説明

放射線画像補正装置および動作方法ならびにプログラム

【課題】比較読影の性能を向上させる
【解決手段】比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの放射線画像の各々について、その放射線画像の所定の領域の画素値を用いて濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、データ取得手段により各放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の各放射線画像からデータ取得手段により取得された濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、2つの放射線画像のうちいずれか一方の放射線画像の画素値を補正する補正手段とを備えた放射線画像補正装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの放射線画像のうちいずれか一方の放射線画像の画素値を補正する放射線画像補正装置および方法ならびにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野においては、ある患者についての撮影時期が異なる2つ以上の医用画像を比較読影して、画像間の差異を調べ、その差異に基づいて異常陰影を検出したり、疾患の進行状況や治癒状況を把握して治療方針を検討したりすることが行われている。
【0003】
しかし、比較対象となる撮影時期が異なる2つの時系列的な画像は、撮影時に用いられた撮影デバイスの差異や、設定された撮影条件の差異等により、画像の階調特性、周波数特性、解像度、濃度、輝度等の画像特性にずれが生じる場合があるため、比較読影を行う際に通常はそれらの画像の画像特性を一致させる処理が行われる。画像特性を一致させる手法として、比較対象となる同一被写体についての2つの画像のうち少なくとも一方に対して階調処理、周波数処理、画素サイズの補正処理、ダイナミックレンジ圧縮処理、位置あわせ処理などを行う手法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−190125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、医療現場において、病室からの移動が困難な患者の撮影や手術室での緊急撮影等のニーズが高まっており、病室などに移動させてX線撮影を行う移動型X線装量(以下、回診車という)が実用化されつつある。特に、重症の入院患者の呼吸・循環管理を目的として、この回診車によりベッドで寝ている被写体(患者)の胸部のX線画像を定期的に撮影し、撮影時期が異なる複数の胸部画像を比較読影して経過を観察することが行われている。
【0006】
しかし、この回診車により撮影される場合にはベッドで寝ている被写体の背面にカセッテを置いて撮影するため、撮影の度に不規則的に変化するカセッテの放射線源に対する位置や配置方向、被写体の姿勢等に起因して、放射線画像に再現性のない濃度ムラが生じる場合がある。特に、比較対象となる2つの放射線画像中にこのような再現性のない濃度ムラがそれぞれ存在すると、比較読影の性能が低下してしまう。また、上記手法では、このような再現性のない濃度ムラによる比較読影の性能への影響やそれに対する対策が想定されていない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、比較読影の対象となる放射線画像に再現性のない濃度ムラが存在する場合であっても、比較読影を適切に行うことができる放射線画像補正装置および方法ならびにプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放射線画像補正装置は、比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの胸部正面放射線画像の各々について、その胸部正面放射線画像の所定の領域の画素値を用いて、胸部正面放射線画像の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向に現れる濃度の傾きである濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、データ取得手段により各胸部正面放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の各胸部正面放射線画像から前記データ取得手段により取得された濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、2つの胸部正面放射線画像のうちいずれか一方の胸部正面放射線画像の画素値を補正する補正手段とを備え、データ取得手段が、胸部正面放射線画像中の、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を所定の領域として取得し、取得した領域の画素値を用いてデータを取得することを特徴とするものである。
【0009】
また、胸部正面放射線画像中の、肋骨の重なりが撮影された領域、および、素抜け領域のうち、いずれの領域を所定の領域として取得するかを選択する情報を入力するための選択情報入力手段をさらに備えるものであってもよい。
【0010】
