を照射して、残留している放射線エネルギーを充分に放出せしめ、残留放射線画像を消去する操作を行なうことは既に知られている。
【0008】
上記の消去方法としては、可視光乃至赤外線を放射するタングステンランプ、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の比較的長い波長の光を発する光源を使ったもの、蛍光灯、レーザ光源、ナトリウムランプ、ネオンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等の400〜600nm程度の比較的短い波長の光を使う方法、一回消去をした蓄積性蛍光体シートに、一回目の消去に比して、その1/5〜3/10000の照射量で二回目の消去を、蓄積性蛍光体シートの再使用直前に行なう方法等が知られている。そして、特に可視光領域での消去が効率がよいとされている。
しかしながら、全くUV(紫外)領域の波長を含まない消去光源で消去を行うと、可視光では消えにくいレベルの比較的深いトラップ電子による残留画像を十分に消去することができない。一方、UV領域の波長を多く含む消去光で消去を行うと、前述の深いトラップ電子による残留画像は消去できるものの、UV領域の波長の消去光自身で新たなトラップ電子を形成してしまい、完全な残留画像の消去を行うことができない。
【0009】
したがって、通常のトラップおよび深いトラップによる画像を同時に消去し、効率のよい完全な消去を行うことは非常に難しく、次に高感度撮影をしようとしているときなど残留画像の影響が出てしまうため、消去光中の短波長成分の微妙なコントロールを必要としているのが実状である。そこで、UV領域の波長成分を含む消去光で消去を行った後、UV領域より長い波長の消去光で消去することにより、通常のトラップによる画像の他に深いトラップによる残留画像まで効率よく消去することのできる放射線画像消去方法が提案されている(例えば特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭55−12429号公報
【特許文献1】特開平5−119412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献2記載の発明では、短波長成分をカットするフィルタを用いて長波長成分の消去を照射する構成としているため、フィルタを透過させることによる光のロスによって、消去効率が悪化する場合がある、という問題がある。
【0012】
また、蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を確実に消去するため、一度消去した後、蓄積性蛍光体シートの搬送方向を逆転させて、再度消去したい場合がある。
【0013】
この場合、例えば図14(A)に示すように、短波長光源100A、100Bを長波長光源102の両側に配置した構成として、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が図中矢印A方向の場合には、短波長光源100B及び長波長光源102を点灯させ、同図(B)に示すように、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が矢印A方向と反対の矢印B方向の場合には、短波長光源100A及び長波長光源102を点灯させる。
【0014】
しかしながら、この場合、短波長光源を2個設ける必要があるが、そのうち1個の短波長光源は使用されないため、光の利用効率が悪い、という問題がある。
【0015】
また、例えば図15(A)に示すように、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が図中矢印A方向の場合には、短波長光源100を図中右側に、長波長光源102を左側に配置する必要があり、同図(B)に示すように、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が矢印A方向と反対の矢印B方向の場合には、短波長光源100を図中左側に、長波長光源102を右側に配置する必要がある。
【0016】
しかしながら、この場合、短波長光源100及び長波長光源102を蓄積性蛍光体シートPに対して高さ方向に2段に配置して入れ替える必要があるため、装置の厚みが増してしまう、という問題がある。
【0017】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、装置の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる放射線画像消去装置、放射線画像消去プログラム、及び放射線画像読取消去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明の放射線画像読取消去装置は、放射線画像が蓄積記録された蓄積性蛍光体シートに、紫外線領域の波長成分を含む第1の消去光を照射する第1の光源と、前記蓄積性蛍光体シートに対して前記第1の光源と同一の高さに配置され、前記第1の光源により前記第1の消去光が照射された前記蓄積性蛍光体シートに、前記第1の消去光の波長成分より長波長の波長成分を含む第2の消去光を照射する第2の光源と、前記第1の光源及び前記第2の光源の向き又は位置を切り替える駆動手段と、前記第1の消去光及び前記第2の消去光が、この順序で前記蓄積性蛍光体シートに照射されるように、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、を備える。
【0019】
この発明によれば、短波長の第1の消去光及び長波長の第2の消去光が、この順序で蓄積性蛍光体シートに照射されるように、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて駆動手段を制御する。また、第1の光源及び第2の光源が同一の高さに配置されるので、装置の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる。
