放射線療法と組み合わせた癌の治療のための粒子
本発明は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含む粒子であって、該金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される粒子を提供する。本発明は、該粒子を含む医薬組成物、並びに癌の治療及び診断における該粒子及び組成物の使用も提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、例えば放射線療法の治療の一部として使用されるX線からのような、X線による励起で遊離基を生じる、ドープされた金属酸化物を含む粒子に関する。本発明は、該粒子を含む組成物、並びに癌の治療及び診断における該粒子及び該組成物の使用にさらに関する。
【0002】
[発明に対する背景]
光線力学療法(PDT)は、いくつかの型の癌を治療するために一般的に使用される。PDTは、患者の血流中に光増感剤を注射することを必要とする。光増感剤は、身体中の細胞によって吸収されるが、腫瘍の脈管構造の異常又は欠陥により、一般に腫瘍内に蓄積する。光増感剤は、健常細胞よりもはるかに速く成長及び分裂する傾向があり、したがって、より高い代謝活性を有する、癌細胞によっても急速に吸収される。
【0003】
注射の約24〜72時間後、大部分の光増感剤は正常細胞から出ているが腫瘍内には残っており、腫瘍のみが、UV光又はレーザー光のような、特定の周波数の光に曝露される。腫瘍内に蓄積された光増感剤は、この光に対する曝露によって励起され、近くの酸素分子又は水分子とその組織内で反応して、例えば、一重項酸素(3.7msの平均寿命及び82nmの拡散距離)、スーパーオキシドラジカル(50msの平均寿命及び320nmの拡散距離)又はヒドロキシルラジカル(10−7sの平均寿命及び4.5nmの拡散距離)のような、活性酸素種(ROS)を生成する。生成されたROSは、近くの細胞の抗酸化防衛能力を圧倒し、これによって腫瘍内の癌細胞が破壊される結果となる。
【0004】
ROSの短い寿命及び拡散距離により、隣接した健常細胞に対して生じる損傷はほとんど又は全くなしに癌細胞を破壊することが可能となる。癌細胞を直接死滅させることに加えて、PDTはさらに、腫瘍内の血管に損傷を与え、それによってその腫瘍から栄養素を奪うことによって腫瘍を縮小させる又は破壊するようである。さらなる利点は、PDTがさらに、患者の免疫系を活性化して腫瘍細胞を攻撃しうることである。
【0005】
二酸化チタンは、UV光に対する曝露でROSを生成することが知られている。実際に、UV照射後の培養ヒト腺癌細胞に対する二酸化チタンの効果が研究されてきた(Xuら、Supramolecular Science、5(1998)、449〜451)。この試験では、透過型電子顕微鏡(TEM)により、該細胞の細胞膜及び内膜系に対する、酸化ストレスの結果としての破壊が示されている。二酸化チタン粒子は、該細胞の膜脂質を酸化してペルオキシダントを生成するヒドロキシルラジカルを生成すると考えられており、これにより、次いで、一連のペルオキシダント連鎖反応が開始される。酸化的にストレスを受けた悪性細胞は、それらが破壊される結果となる壊死の状態に進行する。
【0006】
二酸化チタン及びPDTにおいて使用される光増感剤の多くは、ヒトの体内に深く透過することができない特定の波長の光によって励起される。結果として、PDTは、皮膚癌のような、表在性の癌の治療に限定されている。
【0007】
身体の他の部位の癌は、代わりに放射線療法を使用して治療することができ、放射線療法には、X線のような、電離放射線の使用が必要とされる。しかし、腎細胞癌のような、いくつかの型の癌は放射線抵抗性であり、その理由は、癌を破壊するのに必要とされる放射線の線量が臨床診療において安全であるためには高すぎるからである。より高い線量の放射線は、癌を引き起こすリスクの増加にもつながる。したがって、既存の放射線療法の治療を増強又は改良することになる作用剤が必要とされている。
【0008】
国際特許出願PCT/FR2005/001145(国際公開第2005/120590号パンフレット)には、X線によって活性化可能な複合又は凝集した粒子が記載されている。この粒子は、互いに近くなるように配置される、2種の異なる無機化合物からなる。第1の無機化合物は、X線を吸収し、次いで、UV−可視光を放出することができる。第2の無機化合物は、UV−可視光を吸収し、次いで、水又は酸素との接触でフリーラジカルを生成することができる。こうした配置の化合物により、X線を使用して段階的励起方法によってROSを生成することが可能となる。しかし、各励起ステップに関連したエネルギー損失があり、その結果、X線の単位線量当たりに生成されるROSの量は相対的に少なくなる。
【0009】
[発明の概要]
本発明者らは、二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムに希土類元素をドープすることによって、得られたドープされた金属酸化物は、X線によってそれ自身が直接励起されてフリーラジカル、特に活性酸素種(ROS)、をX線の単位線量当たりに大量に生成することができることを発見した。癌部位に局在した粒子のX線励起による癌の治療は、最小限に侵襲性の方法であり、既存の臨床設備を利用できるであろう。
【0010】
ROSは、生体分子と反応して、タンパク質の構造及び機能を変化させ、且つ塩基の破壊及び1本鎖切断の生成によって細胞のDNAに酸化損傷を引き起こすことができる。さらに、オキシダントは、ミトコンドリアで作用してアポトーシスの開始を誘発することが知られている。したがって、腫瘍部位におけるROSの生成及び制御は、悪性細胞を死滅させるために使用することができる。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含む粒子であって、該金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される粒子を提供する。好ましい一態様において、本発明は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされた金属酸化物を含む粒子であって、該金属酸化物が二酸化チタンである粒子に関する。
【0012】
一般に、本発明は、複数のこうした粒子、使用及びその方法に関する。
【0013】
コア−シェル構造を有する複合粒子又はナノ粒子の凝集体からなる粒子は、癌を効果的に治療するのに好適な大きさで作製するのが困難である。こうした粒子は、成分物質のそれぞれに存在しうる空間(vacancies)、不純物及び欠陥により、ROSを生成するのに効率的ではない。本発明は、X線のみに対する直接的な曝露に応じてROSを生成する単一の活性物質(例えば、ドープされた金属酸化物)から形成される粒子を提供する。単相粒子中に存在するような、該活性物質は、特定のX線源によって励起される1種又は複数の適切な希土類元素ドーパントの選択によって同調させることができる。該物質からなる粒子は、癌の治療に有効な大きさで容易に作製することができる。
【0014】
本発明において、ROSは、少なくとも1種の希土類元素でドープされている二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムのX線照射から直接生成される。X線に対する曝露でUV−可視光を放出するさらなる無機化合物の存在は、ROSの生成に必須ではない。
【0015】
典型的には、本発明の粒子は、例えば、場合によってはそれぞれ希土類元素でドープされていてもよい、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数のような、X線を吸収してUV−可視光を放出するさらなる無機化合物を含有していない又は含んでいない。
【0016】
一般に、本発明は、(i)少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物であって、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される金属酸化物と、場合によっては(ii)1種又は複数のコーティング、リンカー基、ターゲティング部分、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤とから本質的になる粒子を提供する。
【0017】
本発明の粒子は、複合粒子又はナノ粒子の凝集体、特に、場合によってはそれぞれ希土類元素、又は一般にX線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物、でドープされていてもよい、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数を含む複合粒子又はナノ粒子凝集体ではないことが好ましい。
【0018】
本発明の他の一態様において、本発明の粒子は、療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するためのものであり、X線照射と組み合わせて使用する場合が好ましい。典型的には、該療法は、X線放射線療法である。本発明は、癌の治療において使用するための粒子を提供する。好ましい一態様において、本発明は、癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための粒子に関し、このとき、該粒子は金属酸化物を含み、該金属酸化物は二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている。好ましくは、該粒子は、該金属酸化物からなるコアを含む。
【0019】
本発明は、X線照射と組み合わせて使用する場合の(例えば、X線放射線療法と組み合わせて使用する場合の)癌の治療用の医薬品の製造のための該粒子の使用にさらに関する。
【0020】
本発明は、(i)複数の本発明の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物も提供する。本発明のさらなる一態様において、該医薬組成物は、療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するためのものであり、X線照射と組み合わせて使用する場合が好ましい。典型的には、該療法は、X線放射線療法である。本発明は、癌の治療において使用するための医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明は、X線照射と組み合わせた(例えば、X線放射線療法と組み合わせて使用する場合の)癌の治療用の医薬品の製造のための該医薬組成物の使用にも関する。
【0022】
本発明の他の一態様は、(a)複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む組合せである。
【0023】
本発明は、X線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、同時、並行、分離又は連続の使用のための複合製剤として、(a)複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む製品をさらに提供する。
【0024】
本発明のさらなる一態様は、本発明の粒子又は医薬組成物を対象に投与することと、癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導することとを含む、癌を治療する方法に関する。
【0025】
本発明は、本明細書に記載のような粒子又は医薬組成物を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、該癌細胞にX線照射を誘導することを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法も提供する。
【0026】
上記で説明したように、本発明の粒子は、腫瘍の組織内に又は癌細胞内に蓄積される。重希土類元素の存在により、腫瘍又は癌細胞内に局在した本発明の粒子の存在を、X線を使用して画像化することができる。これにより、患者における腫瘍又は癌細胞の存在の診断を可能にすることができ、腫瘍又は癌細胞の治療をモニタリングすることもできる。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。本発明は、癌の存在又は非存在を診断するための本発明の粒子又は医薬組成物の使用にさらに関する。
【0028】
本発明は、本発明の粒子又は医薬組成物を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における該粒子又は該医薬組成物の存在又は非存在を検出することを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法をさらに提供する。
【0029】
本発明は、粒子を400℃以上の温度で加熱するステップを含む、本発明の粒子を調製する方法であって、該粒子が、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含み、該金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される方法も提供する。好ましい一態様において、該金属酸化物は、二酸化チタンである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(Physical Referenceデータベース、National Institute of Standards and Technologyから入手した)ガドリニウムについてのcm2/gでの質量減衰係数(μ/ρ)(y軸上に示している)に対するMeVでの入射光子エネルギー(x軸上に示している)の図である。このグラフにより、特定の入射光子エネルギーにおいてガドリニウムがX線を吸収する強さの程度が示される。
【図2】本発明に従って、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子の重量による粒径分布を示す図である。
【図3】市販の二酸化チタン光触媒であるP25(Degussa)と比較した、種々の希土類元素でドープされた二酸化チタン粒子の光活性を示しているヒストグラムである。
【図4】種々の温度で焼成した後の、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン及びエルビウムでドープされた二酸化チタンの粒子の光活性を示しているヒストグラムである。この光活性は、市販の二酸化チタン光触媒であるP25(Degussa)と相対的に測定している。
【図5】ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートした後のいくつかの横紋肉腫細胞の画像を示している一連のスライドである。スライド(A)は、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した細胞の青色蛍光シグナルを示す。スライド(B)は、該細胞に入っている、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子のシリカコーティングに結合されたFITC標識からの緑色蛍光シグナルを示す。スライド(C)は、該細胞の明視野像である。スライド(D)は、細胞核及びドープされた二酸化チタン粒子の位置を示す合成像である。
【図6】異なる量のガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、X線を照射した後の横紋肉腫細胞(RH30、骨癌由来の株)の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図7】最初に、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、異なる線量のX線に曝露した、横紋肉腫細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図8】異なる量のガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、X線を照射した後のRH30(骨癌由来の株)細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図9】最初に、ガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、異なる線量のX線に曝露した、横紋肉腫細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図10】30nmの大きさを有する二酸化チタン粒子と共にインキュベートした後のいくつかのA549細胞の画像を示している一連のスライドである。スライド(A)は、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した細胞の青色蛍光シグナルを示す。スライド(B)は、該細胞に入っている、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子のシリカコーティングに結合されたFITC標識からの緑色蛍光シグナルを示す。スライド(C)は、該細胞の明視野像である。スライド(D)は、合成像であり、A549細胞の核の周りに局在している粒子を示す。
【図11】スフェロイド細胞を示している一連のスライドである。A1において、該スフェロイド細胞は、5mol%のGd、1mol%のEu、1mol%のErでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートしているが(A2は、A1に示している細胞の拡大画像である)、X線照射には曝露していない。B1において、該スフェロイド細胞は、該チタン粒子と共にインキュベートしていないが、X線を照射している(B2は、B1に示している細胞の拡大画像である)。C1において、該スフェロイド細胞は、該二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、且つX線を照射している(C2は、C1に示している細胞の拡大画像である)。
【0031】
[発明の詳細な説明]
UV光の使用に関連した制限は、X線のようにより貫通性のエネルギー源を使用して、例えば二酸化チタンを励起させることによるような、光触媒反応を誘発することによって克服できる。X線が物質の原子に当たるときに、電磁放射線の振動領域は、原子内に拘束された電子と相互作用する。いずれの放射線も、これらの電子によって拡散されるか、又は吸収されてこれらの電子を励起することになる。以下の式によって求められるように、初期強度I0を有する細い平行した単色のX線ビームは、厚さ「t」の試料を通過すると同時に、強度Iまで低減されることになる:
I=I0e−(μ/ρ)ρt
式中、μ/ρは、質量減衰係数であり、これは、原子の種類及びその物質の密度ρによって決まる。
【0032】
特定のエネルギーにおいて、物質の吸収は大幅に増加して、吸収端を生じる。こうした各吸収端は、入射光子のエネルギーが、吸収している原子のコア電子を連続状態まで励起させるのに、すなわち、光電子を生じるのに、ちょうど十分なときに生じる。従来の放射線療法を行うための装置において使用されるX線源のエネルギーは、典型的には0.08〜0.09MeVである。このエネルギー範囲にあるX線の光電子は、希土類元素によって吸収され、吸収端を示す(例えば、希土類元素ガドリニウムについての図1を参照されたい)。二酸化チタンのような、金属酸化物を、ガドリニウムのような、大きい吸収断面積の物質でドープすることにより、例えば、エネルギー吸収が最大となるであろう。
【0033】
本発明は、1種又は複数の粒子、典型的には複数の粒子であって、そのそれぞれが、少なくとも1種の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、該金属酸化物が、二酸化チタン(TiO2;チタニアとしても知られる)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO2;セリアとしても知られる)及びこれらの2種以上の混合物から選択される粒子を提供する。
【0034】
典型的には、各粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされた単一の金属酸化物を含み、該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化セリウムから選択される。
【0035】
一実施形態において、該金属酸化物は、少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている。
【0036】
ドープされた二酸化チタン粒子及びドープされた酸化亜鉛粒子の調製方法は、国際特許出願PCT/GB99/01685(国際公開第99/60994号パンフレット)及びPCT/GB00/04587(国際公開第01/40114号パンフレット)、並びに米国特許出願公開第2009/0110929号に記載されている。ドープされた酸化セリウム粒子の調製方法は、国際特許出願PCT/GB02/05013(国際公開第03/040270号パンフレット)に記載されている。
【0037】
典型的には、ドープされた金属酸化物の粒子は、例えば、上記の方法のうちの1つのような標準的な方法を使用して調製され、次いで、加熱のステップを受ける。本発明の粒子は、粒子(すなわち、前駆物質粒子)を400℃以上の温度で加熱することによって調製されることが好ましく、該粒子(すなわち、前駆物質粒子)は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含み、該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される。好ましい一態様において、該金属酸化物は、二酸化チタンである。より好ましくは、該粒子は、500℃以上、特に650℃以上、特に少なくとも700℃の温度での加熱によって調製される。該粒子は、少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間加熱される。
【0038】
いくつかの例において、少量の希土類元素ドーパントは該金属酸化物の表面に存在しうるが、大部分のドーパントは該金属酸化物の本体又は母格子の中に存在するであろう。
【0039】
一般に、該金属酸化物の母格子は、少なくとも1種の希土類元素で置換型ドープ又は侵入型ドープされていてもよい。好ましくは、該金属酸化物は、少なくとも1種の希土類元素で置換型ドープされている。
【0040】
該金属酸化物は、二酸化チタンであることが好ましい。該二酸化チタンは、いかなる形態、例えば、鋭錐石、ルチル又は板チタン石の形態にあってもよい。より好ましくは、該二酸化チタンは、鋭錐石の形態にある。鋭錐石の形態の二酸化チタンは、他の形態の二酸化チタンよりも高い固有の光活性を有するので有利である。
【0041】
一実施形態において、該二酸化チタンのうちの少なくとも80重量%は、鋭錐石の形態にある。該二酸化チタンのうちの少なくとも85重量%、特に少なくとも90重量%、が鋭錐石の形態にあることが好ましい。より好ましくは、該二酸化チタンのうちの少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%、が鋭錐石の形態にある。
【0042】
本発明の文脈において、「2種以上の」金属酸化物「の混合物」に対する言及は、二酸化チタンと酸化亜鉛;二酸化チタンと酸化セリウム;酸化亜鉛と酸化セリウム;又は二酸化チタンと酸化亜鉛と酸化セリウム;との混合物のいずれかを指す。ここで、少なくとも1種の、しかし好ましくはそれぞれの、該金属酸化物は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「希土類元素」という用語は、周期表のランタニド群からの元素、すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuを指す。プロメチウム(Pm)の同位体の全てが放射性である。したがって、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種の希土類元素でドープされていることが好ましい。該希土類元素は、一般に、ドーパントとして該金属酸化物の母格子中に陽イオンの形態で存在する。該金属酸化物が酸化セリウムであるときには、該酸化セリウムは、セリウム以外の少なくとも1種の希土類元素でドープされていることが好ましい。
【0044】
