放射線遮蔽容器
【課題】耐久性に優れ、製作コストの低い放射線遮蔽容器を提供すること。
【解決手段】放射性廃棄物を保管あるいは運搬するための放射線遮蔽容器10であって、規格ドラム容器30に格納して用いられる、一端が底板11で閉口されたステンレス鋼製の筒12と、この筒12の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋13とを備える放射線遮蔽容器10である。
【解決手段】放射性廃棄物を保管あるいは運搬するための放射線遮蔽容器10であって、規格ドラム容器30に格納して用いられる、一端が底板11で閉口されたステンレス鋼製の筒12と、この筒12の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋13とを備える放射線遮蔽容器10である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等において発生する放射性廃棄物の運搬や保管庫内での一時保管のために使用される放射線遮蔽容器に関するものである。なお、放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に大別されるが、本発明の放射線遮蔽容器は低レベル放射性廃棄物に適用されるものである。以下の説明では、低レベル放射性廃棄物を単に放射性廃棄物という。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等において、定期検査や補修工事が行なわれる際に、放射性廃棄物が発生する。この放射性廃棄物は放射性物質で汚染されていることから、管理区域内に保管し、放射線量管理を行うことが義務付けられている。
【0003】
このような放射性廃棄物の保管や運搬には放射線遮蔽容器が用いられており、一般的にはステンレス鋼製の規格ドラム容器(容量:200L)にコンクリートを流し込んだコンクリート遮蔽容器、または、規格ドラム容器に鉛を鋳込み一体化、もしくは加工した鉛を遮蔽材として組み込んだ鉛遮蔽容器が使用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
このうち、コンクリート遮蔽容器は、規格ドラム容器の内部に鉄製の円筒状の内容器(内筒体)を配置し、規格ドラム容器と内容器の間に遮蔽材としてコンクリートを流し込んだ構造となっている。コンクリートによる遮蔽厚みは、廃棄物の放射線レベルに応じて設計がなされており、ウエスや鉄くずなどの比較的放射線量の低い廃棄物には遮蔽厚み50mm〜100mmのコンクリート遮蔽容器が用いられ、フィルターカートリッジなどの比較的放射線量の高い廃棄物には各フィルターサイズに合わせ、遮蔽厚み125mm〜225mmのコンクリート遮蔽容器が用いられている。
【0005】
一方、鉛遮蔽容器の構造は、コンクリート遮蔽容器と基本的には同じであり、規格ドラム容器の内部の遮蔽部材として遮蔽性能の高い鉛を使用している。遮蔽厚みとして70mm〜80mm程度のものが使用され、主に放射線量が比較的高い廃棄物に適用されている。
【0006】
共通して使用される規格ドラム容器としては、一般的に、防水および防錆加工を施しているものが使用される。
【0007】
放射線遮蔽容器に収納された放射性廃棄物は、長期保管され、溶融処理やモルタル固化されて最終処分される。
【0008】
しかし、従来のコンクリート遮蔽容器には、液体廃棄物や濡れウエスなど廃棄物の種類によっては、コンクリート劣化やドラム容器が腐食する問題があり、長期保管には向かない欠点があり、耐久性の高い放射線遮蔽容器が求められている。
【0009】
さらに、従来のコンクリート遮蔽容器および鉛遮蔽容器には、コンクリートの流し込みや、鉛の鋳込みといった特別の作業が必要であり、製作に手間がかかるとともに、製作コストも高くなる。
【0010】
一方で、従来よりも遮蔽性能が高い遮蔽材料として、タングステンの適用が検討されている。例えば、特許文献3には、成形性および加工性を向上させるために、タングステンと樹脂を混合したタングステン複合材を放射線遮蔽材に適用することが開示されている。
【0011】