【0020】
なお、請求項2に記載したように、前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向と交差する交差方向に長い光源であると共に、前記駆動手段は、前記交差方向を回転軸として前記第1の光源及び前記第2の光源を回転駆動する回転駆動手段であり、前記制御手段は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の前記搬送方向に沿った方向の照射方向が切り替わるように、前記回転駆動手段を制御するようにしてもよい。
【0021】
また、請求項3に記載したように、前記第1の光源及び前記第2の光源を、各々複数備えた構成としてもよい。
【0022】
また、請求項4に記載したように、前記制御手段は、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の光量比に応じて、複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源の回転角度が各々切り替わるように、前記回転駆動手段を制御するようにしてもよい。
【0023】
また、請求項5に記載したように、複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源が前記搬送方向に沿った方向に交互に配置された構成としてもよい。
【0024】
また、請求項6に記載したように、前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に沿った方向に長い光源であると共に、前記駆動手段は、前記第1の光源及び前記第2の光源の少なくとも一方を前記搬送方向に移動させる移動手段であり、前記制御手段は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて、前記第1の光源及び前記第2の光源の前記搬送方向の位置が切り替わるように、前記移動手段を制御するようにしてもよい。
【0025】
また、請求項7に記載したように、前記第1の光源及び前記第2の光源の前記搬送方向に沿った方向の長さが、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の光量比に応じた長さである構成としてもよい。
【0026】
また、請求項8に記載したように、前記第1の光源及び前記第2の光源を、各々複数備えた構成としてもよい。
【0027】
また、請求項9に記載したように、複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源が前記搬送方向と交差する交差方向に交互に配置された構成としてもよい。
【0028】
請求項10記載の発明の放射線画像消去プログラムは、コンピュータを、前記請求項1〜9の何れか1項に記載の放射線画像消去装置の前記制御手段として機能させる。
【0029】
請求項11記載の発明の放射線画像読取消去装置は、挿入口から挿入された前記蓄積性蛍光体シートを搬送する搬送手段と、前記蓄積性蛍光体シートから放射線画像を読み取る読取手段と、前記読取手段により前記放射線画像が読み取られた後の前記蓄積性蛍光体シートに残った放射線画像を消去する前記請求項1〜9の何れか1項に記載の放射線画像消去装置と、前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、を備える。
【0030】
なお、請求項12に記載したように、挿入口から挿入された前記蓄積性蛍光体シートの長さを検出する検出手段と、予め定めた長さ以下の前記蓄積性蛍光体シートを退避領域に退避させる退避手段と、を備え、前記搬送制御手段は、前記検出手段により検出された前記蓄積性蛍光体シートの長さが前記予め定めた長さ以下の場合には、前記放射線画像消去装置により放射線画像が消去された前記蓄積性蛍光体シートを前記退避領域に退避させた後、前記搬送方向を反転させて前記蓄積性蛍光体シートを前記挿入口から排出させ、前記蓄積性蛍光体シートが前記予め定めた長さを越える場合には、前記蓄積性蛍光体シートを前記挿入口と反対側に設けられた排出口から排出させるように、前記搬送手段を制御するようにしてもよい。
【0031】
また、請求項13に記載したように、前記放射線画像消去装置は、前記予め定めた長さ以下の前記蓄積性蛍光体シートが前記退避領域から前記挿入口へ戻る際に、前記蓄積性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を再度消去するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、装置の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態に係る放射線画像読取消去装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る放射線画像読取消去装置の電気系の概略ブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る消去器の斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る消去器の第1の光源及び第2の光源の向きについて説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係る放射線画像読取消去装置のCPUで実行される処理のフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る放射線画像読取消去装置のCPUで実行される処理のフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係る消去器の斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る消去器の側面図である。
【図9】第2実施形態に係る消去器の平面図である。
【図10】第2実施形態に係る消去器の斜視図である。