本発明の放射線画像補正装置の動作方法は、同一被写体について取得された2つの胸部正面放射線画像の各々の濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、胸部正面放射線画像のうちいずれか一方を補正する補正手段とを備えた放射線画像補正装置の動作方法であって、比較読影の対象となる、2つの胸部正面放射線画像の各々について、この胸部正面放射線画像の所定の領域の画素値を用いて、胸部正面放射線画像の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向に現れる濃度の傾きである濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得ステップと、各胸部正面放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の各胸部正面放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、2つの胸部正面放射線画像のうちいずれか一方の胸部正面放射線画像の画素値を補正する補正ステップとを有する放射線画像補正装置の動作方法であって、
データ取得ステップが、胸部正面放射線画像中の、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を所定の領域として取得し、取得した領域の画素値を用いてデータを取得することを特徴とするものである。
【0011】
さらに、本発明による放射線画像補正プログラムはコンピュータを放射線画像補正装置として機能させるためのものである。
【0012】
なお、上記放射線画像装置および動作方法ならびにプログラムにおいては、補正後の各放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータが互いに一致するような補正が、2つの放射線画像のうちいずれか一方の放射線画像の画素値に行われるようにすればよく、補正後の各放射線画像から濃度ムラを近似したデータを実際に取得する必要はない。
【0013】
また、「補正後の各放射線画像」というのも、全ての放射線画像が補正されたものである必要はなく、片方の放射線にのみ補正が行なわれる場合には、一方は補正され、他方は補正されていない放射線画像を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の放射線画像補正方法および装置ならびにプログラムによれば、比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの放射線画像の各々について、その放射線画像の所定の領域の画素値を用いて濃度ムラを近似したデータを取得し、各放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の各放射線画像から取得された濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、2つの放射線画像のうちいずれか一方の放射線画像の画素値を補正することにより、比較対象となる2つの放射線画像中に存在する濃度ムラを互いに一致させ、画像間の差異を視認しやすくすることができ、比較読影性能を向上させることができる。
【0015】
上記方法および装置ならびにプログラムにおいては、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、および放射線が直接入射された素抜け領域のいずれかをその所定の領域として取得することができる。放射線画像中に濃度ムラが存在しない場合、この胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域は少なくとも被写体の体軸に対称である濃度分布を有し、素抜け領域は略均一な濃度分布を有するので、このいずれかの領域の画素値を調べることにより、その放射線画像中の濃度ムラを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の放射線画像補正装置の一実施形態を示す概略構成図
【図2】図1の放射線画像補正装置による放射線画像の補正処理を説明するための図
【図3】対象画像から抽出された被写体の体軸の一例を示す図
【図4】基準画像から抽出された被写体の体軸の一例を示す図
【図5】対象画像と基準画像からそれぞれ抽出された被写体の体軸間の角度の一例を示す図
【図6】放射線画像における素抜け領域の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像補正装置の実施の形態について説明する。なお、図1に示す本発明の一実施形態である放射線画像補正装置1は、補助記憶装置に読み込まれた放射線画像補正プログラムをコンピュータ(たとえばパーソナルコンピュータ等)上で実行することにより実現される。このとき、この放射線画像補正プログラムは、CD‐ROM等の情報記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。
【0018】
放射線画像補正装置1は、比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの放射線画像をのうち、いずれか一方の画像(以下、対象画像I(x,y)という)の濃度トレンドが、基準となる他方の画像(以下、基準画像I(x,y)という)の濃度トレンドに一致するように、対象画像I(x,y)の画素値を補正するものであって、図1に示すように、領域取得部10、補正部20、入力部30、表示部40、保存部50などを備えている。
【0019】
ここでは、撮影の度に不規則的に変化するカセッテの放射線源に対する位置や配置方向、被写体の姿勢に起因して、その撮影により得られた放射線画像中に存在する濃度ムラを総称して、濃度トレンドという。
【0020】
領域取得部10は、体象画像I(x,y)および基準画像I(x,y)の各々について、その画像の濃度トレンドを抽出するための領域を取得するものである。
【0021】
例えば、画像I(x,y)、I(x,y)が胸部放射線画像である場合、たとえば図2に示すように、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域A、A(図中白抜きでの実線で囲まれた領域)をその画像の濃度トレンドを抽出するための領域として取得する。この胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域は、通常病態の変化の観察対象となる肺野領域の外側の、病態に依存しない領域に存在するともに、放射線画像中に濃度ムラが存在しない場合、少なくとも被写体の体軸に対称である濃度分布を有するので、この領域の画素値を調べることにより、その放射線画像中の濃度トレンドを取得することができる。
