説明

放射線硬化型インク組成物、記録方法、記録物、インクセット、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録装置、放射線検知方法、および管理方法

【課題】受けた放射線の量を把握することが容易な放射線硬化型インク組成物を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる放射線硬化型インク組成物は、染料と、マンセル表色系の10個の色相において、前記染料の色の色相と隣接しない色相の色を有する顔料と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インク組成物、記録方法、記録物、インクセット、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録装置、放射線検知方法、および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インク組成物の小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。この記録方法は、高解像度、高品位な画像を高速で印刷することができるという特徴を有する。また近年、紫外線等の放射線によって硬化する放射線硬化型インクの開発が進められている。この放射線硬化型インクは、プラスチック等のインクを吸収しない非吸収メディアに対する記録において、速乾性があり、かつインクの滲みを防止した記録を実現することができる。このような放射線硬化型インクは、重合性化合物、重合開始剤および着色成分等から構成されている。
【0003】
重合性化合物は、その組成や重合方法等によって、ラジカル重合系とカチオン重合系に分類することができる。その中でも、ラジカル重合系の重合性化合物は、ラジカル重合開始剤等の配合が比較的簡単であるため、開発が進んでいる。このような放射線硬化型インクの重合性化合物が重合して高分子となることにより、たとえば、印刷した画像の耐擦過性や密着性(剥がれにくさ)を向上させることができる。
【0004】
一方、着色成分の一般的なものとしては、各色の顔料および染料がある。一般に顔料は、保存性(耐光性、耐湿性、耐候性、耐酸化ガス性など)が良いが、発色性や透明性に劣る。また、一般に染料は、発色性、透明性に優れる反面、保存性に劣る。このようなことから、耐候性、発色性、分散性のバランスを採る目的で、顔料および顔料と同系色の染料の両者を配合したインクが提案されている(たとえば、特許文献1など)。これによると、たとえば、マゼンダ色のインク組成物であれば、マゼンダ、レッド、オレンジなどの染料と顔料を組み合わせて配合したインクが考えられる。
【特許文献1】特開2004−339489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、顔料と染料の両方を含むインク組成物においては、放射線を受けたり、放射線によって発生するラジカルと反応することにより、染料が著しく退色してしまうことがあった。このようにインク組成物に顔料および染料が配合された場合には、硬化にともなう化学変化によって染料の発色が変化するため、目的の色が得られなくなるという問題が生じていた。しかし、発明者らは、放射線等によって染料の色が変化する現象を積極的に利用することに着目し、鋭意検討した結果、本発明を為すに至った。
【0006】
本発明の目的の1つは、受けた放射線の量を把握することが容易な放射線硬化型インク組成物、インクセット、インクジェット記録用インクカートリッジ、およびインクジェット記録装置を提供することである。
【0007】
本発明の目的の1つは、受けた放射線の量を把握することが容易な記録物および該記録物を形成する記録方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的の1つは、受けた放射線の量を把握することが容易な放射線硬化型インク組成物または記録物を用いた、放射線検知方法および対象物の管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物は、
染料と、
マンセル表色系の10個の色相において、前記染料の色の色相と隣接しない色相の色を有する顔料と、
を含有する。
【0010】
このような放射線硬化型インク組成物は、受けた放射線の量を容易に把握することができる。
【0011】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
前記顔料の色は、前記染料の色と補色関係にあることができる。
【0012】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
さらに、重合性化合物を含有することができる。
【0013】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
前記重合性化合物は、不飽和二重結合を有することができる。
【0014】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
前記重合性化合物は、活性水素を有する官能基を有することができる。
【0015】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
前記活性水素を有する官能基は、アミノ基、イミノ基、またはアルコール性水酸基であることができる。
【0016】
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物において、
さらに、放射線ラジカル重合開始剤を含有することができる。
【0017】
本発明にかかるインクセットは、
上述の放射線硬化型インク組成物を備えている。
【0018】
本発明にかかる記録方法は、
上述の放射線硬化型インク組成物を用いて情報を記録する。
【0019】
このような記録方法は、受けた放射線の量を把握することが容易な記録物を提供することができる。
【0020】
本発明にかかる記録方法は、
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
上述の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程を有する。
【0021】
本発明にかかる記録方法は、
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
染料を含有する第1組成物および顔料を含有する第2組成物を前記インクジェット記録装置内で混合して上述の放射線硬化型インク組成物を調製する工程と、
前記放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程と、
を有する。
【0022】
本発明にかかる記録方法は、
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
染料を含有する第1組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該第1組成物の液滴を付着させる工程と、
顔料を含有する第2組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該第2組成物の液滴を付着させる工程と、
前記記録媒体上で前記第1組成物および前記第2組成物を混合し、上述の放射線硬化型インク組成物を調製する工程と、
を有する。
【0023】
本発明にかかる記録方法において、
前記記録媒体に前記第2組成物の液滴を付着させる工程の後に、前記第1組成物の液滴を付着させる工程を行うことができる。
【0024】
本発明にかかる記録方法において、
さらに、前記記録媒体上に付着した前記液滴に放射線を照射する工程を有する
本発明にかかる記録物は、
上述の記録方法によって記録される。
【0025】
このような記録物は、受けた放射線の量を容易に把握することができる。
【0026】
本発明にかかるインクセットは、
上述の第1組成物および第2組成物を備えている。
【0027】
本発明にかかるインクジェット記録用インクカートリッジは、
上述のインクセット備えている。
【0028】
本発明にかかるインクジェット記録装置は、
上述のインクジェット記録用インクカートリッジを備えている。
【0029】
本発明にかかるインクジェット記録装置において、
さらに、紫外線照射装置を備えることができる。
【0030】
本発明にかかる放射線検知方法は、
上述の記録物を用いて、放射線の露光量を前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって検知する。
【0031】
本発明にかかる放射線検知方法は、
上述の放射線硬化型インク組成物を用いて、放射線の露光量を前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって検知する。