【図11】第2実施形態に係る放射線画像読取消去装置の電気系の概略ブロック図である。
【図12】第2実施形態に係る放射線画像読取消去装置の変形例に係る消去器の側面図である。
【図13】第2実施形態に係る放射線画像読取消去装置の変形例に係る消去器の斜視図である。
【図14】従来例に係る放射線画像読取消去装置の変形例に係る消去器の側面図である。
【図15】従来例に係る放射線画像読取消去装置の変形例に係る消去器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0035】
(第1実施形態)
【0036】
図1には、本実施形態に係る放射線画像読取消去装置10の概略構成を示した。同図に示すように、放射線画像読取消去装置10は、挿入口12から挿入された、放射線画像が記録された蓄積性蛍光体シートPを励起光L1によって走査する走査光学系14と、励起光L1が照射されることで蓄積性蛍光体シートPから発光された輝尽発光光L2を光電的に読み取り、画像データとして出力する画像読取部16と、画像が読み取られた蓄積性蛍光体シートPに残った放射線画像を消去する消去器18と、蓄積性蛍光体シートPを搬送する搬送ローラ20と、蓄積性蛍光体シートPを検出する第1の検出センサ22及び第2の検出センサ24と、を含んで構成されている。
【0037】
また、放射線画像読取消去装置10は、消去器18によって放射線画像が消去された蓄積性蛍光体シートPを一旦退避させる退避領域26が設けられており、搬送ローラ20の回転を逆転させることで、退避領域26に一旦退避された蓄積性蛍光体シートPを、矢印A方向と反対の矢印B方向に搬送させ、消去器18により蓄積性蛍光体シートPに未だ残存する放射線画像を再度消去することが可能な構成となっている。
【0038】
蓄積性蛍光体シートPは、放射線(X線、α線、β線、γ線、紫外線、電子線等)を照射すると、この放射線のエネルギーの一部が蓄積されて、その後例えば400〜900nmの波長域の励起光を照射すると、蓄積されたエネルギーに応じて例えば300〜500nmの波長で輝尽発光する蓄積性蛍光体をシート状としたものである。蓄積性蛍光体としては、例えばユーロピウムなどの希土類元素により付活されているハロゲン化バリウム蛍光体、セリウムなどの希土類元素により付活されているオキシハライド蛍光体などが用いられる。このような蓄積性蛍光体シートPを用いて人体等に関する放射線画像を記録し、これを放射線画像読取消去装置10に挿入して放射線画像を読み取る。蓄積性蛍光体シートPに残存した放射線画像は、消去器18によって消去されるため、蓄積性蛍光体シートPは再利用が可能となる。
【0039】
図2には、放射線画像読取消去装置10の電気系の概略ブロック図を示した。同図に示すように、放射線画像読取消去装置10は、コンピュータ30を含んで構成されている。
【0040】
コンピュータ30は、CPU(Central Processing Unit)30A、ROM(Read Only Memory)30B、RAM(Random Access Memory)30C、不揮発性メモリ30D、及び入出力インターフェース(I/O)30Eがバス30Fを介して各々接続された構成となっている。不揮発性メモリ30Dには、後述する制御プログラムが記憶されている。
【0041】
I/O30Eには、操作表示部32、走査光学系14、画像読取部16、搬送ローラ20、二次記憶部34、第1の検出センサ22、第2の検出センサ24、及び消去器18が接続されている。
【0042】
操作表示部32は、例えば動作モードを指示したり、各種パラメータを設定したりするための操作画面等の各種画面を表示するためのタッチパネル等を含んで構成される。なお、動作モードとしては、例えば画像読取消去モードや消去モード等がある。画像読取消去モードは、放射線画像を読み取った後、消去を1回行うモードであり、消去モードは、消去を2回行うモードである。消去モードでは、蓄積性蛍光体シートPに記録された放射線画像を消去器18で消去した後、退避領域26に退避させ、搬送方向を反転させて再度消去器18で消去する。なお、動作モードの種類はこれらに限られるものではない。
【0043】
走査光学系14は、一例として400〜900nmの波長域の励起光L1を照射する図示しない励起光光源や、励起光光源から照射された励起光L1を蓄積性蛍光体シートP上に走査させる図示しない走査装置等を含んで構成されている。
【0044】
画像読取部16は、励起光L1が照射されることにより蓄積性蛍光体シートPから発光された輝尽発光光L2を光電的に読み取るCCD等の撮像素子を含んで構成される。
【0045】
搬送ローラ20は、正回転することにより蓄積性蛍光体シートPを図1において矢印A方向に搬送し、逆回転することにより蓄積性蛍光体シートPを図1において矢印A方向と反対の矢印B方向に搬送する。
【0046】
二次記憶部34は、例えばハードディスクやメモリーカード等で構成され、画像読取部16で読み取った放射線画像の画像データを記憶する。
【0047】
第1の検出センサ22は、図1に示すように、蓄積性蛍光体シートPの挿入口12付近に配置される。第1の検出センサ22は、発光部22A及び受光部22Bから構成され、蓄積性蛍光体シートPの搬送路を挟んで配置される。そして、発光部22Aから発光された光が受光部22Bで検出された状態から未検出の状態となった場合に、蓄積性蛍光体シートPが発光部と受光部との間を通過したものとして検出することができる。
【0048】
第2の検出センサ24は、図1に示すように、消去器18の矢印A方向下流側付近に配置される。なお、第2の検出センサ24も第1の検出センサ22と同様に、発光部24A及び受光部24Bから構成され、蓄積性蛍光体シートPの搬送路を挟んで配置される。
【0049】
また、蓄積性蛍光体シートPの搬送路上における第1の検出センサ22と第2の検出センサ24との距離は、予め定めた長さXとなっている。そして、退避領域26は、長さX以下の蓄積性蛍光体シートPを退避可能となっている。
【0050】