二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムの母格子中のドーパントとしての1種又は複数の希土類元素の存在により、これらの金属酸化物をX線によって励起することができ、ヒト又は動物の身体の治療において使用されてきた、活性酸素種(ROS)のような、フリーラジカルが生成される。ドープされた金属酸化物によって生成されるROSの量は、とりわけ、希土類元素ドーパントの固有の性質及び治療の一部として使用されるX線のエネルギーによって決まることになる。したがって、治療の一部として特定の波長(すなわち、エネルギー)のX線を使用するときに好適な量のROSを生成するために、該金属酸化物及び(1種又は複数の)該希土類元素を選択しなければならない。これは、入射X線のエネルギー範囲内に入るエネルギーにおいてX線を強く吸収するドーパントとして希土類元素を選択することによって達成することができる。
【0045】
実際には、放射線療法用又は画像診断(例えば、ラジオグラフィー)用かどうかにかかわらず、医療用にX線を生成するために従来法で使用される装置は、特定の範囲内のエネルギーを有するX線を発生する傾向がある。通常、放射線療法において使用されるX線のエネルギーは、画像診断用に使用されるX線のエネルギーよりも高くなる傾向がある。
【0046】
典型的には、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている。
【0047】
一実施形態において、該金属酸化物は、ガドリニウム(Gd)でドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ガドリニウムと、ユウロピウム(Eu)、エルビウム(Er)又はネオジム(Nd)のうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、GdとEu、GdとEr、GdとNd、GdとEuとEr、GdとEuとNd、GdとErとNd、又はGdとEuとErとNdとでドープされていてもよい。より好ましくは、該金属酸化物は、ガドリニウムとユウロピウムとエルビウムとでドープされている。
【0048】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、ユウロピウムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ユウロピウムと、ガドリニウム、エルビウム又はネオジムのうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、EuとEr、EuとNd、又はEuとErとNdとでドープされていてもよい。
【0049】
さらなる一実施形態において、該金属酸化物は、エルビウムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、エルビウムと、ガドリニウム、ユウロピウム又はネオジムのうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、ErとEu、又はErとNdとでドープされていてもよい。
【0050】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、ネオジムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ネオジムと、ガドリニウム、ユウロピウム又はエルビウムのうち1種又は複数とでドープされている。
【0051】
一般に、該金属酸化物は、0.1〜25mol%(例えば、7.5〜25mol%)、好ましくは1〜20mol%、より好ましくは2.5〜15mol%、特に5〜13.5mol%、さらにより好ましくは7.5〜12.5mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている。
【0052】
一実施形態において、該金属酸化物は、ガドリニウムと、少なくとも1種の他の希土類金属とでドープされており、このとき、該金属酸化物は、1〜12.5mol%、好ましくは5〜10mol%の量のガドリニウムでドープされている。
【0053】
一実施形態において、該金属酸化物は、(i)3.5〜12.5重量%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5重量%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5重量%の量のエルビウムとでドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、(i)5〜10重量%の量のガドリニウムと、(ii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のユウロピウムと、(iii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のエルビウムとでドープされている。
【0054】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、(i)3.5〜12.5mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5mol%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5mol%の量のエルビウムとでドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、(i)5〜10mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.75〜1.25mol%(例えば、約1mol%)の量のユウロピウムと、(iii)0.75〜1.25mol%(例えば、約1mol%)の量のエルビウムとでドープされている。
【0055】
該金属酸化物中に1種又は複数のドーパントとして組み込まれる1種又は複数の希土類元素の総量は、該金属酸化物を調製するために使用される出発物質に対する、出発物質を含む希土類元素の相対モル量によって決まることになる。該金属酸化物中にドーパントとして組み込まれる希土類元素の量は、該粒子を製造するために使用する方法によって決めることができ、この方法は該粒子中に望ましい量のドーパントが得られるように規定どおりに構成されうる。(1種又は複数の)金属酸化物中のドーパントとしての希土類元素の量は、当業者によく知られている技術を使用して容易に測定することができる。複数の本発明の粒子が療法若しくは治療の一部として存在する又は使用されるときには、mol%での上記の量は、該粒子の(1種又は複数の)金属酸化物にドープされている(1種又は複数の)希土類金属の平均的な(すなわち、平均)総量を指す。
【0056】
典型的には、本発明の粒子は、400nm未満の大きさを有する。これにより、該粒子がヒト又は動物の身体の血流から離れることが可能となる。該粒子は、380nm未満、特に、300nm未満の大きさを有することが好ましい。腫瘍の脈管構造は高浸透性であり、50〜600nmの孔径を有する。
【0057】
大きな粒子は、細網内皮系によって容易に分離されることができ、肝臓又は脾臓によって吸収されるか、又は身体から急速に除去されうる。本発明の粒子は、100nm以下の大きさを有することが好ましい。この大きさを有する粒子は、食細胞の取り込み及び肝臓の濾過による除去を回避することになる。
【0058】
小さな粒子は、腫瘍の漏出性の毛細血管壁を容易に通過することができる。しかしながら、腎臓も、糸球体濾過によってきわめて小さな粒子を除去することができる。本発明の粒子は、5nm以上の大きさを有することが好ましい。この大きさを有する粒子は、腎臓による該粒子の除去を回避することになり、腫瘍内での粒子の良好な保持を可能にする。
【0059】
典型的には、本発明の粒子は、1〜100nm、例えば15〜50nm、より好ましくは5〜75nm(例えば、10〜75nm)、特に10nm〜65nmの大きさを有することが好ましい。該粒子の大きさは、該粒子が細胞に入ることのできるように選択することができる。この目的では、該粒子は、65nm未満の大きさを有するのが好ましい。該粒子は、細胞の細胞小器官にも入ることができてもよい。これを達成するために、該粒子は、50nm未満、特に20〜35nmの大きさを有することが好ましい。
【0060】
一般に、本発明の粒子は、いかなる形状を有していてもよく、それは、規則的であっても又は不規則であってもよい。該粒子の形状は、該粒子を調製するために使用する方法によって決まりうる。該粒子が球状であるときには、該粒子の大きさとは、単純にその粒子の直径を指す。しかし、本発明は、球状でない粒子も包含する。こうした例では、該粒子の大きさとは、非球状の形状を有する該粒子と同じ重量を有する球状粒子の直径を指す(すなわち、重量に基づいた粒径測定)。
【0061】
通常、多様な大きさを有する粒子の分布が得られる。したがって、本発明の医薬組成物、療法又は治療におけるように、複数の本発明の粒子があるときには、単一の粒子についての上記の大きさは、分布における平均的な(すなわち、平均の)粒子の大きさを指す。分布における平均的な粒子の大きさは、標準的な遠心分離測定技術を使用して決定することができる。
【0062】
本発明は、シリカ又はアルミナのような、生物学的に不活性な物質のコア、及び少なくとも1種の希土類元素でドープされた金属酸化物のコア上の層を有する粒子を除外しないことを理解されたい。しかし、上述したもののような大きさを有するような粒子を調製することは、困難である。
【0063】
本発明の粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物からなるコアを含むことが好ましい。一般に、本発明の粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物からなる単一のコアを有する。
【0064】
典型的には、本発明の粒子は、コーティング、好ましくは、シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する。該粒子上にコーティングを包めることにより、該粒子の生体適合性を高め、in vivoでの凝集を防ぎ、且つ該粒子を他の作用剤と共に機能させることができる。ROSは、該粒子が水又は酸素と接触したときに、該粒子の表面上で生成される。したがって、該コーティングは、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物の外表面を完全に覆っていないことが好ましい。より好ましくは、該コーティングは、多孔性である。
【0065】
上記の粒子の大きさに対するいずれの言及も、存在しうるいかなるコーティングも含めた、該粒子の全体の大きさを指す。複数の粒子があり、そのためにその大きさが平均粒径であるときには、大きさとは、存在しうる(1種又は複数の)いかなるコーティングも含めた、該粒子の平均の全体の大きさを指す。一般に、該コーティングの厚さは、0.1〜10nm、好ましくは1〜5nmである。しかし、1種又は複数の粒子の大きさに対するいずれの言及も、該粒子と関連した又は該粒子に結合されたいかなるリンカー基、ターゲティング部分、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、又は超常磁性コントラスト剤も含んでいない。
【0066】
該コーティングは、シリカ又はショ糖であることが好ましい。より好ましくは、該コーティングは、シリカである。
【0067】
典型的には、本発明の粒子は、治療の対象の腫瘍組織内への注射(すなわち、腫瘍内注射)又は癌部位への注射により該粒子を投与することによって癌の治療において使用するためのものである。該粒子は、非経口的に投与することもできる。
【0068】
本発明の粒子は、2つの機序によって、腫瘍組織などの、標的組織内に蓄積されうる。第1の機序である、いわゆる受動的なターゲティングは、非特異的であり、且つ腫瘍組織における該粒子の蓄積に依存する。これは、腫瘍が高浸透性の脈管構造を有するか、又はいくつかの他の生理学的異常を有しうるために生じうる。第2の機序は、ターゲティング部分(例えば、リガンド)が標的組織における該粒子の部位特異的な蓄積を誘導する、能動的なターゲティングの方法である。これは、悪性細胞内で主に又は独占的に見出される分子のサイン又は構造に対する高い親和性を有するターゲティング部分を、該粒子に結合又は共役させることによって達成されうる。該ターゲティング部分は、分子のサイン又は構造(例えば、遺伝子、タンパク質、細胞小器官、例えばミトコンドリアなど)のような、一般に癌細胞又は腫瘍組織内のみに存在する生体部分に対する選択的な結合親和性を有する。該ターゲティング部分は、該腫瘍組織又は癌細胞において該粒子を濃縮することができる。
【0069】
一実施形態において、本発明の粒子は、少なくとも1つのターゲティング部分を含む。ターゲティング部分は、該粒子又は各粒子のコーティングに結合されることが好ましい。
【0070】
典型的には、該ターゲティング部分は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド、脂質、代謝産物、抗体、受容体リガンド、リガンド受容体、ホルモン、糖、酵素又はビタミンなどである。例えば、該ターゲティング部分は、薬剤(例えば、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、PSMA、タモキシフェン/トレミフェン、イマチニブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ(cetximab))、DNAトポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬、病気の細胞の周期を標的とする化合物、遺伝子発現マーカー、血管新生を標的とするリガンド、腫瘍マーカー、葉酸受容体を標的とするリガンド、アポトーシス細胞を標的とするリガンド、低酸素を標的とするリガンド、DNAインターカレーター、病気の受容体を標的とするリガンド、受容体マーカー、ペプチド(例えば、シグナルペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)ペプチド)、ヌクレオチド、抗体(例えば、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)抗体、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40)、アンチセンス分子、siRNA、グルタメートペンタペプチド、グルコースを模倣した作用剤、アミフォスチン、アンジオスタチン、カペシタビン、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン及びトリメチルリシンから選択することができる。好ましくは、該ターゲティング部分は、核移行シグナル(NLS)ペプチドである。NLSペプチドの一例は、PPKKKRKV又はCGGFSTSLRARKAである。好ましくは、該NLSペプチドは、CGGFSTSLRARKAである。
【0071】
典型的には、該ターゲティング部分は、該粒子又は該粒子のコーティングに共有結合又は非共有結合のいずれかで結合される。好ましくは、ターゲティング部分は、各粒子のコーティングに共有結合で(すなわち、共有結合を形成することによって)結合される。
【0072】
ターゲティング部分は、直接に又はリンカー基を介して、粒子又はその粒子のコーティングに結合させることができる。ターゲティング部分は、リンカー基によって粒子のコーティングに結合される、特に、共有結合で結合されることが好ましい。
【0073】
該リンカー基の性質は、本発明の重要な部分ではない。しかし、ヒト又は動物の身体への該粒子の投与後に、該リンカー基は、いつまでも、又は少なくとも有効なターゲティングが起こってその結果目的の標的部位で粒子が蓄積するようになるのを可能にするのに十分な期間、完全なままで残っていなければならない。該リンカー基は、前記ターゲティング部分を該粒子又は該粒子のコーティングに連結することができるいかなる部分であってもよい。こうしたリンカー部分は、当技術分野においてよく知られている。
【0074】
典型的には、該リンカー基は、50〜1000、好ましくは100〜500の分子量を有する。
【0075】
一実施形態において、該リンカー基は、式−OOC(CR2)nCOO−を有する部分であり、式中、nは、1〜10の整数であり、且つ各Rは、水素及び場合によっては置換されたC1〜C6アルキル基から独立に選択される。場合によっては置換された各C1〜C6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸及びリン酸塩から選択される1個又は複数の置換基で独立に置換されていてもよい。好ましくは、各Rは水素である。
【0076】
他の一実施形態において、該リンカー基は、式−(CR’2)m−を有するアルキレン部分であり、式中、mは、1〜10の整数であり、且つ各R’は、水素及び場合によっては置換されたC1〜C6アルキル基から独立に選択され、このとき、アルキレン部分にある0又は1〜5個、好ましくは1又は2個の炭素原子は、アリーレン、−O−、−S−及び−NR’’−から選択される部分によって置換され、式中、R’’は、水素又はC1〜C6アルキルであり、且つ該アリーレン部分は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシ基から選択される1、2若しくは3個の置換基によって置換される。場合によっては置換された各C1〜C6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸及びリン酸塩から選択される1個又は複数の置換基で独立に置換されていてもよい。アルキレン部分の少なくとも2個の炭素原子が−O−及び/又は−NR’’−によって置換されるときには、アルキレン部分において置換されるこれらの炭素原子が互いに直接に隣接していないことが好ましい。これにより、化学的に反応性の官能基である−O−O−、−O−NR’’−及び−NR’’−NR’’−を含むリンカー基の存在が回避される。
【0077】
本発明の粒子は、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤をさらに含んでいてもよい。1種又は複数のこれらの試薬が存在する場合、これらを使用して、該粒子が標的部位に蓄積されているかどうかを決定することができる。好適な光学コントラスト剤の例は、Cy5.5(クロロトキシンとシアニンとの組合せ);イソチオシアネート化合物、例えば、FITC及びTRITCなど;アミン反応性スクシンイミジルエステル、例えば、NHS−フルオレセインなど;並びにスルフヒドリル反応性マレイミド活性化蛍光体、例えば、フルオレセイン−5−マレイミドなどである。好適な放射性同位体の例としては、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、イットリウム−90、イットリウム−88、テクネチウム−99m、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、インジウム−114m及びインジウム−114などが挙げられる。超常磁性コントラスト剤の一例は、1個又は複数の酸化鉄ナノ粒子である。
【0078】
該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、該粒子又は各粒子のコーティングに結合されていることが好ましい。該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、超常磁性コントラスト剤又は該ターゲティング部分は、該粒子上へのコーティングの形成中に、該コーティング中に埋め込まれてもよく、且つそれによって該コーティングに結合されてもよい。これは、該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、超常磁性コントラスト剤又は該ターゲティング部分を、該コーティングを調製するために使用される出発物質と混合することによって簡単に達成することができる。
【0079】
典型的には、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、直接に又は、上記のリンカー基のような、リンカー基を介して、粒子又はその粒子のコーティングに結合させることができる。該リンカー基は、放射性同位体とキレート化することができる官能基を有していてもよい。こうした基は、リンカー化合物自体の中に存在していてもよく、又はリンカーが一度コーティングに結合されてからそのリンカーに付加されてもよい。光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、リンカー基によって粒子のコーティングに結合される、特に、共有結合で結合されることが好ましい。
【0080】
本発明は、(i)複数の本発明の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物も提供する。好適な薬学的に許容される成分は、当業者によく知られており、薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水、等張液)、賦形剤、添加剤、アジュバント、充填剤、緩衝液、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、溶解剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤及び甘味剤などが挙げられる。好適な担体、賦形剤、添加剤などは、標準的な医薬の教科書の中で見出すことができる。例えば、Handbook for Pharmaceutical Additives、第2版(M.Ash及びI.Ash編)、2001(Synapse Information Resources、Inc.、Endicott、New York、USA)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott、Williams&Wilkins発行、2000;並びにHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994を参照されたい。
【0081】
医薬組成物は、液体剤、溶液剤又は懸濁剤(例えば、水溶液又は非水溶液)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤(例えば、コート錠)、顆粒剤、散剤、ロゼンジ剤、パステル剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル剤及び軟ゼラチンカプセル剤)、丸剤、アンプル剤、ボーラス剤、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤又は油剤の形態であっても(すなわち、として製剤化されても)よい。
【0082】
典型的には、本発明の粒子は、1種又は複数の薬学的に許容される成分に溶解されるか、これに懸濁されるか、又はこれと混合される。
【0083】
(例えば、注射による)非経口投与に好適な医薬組成物としては、本発明の粒子が溶解又は懸濁されている水性又は非水性の無菌液などを挙げることができる。こうした液体は、抗酸化剤、緩衝液、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤、及びその製剤を予定されるレシピエントの血液(又は他の関連する体液)と等張にする溶質などの、薬学的に許容される他の成分をさらに含んでいてもよい。添加剤の例としては、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。こうした製剤において使用するための好適な等張液の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー溶液又は乳酸加リンゲル注射液などが挙げられる。
【0084】
典型的には、該医薬組成物中の該粒子の濃度は、1×1010粒子/ml〜1×1024粒子/ml、例えば1×1013粒子/ml〜1×1021粒子/ml、より好ましくは1×1015粒子/ml〜1×1018粒子/mlである。
【0085】
該医薬組成物は、単位用量又は多回用量の密封された容器に入れて提供することもできる。即席注射溶液及び懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製することもできる。