【0032】
本発明にかかる管理方法は、
上述の放射線検知方法を用いて、対象物を管理する方法であって、
前記記録物を前記対象物に添付し、
前記記録物の色の変化によって、前記対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、前記対象物の経時変化を管理する。
【0033】
本発明にかかる管理方法は、
上述の放射線検知方法を用いて、対象物を管理する方法であって、
前記放射線硬化型インク組成物を前記対象物に添付し、
前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって、前記対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、前記対象物の経時変化を管理する。
【0034】
本発明にかかる管理方法において、
前記放射線硬化型インク組成物を封入した容器を用い、該容器を前記対象物に添付して、前記放射線硬化型インク組成物を前記対象物に添付することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0036】
1.放射線硬化型インク組成物
本発明にかかる放射線硬化型インク組成物は、染料と、顔料と、を含有する。
【0037】
1.1.染料
放射線硬化型インク組成物に含有される染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、水溶性染料、油溶性染料などが挙げられる。
【0038】
放射線硬化型インク組成物に含有される染料は、マンセル表色系(詳細は後述する)の10個の色相のいずれかに分類できる色を有する。すなわち染料は、有彩色を有する。
【0039】
放射線硬化型インク組成物に含有される染料は、放射線(可視光、紫外光、X線、粒子線等)を吸収し化学変化すること、およびラジカルと接触し化学反応すること、の少なくとも一方によって、変色または退色(消色)する。すなわち、染料は、放射線を照射することにより、直接的または間接的な作用によって変色または退色してしまう。ここで、直接的な作用とは、放射線そのものによって染料が受ける作用をいい、間接的な作用とは、放射線によって放射線硬化型インク組成物中にラジカルが発生し、該ラジカルと反応することによって染料が受ける作用のことをいう。染料は、間接的な作用によるほうが、直接的な作用によるよりも、変色または退色が顕著に生じる。なお、ラジカルとは、放射線硬化型インク組成物中に発生するラジカルのことを指し、放射線ラジカル重合開始剤等が放射線を吸収し、分解することで発生するもの、および放射線硬化型インク組成物の構成成分が放射線を吸収し化学変化することによって発生するものを含む。また、染料の変色または退色の程度は、放射線の照射量、積算照射量(照射履歴)、ラジカルの発生量、またはラジカルの積算発生量(ラジカルの発生履歴)に依存して変化しうる。
【0040】
上記例示した染料のうち、油溶性染料は、本発明の放射線硬化型インク組成物に特に好適に用いることができる。油溶性染料とは、常温常圧の環境下で水以外の液体状化合物に対して良好に溶解し、水に実質的に不溶な染料のことをいう。油溶性染料は、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の重量)が1g以下であるものを用いることができる。油溶性染料は、該染料分子が放射線硬化型インク組成物中に溶解し、分子単体または数分子が集合した極めて微小な会合体(直径数十nm程度)を形成することができる。
【0041】
以下に油溶性染料の具体例を記す。以下の具体例では、油溶性染料の色を青色系、赤色系、および黄色系に大別して記載する。また中間色すなわち緑色系や紫色系についても前記分類のいずれかに含めて記載する。油溶性染料の呈する色が、マンセル表色系の10個の色相の隣り合う2つの色相の丁度中間に位置する場合は、油溶性染料の呈する色は、当該色から見て、マンセル表色系の色相環(詳細は後述する)の時計回りの方向にある色相に属するものとする。
【0042】
青色系の油溶性染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料、カップリング成分としてピロロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、フタロシアニン染料、アントラキノン染料、カップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料等を挙げることができる。
【0043】
青色系の油溶性染料の具体例としては、マクロレックスブルーRR、FR(バイエル社製)、スミプラストグリーンG(住友化学社製)、Vali Fast Blue 2606、Oil BlueBOS(オリエント化学(株)製)、Aizen Spilon Blue GNH(保土ヶ谷化学(株)製)、Neopen Blue 808、Neopen Blue FF4012、Neopen Cyan FF4238(BASF社製)、オイルバイオレット#730(オリエント化学社製)、C.I.SolventBlue−2、−11、−25、−35、−38、−43、−67、−70、−134、C.I.Solvent Green−1、−3、−7、−20、−33、C.I.Solvent Violet−2、−3、−11、−47等が挙げられる。
【0044】
赤色系の油溶性染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、アリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、ナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、ジオキサジン染料等のような縮合多環系染料等を挙げることができる。
【0045】
赤色系の油溶性染料の具体例としては、オイルレッド5303(有本化学社製)、オイルレッド5B、Oil Pink 312、Oil Scarlet 308(オリエント化学社製)、オイルレッドXO(カントー化学社製)、Neopen Mazenta SE1378(BASF社製)、オイルブラウンGR(オリエント化学社製)、C.I.Solvent Red−1、−3、−8、−18、−24、−27、−43、−49、−51、−72、−73、−109、−111、−229、−122、−132、−219、C.I.Solvent Brown−1、−12、−58、ORASET RED BG(チバ・スペシャルティケミカル社製)等が挙げられる。
【0046】
黄色系の油溶性染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料を挙げることができる。また例えば、カップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料、ベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料等を挙げることができる。さらに、これ以外のイエロー染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
【0047】
黄色系の油溶性染料の具体例としては、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 105(オリエント化学社製)、ファーストオレンジG、Neopen Yellow 075(BASF社製)、ORASET YELLOW 3GN(チバ・スペシャルティケミカル社製)、C.I.Solvent Yellow−1、−14、−16、−19、−25:1、−29、−30、−56、−82、−93、−162、−172、C.I.Solvent Orange−1、−2、−40:1、−99等が挙げられる。
【0048】
なお、放射線硬化型インク組成物には、染料として、上述の油溶性染料以外に、水溶性染料等の他の染料も、放射線によって変色する性質を有する限り好適に使用することができる。
【0049】
放射線硬化型インク組成物には、上述の染料を複数組み合わせて含有させることができる。染料を複数組み合わせた場合、無彩色となる組み合わせも生じる。このような場合においても、放射線硬化型インク組成物は、染料の変色または退色によって、色が変化しうるため、照射された放射線の量やラジカルの発生量を知る上で差し支えがない。
【0050】
放射線硬化型インク組成物は、上記の染料の明度を調節する等のために黒色系の染料をさらに含有することができる。黒色系の染料は、上述の有彩色の染料と同様に、放射線(可視光、紫外光、X線、粒子線等)を照射すること、およびラジカルと反応すること、の少なくとも一方によって、退色または変色する。黒色系の染料の具体例としては、スーダンブラックX60(BASF社製)、Nubian Black PC−0850、Oil Black HBB(オリエント化学社製)、C.I.SolventBlack−3、−7、−22:1、−27、−29、−34、−50等が挙げられる。
