説明

放射線画像表示装置および方法

【課題】放射線画像の立体視画像を表示するに際し、観察者の疲労を軽減できるようにする。
【解決手段】異なる2つの撮影方向から、圧迫板等の撮影補助具を用いて被検体を撮影し、立体視画像を表示するための2つの放射線画像を取得する。境界検出部8cが、2つの放射線画像のそれぞれにおいて、撮影補助具が存在しない第1の領域と、撮影補助具が存在する第2の領域との境界を検出する。補正処理部8dが、2つの放射線画像における第1の領域と第2の領域との輝度を等しくする補正処理を行う。表示制御部8fが、補正処理が施された2つの放射線画像に基づく立体視画像をモニタ9に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の立体視画像を表示する放射線画像表示装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された複数の画像から生成される。
【0003】
一方、このような立体視画像は、デジタルカメラやテレビ等の分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検体に対して異なる撮影方向から放射線を照射し、その被検体を透過した放射線を放射線検出器によりそれぞれ検出して複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像を用いて立体視画像を表示することが行われている。このような立体視画像を用いることにより、奥行き感のある放射線画像を観察することができるため、診断をより行いやすくすることができる。
【0004】
また、立体視画像の画質を向上させるために、複数の放射線画像において輝度を決定する領域を設定し、その領域に基づいて複数の放射線画像の輝度を一定にする画像処理を行う手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
ところで、病院の検査では病変周辺の組織片を採取することがあるが、近年、患者に大きな負担をかけずに組織片を採取する方法として、中が空洞の組織採取用の針(以下、生検針と称する)を患者に刺し、針の空洞に埋め込まれた組織を採取するバイオプシが注目されている。そして、このようなバイオプシを行うための装置としてステレオバイオプシ装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
このステレオバイオプシ装置は、被検体の立体視画像を観察しながら病変の3次元的な位置を特定することができ、生検針の先端をその特定位置に到達するよう制御することによって所望の位置から組織片を採取することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−313471号公報
【特許文献2】特開2010−75317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、乳房のステレオバイオプシを行う際には、乳房を圧迫板により圧迫して撮影を行い、圧迫した状態で生検針を乳房に刺して組織片を採取するようにしている。このため、圧迫板には生検針を乳房に刺すために必要な開口部が形成されている。しかしながら、圧迫板に開口部が形成されていると、表示される立体視画像には、圧迫板における開口部に対応する領域とそれ以外の部分とにおいて輝度差が生じてしまう。このように立体視画像において輝度差が生じていると、立体視を行う際に輝度の境界部分において画像のちらつきが生じ、観察者の目が大きく疲労することとなる。これは、乳房のステレオバイオプシのみならず、例えば指の立体視画像を取得する際に、撮影時に指を固定する治具等の撮影補助具が存在する場合にも生じる問題である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、放射線画像の立体視画像を表示するに際し、観察者の疲労を軽減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による放射線画像表示装置は、放射線を透過可能な撮影補助具とともに、被検体を2方向から撮影することにより取得された、2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれにおいて、前記撮影補助具が存在しない第1の領域と、前記撮影補助具が存在する第2の領域との境界を検出する境界検出手段と、
前記第1の領域および前記第2の領域の輝度を等しくする補正処理を、前記2つの放射線画像の少なくとも一方に施す補正手段と、
前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に基づく前記立体視画像を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明による放射線画像表示装置においては、前記表示制御手段を、前記立体視画像を表示する際に、前記境界を視認可能に表示する手段としてもよい。
【0012】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記被検体を乳房とし、前記撮影補助具を、前記乳房を圧迫する、バイオプシを行うために所定位置に開口部が形成された圧迫板としてもよい。
【0013】