【0086】
(例えば、経口摂取による)経口投与に好適な医薬組成物としては、液体剤、(例えば、水性又は非水性の)溶液剤又は懸濁剤、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、アンプル剤又はボーラス剤などが挙げられる。
【0087】
錠剤は、従来の方法によって、例えば、圧縮又は成形によって、場合によっては1種又は複数の補助成分と共に、作製することができる。圧縮錠は、粉末又は顆粒のような自由に流れる形態の活性化合物を、場合によっては1種又は複数の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤又は賦形剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);保存剤(例えば、メチルp−ヒドロキシ安息香酸、プロピルp−ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸);香味、香味増強剤、及び甘味剤と混合して、好適な機械の中で圧縮することによって調製することができる。成形錠は、不活性な液体賦形剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を、好適な機械の中で成形することによって作製することができる。該錠剤は、場合によっては、例えば、放出に影響を与えるために(例えば、胃以外の腸の部分での放出を可能にする腸溶コーティング)、コーティングされていてもよい。
【0088】
一般に、該医薬組成物は、治療有効量の本発明の粒子を含むことになる。該粒子及び該粒子を含む医薬組成物の適切な用量が患者によって変化しうることは、当業者によって理解されるであろう。最適用量の決定には、一般に、治療的利点のレベルとあらゆるリスク又は有害な副作用とのバランスをとることが必要とされることになる。選択される用量レベルは、投与の経路、投与の時間、粒子の排出の速度、治療の期間、組み合わせて使用する他の化合物及び/又は物質、状態の重症度、並びに患者の種、性別、年齢、体重、状態、総合的な健康状態、及びこれまでの病歴を含む多様な因子によって決まることになる。一般に、その用量は、望ましい効果を達成する、作用部位での局所濃度を達成するように選択されることになるが、粒子の量及び投与の経路は、最終的に、医師、獣医師、又は臨床医の判断によることになる。
【0089】
本発明は、(a)上記のような、複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む組合せをさらに提供する。好ましくは、該放射線増感剤は、X線放射線増感剤である。好適な放射線増感剤としては、ミソニダゾール、メトロニダゾール及びチラパザミンなどが挙げられる。この組合せは、本発明の粒子又は医薬組成物について本明細書に記載のように、療法によるヒト又は動物の身体の治療のために使用するか、癌の治療のために使用するか又はX線照射と組み合わせた癌の治療用の医薬品の製造のために使用することができる。
【0090】
本発明は、(iii)上記のような放射線増感剤をさらに含む、上記のような医薬組成物にも関する。本発明の粒子及び該放射線増感剤は、単一の医薬組成物の部分を形成していることが好ましい。
【0091】
本発明のさらなる一態様は、X線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、同時、並行、分離又は連続の使用のための複合製剤として、(a)本明細書に記載のような、複数の本発明の粒子と、(b)上記のような放射線増感剤とを含む製品に関する。
【0092】
本発明は、一般にX線照射と組み合わせて使用する場合の、癌を治療するための、又は癌の治療のための、方法及び使用にも関する。療法又は治療の一部として、本発明の粒子は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、任意の都合のよい投与の経路によって対象に投与することができる。したがって、X線照射と組み合わせた癌の治療に対するいずれの言及も、一般に、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与し、次いで、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導することによる癌の治療を指す。
【0093】
一般に、本発明の癌治療は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を、腫瘍組織内への注射(すなわち、腫瘍内注射)又は癌の部位若しくは位置での注射によって対象に投与することを含む。
【0094】
本発明の粒子の投与は、全身が好ましく、典型的には所望の作用の部位における。
【0095】
典型的には、癌を治療すること又は癌の治療は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に経口的に(例えば、経口摂取によって)又は、より好ましくは、非経口的に投与することを含む。非経口投与は、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、包膜内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下及び胸骨内の注射から選択されることが好ましい。
【0096】
一般に、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、治療有効量の該粒子を対象に投与することを含む。
【0097】
投与は、1つの用量で、治療の過程を通して連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔での分割用量で)行うことができる。最も有効な投与の方法及び用量を決定する方法は、当業者によく知られており、療法のために使用される製剤、療法の目的、治療中の標的組織又は細胞、及び治療中の対象によって異なることになる。治療する医師、獣医師、又は臨床医によって選択される用量のレベル及びパターンで単回投与又は多回投与を行うことができる。
【0098】
一般に、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位に定められた線量のX線照射を誘導することを含む。このX線は、1つの線量で、治療の過程を通して連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔での分割線量で)投与することができる。治療する医師、獣医師、又は臨床医によって選択される線量のレベル及びパターンで単回投与又は多回投与を行うことができる。
【0099】
ROSを生成するために、UV照射のような、他の型の放射線を使用することは一般に不要である。したがって、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位にUV照射を誘導するステップを必要としないことが好ましい。より好ましくは、癌を治療するための本発明の治療又は方法において使用する唯一の型の放射線は、X線である。
【0100】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与する第1のステップ、次いで、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する第2のステップを含み、その後、対象が定められた総線量のX線を受けるまで第1のステップ及び第2のステップを連続して繰り返す。
【0101】
あらゆる種類の癌を、原則として、治療することができ、薬剤抵抗性の腫瘍に関連した問題も回避される。したがって、本発明は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌を治療するために使用することもできる。本発明は、腎細胞癌のような、放射線抵抗性である癌を治療するために使用することもできる。
【0102】
典型的には、本発明の粒子は、癌の治療において放射線療法の効果を高める。したがって、本発明は、医薬組成物、組合せ、製品、医薬品などとしてかどうかにかかわらず、好ましくはX線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、放射線増感剤としての、該粒子の使用に関する。放射線増感剤は、効力の損失なしにX線の線量を低減させることができ、その結果、本発明の粒子の非存在下でより高い線量のX線を使用して得られるものと比較して同様の治療結果が得られる。或いは、放射線増感剤はX線の効果を高め、これは結果として、本発明の粒子の非存在下で同じ線量のX線を使用した場合に得られるものと比較して患者にとって改良された治療結果となる。
【0103】
一実施形態において、癌を治療するための該治療又は方法は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、本発明の粒子を腫瘍組織内への注射又は癌の部位若しくは位置での注射によって対象に投与することを含む。
【0104】
典型的には、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該腫瘍組織内への注射又は該癌の部位若しくは位置での注射によって対象に該粒子を投与した後に直接行われる。いくつかの例において、該粒子を腫瘍組織又は癌部位の全体に拡散させるための短い時間が、その位置にX線照射を誘導する前に必要とされうる。一般に、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に投与した後、1時間以内に行われる。好ましくは、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に投与した45分後以内、より好ましくは30分後以内、特に15分後以内、特に10分後以内、さらにより好ましくは5分以内、又は直後に行われる。
【0105】
他の一実施形態において、癌を治療するための該治療又は方法は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、本発明の粒子を対象に経口的又は非経口的に投与することを含む。
【0106】
典型的には、該粒子を対象に投与した後、該粒子を癌又は腫瘍組織の位置に蓄積させるために、その位置にX線照射を誘導する前に、十分な時間を経過させる。該粒子の投与とX線での照射との間のこの時間は、とりわけ、投与の様式、該粒子に結合されたターゲティング部分があるかどうか、及びその癌の性質によって決まることになる。
【0107】
典型的には、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に、好ましくは経口的又は非経口的に投与した後、少なくとも3時間、特に少なくとも6時間、好ましくは9〜48時間、特に12〜24時間行われる。
【0108】
一般に、該対象は、20〜70Gyの総X線量、例えば40〜50Gyなどに曝露される。
【0109】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位に、1.0〜3.0Gy、好ましくは1.5〜2.5Gy線量、より好ましくは1.8〜2.0Gy線量のX線照射を誘導することを含む。こうした低周波数の線量は、健常細胞に、照射によって引き起こされたあらゆる損傷を修復するようになるための時間を与えることを意図するものである。
【0110】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法におけるX線照射は、0.08MeV〜0.09MeVのエネルギーを有する。
【0111】
該方法は、癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する前に、癌又は腫瘍組織の位置又は部位における1種又は複数の本発明の粒子の存在又は非存在を検出するステップも含みうる。この検出ステップは、下記のように行うこともできる。
【0112】
本発明は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、該癌細胞及び1種又は複数の粒子にX線照射を誘導することを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法を提供する。典型的には、1種又は複数の本発明の粒子は、該癌細胞及び1種又は複数の粒子にX線照射を誘導する前に、該細胞培養物、培地又は溶液中に該癌細胞の存在下、インキュベーター中などで、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間放置される。
【0113】
本発明は、ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための本発明の粒子又は医薬組成物にも関する。本発明は、癌の存在又は非存在を診断するためのこれらの使用に関する。さらに提供されるのは、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出することを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法である。
【0114】
標的組織における該粒子の蓄積は、受動的ターゲティング又は能動的ターゲティングによってかどうかにかかわらず、腫瘍又は癌をラジオグラフィーによって、典型的には従来のX線画像法を使用して、診断するのを可能にしうる。腫瘍内に蓄積する、該粒子の金属酸化物中の重希土類元素ドーパントの存在は、X線によって腫瘍組織が可視化されるのを可能にしうる。
【0115】
典型的には、1つの位置又は部位において1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出するステップは、その位置又は部位にX線照射を行ってX線画像を得ることを含む。次いで、該X線画像を使用して、癌又は腫瘍組織がその位置又は部位に存在する又は存在しないかどうかを決定することもできる。診断に使用する場合、X線に対する対象の曝露時間は、一般に1秒〜30分、好ましくは1分〜20分、より好ましくは1秒〜5分である。
【0116】
1種又は複数の該粒子が光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤を含む場合には、その作用剤は、その位置又は部位における1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出するステップを行うために使用することもできる。1種又は複数の該粒子を検出する厳密な方法は、存在する該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤によって決まることになる。
【0117】
一実施形態において、癌性であると疑われる位置又は部位における本発明の粒子の蓄積又は多さを検出することによって癌の存在を診断することもできる。
【0118】
一般に、本発明は、哺乳類、特にヒトの治療又は診断に関する。
【0119】
定義
本明細書中で癌を治療することについての文脈において使用される場合、「治療」という用語は、一般に、ヒト又は動物(例えば、獣医学的適用において)のかどうかにかかわらず、例えばその状態の進行の阻害のように、いくつかの望ましい治療効果が達成される、治療及び療法を指す。この用語は、進行の速度の低下、進行の速度の停止、状態の退行、状態の改善、及び状態の治癒を含む。待期的治療又は予防的手段としての治療(すなわち、予防、防止)も含まれる。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「治療有効量」という用語は、医薬組成物、製品、組合せなどの部分としてかどうかにかかわらず、望ましい治療レジメンに従って投与するとき及び該対象を定められた線量のX線照射で治療するときに、いくつかの望ましい治療効果を生じるために有効な、本発明の粒子の量を指す。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「コア」という用語は、一般に、該粒子の本体、特に、該粒子がシェルもコーティングも有していないときを指す。典型的には、「コア」という用語は、該粒子の中央の最も内側の部分を指す。
【0122】
本明細書中で使用される場合、「シェル」という用語は、一般に、該粒子の、例えばコアの表面のような、内表面を実質的に又は完全に覆う層、典型的には外層を指す。本明細書中で使用される場合、「シェル」という用語は、金属元素又は、例えば、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数などであって、各化合物は、場合によっては希土類元素でドープされていてもよい、X線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物から形成された層を指すと理解されたい。
【0123】
本明細書中で使用される「複合粒子」に対するいずれの言及も、コアと、コアとは異なる物質からなる少なくとも1つのシェルとを有する粒子(例えば、コア−シェル構造)を指す。
【0124】
本明細書中で使用される「粒子の凝集体」に対するいずれの言及も、複数のより小さい分離した粒子、典型的にはナノ粒子の凝集物である、粒子を指す。一般に、粒子の凝集体は、例えば金属酸化物と、金属元素、又はX線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物(例えば、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4又はCs3Lu(PO4)2、ここで、各化合物は、場合によっては希土類元素でドープされていてもよい)のいずれかとのような、2種の異なる物質から構成される。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「オリゴ糖」という用語は、3〜10個の構成要素の単糖を含む糖重合体を指す。オリゴ糖の一例は、ショ糖である。
【0126】
本明細書中で使用される場合、「多糖」という用語は、少なくとも11個の構成要素の単糖からなる糖重合体を指す。多糖の一例は、アガロース又はデキストランである。
【0127】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」という用語は、典型的には(他に明記がない限り)1〜6個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を取り除くことによって得られる一価の部分を指し、これは、脂肪族又は脂環式であってもよく、飽和されている。アルキル基及び部分の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルなどが挙げられる。
【0128】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン原子」という用語は、−F、−Cl、−Br又は−I基又は部分を指す。
【0129】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、−OH基又は部分を指す。
【0130】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基又は部分を指す。アルコキシ基の例としては、−OMe(メトキシ)、−OEt(エトキシ)、−OnPr(n−プロポキシ)、−OjPrなどが挙げられる。
【0131】
本明細書中で使用される場合、「スルホン酸」という用語は、−S(=O)2OH又は−SO3H基又は部分を指す。
【0132】
ここで使用される場合、「スルホン酸塩」という用語は、−S(=O)2O−(例えば、−SO3Na又は−SO3K)又は−S(=O)2O−アルキル基又は部分を指す。好ましくは、スルホン酸塩は、−S(=O)2O−基又は部分である。
【0133】
本明細書中で使用される場合、「リン酸」という用語は、OP(=O)(OH)2基又は部分を指す。
【0134】
本明細書中で使用される場合、「リン酸塩」という用語は、−OPO32−(例えば、−OPO3Na2)又は−OP(=O)(OH)O−(例えば、−OP(=O)(OH)ONa)基又は部分を指す。好ましくは、リン酸塩は、−OPO32−基又は部分である。
【0135】
本明細書中で使用される場合、「アルキレン」という用語は、(他に明記がない限り)1〜10個の炭素原子を有する炭化水素化合物の、いずれも同一の炭素原子からか、又は2個の異なる炭素原子のそれぞれから1個ずつかのいずれかの、2個の水素原子を取り除くことによって得られる二座の部分を指し、これは、脂肪族又は脂環式であってもよく、飽和されている。アルキレン基の例としては、−CH2−(メチレン)、−CH2CH2−(エチレン)、−CH2CH2CH2−(プロピレン)及び−CH2CH2CH2CH2−(ブチレン)などが挙げられる。
【0136】
本明細書中で使用される場合、「アリーレン」という用語は、芳香族化合物の2個の異なる芳香族環原子のそれぞれから1個ずつの、2個の水素原子を取り除くことによって得られる二座の部分を指し、この部分は、(他に明記がない限り)6〜10個の環原子を有する。好ましくは、該芳香族化合物は、6個の環原子を有する。
【0137】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0138】
[実施例]
希土類でドープされた二酸化チタン粒子の調製
硝酸ガドリニウム(III)六水和物、硝酸ユウロピウム(III)水和物、硝酸テルビウム(III)五水和物、硝酸ネオジム六水和物、及び硝酸エルビウム(III)五水和物から選択される1種又は複数の希土類金属化合物を、10mLのチタン(IV)イソプロポキシドに懸濁し、次いで、30mLの無水イソプロパノールを添加した。
【0139】
この溶液中に懸濁した希土類金属化合物の量により、二酸化チタンの母格子中に導入されるドーパントの量が決定される。25mol%までの総量の1種又は複数の希土類元素を、二酸化チタンの母格子中に導入することもできる。一例として、340マイクロモルの硝酸ガドリニウムを34ミリモルのチタンイソプロポキシドに添加して、1mol%のガドリニウムでドープされた二酸化チタンを作製する。
【0140】
次いで、この溶液を、500mLの50/50(v/v)の水/イソプロパノール混合物に、激しく撹拌している間に滴下して添加した。この混合物をさらに5分間撹拌し、次いで、沈澱物を沈降させた。この上清を除去し、沈澱物を200mLのイソプロパノールで洗浄して、さらに10min撹拌した。続いて、濾過によってこの上清を回収し、次いで、ddH2Oで半分満たしたチューブ内でオートクレーブ処理した。次いで、スラリーを、乾燥するまで100℃で維持した。試料を、微細な粉末に粉末化し、続いて、多様な温度で(例えば、700℃で3時間)焼成させた。
【0141】
シーピーエスディスクセントリフュージ(CPS Disc Centrifuge)(登録商標)を使用して、該粒子の大きさ分布を解析することができる。
【0142】
上記の方法は、代替の希土類金属の硝酸塩化合物を使用するときに、他の希土類でドープされた二酸化チタン粒子を調製するために使用することもできる。上記の方法は、亜鉛アセチルアセトネート又はセリウムアセチルアセトネートのような、セリウムケトネート又は亜鉛ケトネートを出発物質として使用するときに、希土類でドープされた酸化セリウム又は酸化亜鉛を調製するためにも使用することができる。
【0143】
シリカコーティングされた粒子の調製
ドープされた二酸化チタンナノ粒子(4.52g)を200mLのミリQ水(Milli−Q water)(pH4.5)中に再懸濁することによって、第1の溶液を調製した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(1.89mL)を50mLのミリQ水に添加することによって、第2の溶液を調製した。次いで、この第2の溶液のうちの20mLを、ドープされた二酸化チタンナノ粒子を含む第1の溶液に添加し、撹拌した。1時間後、ケイ酸ナトリウム(40mL)を添加して、シリカ層が成長するにつれて10分毎に試料を取り出した。この試料を、次いで、遠心分離して、得られた固体をミリQ水で洗浄した。これを3回繰り返した。得られたシリカコーティングされた粒子を、水中で超音波処理し、0.2マイクロメートルの酢酸セルロースフィルターに通した。シーピーエスディスクセントリフュージ(登録商標)を使用して、大きさ分布を解析した。図2は、上記の方法に従うことによって調製した、ガドリニウムでドープされた二酸化チタンの粒径分布を示す。
【0144】