しかし、このようなタングステンと樹脂を混合したタングステン複合材をもってしても、上述のような規格ドラム容器を用いた放射線遮蔽容器内に配置される円筒状の放射線遮蔽体を製作することは困難であり、仮に製作できたとしても、製作コストが非常に高くなる。とくに、遮蔽性能を向上させるためにタングステンの含有量を増加させると、成形性および加工性が低下するため、規格ドラム容器に適用されるような大型の放射線遮蔽体を製作することは非常に困難であった。
【特許文献1】特開平10−153690号公報
【特許文献2】実用新案登録第3095507号公報
【特許文献3】特開2003−287590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、耐久性に優れ、製作コストの低い放射線遮蔽容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放射線遮蔽容器は、放射性廃棄物を保管あるいは運搬するための放射線遮蔽容器であって、規格ドラム容器に格納して用いられる、一端が底板で閉口されたステンレス鋼製の筒と、この筒の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、ステンレス鋼製の筒は中空複重構造の円筒とすることができ、この円筒の中空部に放射線遮蔽体を挿入することができる。この場合、放射線遮蔽体は、リング状の遮蔽ブロック体を積み重ねた形態、または樽板状の遮蔽ブロック体を周設した形態とすることができる。
【0015】
また本発明においては、ステンレス鋼製の蓋の内部にも放射線遮蔽体を挿入することができる。
【0016】
このようにステンレス鋼製の筒あるいは蓋の内部に挿入する放射遮蔽体は、鉛、コンクリート、ステンレス鋼、タングステン、タングステン合金、タングステン複合材のうちの一種または二種以上の材料で形成することができる。
【0017】
さらに本発明の放射線遮蔽容器は、蓋の裏に凸部を形成し、この凸部を筒の開口部に挿着し、かつ蓋と筒とをボルトにより締結した構造とすることができる。また、筒および/または蓋に、運搬用のアイボルトおよび/または取手を設けることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の放射線遮蔽容器においては、その容器遮蔽体としてステンレス鋼製の筒を使用しているので、耐久性に優れ、耐用年数が大幅に向上する。
【0019】
また、規格ドラム容器へ着脱自在にすることにより、規格ドラム容器の劣化や破損時に規格ドラム容器のみを交換して再利用することができるため、放射線遮蔽容器は、半永久的に使用でき、その購入コストや管理コストを低減できる。
【0020】
また、筒を中空複重構造とすることで重量の低減を図ることができる。
【0021】
また、筒を中空複重構造とすると、その中空部に放射線遮蔽体を自由に挿入して配置できるので、その遮蔽能力を調整することができ、廃棄物を別の遮蔽容器に入れ替える作業がなくなるといった運用メリットがあり、遮蔽体が放射性廃棄物と接触することによる劣化や腐食がなく容器の耐久性も向上する。
【0022】
また、要求される遮蔽能力によって放射線遮蔽体の材質を適宜選定したり、これを2重、3重に配置するなど、使い方の自由度が向上し、規格ドラム容器に入れる放射線遮蔽容器の設計をその都度する必要がなくなる。
【0023】
また、放射線遮蔽体をリング状あるいは樽板状に分割した遮蔽ブロック体にて構成することにより、一体物として放射線遮蔽体を製作する場合に比べ、はるかに製作が容易であり、製作コストも低く抑えることができる。
【0024】
また、放射線遮蔽体として従来のコンクリートや鉛よりも遮蔽性能の高いタングステンやタングステン複合材を使用した場合には、容器の有効内容量を大きくすることができるため、放射性廃棄物の運搬や保管に使用する放射線遮蔽容器の使用数量を削減でき、その運搬や保管にかかる作業工数を削減できるとともに、保管場所を有効利用でき、結果として放射性廃棄物の処理コストを大幅に削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の放射線遮蔽容器の基本構成を示す。
【0027】