【0022】
領域取得部10は、具体的には、画像I(x,y)、I(x,y)毎に、たとえば特開2003‐6661号公報に記載されている技術を用いて、右肺外側輪郭、右肺内側輪郭、右肺下側輪郭、左肺外側輪郭、左肺内側輪郭、左肺下側輪郭で囲まれた領域を決定し、決定した領域の左右の輪郭から外側に、肋骨の重なりが撮影された領域が一般的に有する程度の幅の領域を抽出することにより胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域を取得する。
【0023】
また、対象画像I(x,y)および基準画像I(x,y)中に、たとえば図6に示すような、放射線が直接入射された素抜け領域が、放射線画像の全体の濃度トレンドを近似したデータが求められる程度に広がって存在する場合、具体的には、連続して広がっている素抜け領域の面積、あるいは不連続して広がっている複数の素抜け領域の全体を取り囲む図形の面積が十分大きい場合、この素抜け領域(図中白抜きでの破線で囲まれた領域B)を、その画像の濃度トレンドを抽出するための領域として取得することもできる。この素抜け領域は、放射線画像中に濃度ムラが存在しない場合、略均一な濃度分布を有するので、この領域の画素値を調べることにより、その放射線画像中の、特にカセッテの放射線源に対する位置や配置方向に起因して放射線画像に生じる濃度トレンドを取得することができる。
【0024】
なお、画像I(x,y)、I(x,y)が胸部正面放射線画像である場合に、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、および、放射線が直接入射された素抜け領域のうち、いずれの領域を各画像I(x,y)、I(x,y)の濃度トレンドを抽出するための領域として取得するかは、たとえば、ユーザーに、それらの領域のうちいずれの領域を取得するかを選択する情報を入力部30に入力させ、その入力された情報に基づいて選択されるいずれか一方の領域を取得すればよい。
【0025】
また、領域取得部10は、このような胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を自動検出して取得するものであってもよいし、ユーザーにそれらの領域を特定する情報を入力部30に入力させ、その入力された情報に基づいて取得するものであってもよい。ここで、領域を特定する情報としては、その領域の範囲を特定することが可能な情報を広く意味するものであり、たとえば放射線画像上で特定したい領域を囲むように指定された幾つかの点の位置情報、塗りつぶし等で特定したい領域として指定された領域の各画素の位置情報などを含む。
【0026】
補正部20は、画像I(x,y)、I(x,y)毎に、領域取得部10において取得されたその画像中の所定の領域の画素値を用いて、その画像の濃度トレンドを近似したデータを取得する近似データ取得部21と、取得した近似データを用いて対象画像I(x,y)を補正するための補正データを作成する補正データ作成部22と、作成した補正データを用いて放射線画像の画素値を補正する補正処理部23を備える。
【0027】
近似データ取得部21は、たとえば領域取得部10において取得された領域A、Aの画素値を用いて、対象画像I(x,y)と基準画像I(x,y)それぞれの濃度トレンドを近似したデータT、Tを取得する。
【0028】
具体的には、対象画像I(x,y)について、下記の式(1)のように領域Aの画像信号を近似した線形モデルZ(x,y)を作成する。ここで、定数a、b、cは、例えば最小二乗法により最も確からしい線形モデルZ(x,y)を構成するように選ばれたパラメータである。具体的には、領域A内の各画素の画素値A(x,y) とZ(x,y)との差の2乗和が最も小さくなるようなパラメータを探索して求める。
【数1】

【0029】
次に、その求められたパラメータa,bおよび対象画像I(x,y)の中心の座標(xc, yc)を用いて、下記の式(2)のように、対象画像I(x,y)の水平方向xおよび垂直方向yにおける濃度トレンドを線形モデルに近似した近似データT(x,y)を取得する。
【数2】

【0030】
基準画像I(x,y)についても、対象画像I(x,y)の場合と同様な方法により、領域A内の画素値を用いて基準画像I(x,y)の濃度トレンドを線形モデルに近似したデータT(x,y)= a(x-xc)+b(y-yc)を取得する。図2に対象画像I(x,y)および基準画像I(x,y)の濃度トレンドを近似して取得したデータT(x,y)、T(x,y)の一例を示す。
【0031】
補正データ作成部22は、近似データ取得部21において取得した近似データT(x,y)、T(x,y)を用いて対象画像I(x,y)を補正するための補正データC(x,y)を作成するものであり、たとえば図2に示すような、基準画像I(x,y)の濃度トレンドを近似したデータT(x,y)から対象画像I(x,y)の濃度トレンドを近似したデータT(x,y)を減算することにより補正データC(x,y)=T(x,y)-T(x,y)を作成する。
【0032】
なお、領域取得部10において取得された各画像I(x,y)、I(x,y)の濃度トレンドを抽出するための領域が、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域であって、かつ、各画像I(x,y)、I(x,y)中の被写体の体軸が互いに著しくずれている場合には、上記減算を行う前に、データT(x,y)をそのずれφに応じて修正した修正後のデータT'(x,y)を取得し、そのT'(x,y)をデータT(x,y)に代えて上記減算を行うことがより好ましい。
【0033】