FITC標識粒子の調製
乾燥窒素雰囲気下、5mLの無水エタノール中で100μLの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を25mgのフルオレセインイソチオシアネート混合異性体(FITC)に添加することによって、FITC−APTESを調製した。次いで、この混合物を12h撹拌した。得られたFITC−APTES(2.25mlの無水エタノール中に130μL)を130μLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と混合し、次いで、100μLの水酸化アンモニウム(水中28%)を添加した。この混合物を、2.5mLの水中のシリカコーティングされた粒子に添加して、これらを共に15min超音波処理した。次いで、この試料を遠心分離して、水で洗浄し、ホイル中で保存した。
【0145】
ガドリニウムでドープされた二酸化チタンからのROS生成の推定
0.085MeVのX線を使用すれば、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子からのROSの理論的生成を算出することができる。ジュール(J)での光子の平均エネルギーは、1.36×10−14Jである。1Gy線量(1Gy=1J.kg−1)のX線を患者に投与する場合、粒子のキログラム当たりの平均光子束は、以下のようになる:
kg粒子当たり1/1.36×10−14=7.3×1013(平均)光子束。
【0146】
酸化ガドリニウム(III)の密度は、7.41gcm−3であり、二酸化チタンの平均密度(板チタン石、鋭錐石及びルチルの形態はそれぞれ、僅かに異なる密度を有する)を4.00gcm−3として使用して、90重量%の二酸化チタン及び10重量%の酸化ガドリニウム(III)からなる30nm粒子の質量は、以下のように算出することができる:
各粒子の密度(ρ)=
0.9×4000(TiO2)+0.1×7410(Gd2O3)=4341kgm−3。
該粒子の質量=4/3πr3ρ=5×10−19kg。
【0147】
粒子当たりの光子の数は、以下のように算出することができる:
7.3×1013光子束kg−1×5×10−19kg=3.65×10−5光子。
【0148】
15mg(1.5×10−5kg)の粒子を含む200μLの試料を投与する場合、200μL当たり3×1013個の粒子があることになり、200μLウェル(well)当たりの平均光子束は、以下のようになる:
3.65×10−5光子×3×1013粒子=1.1×109。
【0149】
該粒子の総容積は、以下の通りである:
1.5×10−5kg/4341kgm−3=3.45×10−9m3。
【0150】
該粒子が半径6×10−3の1ウェル内に存在するのであれば、このウェル内の粒子の厚さ「t」は、以下の通りである:
3.45×10−9m3/(π×(6×10−3)2m2)=3×10−5m。
【0151】
したがって、該ウェル内には、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン(TiO2:Gd)の高さが3×10−5mの円盤と同等のものがある。各ウェル内では:
1.1×109個のX線光子が、3×10−5mのTiO2:Gdに当たる。
I=I0exp(−0.91×4341×3×10−5)
I=0.88I0
これは、1GyのX線照射につき1ウェル当たり0.88×1.1×109=9億6800万個の光子が吸収されることを意味する。
【0152】
吸収された光子のうちの約10%が結果としてROS生成につながるとすると、1GyのX線照射につき1ウェル当たり9680万個のROSが生成される。
【0153】
各ウェルに10000細胞を播種する場合には、細胞当たり9680個のROSがあることになる。
【0154】
実施例1
ガドリニウム、エルビウム、ユウロピウム、ネオジム、テルビウム又はこれらのドーパントの組合せでドープされた二酸化チタンの粒子を、上記の方法に従って調製した。次いで、クマリン分析(Ishibashiら、Electrochemistry Comm.、2(2000)、207〜210)を用いて、該粒子の光活性を、市販の二酸化チタン光触媒P25(Degussa)と相対的に試験及び測定した。例えば、0.01gのP25を8mLのPBS中2gL−1のクマリンに添加した。試料を、UVA Cube 400からの白色光又はUV灯のいずれかに曝露させた。設定した時間間隔で(例えば、30min毎に)一定分量を取り出して、蛍光光度計(励起345nm、放出496nm)で分析した。活性を、P25の活性についての百分率として表した。これらの結果を図3に示している。
【0155】
次いで、ガドリニウム又はエルビウムのみでドープされた粒子を種々の温度でのか焼によって変性させた。光触媒P25(Degussa)と相対的な該粒子の光活性をここでも測定した。これらの結果を図4に示している。
【0156】
これらの結果により、該金属酸化物の格子中で一度電子正孔対が生成されると、著しいROSの流量によって該金属酸化物が光励起及び脱励起されることが示される。これにより、ドーパントのイオンは電子正孔組換え部位として作用しないこと、及びX線が吸収されるとROSが生成されることになることがわかる。
【0157】
実施例2
異なる濃度のガドリニウムを含む、ドープされた二酸化チタン粒子を、上記の方法を使用して調製した。該粒子を0.2μmのセルロースフィルターを使用して大きさによって分画し、約65nmの直径の粒子をその後の細胞試験に使用した。シリカコーティングされたドープされた二酸化チタン粒子は、全て200nm未満であり、ピークの大きさは65nmあたりに集中しており、これにより、細胞内への受動的な取り込みが促進されるはずである(図2を参照されたい)。凝集を防ぎ且つ生体適合性を促進するために、上記の方法を使用して、該粒子をシリカでコーティングした。
【0158】
該粒子のシリカ層をFITC(緑色)で標識した。ドープされた二酸化チタン粒子の存在下で細胞を一晩インキュベートした後に、該粒子が受動的に細胞に入っているのが認められ、図5に示されるように、エンドソームに局在していた。エンドソームは、細胞核の近くにある。これらの細胞は、シリカコーティングされた全ての粒子について、80%の最低生存率を示し、これにより、これらの粒子が良好な生体親和性を有することが実証される。
【0159】
アデノウイルス核ターゲティングペプチドを、(Tkachenkoら、J.Am.Chem.Soc.、125(2003)、4700〜4701に記載のように)FITCタグ付きで合成した。N末FITC修飾及びC末アミド化を有する配列CGGFSTSLRARKAを使用した。シリカコーティングされた二酸化チタン粒子を、5%(v/v)のAPTESと共にインキュベートし、1時間撹拌した。次いで、この粒子を、100mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.5で洗浄した。次いで、ANB−NOS(N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド)架橋剤を、炭酸ナトリウム緩衝液中の粒子に2時間添加し、その後、NLS配列の添加を30分間行った。次いで、312nmの波長でUV光に曝露することによって、該NLSペプチドを該粒子に架橋させた。
【0160】
このFITC−NLS−NPで標識したドープされた二酸化チタン粒子を、横紋肉腫細胞(RH30)と共に37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。対照として、ドープされた二酸化チタンなしの細胞を含む試料も一晩インキュベートした。続いて、細胞をPBSですすぎ、次いで、氷冷したメタノールで固定した。4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を添加して、細胞核を染色した。これらの結果を図5に示している。該細胞核の位置は、DAPI蛍光シグナルによって、図5のスライド(A)(これを、該細胞の明視野像である、スライド(C)と比較されたい)に示されている。該粒子の位置は、FITC標識からの緑色蛍光シグナルを示している、スライド(B)に示されている。スライド(D)は、合成像であり、粒子が細胞内に入ったことを示す。
【0161】
次いで、これらの試料に、0.58Gymin−1でX線を照射して、3Gyまでの曝露を与えた。これらの線量は、通常患者に行われるであろう治癒的治療の保存的表現である。固形上皮性腫瘍の場合は、50〜70Gyの範囲の照射線量が典型的には使用されるであろうのに対し、リンパ腫は、一般に、20〜40Gyの線量で治療される。こうした線量は、通常、1.8〜2Gyに分割して1週間当たり5日間投与されるであろう。少量で高頻度の線量は、健常細胞に、放射線に対する曝露による損傷を修復した後に生育に戻るための時間を与えることを意図するものである。
【0162】
照射後、この試料を37℃で24又は48時間インキュベートした。インキュベート後、この細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、死滅した非接着細胞を除去した。次いで、接着した(生存)細胞をトリプシン処理して、マルチウェルプレートからの剥離を可能にさせた。次いで、ノイバウエル血球計算器を使用して、生存細胞を計数した。
【0163】
細胞死が単にX線に対する曝露のみによって生じることを説明するために、細胞生存率を、ドープされた二酸化チタン粒子なしの対照試料の関数として表した。ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子で細胞株を処置することにより、X線に対する曝露後の細胞死が増大されることが見出された。図6にある結果を参照されたい。10%のガドリニウムでドープされた粒子では、約60%の細胞死という結果になるのを認めることができる。該粒子の存在下でインキュベートしたがX線によって励起されていない細胞株では、細胞死は実質的に全く認められなかった。
【0164】
典型的な癌治療の状態を再現するために、細胞を、該粒子と共にインキュベートし、次いで、3Gy線量のX線を照射した。次いで、この細胞を、24h放置して回復させ、その後、さらに3Gy線量のX線を再び照射した。24h後及び48h後に細胞死を評価した。これらの結果は、図7に例示しており、この処置により、細胞死が引き起こされるだけではなく、その後の細胞増殖も阻害されることを示している。細胞計数により、細胞死は60%で維持されることが示された。
【0165】
実施例3
異なる濃度のガドリニウム、ユウロピウム及びエルビウムでドープされた、シリカコーティングされた二酸化チタン粒子を、上記で設定した方法に従って調製した。RH30細胞株を含む試料を、ドープされた二酸化チタン粒子と共に一晩インキュベートし、その後、0.58Gymin−1で照射して、3GyのX線曝露を与えた。ドープされた二酸化チタン粒子の存在下でインキュベートしていない細胞株を含む対照試料にも照射を行った。
【0166】
照射後、この細胞を37℃で24又は48時間インキュベートし、次いで、PBSで洗浄して、死滅した非接着細胞を除去した。接着した(生存)細胞をトリプシン処理して、マルチウェルプレートからの剥離を可能にさせた。次いで、ノイバウエル血球計算器を使用して、生存細胞を計数した。
【0167】
細胞死が単にX線に対する曝露のみによって生じることを説明するために、細胞生存率を、ドープされた二酸化チタン粒子なしの対照試料の関数として表した。異なる濃度の希土類元素ガドリニウム、ユウロピウム及びエルビウムでドープされた二酸化チタン粒子の存在下でインキュベートした細胞株では、約65%の細胞死という結果になった(図8を参照されたい)。ここでも、該粒子の存在下でインキュベートしたがX線に曝露していない細胞株の細胞死は、実質的に全くなかった。
【0168】
該粒子と共にインキュベートした細胞に3Gy線量のX線を照射することによって、典型的な癌治療の状態を再現した。この細胞を、24h放置して回復させ、次いで、さらに3Gy線量のX線を再び照射した。24h後及び48h後に細胞死を評価した。これらの結果は、図9に例示しており、この処置により、細胞死が引き起こされるだけではなく、その後の細胞増殖も阻害されることを示している。細胞死はここでも60%で維持され、これらの結果は、この処置によってその後の細胞増殖も阻害されるという事実をここでも支持している。
【0169】
ガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子を、BHK(ハムスター腎臓由来)及びMCF7(乳癌由来)細胞株と共に使用して、上記の実施例2で設定した方法を用いてさらなる試験を行った。これらの粒子を使用したときに、約40%の細胞死があった。
【0170】
実施例4
30nmの大きさの二酸化チタン粒子(Hombikat XXS100、Sachtleben Chemie、Duisberg)を、FITC−NLSペプチドで表面を修飾して、上記の実施例2に記載のように、A549細胞と共にインキュベートした。
【0171】
これらの結果を図10に示している。該細胞核の位置は、DAPI蛍光シグナルによって、図10のスライド(A)(これを、該細胞の明視野像である、スライド(C)と比較されたい)に示されている。該粒子の位置は、FITC標識からの緑色蛍光シグナルを示している、スライド(B)に示されている。スライド(D)は、合成像であり、粒子がA549細胞の核の周りに局在していることを示す。
【0172】
実施例5
1%(v/v)アガロースウェルに50,000細胞を播種することによって、HepG2細胞から腫瘍細胞のスフェロイドを調製した。この細胞を、37℃、5%CO2の雰囲気下で、スフェロイドが形成されるまでインキュベートした。
【0173】
次いで、このスフェロイドを、mol%のGd、1mol%のEu及び1mol%のErでドープされた二酸化チタンナノ粒子と共に一晩インキュベートした。インキュベート後のスフェロイドの画像を、図11のA1及びA2に示している。次いで、このスフェロイドに3Gyの線量でX線を照射して、その後、インキュベーターに一晩戻した。次いで、インキュベート後のスフェロイドの画像を撮った。これを図11のC1及びC2に示している。
【0174】
比較として、二酸化チタンナノ粒子と共にインキュベートしていないスフェロイドにも3Gyの線量でX線を照射した。このスフェロイドに照射してこれを一晩インキュベートした後に、図11のB1及びB2に示している画像を得た。
【0175】
図11におけるC1及びC2とB1、B2、A1及びA2との比較から、スフェロイドを二酸化チタンナノ粒子と共にインキュベートし、次いで、これにX線を照射することにより、(A1及びA2に示しているように)スフェロイドをナノ粒子と共にインキュベートするだけの場合又は(B1及びB2に示しているように)スフェロイドにX線を照射するだけの場合と比較して、スフェロイド細胞の連結性のより大きな消失が引き起こされたことが明らかである。スフェロイド細胞の連結性は、X線を照射することなくナノ粒子と共にインキュベートしたときには影響されなかった。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、例えば放射線療法の治療の一部として使用されるX線からのような、X線による励起で遊離基を生じる、ドープされた金属酸化物を含む粒子に関する。本発明は、該粒子を含む組成物、並びに癌の治療及び診断における該粒子及び該組成物の使用にさらに関する。
【0002】
[発明に対する背景]
光線力学療法(PDT)は、いくつかの型の癌を治療するために一般的に使用される。PDTは、患者の血流中に光増感剤を注射することを必要とする。光増感剤は、身体中の細胞によって吸収されるが、腫瘍の脈管構造の異常又は欠陥により、一般に腫瘍内に蓄積する。光増感剤は、健常細胞よりもはるかに速く成長及び分裂する傾向があり、したがって、より高い代謝活性を有する、癌細胞によっても急速に吸収される。
【0003】
注射の約24〜72時間後、大部分の光増感剤は正常細胞から出ているが腫瘍内には残っており、腫瘍のみが、UV光又はレーザー光のような、特定の周波数の光に曝露される。腫瘍内に蓄積された光増感剤は、この光に対する曝露によって励起され、近くの酸素分子又は水分子とその組織内で反応して、例えば、一重項酸素(3.7msの平均寿命及び82nmの拡散距離)、スーパーオキシドラジカル(50msの平均寿命及び320nmの拡散距離)又はヒドロキシルラジカル(10−7sの平均寿命及び4.5nmの拡散距離)のような、活性酸素種(ROS)を生成する。生成されたROSは、近くの細胞の抗酸化防衛能力を圧倒し、これによって腫瘍内の癌細胞が破壊される結果となる。
【0004】
ROSの短い寿命及び拡散距離により、隣接した健常細胞に対して生じる損傷はほとんど又は全くなしに癌細胞を破壊することが可能となる。癌細胞を直接死滅させることに加えて、PDTはさらに、腫瘍内の血管に損傷を与え、それによってその腫瘍から栄養素を奪うことによって腫瘍を縮小させる又は破壊するようである。さらなる利点は、PDTがさらに、患者の免疫系を活性化して腫瘍細胞を攻撃しうることである。
【0005】
二酸化チタンは、UV光に対する曝露でROSを生成することが知られている。実際に、UV照射後の培養ヒト腺癌細胞に対する二酸化チタンの効果が研究されてきた(Xuら、Supramolecular Science、5(1998)、449〜451)。この試験では、透過型電子顕微鏡(TEM)により、該細胞の細胞膜及び内膜系に対する、酸化ストレスの結果としての破壊が示されている。二酸化チタン粒子は、該細胞の膜脂質を酸化してペルオキシダントを生成するヒドロキシルラジカルを生成すると考えられており、これにより、次いで、一連のペルオキシダント連鎖反応が開始される。酸化的にストレスを受けた悪性細胞は、それらが破壊される結果となる壊死の状態に進行する。
【0006】
二酸化チタン及びPDTにおいて使用される光増感剤の多くは、ヒトの体内に深く透過することができない特定の波長の光によって励起される。結果として、PDTは、皮膚癌のような、表在性の癌の治療に限定されている。
【0007】
身体の他の部位の癌は、代わりに放射線療法を使用して治療することができ、放射線療法には、X線のような、電離放射線の使用が必要とされる。しかし、腎細胞癌のような、いくつかの型の癌は放射線抵抗性であり、その理由は、癌を破壊するのに必要とされる放射線の線量が臨床診療において安全であるためには高すぎるからである。より高い線量の放射線は、癌を引き起こすリスクの増加にもつながる。したがって、既存の放射線療法の治療を増強又は改良することになる作用剤が必要とされている。
【0008】
国際特許出願PCT/FR2005/001145(国際公開第2005/120590号パンフレット)には、X線によって活性化可能な複合又は凝集した粒子が記載されている。この粒子は、互いに近くなるように配置される、2種の異なる無機化合物からなる。第1の無機化合物は、X線を吸収し、次いで、UV−可視光を放出することができる。第2の無機化合物は、UV−可視光を吸収し、次いで、水又は酸素との接触でフリーラジカルを生成することができる。こうした配置の化合物により、X線を使用して段階的励起方法によってROSを生成することが可能となる。しかし、各励起ステップに関連したエネルギー損失があり、その結果、X線の単位線量当たりに生成されるROSの量は相対的に少なくなる。
【0009】
[発明の概要]
本発明者らは、二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムに希土類元素をドープすることによって、得られたドープされた金属酸化物は、X線によってそれ自身が直接励起されてフリーラジカル、特に活性酸素種(ROS)、をX線の単位線量当たりに大量に生成することができることを発見した。癌部位に局在した粒子のX線励起による癌の治療は、最小限に侵襲性の方法であり、既存の臨床設備を利用できるであろう。
【0010】
ROSは、生体分子と反応して、タンパク質の構造及び機能を変化させ、且つ塩基の破壊及び1本鎖切断の生成によって細胞のDNAに酸化損傷を引き起こすことができる。さらに、オキシダントは、ミトコンドリアで作用してアポトーシスの開始を誘発することが知られている。したがって、腫瘍部位におけるROSの生成及び制御は、悪性細胞を死滅させるために使用することができる。
【0011】
したがって、本発明は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含む粒子であって、該金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される粒子を提供する。好ましい一態様において、本発明は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされた金属酸化物を含む粒子であって、該金属酸化物が二酸化チタンである粒子に関する。
【0012】
一般に、本発明は、複数のこうした粒子、使用及びその方法に関する。
【0013】
コア−シェル構造を有する複合粒子又はナノ粒子の凝集体からなる粒子は、癌を効果的に治療するのに好適な大きさで作製するのが困難である。こうした粒子は、成分物質のそれぞれに存在しうる空間(vacancies)、不純物及び欠陥により、ROSを生成するのに効率的ではない。本発明は、X線のみに対する直接的な曝露に応じてROSを生成する単一の活性物質(例えば、ドープされた金属酸化物)から形成される粒子を提供する。単相粒子中に存在するような、該活性物質は、特定のX線源によって励起される1種又は複数の適切な希土類元素ドーパントの選択によって同調させることができる。該物質からなる粒子は、癌の治療に有効な大きさで容易に作製することができる。
【0014】
本発明において、ROSは、少なくとも1種の希土類元素でドープされている二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムのX線照射から直接生成される。X線に対する曝露でUV−可視光を放出するさらなる無機化合物の存在は、ROSの生成に必須ではない。
【0015】
典型的には、本発明の粒子は、例えば、場合によってはそれぞれ希土類元素でドープされていてもよい、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数のような、X線を吸収してUV−可視光を放出するさらなる無機化合物を含有していない又は含んでいない。
【0016】
一般に、本発明は、(i)少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物であって、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される金属酸化物と、場合によっては(ii)1種又は複数のコーティング、リンカー基、ターゲティング部分、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤とから本質的になる粒子を提供する。
【0017】
本発明の粒子は、複合粒子又はナノ粒子の凝集体、特に、場合によってはそれぞれ希土類元素、又は一般にX線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物、でドープされていてもよい、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数を含む複合粒子又はナノ粒子凝集体ではないことが好ましい。
【0018】
本発明の他の一態様において、本発明の粒子は、療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するためのものであり、X線照射と組み合わせて使用する場合が好ましい。典型的には、該療法は、X線放射線療法である。本発明は、癌の治療において使用するための粒子を提供する。好ましい一態様において、本発明は、癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための粒子に関し、このとき、該粒子は金属酸化物を含み、該金属酸化物は二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている。好ましくは、該粒子は、該金属酸化物からなるコアを含む。
【0019】
本発明は、X線照射と組み合わせて使用する場合の(例えば、X線放射線療法と組み合わせて使用する場合の)癌の治療用の医薬品の製造のための該粒子の使用にさらに関する。
【0020】