本発明の放射線遮蔽容器10は、一端(下端)が底板11で閉口されたステンレス鋼製の筒12と、この筒12の上端開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋13とを備える。この放射線遮蔽容器10は、規格ドラム容器30内に着脱自在に格納される。
【0028】
筒12は、市販のシームレスステンレス鋼管を切り出したり、市販のステンレス鋼板を円筒状に曲げて継ぎ目を溶接して製造することができる。
【0029】
底板11は、筒12の下端面に溶接して取り付けることができる。なお、ステンレス鋼板を用いて温間でのプレス成形を行うことよって、筒12と底板11とを一体的に形成することもできる。
【0030】
蓋13は、筒12に上端面に載置され、ステンレス鋼製のボルト14によって筒12に着脱自在に締結できる。なお、ボルト14による締結に代えて、筒12の上部開口部内面に雌ネジを切り、蓋13の裏面に凸部を設け、その凸部の外周面に雄ネジを設け、蓋13の凸部を筒12にねじ込むことにより蓋13と筒12を締結することもできる。そのほか、蓋13の裏面に凸部を設け、その凸部の外周面に突起を複数個設け、蓋13を載置する筒12の上端面に前記突起が入るように凹部を設け、前記突起と凹部が鍵と鍵穴の関係となるようにして蓋13と筒12を締結することもできる。
【0031】
使用するステンレス鋼材料としては、収納する放射性廃棄物の種類に応じ耐食性や耐摩耗性等を考慮して、SUS304、403、316、316L等を選択できる。ステンレス鋼は耐食性に優れているため、放射性廃棄物を収納する容器(筒)や蓋に使用することで、放射線遮蔽容器の耐久性が向上する。また、ステンレス鋼は加工性にも優れるので、容易に容器形状(筒状)に成形することができ、このようなステンレス鋼製の筒は、各種形状のものが一般市場において広く流通しているため、安い価格で容易に入手することができる。
【0032】
また、外側の規格ドラム容器が破損や腐食劣化したとしても、内部に格納された本発明の放射線遮蔽容器は腐食することがないので、規格ドラム容器のみを交換すれば、放射線遮蔽容器として継続し、繰り返して使用することができる。
【0033】
ここで、ステンレス鋼製の筒12の大きさ(内容量)は、収納する放射性廃棄物の種類に応じて適宜設計される。例えば収納する放射性廃棄物がフィルターカートリッジ等の小物の場合は、廃棄物を収納する筒12も小さくてよい。この場合は、図2に示すように、筒12の外周側に規格ドラム容器30の内面に沿って挿脱自在なステンレス鋼製の外筒15を設け、この外筒15を筒12に支持部材16を介して溶接等により接合することで、放射線遮蔽容器10(筒12)を規格ドラム容器30に挿脱自在に出し入でき、搬送時にいわゆるがたつきを起こすこともない。
【0034】
本発明の放射線遮蔽容器において、放射性廃棄物を収納する筒12は、中空複重構造の円筒であることが望ましい。中空複重構造とは、複数重の筒の各層間に空隙(中空部)を有する複層構造のことである。このように放射性廃棄物を収納する筒12を中空複重構造とすることで、その中空部に必要に応じて放射線遮蔽材を挿入することが可能となり、比較的高レベルの放射性廃棄物でも収納可能になる。
【0035】
その一例として、筒12を中空2重構造とした放射線遮蔽容器を図3に示し、その筒12の中空部12aに放射線遮蔽体を挿入した放射線遮蔽容器を図4に示す。
【0036】
この例では、2重構造の筒12の上部にシール部材17を介して蓋13を着脱自在に配置している。シール部材17は2重構造の筒12に、嵌合、螺子留め、溶接等により設置することができる。そして、このシール部材17に螺旋穴を開けておけば、図1の例と同様に蓋13を被せ、ボルトで締結することができる。
【0037】
放射性廃棄物の放射能レベルに対し遮蔽能力が十分である場合は、図3に示すように放射線遮蔽体を挿入せずに用い、放射性廃棄物を収納した際に管理値を上回ったり、遮蔽能力が不足する場合などは、図4に示すように2重構造の筒12の中空部12aに放射線遮蔽体18を配置することで、遮蔽容器の遮蔽性能を自由に調整することが可能となる。これにより廃棄物を別の遮蔽容器に移し替える作業がなくなるといった運用上のメリットも生まれる。