この場合、前記表示手段に表示された前記立体視画像において、前記開口部に対応する領域以外の領域が指定された場合に警告を行う警告手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0014】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に対して、画像処理を施す画像処理手段をさらに備えるものとしてもよい。
【0015】
また、本発明による放射線画像表示装置においては、前記補正手段を、前記2つの放射線画像における前記第1および前記第2の領域の統計値に基づいて、前記補正処理を行う手段としてもよい。
【0016】
本発明による放射線画像表示方法は、放射線を透過可能な撮影補助具とともに、被検体を2方向から撮影することにより取得された、立体視画像を表示するための2つの放射線画像のそれぞれにおいて、前記撮影補助具が存在しない第1の領域と、前記撮影補助具が存在する第2の領域との境界を検出し、
前記第1の領域および前記第2の領域の輝度を等しくする補正処理を、前記2つの放射線画像の少なくとも一方に施し、
前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に基づく前記立体視画像を表示手段に表示することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つの放射線画像のそれぞれにおいて、撮影補助具が存在しない第1の領域と、撮影補助具が存在する第2の領域との境界が検出され、第1の領域および第2の領域の輝度を等しくする補正処理が、2つの放射線画像の少なくとも一方に施される。このため、表示された立体視画像においては、第1および第2の領域の境界が目立たなくなり、その結果、観察者が立体視を行った際に、境界に起因するちらつきが見えにくくなる。したがって、立体視画像を観察する観察者の目の疲労を軽減することができる。
【0018】
また、立体視画像を表示する際に、境界を視認可能に表示することにより、本来見えるはずであった第1および第2の領域における境界を認識することができる。このため、とくにバイオプシを行う際に、生検針を刺す位置を誤ってしまうことを防止することができる。
【0019】
また、乳房のバイオプシを行うに際し、立体視画像において、圧迫板の開口に対応する領域以外の領域が指定された場合に警告を行うことにより、生検針を刺す位置を誤ってしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのアーム部を図1の右方向から見た図
【図3】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムの撮影台を上方から見た図
【図4】図1に示すステレオ乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図5】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【図6】境界の検出を説明するための図(その1)
【図7】境界の検出を説明するための図(その2)
【図8】モニタに表示されたステレオ画像を模式的に示す図
【図9】第1および第2の領域の境界を視認可能に表示されたステレオ画像を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像表示装置の一実施形態を用いたステレオ乳房画像撮影表示システムについて説明する。本発明の実施形態による乳房画像撮影表示システムは、着脱可能なバイオプシユニットを取り付けることにより乳房用のステレオバイオプシ装置としても動作するシステムである。まず、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成について説明する。図1は、バイオプシユニットが取り付けられた状態の乳房画像撮影表示システムの概略構成を示す図である。
【0022】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ8と、コンピュータ8に接続されたモニタ9および入力部7とを備えている。
【0023】
そして、乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。なお、図2には、図1の右方向から見たアーム部13を示している。
【0024】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線照射部16が取り付けられている。アーム部13の回転および上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0025】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線検出器15と、放射線検出器15からの電荷信号の読み出しを制御する検出器コントローラ33が備えられている。また、撮影台14の内部には、放射線検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部等が設けられた回路基板等も設置されている。
【0026】
また、撮影台14はアーム部13に対し回転可能に構成されており、基台11に対してアーム部13が回転したときでも、撮影台14の向きは基台11に対し固定された向きとすることができる。