本発明は、(i)複数の本発明の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物も提供する。本発明のさらなる一態様において、該医薬組成物は、療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するためのものであり、X線照射と組み合わせて使用する場合が好ましい。典型的には、該療法は、X線放射線療法である。本発明は、癌の治療において使用するための医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明は、X線照射と組み合わせた(例えば、X線放射線療法と組み合わせて使用する場合の)癌の治療用の医薬品の製造のための該医薬組成物の使用にも関する。
【0022】
本発明の他の一態様は、(a)複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む組合せである。
【0023】
本発明は、X線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、同時、並行、分離又は連続の使用のための複合製剤として、(a)複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む製品をさらに提供する。
【0024】
本発明のさらなる一態様は、本発明の粒子又は医薬組成物を対象に投与することと、癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導することとを含む、癌を治療する方法に関する。
【0025】
本発明は、本明細書に記載のような粒子又は医薬組成物を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、該癌細胞にX線照射を誘導することを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法も提供する。
【0026】
上記で説明したように、本発明の粒子は、腫瘍の組織内に又は癌細胞内に蓄積される。重希土類元素の存在により、腫瘍又は癌細胞内に局在した本発明の粒子の存在を、X線を使用して画像化することができる。これにより、患者における腫瘍又は癌細胞の存在の診断を可能にすることができ、腫瘍又は癌細胞の治療をモニタリングすることもできる。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための本発明の粒子又は医薬組成物に関する。本発明は、癌の存在又は非存在を診断するための本発明の粒子又は医薬組成物の使用にさらに関する。
【0028】
本発明は、本発明の粒子又は医薬組成物を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における該粒子又は該医薬組成物の存在又は非存在を検出することを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法をさらに提供する。
【0029】
本発明は、粒子を400℃以上の温度で加熱するステップを含む、本発明の粒子を調製する方法であって、該粒子が、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含み、該金属酸化物が、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される方法も提供する。好ましい一態様において、該金属酸化物は、二酸化チタンである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(Physical Referenceデータベース、National Institute of Standards and Technologyから入手した)ガドリニウムについてのcm2/gでの質量減衰係数(μ/ρ)(y軸上に示している)に対するMeVでの入射光子エネルギー(x軸上に示している)の図である。このグラフにより、特定の入射光子エネルギーにおいてガドリニウムがX線を吸収する強さの程度が示される。
【図2】本発明に従って、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子の重量による粒径分布を示す図である。
【図3】市販の二酸化チタン光触媒であるP25(Degussa)と比較した、種々の希土類元素でドープされた二酸化チタン粒子の光活性を示しているヒストグラムである。
【図4】種々の温度で焼成した後の、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン及びエルビウムでドープされた二酸化チタンの粒子の光活性を示しているヒストグラムである。この光活性は、市販の二酸化チタン光触媒であるP25(Degussa)と相対的に測定している。
【図5】ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートした後のいくつかの横紋肉腫細胞の画像を示している一連のスライドである。スライド(A)は、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した細胞の青色蛍光シグナルを示す。スライド(B)は、該細胞に入っている、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子のシリカコーティングに結合されたFITC標識からの緑色蛍光シグナルを示す。スライド(C)は、該細胞の明視野像である。スライド(D)は、細胞核及びドープされた二酸化チタン粒子の位置を示す合成像である。
【図6】異なる量のガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、X線を照射した後の横紋肉腫細胞(RH30、骨癌由来の株)の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図7】最初に、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、異なる線量のX線に曝露した、横紋肉腫細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図8】異なる量のガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、X線を照射した後のRH30(骨癌由来の株)細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図9】最初に、ガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、次いで、異なる線量のX線に曝露した、横紋肉腫細胞の細胞死の量を示しているヒストグラムである。
【図10】30nmの大きさを有する二酸化チタン粒子と共にインキュベートした後のいくつかのA549細胞の画像を示している一連のスライドである。スライド(A)は、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した細胞の青色蛍光シグナルを示す。スライド(B)は、該細胞に入っている、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子のシリカコーティングに結合されたFITC標識からの緑色蛍光シグナルを示す。スライド(C)は、該細胞の明視野像である。スライド(D)は、合成像であり、A549細胞の核の周りに局在している粒子を示す。
【図11】スフェロイド細胞を示している一連のスライドである。A1において、該スフェロイド細胞は、5mol%のGd、1mol%のEu、1mol%のErでドープされた二酸化チタン粒子と共にインキュベートしているが(A2は、A1に示している細胞の拡大画像である)、X線照射には曝露していない。B1において、該スフェロイド細胞は、該チタン粒子と共にインキュベートしていないが、X線を照射している(B2は、B1に示している細胞の拡大画像である)。C1において、該スフェロイド細胞は、該二酸化チタン粒子と共にインキュベートし、且つX線を照射している(C2は、C1に示している細胞の拡大画像である)。
【0031】
[発明の詳細な説明]
UV光の使用に関連した制限は、X線のようにより貫通性のエネルギー源を使用して、例えば二酸化チタンを励起させることによるような、光触媒反応を誘発することによって克服できる。X線が物質の原子に当たるときに、電磁放射線の振動領域は、原子内に拘束された電子と相互作用する。いずれの放射線も、これらの電子によって拡散されるか、又は吸収されてこれらの電子を励起することになる。以下の式によって求められるように、初期強度I0を有する細い平行した単色のX線ビームは、厚さ「t」の試料を通過すると同時に、強度Iまで低減されることになる:
I=I0e−(μ/ρ)ρt
式中、μ/ρは、質量減衰係数であり、これは、原子の種類及びその物質の密度ρによって決まる。
【0032】
特定のエネルギーにおいて、物質の吸収は大幅に増加して、吸収端を生じる。こうした各吸収端は、入射光子のエネルギーが、吸収している原子のコア電子を連続状態まで励起させるのに、すなわち、光電子を生じるのに、ちょうど十分なときに生じる。従来の放射線療法を行うための装置において使用されるX線源のエネルギーは、典型的には0.08〜0.09MeVである。このエネルギー範囲にあるX線の光電子は、希土類元素によって吸収され、吸収端を示す(例えば、希土類元素ガドリニウムについての図1を参照されたい)。二酸化チタンのような、金属酸化物を、ガドリニウムのような、大きい吸収断面積の物質でドープすることにより、例えば、エネルギー吸収が最大となるであろう。
【0033】
本発明は、1種又は複数の粒子、典型的には複数の粒子であって、そのそれぞれが、少なくとも1種の希土類元素でドープされた金属酸化物を含み、該金属酸化物が、二酸化チタン(TiO2;チタニアとしても知られる)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化セリウム(CeO2;セリアとしても知られる)及びこれらの2種以上の混合物から選択される粒子を提供する。
【0034】
典型的には、各粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされた単一の金属酸化物を含み、該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化セリウムから選択される。
【0035】
一実施形態において、該金属酸化物は、少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている。
【0036】
ドープされた二酸化チタン粒子及びドープされた酸化亜鉛粒子の調製方法は、国際特許出願PCT/GB99/01685(国際公開第99/60994号パンフレット)及びPCT/GB00/04587(国際公開第01/40114号パンフレット)、並びに米国特許出願公開第2009/0110929号に記載されている。ドープされた酸化セリウム粒子の調製方法は、国際特許出願PCT/GB02/05013(国際公開第03/040270号パンフレット)に記載されている。
【0037】
典型的には、ドープされた金属酸化物の粒子は、例えば、上記の方法のうちの1つのような標準的な方法を使用して調製され、次いで、加熱のステップを受ける。本発明の粒子は、粒子(すなわち、前駆物質粒子)を400℃以上の温度で加熱することによって調製されることが好ましく、該粒子(すなわち、前駆物質粒子)は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物を含み、該金属酸化物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム及びこれらの2種以上の混合物から選択される。好ましい一態様において、該金属酸化物は、二酸化チタンである。より好ましくは、該粒子は、500℃以上、特に650℃以上、特に少なくとも700℃の温度での加熱によって調製される。該粒子は、少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも3時間加熱される。
【0038】
いくつかの例において、少量の希土類元素ドーパントは該金属酸化物の表面に存在しうるが、大部分のドーパントは該金属酸化物の本体又は母格子の中に存在するであろう。
【0039】
一般に、該金属酸化物の母格子は、少なくとも1種の希土類元素で置換型ドープ又は侵入型ドープされていてもよい。好ましくは、該金属酸化物は、少なくとも1種の希土類元素で置換型ドープされている。
【0040】
該金属酸化物は、二酸化チタンであることが好ましい。該二酸化チタンは、いかなる形態、例えば、鋭錐石、ルチル又は板チタン石の形態にあってもよい。より好ましくは、該二酸化チタンは、鋭錐石の形態にある。鋭錐石の形態の二酸化チタンは、他の形態の二酸化チタンよりも高い固有の光活性を有するので有利である。
【0041】
一実施形態において、該二酸化チタンのうちの少なくとも80重量%は、鋭錐石の形態にある。該二酸化チタンのうちの少なくとも85重量%、特に少なくとも90重量%、が鋭錐石の形態にあることが好ましい。より好ましくは、該二酸化チタンのうちの少なくとも95重量%、特に少なくとも99重量%、が鋭錐石の形態にある。
【0042】
本発明の文脈において、「2種以上の」金属酸化物「の混合物」に対する言及は、二酸化チタンと酸化亜鉛;二酸化チタンと酸化セリウム;酸化亜鉛と酸化セリウム;又は二酸化チタンと酸化亜鉛と酸化セリウム;との混合物のいずれかを指す。ここで、少なくとも1種の、しかし好ましくはそれぞれの、該金属酸化物は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「希土類元素」という用語は、周期表のランタニド群からの元素、すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuを指す。プロメチウム(Pm)の同位体の全てが放射性である。したがって、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも1種の希土類元素でドープされていることが好ましい。該希土類元素は、一般に、ドーパントとして該金属酸化物の母格子中に陽イオンの形態で存在する。該金属酸化物が酸化セリウムであるときには、該酸化セリウムは、セリウム以外の少なくとも1種の希土類元素でドープされていることが好ましい。
【0044】
二酸化チタン、酸化亜鉛又は酸化セリウムの母格子中のドーパントとしての1種又は複数の希土類元素の存在により、これらの金属酸化物をX線によって励起することができ、ヒト又は動物の身体の治療において使用されてきた、活性酸素種(ROS)のような、フリーラジカルが生成される。ドープされた金属酸化物によって生成されるROSの量は、とりわけ、希土類元素ドーパントの固有の性質及び治療の一部として使用されるX線のエネルギーによって決まることになる。したがって、治療の一部として特定の波長(すなわち、エネルギー)のX線を使用するときに好適な量のROSを生成するために、該金属酸化物及び(1種又は複数の)該希土類元素を選択しなければならない。これは、入射X線のエネルギー範囲内に入るエネルギーにおいてX線を強く吸収するドーパントとして希土類元素を選択することによって達成することができる。
【0045】
実際には、放射線療法用又は画像診断(例えば、ラジオグラフィー)用かどうかにかかわらず、医療用にX線を生成するために従来法で使用される装置は、特定の範囲内のエネルギーを有するX線を発生する傾向がある。通常、放射線療法において使用されるX線のエネルギーは、画像診断用に使用されるX線のエネルギーよりも高くなる傾向がある。
【0046】
典型的には、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている。
【0047】
一実施形態において、該金属酸化物は、ガドリニウム(Gd)でドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ガドリニウムと、ユウロピウム(Eu)、エルビウム(Er)又はネオジム(Nd)のうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、GdとEu、GdとEr、GdとNd、GdとEuとEr、GdとEuとNd、GdとErとNd、又はGdとEuとErとNdとでドープされていてもよい。より好ましくは、該金属酸化物は、ガドリニウムとユウロピウムとエルビウムとでドープされている。
【0048】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、ユウロピウムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ユウロピウムと、ガドリニウム、エルビウム又はネオジムのうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、EuとEr、EuとNd、又はEuとErとNdとでドープされていてもよい。
【0049】
さらなる一実施形態において、該金属酸化物は、エルビウムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、エルビウムと、ガドリニウム、ユウロピウム又はネオジムのうち1種又は複数とでドープされている。したがって、該金属酸化物は、好ましくは、ErとEu、又はErとNdとでドープされていてもよい。
【0050】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、ネオジムでドープされている。好ましくは、該金属酸化物は、ネオジムと、ガドリニウム、ユウロピウム又はエルビウムのうち1種又は複数とでドープされている。
【0051】
一般に、該金属酸化物は、0.1〜25mol%(例えば、7.5〜25mol%)、好ましくは1〜20mol%、より好ましくは2.5〜15mol%、特に5〜13.5mol%、さらにより好ましくは7.5〜12.5mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている。
【0052】
一実施形態において、該金属酸化物は、ガドリニウムと、少なくとも1種の他の希土類金属とでドープされており、このとき、該金属酸化物は、1〜12.5mol%、好ましくは5〜10mol%の量のガドリニウムでドープされている。
【0053】
一実施形態において、該金属酸化物は、(i)3.5〜12.5重量%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5重量%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5重量%の量のエルビウムとでドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、(i)5〜10重量%の量のガドリニウムと、(ii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のユウロピウムと、(iii)0.75〜1.25重量%(例えば、約1重量%)の量のエルビウムとでドープされている。
【0054】
他の一実施形態において、該金属酸化物は、(i)3.5〜12.5mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5mol%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5mol%の量のエルビウムとでドープされている。より好ましくは、該金属酸化物は、(i)5〜10mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.75〜1.25mol%(例えば、約1mol%)の量のユウロピウムと、(iii)0.75〜1.25mol%(例えば、約1mol%)の量のエルビウムとでドープされている。
【0055】
該金属酸化物中に1種又は複数のドーパントとして組み込まれる1種又は複数の希土類元素の総量は、該金属酸化物を調製するために使用される出発物質に対する、出発物質を含む希土類元素の相対モル量によって決まることになる。該金属酸化物中にドーパントとして組み込まれる希土類元素の量は、該粒子を製造するために使用する方法によって決めることができ、この方法は該粒子中に望ましい量のドーパントが得られるように規定どおりに構成されうる。(1種又は複数の)金属酸化物中のドーパントとしての希土類元素の量は、当業者によく知られている技術を使用して容易に測定することができる。複数の本発明の粒子が療法若しくは治療の一部として存在する又は使用されるときには、mol%での上記の量は、該粒子の(1種又は複数の)金属酸化物にドープされている(1種又は複数の)希土類金属の平均的な(すなわち、平均)総量を指す。
【0056】
典型的には、本発明の粒子は、400nm未満の大きさを有する。これにより、該粒子がヒト又は動物の身体の血流から離れることが可能となる。該粒子は、380nm未満、特に、300nm未満の大きさを有することが好ましい。腫瘍の脈管構造は高浸透性であり、50〜600nmの孔径を有する。
【0057】
大きな粒子は、細網内皮系によって容易に分離されることができ、肝臓又は脾臓によって吸収されるか、又は身体から急速に除去されうる。本発明の粒子は、100nm以下の大きさを有することが好ましい。この大きさを有する粒子は、食細胞の取り込み及び肝臓の濾過による除去を回避することになる。
【0058】
小さな粒子は、腫瘍の漏出性の毛細血管壁を容易に通過することができる。しかしながら、腎臓も、糸球体濾過によってきわめて小さな粒子を除去することができる。本発明の粒子は、5nm以上の大きさを有することが好ましい。この大きさを有する粒子は、腎臓による該粒子の除去を回避することになり、腫瘍内での粒子の良好な保持を可能にする。
【0059】
典型的には、本発明の粒子は、1〜100nm、例えば15〜50nm、より好ましくは5〜75nm(例えば、10〜75nm)、特に10nm〜65nmの大きさを有することが好ましい。該粒子の大きさは、該粒子が細胞に入ることのできるように選択することができる。この目的では、該粒子は、65nm未満の大きさを有するのが好ましい。該粒子は、細胞の細胞小器官にも入ることができてもよい。これを達成するために、該粒子は、50nm未満、特に20〜35nmの大きさを有することが好ましい。
【0060】
一般に、本発明の粒子は、いかなる形状を有していてもよく、それは、規則的であっても又は不規則であってもよい。該粒子の形状は、該粒子を調製するために使用する方法によって決まりうる。該粒子が球状であるときには、該粒子の大きさとは、単純にその粒子の直径を指す。しかし、本発明は、球状でない粒子も包含する。こうした例では、該粒子の大きさとは、非球状の形状を有する該粒子と同じ重量を有する球状粒子の直径を指す(すなわち、重量に基づいた粒径測定)。
【0061】
通常、多様な大きさを有する粒子の分布が得られる。したがって、本発明の医薬組成物、療法又は治療におけるように、複数の本発明の粒子があるときには、単一の粒子についての上記の大きさは、分布における平均的な(すなわち、平均の)粒子の大きさを指す。分布における平均的な粒子の大きさは、標準的な遠心分離測定技術を使用して決定することができる。
【0062】
本発明は、シリカ又はアルミナのような、生物学的に不活性な物質のコア、及び少なくとも1種の希土類元素でドープされた金属酸化物のコア上の層を有する粒子を除外しないことを理解されたい。しかし、上述したもののような大きさを有するような粒子を調製することは、困難である。
【0063】
本発明の粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物からなるコアを含むことが好ましい。一般に、本発明の粒子は、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物からなる単一のコアを有する。
【0064】
典型的には、本発明の粒子は、コーティング、好ましくは、シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する。該粒子上にコーティングを包めることにより、該粒子の生体適合性を高め、in vivoでの凝集を防ぎ、且つ該粒子を他の作用剤と共に機能させることができる。ROSは、該粒子が水又は酸素と接触したときに、該粒子の表面上で生成される。したがって、該コーティングは、少なくとも1種の希土類元素でドープされている金属酸化物の外表面を完全に覆っていないことが好ましい。より好ましくは、該コーティングは、多孔性である。