【0038】
なお、図3および図4では、筒12を2重構造にしたが、3重構造、4重構造等の多重構造とすれば遮蔽能力を向上させることができる。
【0039】
このほか遮蔽性能を向上させるには、図5に示すように、筒12の中空部に筒状の放射線遮蔽体18を複数配置して放射線遮蔽体18を多重(複重)構造とすることもできる。このように、放射線遮蔽体18を多重に組み込み可能とすることにより遮蔽性能の設計が可能である。なお、図5では、放射線遮蔽体18を2重に配置しているが、3重以上とすることにより遮蔽能力をさらに向上させることができる。
【0040】
筒12の中空部に挿入する放射線遮蔽体は、γ線や荷電粒子線の遮蔽性能が高い高密度材料である鉛、タングステン、タングステン複合材、ステンレス鋼や、とくに中性子線やγ線や荷電粒子線の遮蔽にも向いているコンクリートで形成することが望ましい。
【0041】
このように筒12の中空部に挿入する放射線遮蔽体には、遮蔽性能を付与するために比較的密度の高い材料が採用される。しかしながら、筒12は規格ドラム容器(容量200L)に格納して用いられるものであり、このようなサイズに合わせた放射線遮蔽体を一体物として製作しようとすると、重量があるため製作や取り扱いが困難となる。
【0042】
これに対しては、放射線遮蔽体を分割した遮蔽ブロック体として形成することにより、一体物として放射線遮蔽体を製作する場合に比べ、はるかに製作が容易となり、製作コストも低く抑えられ取り扱いも容易となる。
【0043】
具体的には、放射線遮蔽体18は、図6(a)に示すようにリング状の遮蔽ブロック体18aを積み重ねた形態、あるいは図6(b)に示すように樽板状の遮蔽ブロック体18bを周設した形態にすることが望ましく、このような形態にすれば、中空部への挿脱も容易となる。とくに樽板状の遮蔽ブロック体18bを周設する形態においては、分割した遮蔽ブロック体18aの出し入れが容易に行えるので、遮蔽性能の調整を容易に行うことができる。
【0044】
また、図6(a)のように複数の遮蔽ブロック体を積み重ねる場合においては、これらの遮蔽ブロック体18aは、例えば図7に示すよう凹凸嵌合によって段差をもって積み重ねることが望ましい。これによって、積み重ねた遮蔽ブロック体18aどうしのずれを防止できるとともに、積み重ね部分における遮蔽漏れを防止できる。また、樽板状の遮蔽ブロック体を周設する場合においても同様に凹凸嵌合によりずれや遮蔽漏れを防止できる。
【0045】
図8は、本発明の放射線遮蔽容器10における蓋13の他の例を示す。同図に示すように、蓋13の裏に円盤状の凸部13aを形成し、この凸部13aを筒12の上部開口部に挿着する構造にすれば、ある程度の機密性が確保され、さらに蓋13と筒12とをボルト等により締結するようにすれば、機密性を高めることができる。
【0046】
また、本発明の放射線遮蔽容器においては、図9に示すように蓋13の内部に放射線遮蔽体19を挿入した構造にすれば、蓋13の上方に放射、散乱される放射線を遮蔽することができる。放射線遮蔽体19は、筒12の中空部に挿入される上述の放射線遮蔽体18と同様の材料によって形成できるが、タングステン、タングステン合金やタングステン複合材料のような密度の高い材料を用いれば蓋13の厚みを薄くでき、内容積を大きくすることができる。
【0047】
さらに、本発明の放射線遮蔽容器においては、図10および図11に示すように筒12あるいは蓋13に運搬用のアイボルト21あるいは取手22を設けると、移し替えや取り扱いが容易になる。なお、図10においては蓋を省略して示している。
【0048】
放射線遮蔽容器の重量は廃棄物の種類により変わるが、一般的に使用される200Lの規格ドラム容器に納めるサイズとした場合はかなりの重量となる。したがって、規格ドラム容器30に着脱する際には、手作業ではなくクレーン等で吊り上げが必要となる。そのため、図10に示すように放射性廃棄物を収納する筒12自体に、アイボルト20や取手21を設けることが望ましい。また、蓋13に関しても手作業で開閉を行うことが難しいため、クレーン等で吊り上げている。そのため、蓋にも図11に示すように、アイボルト20や取手21を設けることが望ましい。