【0051】
放射線硬化型インク組成物に含有される染料の含有量は、好ましくは0.1質量%ないし25質量%であり、より好ましくは0.5質量%ないし15質量%である。
【0052】
1.2.顔料
放射線硬化型インク組成物に使用される顔料は、マンセル表色系の10個の色相において上述の染料の色が属する色相と隣接しない色相の色を有する。顔料は、マンセル表色系(詳細は後述する)の10個の色相のいずれかに分類できる色を有する。すなわち、顔料は、有彩色を有する。顔料の呈する色が、マンセル表色系の10個の色相の隣り合う2つの色相の丁度中間に位置する場合は、該顔料の呈する色は、当該色から見て、マンセル表色系の色相環(詳細は後述する)の時計回りの方向にある色相に属するものとする。
【0053】
顔料は、上述の染料に比較して、放射線(可視光、紫外光、X線、粒子線等)を照射すること、またはラジカルと反応することによって変色または退色(消色)等の色の変化を生じにくい。
【0054】
顔料としては、有彩色であれば特別な制限はなく、有機顔料、無機顔料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(たとえば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを例示することができる。放射線硬化型インク組成物に使用する顔料を以下に例示する。
【0055】
黄色系顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0056】
赤色系顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0057】
青色系顔料としては、たとえば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、60、16、22が挙げられる。
【0058】
放射線硬化型インク組成物は、複数の顔料を混合してなることができる。顔料を複数含有する場合、顔料の混色の結果、無彩色となる組み合わせが生じる。顔料が無彩色であると、放射線硬化型インク組成物は、染料の変色または退色による色の変化を起こすことから、放射線硬化型インク組成物の変色を検出し難くなるため、好ましくない。したがって、複数の顔料を混合する場合は、顔料の混色の結果が有彩色となるように顔料を選択することが好ましい。
【0059】
顔料の平均粒子径は、好ましくは10nmないし200nmの範囲であり、より好ましくは50nmないし150nmの範囲である。
【0060】
放射線硬化型インク組成物に添加する顔料の添加量は、好ましくは0.1質量%ないし25質量%であり、より好ましくは0.5質量%ないし15質量%である。
【0061】
放射線硬化型インク組成物は、これらの顔料の良好な分散を得るために、分散剤または界面活性剤を含むことができる。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。高分子分散剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミンなどを例示することができる。ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミンの具体例としては、例えば、ディスコール(Discole)N−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N−520(第一工業製薬株式会社製)を挙げることができる。
【0062】
放射線硬化型インク組成物は、上記の顔料の明度を調節する等のために、彩度を持たない黒色または白色、その他の特色顔料を含有することができる。黒色の顔料は、上述の有彩色の顔料と同様に、放射線(可視光、紫外光、X線、粒子線等)を照射すること、またはラジカルと反応することによって、退色または変色しにくい。このような顔料としては、酸化チタン、および酸化鉄などの無機顔料に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0063】
本実施形態で使用可能な黒色顔料の具体例として、カーボンブラックとしては、C.I.ピグメントブラック7が挙げられ、たとえば、三菱化学株式会社から入手可能なNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビアケミカルカンパニー社から入手可能なRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、また、キャボット社から入手可能なRegal400R、同330R、同660R、MogulL、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、さらに、デグッサ社から入手可能なColorBlackFW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlackS150、同S160、同S170、Printex35、同U、同V、同140U、SpecialBlack6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0064】
本実施形態で使用可能な白色顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、白色中空樹脂エマルジョン等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
【0065】
また、本実施形態で使用可能な特色顔料としては、金属光沢を付与できるメタリックインク用顔料などがあり、特に限定されない。該メタリック系の顔料としては、例えば、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属層または金属化合物層とを順次積層した複合化顔料原体を作製し、該原体を金属層または金属化合物層と剥離用樹脂層の界面においてシート状基材から剥離し、これを粉砕したものが挙げられる。該複合化顔料原体の金属層または金属化合物層に用いられる金属または金属化合物は、金属光沢を有する等の機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等が使用され、これらの単体金属、またはこれらの合金およびそれら混合物の少なくとも一種を使用することができる。
【0066】
また、放射線硬化型インク組成物に用いられる顔料は、その色調を調整する為に、互いに混合して用いる事も可能である。例えば、赤みのブラックの色調を青みに変える目的で、ピグメントブラック7とピグメントブルー15:3を混合して用いることも可能である。さらに顔料として、蛍光増白剤を添加する事も可能である。
【0067】
1.3.染料および顔料の色相の関係
放射線硬化型インク組成物は、放射線を受けたときに、上述の染料の色が変色または退色する一方で、上述の顔料の色がほとんど変化しない。これに加えて、染料の色が属する色相と顔料の色が属する色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接しない。そのため、放射線硬化型インク組成物は、放射線を受けたときの「色の変化」を顕著に発現することができる。
【0068】
これにより、放射線硬化型インク組成物は、照射された放射線の量、および該放射線硬化型インク組成物内で発生したラジカルの量の少なくとも一方に応じて、色が変化するため、照射された放射線の量や該放射線硬化型インク組成物内で発生したラジカルの量を容易に知ることができる。ここでいう「放射線硬化型インク組成物の色の変化」とは、色相、明度および彩度の少なくとも1つの変化を指す。
【0069】
マンセル表色系とは、色の3つの属性(色相、明度および彩度)に基づいて、色を数値的に表現する体系のことをいう。マンセル表色系を利用した色の表示方法の例としては、日本工業規格(JIS)のZ8721「色の表示方法−三属性による表示」がある。本明細書で用いるマンセル表色系の色相は、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、および紫(P)の5色相、およびそれぞれの中間色すなわち、黄赤(YR)、黄緑(GY)、青緑(BG)、青紫(PB)、赤紫(RP)の5色相からなる計10色相からなるもののことを指す。そして、マンセル表色系の10個の色相の間の関係は、これら10個の色相を、時計回り方向に、赤(R)、黄赤(YR)、黄(Y)、黄緑(GY)、緑(G)、青緑(BG)、青(B)、青紫(PB)、紫(P)、赤紫(RP)の順に等間隔に円形に配置した、マンセル表色系の色相環における関係のことをいう。従って、「マンセル表色系の10個の色相において隣接しない」とは、マンセル表色系の色相環において隣接しない関係のことをいう。なお、マンセル表色系には、さらに細かく色相を分割したものも存在するが、本明細書では上記の10個の色相に分割したマンセル表色系を用いる。また、本明細書において、マンセル表色系の10個の色相の間の関係を規定するとき、明度および彩度については任意の値をとることができる。