【0065】
上記の粒子の大きさに対するいずれの言及も、存在しうるいかなるコーティングも含めた、該粒子の全体の大きさを指す。複数の粒子があり、そのためにその大きさが平均粒径であるときには、大きさとは、存在しうる(1種又は複数の)いかなるコーティングも含めた、該粒子の平均の全体の大きさを指す。一般に、該コーティングの厚さは、0.1〜10nm、好ましくは1〜5nmである。しかし、1種又は複数の粒子の大きさに対するいずれの言及も、該粒子と関連した又は該粒子に結合されたいかなるリンカー基、ターゲティング部分、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、又は超常磁性コントラスト剤も含んでいない。
【0066】
該コーティングは、シリカ又はショ糖であることが好ましい。より好ましくは、該コーティングは、シリカである。
【0067】
典型的には、本発明の粒子は、治療の対象の腫瘍組織内への注射(すなわち、腫瘍内注射)又は癌部位への注射により該粒子を投与することによって癌の治療において使用するためのものである。該粒子は、非経口的に投与することもできる。
【0068】
本発明の粒子は、2つの機序によって、腫瘍組織などの、標的組織内に蓄積されうる。第1の機序である、いわゆる受動的なターゲティングは、非特異的であり、且つ腫瘍組織における該粒子の蓄積に依存する。これは、腫瘍が高浸透性の脈管構造を有するか、又はいくつかの他の生理学的異常を有しうるために生じうる。第2の機序は、ターゲティング部分(例えば、リガンド)が標的組織における該粒子の部位特異的な蓄積を誘導する、能動的なターゲティングの方法である。これは、悪性細胞内で主に又は独占的に見出される分子のサイン又は構造に対する高い親和性を有するターゲティング部分を、該粒子に結合又は共役させることによって達成されうる。該ターゲティング部分は、分子のサイン又は構造(例えば、遺伝子、タンパク質、細胞小器官、例えばミトコンドリアなど)のような、一般に癌細胞又は腫瘍組織内のみに存在する生体部分に対する選択的な結合親和性を有する。該ターゲティング部分は、該腫瘍組織又は癌細胞において該粒子を濃縮することができる。
【0069】
一実施形態において、本発明の粒子は、少なくとも1つのターゲティング部分を含む。ターゲティング部分は、該粒子又は各粒子のコーティングに結合されることが好ましい。
【0070】
典型的には、該ターゲティング部分は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド、脂質、代謝産物、抗体、受容体リガンド、リガンド受容体、ホルモン、糖、酵素又はビタミンなどである。例えば、該ターゲティング部分は、薬剤(例えば、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、PSMA、タモキシフェン/トレミフェン、イマチニブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ(cetximab))、DNAトポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬、病気の細胞の周期を標的とする化合物、遺伝子発現マーカー、血管新生を標的とするリガンド、腫瘍マーカー、葉酸受容体を標的とするリガンド、アポトーシス細胞を標的とするリガンド、低酸素を標的とするリガンド、DNAインターカレーター、病気の受容体を標的とするリガンド、受容体マーカー、ペプチド(例えば、シグナルペプチド、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)ペプチド)、ヌクレオチド、抗体(例えば、抗ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)抗体、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40)、アンチセンス分子、siRNA、グルタメートペンタペプチド、グルコースを模倣した作用剤、アミフォスチン、アンジオスタチン、カペシタビン、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン及びトリメチルリシンから選択することができる。好ましくは、該ターゲティング部分は、核移行シグナル(NLS)ペプチドである。NLSペプチドの一例は、PPKKKRKV又はCGGFSTSLRARKAである。好ましくは、該NLSペプチドは、CGGFSTSLRARKAである。
【0071】
典型的には、該ターゲティング部分は、該粒子又は該粒子のコーティングに共有結合又は非共有結合のいずれかで結合される。好ましくは、ターゲティング部分は、各粒子のコーティングに共有結合で(すなわち、共有結合を形成することによって)結合される。
【0072】
ターゲティング部分は、直接に又はリンカー基を介して、粒子又はその粒子のコーティングに結合させることができる。ターゲティング部分は、リンカー基によって粒子のコーティングに結合される、特に、共有結合で結合されることが好ましい。
【0073】
該リンカー基の性質は、本発明の重要な部分ではない。しかし、ヒト又は動物の身体への該粒子の投与後に、該リンカー基は、いつまでも、又は少なくとも有効なターゲティングが起こってその結果目的の標的部位で粒子が蓄積するようになるのを可能にするのに十分な期間、完全なままで残っていなければならない。該リンカー基は、前記ターゲティング部分を該粒子又は該粒子のコーティングに連結することができるいかなる部分であってもよい。こうしたリンカー部分は、当技術分野においてよく知られている。
【0074】
典型的には、該リンカー基は、50〜1000、好ましくは100〜500の分子量を有する。
【0075】
一実施形態において、該リンカー基は、式−OOC(CR2)nCOO−を有する部分であり、式中、nは、1〜10の整数であり、且つ各Rは、水素及び場合によっては置換されたC1〜C6アルキル基から独立に選択される。場合によっては置換された各C1〜C6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸及びリン酸塩から選択される1個又は複数の置換基で独立に置換されていてもよい。好ましくは、各Rは水素である。
【0076】
他の一実施形態において、該リンカー基は、式−(CR’2)m−を有するアルキレン部分であり、式中、mは、1〜10の整数であり、且つ各R’は、水素及び場合によっては置換されたC1〜C6アルキル基から独立に選択され、このとき、アルキレン部分にある0又は1〜5個、好ましくは1又は2個の炭素原子は、アリーレン、−O−、−S−及び−NR’’−から選択される部分によって置換され、式中、R’’は、水素又はC1〜C6アルキルであり、且つ該アリーレン部分は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシ基から選択される1、2若しくは3個の置換基によって置換される。場合によっては置換された各C1〜C6アルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C1〜C6アルコキシ、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸及びリン酸塩から選択される1個又は複数の置換基で独立に置換されていてもよい。アルキレン部分の少なくとも2個の炭素原子が−O−及び/又は−NR’’−によって置換されるときには、アルキレン部分において置換されるこれらの炭素原子が互いに直接に隣接していないことが好ましい。これにより、化学的に反応性の官能基である−O−O−、−O−NR’’−及び−NR’’−NR’’−を含むリンカー基の存在が回避される。
【0077】
本発明の粒子は、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤をさらに含んでいてもよい。1種又は複数のこれらの試薬が存在する場合、これらを使用して、該粒子が標的部位に蓄積されているかどうかを決定することができる。好適な光学コントラスト剤の例は、Cy5.5(クロロトキシンとシアニンとの組合せ);イソチオシアネート化合物、例えば、FITC及びTRITCなど;アミン反応性スクシンイミジルエステル、例えば、NHS−フルオレセインなど;並びにスルフヒドリル反応性マレイミド活性化蛍光体、例えば、フルオレセイン−5−マレイミドなどである。好適な放射性同位体の例としては、銅−67、ガリウム−66、ガリウム−67、イットリウム−90、イットリウム−88、テクネチウム−99m、ヨウ素−123、ヨウ素−125、ヨウ素−131、インジウム−111、インジウム−114m及びインジウム−114などが挙げられる。超常磁性コントラスト剤の一例は、1個又は複数の酸化鉄ナノ粒子である。
【0078】
該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、該粒子又は各粒子のコーティングに結合されていることが好ましい。該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、超常磁性コントラスト剤又は該ターゲティング部分は、該粒子上へのコーティングの形成中に、該コーティング中に埋め込まれてもよく、且つそれによって該コーティングに結合されてもよい。これは、該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤、超常磁性コントラスト剤又は該ターゲティング部分を、該コーティングを調製するために使用される出発物質と混合することによって簡単に達成することができる。
【0079】
典型的には、光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、直接に又は、上記のリンカー基のような、リンカー基を介して、粒子又はその粒子のコーティングに結合させることができる。該リンカー基は、放射性同位体とキレート化することができる官能基を有していてもよい。こうした基は、リンカー化合物自体の中に存在していてもよく、又はリンカーが一度コーティングに結合されてからそのリンカーに付加されてもよい。光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤は、リンカー基によって粒子のコーティングに結合される、特に、共有結合で結合されることが好ましい。
【0080】
本発明は、(i)複数の本発明の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物も提供する。好適な薬学的に許容される成分は、当業者によく知られており、薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水、等張液)、賦形剤、添加剤、アジュバント、充填剤、緩衝液、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、溶解剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤及び甘味剤などが挙げられる。好適な担体、賦形剤、添加剤などは、標準的な医薬の教科書の中で見出すことができる。例えば、Handbook for Pharmaceutical Additives、第2版(M.Ash及びI.Ash編)、2001(Synapse Information Resources、Inc.、Endicott、New York、USA)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott、Williams&Wilkins発行、2000;並びにHandbook of Pharmaceutical Excipients、第2版、1994を参照されたい。
【0081】
医薬組成物は、液体剤、溶液剤又は懸濁剤(例えば、水溶液又は非水溶液)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤(例えば、コート錠)、顆粒剤、散剤、ロゼンジ剤、パステル剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセル剤及び軟ゼラチンカプセル剤)、丸剤、アンプル剤、ボーラス剤、チンキ剤、ゲル剤、ペースト剤又は油剤の形態であっても(すなわち、として製剤化されても)よい。
【0082】
典型的には、本発明の粒子は、1種又は複数の薬学的に許容される成分に溶解されるか、これに懸濁されるか、又はこれと混合される。
【0083】
(例えば、注射による)非経口投与に好適な医薬組成物としては、本発明の粒子が溶解又は懸濁されている水性又は非水性の無菌液などを挙げることができる。こうした液体は、抗酸化剤、緩衝液、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤、及びその製剤を予定されるレシピエントの血液(又は他の関連する体液)と等張にする溶質などの、薬学的に許容される他の成分をさらに含んでいてもよい。添加剤の例としては、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。こうした製剤において使用するための好適な等張液の例としては、塩化ナトリウム注射液、リンガー溶液又は乳酸加リンゲル注射液などが挙げられる。
【0084】
典型的には、該医薬組成物中の該粒子の濃度は、1×1010粒子/ml〜1×1024粒子/ml、例えば1×1013粒子/ml〜1×1021粒子/ml、より好ましくは1×1015粒子/ml〜1×1018粒子/mlである。
【0085】
該医薬組成物は、単位用量又は多回用量の密封された容器に入れて提供することもできる。即席注射溶液及び懸濁液は、無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製することもできる。
【0086】
(例えば、経口摂取による)経口投与に好適な医薬組成物としては、液体剤、(例えば、水性又は非水性の)溶液剤又は懸濁剤、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、丸剤、アンプル剤又はボーラス剤などが挙げられる。
【0087】
錠剤は、従来の方法によって、例えば、圧縮又は成形によって、場合によっては1種又は複数の補助成分と共に、作製することができる。圧縮錠は、粉末又は顆粒のような自由に流れる形態の活性化合物を、場合によっては1種又は複数の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アカシア、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤又は賦形剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤又は分散剤又は湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);保存剤(例えば、メチルp−ヒドロキシ安息香酸、プロピルp−ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸);香味、香味増強剤、及び甘味剤と混合して、好適な機械の中で圧縮することによって調製することができる。成形錠は、不活性な液体賦形剤で湿潤させた粉末化合物の混合物を、好適な機械の中で成形することによって作製することができる。該錠剤は、場合によっては、例えば、放出に影響を与えるために(例えば、胃以外の腸の部分での放出を可能にする腸溶コーティング)、コーティングされていてもよい。
【0088】
一般に、該医薬組成物は、治療有効量の本発明の粒子を含むことになる。該粒子及び該粒子を含む医薬組成物の適切な用量が患者によって変化しうることは、当業者によって理解されるであろう。最適用量の決定には、一般に、治療的利点のレベルとあらゆるリスク又は有害な副作用とのバランスをとることが必要とされることになる。選択される用量レベルは、投与の経路、投与の時間、粒子の排出の速度、治療の期間、組み合わせて使用する他の化合物及び/又は物質、状態の重症度、並びに患者の種、性別、年齢、体重、状態、総合的な健康状態、及びこれまでの病歴を含む多様な因子によって決まることになる。一般に、その用量は、望ましい効果を達成する、作用部位での局所濃度を達成するように選択されることになるが、粒子の量及び投与の経路は、最終的に、医師、獣医師、又は臨床医の判断によることになる。
【0089】
本発明は、(a)上記のような、複数の本発明の粒子と、(b)放射線増感剤とを含む組合せをさらに提供する。好ましくは、該放射線増感剤は、X線放射線増感剤である。好適な放射線増感剤としては、ミソニダゾール、メトロニダゾール及びチラパザミンなどが挙げられる。この組合せは、本発明の粒子又は医薬組成物について本明細書に記載のように、療法によるヒト又は動物の身体の治療のために使用するか、癌の治療のために使用するか又はX線照射と組み合わせた癌の治療用の医薬品の製造のために使用することができる。
【0090】
本発明は、(iii)上記のような放射線増感剤をさらに含む、上記のような医薬組成物にも関する。本発明の粒子及び該放射線増感剤は、単一の医薬組成物の部分を形成していることが好ましい。
【0091】
本発明のさらなる一態様は、X線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、同時、並行、分離又は連続の使用のための複合製剤として、(a)本明細書に記載のような、複数の本発明の粒子と、(b)上記のような放射線増感剤とを含む製品に関する。
【0092】
本発明は、一般にX線照射と組み合わせて使用する場合の、癌を治療するための、又は癌の治療のための、方法及び使用にも関する。療法又は治療の一部として、本発明の粒子は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、任意の都合のよい投与の経路によって対象に投与することができる。したがって、X線照射と組み合わせた癌の治療に対するいずれの言及も、一般に、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与し、次いで、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導することによる癌の治療を指す。
【0093】
一般に、本発明の癌治療は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を、腫瘍組織内への注射(すなわち、腫瘍内注射)又は癌の部位若しくは位置での注射によって対象に投与することを含む。
【0094】
本発明の粒子の投与は、全身が好ましく、典型的には所望の作用の部位における。
【0095】
典型的には、癌を治療すること又は癌の治療は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に経口的に(例えば、経口摂取によって)又は、より好ましくは、非経口的に投与することを含む。非経口投与は、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、包膜内、脊髄内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下及び胸骨内の注射から選択されることが好ましい。
【0096】
一般に、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、治療有効量の該粒子を対象に投与することを含む。
【0097】
投与は、1つの用量で、治療の過程を通して連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔での分割用量で)行うことができる。最も有効な投与の方法及び用量を決定する方法は、当業者によく知られており、療法のために使用される製剤、療法の目的、治療中の標的組織又は細胞、及び治療中の対象によって異なることになる。治療する医師、獣医師、又は臨床医によって選択される用量のレベル及びパターンで単回投与又は多回投与を行うことができる。
【0098】
一般に、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位に定められた線量のX線照射を誘導することを含む。このX線は、1つの線量で、治療の過程を通して連続的又は断続的に(例えば、適切な間隔での分割線量で)投与することができる。治療する医師、獣医師、又は臨床医によって選択される線量のレベル及びパターンで単回投与又は多回投与を行うことができる。
【0099】
ROSを生成するために、UV照射のような、他の型の放射線を使用することは一般に不要である。したがって、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位にUV照射を誘導するステップを必要としないことが好ましい。より好ましくは、癌を治療するための本発明の治療又は方法において使用する唯一の型の放射線は、X線である。
【0100】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、医薬組成物、組合せ、製品などとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与する第1のステップ、次いで、その癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する第2のステップを含み、その後、対象が定められた総線量のX線を受けるまで第1のステップ及び第2のステップを連続して繰り返す。
【0101】
あらゆる種類の癌を、原則として、治療することができ、薬剤抵抗性の腫瘍に関連した問題も回避される。したがって、本発明は、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌を治療するために使用することもできる。本発明は、腎細胞癌のような、放射線抵抗性である癌を治療するために使用することもできる。
【0102】
典型的には、本発明の粒子は、癌の治療において放射線療法の効果を高める。したがって、本発明は、医薬組成物、組合せ、製品、医薬品などとしてかどうかにかかわらず、好ましくはX線照射と組み合わせて使用する場合の癌の治療における、放射線増感剤としての、該粒子の使用に関する。放射線増感剤は、効力の損失なしにX線の線量を低減させることができ、その結果、本発明の粒子の非存在下でより高い線量のX線を使用して得られるものと比較して同様の治療結果が得られる。或いは、放射線増感剤はX線の効果を高め、これは結果として、本発明の粒子の非存在下で同じ線量のX線を使用した場合に得られるものと比較して患者にとって改良された治療結果となる。
【0103】
一実施形態において、癌を治療するための該治療又は方法は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、本発明の粒子を腫瘍組織内への注射又は癌の部位若しくは位置での注射によって対象に投与することを含む。
【0104】
典型的には、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該腫瘍組織内への注射又は該癌の部位若しくは位置での注射によって対象に該粒子を投与した後に直接行われる。いくつかの例において、該粒子を腫瘍組織又は癌部位の全体に拡散させるための短い時間が、その位置にX線照射を誘導する前に必要とされうる。一般に、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に投与した後、1時間以内に行われる。好ましくは、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に投与した45分後以内、より好ましくは30分後以内、特に15分後以内、特に10分後以内、さらにより好ましくは5分以内、又は直後に行われる。
【0105】
他の一実施形態において、癌を治療するための該治療又は方法は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、本発明の粒子を対象に経口的又は非経口的に投与することを含む。
【0106】
典型的には、該粒子を対象に投与した後、該粒子を癌又は腫瘍組織の位置に蓄積させるために、その位置にX線照射を誘導する前に、十分な時間を経過させる。該粒子の投与とX線での照射との間のこの時間は、とりわけ、投与の様式、該粒子に結合されたターゲティング部分があるかどうか、及びその癌の性質によって決まることになる。
【0107】