以下、図3から図5を参照して、修正後のデータT'(x,y)を取得する処理について説明する。まず、補正データ作成部22が、図3および図4に示すように、対象画像I(x,y)および基準画像I(x,y)から被写体の体軸V、Vを抽出する。具体的には、例えば特願2008-037145号明細書に記載されているように、まず、ガボールフィルタを用いて胸部画像の各画素において、椎体の太さに対応するエッジ方向値および椎体の太さに対応するエッジ強度値を含むエッジ成分値を抽出し、次に、胸部画像中の少なくとも鎖骨と肋骨が重なる領域である左右の測端部を含まない領域として設定された関心領域中の、各画素における最も高いエッジ強度値に対応するエッジ方向値を、その画素における最も高いエッジ強度値により重み付け平均して得られた方向を椎体方向と推定する。次に、推定された椎体方向に対して略垂直に胸部画像を走査し、所定の画素値以下である各画素を椎体領域として抽出し、抽出された椎体領域の正中線を被写体の体軸として検出する。
【0034】
次に、図5に示すように、画像I(x,y)、I(x,y)からそれぞれ抽出した体軸V、V間の角度φを取得し、下記の式(3)により、データT(x,y)= a(x-xc)+b(y-yc)中のパラメータa、bの値からパラメータa'、b'の値を算出することにより、修正後のデータT'(x,y)= a'(x-xc)+b'(y-yc)を取得する。
【数3】

【0035】
以上のように作成された補正データC(x,y) = A(x-xc)+B(y-yc)中のパラメータA,Bは補正処理部22に出力される。なお、この出力の前に、一旦作成されたパラメータA,Bを表示部40の表示画面上に表示させ、ユーザーによる修正値を入力部30から受け付け、その入力された修正値を用いてそれらのパラメータを修正し、修正後の補正データを補正処理部22に出力することもできる。
【0036】
補正処理部23は、補正データ作成部22において作成された補正データを用いて対象画像I(x,y)の画素値を補正するものであり、図2に示すように、対象画像I(x,y)に、補正データ作成部22により作成された補正データC(x,y)を加算することにより、補正後の対象画像I(x,y)の濃度トレンドが基準画像I(x,y)の濃度トレンドに一致するように、対象画像I(x,y)の画素値を補正した補正済み画像I'(x,y)を作成する。
【0037】
以上のように作成された補正済み画像I'(x,y)は、表示部40の表示画面上に表示される。そのとき、補正処理部23による補正に用いられた補正データC(x,y)のパラメータ等の情報も画面上に表示させることにより、どのような補正処理が行われたかをユーザーに分かりやすく提示することができる。
【0038】
なお、この補正済み画像I'(x,y)とともに表示画面上に表示されたパラメータに対して、ユーザーが入力部30により修正値を入力すると、補正データ作成部21が、ユーザーによる修正値を入力部30から受け付け、その入力された修正値を用いてパラメータを修正し、修正後の補正データを補正処理部22に出力し、補正処理部22が、入力された修正後の補正データを用いて対象画像I(x,y)の画素値を改めて補正し、ムラ補正済み画像I'(x,y)を作成することができる。
【0039】
記録部50は、上記作成された補正済み画像I'(x,y)と、その補正に用いられた補正データC(x,y)を互いに関連付けて記録媒体に保存するものである。
【0040】
上記構成により、同一被写体について取得された2つの放射線画像(対象画像I(x,y)および基準画像I(x,y))を用いて比較読影を行う際には、まず、領域取得部10が、対象画像I(x,y)および基準画像I(x,y)の各々について、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または素抜け領域をその画像の濃度トレンドを抽出するための領域として取得する。次に、近似データ取得部21が、その取得された各領域の画素値を用いて、対象画像I(x,y)と基準画像I(x,y)それぞれの濃度トレンドを近似したデータT(x,y)、T(x,y)を取得する。次に、補正データ作成部22が、その取得された近似データT(x,y)、T(x,y)を減算して補正データC(x,y)を作成し、補正処理部23が、補正データ作成部22において作成した補正データを用いて放射線画像I(x,y)の画素値を補正し、補正済み画像I'(x,y)を作成する。次に、表示部40が、補正処理部23において作成された補正済み画像I'(x,y)、その補正に用いられた補正データC(x,y)等をモニターの画面上に表示させる。
【0041】
ユーザーが画面上に表示された補正データC(x,y)のパラメータに対して、入力部30により修正値を入力すると、補正データ作成部22が、ユーザーによる修正値を入力部30から受け付け、その入力された修正値を用いてパラメータを修正し、補正処理部23が、修正後のパラメータにより規定される関数を用いて放射線画像の画素値を改めて補正し、補正済み画像I'(x,y)を作成する。そして、記録部50が、最終的に作成された補正済み画像I'(x,y)およびその補正に用いられた補正データを互いに関連付けて記録媒体に保存する。
【0042】
なお、ここでは、補正データ作成部22において作成した補正データC(x,y)をそのまま用いて補正を行うことにより補正済み画像I'(x,y)を作成した後、その結果をユーザーに提示して、必要に応じて補正データに修正を加え、修正後の補正データを用いて改めて補正を行う場合について説明したが、最初の補正を行なう前に、補正データ作成部22において作成した補正データC(x,y)等を一旦モニターの画面上に表示させ、必要に応じて補正データにユーザーによる修正を受け付け、修正後の補正データを用いて補正を行うようにしてもよい。
【0043】