【0070】
放射線硬化型インク組成物は、染料の色の色相と顔料の色の色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接しない。すなわち、染料および顔料の色の色相の差が大きい。そのため、放射線硬化型インク組成物において、染料の変色または退色が生じたときに、顔料の色が顕著に表れやすい。これにより、放射線硬化型インク組成物が受けた放射線の量や、放射線硬化型インク組成物中に生じたラジカルの量を検知することが容易となる。
【0071】
放射線硬化型インク組成物は、顔料の色を染料の色と補色関係にあるように選ぶことができる。ここでいう補色関係とは、物理補色または心理補色の関係にあることを指す。すなわち、補色関係とは、マンセル表色系に限らず、各種の表色系の色相環において、互いに反対側に位置する色相の関係のことを指す。物理補色であるか心理補色であるかは、表色系の種類によって異なる。2つの色が物理補色の関係である場合には、これら2つの色は、加法混色することによって、無彩色を生じる。また、2つの色が心理補色の関係である場合には、白色の背景において一方の色を見つめた後、引き続き白色の背景のみを見たときに知覚される残像の色が他方の色となる。
【0072】
放射線硬化型インク組成物において、顔料の色を染料の色と補色関係にあるように選ぶと、染料および顔料の色の色相の差がより大きくなる。そのため、放射線硬化型インク組成物において、染料の変色または退色が生じたときに、顔料の色がより顕著に表れる。これにより、放射線硬化型インク組成物が受けた放射線の量や、放射線硬化型インク組成物中に生じたラジカルの量を検知することがさらに容易となる。
【0073】
放射線硬化型インク組成物は、複数の染料、および複数の顔料を含有できることは、染料および顔料の項で述べた。1種の顔料および複数の染料を含有する場合、少なくとも1つの染料の色が属する色相と顔料の色が属する色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接しないように染料または顔料を選択すればよい。一方、1種の染料および複数の顔料を含有する場合は、含有する全ての顔料の色が属する各色相と、染料の色が属する色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接しないように染料または顔料を選択することが好ましい。その理由は、染料の変色または退色が、顔料の色によって検出しにくくなることを避けるためである。同様に、複数の染料および複数の顔料を含有する場合は、含有する全ての顔料の色が属する各色相と、少なくとも1つの染料の色が属する色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接しないように染料または顔料を選択することが好ましい。
【0074】
また、放射線硬化型インク組成物が、1種の顔料および複数の染料を含有し、顔料の色を染料の色と補色関係にあるように選ぶ場合、少なくとも1つの染料の色が顔料の色と補色関係にあるように染料または顔料を選択すればよい。一方、1種の染料および複数の顔料を含有し、顔料の色を染料の色と補色関係にあるように選ぶ場合は、少なくとも1つの顔料の色と、染料の色とが、補色関係となるようにし、かつ、他の顔料の色はいずれも染料の色と近接しないように染料または顔料を選択することが好ましい。その理由は、染料の変色または退色が、顔料の色によって検出しにくくなることを避けるためである。同様に、複数の染料および複数の顔料を含有し、顔料の色を染料の色と補色関係にあるように選ぶ場合は、少なくとも1つの顔料の色と、少なくとも1つの染料の色とが補色関係となるようにし、かつ、他の顔料の色はいずれも該少なくとも1つの染料の色と近接しないように染料または顔料を選択することが好ましい。
【0075】
1.4.放射線
放射線硬化型インク組成物は、放射線として、可視光、400nmないし200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線、またはイオンビーム等を照射することにより、直接的または間接的な作用によって染料が変色または退色して、全体の色の変化を顕著に生じることができる。放射線としては、人工的に発生されるものの他、太陽光や自然界に存在する放射線(自然放射線)をも含む。したがって、たとえば、放射線硬化型インク組成物を保存している間に受けた放射線の量についても放射線硬化型インク組成物の色の変化によって容易に把握することができる。
【0076】
1.5.重合性化合物
放射線硬化型インク組成物は、重合性化合物として各種公知のラジカル重合性化合物、アリル化合物、およびN−ビニル化合物の少なくとも1種を含有することができる。
【0077】
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書中において、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0078】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な二官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0080】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な三官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0081】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な四官能の(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0082】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な五官能の(メタ)アクリレートとしては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0083】
放射線硬化型インク組成物において使用可能な六官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
放射線硬化型インク組成物に使用可能な(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。さらに、放射線硬化型インク組成物には、上記の(メタ)アクリレートと、単官能もしくは二官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することができる。
【0085】
放射線硬化型インク組成物に使用可能な芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
【0086】
さらに、放射線硬化型インク組成物に使用可能なラジカル重合性化合物としては、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)などが挙げられる。
【0087】
放射線硬化型インク組成物に用いることができるアリル化合物とは、2−プロペニル構造(−CHCH=CH)構造を有する化合物である。2−プロペニル基は、アリル基とも呼ばれ、IUPAC命名法では慣用名とされている。アリル化合物は、ラジカル重合性を有する。
【0088】
放射線硬化型インク組成物に用いることのできるアリル化合物の具体例としては、たとえば、エチレングリコールモノアリルエーテル、アリルグリコール(たとえば、日本乳化剤株式会社から入手可能)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル(以上、たとえば、ダイソー株式会社から入手可能)や、ユニオックス、ユニループ、ポリセリン、ユニセーフの商品名であるアリル基を有するポリオキシアルキレン化合物(日油株式会社から入手可能)等が挙げられる。
【0089】
放射線硬化型インク組成物に用いることができるN−ビニル化合物とは、ビニル基が窒素に結合した構造(>N−CH=CH)を有する化合物である。N−ビニル化合物は、ラジカル重合性を有する。放射線硬化型インク組成物に用いることができるN−ビニル化合物の具体例としては、たとえば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、およびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN−ビニルホルムアミドが好ましい。N−ビニルホルムアミドは、たとえば、荒川化学工業株式会社から入手することができる。