典型的には、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップは、該粒子又は該医薬組成物を対象に、好ましくは経口的又は非経口的に投与した後、少なくとも3時間、特に少なくとも6時間、好ましくは9〜48時間、特に12〜24時間行われる。
【0108】
一般に、該対象は、20〜70Gyの総X線量、例えば40〜50Gyなどに曝露される。
【0109】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法は、該癌又は腫瘍組織の位置又は部位に、1.0〜3.0Gy、好ましくは1.5〜2.5Gy線量、より好ましくは1.8〜2.0Gy線量のX線照射を誘導することを含む。こうした低周波数の線量は、健常細胞に、照射によって引き起こされたあらゆる損傷を修復するようになるための時間を与えることを意図するものである。
【0110】
典型的には、癌を治療するための本発明の治療又は方法におけるX線照射は、0.08MeV〜0.09MeVのエネルギーを有する。
【0111】
該方法は、癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する前に、癌又は腫瘍組織の位置又は部位における1種又は複数の本発明の粒子の存在又は非存在を検出するステップも含みうる。この検出ステップは、下記のように行うこともできる。
【0112】
本発明は、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、該癌細胞及び1種又は複数の粒子にX線照射を誘導することを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法を提供する。典型的には、1種又は複数の本発明の粒子は、該癌細胞及び1種又は複数の粒子にX線照射を誘導する前に、該細胞培養物、培地又は溶液中に該癌細胞の存在下、インキュベーター中などで、少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間放置される。
【0113】
本発明は、ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための本発明の粒子又は医薬組成物にも関する。本発明は、癌の存在又は非存在を診断するためのこれらの使用に関する。さらに提供されるのは、医薬組成物、製品、組合せなどとしてかどうかにかかわらず、1種又は複数の本発明の粒子を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出することを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法である。
【0114】
標的組織における該粒子の蓄積は、受動的ターゲティング又は能動的ターゲティングによってかどうかにかかわらず、腫瘍又は癌をラジオグラフィーによって、典型的には従来のX線画像法を使用して、診断するのを可能にしうる。腫瘍内に蓄積する、該粒子の金属酸化物中の重希土類元素ドーパントの存在は、X線によって腫瘍組織が可視化されるのを可能にしうる。
【0115】
典型的には、1つの位置又は部位において1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出するステップは、その位置又は部位にX線照射を行ってX線画像を得ることを含む。次いで、該X線画像を使用して、癌又は腫瘍組織がその位置又は部位に存在する又は存在しないかどうかを決定することもできる。診断に使用する場合、X線に対する対象の曝露時間は、一般に1秒〜30分、好ましくは1分〜20分、より好ましくは1秒〜5分である。
【0116】
1種又は複数の該粒子が光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤を含む場合には、その作用剤は、その位置又は部位における1種又は複数の該粒子の存在又は非存在を検出するステップを行うために使用することもできる。1種又は複数の該粒子を検出する厳密な方法は、存在する該光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤によって決まることになる。
【0117】
一実施形態において、癌性であると疑われる位置又は部位における本発明の粒子の蓄積又は多さを検出することによって癌の存在を診断することもできる。
【0118】
一般に、本発明は、哺乳類、特にヒトの治療又は診断に関する。
【0119】
定義
本明細書中で癌を治療することについての文脈において使用される場合、「治療」という用語は、一般に、ヒト又は動物(例えば、獣医学的適用において)のかどうかにかかわらず、例えばその状態の進行の阻害のように、いくつかの望ましい治療効果が達成される、治療及び療法を指す。この用語は、進行の速度の低下、進行の速度の停止、状態の退行、状態の改善、及び状態の治癒を含む。待期的治療又は予防的手段としての治療(すなわち、予防、防止)も含まれる。
【0120】
本明細書中で使用される場合、「治療有効量」という用語は、医薬組成物、製品、組合せなどの部分としてかどうかにかかわらず、望ましい治療レジメンに従って投与するとき及び該対象を定められた線量のX線照射で治療するときに、いくつかの望ましい治療効果を生じるために有効な、本発明の粒子の量を指す。
【0121】
本明細書中で使用される場合、「コア」という用語は、一般に、該粒子の本体、特に、該粒子がシェルもコーティングも有していないときを指す。典型的には、「コア」という用語は、該粒子の中央の最も内側の部分を指す。
【0122】
本明細書中で使用される場合、「シェル」という用語は、一般に、該粒子の、例えばコアの表面のような、内表面を実質的に又は完全に覆う層、典型的には外層を指す。本明細書中で使用される場合、「シェル」という用語は、金属元素又は、例えば、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4及びCs3Lu(PO4)2のうちの1種又は複数などであって、各化合物は、場合によっては希土類元素でドープされていてもよい、X線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物から形成された層を指すと理解されたい。
【0123】
本明細書中で使用される「複合粒子」に対するいずれの言及も、コアと、コアとは異なる物質からなる少なくとも1つのシェルとを有する粒子(例えば、コア−シェル構造)を指す。
【0124】
本明細書中で使用される「粒子の凝集体」に対するいずれの言及も、複数のより小さい分離した粒子、典型的にはナノ粒子の凝集物である、粒子を指す。一般に、粒子の凝集体は、例えば金属酸化物と、金属元素、又はX線を吸収してUV−可視光を放出する無機化合物(例えば、Y2O3、(Y,Gd)2O3、CaWO4、GdO2S、LaOBr、YTaO3、BaFCl、Gd2O2S、Gd3Ga5O12、Rb3Lu(PO4)2、HfGeO4又はCs3Lu(PO4)2、ここで、各化合物は、場合によっては希土類元素でドープされていてもよい)のいずれかとのような、2種の異なる物質から構成される。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「オリゴ糖」という用語は、3〜10個の構成要素の単糖を含む糖重合体を指す。オリゴ糖の一例は、ショ糖である。
【0126】
本明細書中で使用される場合、「多糖」という用語は、少なくとも11個の構成要素の単糖からなる糖重合体を指す。多糖の一例は、アガロース又はデキストランである。
【0127】
本明細書中で使用される場合、「アルキル」という用語は、典型的には(他に明記がない限り)1〜6個の炭素原子を有する炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を取り除くことによって得られる一価の部分を指し、これは、脂肪族又は脂環式であってもよく、飽和されている。アルキル基及び部分の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル及びヘキシルなどが挙げられる。
【0128】
本明細書中で使用される場合、「ハロゲン原子」という用語は、−F、−Cl、−Br又は−I基又は部分を指す。
【0129】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、−OH基又は部分を指す。
【0130】
本明細書中で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、−O−アルキル基又は部分を指す。アルコキシ基の例としては、−OMe(メトキシ)、−OEt(エトキシ)、−OnPr(n−プロポキシ)、−OjPrなどが挙げられる。
【0131】
本明細書中で使用される場合、「スルホン酸」という用語は、−S(=O)2OH又は−SO3H基又は部分を指す。
【0132】
ここで使用される場合、「スルホン酸塩」という用語は、−S(=O)2O−(例えば、−SO3Na又は−SO3K)又は−S(=O)2O−アルキル基又は部分を指す。好ましくは、スルホン酸塩は、−S(=O)2O−基又は部分である。
【0133】
本明細書中で使用される場合、「リン酸」という用語は、OP(=O)(OH)2基又は部分を指す。
【0134】
本明細書中で使用される場合、「リン酸塩」という用語は、−OPO32−(例えば、−OPO3Na2)又は−OP(=O)(OH)O−(例えば、−OP(=O)(OH)ONa)基又は部分を指す。好ましくは、リン酸塩は、−OPO32−基又は部分である。
【0135】
本明細書中で使用される場合、「アルキレン」という用語は、(他に明記がない限り)1〜10個の炭素原子を有する炭化水素化合物の、いずれも同一の炭素原子からか、又は2個の異なる炭素原子のそれぞれから1個ずつかのいずれかの、2個の水素原子を取り除くことによって得られる二座の部分を指し、これは、脂肪族又は脂環式であってもよく、飽和されている。アルキレン基の例としては、−CH2−(メチレン)、−CH2CH2−(エチレン)、−CH2CH2CH2−(プロピレン)及び−CH2CH2CH2CH2−(ブチレン)などが挙げられる。
【0136】
本明細書中で使用される場合、「アリーレン」という用語は、芳香族化合物の2個の異なる芳香族環原子のそれぞれから1個ずつの、2個の水素原子を取り除くことによって得られる二座の部分を指し、この部分は、(他に明記がない限り)6〜10個の環原子を有する。好ましくは、該芳香族化合物は、6個の環原子を有する。
【0137】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0138】
[実施例]
希土類でドープされた二酸化チタン粒子の調製
硝酸ガドリニウム(III)六水和物、硝酸ユウロピウム(III)水和物、硝酸テルビウム(III)五水和物、硝酸ネオジム六水和物、及び硝酸エルビウム(III)五水和物から選択される1種又は複数の希土類金属化合物を、10mLのチタン(IV)イソプロポキシドに懸濁し、次いで、30mLの無水イソプロパノールを添加した。
【0139】
この溶液中に懸濁した希土類金属化合物の量により、二酸化チタンの母格子中に導入されるドーパントの量が決定される。25mol%までの総量の1種又は複数の希土類元素を、二酸化チタンの母格子中に導入することもできる。一例として、340マイクロモルの硝酸ガドリニウムを34ミリモルのチタンイソプロポキシドに添加して、1mol%のガドリニウムでドープされた二酸化チタンを作製する。
【0140】
次いで、この溶液を、500mLの50/50(v/v)の水/イソプロパノール混合物に、激しく撹拌している間に滴下して添加した。この混合物をさらに5分間撹拌し、次いで、沈澱物を沈降させた。この上清を除去し、沈澱物を200mLのイソプロパノールで洗浄して、さらに10min撹拌した。続いて、濾過によってこの上清を回収し、次いで、ddH2Oで半分満たしたチューブ内でオートクレーブ処理した。次いで、スラリーを、乾燥するまで100℃で維持した。試料を、微細な粉末に粉末化し、続いて、多様な温度で(例えば、700℃で3時間)焼成させた。
【0141】
シーピーエスディスクセントリフュージ(CPS Disc Centrifuge)(登録商標)を使用して、該粒子の大きさ分布を解析することができる。
【0142】
上記の方法は、代替の希土類金属の硝酸塩化合物を使用するときに、他の希土類でドープされた二酸化チタン粒子を調製するために使用することもできる。上記の方法は、亜鉛アセチルアセトネート又はセリウムアセチルアセトネートのような、セリウムケトネート又は亜鉛ケトネートを出発物質として使用するときに、希土類でドープされた酸化セリウム又は酸化亜鉛を調製するためにも使用することができる。
【0143】
シリカコーティングされた粒子の調製
ドープされた二酸化チタンナノ粒子(4.52g)を200mLのミリQ水(Milli−Q water)(pH4.5)中に再懸濁することによって、第1の溶液を調製した。3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(1.89mL)を50mLのミリQ水に添加することによって、第2の溶液を調製した。次いで、この第2の溶液のうちの20mLを、ドープされた二酸化チタンナノ粒子を含む第1の溶液に添加し、撹拌した。1時間後、ケイ酸ナトリウム(40mL)を添加して、シリカ層が成長するにつれて10分毎に試料を取り出した。この試料を、次いで、遠心分離して、得られた固体をミリQ水で洗浄した。これを3回繰り返した。得られたシリカコーティングされた粒子を、水中で超音波処理し、0.2マイクロメートルの酢酸セルロースフィルターに通した。シーピーエスディスクセントリフュージ(登録商標)を使用して、大きさ分布を解析した。図2は、上記の方法に従うことによって調製した、ガドリニウムでドープされた二酸化チタンの粒径分布を示す。
【0144】
FITC標識粒子の調製
乾燥窒素雰囲気下、5mLの無水エタノール中で100μLの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を25mgのフルオレセインイソチオシアネート混合異性体(FITC)に添加することによって、FITC−APTESを調製した。次いで、この混合物を12h撹拌した。得られたFITC−APTES(2.25mlの無水エタノール中に130μL)を130μLのオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と混合し、次いで、100μLの水酸化アンモニウム(水中28%)を添加した。この混合物を、2.5mLの水中のシリカコーティングされた粒子に添加して、これらを共に15min超音波処理した。次いで、この試料を遠心分離して、水で洗浄し、ホイル中で保存した。
【0145】
ガドリニウムでドープされた二酸化チタンからのROS生成の推定
0.085MeVのX線を使用すれば、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子からのROSの理論的生成を算出することができる。ジュール(J)での光子の平均エネルギーは、1.36×10−14Jである。1Gy線量(1Gy=1J.kg−1)のX線を患者に投与する場合、粒子のキログラム当たりの平均光子束は、以下のようになる:
kg粒子当たり1/1.36×10−14=7.3×1013(平均)光子束。
【0146】
酸化ガドリニウム(III)の密度は、7.41gcm−3であり、二酸化チタンの平均密度(板チタン石、鋭錐石及びルチルの形態はそれぞれ、僅かに異なる密度を有する)を4.00gcm−3として使用して、90重量%の二酸化チタン及び10重量%の酸化ガドリニウム(III)からなる30nm粒子の質量は、以下のように算出することができる:
各粒子の密度(ρ)=
0.9×4000(TiO2)+0.1×7410(Gd2O3)=4341kgm−3。
該粒子の質量=4/3πr3ρ=5×10−19kg。
【0147】
粒子当たりの光子の数は、以下のように算出することができる:
7.3×1013光子束kg−1×5×10−19kg=3.65×10−5光子。
【0148】
15mg(1.5×10−5kg)の粒子を含む200μLの試料を投与する場合、200μL当たり3×1013個の粒子があることになり、200μLウェル(well)当たりの平均光子束は、以下のようになる:
3.65×10−5光子×3×1013粒子=1.1×109。
【0149】
該粒子の総容積は、以下の通りである:
1.5×10−5kg/4341kgm−3=3.45×10−9m3。
【0150】
該粒子が半径6×10−3の1ウェル内に存在するのであれば、このウェル内の粒子の厚さ「t」は、以下の通りである:
3.45×10−9m3/(π×(6×10−3)2m2)=3×10−5m。
【0151】
したがって、該ウェル内には、ガドリニウムでドープされた二酸化チタン(TiO2:Gd)の高さが3×10−5mの円盤と同等のものがある。各ウェル内では:
1.1×109個のX線光子が、3×10−5mのTiO2:Gdに当たる。
I=I0exp(−0.91×4341×3×10−5)
I=0.88I0
これは、1GyのX線照射につき1ウェル当たり0.88×1.1×109=9億6800万個の光子が吸収されることを意味する。
【0152】
吸収された光子のうちの約10%が結果としてROS生成につながるとすると、1GyのX線照射につき1ウェル当たり9680万個のROSが生成される。
【0153】
各ウェルに10000細胞を播種する場合には、細胞当たり9680個のROSがあることになる。
【0154】
実施例1
ガドリニウム、エルビウム、ユウロピウム、ネオジム、テルビウム又はこれらのドーパントの組合せでドープされた二酸化チタンの粒子を、上記の方法に従って調製した。次いで、クマリン分析(Ishibashiら、Electrochemistry Comm.、2(2000)、207〜210)を用いて、該粒子の光活性を、市販の二酸化チタン光触媒P25(Degussa)と相対的に試験及び測定した。例えば、0.01gのP25を8mLのPBS中2gL−1のクマリンに添加した。試料を、UVA Cube 400からの白色光又はUV灯のいずれかに曝露させた。設定した時間間隔で(例えば、30min毎に)一定分量を取り出して、蛍光光度計(励起345nm、放出496nm)で分析した。活性を、P25の活性についての百分率として表した。これらの結果を図3に示している。
【0155】
次いで、ガドリニウム又はエルビウムのみでドープされた粒子を種々の温度でのか焼によって変性させた。光触媒P25(Degussa)と相対的な該粒子の光活性をここでも測定した。これらの結果を図4に示している。
【0156】
これらの結果により、該金属酸化物の格子中で一度電子正孔対が生成されると、著しいROSの流量によって該金属酸化物が光励起及び脱励起されることが示される。これにより、ドーパントのイオンは電子正孔組換え部位として作用しないこと、及びX線が吸収されるとROSが生成されることになることがわかる。
【0157】
実施例2
異なる濃度のガドリニウムを含む、ドープされた二酸化チタン粒子を、上記の方法を使用して調製した。該粒子を0.2μmのセルロースフィルターを使用して大きさによって分画し、約65nmの直径の粒子をその後の細胞試験に使用した。シリカコーティングされたドープされた二酸化チタン粒子は、全て200nm未満であり、ピークの大きさは65nmあたりに集中しており、これにより、細胞内への受動的な取り込みが促進されるはずである(図2を参照されたい)。凝集を防ぎ且つ生体適合性を促進するために、上記の方法を使用して、該粒子をシリカでコーティングした。
【0158】
該粒子のシリカ層をFITC(緑色)で標識した。ドープされた二酸化チタン粒子の存在下で細胞を一晩インキュベートした後に、該粒子が受動的に細胞に入っているのが認められ、図5に示されるように、エンドソームに局在していた。エンドソームは、細胞核の近くにある。これらの細胞は、シリカコーティングされた全ての粒子について、80%の最低生存率を示し、これにより、これらの粒子が良好な生体親和性を有することが実証される。
【0159】
アデノウイルス核ターゲティングペプチドを、(Tkachenkoら、J.Am.Chem.Soc.、125(2003)、4700〜4701に記載のように)FITCタグ付きで合成した。N末FITC修飾及びC末アミド化を有する配列CGGFSTSLRARKAを使用した。シリカコーティングされた二酸化チタン粒子を、5%(v/v)のAPTESと共にインキュベートし、1時間撹拌した。次いで、この粒子を、100mMの炭酸ナトリウム緩衝液、pH8.5で洗浄した。次いで、ANB−NOS(N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド)架橋剤を、炭酸ナトリウム緩衝液中の粒子に2時間添加し、その後、NLS配列の添加を30分間行った。次いで、312nmの波長でUV光に曝露することによって、該NLSペプチドを該粒子に架橋させた。
【0160】
このFITC−NLS−NPで標識したドープされた二酸化チタン粒子を、横紋肉腫細胞(RH30)と共に37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。対照として、ドープされた二酸化チタンなしの細胞を含む試料も一晩インキュベートした。続いて、細胞をPBSですすぎ、次いで、氷冷したメタノールで固定した。4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を添加して、細胞核を染色した。これらの結果を図5に示している。該細胞核の位置は、DAPI蛍光シグナルによって、図5のスライド(A)(これを、該細胞の明視野像である、スライド(C)と比較されたい)に示されている。該粒子の位置は、FITC標識からの緑色蛍光シグナルを示している、スライド(B)に示されている。スライド(D)は、合成像であり、粒子が細胞内に入ったことを示す。
【0161】
次いで、これらの試料に、0.58Gymin−1でX線を照射して、3Gyまでの曝露を与えた。これらの線量は、通常患者に行われるであろう治癒的治療の保存的表現である。固形上皮性腫瘍の場合は、50〜70Gyの範囲の照射線量が典型的には使用されるであろうのに対し、リンパ腫は、一般に、20〜40Gyの線量で治療される。こうした線量は、通常、1.8〜2Gyに分割して1週間当たり5日間投与されるであろう。少量で高頻度の線量は、健常細胞に、放射線に対する曝露による損傷を修復した後に生育に戻るための時間を与えることを意図するものである。
【0162】
照射後、この試料を37℃で24又は48時間インキュベートした。インキュベート後、この細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄して、死滅した非接着細胞を除去した。次いで、接着した(生存)細胞をトリプシン処理して、マルチウェルプレートからの剥離を可能にさせた。次いで、ノイバウエル血球計算器を使用して、生存細胞を計数した。
【0163】
細胞死が単にX線に対する曝露のみによって生じることを説明するために、細胞生存率を、ドープされた二酸化チタン粒子なしの対照試料の関数として表した。ガドリニウムでドープされた二酸化チタン粒子で細胞株を処置することにより、X線に対する曝露後の細胞死が増大されることが見出された。図6にある結果を参照されたい。10%のガドリニウムでドープされた粒子では、約60%の細胞死という結果になるのを認めることができる。該粒子の存在下でインキュベートしたがX線によって励起されていない細胞株では、細胞死は実質的に全く認められなかった。
【0164】
典型的な癌治療の状態を再現するために、細胞を、該粒子と共にインキュベートし、次いで、3Gy線量のX線を照射した。次いで、この細胞を、24h放置して回復させ、その後、さらに3Gy線量のX線を再び照射した。24h後及び48h後に細胞死を評価した。これらの結果は、図7に例示しており、この処置により、細胞死が引き起こされるだけではなく、その後の細胞増殖も阻害されることを示している。細胞計数により、細胞死は60%で維持されることが示された。
【0165】
実施例3
異なる濃度のガドリニウム、ユウロピウム及びエルビウムでドープされた、シリカコーティングされた二酸化チタン粒子を、上記で設定した方法に従って調製した。RH30細胞株を含む試料を、ドープされた二酸化チタン粒子と共に一晩インキュベートし、その後、0.58Gymin−1で照射して、3GyのX線曝露を与えた。ドープされた二酸化チタン粒子の存在下でインキュベートしていない細胞株を含む対照試料にも照射を行った。
【0166】