このため、本実施形態では、第2の検出センサ24で蓄積性蛍光体シートPが検出された際に、第1の検出センサ22でも蓄積性蛍光体シートPが検出されている場合には、蓄積性蛍光体シートPが長さXを越えており、退避領域26に退避できないため、排出口38から蓄積性蛍光体シートPが排出されるように制御する。一方、第2の検出センサ24で蓄積性蛍光体シートPが検出された際に、第1の検出センサ22で蓄積性蛍光体シートPが検出されていない場合には、蓄積性蛍光体シートPは長さX以下であり、退避領域26に退避可能であるので、蓄積性蛍光体シートPを一旦退避領域26に退避させてから、搬送ローラ20を逆回転させて、矢印A方向と反対の矢印B方向に蓄積性蛍光体シートPを搬送し、挿入口12から排出されるように制御する。
【0051】
消去器18は、複数の第1の光源40A、複数の第1の光源40Aを各々駆動する複数の駆動モータ42A、複数の第2の光源40B、及び複数の第2の光源40Bを各々駆動する複数の駆動モータ42Bを含んで構成されている。
【0052】
図3には、消去器18の斜視図を示した。同図に示すように、第1の光源40A及び第2の光源40Bは、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向である矢印A方向と交差する方向(本実施形態では直交する方向)を長手方向とする短冊状の光源である。また、第1の光源40A及び第2の光源40Bは、これらの光源から発光された光が、蓄積性蛍光体シートPの幅方向(矢印A方向と直交する方向)の全域に亘って照射されるような高さ(一例として3〜4cm)に配置されている。また、第1の光源40A及び第2の光源40Bは、蓄積性蛍光体シートPに対して同一の高さに交互に配置されている。なお、ここでいう同一の高さとは、完全に同一の高さに限定されるものではなく、多少高さがずれている場合も含むものである。また、第1の光源40A及び第2の光源40Bと蓄積性蛍光体シートPとの間に光拡散板を設けた構成としてもよい。
【0053】
第1の光源40Aは、短波長成分を含む範囲、例えば、少なくとも400nm〜450nmの範囲の波長成分を含む第1の消去光を蓄積性蛍光体シートPに対して照射する。なお、第1の光源40Aから照射される光は、少なくとも短波長の光を含むものであればよく、短波長の光に加えて、当該短波長を除く長波長の光を含むものでもよい。第1の光源40Aとしては、例えば、LED、各種の蛍光ランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線ランプ等を用いることができる。
【0054】
第2の光源40Bは、600nm近傍の波長成分を含む範囲、例えば500nm〜700nmの範囲の波長成分を含む光(第1の消去光の波長成分を除く)であって、第1の消去光より長い波長成分を含む第2の消去光を蓄積性蛍光体シートPに対して照射する。第2の光源40Bとしては、第1の光源40Aとして使用可能な上述の光源のうち紫外線ランプを除く光源を使用可能である。
【0055】
また、図3に示すように、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bは、矢印A方向に沿った方向に交互に配置されている。そして、各々の光源は、第1の駆動モータ42A、第2の駆動モータ42Bによって各々独立に回転駆動される。
【0056】
そして、図4(A)に示すように、蓄積性蛍光体シートPが矢印A方向に搬送される場合には、複数の第1の光源40Aからの第1の消去光44Aが、矢印A方向上流側に照射され、複数の第2の光源40Bからの第2の消去光44Bが、矢印A方向下流側に照射されるように、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの回転角度が各々制御される。
【0057】
また、図4(B)に示すように、蓄積性蛍光体シートPが矢印A方向と反対の矢印B方向に搬送される場合には、複数の第1の光源40Aからの第1の消去光44Aが、矢印B方向上流側に照射され、複数の第2の光源40Bからの第2の消去光44Bが、矢印B方向下流側に照射されるように、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの回転角度が各々制御される。
【0058】
これにより、蓄積性蛍光体シートPには、まず短波長の第1の消去光44Aが照射されることにより深いトラップ電子による残留画像が消去され、その後、これより長波長の第2の消去光44Bが照射されることにより、第1の消去光44Aの照射によって新たに形成されたトラップ電子による残留画像を消去することができる。
【0059】
なお、第1の消去光44Aの照射領域aの面積に対する第2の消去光44Bの照射領域bの面積の面積比b/a、すなわち、第1の消去光44Aの光量aに対する第2の消去光44Bの光量bの光量比b/aは、例えば、10/90〜80/20、さらに好ましくは15/85〜60/40、特に好ましくは20/80〜50/50である。
【0060】
また、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bは、必ずしも交互に配置する必要はない。この場合、例えば、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの各々の数を光量比b/aに応じた数とし、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bを光量比b/aに応じて、例えば2個の第1の光源40A及び1個の第2の光源40Bを1組として、この組が交互に配置される構成としてもよい。
【0061】
なお、第1の光源40A及び第2の光源40Bから照射される光が適度な指向性を持つことが好ましい。具体的には、指向性が低すぎて光が拡散して波長が混ざりあうことがなく、逆に指向性が高すぎて照度ムラが大きくなることがない程度の指向性を有することが好ましい。従って、例えば、第1の光源40A及び第2の光源40Bに指向性が低いランプを用いた場合には、蓄積性蛍光体シートPに照射される光が適度な指向性を持つように、レンズ等を用いて指向性を高めるようにしてもよい。