【0090】
放射線硬化型インク組成物は、以上に例示した重合性化合物を、複数含有することできる。また、上述した重合性化合物は、不飽和二重結合を有しており、ラジカルを発生する性質がある。そのため重合性または放射線硬化型インク組成物の変色性を向上させることができ、放射線硬化型インク組成物に好適に使用することができる。例示した重合性化合物のうち、活性水素を有する官能基を有するものは、ラジカルを発生しやすいため、重合性または放射線硬化型インク組成物の変色性を向上させるためにさらに好ましい。活性水素を有する官能基としては、たとえばアミノ基、イミノ基、またはアルコール性水酸基が挙げられ、放射線硬化型インク組成物は、これらの基を有する重合性化合物を含有することがさらに好ましい。
【0091】
放射線硬化型インク組成物中の重合性化合物の含量は、組成物の全固形分に対して50質量%ないし95質量%が適当であり、好ましくは、60質量%ないし92質量%、さらに好ましくは、70質量%ないし90質量%の範囲である。
【0092】
上記の重合性化合物は、ラジカル重合性を有する。そのため、放射線硬化型インク組成物に上記の重合性化合物を含有すると、放射線硬化型インク組成物中にラジカル発生種が存在することになる。この場合、放射線硬化型インク組成物に放射線が照射されると、放射線硬化型インク組成物中にラジカルが生成する。上述のように、染料は、放射線を照射すること、およびラジカルと反応すること、の少なくとも一方によって、変色または退色する。したがって、放射線硬化型インク組成物に上記の重合性化合物を含有すると、染料がラジカルに接触する機会が増し、染料が間接的に変色または退色する割合が増加する。そのため、放射線硬化型インク組成物に上記の重合性化合物を含有させると、放射線の吸収に対する感度を高めることができる。
【0093】
上記の重合性化合物がラジカル重合すると、放射線硬化型インク組成物は、硬化して硬化物となる。これに伴って発生したラジカルの量等に依存して、染料は、変色または退色する。放射線硬化型インク組成物に含有される染料または重合性化合物の配合を調整することによって、硬化物においても、放射線を照射すること、およびラジカルと接触すること、の少なくとも一方によって、変色または退色するように設計することができる。このようにすれば、放射線硬化型インク組成物は、硬化後においても、色の変化を顕著に生じさせることができ、該硬化物が受けた放射線の量を容易に把握することができる。
【0094】
1.6.放射線ラジカル重合開始剤
放射線硬化型インク組成物は、さらに、放射線ラジカル重合開始剤を含有することができる。放射線硬化型インク組成物に用いられる放射線ラジカル重合開始剤は、放射線によってラジカルを発生することができる。放射線ラジカル重合開始剤のラジカルを発生させうる放射線としては、例えば、400nmないし200nmの紫外線、可視光、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線、またはイオンビーム等が挙げられる。
【0095】
放射線硬化型インク組成物に用いることができる放射線ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物等を挙げることができる。紫外線重合開始剤としては、さらに具体的には、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル、チオキサントン、α−ジカルボニル、およびアントラキノンを挙げることができる。
【0096】
また、放射線硬化型インク組成物に用いうる放射線ラジカル重合開始剤の具体例としては、Vicure 10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure 127、184、500、651、2959、907、369、379、754、1700、1800、1870、819、OXE01、Darocur 1173、TPO、ITX(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、QuantacureCTX(Aceto Chemical社製)、Kayacure、DETX−S(日本化薬社製)、ESACURE KIP150(Lamberti社製)の商品名で入手可能なもの等を挙げることできる。
【0097】
上記の放射線ラジカル重合開始剤は、放射線を受けることによりラジカルを発生する。発生したラジカルは、たとえば、重合性化合物を含む場合には、重合開始剤として働くことができる。また同時に、発生したラジカルは、油溶性染料等と反応することができる。そのため、放射線硬化型インク組成物に上記の放射線ラジカル開始剤を含有すると、油溶性染料等がラジカルと反応する程度が増し、放射線によって間接的に変色または退色する割合が増加する。そのため、放射線硬化型インク組成物に上記の放射線ラジカル開始剤を含有させると、放射線の吸収に対する感度を高めることができる。さらに、放射線ラジカル開始剤は、放射線によってラジカルを発生するため、放射線硬化型インク組成物の色の変化の速度を高めることができる。これにより、放射線硬化型インク組成物の、放射線の吸収に対する感度をさらに高めることができる。
【0098】
またラジカルを発生させにくい種類の放射線を検出したい場合や、受ける放射線のエネルギー量が小さい場合においても、該放射線によってラジカルを発生するような放射線ラジカル重合開始剤を、放射線硬化型インク組成物に配合することによって放射線硬化型インク組成物の、該放射線の吸収に対する感度をさらに高めることができる。
【0099】
1.7.重合促進剤
放射線硬化型インク組成物は、さらに重合促進剤等を含むことができる。放射線硬化型インク組成物において用い得る重合促進剤としては、特に限定されないが、DarocurEHA、EDB(チバ・スペシャルティケミカルズ社から入手可能)等が挙げられる。
【0100】
1.8.熱ラジカル重合禁止剤
放射線硬化型インク組成物は、熱ラジカル重合禁止剤を含有することもできる。これにより、放射線硬化型インク組成物の保存安定性を向上させることができる。熱ラジカル重合禁止剤は、ラジカルを捕獲して消失させる作用を有するため、放射線硬化型インク組成物の色の変化の速度等を調整するために適宜添加されてもよい。なお、熱ラジカル重合禁止剤としては、IrgastabUV−10(チバ・スペシャルティケミカルズ社から入手可能)等が挙げられる。
【0101】
1.9.界面活性剤
放射線硬化型インク組成物は、保存安定性等を向上させるために、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、例えばシリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、−UV3510、−UV3530、−UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社から入手可能)を挙げることができる。
【0102】
1.10.その他の成分
放射線硬化型インクジェットインク組成物には、その他の成分として、公知公用の湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤等を添加してもよい。さらに、必要に応じて、レベリング添加剤、マット剤、記録物の物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することができる。
【0103】
2.記録方法
本発明にかかる記録方法は、「1.放射線硬化型インク組成物」の項で述べた放射線硬化型インク組成物を用いて情報を記録するものである。本発明にかかる記録方法は、記録媒体(紙、フィルム、布等)に対して、放射線硬化型インク組成物を用いて、文字、画像等の情報を記録する方法である。本発明にかかる記録方法としては、インクジェット記録方法、オフセット印刷、凸版印刷などの記録方法、刷毛や筆等による描画または塗布による記録方法も含まれる。以下の実施形態では、インクジェット記録方法によって、放射線硬化型インク組成物を用いた情報の記録方法を述べる。
【0104】
2.1.第1実施形態
本実施形態の記録方法は、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、上述の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、記録媒体に放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程を有する。本実施形態で使用可能なインクジェット記録装置は、インクの液滴を吐出し、前記液滴を記録媒体に付着させて記録を行うことができるものであれば、特に限定されない。
【0105】