照射後、この細胞を37℃で24又は48時間インキュベートし、次いで、PBSで洗浄して、死滅した非接着細胞を除去した。接着した(生存)細胞をトリプシン処理して、マルチウェルプレートからの剥離を可能にさせた。次いで、ノイバウエル血球計算器を使用して、生存細胞を計数した。
【0167】
細胞死が単にX線に対する曝露のみによって生じることを説明するために、細胞生存率を、ドープされた二酸化チタン粒子なしの対照試料の関数として表した。異なる濃度の希土類元素ガドリニウム、ユウロピウム及びエルビウムでドープされた二酸化チタン粒子の存在下でインキュベートした細胞株では、約65%の細胞死という結果になった(図8を参照されたい)。ここでも、該粒子の存在下でインキュベートしたがX線に曝露していない細胞株の細胞死は、実質的に全くなかった。
【0168】
該粒子と共にインキュベートした細胞に3Gy線量のX線を照射することによって、典型的な癌治療の状態を再現した。この細胞を、24h放置して回復させ、次いで、さらに3Gy線量のX線を再び照射した。24h後及び48h後に細胞死を評価した。これらの結果は、図9に例示しており、この処置により、細胞死が引き起こされるだけではなく、その後の細胞増殖も阻害されることを示している。細胞死はここでも60%で維持され、これらの結果は、この処置によってその後の細胞増殖も阻害されるという事実をここでも支持している。
【0169】
ガドリニウム、エルビウム及びユウロピウムでドープされた二酸化チタン粒子を、BHK(ハムスター腎臓由来)及びMCF7(乳癌由来)細胞株と共に使用して、上記の実施例2で設定した方法を用いてさらなる試験を行った。これらの粒子を使用したときに、約40%の細胞死があった。
【0170】
実施例4
30nmの大きさの二酸化チタン粒子(Hombikat XXS100、Sachtleben Chemie、Duisberg)を、FITC−NLSペプチドで表面を修飾して、上記の実施例2に記載のように、A549細胞と共にインキュベートした。
【0171】
これらの結果を図10に示している。該細胞核の位置は、DAPI蛍光シグナルによって、図10のスライド(A)(これを、該細胞の明視野像である、スライド(C)と比較されたい)に示されている。該粒子の位置は、FITC標識からの緑色蛍光シグナルを示している、スライド(B)に示されている。スライド(D)は、合成像であり、粒子がA549細胞の核の周りに局在していることを示す。
【0172】
実施例5
1%(v/v)アガロースウェルに50,000細胞を播種することによって、HepG2細胞から腫瘍細胞のスフェロイドを調製した。この細胞を、37℃、5%CO2の雰囲気下で、スフェロイドが形成されるまでインキュベートした。
【0173】
次いで、このスフェロイドを、mol%のGd、1mol%のEu及び1mol%のErでドープされた二酸化チタンナノ粒子と共に一晩インキュベートした。インキュベート後のスフェロイドの画像を、図11のA1及びA2に示している。次いで、このスフェロイドに3Gyの線量でX線を照射して、その後、インキュベーターに一晩戻した。次いで、インキュベート後のスフェロイドの画像を撮った。これを図11のC1及びC2に示している。
【0174】
比較として、二酸化チタンナノ粒子と共にインキュベートしていないスフェロイドにも3Gyの線量でX線を照射した。このスフェロイドに照射してこれを一晩インキュベートした後に、図11のB1及びB2に示している画像を得た。
【0175】
図11におけるC1及びC2とB1、B2、A1及びA2との比較から、スフェロイドを二酸化チタンナノ粒子と共にインキュベートし、次いで、これにX線を照射することにより、(A1及びA2に示しているように)スフェロイドをナノ粒子と共にインキュベートするだけの場合又は(B1及びB2に示しているように)スフェロイドにX線を照射するだけの場合と比較して、スフェロイド細胞の連結性のより大きな消失が引き起こされたことが明らかである。スフェロイド細胞の連結性は、X線を照射することなくナノ粒子と共にインキュベートしたときには影響されなかった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための粒子であって、前記粒子が金属酸化物を含み、前記金属酸化物が二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている、粒子。
【請求項2】
前記金属酸化物からなるコアを含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物が少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記金属酸化物が、0.1〜25mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
400nm未満の大きさを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
ターゲティング部分が前記コーティングに結合されている、請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤が前記コーティングに結合されている、請求項10又は11に記載の粒子。
【請求項13】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬組成物であって、(i)複数の請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、組成物。
【請求項14】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬品の製造のための粒子の使用であって、前記粒子が金属酸化物を含み、前記金属酸化物が二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている、使用。
【請求項16】
前記粒子が、前記金属酸化物からなるコアを含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記金属酸化物が少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項15〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項15〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項15〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項15〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記金属酸化物が、0.1〜25mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記粒子が400nm未満の大きさを有する、請求項15〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記粒子が、シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する、請求項15〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
ターゲティング部分が前記コーティングに結合されている、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤が前記コーティングに結合されている、請求項24又は25に記載の使用。
【請求項27】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬品の製造のための医薬組成物の使用であって、前記組成物が、(i)複数の請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、使用。
【請求項28】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項15〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を対象に投与するステップと、前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップとを含む、癌を治療する方法。
【請求項30】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記粒子又は医薬組成物を対象に
(a)腫瘍組織内への又は癌の部位若しくは位置での腫瘍内注射によって投与するステップ、或いは
(b)非経口的に投与するステップ、
を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する前に、前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位における前記粒子又は医薬組成物の存在又は非存在を検出するステップをさらに含む、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、前記癌細胞にX線照射を誘導するステップを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法。
【請求項34】
ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項35】
癌の存在又は非存在を診断するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項36】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における前記粒子又は前記医薬組成物の存在又は非存在を検出するステップを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法。
【請求項37】
La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされた金属酸化物を含む粒子であって、前記金属酸化物が二酸化チタンである、粒子。
【請求項38】
前記金属酸化物が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている、請求項38に記載の粒子。
【請求項39】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項37又は38に記載の粒子。
【請求項40】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項37〜39のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項41】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項37〜40のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項42】
前記金属酸化物が、(i)3.5〜12.5mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5mol%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5mol%の量のエルビウムとでドープされている、請求項37〜41のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項43】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項37〜42のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項44】
前記金属酸化物が、7.5〜25mol%の総量の希土類元素でドープされている、請求項37〜43のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項45】
10nm〜75nmの大きさを有する、請求項37〜44のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項46】
前記二酸化チタンが鋭錐石の形態にある、請求項37〜45のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項47】
金属酸化物からなるコアを含む、請求項37〜46のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項48】
請求項1〜12及び37〜47のいずれか一項に記載の粒子を、500℃以上の温度、好ましくは650℃以上の温度で加熱することによって得られる又は得ることのできる粒子。
【請求項49】
(i)請求項37〜48のいずれか一項に記載の複数の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、医薬組成物。
【請求項50】
療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するための、請求項37〜48のいずれか一項に記載の粒子又は請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項1】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための粒子であって、前記粒子が金属酸化物を含み、前記金属酸化物が二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている、粒子。
【請求項2】
前記金属酸化物からなるコアを含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記金属酸化物が少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記金属酸化物が、0.1〜25mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
400nm未満の大きさを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項11】
ターゲティング部分が前記コーティングに結合されている、請求項10に記載の粒子。
【請求項12】
光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤が前記コーティングに結合されている、請求項10又は11に記載の粒子。
【請求項13】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬組成物であって、(i)複数の請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、組成物。
【請求項14】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬品の製造のための粒子の使用であって、前記粒子が金属酸化物を含み、前記金属酸化物が二酸化チタンであり且つ少なくとも1種の希土類元素でドープされている、使用。
【請求項16】
前記粒子が、前記金属酸化物からなるコアを含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記金属酸化物が少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされている、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項15〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項15〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項15〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項15〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
前記金属酸化物が、0.1〜25mol%の総量の1種又は複数の希土類元素でドープされている、請求項15〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
前記粒子が400nm未満の大きさを有する、請求項15〜22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記粒子が、シリカ、アルミナ、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、糖、オリゴ糖、多糖及びこれらの2種以上の混合物から選択される1種又は複数の化合物のコーティングを有する、請求項15〜23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
ターゲティング部分が前記コーティングに結合されている、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
光学コントラスト剤、放射性同位体、常磁性コントラスト剤又は超常磁性コントラスト剤が前記コーティングに結合されている、請求項24又は25に記載の使用。
【請求項27】
癌の治療においてX線照射と組み合わせて使用するための医薬品の製造のための医薬組成物の使用であって、前記組成物が、(i)複数の請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、使用。
【請求項28】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項15〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を対象に投与するステップと、前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導するステップとを含む、癌を治療する方法。
【請求項30】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓、膀胱、乳房、頭頸部、脳、卵巣、前立腺、腸、結腸、直腸、子宮、膵臓、眼、骨髄、リンパ系又は甲状腺の癌である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記粒子又は医薬組成物を対象に
(a)腫瘍組織内への又は癌の部位若しくは位置での腫瘍内注射によって投与するステップ、或いは
(b)非経口的に投与するステップ、
を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位にX線照射を誘導する前に、前記癌又は腫瘍組織の位置又は部位における前記粒子又は医薬組成物の存在又は非存在を検出するステップをさらに含む、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を、癌細胞を含む細胞培養物、培地又は溶液に添加し、次いで、前記癌細胞にX線照射を誘導するステップを含む、癌細胞を破壊するin vitroの方法。
【請求項34】
ヒト又は動物の身体上で行われる診断法において使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項35】
癌の存在又は非存在を診断するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項36】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粒子又は請求項13に記載の医薬組成物を対象に投与し、次いで、癌性であると疑われる位置又は部位における前記粒子又は前記医薬組成物の存在又は非存在を検出するステップを含む、癌の存在又は非存在を診断する方法。
【請求項37】
La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも2種の異なる希土類元素でドープされた金属酸化物を含む粒子であって、前記金属酸化物が二酸化チタンである、粒子。
【請求項38】
前記金属酸化物が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選択される少なくとも3種の異なる希土類元素でドープされている、請求項38に記載の粒子。
【請求項39】
前記金属酸化物がガドリニウムでドープされている、請求項37又は38に記載の粒子。
【請求項40】
前記金属酸化物がユウロピウムでドープされている、請求項37〜39のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項41】
前記金属酸化物がエルビウムでドープされている、請求項37〜40のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項42】
前記金属酸化物が、(i)3.5〜12.5mol%の量のガドリニウムと、(ii)0.5〜1.5mol%の量のユウロピウムと、(iii)0.5〜1.5mol%の量のエルビウムとでドープされている、請求項37〜41のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項43】
前記金属酸化物がネオジムでドープされている、請求項37〜42のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項44】
前記金属酸化物が、7.5〜25mol%の総量の希土類元素でドープされている、請求項37〜43のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項45】
10nm〜75nmの大きさを有する、請求項37〜44のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項46】
前記二酸化チタンが鋭錐石の形態にある、請求項37〜45のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項47】
金属酸化物からなるコアを含む、請求項37〜46のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項48】
請求項1〜12及び37〜47のいずれか一項に記載の粒子を、500℃以上の温度、好ましくは650℃以上の温度で加熱することによって得られる又は得ることのできる粒子。
【請求項49】
(i)請求項37〜48のいずれか一項に記載の複数の粒子と、場合によっては(ii)1種又は複数の薬学的に許容される成分とを含む、医薬組成物。
【請求項50】
療法によるヒト又は動物の身体の治療において使用するための、請求項37〜48のいずれか一項に記載の粒子又は請求項49に記載の医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【公表番号】特表2013−513594(P2013−513594A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542614(P2012−542614)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002247
【国際公開番号】WO2011/070324
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500205220)アイシス イノヴェイション リミテッド (10)
【住所又は居所原語表記】Ewert House, Ewert Place, Summertown, Oxford, OX2 7SG, United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002247
【国際公開番号】WO2011/070324
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(500205220)アイシス イノヴェイション リミテッド (10)
【住所又は居所原語表記】Ewert House, Ewert Place, Summertown, Oxford, OX2 7SG, United Kingdom
【Fターム(参考)】
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