【0049】
以下、本発明の放射線遮蔽容器のその他の実施形態を説明する。
【0050】
図12は、放射線遮蔽容器10を多重(実施例では3重)に配置した例である。このように、放射線遮蔽容器10を多重に配置することで、遮蔽性能を幅広く調整できる。
【0051】
図13は、多重(3重)に配置した放射線遮蔽容器10のうち、内側の2つの放射線遮蔽容器10の筒12を中空2重構造にした例である。これによっても遮蔽性能を幅広く調整できる。また、筒12を中空2重構造とすれば、図14に示すように、その中空部に放射線遮蔽体18を必要に応じて挿入することができるので、遮蔽性能をより幅広く調整できる。さらに、図15に示すように、外側の放射線遮蔽容器10の筒12も中空2重構造として、その中空部に放射線遮蔽体18を挿入したり、底板11にも放射線遮蔽体19を挿入したりして、遮蔽性能を調整することもできる。
【0052】
図16は、放射線遮蔽容器10の筒12に蓋13を取り付ける構造例を示す。図1では、ボルト14によって蓋13を筒12に締結するようにしたが、図16(a)に示すように蓋13を筒12にねじ込むことによって着脱自在に締結してもよいし、図16(b)に示すように蝶番22を使用して開閉自在に取り付けてもよい。
【0053】
図17は、放射線遮蔽容器10の蓋13の内部に放射線遮蔽体19を挿入する構造例を示す。図17(a)は、蓋13に下面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、子蓋13bをねじ込むことで凹部13bを密閉した例である。図17(b)は、蓋13に上面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、子蓋13bをねじ込むことで凹部13bを密閉した例である。図17(c)は、蓋13に下面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、蓋13の下面に子蓋13bをボルト13dによって締結することで凹部13bを密閉した例である。図17(d)は、蓋13に上面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、蓋13の上面に子蓋13bをボルト13dによって締結することで凹部13bを密閉した例である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の放射線遮蔽容器の基本構成を示す断面図である。
【図2】本発明の放射線遮蔽容器において、筒の外周側に規格ドラム容器の内面に沿って挿脱自在なステンレス鋼製の外筒を設けた例を示す。
【図3】本発明の放射線遮蔽容器において、筒を中空2重構造とした例を示す。
【図4】図3に示す筒の中空部に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図5】本発明の放射線遮蔽容器において、筒の中空部に筒状の放射線遮蔽体を複数配置した例を示す。
【図6】放射線遮蔽体を複数の遮蔽ブロック体によって形成した例を示す。
【図7】遮蔽ブロック体の積み重ねの構造例を示す。
【図8】本発明の放射線遮蔽容器における蓋の他の例を示す。
【図9】本発明の放射線遮蔽容器において、蓋の内部に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図10】本発明の放射線遮蔽容器において、筒に運搬用のアイボルトあるいは取手を設けた例を示す。
【図11】本発明の放射線遮蔽容器において、蓋に運搬用のアイボルトあるいは取手を設けた例を示す。
【図12】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置した例を示す。
【図13】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、その筒を中空2重構造にした例を示す。