インクジェット記録装置の記録方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。
【0106】
本実施形態のインクジェット記録装置としては、インクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジおよびキャリッジの側面に搭載された紫外線照射装置などを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドは、たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクジェット記録用インクカートリッジを備えており、フルカラー印刷ができるように構成されることができる。この少なくとも1つのインクジェット記録用インクカートリッジに、上述の放射線硬化型インク組成物を充填し、設置する。また、このインクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0107】
インクジェット記録用カートリッジは、複数備えられており、そのうちの少なくとも1つに上述の放射線硬化型インク組成物を収納することができる。また、他のインクジェット記録用カートリッジに、通常のインクをそれぞれ収納することができる。
【0108】
このようなインクジェット記録装置を用いれば、放射線硬化型インク組成物を容易に記録媒体に噴射して付着させることができ、情報を記録することができる。
【0109】
また、インクジェット記録装置内のキャリッジ側面には、紫外線を照射するための、紫外線照射装置を搭載することができる。紫外線照射装置としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプなどの光を光ガイド等によって塗膜に導いて行うことも可能である。また、光源としては、たとえば、Fusion System社等から入手可能なHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。また、光源としては、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子を用いることができ、このような光源からの紫外線を、インクジェット記録装置内で記録媒体またはこれに付着した液滴に照射することができる。
【0110】
このような紫外線照射装置を搭載した上述のインクジェット記録装置は、紫外線照射装置のメンテナンスを容易かつ安全にすることができる。インクジェット記録装置内に設けられた紫外線照射装置の点検は、従来、作業員がインクジェット記録装置の筐体を開放して行われていた。その際、作業員は保護眼鏡等を着用するが、保護されない皮膚等の部位は、紫外線を被爆してしまう危険があった。本実施形態のインクジェット記録装置は、上述の放射線硬化型インク組成物によって記録物を形成するため、紫外線照射装置を作動させて形成した記録物の色を検査することにより、紫外線照射装置の状態を点検することができる。また、紫外線照射装置を搭載した上述のインクジェット記録装置は、放射線硬化型インク組成物の経時変化(いわゆるポットライフ)の点検を容易に行うことができる。たとえば、上述のインクジェット記録装置で形成した記録物において、紫外線を照射した部位と、紫外線を照射しなかった部位とを有するように形成し、両者の色を比較することにより、放射線硬化型インク組成物の放射線に対する感度を点検することが容易である。
【0111】
2.2.第2実施形態
第2の実施形態にかかる記録方法は、インクジェット記録装置を用いて記録媒体上に情報を記録する方法であって、インクジェット記録装置内で、第1組成物、および第2組成物を混合して、「1.放射線硬化型インク組成物」の項で述べた放射線硬化型インク組成物を調整する工程と、該放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、記録媒体に該放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程とを有する。
【0112】
第2実施形態で用いられるインクジェット記録装置は、二種類の液体を混合可能な二液混合ユニットを備えている。二液混合ユニットは、二種類のインクを完全に混合することができれば特に限定されないが、例えば、第1液体を送り出す第1アクチュエータおよび第2液体を送り出す第2アクチュエータからなるポンプ部と、前記ポンプ部よってそれぞれ送り出された第1液体および第2液体が合流して混合される第1混合室と、前記第1混合室によって混合された混合液体がそれぞれ複数に分岐されて前記ポンプ部によって送り出される各液体の圧力を分けて通過する各分岐室と、前記各分岐室を通過した混合液体が合流してさらに混合される第2混合室とを備えたミキサー部と、から構成される二液混合ユニットを例示することができる。このような二液混合ユニットは前記ポンプ部を構成する第1アクチュエータおよび第2アクチュエータに加える駆動信号の周波数をそれぞれ異ならせることにより、それぞれのポンプの送り出し効率を変更することができる。これにより、ユニットに送り込まれる二液の混合比を任意に調整することができる。
【0113】
第2実施形態では、上記のような二液混合ユニットを備えたインクジェット記録装置を用いて、二液混合ユニット内で第1組成物および第2組成物を混合して、上述の放射線硬化型インク組成物を得て、これを記録媒体上に吐出し付着させて、情報を記録することができる。その他の構成については、第1実施形態で述べたインクジェット記録装置と同様である。
【0114】
第1組成物および第2組成物は、混合することによって、上述の放射線硬化型インク組成物となることができる。第1組成物および第2組成物の各組成は、第1組成物は、染料を含有し、第2組成物は、顔料を含有することとし、それ以外の成分については、所望する放射線硬化型インク組成物が得られる限り任意である。
【0115】
第1組成物は、染料を含有し、第2組成物は、顔料を含有する。このようにすれば、第1組成物および第2組成物を混合する前に、染料の色を確認することができる。放射線硬化型インク組成物に重合性化合物や放射線ラジカル開始剤等のラジカル発生種を含有させる場合には、第2組成物にこれらを配合することが望ましい。これにより、ラジカル発生種と染料とを分けてインクジェット記録装置内で保存することが可能となり、染料の変色または退色を抑制することができる。そのため、第1組成物の保存性が向上し、結果的に放射線硬化型インク組成物としてのポットライフを向上することができる。
【0116】
2.3.第3実施形態
第3の実施形態にかかる記録方法は、インクジェット記録装置を用いて記録媒体上に情報を記録する方法であって、第1組成物の液滴を吐出して、記録媒体上に第1組成物の液滴を付着させる工程と、第2組成物の液滴を吐出して、第2組成物の液滴を付着させる工程と、記録媒体上で第1組成物および第2組成物を混合して上述の放射線硬化型インク組成物を調整する工程と、を有する。
【0117】
本実施形態で用いるインクジェット記録装置としては、第1実施形態で述べたインクジェット記録装置を挙げることができる。そして、複数のインクジェット記録用カートリッジのうちの2つに、第2実施形態で述べた第1組成物および第2組成物をそれぞれ収納する。そして第1組成物および第2組成物の液滴をそれぞれ異なるノズルから吐出し、記録媒体上に付着させる。このとき、記録媒体上で少なくとも1箇所、特定の位置に第1組成物および第2組成物が付着されるようにインクジェット記録装置を制御する。第1組成物および第2組成物の両方が付着された記録媒体上の部位では、第1組成物および第2組成物が接触混合され、放射線硬化型インク組成物が調整される。
【0118】
第1組成物および第2組成物の液滴を記録媒体に付着させる順序は、任意であるが、記録媒体上からみて染料によって顔料が遮蔽されるように配置しやすいことから、第2組成物を付着させる工程が先に行われることがより好ましい。また、紫外線照射装置を備えたインクジェット記録装置を用いる場合、紫外線を照射するタイミングは、任意であるが、第1組成物と第2組成物を効果的に混合するために、両者の液滴が記録媒体上で接触混合した後に照射されることがより好ましい。
【0119】
以上3つの実施形態によって本発明の記録方法のうち、インクジェット記録装置を用いる例について説明したが、上述の各実施形態にかかるインクジェット記録装置による記録方法は、その用途として、上述した記録媒体への情報の記録の他に、金属、ガラス、プラスチック等の非吸収性記録媒体への情報の記録、カラーフィルター作成およびプリント基板へのマーキング等にも好ましく用いることができる。
【0120】
3.記録物