【0062】
次に、本実施形態の作用として、コンピュータ30のCPU30Aで実行される処理について、図5、6に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図5、6に示す処理は、CPU30Aが不揮発性メモリ30Dに記憶された制御プログラムを読み込むことにより実行される。
【0063】
図5は、ユーザーにより画像読取消去モードが選択された場合に実行される処理であり、図6は、ユーザーにより消去モードが選択された場合に実行される処理である。まず、消去モードの処理について説明する。
【0064】
ユーザーは、蓄積性蛍光体シートPに蓄積記録された放射線画像を読み取ると共に消去する場合、蓄積性蛍光体シートPを挿入口12に挿入する。
【0065】
そして、図5に示すように、ステップ100では、第1の検出センサ22により蓄積性蛍光体シートPが検出されたか否かを判断し、蓄積性蛍光体シートPが第1の検出センサ22により検出された場合には、ステップ102へ移行し、検出されていない場合には、検出されるまで待機する。
【0066】
ステップ102では、挿入された蓄積性蛍光体シートPが矢印A方向に搬送されるように、搬送ローラ20を駆動する。
【0067】
ステップ104では、搬送された蓄積性蛍光体シートPに対して、励起光L1が照射されるように、走査光学系14を駆動する。これにより、矢印A方向に搬送されながら蓄積性蛍光体シートPに励起光L1が照射され、蓄積性蛍光体シートPが輝尽発光する。
【0068】
ステップ106では、蓄積性蛍光体シートPから発光された輝尽発光光L2を検出して光電変換することにより画像を読み取るよう画像読取部16を制御する。これにより、画像読取部16は、蓄積性蛍光体シートPから発光された輝尽発光光L2を順次光電変換して画像データを生成する。生成された画像データは、二次記憶部34に記憶される。
【0069】
蓄積性蛍光体シートPから放射線画像を読み出す際に充分な強度の励起光L1を照射すれば、記録されていた放射線画像に対応する蓄積放射線エネルギーは外部に放出され、消滅するはずであるが、実際には読み出し時に照射する励起光L1のみでは完全な消去はできない。
【0070】
このため、ステップ108では、消去器18によって蓄積性蛍光体シートPに残存する放射線画像が消去されるように、消去器18を制御する。具体的には、図4(A)に示すように、複数の第1の光源40A及び複数の第1の光源40Aの矢印A方向における向きが、第1の消去光44Aの光量aに対する第2の消去光44Bの光量bの光量比b/aに対応した角度となるように、複数の第1の駆動モータ42A及び複数の第2の駆動モータ42Bを各々回転駆動する。これにより、蓄積性蛍光体シートPが矢印A方向に搬送されながら、短波長の第1の消去光44A及び長波長の第2の消去光44Bの順に、かつ光量比b/aで照射され、蓄積性蛍光体シートPに蓄積記録された放射線画像が消去される。
【0071】
ステップ110では、第1の検出センサ22及び第2の検出センサ24の両方で蓄積性蛍光体シートPが検出されているか否か、すなわち、蓄積性蛍光体シートPが長さXを越える長さであるか否かを判断する。そして、蓄積性蛍光体シートPが長さX以下の長さである場合には、ステップ112へ移行し、蓄積性蛍光体シートPが長さXを越える長さである場合には、ステップ118へ移行する。
【0072】
なお、本実施形態では、第1の検出センサ22及び第2の検出センサ24の両方で蓄積性蛍光体シートPが検出されている場合に、蓄積性蛍光体シートPが長さXを越える長さであると判断する場合について説明したが、第1の検出センサ22により蓄積性蛍光体シートPを検出した時から蓄積性蛍光体シートPが未検出となるまでの経過時間と蓄積性蛍光体シートPの搬送速度とに基づいて蓄積性蛍光体シートPの長さを算出し、これが長さXを越える長さであるか否かを判断するようにしてもよい。
【0073】
ステップ112では、蓄積性蛍光体シートPを退避領域26へ退避させるように、搬送経路を切り替える。
【0074】
ステップ114では、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が反転するように、すなわち蓄積性蛍光体シートPが矢印B方向へ搬送されるように、搬送ローラ20の回転を逆転させる。
【0075】
ステップ116では、蓄積性蛍光体シートPを矢印B方向へ搬送して挿入口12から排出させた後、搬送ローラ20の駆動を停止することにより搬送を停止させる。なお、挿入口12から蓄積性蛍光体シートPが排出されたか否かは、例えば第1の検出センサ22で蓄積性蛍光体シートPが検出された後、未検出となったか否かにより検出できる。
【0076】
一方、ステップ110で蓄積性蛍光体シートPが長さXを越える長さであると判断された場合には、ステップ118において、蓄積性蛍光体シートPをそのまま矢印A方向に搬送して排出口38から排出させた後、搬送ローラ20の駆動を停止することにより搬送を停止させる。なお、排出口38から蓄積性蛍光体シートPが排出されたか否かは、例えば第2の検出センサ24で蓄積性蛍光体シートPが検出された後、未検出となったか否かにより検出できる。
【0077】
次に、ユーザーにより消去モードが選択された場合の動作について説明する。なお、本実施形態においては、消去モードでは、蓄積性蛍光体シートPに蓄積記録された放射線画像を消去した後一旦退避領域26へ退避させるため、長さX以下の蓄積性蛍光体シートPが処理対象である。
【0078】
ユーザーは、長さX以下の蓄積性蛍光体シートPに蓄積記録された放射線画像を消去する場合、蓄積性蛍光体シートPを挿入口12に挿入する。
【0079】
そして、図6に示すように、ステップ200では、第1の検出センサ22により蓄積性蛍光体シートPが検出されたか否かを判断し、蓄積性蛍光体シートPが第1の検出センサ22により検出された場合には、ステップ202へ移行し、検出されていない場合には、検出されるまで待機する。