【0027】
放射線検出器15は、放射線画像の記録と読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0028】
放射線照射部16の中には放射線源17と、放射線源コントローラ32が収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電流時間積等)を制御するものである。
【0029】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置されて乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向(Z方向)に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。図3は、図1に示す圧迫板18を上方から見た図であるが、同図に示すように、圧迫板18は、撮影台14と圧迫板18により乳房を固定した状態でバイオプシを行えるよう、約10×10cm四方の大きさの開口部5を備えている。
【0030】
バイオプシユニット2は、その基体部分が圧迫板18の支持部20の開口部に差し込まれ、基体部分の下端がアーム部13に取り付けられることによって、乳房画像撮影表示システム1と機械的、電気的に接続されるものである。
【0031】
そして、バイオプシユニット2は、乳房に穿刺される生検針21を有し、着脱可能に構成された生検針ユニット22と、生検針ユニット22を支持する針支持部23と、針支持部23をレールに沿って移動させ、あるいは針支持部23を出し入れさせることにより、生検針ユニット22を図1から図3に示すX、YおよびZ方向に移動させる移動機構24とを備える。生検針ユニット22の生検針21の先端の位置は、移動機構24が備える針位置コントローラ35により、3次元空間における位置座標(x,y,z)として認識され、制御される。なお、図1における紙面垂直方向がX方向、図2における紙面垂直方向がY方向、図3における紙面垂直方向がZ方向である。
【0032】
コンピュータ8は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイス等を備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような制御部8a、放射線画像記憶部8b、境界検出部8c、補正処理部8d、画像処理部8e、および表示制御部8fが構成されている。
【0033】
制御部8aは、各種のコントローラ31〜35に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後述する。
【0034】
放射線画像記憶部8bは、放射線検出器15によって取得された撮影角度毎の放射線画像信号を記憶するものである。
【0035】
境界検出部8cは、撮影により取得された2つの放射線画像信号に基づく2つの放射線画像のそれぞれにおいて、圧迫板18の開口部5に対応する第1の領域とそれ以外の第2の領域との境界を検出する。具体的な境界検出の処理については後述する。
【0036】
補正処理部8dは、第1の領域と第2の領域との輝度が略同一となるように、2つの放射線画像の少なくとも一方の輝度を補正する。具体的な補正処理については後述する。
【0037】
画像処理部8eは、輝度が補正された2つの放射線画像に対して、輝度を同一とする処理、階調処理等の画質を向上させる処理を施して処理済みの放射線画像を生成する。
【0038】
表示制御部8fは、画像処理済みの2つの放射線画像を用いたステレオ画像をモニタ9に表示したり、ステレオ画像の立体感を変更したりするものである。
【0039】
入力部7は、例えば、キーボードやマウス等のポインティングデバイスから構成されるものであり、モニタ9に表示されたステレオ画像内の異常陰影等の位置をカーソルにより指定可能に構成されたものである。また、入力部7は、操作者による撮影条件等の入力や操作指示の入力等を受け付けるものである。
【0040】
モニタ9は、表示制御部8fの指示により、コンピュータ8から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示するものであるが、その構成としては、例えば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラス等を用いることで一方の放射線画像は操作者の右目に入射させ、他方の放射線画像は操作者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、例えば、2つの放射線画像を所定のずれ量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0041】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
まず、撮影台14の上に乳房Mが設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(ステップST1)。
【0043】
次に、入力部7おいて、操作者によって種々の撮影条件が入力された後、撮影開始の指示が入力される。なお、このとき生検針ユニット22は上方に待避しており、まだ乳房には穿刺されていないものとする。