本発明はまた、上記の記録方法によって、情報が記録された記録物を提供する。記録媒体としては、特に限定されない。記録媒体としては、たとえば、紙、フィルム、布等の吸収性記録媒体、金属、ガラス、プラスチック等の非吸収性記録媒体、などが挙げられる。また、記録媒体は、無色透明、半透明、着色透明、有彩色不透明、無彩色不透明等であってもよい。記録物は、記録時に紫外線が照射されてもされなくてもよい。記録物が記録時に紫外線を照射されたものであっても、その後に放射線が照射されることによって、さらに色の変化を生じうるためである。記録物は、放射線硬化型インク組成物によって形成されるため、記録物が吸収した放射線の量、および該記録物内で発生したラジカルの量の少なくとも一方に応じて、色が変化する。本発明にかかる記録物によれば、吸収した放射線の量や記録物内で発生したラジカルの量を容易に知ることができる。
【0121】
4.インクセット
本発明にかかるインクセットは、「1.放射線硬化型インク組成物」の項で述べた放射線硬化型インク組成物、および/または、「2.記録方法」の項で述べた第1組成物および第2組成物の組を、備えた組成物の組である。インクセットに備えることができるその他の組成物としては、公知のインク組成物が挙げられ、たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等のカラーインク組成物、無色または淡色のクリアインク組成物、ブラックインク組成物、ライトブラックインク組成物、金属顔料インク組成物、白色顔料インク組成物等が挙げられる。
【0122】
5.インクジェット記録用インクカートリッジ
本発明にかかるインクジェット記録用インクカートリッジは、「4.インクセット」の項で述べたインクセットを備えることができる。このようなインクジェット記録用インクカートリッジによれば、上述したインクジェット記録装置にを用いた記録方法のいずれかに適用するインクセットを容易に運搬することができる。
【0123】
6.放射線検知方法
本発明にかかる放射線検知方法は、「1.放射線硬化型インク組成物」の項で述べた放射線硬化型インク組成物、または、「3.記録物」の項で述べた記録物を用いて、放射線の露光量を、前記放射線硬化型インク組成物または記録物の色の変化によって検知する方法である。
【0124】
放射線検知方法は、放射線硬化型インク組成物または記録物の色が、受けた放射線の線量(露光量)に依存して変化することを利用して行われる。色の変化は、たとえば、カラースケール(カラーバー)を用いて、これと比較することにより検出することができる。また、色の変化は、公知の色彩計などによって、色を定量化して放射線の照射前後の値を比較して検出することができる。これらの色の変化の検出は、あらかじめ作成した検量線等を利用して行うこともできる。
【0125】
このような放射線検知方法によれば、放射線硬化型インク組成物または記録物が受けた放射線の量を簡便かつ容易に検知することができる。また、放射線検知方法に用いる放射線硬化型インク組成物および記録物は、放射線を検知するためのエネルギーを外部から供給する必要がないため、極めて広範な用途に用いることができる。
【0126】
7.管理方法
本発明にかかる管理方法は、対象物を管理する方法であって、上述の記録物を前記対象物に添付し、該記録物の色の変化によって、対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、対象物の経時変化を管理する方法である。
【0127】
また、本発明にかかる管理方法は、対象物を管理する方法であって、放射線硬化型インク組成物を添付し、放射線硬化型インク組成物の色の変化によって、対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、対象物の経時変化を管理する方法である。
【0128】
本発明の管理方法によって管理することができる対象物としては、たとえば、工業製品、食品、薬品、衣類、生体等が挙げられる。また、対象物としては、工業生産の製造工程における製品や、半製品等を挙げることができる。これら対象物を管理するとは、たとえば、工業製品や食品においては、流通過程において、露光、保管、または輸送のときに受ける放射線の量を把握して管理することであり、また、たとえば、衣類や生体においては、放射線の被曝量を把握して管理することである。さらに、製品や半製品の管理とは、たとえば、製造工程において放射線を対象物に照射する工程を有する場合に、該工程が行われたかどうか、または該工程において所望の放射線量が露光されたかどうか等を把握し、製造工程を管理することである。このように、本発明の管理方法は、対象物が特定の期間に受ける放射線によって変化したかどうか(経時変化)を管理する方法である。
【0129】
本発明の管理方法に用いる放射線硬化型インク組成物または記録物は、「1.放射線硬化型インク組成物」の項で述べた放射線硬化型インク組成物、または「4.記録物」の項で述べた記録物である。放射線硬化型インク組成物または記録物を添付する方法としては、放射線硬化型インク組成物が対象物に直接付着されて添付されたものであってもよく、また、紙、フィルム等の記録媒体に放射線硬化型インク組成物が付着されて形成された記録物を対象物に適当な方法によって添付したものであってもよい。さらに、放射線硬化型インク組成物を添付する方法としては、放射線硬化型インク組成物を封入した容器を対象物に添付してもよい。このような容器としては、目的とする放射線が透過することができるものであれば、特に制限はない。
【0130】
本発明の管理方法によれば、放射線硬化型インク組成物または記録物の色の変化によって、対象物の放射線照射量または放射線照射履歴(積算量)を容易に把握することができ、該対象物の経時変化の管理を容易に行うことができる。
【0131】
8.実施例および比較例
以下に、実施例および比較例を記載して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例は、染料として油溶性染料を用いた、非水系の放射線硬化型インク組成物の例である。
【0132】
8.1.油溶性染料
油溶性染料は、ORACET RED BGおよびORACET YELLOW 3GN(いずれもチバ・スペシャルティケミカル社製)の2種類を準備した。ORACET RED BGの色は、マンセル表色系の10個の色相のうち、「5R」に属し、ORACET YELLOW 3GNの色は、マンセル表色系の10個の色相のうち、「5Y」に属する。
【0133】
8.2.顔料
顔料は、Pigment Blue 15:3およびPigment Green−7を準備した。Pigment Blue 15:3は、マンセル表色系の10個の色相のうち、「10B」に属し、Pigment Green−7は、マンセル表色系の10個の色相のうち、「5BG」に属する。
【0134】
8.3.分散剤
顔料の分散性をより良好にするために分散剤として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミンであるディスコールN−518(第一工業製薬株式会社製)を準備した。
【0135】
8.4.重合性化合物
重合性化合物として、N−ビニルホルムアミド(商品名:ビームセット770;荒川化学工業株式会社製)、エチレングリコールモノアリルエーテル(日本乳化剤株式会社製)、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびエトキシ化グリセリントリアクリレートであるA−Gly−3E(新中村化学工業株式会社製)を準備した。
【0136】
8.5.放射線ラジカル開始剤
放射線ラジカル開始剤として、Irgacure819およびIrgacure369(いずれもチバ・スペシャルティケミカル社製)を準備した。
【0137】
8.6.界面活性剤
界面活性剤として、BYK−UV3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を準備した。
【0138】
8.7.インク組成物の調製
上記記載の油溶性染料、顔料、分散剤、重合性化合物、放射線ラジカル開始剤、および界面活性剤を、最終的に表1に示す組成(質量%)となるように、以下に記す手順で混合し、実施例1ないし実施例3の放射線硬化型非水系インク組成物および比較例1ないし比較例3のインク組成物を調製した。実施例1および実施例2は、それぞれ、放射線硬化型非水系インク組成物に含有される油溶性染料の色の色相と、顔料の色の色相とが、マンセル表色系の10個の色相において隣接していない。実施例3は、放射線硬化型非水系インク組成物に含有される油溶性染料の色と顔料の色とが、マンセル表色系の色相環において、補色関係にある。なお、比較例1は、油溶性染料および顔料の両方を含有しないインク組成物の例であり、比較例2および比較例3は、油溶性染料および顔料のいずれか一方を含有するインク組成物の例である。
【0139】
【表1】

【0140】