上記実施の形態によれば、比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの放射線画像のうちいずれか一方の放射線画像の画素値を補正することにより、それらの放射線画像中に存在する濃度ムラを互いに一致させ、画像間の差異を視認しやすくすることができ、比較読影性能を向上させることができる。
【0044】
なお、比較読影の対象となる2つの放射線画像のうちいずれの画像を基準画像として本願発明による補正処理を行うかは任意に選択/決定してもよいが、比較的にポジショニングがよく、濃度ムラがない方の放射線画像を基準画像として選択することがより好ましい。
【符号の説明】
【0045】
1 放射線画像補正装置
10 領域取得部
20 補正部
21 トレンド近似データ取得部
22 補正データ作成部
23 補正処理部
30 入力部
40 表示部
50 保存部
I 対象画像
基準画像
C 補正データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの胸部正面放射線画像の各々について、該胸部正面放射線画像の所定の領域の画素値を用いて、前記胸部正面放射線画像の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向に現れる濃度の傾きである濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により前記各胸部正面放射線画像から取得された前記濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の前記各胸部正面放射線画像から前記データ取得手段により取得された前記濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、前記2つの胸部正面放射線画像のうちいずれか一方の胸部正面放射線画像の画素値を補正する補正手段とを備え、
前記データ取得手段が、前記胸部正面放射線画像中の、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を前記所定の領域として取得し、該取得した領域の画素値を用いて前記データを取得するものであることを特徴とする放射線画像補正装置。
【請求項2】
前記胸部正面放射線画像中の、前記肋骨の重なりが撮影された領域、および、前記素抜け領域のうち、いずれの領域を前記所定の領域として取得するかを選択する情報を入力するための選択情報入力手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の放射線画像補正装置。
【請求項3】
同一被写体について取得された2つの胸部正面放射線画像の各々の濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、前記胸部正面放射線画像のうちいずれか一方を補正する補正手段とを備えた放射線画像補正装置の動作方法であって、
前記データ取得手段により、比較読影の対象となる、前記2つの胸部正面放射線画像の各々について、該胸部正面放射線画像の所定の領域の画素値を用いて、前記胸部正面放射線画像の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向に現れる濃度の傾きである濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得ステップと、
前記補正手段により、前記各胸部正面放射線画像から取得された前記濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の前記各胸部正面放射線画像から取得された前記濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、前記2つの胸部正面放射線画像のうちいずれか一方の胸部正面放射線画像の画素値を補正する補正ステップとを有し、
前記データ取得ステップが、前記胸部正面放射線画像中の、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を前記所定の領域として取得し、該取得した領域の画素値を用いて前記データを取得するものであることを特徴とする放射線画像補正装置の動作方法。
【請求項4】
コンピュータを、
比較読影の対象となる、同一被写体について取得された2つの胸部正面放射線画像の各々について、該胸部正面放射線画像の所定の領域の画素値を用いて、前記胸部正面放射線画像の水平方向および垂直方向の少なくとも一方向に現れる濃度の傾きである濃度ムラを近似したデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段により前記各胸部正面放射線画像から取得された前記濃度ムラを近似したデータに基づいて、補正後の前記各胸部正面放射線画像から前記データ取得手段により取得された前記濃度ムラを近似したデータが互いに一致するように、前記2つの胸部正面放射線画像のうちいずれか一方の胸部正面放射線画像の画素値を補正する補正手段として機能させるための放射線画像補正プログラムであって、
前記データ取得手段が、前記胸部正面放射線画像中の、胸郭の左右の外輪郭部に存在する肋骨の重なりが撮影された領域、または、放射線が直接入射された素抜け領域を前記所定の領域として取得し、該取得した領域の画素値を用いて前記データを取得するように機能させる放射線画像補正プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52254(P2013−52254A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251840(P2012−251840)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2008−140960(P2008−140960)の分割
【原出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】