【0044】
そして、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影に先だって、スカウト撮影が行われる(ステップST2)。具体的には、まず制御部8aが、バイオプシのスカウト撮影を行うべく、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読み出しを行うよう制御信号を出力する。ここで、アーム部13は初期位置においては、アーム部13が撮影台14に対して垂直となる位置にあることから、この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を垂直方向(θ=0度)方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに、スカウト画像GSの放射線画像信号として記憶される。
【0045】
スカウト撮影により取得されたスカウト画像GSはモニタ9に表示される。操作者はスカウト画像を観察しながら、スカウト画像において視認される異常陰影が圧迫板18の開口部5の位置に位置するように、乳房Mの位置決めを行う。また、この際に乳房Mへの麻酔が行われる。なお、位置決め後、スカウト撮影時と乳房Mの設置位置が異なるものとなった場合には、再度のスカウト撮影を行う。一方、位置決め後、スカウト撮影時と乳房Mの設置位置が略同一となった場合には、被検体への被曝量低減のために、再度のスカウト撮影は行わない。
【0046】
次いで制御部8aは、予め設定されたステレオ画像の撮影のための輻輳角θを読み出し、その読み出した輻輳角θの情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、バイオプシを行うものであることから、このときの輻輳角θの情報としてθ=±15度が予め記憶されているものとするが、これに限らず、例えば、±10度の角度を用いてもよく、バイオプシを行わない場合には、立体視を良好に行うことが可能な±2度以上±5度以下の任意の角度を用いてもよい。
【0047】
次に、入力部7において撮影開始の指示があると、乳房Mのステレオ画像の撮影が行われる(ステップST3)。そして、アームコントローラ31において、制御部8aから出力された輻輳角θの情報が受け付けられ、アームコントローラ31は、この輻輳角θの情報に基づいて、図2に示すように、アーム部13が撮影台14に垂直な方向に対して+θ度回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して+15度回転するよう制御信号を出力する。
【0048】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が+15度回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読み出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を+15度方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、この撮影により放射線画像記憶部8bに記憶される放射線画像信号は、右目用の放射線画像GRを表すものとなる。
【0049】
次に、アームコントローラ31は、図2に示すように、アーム部を初期位置に一旦戻した後、撮影台14に垂直な方向に対して−θ度回転するよう制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13を撮影台14に垂直な方向に対して−15度回転するよう制御信号を出力する。
【0050】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が−15度回転する。続いて制御部8aは、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像の読み出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房を−15度方向から撮影した放射線画像が放射線検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶される。なお、この撮影により放射線画像記憶部8bに記憶される放射線画像信号は、左目用の放射線画像GLを表すものとなる。
【0051】
そして、コンピュータ8の放射線画像記憶部8bに記憶された2つの放射線画像信号は、放射線画像記憶部8bから読み出され、境界検出部8cにより、2つの放射線画像信号に基づく放射線画像GL,GRのそれぞれにおいて、圧迫板18の開口部5に対応する第1の領域とそれ以外の第2の領域との境界が検出される(ステップST4)。図6は境界の検出を説明するための図である。なお、図6においては右目用の放射線画像GRのみを示すが、左目用の放射線画像GLについても右目用の放射線画像GRと同様に境界が検出される。図6に示すように、放射線画像GRは乳房Mの像を含むが、撮影時に乳房Mは圧迫板18により圧迫されており、さらに圧迫板18には開口部5が形成されているため、圧迫板18が存在しない開口部5に対応する第1の領域A1と、開口部5以外の圧迫板18に対応する第2の領域A2とにおいて、輝度が異なるものとなっている。
【0052】