実施例1の放射線硬化型非水系インク組成物は、次のように作成した。まず、顔料成分であるピグメントブルー15:3、分散剤であるディスコールN−518、重合性化合物の一種であるエチレングリコールモノアリルエーテル(以下AGということがある)を、15:5:80(質量部)となるように攪拌混合した。これを、サンドミル(安川製作所製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散させた。次に、ジルコニアビーズをセパレータで除去して、顔料分散液を得た。
【0141】
一方、表1に示すAG以外の重合性化合物、放射線ラジカル開始剤、および界面活性剤を混合して、均一になるまで攪拌した。次いで、この混合物に油溶性染料を添加し、均一になるまで攪拌して、染料混合物を得た。
【0142】
上記染料混合物を攪拌しながら、最終的に表1の組成となるように上記顔料混合物を染料混合物に徐々に滴下して混合した。目標の組成に達した後、さらに、常温で30分間攪拌した。その後、5μmのメンブレンフィルターでこれをろ過したものを実施例1の放射線硬化型非水系インク組成物とした。実施例2および実施例3の放射線硬化型非水系インク組成物および比較例1ないし比較例3のインク組成物についても同様に作成した。
【0143】
8.8.評価試験
実施例および比較例について、それぞれ、次のような試験を行った。セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンタPM−G920を用意した。このプリンタのフォトブラックのインクに対応するノズル列から、上記作成したインク組成物が吐出されるように充填した。そして、常温、常圧下において、文字印刷を行った。記録媒体としては、A4サイズのOHPフィルム(富士ゼロックス株式会社製、XEROX−FILM<枠なし>)を用いた。文字印刷の膜厚は、最大膜厚が10μmであった。この状態で記録された色を確認し、表1に組成物の初期の色として記載した。
【0144】
その後、120mW/cmの照射量を有する紫外線照射光源を用いて、上記文字印刷に対して積算光量が3000J/cmとなるように紫外線を照射した。この状態で記録された色を確認し、表1に各実施例、各比較例の放射線照射後の色として記載した。
【0145】
8.9.評価結果
表1に見られるように、各実施例の放射線硬化型非水系インク組成物は、放射線(紫外線)を照射することによって色が変化した。これに対して、比較例1および比較例2のインク組成物は、紫外線の照射によって色が変化しなかった。また、比較例3のインク組成物は、紫外線を照射するとほとんど消色した。
【0146】
これらのことから、実施例の放射線硬化型非水系インク組成物は、いずれも、放射線照射によって、色が顕著に変化することが判明した。
【0147】
さらに、実施例3は、油溶性染料の色と顔料の色とが、マンセル表色系の色相環において、補色関係であるため、初期の色が黒であり、放射線照射後の色が緑色となって、色の変化がより顕著であった。
【0148】
なお、いずれの実施例においても、紫外線照射後、記録媒体上にインク組成物の良好な塗膜が形成されていることが判明した。
【0149】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料と、
マンセル表色系の10個の色相において、前記染料の色の色相と隣接しない色相の色を有する顔料と、
を含有する、放射線硬化型インク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記顔料の色は、前記染料の色と補色関係にある、放射線硬化型インク組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
さらに、重合性化合物を含有する、放射線硬化型インク組成物。
【請求項4】
請求項3において、
前記重合性化合物は、不飽和二重結合を有する、放射線硬化型インク組成物。
【請求項5】
請求項3または請求項4において、
前記重合性化合物は、活性水素を有する官能基を有する、放射線硬化型インク組成物。
【請求項6】
請求項5において、
前記活性水素を有する官能基は、アミノ基、イミノ基、またはアルコール性水酸基である、放射線硬化型インク組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
さらに、放射線ラジカル重合開始剤を含有する、放射線硬化型インク組成物。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物を備えた、インクセット。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物を用いて情報を記録する、記録方法。
【請求項10】
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程を有する、記録方法。
【請求項11】
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
染料を含有する第1組成物および顔料を含有する第2組成物を前記インクジェット記録装置内で混合して請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物を調製する工程と、
前記放射線硬化型インク組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該放射線硬化型インク組成物の液滴を付着させる工程と、
を有する、記録方法。
【請求項12】
インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に情報を記録する方法であって、
染料を含有する第1組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該第1組成物の液滴を付着させる工程と、
顔料を含有する第2組成物の液滴を吐出して、前記記録媒体に該第2組成物の液滴を付着させる工程と、
前記記録媒体上で前記第1組成物および前記第2組成物を混合し、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物を調製する工程と、
を有する、記録方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記記録媒体に前記第2組成物の液滴を付着させる工程の後に、前記第1組成物の液滴を付着させる工程を行う、記録方法。
【請求項14】
請求項10ないし請求項13のいずれか1項において、
さらに、前記記録媒体上に付着した前記液滴に放射線を照射する工程を有する、記録方法。
【請求項15】
請求項9ないし請求項14のいずれか1項に記載の記録方法によって記録された、記録物。
【請求項16】
請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載の第1組成物および第2組成物を備えた、インクセット。
【請求項17】
請求項8または請求項16に記載のインクセット備えた、インクジェット記録用インクカートリッジ。
【請求項18】
請求項17に記載のインクジェット記録用インクカートリッジを備えた、インクジェット記録装置。
【請求項19】
請求項18において、
さらに、紫外線照射装置を備えた、インクジェット記録装置。
【請求項20】
請求項15に記載の記録物を用いて、放射線の露光量を前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって検知する、放射線検知方法。
【請求項21】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の放射線硬化型インク組成物を用いて、放射線の露光量を前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって検知する、放射線検知方法。
【請求項22】
請求項20に記載の放射線検知方法を用いて、対象物を管理する方法であって、
前記記録物を前記対象物に添付し、
前記記録物の色の変化によって、前記対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、前記対象物の経時変化を管理する、管理方法。
【請求項23】
請求項21に記載の放射線検知方法を用いて、対象物を管理する方法であって、
前記放射線硬化型インク組成物を前記対象物に添付し、
前記放射線硬化型インク組成物の色の変化によって、前記対象物の放射線照射量または放射線照射履歴を測定し、前記対象物の経時変化を管理する、管理方法。
【請求項24】
請求項23において、
前記放射線硬化型インク組成物を封入した容器を用い、該容器を前記対象物に添付して、前記放射線硬化型インク組成物を前記対象物に添付する、管理方法。

【公開番号】特開2009−292939(P2009−292939A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147703(P2008−147703)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】