【0080】
ステップ202では、図5のステップ102の処理と同様に、挿入された蓄積性蛍光体シートPが矢印A方向に搬送されるように、搬送ローラ20を駆動する。
【0081】
ステップ204では、図5のステップ108の処理と同様に、消去器18によって蓄積性蛍光体シートPに残存する放射線画像が消去されるように、消去器18を制御する。
【0082】
ステップ206では、図5のステップ112の処理と同様に、蓄積性蛍光体シートPを退避領域26へ退避させるように、搬送経路を切り替える。
【0083】
ステップ208では、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの向きが、図4(A)の状態から図4(B)の状態に切り替わるように、複数の第1の駆動モータ42A及び複数の第2の駆動モータ42Bを各々駆動する。すなわち、図4(B)に示すように、複数の第1の光源40A及び複数の第1の光源40Aの矢印B方向における向きが、第1の消去光44Aの光量aに対する第2の消去光44Bの光量bの光量比b/aに対応した角度となるように、複数の第1の駆動モータ42A及び複数の第2の駆動モータ42Bを各々回転駆動する。これにより、蓄積性蛍光体シートPが矢印B方向に搬送されながら、短波長の第1の消去光44A及び長波長の第2の消去光44Bの順に、かつ光量比b/aで照射され、蓄積性蛍光体シートPに残存した放射線画像が消去される。
【0084】
ステップ210では、図5のステップ114の処理と同様に、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向が反転するように、搬送ローラ20の回転を逆転させる。
【0085】
ステップ212では、ステップ204の処理と同様に、消去器18によって蓄積性蛍光体シートPに残存する放射線画像が消去されるように、消去器18を制御する。
【0086】
ステップ214では、図5のステップ116の処理と同様に、蓄積性蛍光体シートPを矢印B方向へ搬送して挿入口12から排出させた後、搬送ローラ20の駆動を停止することにより搬送を停止させる。
【0087】
このように、本実施形態では、短波長の第1の消去光44A及び長波長の第2の消去光44Bが、この順序で蓄積性蛍光体シートPに照射されるように、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて第1の光源40A及び第2の光源40Bの向きが切り替わるように複数の第1の駆動モータ42A及び複数の第1の駆動モータ42Aを各々制御する。また、第1の光源40A及び第2の光源40Bは、蓄積性蛍光体シートPに対して同一の高さに交互に配置されている。これにより、放射線画像読取消去装置10の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる。このため、従来の両方向の搬送方向に対応していない放射線画像読取消去装置であっても、消去器を本実施形態に係る消去器18に変更することにより、両方向の搬送における放射線画像の消去に対応することができる。
【0088】
(第2実施形態)
【0089】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0090】
図7(A)、(B)には、本実施形態に係る消去器18の斜視図を、図8(A)、(B)には、側面図を示した。図7(A)に示すように、消去器18は、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向である矢印A方向を長手方向とする短冊状の複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bが、矢印A方向と交差する方向(本実施形態では直交する方向)に交互に配置された構成となっている。
【0091】
また、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの矢印A方向の長さは、第1の光源40Aから照射される第1の消去光44Aの照射領域aの面積に対する第2の消去光44Bの照射領域bの面積の面積比b/a、すなわち、第1の消去光44Aの光量aに対する第2の消去光44Bの光量bの光量比b/aに応じた長さとなっている。
【0092】
また、図8(A)、(B)に示すように、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bの蓄積性蛍光体シートPに対する高さは同一の高さとなっている。
【0093】
図9には、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bを駆動する駆動機構の平面図を、図10(A)には、複数の第2の光源40Bを駆動する駆動機構の斜視図を、同図(B)には、複数の第1の光源40Aを駆動機構の斜視図を各々示した。
【0094】
図9、図10(B)に示すように、複数の第1の光源40Aは、一端がローラ50Aに接続されたスクリューネジ52Aに各々に取り付けられている。そして、各スクリューネジ52Aが接続されたローラ50A及び第1の駆動モータ42Aの駆動軸が接続された駆動ローラ54Aには、ベルト56Aが巻き掛けられており、第1の駆動モータ42Aが正回転駆動することにより、ローラ50Aが正回転すると共にスクリューネジ52Aが正回転することにより、複数の第1の光源40Aが同時に矢印A方向に移動し、第1の駆動モータ42Aが逆回転駆動することにより、ローラ50Aが逆回転すると共にスクリューネジ52Aが逆回転することにより、複数の第1の光源40Aが同時に矢印B方向に移動する構成となっている。
【0095】