【図14】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、中空2重構造の筒に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図15】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、中空2重構造の筒および底板に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図16】放射線遮蔽容器の筒に蓋を取り付ける構造例を示す。
【図17】放射線遮蔽容器の蓋の内部に放射線遮蔽体を挿入する構造例を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 放射線遮蔽容器
11 底板
12 筒
13 蓋
13a 凸部
13b 凹部
13c 子蓋
13d ボルト
14 ボルト
15 外筒
16 支持部材
17 シール部材
18,19 放射線遮蔽体
20 アイボルト
21 取手
22 蝶番
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等において発生する放射性廃棄物の運搬や保管庫内での一時保管のために使用される放射線遮蔽容器に関するものである。なお、放射性廃棄物は、高レベル放射性廃棄物と低レベル放射性廃棄物に大別されるが、本発明の放射線遮蔽容器は低レベル放射性廃棄物に適用されるものである。以下の説明では、低レベル放射性廃棄物を単に放射性廃棄物という。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等において、定期検査や補修工事が行なわれる際に、放射性廃棄物が発生する。この放射性廃棄物は放射性物質で汚染されていることから、管理区域内に保管し、放射線量管理を行うことが義務付けられている。
【0003】
このような放射性廃棄物の保管や運搬には放射線遮蔽容器が用いられており、一般的にはステンレス鋼製の規格ドラム容器(容量:200L)にコンクリートを流し込んだコンクリート遮蔽容器、または、規格ドラム容器に鉛を鋳込み一体化、もしくは加工した鉛を遮蔽材として組み込んだ鉛遮蔽容器が使用されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
このうち、コンクリート遮蔽容器は、規格ドラム容器の内部に鉄製の円筒状の内容器(内筒体)を配置し、規格ドラム容器と内容器の間に遮蔽材としてコンクリートを流し込んだ構造となっている。コンクリートによる遮蔽厚みは、廃棄物の放射線レベルに応じて設計がなされており、ウエスや鉄くずなどの比較的放射線量の低い廃棄物には遮蔽厚み50mm〜100mmのコンクリート遮蔽容器が用いられ、フィルターカートリッジなどの比較的放射線量の高い廃棄物には各フィルターサイズに合わせ、遮蔽厚み125mm〜225mmのコンクリート遮蔽容器が用いられている。
【0005】
一方、鉛遮蔽容器の構造は、コンクリート遮蔽容器と基本的には同じであり、規格ドラム容器の内部の遮蔽部材として遮蔽性能の高い鉛を使用している。遮蔽厚みとして70mm〜80mm程度のものが使用され、主に放射線量が比較的高い廃棄物に適用されている。
【0006】
共通して使用される規格ドラム容器としては、一般的に、防水および防錆加工を施しているものが使用される。
【0007】
放射線遮蔽容器に収納された放射性廃棄物は、長期保管され、溶融処理やモルタル固化されて最終処分される。
【0008】
しかし、従来のコンクリート遮蔽容器には、液体廃棄物や濡れウエスなど廃棄物の種類によっては、コンクリート劣化やドラム容器が腐食する問題があり、長期保管には向かない欠点があり、耐久性の高い放射線遮蔽容器が求められている。
【0009】
さらに、従来のコンクリート遮蔽容器および鉛遮蔽容器には、コンクリートの流し込みや、鉛の鋳込みといった特別の作業が必要であり、製作に手間がかかるとともに、製作コストも高くなる。
【0010】
一方で、従来よりも遮蔽性能が高い遮蔽材料として、タングステンの適用が検討されている。例えば、特許文献3には、成形性および加工性を向上させるために、タングステンと樹脂を混合したタングステン複合材を放射線遮蔽材に適用することが開示されている。
【0011】