境界検出部8cは、放射線画像GRに対して微分フィルタ等を用いて微分処理を行い、微分値が所定のしきい値以上となり、かつ直線状に並ぶ画素位置を、第1および第2の領域A1,A2の境界として検出する。なお、圧迫板18における開口部5の位置は予め定められているため、図7の斜線部分に示すように、放射線画像GRにおける境界に対応する領域のみにおいて微分処理を行うようにすれば、演算時間を短縮することができる。
【0053】
次いで、補正処理部8dにより、放射線画像GL,GRのそれぞれに対して、第1および第2の領域A1,A2の輝度を略同一にする補正処理が行われる(ステップST5)。具体的には、補正処理部8dは、まず第1および第2の領域A1,A2の画素値の統計値T1,T2を算出する。なお、統計値としては、平均値またはメディアン値等を用いることができる。そして、補正処理部8dは、統計値T1,T2が等しくなるように、第1および第2の領域A1,A2の少なくとも一方の画素値にオフセット値を加減算することにより、第1および第2の領域A1,A2の輝度を略同一にする。ここで、第2の領域A2は、圧迫板18が存在するため、第1の領域A1と比較して輝度が高い(濃度が低い)。このため、T2−T1をオフセット値として算出し、第1の領域A1の各画素の画素値にオフセット値を加算する、または第2の領域A2の各画素の画素値からオフセット値を減算することにより、第1および第2の領域A1,A2の輝度を略同一にする補正処理を行う。なお、統計値T1,T2の平均値を算出し、統計値T1,T2と算出した平均値との差をオフセット値として算出し、第1および第2の領域A1,A2の双方の画素値を補正するようにしてもよい。また、ステップST5において、放射線画像GL,GRのいずれか一方に対して、第1および第2の領域A1,A2の輝度を略同一にする補正処理を行うようにしてもよい。
【0054】
そして、画像処理部8eにより、放射線画像GL,GRに対して、輝度を同一とする処理、階調処理等の画質を向上させる画像処理が施される(ステップST6)。その後、表示制御部8fにより、画像処理済みの2つの放射線画像GL,GRの放射線画像信号がモニタ9に出力され、モニタ9において乳房のステレオ画像が表示される(ステップST7)。図8はモニタ9に表示されたステレオ画像を模式的に示す図である。図8に示すように、ステレオ画像には、奥行きを持つ乳房Mの像が含まれている。
【0055】
次に、乳房のステレオ画像が表示された後、操作者によって、乳房における石灰化や腫瘤等の異常陰影が発見され、引き続いてバイオプシユニット2によってそれらの組織を採取したい場合等には、モニタ9に表示されたステレオ画像上において、操作者によって異常陰影のターゲットが指定される(ステップST8)。
【0056】
ターゲットの指定については、例えば、入力部7におけるマウス等のポインティングデバイスによって行うようにすればよい。具体的には、例えば、ステレオ画像を構成する2つの放射線画像内にそれぞれ3次元カーソル用の指標を表示させ、この2つの指標から構成される立体視画像である3次元カーソルを入力部7によって動かすことによってターゲットを指定するようにすればよい。なお、各放射線画像GL,GR内における指標の位置は、それぞれ同じ位置を示すように、ステレオ画像を撮影した際の撮影方向に応じてその座標位置が設定されているものとする。
【0057】
このように、バイオプシのターゲットとする異常陰影が指定されると、指定されたターゲットの位置情報(x,y,z)が制御部8aによって取得される。制御部8aは、指定された位置情報に基づく位置が、圧迫板18の開口部5に対応する位置に存在するか否かを判定する(指定された位置が適切か:ステップST9)。ここで、指定された位置が開口部5に位置しないと、生検針21を乳房に穿孔することができない。このため、ステップST9が否定されると、制御部8aはモニタ9に警告表示を行い(ステップST10)、ステップST。警告表示としては、操作者にターゲットの位置の修正を促す内容であればよい。なお、表示に代えて音声により警告を行ってもよく、音声と表示との双方により警告を行ってもよい。
【0058】
ステップST9が肯定されると、制御部8aはその位置情報をバイオプシユニット2の針位置コントローラ35に出力する。この状態で、入力部7において所定の操作ボタンが押されると、制御部8aから針位置コントローラ35に対し、生検針21を移動させる制御信号が出力される。針位置コントローラ35は、先に入力された位置情報の値に基づき、生検針21の先端が、その座標が示す位置の上方に配置されるように、生検針21を移動する。
【0059】
その後、操作者により、生検針21の穿刺を指示する所定の操作が入力部7において行われると、制御部8aと針位置コントローラ35の制御の下で、生検針21の先端が座標が示す位置に配置されるように生検針21が移動させられて、生検針21による乳房の穿刺が行われる(ステップST11)。
【0060】
このように、本実施形態によれば、2つの放射線画像における圧迫板18の開口部5に対応する第1の領域A1と、開口部5以外の領域に対応する第2の領域A2との境界を検出し、2つの放射線画像GL,GRにおける第1の領域A1および第2の領域A2の輝度を等しくする補正処理を放射線画像GL,GRのそれぞれに施すようにしたものである。このため、表示されたステレオ画像においては、第1および第2の領域A1,A1の境界が目立たなくなり、その結果、観察者が立体視を行った際に、境界に起因するちらつきが見えにくくなる。したがって、ステレオ画像を観察する観察者の目の疲労を軽減することができる。