また、図9、図10(A)に示すように、複数の第2の光源40Bの駆動機構も複数の第1の光源40Aの駆動機構と同様の機構である。すなわち、複数の第2の光源40Bは、一端がローラ50Bに接続されたスクリューネジ52Bに取り付けられている。そして、各スクリューネジ52Bが接続されたローラ50B及び第2の駆動モータ42Bの駆動軸が接続された駆動ローラ54Bには、ベルト56Bが巻き掛けられており、第2の駆動モータ42Bが正回転駆動することにより、ローラ50Bが正回転すると共にスクリューネジ52Bが正回転することにより、複数の第2の光源40Bが同時に矢印A方向に移動し、第2の駆動モータ42Bが逆回転駆動することにより、ローラ50Bが逆回転すると共にスクリューネジ52Bが逆回転することにより、複数の第2の光源40Bが同時に矢印B方向に移動する構成となっている。
【0096】
図11には、本実施形態に係る放射線画像読取消去装置60の電気系のブロック図を示した。図2の放射線画像読取消去装置10と異なるのは、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bが各々1個ずつであり、それぞれ駆動ローラ54A、54Bに接続されている点であり、その他は同一である。
【0097】
このような放射線画像読取消去装置60において、蓄積性蛍光体シートPを矢印A方向に搬送して放射線画像を消去する場合には、図8(A)に示すように、第1の光源40Aが矢印A方向上流側に配置されると共に、第2の光源40Bが矢印A方向下流側に配置されるように、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bを回転駆動する。
【0098】
一方、蓄積性蛍光体シートPを矢印B方向に搬送して放射線画像を消去する場合には、図8(B)に示すように、第1の光源40Aが矢印B方向上流側に配置されると共に、第2の光源40Bが矢印B方向下流側に配置されるように、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bを回転駆動する。
【0099】
これにより、第1の消去光及び第2の消去光が、この順序で且つ光量比b/aで蓄積性蛍光体シートPに照射され、放射線画像が消去される。
【0100】
次に、本実施形態の作用として、コンピュータ30のCPU30Aで実行される処理について説明する。
【0101】
まず、画像読取消去モードにおける処理は、図5に示す処理とほぼ同様である。ただし、ステップ108において画像を消去する際、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bが図8(A)に示す配置となるように、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bを回転駆動する。
【0102】
また、消去モードにおける処理は、図6に示す処理とほぼ同様である。ただし、ステップ204において画像を消去する際、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bが図8(A)に示す配置となるように、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bを駆動する。
【0103】
また、ステップ208では、複数の第1の光源40A及び複数の第2の光源40Bが図8(A)に示す配置から同図(B)に示す配置に切り替わるように、第1の駆動モータ42A及び第2の駆動モータ42Bを駆動して、複数の第1の光源40Aを矢印A方向に移動させると共に、複数の第2の光源40Bを矢印B方向へ移動させる。
【0104】
このように、本実施形態では、短波長の第1の消去光44A及び長波長の第2の消去光44Bが、この順序で蓄積性蛍光体シートPに照射されるように、蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて第1の光源40A及び第2の光源40Bの搬送方向の位置が切り替わるように第1の駆動モータ42A及び第1の駆動モータ42Aを各々制御する。また、第1の光源40A及び第2の光源40Bは、蓄積性蛍光体シートPに対して同一の高さに交互に配置されている。これにより、放射線画像読取消去装置60の厚みを増すことなく、蓄積性蛍光体シートPの搬送方向に応じて放射線画像を消去することができる。このため、従来の両方向の搬送方向に対応していない放射線画像読取消去装置であっても、消去器を本実施形態に係る消去器18に変更することにより、両方向の搬送における放射線画像の消去に対応することができる。
【0105】
なお、本実施形態では、第1の光源40A及び第2の光源40Bを両方同時に移動させる構成の場合について説明したが、第1の光源40A及び第2の光源40Bの一方を移動させる構成として、図8(A)、(B)の状態を切り替える構成としてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、スクリューネジ52A、52Bを回転させることによって第1の光源40A及び第2の光源40Bを移動させる駆動機構を例に説明したが、駆動機構はこれに限られるものではない。例えば、図12、13に示すように、第1の光源40Aを搬送ベルト62Aによって矢印A方向又はB方向へ移動させ、第2の光源40Bを搬送ベルト62Bによって矢印A方向又はB方向へ移動させる構成としてもよい。
【0107】
上記各実施形態では、第1の光源40A及び第2の光源40Bをそれぞれ複数個備えた構成について説明したが、蓄積性蛍光体シートPに対して第1の消去光44A及び第2の消去光44Bを光量比b/aで照射できるものであれば、第1の光源40A及び第2の光源40Bを1個ずつ設けた構成としてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態では、2種類の波長の消去光を蓄積性蛍光体シートPに照射する場合について説明したが、3種類以上の波長の消去光を、短い波長の消去光から順に蓄積性蛍光体シートPに照射する構成としてもよい。
【0109】
また、本実施形態で説明した放射線画像読取消去装置10の構成(図1、2参照)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0110】