しかし、このようなタングステンと樹脂を混合したタングステン複合材をもってしても、上述のような規格ドラム容器を用いた放射線遮蔽容器内に配置される円筒状の放射線遮蔽体を製作することは困難であり、仮に製作できたとしても、製作コストが非常に高くなる。とくに、遮蔽性能を向上させるためにタングステンの含有量を増加させると、成形性および加工性が低下するため、規格ドラム容器に適用されるような大型の放射線遮蔽体を製作することは非常に困難であった。
【特許文献1】特開平10−153690号公報
【特許文献2】実用新案登録第3095507号公報
【特許文献3】特開2003−287590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、耐久性に優れ、製作コストの低い放射線遮蔽容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放射線遮蔽容器は、放射性廃棄物を保管あるいは運搬するための放射線遮蔽容器であって、規格ドラム容器に格納して用いられる、一端が底板で閉口されたステンレス鋼製の筒と、この筒の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、ステンレス鋼製の筒は中空複重構造の円筒とすることができ、この円筒の中空部に放射線遮蔽体を挿入することができる。この場合、放射線遮蔽体は、リング状の遮蔽ブロック体を積み重ねた形態、または樽板状の遮蔽ブロック体を周設した形態とすることができる。
【0015】
また本発明においては、ステンレス鋼製の蓋の内部にも放射線遮蔽体を挿入することができる。
【0016】
このようにステンレス鋼製の筒あるいは蓋の内部に挿入する放射遮蔽体は、鉛、コンクリート、ステンレス鋼、タングステン、タングステン合金、タングステン複合材のうちの一種または二種以上の材料で形成することができる。
【0017】
さらに本発明の放射線遮蔽容器は、蓋の裏に凸部を形成し、この凸部を筒の開口部に挿着し、かつ蓋と筒とをボルトにより締結した構造とすることができる。また、筒および/または蓋に、運搬用のアイボルトおよび/または取手を設けることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の放射線遮蔽容器においては、その容器遮蔽体としてステンレス鋼製の筒を使用しているので、耐久性に優れ、耐用年数が大幅に向上する。
【0019】
また、規格ドラム容器へ着脱自在にすることにより、規格ドラム容器の劣化や破損時に規格ドラム容器のみを交換して再利用することができるため、放射線遮蔽容器は、半永久的に使用でき、その購入コストや管理コストを低減できる。
【0020】
また、筒を中空複重構造とすることで重量の低減を図ることができる。
【0021】
また、筒を中空複重構造とすると、その中空部に放射線遮蔽体を自由に挿入して配置できるので、その遮蔽能力を調整することができ、廃棄物を別の遮蔽容器に入れ替える作業がなくなるといった運用メリットがあり、遮蔽体が放射性廃棄物と接触することによる劣化や腐食がなく容器の耐久性も向上する。
【0022】
また、要求される遮蔽能力によって放射線遮蔽体の材質を適宜選定したり、これを2重、3重に配置するなど、使い方の自由度が向上し、規格ドラム容器に入れる放射線遮蔽容器の設計をその都度する必要がなくなる。
【0023】
また、放射線遮蔽体をリング状あるいは樽板状に分割した遮蔽ブロック体にて構成することにより、一体物として放射線遮蔽体を製作する場合に比べ、はるかに製作が容易であり、製作コストも低く抑えることができる。
【0024】
また、放射線遮蔽体として従来のコンクリートや鉛よりも遮蔽性能の高いタングステンやタングステン複合材を使用した場合には、容器の有効内容量を大きくすることができるため、放射性廃棄物の運搬や保管に使用する放射線遮蔽容器の使用数量を削減でき、その運搬や保管にかかる作業工数を削減できるとともに、保管場所を有効利用でき、結果として放射性廃棄物の処理コストを大幅に削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の放射線遮蔽容器の基本構成を示す。
【0027】
