説明

放射線硬化性シリコーンゴム組成物

【課題】放射線照射で硬化して、各種の基材に対し良好な接着性を示し、硬化被膜を形成でき、かつUVが照射されないときは外観を観察することで容易に硬化か未硬化かを確認できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)アクリル基を有するフェニルエステル誘導体、(C)放射線増感剤、及び(D)感光性色素を含有するものであることを特徴とする放射線硬化性シリコーンゴム組成物。


(式中、R〜Rは炭素数6〜10の1価の炭化水素基、Xは、同一又は異なるアクリル基又はメタクリル基を有する1価の有機基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電気、電子部品の封止用として好適な放射線硬化性シリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の放射線を照射することによって硬化するオルガノポリシロキサン組成物は既に知られている。例えば、ビニル官能性基含有オルガノポリシロキサンと光重合開始剤からなるオルガノポリシロキサン組成物は、放射線硬化性光ファイバー用コーティング剤(特許文献1)として優れている。しかしながら、この組成物はUVを照射しないと硬化が進まず液体で放置されることからこの部品をコートした装置内に流れだし汚染することがあった。
【0003】
かかる欠点は、少なくとも、分子鎖の両末端に放射線官能性の(メタ)アクリロイル基を有する特定のオルガノポリシロキサン、光増感剤、テトラアルキルシラン又はその部分加水分解縮合物を含有してなるオルガノポリシロキサン組成物(特許文献2)によって改善されたものの、近年の高硬化速度に対する要求や、硬化時における放射線照射の低照度化の要求に対して十分に答えることのできるものではなかった。またUV照射装置のトラブル時に未硬化になるトラブルが発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−25231号公報
【特許文献2】特開平11−302348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、短時間の少ない放射線照射で硬化して、速やかに各種の基材に対し良好な接着性を示すと共に、過酷な条件下でも基材の防食効果に優れる硬化被膜を形成することができ、かつ紫外線(UV)、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線が照射されないときは外観を観察することで容易に硬化か未硬化かを確認できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。また、この放射線硬化性シリコーンゴム組成物の樹脂硬化物で封止され、信頼性に優れた電気あるいは電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも、(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)アクリル基を有するフェニルエステル誘導体、(C)放射線増感剤、及び(D)感光性色素を含有するものであることを特徴とする放射線硬化性シリコーンゴム組成物を提供する。
【化1】

(上記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数6〜10の1価の炭化水素基、Xは、同一又は異なる、アクリル基又はメタクリル基を有する1価の有機基であり、a、b、c、及びdは、0.1≦a<1.0、0.1≦b<1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、c+d>0、及びa+b+c+d=1を満たす数である。)
【0007】
このような組成物であれば、短時間の少ない放射線照射で硬化して、速やかに各種の基材に対し良好な接着性を示すと共に、過酷な条件下でも基材の防食効果に優れる硬化被膜を形成することができ、かつ紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線が照射されないときは外観を観察することで容易に硬化か未硬化かを確認できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物となる。
【0008】
また、R、R、及びRの少なくとも一つが炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。さらに、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を0.1〜1000質量部、(C)成分を0.1〜100質量部含有し、(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して、(D)成分を0.001〜1質量部含有するものであることが好ましい。
【0009】
このような放射線硬化性シリコーンゴム組成物であれば、短時間のより少ない放射線照射で硬化でき、速やかに各種の基材に対しより良好な接着性を示すことができると共に、過酷な条件下でも基材の防食効果により優れる硬化被膜を形成することができ、かつ紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線が照射されないときは外観を観察することで一層容易に硬化か未硬化かを確認できる放射線硬化性シリコーンゴム組成物となる。
【0010】
また、前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物の樹脂硬化物のJIS Z 0208に準拠して測定される水蒸気透過率が、20g/mmday以下であることが好ましい。
【0011】
このような水蒸気透過率の樹脂硬化物を与える放射線硬化性シリコーンゴム組成物であれば、過酷な条件下でも基材の防食効果に一層優れる硬化被膜を形成することができるものとなる。
【0012】
さらに、本発明では前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物を硬化した樹脂硬化物によって封止された装置を提供する。
【0013】
このような装置、特に、電子装置、電気装置であれば、過酷な条件下でも基材の防食効果により優れる硬化被膜で覆われた信頼性に優れた装置となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物であれば、短時間の少ない放射線照射で硬化して、速やかに各種の基材に対し良好な接着性を示すと共に、過酷な条件下でも基材の防食効果に優れる硬化被膜を形成することができ、かつ紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線が照射されないときは外観を観察することで容易に硬化か未硬化かを確認できるものとなる。特に、少ないエネルギー照射によって容易に硬化するので、紫外線等の放射線の影響を受けやすい液晶電極、有機EL電極、プラズマディスプレイ電極の保護用コーティング剤として特に有用である。
【0015】
また、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物を硬化した樹脂硬化物によって封止された装置、特に、電子装置、電気装置であれば、過酷な条件下でも基材の防食効果により優れる硬化被膜で覆われた信頼性に優れた装置となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、(メタ)アクリロイル((meth)acryloyl)、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートの語は、それぞれ、アクリロイル(acryloyl)及び/又はメタクリロイル(methacryloyl)、アクリル及び/又はメタクリル、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す語として使用する。また、「Me」はメチル基を意味するものとする。
【0017】
本発明者等は鋭意検討を行なった結果、少なくとも、(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)アクリル基を有するフェニルエステル誘導体、(C)放射線増感剤、及び(D)感光性色素を含有するものであることを特徴とする放射線硬化性シリコーンゴム組成物であれば、短時間の少ない放射線照射で硬化して、速やかに各種の基材に対し良好な接着性を示すと共に、過酷な条件下でも基材の防食効果に優れる硬化被膜を形成することができ、かつ紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線が照射されないときは外観を観察することで容易に硬化か未硬化かを確認できるものとなることを見出し、本発明を完成した。以下、本発明の各成分についてより詳細に説明する。
【0018】
[(A)オルガノポリシロキサン]
本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表されるものであり、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物の主剤である。
【化2】

(上記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数6〜10の1価の炭化水素基、Xは、同一又は異なる、アクリル基又はメタクリル基を有する1価の有機基であり、a、b、c、及びdは、0.1≦a<1.0、0.1≦b<1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、c+d>0、及びa+b+c+d=1を満たす数である。)
【0019】
一般式(1)におけるR、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数6〜10の1価の炭化水素基である。また、R、R、及びRの少なくとも一つが炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0020】
炭素数6〜10の1価の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子、シアノ基等の置換基で置換した、クロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0021】
また、炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一部をハロゲン原子、シアノ基等の置換基で置換した基が挙げられる。
【0022】
本発明の(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいては、特に、オルガノポリシロキサン一分子中のR、R、及びRのうち30モル%以上がフェニル基であることが好ましく、50モル%以上であることがより好ましい。
【0023】
一般式(1)におけるXは、同一又は異なる、アクリル基又はメタクリル基を有する1価の有機基である。このようなXとしては、(メタ)アクリロイル基即ちCH=CHCO−及び/又はCH=C(CH)CO−を、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ((meth)acyloyloxy)基として有する1価の有機基が挙げられる。この、(メタ)アクリロイル基を含む1価の有機基の具体例としては、下記のような、1〜3個の(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された、炭素数1〜10、好ましくは2〜6のアルキル基等が挙げられる。
【化3】

【0024】
本発明においては、これらの中でも、特に、
【化4】

が好ましく、
【化5】

が更に好ましい。
【0025】
また、一般式(1)におけるa、b、c、及びdは、0.1≦a<1.0、0.1≦b<1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、c+d>0、及びa+b+c+d=1を満たす数である。
【0026】
前記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサンの好ましい具体例としては、例えば、以下の一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【化6】

(上記一般式(2)中、a、b、及びcは、0.1≦a<1.0、0.1≦b<1.0、0<c≦0.8、及びa+b+c=1であり、Xは下記である。
【化7】

(式中、R’は水素原子またはメチル基))
【0027】
この(A)成分のオルガノポリシロキサンは、放射線重合性基として(メタ)アクリル基を有するXを有しているので、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線を照射することにより容易に重合して、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させることができる。なお、この(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0028】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサンは、例えば、下記の対応するアルコキシシラン類を加水分解反応させることによって調製することができる。
【化8】

(式中、R、R、及びRは上記同様であり、ORは加水分解反応する基を示し、例えばRとしてはメチル基が例示される。)
【0029】
上記アルコキシシラン類としては、例えば、次式で表されるものが挙げられる。
【化9】

【0030】
[(B)アクリル基を有するフェニルエステル誘導体]
本発明の(B)成分である、アクリル基を有するフェニルエステル誘導体は特に限定されるものではないが、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート等を使用することが好ましい。
【0031】
本発明においては、(B)成分として、1種類の化合物を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。又、(B)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜10,000質量部であることが好ましく、0.1〜1,000質量部であることがより好ましく、10〜1,000質量部であることが最も好ましい。
【0032】
[(C)放射線増感剤]
本発明の(C)成分の放射線増感剤は、特に限定されるものではないが、ベンゾフェノン等のベンゾイル化合物(又は、フェニルケトン化合物)を使用することが好ましく、特に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル基のα−位の炭素原子上にヒドロキシ基を有するベンゾイル化合物(又はフェニルケトン化合物)を使用することが好ましい。
【0033】
本発明の(C)成分として使用することのできる他の好ましい放射線増感剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルモノオルガノフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4,−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のオルガノホスフィンオキサイド化合物;イソブチルベンゾインエーテル等のベンゾインエーテル化合物;アセトフェノンジエチルケタール等のケタール化合物;チオキサントン系化合物;アセトフェノン系化合物等を挙げることができる。
【0034】
本発明においては、(C)成分の放射線増感剤として、1種だけを単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明における(C)成分の使用量は、本発明の組成物の硬化に有効な量であればよく、特に制限されるものではないが、前記(A)成分100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、更に好ましくは0.5〜10質量部、最も好ましくは1.0〜5.0質量部である。
【0036】
[(D)感光性色素]
本発明の(D)成分の感光性色素としては、紫外線、遠紫外線、電子線、X線、又はγ線等の放射線を照射した前後で色調が変わるものであり1種だけを単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0037】
(D)成分を添加することによって、何らかの原因で放射線が照射されず、組成物が硬化しなかった場合でも、色調の変化を目視で観察することによって容易に硬化か未硬化かを確認することが可能となる。
【0038】
具体的には、以下に示される1’,3’−ジヒドロ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール(下記式[A])、1,3,3―トリメチルインドリノ−スピロナフトオキサジン(下記式[B])、1,3,3―トリメチルスピロ[2H−インドール―2,3’―[3H]ピリド[4,3―f][1,4]ベンゾオキサジン]等を(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して0.001〜1部添加することが望ましい。
【化10】

【0039】
[他の配合成分]
本発明の組成物には、上記(A)〜(D)成分に加えて、本発明の目的及び効果を損なわない限度において他の成分を適宜配合することができる。例えば、硬化時における収縮率、及び、得られる硬化物の熱膨張係数、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、難燃性、熱膨張係数、ガス透過率等を適宜調整することを目的として、各種添加剤を配合してもよい。
【0040】
本発明においては、上記した他の配合成分として、例えば、煙霧質シリカ、シリカエアロゲル、石英粉末、ガラス繊維、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機質充填剤;ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のラジカル重合禁止剤(ポットライフ延長剤)等を配合してもよい。
【0041】
本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物は、上記(A)〜(D)成分、及び、必要に応じてその他の配合成分を混合することにより得られる。得られた組成物に放射線を照射することにより、該組成物は速やかに硬化して、硬化直後から強固な接着性を発現する。
【0042】
このようにして硬化させた放射線硬化性シリコーンゴム組成物の樹脂硬化物のJIS Z 0208に準拠して測定される水蒸気透過率が、20g/mmday以下であることが好ましい。このような水蒸気透過率の樹脂硬化物を与える放射線硬化性シリコーンゴム組成物であれば、過酷な条件下でも基材の防食効果により優れる硬化被膜を形成することができるものとなる。
【0043】
本発明で使用する放射線としては、紫外線、遠赤外線、電子線、X線、γ線等が挙げられるが、装置の手軽さ、扱い容易性等の観点から、紫外線を使用することが好ましい。紫外線の光源としては、例えば、UVLEDランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアークランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線(ピーク波長:320〜390nm)の照射量は、例えば、本発明の組成物を2mmの厚みに成形したシートに対して、100〜2,400mJ/cmであり、好ましくは200〜800mJ/cmである。
【0044】
さらに、放射線硬化性シリコーンゴム組成物を硬化した樹脂硬化物によって装置、特に電子装置や電気装置を封止することができる。このような装置であれば、信頼性に優れたものとなる。
【0045】
特に、本発明の組成物により得られる硬化物は、例えば、フラットパネルディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電極の保護膜としてのみならず、各種電気、電子部品等の保護膜又は封止剤として有用であり、過酷な条件下においても、非常に優れた防食性効果を有する。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を合成例、実施例および比較例によって更に詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下における「%」は質量%を表すものとする。
【0047】
[合成例1]
2Lの下コック付きセパラブルフラスコに、フェニルトリメトキシシラン295g(1.5モル)、ジメチルジメトキシシラン60.1g(0.5モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.4g(0.1モル)、トルエン270g、及びIPA156gを添加し、室温で攪拌した後、水156gと25%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液17.2gを添加した。室温下で3時間攪拌した後、10%リン酸二水素ナトリウム水溶液200gを加えて中和した。有機相を分離した後に水洗し、減圧留去して、下記の式で表される生成物を得た。
【化11】

(L=0.71、M=0.24、N=0.05)
【0048】
[合成例2]
5Lの下コック付きセパラブルフラスコに、フェニルトリメトキシシラン237.9g(1.2モル)、ジフェニルジメトキシシラン244.36g(1.5モル)、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン174.6g(0.8モル)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.4g(0.1モル)、トルエン800g、及びIPA400gを添加し、室温で攪拌した後、水400gと25%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液37.8gを添加した。室温下で3時間攪拌した後、10%リン酸二水素ナトリウム水溶液500gを加えて中和した。有機相を分離した後に水洗し、減圧留去して、下記の式で表される生成物を得た。
【化12】

(L=0.3、M=0.4、N=0.2 O=0.1)
【0049】
[実施例1]
下記の(A)〜(D)成分を混合して、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物1を得た。
(A)合成例1で得られた反応生成物:50質量部
(B)2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R−128):50質量部
(C)放射線増感剤(BASF社製 IRGACURE 907):2.5質量部
(D)感光性色素(1’,3’−Dihydro−1’3’3’−Trimetyl−6−Nitrospiro[2H−1−Benzopyran−2,2’−[2H]−Indol]をアセトンに5%溶解したもの):0.2質量部
【0050】
得られた組成物1を、深さ1mm、幅120mm、長さ170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:40W/cm)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:200mJ)、硬化物1を得た。
【0051】
[実施例2]
下記の(A)〜(D)成分を混合して、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物2を得た。
(A)合成例2で得られた反応生成物:99質量部
(B)2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R−128):1質量部
(C)放射線増感剤(BASF社製 IRGACURE 907):2.5質量部
(D)感光性色素(1’,3’−Dihydro−1’3’3’−Trimetyl−6−Nitrospiro[2H−1−Benzopyran−2,2’−[2H]−Indol]をアセトンに5%溶解したもの):0.5質量部
【0052】
得られた組成物2を、深さ1mm、幅120mm、長さ170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:40W/cm)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:200mJ)、硬化物2を得た。
【0053】
[実施例3]
下記の(A)〜(D)成分を混合して、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物3を得た。
(A)合成例1で得られた反応生成物:10質量部
(B)2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(日本化薬株式会社製 KAYARAD R−128):90質量部
(C)放射線増感剤(BASF社製 IRGACURE 907):2.5質量部
(D)感光性色素(1’,3’−Dihydro−1’3’3’−Trimetyl−6−Nitrospiro[2H−1−Benzopyran−2,2’−[2H]−Indol]をアセトンに5%溶解したもの):1.0質量部
【0054】
得られた組成物3を、深さ1mm、幅120mm、長さ170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:40W/cm)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:200mJ)、硬化物3を得た。
【0055】
[実施例4]
下記の(A)〜(D)成分を混合して、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物4を得た。
(A)合成例1で得られた反応生成物:50質量部
(B)フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトアクリレート PO−A):50質量部
(C)放射線増感剤(BASF社製 IRGACURE 907):2.0質量部
(日本化薬株式会社製 KAYACURE BMS):0.5質量部
(D)感光性色素(1,3,3―Trimethylindоlinо−spironaphtoxazineをアセトンに5%溶解したもの):0.4質量部
【0056】
得られた組成物4を、深さ1mm、幅120mm、長さ170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:40W/cm)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:200mJ)、硬化物4を得た。
【0057】
[実施例5]
下記の(A)〜(D)成分を混合して、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物5を得た。
(A)合成例2で得られた反応生成物:75質量部
(B)フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトアクリレート PO−A):25質量部
(C)放射線増感剤(BASF社製 IRGACURE 907):2.0質量部
(日本化薬株式会社製 KAYACURE BMS):0.5質量部
(D)感光性色素(1,3,3―Trimethylindоlinо−spironaphtoxazineをアセトンに5%溶解したもの):1.0質量部
【0058】
得られた組成物5を、深さ1mm、幅120mm、長さ170mmの金型に流し込み、メタルハライド水銀灯2灯を備えるコンベア炉内(照度:40W/cm)で2秒間紫外線を照射し(エネルギー量:200mJ)、硬化物5を得た。
【0059】
<各種性能評価>
得られた硬化物1〜5について、JIS K 6301に準拠して、その硬度をスプリング式A型試験機によって測定した。また、水蒸気透過率をJIS Z 0208に準拠して測定した。その結果を表1に示した。
【0060】
[比較例1]
実施例1で使用した(A)成分のオルガノポリシロキサンをウレタンアクリレート(日本化薬社製UX−4101)に変更した他は、実施例1と同様にして組成物6を調製し、実施例1と同様にして硬化物6を作製し、試験を行った。その結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から明らかなように、本発明の放射線硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、小さな照射エネルギーで十分に硬化するだけでなく、得られた硬化物の水蒸気透過性も十分に小さいことが確認された。また、本発明の組成物は、硬化前後での外観(色調)が明らかに変化するため、該組成物が硬化したことを容易に確認することができる。
【0063】
このように、本発明の放射線硬化性シリコーンゴム組成物は、少ないエネルギー照射によって容易に硬化するので、紫外線等の放射線の影響を受けやすい液晶電極、有機EL電極、プラズマディスプレイ電極の保護用コーティング剤としてのみならず、各種電気、電子部品の保護用コーティング剤として、産業上極めて有用であることが示された。
【0064】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)下記一般式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、(B)アクリル基を有するフェニルエステル誘導体、(C)放射線増感剤、及び(D)感光性色素を含有するものであることを特徴とする放射線硬化性シリコーンゴム組成物
【化1】

(上記一般式(1)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、炭素数6〜10の1価の炭化水素基、Xは、同一又は異なる、アクリル基又はメタクリル基を有する1価の有機基であり、a、b、c、及びdは、0.1≦a<1.0、0.1≦b<1.0、0≦c≦0.8、0≦d≦0.8、c+d>0、及びa+b+c+d=1を満たす数である。)
【請求項2】
前記R、前記R、及び前記Rの少なくとも一つが炭素数6〜10の1価の芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載の放射線硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分を0.1〜1000質量部、前記(C)成分を0.1〜100質量部含有し、
前記(A)〜(C)成分の合計100質量部に対して、前記(D)成分を0.001〜1質量部含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
前記放射線硬化性シリコーンゴム組成物の樹脂硬化物のJIS Z 0208に準拠して測定される水蒸気透過率が、20g/mmday以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放射線硬化性シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の放射線硬化性シリコーンゴム組成物を硬化した樹脂硬化物によって封止されたものであることを特徴とする装置。




【公開番号】特開2013−95805(P2013−95805A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238003(P2011−238003)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】