また、本記実施形態で説明した制御プログラムの処理の流れ(図5、6参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0111】
10 放射線画像読取消去装置
12 挿入口
14 走査光学系
16 画像読取部
18 消去器
20 搬送ローラ
22 第1の検出センサ
24 第2の検出センサ
26 退避領域
30 コンピュータ
32 操作表示部
34 二次記憶部
40A 第1の光源
40B 第2の光源
42A 第1の駆動モータ
42B 第2の駆動モータ
44A 第1の消去光
44B 第2の消去光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像が蓄積記録された蓄積性蛍光体シートに、紫外線領域の波長成分を含む第1の消去光を照射する第1の光源と、
前記蓄積性蛍光体シートに対して前記第1の光源と同一の高さに配置され、前記第1の光源により前記第1の消去光が照射された前記蓄積性蛍光体シートに、前記第1の消去光の波長成分より長波長の波長成分を含む第2の消去光を照射する第2の光源と、
前記第1の光源及び前記第2の光源の向き又は位置を切り替える駆動手段と、
前記第1の消去光及び前記第2の消去光が、この順序で前記蓄積性蛍光体シートに照射されるように、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えた放射線画像消去装置。
【請求項2】
前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向と交差する交差方向に長い光源であると共に、前記駆動手段は、前記交差方向を回転軸として前記第1の光源及び前記第2の光源を回転駆動する回転駆動手段であり、
前記制御手段は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の前記搬送方向に沿った方向の照射方向が切り替わるように、前記回転駆動手段を制御する
請求項1記載の放射線画像消去装置。
【請求項3】
前記第1の光源及び前記第2の光源を、各々複数備えた
請求項2記載の放射線画像消去装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の光量比に応じて、複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源の回転角度が各々切り替わるように、前記回転駆動手段を制御する
請求項3記載の放射線画像消去装置。
【請求項5】
複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源が前記搬送方向に沿った方向に交互に配置された
請求項3又は請求項4記載の放射線画像消去装置。
【請求項6】
前記第1の光源及び前記第2の光源は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に沿った方向に長い光源であると共に、前記駆動手段は、前記第1の光源及び前記第2の光源の少なくとも一方を前記搬送方向に移動させる移動手段であり、
前記制御手段は、前記蓄積性蛍光体シートの搬送方向に応じて、前記第1の光源及び前記第2の光源の前記搬送方向の位置が切り替わるように、前記移動手段を制御する
請求項1又は請求項2記載の放射線画像消去装置。
【請求項7】
前記第1の光源及び前記第2の光源の前記搬送方向に沿った方向の長さが、前記第1の消去光及び前記第2の消去光の光量比に応じた長さである
請求項6記載の放射線画像消去装置。
【請求項8】
前記第1の光源及び前記第2の光源を、各々複数備えた
請求項6又は請求項7記載の放射線画像消去装置。
【請求項9】
複数の前記第1の光源及び複数の前記第2の光源が前記搬送方向と交差する交差方向に交互に配置された
請求項8記載の放射線画像消去装置。
【請求項10】
コンピュータを、前記請求項1〜9の何れか1項に記載の放射線画像消去装置の前記制御手段として機能させるための放射線画像消去プログラム。
【請求項11】
挿入口から挿入された前記蓄積性蛍光体シートを搬送する搬送手段と、
前記蓄積性蛍光体シートから放射線画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により前記放射線画像が読み取られた後の前記蓄積性蛍光体シートに残った放射線画像を消去する前記請求項1〜9の何れか1項に記載の放射線画像消去装置と、
前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
を備えた放射線画像読取消去装置。
【請求項12】
挿入口から挿入された前記蓄積性蛍光体シートの長さを検出する検出手段と、
予め定めた長さ以下の前記蓄積性蛍光体シートを退避領域に退避させる退避手段と、
を備え、
前記搬送制御手段は、前記検出手段により検出された前記蓄積性蛍光体シートの長さが前記予め定めた長さ以下の場合には、前記放射線画像消去装置により放射線画像が消去された前記蓄積性蛍光体シートを前記退避領域に退避させた後、前記搬送方向を反転させて前記蓄積性蛍光体シートを前記挿入口から排出させ、前記蓄積性蛍光体シートが前記予め定めた長さを越える場合には、前記蓄積性蛍光体シートを前記挿入口と反対側に設けられた排出口から排出させるように、前記搬送手段を制御する
請求項11記載の放射線画像読取消去装置。
【請求項13】
前記放射線画像消去装置は、前記予め定めた長さ以下の前記蓄積性蛍光体シートが前記退避領域から前記挿入口へ戻る際に、前記蓄積性蛍光体シートに蓄積記録された放射線画像を再度消去する
請求項12記載の放射線画像読取消去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−104968(P2013−104968A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247748(P2011−247748)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】