【0061】
また、ステレオ画像において、圧迫板18の開口部5に対応する領域以外の領域がターゲットの位置と指定された場合に警告を行うことにより、生検針を穿孔する位置を誤ってしまうことを防止することができる。
【0062】
なお、上記実施形態においては、ステレオ画像を表示する際に、第1および第2の領域A1,A2の境界を視認可能に表示してもよい。図9は第1および第2の領域A1,A2の境界を視認可能に表示されたステレオ画像を模式的に示す図である。図9に示すように、第1および第2の領域A1,A2の境界が破線により示されている。このように、ステレオ画像を表示する際に、第1および第2の領域A1,A2の境界を視認可能に表示することにより、本来見えるはずであった第1および第2の領域A1,A2における境界を認識することができる。このため、とくにバイオプシを行う際に、生検針を穿孔する位置を誤ってしまうことを防止することができる。
【0063】
また、上記実施形態は、本発明の放射線画像表示装置の一実施形態をステレオ乳房画像撮影表示システムに適用したものであるが、本発明の被写体としては乳房に限らず、例えば、乳房以外の指、頭部等を対象として、撮影補助具を使用して撮影を行う放射線画像撮影表示システムにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 乳房画像撮影表示システム
2 バイオプシユニット
7 入力部
8 コンピュータ
8a 制御部
8b 放射線画像記憶部
8c 境界検出部
8d 補正処理部
8e 画像処理部
8f 表示制御部
9 モニタ
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線検出器
17 放射線源
18 圧迫板
21 生検針
22 生検針ユニット
31 アームコントローラ
32 放射線源コントローラ
33 検出器コントローラ
34 圧迫板コントローラ
35 針位置コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を透過可能な撮影補助具とともに、被検体を2方向から撮影することにより取得された2つの放射線画像に基づく立体視画像を表示する表示手段と、
前記2つの放射線画像のそれぞれにおいて、前記撮影補助具が存在しない第1の領域と、前記撮影補助具が存在する第2の領域との境界を検出する境界検出手段と、
前記第1の領域および前記第2の領域の輝度を等しくする補正処理を、前記2つの放射線画像の少なくとも一方に施す補正手段と、
前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に基づく前記立体視画像を前記表示手段に表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とする放射線画像表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記立体視画像を表示する際に、前記境界を視認可能に表示する手段であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像表示装置。
【請求項3】
前記被検体が乳房であり、前記撮影補助具が、前記乳房を圧迫する、バイオプシを行うために所定位置に開口部が形成された圧迫板であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像表示装置。
【請求項4】
前記表示手段に表示された前記立体視画像において、前記開口部に対応する領域以外の領域が指定された場合に警告を行う警告手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載の放射線画像表示装置。
【請求項5】
前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に対して、画像処理を施す画像処理手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線画像表示装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記2つの放射線画像における前記第1および前記第2の領域の統計値に基づいて、前記補正処理を行う手段であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の放射線画像表示装置。
【請求項7】
放射線を透過可能な撮影補助具とともに、被検体を2方向から撮影することにより取得された、立体視画像を表示するための2つの放射線画像のそれぞれにおいて、前記撮影補助具が存在しない第1の領域と、前記撮影補助具が存在する第2の領域との境界を検出し、
前記第1の領域および前記第2の領域の輝度を等しくする補正処理を、前記2つの放射線画像の少なくとも一方に施し、
前記補正処理が施された前記2つの放射線画像に基づく前記立体視画像を表示手段に表示することを特徴とする放射線画像表示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate