放射線遮蔽体
【課題】周囲からの放射線の影響を極力低減しながら且つ入手可能な放射線測定器を使って測定対象が発する放射線を測定するための補助具を提供する。
【解決手段】筒状のプローブP又は放射線測定器の簡易な校正に大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせを用いる。筒状のプローブP又は放射線測定器で環境中の放射線量を測定する。次いで、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置し、次いで、大型遮蔽体100の中に収容した小型遮蔽体300の中に検体Sを置いて、大型遮蔽体100の天井蓋4を閉め、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込んで放射線量を計測する。
【解決手段】筒状のプローブP又は放射線測定器の簡易な校正に大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせを用いる。筒状のプローブP又は放射線測定器で環境中の放射線量を測定する。次いで、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置し、次いで、大型遮蔽体100の中に収容した小型遮蔽体300の中に検体Sを置いて、大型遮蔽体100の天井蓋4を閉め、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込んで放射線量を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能による汚染度合いを測定するのに用いられる放射線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の東北地方太平洋沖地震及び津波(東日本大震災)に伴って発生した福島原子力発電施設の事故は、今現在に至っても環境中に大量の放射性物質を放出し続けるという結果を招いており、広域に亘る放射能汚染が社会問題となっているのは周知の通りである。東日本大震災から1年が経過してようやく国の方針が決まり、この方針に沿った除染作業が始まったところである。
【0003】
放射能は目に見えないため、除染作業を行うに当たって除染前後の放射線量を測定して除染効果を明らかにすることが求められる。放射線測定器は様々な形態の測定器が販売されているが、一つの形態として円筒状のプローブを備え、このプローブをかざすことで対象物や空間の放射線量を測定する測定器を挙げることができる。プローブを備えた入手可能なポータブル放射線測定器を例示すれば、商品名「マルチ放射線モニタ」、「NaIシンチレーションサーベイメーター」、「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」などを挙げることができる。他の形態として矩形ボックス状の検出部を備えた携帯用多目的サーベイメーターとして、セイコー・イージーアンドジー株式会社が製造販売する「RadEye-B20」を入手することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目に見えない放射能であるが故に、除染作業を請負かつ除染作業を実施する際に、除染対象がどの程度汚染され、そして除染後にどの程度まで除染効果があったのかを確認するのが望ましい。この目的のために上述した業者用の放射線測定器が使われるが、放射能汚染が広域に亘っているため、例えばプローブを測定対象(汚染した土壌など)にかざしたとしても周囲からの放射線の影響を受けて、測定対象(除染対象)に付着した放射性物質が発している放射線の他に周囲からの放射線まで検知してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題を鑑みて為されたものであり、周囲からの放射線の影響を極力低減しながら且つ入手可能な放射線測定器を使って測定対象が発する放射線を測定するための補助具としての放射線遮蔽体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
上端及び下端が開放した筒状の遮蔽本体と、
該遮蔽本体の上端に設けられ、中央部分に開口を有する天井蓋と、
前記遮蔽本体の下端を閉塞する底蓋と、
前記遮蔽本体の下端部に設けられる井桁状の水平仕切りとを有する放射線遮蔽体を提供することにより達成される。
【0007】
本発明の放射線遮蔽体は、底蓋を外した状態で遮蔽本体の中に計測器のプローブを差し入れる又は遮蔽本体の上に計測器を置くことによりコンクリート面や屋根などの放射線量を周囲の放射線の影響を抑えたなかで計測することができる。他方、底蓋を装着した遮蔽空間の中に計測対象物(検体)を入れ、そしてこの遮蔽空間の中に計測器のプローブを差し入れる又は天井蓋の開口に計測器を位置させることで周囲の放射線の影響を抑えたなかで計測することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、上記の遮蔽本体の中に収容可能な筒状の小型遮蔽体を更に有する。この小型遮蔽体を上記の遮蔽本体の中に入れることで放射線遮蔽率を高めることができる。また、この小型遮蔽体を遮蔽本体の上に載置し、そしてこの小型遮蔽体の中にプローブを挿入することで遮蔽本体の中に入れた検体やコンクリート面などの測定対象面の放射線量を計測できるだけでなく筒状のプローブや矩形ボックス状の検出部を備えた携帯用多目的サーベイメーター(上記「RadEye-B20」)による放射線測定を周囲の放射線の影響を抑えたなかで実施できると共に簡易な校正等を行うことができる。
【0009】
本発明の更なる好ましい実施形態では、前記遮蔽本体の上に載置可能な筒状の追加の遮蔽体を更に有し、該追加の遮蔽体の周囲壁にパンケーキ型のプローブが通過可能な切欠きを備え、前記追加の遮蔽体が上蓋によって閉塞可能である。このような追加の遮蔽体を用意することで、「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」による放射線測定を周囲の放射線の影響を抑えたなかで実施することができる。
【0010】
本発明によれば、請求項1に係る放射線遮蔽体と、小型遮蔽体と、上記の追加の遮蔽体との組み合わせによって、現在入手可能な業務用の放射線測定器の全てに適用可能な遮蔽体を提供できるだけでなく簡易な校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例の放射線遮蔽体の斜視図である。
【図2】第1実施例の放射線遮蔽体の吊り下げハンドルの一部を切断した拡大側面図である。
【図3】第1実施例の放射線遮蔽体の正面図である。
【図4】第1実施例の放射線遮蔽体の背面図である。
【図5】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図である。
【図6】第1実施例の放射線遮蔽体の左側面図である。
【図7】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図であり、吊り下げハンドルを倒した状態を示す。
【図8】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図であり、2分割した天井蓋を開いた状態を示す。
【図9】第1実施例の放射線遮蔽体の平面図である。
【図10】第1実施例の放射線遮蔽体の吊り下げハンドルの一部を切断した拡大平面図である。
【図11】底蓋を装着した状態の第1実施例の放射線遮蔽体の底面図である。
【図12】底蓋を取り外した状態の第1実施例の放射線遮蔽体の底面図である。
【図13】第1実施例の放射線遮蔽体の縦断面図であり、図3のA−A線に沿って断面した図である。
【図14】第1実施例の放射線遮蔽体の縦断面図であり、図9のC−C線に沿って断面した図である。
【図15】第1実施例の放射線遮蔽体の横断面図であり、図3のB−B線に沿って断面した図である。
【図16】変形例の放射線遮蔽体の要部の拡大斜視図である。
【図17】図16の変形例の放射線遮蔽体の取っ手の部分を抽出した平面図である。
【図18】図17と同様に取っ手の部分を抽出した斜視図であり、取っ手が揺動可能であることを説明するための図である。
【図19】図16、図17に示す取っ手に指を差し入れて変形例の放射線遮蔽体を持ち上げた状態を示す図である。
【図20】図1などに図示の第1実施例の遮蔽体を使って検体の放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図21】図1などに図示の第1実施例の遮蔽体を使ってコンクリート面や屋根などの放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図22】第2実施例の放射線遮蔽体の斜視図である。
【図23】第2実施例の放射線遮蔽体の平面図である。
【図24】図23のD−D線に沿って切断した断面図である。
【図25】第2実施例の放射線遮蔽体を使ってコンクリート面や屋根などの放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図26】第1実施例と第2実施例の放射線遮蔽体の組み合わせで検体の放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図27】第1実施例の遮蔽体の上に第2実施例の遮蔽体を載置してコンクリート面や検体の放射線を計測したり放射線測定器の校正などを行う使用態様を説明するための図である。
【図28】第1実施例の遮蔽体の上に第2実施例の遮蔽体を載置する使用形態の断面図である。
【図29】第3実施例の遮蔽体の斜視図である。
【図30】第3実施例の遮蔽体を第1実施例の遮蔽体の上に載置して放射線を計測する使用態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0013】
図1は第1実施例の放射線遮蔽体の斜視図であり、図2は拡大した側面図である。図1、図2を参照して、第1実施例の放射線遮蔽体100は、上下に開放した筒状の遮蔽本体2と、この遮蔽本体2の外形輪郭と相補的な形状の天井蓋4及び底蓋6との組み合わせで構成され、これら遮蔽本体2、天井蓋4、底蓋6は、放射線遮蔽材料で構成され、この実施例では、外皮としてステンレス材料、この外皮で包囲される遮蔽材料として真鍮又は鉛が採用され、外皮の中に溶融した真鍮、鉛を流し込む事により遮蔽本体2、天井蓋4、底蓋6が作られている。天井蓋4及び底蓋6は平らな上面と下面とを有しており、底蓋6は、その外周縁に上方に向けて延び且つ遮蔽本体2の外周面に遊嵌するフランジ6aを備えている。
【0014】
遮蔽本体2は、この実施例では、円筒形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体2は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、遮蔽本体2の内周面も断面円形の形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体2の内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。
【0015】
天井蓋4は、その中央に上下に貫通した円形の開口8を有し、この実施例では、天井蓋4を2分割した2つの天井蓋ハーフ10、10で構成されている。天井蓋4は、遮蔽本体2と別体であってもよいが、この実施例では、各天井蓋ハーフ10がヒンジ12によって遮蔽本体2に連結され、一対の天井蓋ハーフ10、10を観音開きすることができる。好ましい態様として、天井蓋ハーフ10、10を閉じた状態で遮蔽本体2を持ち運ぶ際に天井蓋ハーフ10、10を相互に連結するフック14を備えているのが良いが、このフック14は必須ではなくフック14を省いてもよい。
【0016】
底蓋6は遮蔽本体4とは別体構造であり、測定対象に応じて、後に説明するように、底蓋6無しで遮蔽本体2を使う場合と、底蓋6を遮蔽本体2に装着して使う場合とを選択することができる。
【0017】
図3は第1実施例の遮蔽体100の正面図であり、図4は背面図であり、図5は右側面図であり、図6は左側面図である。図7は第1実施例の遮蔽体100の右側面図である。この図7を参照して、重量物である遮蔽本体2は、任意であるが吊り下げハンドル16を備えているのが持ち運びに好都合であり、吊り下げハンドル16は図7に示すように回動自在であるのが良い。
【0018】
図16〜図19は変形例の放射線遮蔽体200を示す。これら図16〜図19から分かるように遮蔽本体2の側壁に取っ手18を設けても良い。上述した第1実施例の遮蔽体100で説明した遮蔽本体2を吊り下げるための吊り下げハンドル16と共に/又は吊り下げハンドル16無しで図16〜図19に示すように遮蔽本体2の側壁に取っ手18が設けられる。この取っ手18は遮蔽本体2の位置調整に都合がよく、この取っ手18も吊り下げハンドル16と同様に回動自在であるのが都合がよい。
【0019】
遮蔽本体2は、前述した放射線測定器の筒状のプローブを受け入れることのできる長尺の高さ寸法を有していてもよいが、この遮蔽体100、200は、プローブの一部を受け入れる比較的短尺の高さ寸法に設定されている。長尺の高さ寸法に設定したときには、天井蓋4の円形開口8は筒状のプローブと測定器遮蔽本体とを連結するケーブルを受け入れることのできる直径に設定すればよい。逆に、短尺の高さ寸法に設定したときには、後に説明する図20、図21に図示のように、天井蓋4の開口8は筒状のプローブPを受け入れることのできる直径に設定するのが好ましい。
【0020】
図13、図14、図15を参照して、遮蔽本体2は、その下端部に井桁状の水平仕切り20を有しているのが好ましい。勿論、この水平仕切り20を遮蔽本体2とは別体に作り、必要に応じて水平仕切り20を遮蔽本体2の中に設置するようにしてもよい。
【0021】
第1実施例の遮蔽体100の使い方を説明すると、図20は、底蓋6を遮蔽本体2に組み込んで、遮蔽本体2と天井蓋4と底蓋6とで遮蔽空間を形成する例を示す。遮蔽本体2の水平仕切り20の上に皿22に載せた測定対象の検体Sを載せ、そして、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込む。これにより、周囲の放射線の影響を受けること無しに検体Sが発する放射線量を測定できる。なお、天井蓋4の円形開口8を規定する円形輪郭とプローブPの外形輪郭との間に隙間があったとしても、測定結果は誤差程度の違いしか無いことを本願発明者の数多くの実証データから裏付けることができる。
【0022】
図21は、汚染した土壌やコンクリート面を直接的に測定する例を示す。この適用例では、底蓋6無しの状態で遮蔽本体2を測定対象面(地面など)の上に置き、そして、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込むことで、測定対象面の放射線量を測定できる。
【0023】
図22〜図24は第2実施例の放射線遮蔽体300を示す。この第2実施例の放射線遮蔽体300は筒状の形状を有し、この遮蔽体300の下端部に、任意であるが、井桁状の水平仕切り302が設けられているが、この井桁状の水平仕切り302を遮蔽体300と別体に作り、必要に応じて水平仕切り302を第2実施例の遮蔽体300に組み込むようにしてもよい。
【0024】
この第2実施例の遮蔽体300は、前述した第1実施例の遮蔽体100と一緒に使うことができるように、その外形輪郭や高さ寸法を設定するのがよい。すなわち、第2実施例の遮蔽体300は、第1実施例の遮蔽体100の遮蔽本体2の中に収容できる外形輪郭及び高さ寸法に設定するのがよい。従って、この第2実施例の遮蔽体300を「小型遮蔽体」と呼んで第2実施例の遮蔽体300を説明する。そして、この小型遮蔽体300を受け入れる第1実施例の遮蔽体100を「大型遮蔽体」と呼ぶ。
【0025】
小型遮蔽体300は、この実施例では、円筒形状を有しているが、これに限定されない。小型遮蔽体300は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、小型遮蔽体300の内周面も断面円形の形状を有しているが、これに限定されない。小型遮蔽体300の内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。ただし、この小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し入れることができる大きさを有し、また、小型遮蔽体300の下端開口は、前述した第1実施例の大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8と相補的な形状及び大きさであるのが好ましいが必ずしも必須ではない。
【0026】
小型遮蔽体300を使って放射線を測定する方法を説明すると、図25は、測定対象面(地面など)の上に小型遮蔽体300を置き、この小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し込むことで、測定対象面の放射線量を測定できる。この使い方の例は、放射線量の比較的低いエリアを想定した小型遮蔽体300の使い方であると言える。また、小型遮蔽体300の上に「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」を置くことで、測定対象面の放射線量を測定できる。
【0027】
図26は小型遮蔽体300の他の使い方を例示するものである。この図26から分かるように、大型遮蔽体100の中に小型遮蔽体300を挿入することで、周囲からの放射線の遮蔽効果を高めることができる。このことは、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置した場合も底蓋6を設置しない場合でも同様である。
【0028】
この図26に図示の使い方として、筒状のプローブP又は放射線測定器の簡易な校正に大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせを用いることができる。具体的な使用方法を説明すると、先ず、プローブP又は放射線測定器で環境中の放射線量を測定する。次いで、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置し、次いで、大型遮蔽体100の中に収容した小型遮蔽体300の中に検体Sを置いて、大型遮蔽体100の天井蓋4を閉める。変形例として、小型遮蔽体300の中に検体Sを入れ、次いで、検体Sを入れた小型遮蔽体300を大型遮蔽体100の中に入れて天井蓋4を閉めるようにしてもよい。また、底蓋6をその後で遮蔽本体2の下に設置してもよい。次いで、「GMパンケーキプローブ」(東洋メディック株式会社販売)やセイコー・イージーアンドジー株式会社が製造販売する「RadEye-B20」のような円筒形でない基準となる計測器を使って大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8からコリメートされて出てくる放射線量を測定する。次いで、他の放射線測定器で大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8から出てくる放射線量を複数回、測定してその平均を求め、基準となる放射線測定器で求めた値と比較する。これにより放射線測定器の簡易な校正を行うことができる。
【0029】
大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせの他の使用方法を図27、図28を参照して具体的に説明すると、先ず底蓋6の上に遮蔽本体2を置き、そして、天井蓋4を閉じた大型遮蔽体100の上に小型遮蔽体300を置く。そして、この小型遮蔽体300の中にプローブPを差し込んで放射線量を測定する。これをバックグランドの放射線量と呼ぶ。次に、小型遮蔽体300を取り除いて天井蓋4を開けて大型遮蔽体100の遮蔽本体2の中に検体Sを設置し、そして天井蓋4を閉じた大型遮蔽体100の上に小型遮蔽体300を置き、この大型遮蔽体100の上の小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し込んで放射線量を測定する。筒状ではない「GMパンケーキプローブ」や「RadEye-B20」の場合には、小型遮蔽体300の上に「GMパンケーキプローブ」や「RadEye-B20」を置いて放射線量を計測する。これにより検体Sの放射線量を測定することができる。また、放射線測定器の係数などを利用して計算によりBq/Kgなどの放射能量の概算を求めることができる。
【0030】
図29は第3実施例の遮蔽体を示し、この第3実施例の遮蔽体400は上述した第2実施例の遮蔽体200の変形例でもある。この第3実施例の遮蔽体400は「GMパンケーキプローブ」(東洋メディック株式会社販売)に好適に適用可能であることから「パンケーキ形プローブ用遮蔽体」と呼ぶこととする。
【0031】
パンケーキ形プローブ用遮蔽体400の遮蔽本体402は円筒形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体402は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、遮蔽本体402の内周面は円形の形状を有しているが、これに限定されず、内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。ただし、このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400の遮蔽本体402の中にパンケーキ形プローブPpcを差し入れることができる大きさを有している。遮蔽本体402はその周囲壁に上方に向けて開放した切り欠き404を有し、この切り欠き404を通じてパンケーキ形プローブPpcが遮蔽本体402の中にセットされる(図30)。
【0032】
パンケーキ形プローブ用遮蔽体400は、また、上蓋404を有している。上蓋404は、実施例ではヒンジ410を介して遮蔽本体402に一体化されているが、上蓋404は遮蔽本体402と別体構造であってもよい。パンケーキ形プローブ用遮蔽体400は、また、傾倒動可能な吊り下げハンドル408を有しているが、吊り下げハンドル408を省いてもよい。
【0033】
このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400にあっても、前述した小型遮蔽体300(図25)と同様に単独で測定対象面の放射線量を測定するのに適用できるが、大型遮蔽体100との組み合わせを用いることができる。大型遮蔽体100とパンケーキ形プローブ用遮蔽体400との組み合わせにおける具体的な使用方法を図30を参照して説明すると、大型遮蔽体100の上にパンケーキ形プローブ用遮蔽体400を置いて、このパンケーキプローブ用遮蔽体400の中にパンケーキ形プローブPpcを設置することで大型遮蔽体100の中に入れた検体S(底蓋6を設置)や底蓋6を取り除いた状態で測定対象面(地面など)の放射線量を計測することができる。
【0034】
このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400においても、その下端部に井桁状の水平仕切り412を設けるのがよい。この水平仕切り412はパンケーキ形プローブ用遮蔽体400と一体であってもよいし別体であってもよい。図30に示す参照符号414は、上蓋404に設けられた摘みを示す。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例や変形例を説明したが、本発明に従う放射線遮蔽体は、上述したステンレスなどの外皮で包囲された空間に充填する鉛や真鍮のような遮蔽材料を外皮の中に流し込む手法の他に、粒状の遮蔽材料を外皮の中に充填する手法を採用してもよい。すなわち粒状の遮蔽材料を外皮で包囲する構成を採用してもよい。これによれば、本発明に従う放射線遮蔽体を廃棄するときに、外皮の一部に孔を開けて、そして粒状の遮蔽材料を外皮の孔から流出させることで、外皮の材料と、外皮の中に充填する材料とを容易に分離させることができる。変形例として、ステンレスなどの外皮の中に、粒状のステンレス材料を充填してもよい。更なる変形例として、外皮の中に、粒状の鉛、真鍮、ステンレスなどの遮蔽金属を充填すると共に、更に、水、ホウ酸ナトリウム液のような放射線遮蔽液体を外皮の中に充填してもよい。
【0036】
また、水平仕切り20、302、412に関し、実施例では井桁状の形状を採用してあるが、水平仕切り20などの目(空所)の形状は任意であり、例えば線材を渦巻き状にした形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 第1実施例の遮蔽体
2 遮蔽本体
4 天井蓋
6 底蓋
6a 底蓋のフランジ
8 天井蓋の円形開口
10 天井蓋ハーフ
12 ヒンジ
14 フック
16 吊り下げハンドル
18 取っ手
20 水平仕切り
22 皿
S 検体
300 小型遮蔽体
400 パンケーキ形プローブ用遮蔽体
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射能による汚染度合いを測定するのに用いられる放射線遮蔽体に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月の東北地方太平洋沖地震及び津波(東日本大震災)に伴って発生した福島原子力発電施設の事故は、今現在に至っても環境中に大量の放射性物質を放出し続けるという結果を招いており、広域に亘る放射能汚染が社会問題となっているのは周知の通りである。東日本大震災から1年が経過してようやく国の方針が決まり、この方針に沿った除染作業が始まったところである。
【0003】
放射能は目に見えないため、除染作業を行うに当たって除染前後の放射線量を測定して除染効果を明らかにすることが求められる。放射線測定器は様々な形態の測定器が販売されているが、一つの形態として円筒状のプローブを備え、このプローブをかざすことで対象物や空間の放射線量を測定する測定器を挙げることができる。プローブを備えた入手可能なポータブル放射線測定器を例示すれば、商品名「マルチ放射線モニタ」、「NaIシンチレーションサーベイメーター」、「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」などを挙げることができる。他の形態として矩形ボックス状の検出部を備えた携帯用多目的サーベイメーターとして、セイコー・イージーアンドジー株式会社が製造販売する「RadEye-B20」を入手することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目に見えない放射能であるが故に、除染作業を請負かつ除染作業を実施する際に、除染対象がどの程度汚染され、そして除染後にどの程度まで除染効果があったのかを確認するのが望ましい。この目的のために上述した業者用の放射線測定器が使われるが、放射能汚染が広域に亘っているため、例えばプローブを測定対象(汚染した土壌など)にかざしたとしても周囲からの放射線の影響を受けて、測定対象(除染対象)に付着した放射性物質が発している放射線の他に周囲からの放射線まで検知してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題を鑑みて為されたものであり、周囲からの放射線の影響を極力低減しながら且つ入手可能な放射線測定器を使って測定対象が発する放射線を測定するための補助具としての放射線遮蔽体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
上端及び下端が開放した筒状の遮蔽本体と、
該遮蔽本体の上端に設けられ、中央部分に開口を有する天井蓋と、
前記遮蔽本体の下端を閉塞する底蓋と、
前記遮蔽本体の下端部に設けられる井桁状の水平仕切りとを有する放射線遮蔽体を提供することにより達成される。
【0007】
本発明の放射線遮蔽体は、底蓋を外した状態で遮蔽本体の中に計測器のプローブを差し入れる又は遮蔽本体の上に計測器を置くことによりコンクリート面や屋根などの放射線量を周囲の放射線の影響を抑えたなかで計測することができる。他方、底蓋を装着した遮蔽空間の中に計測対象物(検体)を入れ、そしてこの遮蔽空間の中に計測器のプローブを差し入れる又は天井蓋の開口に計測器を位置させることで周囲の放射線の影響を抑えたなかで計測することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、上記の遮蔽本体の中に収容可能な筒状の小型遮蔽体を更に有する。この小型遮蔽体を上記の遮蔽本体の中に入れることで放射線遮蔽率を高めることができる。また、この小型遮蔽体を遮蔽本体の上に載置し、そしてこの小型遮蔽体の中にプローブを挿入することで遮蔽本体の中に入れた検体やコンクリート面などの測定対象面の放射線量を計測できるだけでなく筒状のプローブや矩形ボックス状の検出部を備えた携帯用多目的サーベイメーター(上記「RadEye-B20」)による放射線測定を周囲の放射線の影響を抑えたなかで実施できると共に簡易な校正等を行うことができる。
【0009】
本発明の更なる好ましい実施形態では、前記遮蔽本体の上に載置可能な筒状の追加の遮蔽体を更に有し、該追加の遮蔽体の周囲壁にパンケーキ型のプローブが通過可能な切欠きを備え、前記追加の遮蔽体が上蓋によって閉塞可能である。このような追加の遮蔽体を用意することで、「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」による放射線測定を周囲の放射線の影響を抑えたなかで実施することができる。
【0010】
本発明によれば、請求項1に係る放射線遮蔽体と、小型遮蔽体と、上記の追加の遮蔽体との組み合わせによって、現在入手可能な業務用の放射線測定器の全てに適用可能な遮蔽体を提供できるだけでなく簡易な校正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例の放射線遮蔽体の斜視図である。
【図2】第1実施例の放射線遮蔽体の吊り下げハンドルの一部を切断した拡大側面図である。
【図3】第1実施例の放射線遮蔽体の正面図である。
【図4】第1実施例の放射線遮蔽体の背面図である。
【図5】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図である。
【図6】第1実施例の放射線遮蔽体の左側面図である。
【図7】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図であり、吊り下げハンドルを倒した状態を示す。
【図8】第1実施例の放射線遮蔽体の右側面図であり、2分割した天井蓋を開いた状態を示す。
【図9】第1実施例の放射線遮蔽体の平面図である。
【図10】第1実施例の放射線遮蔽体の吊り下げハンドルの一部を切断した拡大平面図である。
【図11】底蓋を装着した状態の第1実施例の放射線遮蔽体の底面図である。
【図12】底蓋を取り外した状態の第1実施例の放射線遮蔽体の底面図である。
【図13】第1実施例の放射線遮蔽体の縦断面図であり、図3のA−A線に沿って断面した図である。
【図14】第1実施例の放射線遮蔽体の縦断面図であり、図9のC−C線に沿って断面した図である。
【図15】第1実施例の放射線遮蔽体の横断面図であり、図3のB−B線に沿って断面した図である。
【図16】変形例の放射線遮蔽体の要部の拡大斜視図である。
【図17】図16の変形例の放射線遮蔽体の取っ手の部分を抽出した平面図である。
【図18】図17と同様に取っ手の部分を抽出した斜視図であり、取っ手が揺動可能であることを説明するための図である。
【図19】図16、図17に示す取っ手に指を差し入れて変形例の放射線遮蔽体を持ち上げた状態を示す図である。
【図20】図1などに図示の第1実施例の遮蔽体を使って検体の放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図21】図1などに図示の第1実施例の遮蔽体を使ってコンクリート面や屋根などの放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図22】第2実施例の放射線遮蔽体の斜視図である。
【図23】第2実施例の放射線遮蔽体の平面図である。
【図24】図23のD−D線に沿って切断した断面図である。
【図25】第2実施例の放射線遮蔽体を使ってコンクリート面や屋根などの放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図26】第1実施例と第2実施例の放射線遮蔽体の組み合わせで検体の放射線を計測する使用態様を説明するための図である。
【図27】第1実施例の遮蔽体の上に第2実施例の遮蔽体を載置してコンクリート面や検体の放射線を計測したり放射線測定器の校正などを行う使用態様を説明するための図である。
【図28】第1実施例の遮蔽体の上に第2実施例の遮蔽体を載置する使用形態の断面図である。
【図29】第3実施例の遮蔽体の斜視図である。
【図30】第3実施例の遮蔽体を第1実施例の遮蔽体の上に載置して放射線を計測する使用態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0013】
図1は第1実施例の放射線遮蔽体の斜視図であり、図2は拡大した側面図である。図1、図2を参照して、第1実施例の放射線遮蔽体100は、上下に開放した筒状の遮蔽本体2と、この遮蔽本体2の外形輪郭と相補的な形状の天井蓋4及び底蓋6との組み合わせで構成され、これら遮蔽本体2、天井蓋4、底蓋6は、放射線遮蔽材料で構成され、この実施例では、外皮としてステンレス材料、この外皮で包囲される遮蔽材料として真鍮又は鉛が採用され、外皮の中に溶融した真鍮、鉛を流し込む事により遮蔽本体2、天井蓋4、底蓋6が作られている。天井蓋4及び底蓋6は平らな上面と下面とを有しており、底蓋6は、その外周縁に上方に向けて延び且つ遮蔽本体2の外周面に遊嵌するフランジ6aを備えている。
【0014】
遮蔽本体2は、この実施例では、円筒形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体2は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、遮蔽本体2の内周面も断面円形の形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体2の内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。
【0015】
天井蓋4は、その中央に上下に貫通した円形の開口8を有し、この実施例では、天井蓋4を2分割した2つの天井蓋ハーフ10、10で構成されている。天井蓋4は、遮蔽本体2と別体であってもよいが、この実施例では、各天井蓋ハーフ10がヒンジ12によって遮蔽本体2に連結され、一対の天井蓋ハーフ10、10を観音開きすることができる。好ましい態様として、天井蓋ハーフ10、10を閉じた状態で遮蔽本体2を持ち運ぶ際に天井蓋ハーフ10、10を相互に連結するフック14を備えているのが良いが、このフック14は必須ではなくフック14を省いてもよい。
【0016】
底蓋6は遮蔽本体4とは別体構造であり、測定対象に応じて、後に説明するように、底蓋6無しで遮蔽本体2を使う場合と、底蓋6を遮蔽本体2に装着して使う場合とを選択することができる。
【0017】
図3は第1実施例の遮蔽体100の正面図であり、図4は背面図であり、図5は右側面図であり、図6は左側面図である。図7は第1実施例の遮蔽体100の右側面図である。この図7を参照して、重量物である遮蔽本体2は、任意であるが吊り下げハンドル16を備えているのが持ち運びに好都合であり、吊り下げハンドル16は図7に示すように回動自在であるのが良い。
【0018】
図16〜図19は変形例の放射線遮蔽体200を示す。これら図16〜図19から分かるように遮蔽本体2の側壁に取っ手18を設けても良い。上述した第1実施例の遮蔽体100で説明した遮蔽本体2を吊り下げるための吊り下げハンドル16と共に/又は吊り下げハンドル16無しで図16〜図19に示すように遮蔽本体2の側壁に取っ手18が設けられる。この取っ手18は遮蔽本体2の位置調整に都合がよく、この取っ手18も吊り下げハンドル16と同様に回動自在であるのが都合がよい。
【0019】
遮蔽本体2は、前述した放射線測定器の筒状のプローブを受け入れることのできる長尺の高さ寸法を有していてもよいが、この遮蔽体100、200は、プローブの一部を受け入れる比較的短尺の高さ寸法に設定されている。長尺の高さ寸法に設定したときには、天井蓋4の円形開口8は筒状のプローブと測定器遮蔽本体とを連結するケーブルを受け入れることのできる直径に設定すればよい。逆に、短尺の高さ寸法に設定したときには、後に説明する図20、図21に図示のように、天井蓋4の開口8は筒状のプローブPを受け入れることのできる直径に設定するのが好ましい。
【0020】
図13、図14、図15を参照して、遮蔽本体2は、その下端部に井桁状の水平仕切り20を有しているのが好ましい。勿論、この水平仕切り20を遮蔽本体2とは別体に作り、必要に応じて水平仕切り20を遮蔽本体2の中に設置するようにしてもよい。
【0021】
第1実施例の遮蔽体100の使い方を説明すると、図20は、底蓋6を遮蔽本体2に組み込んで、遮蔽本体2と天井蓋4と底蓋6とで遮蔽空間を形成する例を示す。遮蔽本体2の水平仕切り20の上に皿22に載せた測定対象の検体Sを載せ、そして、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込む。これにより、周囲の放射線の影響を受けること無しに検体Sが発する放射線量を測定できる。なお、天井蓋4の円形開口8を規定する円形輪郭とプローブPの外形輪郭との間に隙間があったとしても、測定結果は誤差程度の違いしか無いことを本願発明者の数多くの実証データから裏付けることができる。
【0022】
図21は、汚染した土壌やコンクリート面を直接的に測定する例を示す。この適用例では、底蓋6無しの状態で遮蔽本体2を測定対象面(地面など)の上に置き、そして、天井蓋4の円形開口8に筒状のプローブPを差し込むことで、測定対象面の放射線量を測定できる。
【0023】
図22〜図24は第2実施例の放射線遮蔽体300を示す。この第2実施例の放射線遮蔽体300は筒状の形状を有し、この遮蔽体300の下端部に、任意であるが、井桁状の水平仕切り302が設けられているが、この井桁状の水平仕切り302を遮蔽体300と別体に作り、必要に応じて水平仕切り302を第2実施例の遮蔽体300に組み込むようにしてもよい。
【0024】
この第2実施例の遮蔽体300は、前述した第1実施例の遮蔽体100と一緒に使うことができるように、その外形輪郭や高さ寸法を設定するのがよい。すなわち、第2実施例の遮蔽体300は、第1実施例の遮蔽体100の遮蔽本体2の中に収容できる外形輪郭及び高さ寸法に設定するのがよい。従って、この第2実施例の遮蔽体300を「小型遮蔽体」と呼んで第2実施例の遮蔽体300を説明する。そして、この小型遮蔽体300を受け入れる第1実施例の遮蔽体100を「大型遮蔽体」と呼ぶ。
【0025】
小型遮蔽体300は、この実施例では、円筒形状を有しているが、これに限定されない。小型遮蔽体300は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、小型遮蔽体300の内周面も断面円形の形状を有しているが、これに限定されない。小型遮蔽体300の内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。ただし、この小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し入れることができる大きさを有し、また、小型遮蔽体300の下端開口は、前述した第1実施例の大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8と相補的な形状及び大きさであるのが好ましいが必ずしも必須ではない。
【0026】
小型遮蔽体300を使って放射線を測定する方法を説明すると、図25は、測定対象面(地面など)の上に小型遮蔽体300を置き、この小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し込むことで、測定対象面の放射線量を測定できる。この使い方の例は、放射線量の比較的低いエリアを想定した小型遮蔽体300の使い方であると言える。また、小型遮蔽体300の上に「GMパンケーキプローブ(東洋メディック株式会社販売)」を置くことで、測定対象面の放射線量を測定できる。
【0027】
図26は小型遮蔽体300の他の使い方を例示するものである。この図26から分かるように、大型遮蔽体100の中に小型遮蔽体300を挿入することで、周囲からの放射線の遮蔽効果を高めることができる。このことは、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置した場合も底蓋6を設置しない場合でも同様である。
【0028】
この図26に図示の使い方として、筒状のプローブP又は放射線測定器の簡易な校正に大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせを用いることができる。具体的な使用方法を説明すると、先ず、プローブP又は放射線測定器で環境中の放射線量を測定する。次いで、大型遮蔽体100の遮蔽本体2の下に底蓋6を設置し、次いで、大型遮蔽体100の中に収容した小型遮蔽体300の中に検体Sを置いて、大型遮蔽体100の天井蓋4を閉める。変形例として、小型遮蔽体300の中に検体Sを入れ、次いで、検体Sを入れた小型遮蔽体300を大型遮蔽体100の中に入れて天井蓋4を閉めるようにしてもよい。また、底蓋6をその後で遮蔽本体2の下に設置してもよい。次いで、「GMパンケーキプローブ」(東洋メディック株式会社販売)やセイコー・イージーアンドジー株式会社が製造販売する「RadEye-B20」のような円筒形でない基準となる計測器を使って大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8からコリメートされて出てくる放射線量を測定する。次いで、他の放射線測定器で大型遮蔽体100の天井蓋4の開口8から出てくる放射線量を複数回、測定してその平均を求め、基準となる放射線測定器で求めた値と比較する。これにより放射線測定器の簡易な校正を行うことができる。
【0029】
大型遮蔽体100と小型遮蔽体300との組み合わせの他の使用方法を図27、図28を参照して具体的に説明すると、先ず底蓋6の上に遮蔽本体2を置き、そして、天井蓋4を閉じた大型遮蔽体100の上に小型遮蔽体300を置く。そして、この小型遮蔽体300の中にプローブPを差し込んで放射線量を測定する。これをバックグランドの放射線量と呼ぶ。次に、小型遮蔽体300を取り除いて天井蓋4を開けて大型遮蔽体100の遮蔽本体2の中に検体Sを設置し、そして天井蓋4を閉じた大型遮蔽体100の上に小型遮蔽体300を置き、この大型遮蔽体100の上の小型遮蔽体300の中に筒状のプローブPを差し込んで放射線量を測定する。筒状ではない「GMパンケーキプローブ」や「RadEye-B20」の場合には、小型遮蔽体300の上に「GMパンケーキプローブ」や「RadEye-B20」を置いて放射線量を計測する。これにより検体Sの放射線量を測定することができる。また、放射線測定器の係数などを利用して計算によりBq/Kgなどの放射能量の概算を求めることができる。
【0030】
図29は第3実施例の遮蔽体を示し、この第3実施例の遮蔽体400は上述した第2実施例の遮蔽体200の変形例でもある。この第3実施例の遮蔽体400は「GMパンケーキプローブ」(東洋メディック株式会社販売)に好適に適用可能であることから「パンケーキ形プローブ用遮蔽体」と呼ぶこととする。
【0031】
パンケーキ形プローブ用遮蔽体400の遮蔽本体402は円筒形状を有しているが、これに限定されない。遮蔽本体402は、外形輪郭の断面形状として、楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。また、遮蔽本体402の内周面は円形の形状を有しているが、これに限定されず、内周面の断面形状として楕円、四角形、六角形などの任意の形状を採用してもよい。ただし、このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400の遮蔽本体402の中にパンケーキ形プローブPpcを差し入れることができる大きさを有している。遮蔽本体402はその周囲壁に上方に向けて開放した切り欠き404を有し、この切り欠き404を通じてパンケーキ形プローブPpcが遮蔽本体402の中にセットされる(図30)。
【0032】
パンケーキ形プローブ用遮蔽体400は、また、上蓋404を有している。上蓋404は、実施例ではヒンジ410を介して遮蔽本体402に一体化されているが、上蓋404は遮蔽本体402と別体構造であってもよい。パンケーキ形プローブ用遮蔽体400は、また、傾倒動可能な吊り下げハンドル408を有しているが、吊り下げハンドル408を省いてもよい。
【0033】
このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400にあっても、前述した小型遮蔽体300(図25)と同様に単独で測定対象面の放射線量を測定するのに適用できるが、大型遮蔽体100との組み合わせを用いることができる。大型遮蔽体100とパンケーキ形プローブ用遮蔽体400との組み合わせにおける具体的な使用方法を図30を参照して説明すると、大型遮蔽体100の上にパンケーキ形プローブ用遮蔽体400を置いて、このパンケーキプローブ用遮蔽体400の中にパンケーキ形プローブPpcを設置することで大型遮蔽体100の中に入れた検体S(底蓋6を設置)や底蓋6を取り除いた状態で測定対象面(地面など)の放射線量を計測することができる。
【0034】
このパンケーキ形プローブ用遮蔽体400においても、その下端部に井桁状の水平仕切り412を設けるのがよい。この水平仕切り412はパンケーキ形プローブ用遮蔽体400と一体であってもよいし別体であってもよい。図30に示す参照符号414は、上蓋404に設けられた摘みを示す。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例や変形例を説明したが、本発明に従う放射線遮蔽体は、上述したステンレスなどの外皮で包囲された空間に充填する鉛や真鍮のような遮蔽材料を外皮の中に流し込む手法の他に、粒状の遮蔽材料を外皮の中に充填する手法を採用してもよい。すなわち粒状の遮蔽材料を外皮で包囲する構成を採用してもよい。これによれば、本発明に従う放射線遮蔽体を廃棄するときに、外皮の一部に孔を開けて、そして粒状の遮蔽材料を外皮の孔から流出させることで、外皮の材料と、外皮の中に充填する材料とを容易に分離させることができる。変形例として、ステンレスなどの外皮の中に、粒状のステンレス材料を充填してもよい。更なる変形例として、外皮の中に、粒状の鉛、真鍮、ステンレスなどの遮蔽金属を充填すると共に、更に、水、ホウ酸ナトリウム液のような放射線遮蔽液体を外皮の中に充填してもよい。
【0036】
また、水平仕切り20、302、412に関し、実施例では井桁状の形状を採用してあるが、水平仕切り20などの目(空所)の形状は任意であり、例えば線材を渦巻き状にした形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
100 第1実施例の遮蔽体
2 遮蔽本体
4 天井蓋
6 底蓋
6a 底蓋のフランジ
8 天井蓋の円形開口
10 天井蓋ハーフ
12 ヒンジ
14 フック
16 吊り下げハンドル
18 取っ手
20 水平仕切り
22 皿
S 検体
300 小型遮蔽体
400 パンケーキ形プローブ用遮蔽体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端及び下端が開放した筒状の遮蔽本体と、
該遮蔽本体の上端に設けられ、中央部分に開口を有する天井蓋と、
前記遮蔽本体の下端を閉塞する底蓋と、
前記遮蔽本体の下端部に設けられる井桁状の水平仕切りとを有する放射線遮蔽体。
【請求項2】
前記遮蔽本体が、放射線測定器の筒状のプローブの長さ寸法よりも小さな高さ寸法を有する、請求項1に記載の放射線遮蔽体。
【請求項3】
前記天井蓋が2つに分割した一対の天井蓋ハーフで構成されている、請求項1又は2に記載の放射線遮蔽体。
【請求項4】
前記遮蔽本体の中に収容可能な筒状の小型遮蔽体を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線遮蔽体。
【請求項5】
前記小型遮蔽体の下端部に上下に連通する水平仕切りが設けられている、請求項4に記載の放射線遮蔽体。
【請求項6】
前記遮蔽本体の上に載置可能な筒状の追加の遮蔽体を更に有し、
該追加の遮蔽体の周囲壁にパンケーキ形プローブが通過可能な切欠きを備え、
前記追加の遮蔽体が上蓋によって閉塞可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線遮蔽体。
【請求項1】
上端及び下端が開放した筒状の遮蔽本体と、
該遮蔽本体の上端に設けられ、中央部分に開口を有する天井蓋と、
前記遮蔽本体の下端を閉塞する底蓋と、
前記遮蔽本体の下端部に設けられる井桁状の水平仕切りとを有する放射線遮蔽体。
【請求項2】
前記遮蔽本体が、放射線測定器の筒状のプローブの長さ寸法よりも小さな高さ寸法を有する、請求項1に記載の放射線遮蔽体。
【請求項3】
前記天井蓋が2つに分割した一対の天井蓋ハーフで構成されている、請求項1又は2に記載の放射線遮蔽体。
【請求項4】
前記遮蔽本体の中に収容可能な筒状の小型遮蔽体を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線遮蔽体。
【請求項5】
前記小型遮蔽体の下端部に上下に連通する水平仕切りが設けられている、請求項4に記載の放射線遮蔽体。
【請求項6】
前記遮蔽本体の上に載置可能な筒状の追加の遮蔽体を更に有し、
該追加の遮蔽体の周囲壁にパンケーキ形プローブが通過可能な切欠きを備え、
前記追加の遮蔽体が上蓋によって閉塞可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射線遮蔽体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−159517(P2012−159517A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−111488(P2012−111488)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り
【出願人】(512029630)株式会社日本遮蔽技研 (1)
【出願人】(593127647)大阪化工株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−111488(P2012−111488)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り
【出願人】(512029630)株式会社日本遮蔽技研 (1)
【出願人】(593127647)大阪化工株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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