本発明の放射線遮蔽容器10は、一端(下端)が底板11で閉口されたステンレス鋼製の筒12と、この筒12の上端開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋13とを備える。この放射線遮蔽容器10は、規格ドラム容器30内に着脱自在に格納される。
【0028】
筒12は、市販のシームレスステンレス鋼管を切り出したり、市販のステンレス鋼板を円筒状に曲げて継ぎ目を溶接して製造することができる。
【0029】
底板11は、筒12の下端面に溶接して取り付けることができる。なお、ステンレス鋼板を用いて温間でのプレス成形を行うことよって、筒12と底板11とを一体的に形成することもできる。
【0030】
蓋13は、筒12に上端面に載置され、ステンレス鋼製のボルト14によって筒12に着脱自在に締結できる。なお、ボルト14による締結に代えて、筒12の上部開口部内面に雌ネジを切り、蓋13の裏面に凸部を設け、その凸部の外周面に雄ネジを設け、蓋13の凸部を筒12にねじ込むことにより蓋13と筒12を締結することもできる。そのほか、蓋13の裏面に凸部を設け、その凸部の外周面に突起を複数個設け、蓋13を載置する筒12の上端面に前記突起が入るように凹部を設け、前記突起と凹部が鍵と鍵穴の関係となるようにして蓋13と筒12を締結することもできる。
【0031】
使用するステンレス鋼材料としては、収納する放射性廃棄物の種類に応じ耐食性や耐摩耗性等を考慮して、SUS304、403、316、316L等を選択できる。ステンレス鋼は耐食性に優れているため、放射性廃棄物を収納する容器(筒)や蓋に使用することで、放射線遮蔽容器の耐久性が向上する。また、ステンレス鋼は加工性にも優れるので、容易に容器形状(筒状)に成形することができ、このようなステンレス鋼製の筒は、各種形状のものが一般市場において広く流通しているため、安い価格で容易に入手することができる。
【0032】
また、外側の規格ドラム容器が破損や腐食劣化したとしても、内部に格納された本発明の放射線遮蔽容器は腐食することがないので、規格ドラム容器のみを交換すれば、放射線遮蔽容器として継続し、繰り返して使用することができる。
【0033】
ここで、ステンレス鋼製の筒12の大きさ(内容量)は、収納する放射性廃棄物の種類に応じて適宜設計される。例えば収納する放射性廃棄物がフィルターカートリッジ等の小物の場合は、廃棄物を収納する筒12も小さくてよい。この場合は、図2に示すように、筒12の外周側に規格ドラム容器30の内面に沿って挿脱自在なステンレス鋼製の外筒15を設け、この外筒15を筒12に支持部材16を介して溶接等により接合することで、放射線遮蔽容器10(筒12)を規格ドラム容器30に挿脱自在に出し入でき、搬送時にいわゆるがたつきを起こすこともない。
【0034】
本発明の放射線遮蔽容器において、放射性廃棄物を収納する筒12は、中空複重構造の円筒であることが望ましい。中空複重構造とは、複数重の筒の各層間に空隙(中空部)を有する複層構造のことである。このように放射性廃棄物を収納する筒12を中空複重構造とすることで、その中空部に必要に応じて放射線遮蔽材を挿入することが可能となり、比較的高レベルの放射性廃棄物でも収納可能になる。
【0035】
その一例として、筒12を中空2重構造とした放射線遮蔽容器を図3に示し、その筒12の中空部12aに放射線遮蔽体を挿入した放射線遮蔽容器を図4に示す。
【0036】
この例では、2重構造の筒12の上部にシール部材17を介して蓋13を着脱自在に配置している。シール部材17は2重構造の筒12に、嵌合、螺子留め、溶接等により設置することができる。そして、このシール部材17に螺旋穴を開けておけば、図1の例と同様に蓋13を被せ、ボルトで締結することができる。
【0037】
放射性廃棄物の放射能レベルに対し遮蔽能力が十分である場合は、図3に示すように放射線遮蔽体を挿入せずに用い、放射性廃棄物を収納した際に管理値を上回ったり、遮蔽能力が不足する場合などは、図4に示すように2重構造の筒12の中空部12aに放射線遮蔽体18を配置することで、遮蔽容器の遮蔽性能を自由に調整することが可能となる。これにより廃棄物を別の遮蔽容器に移し替える作業がなくなるといった運用上のメリットも生まれる。
【0038】
なお、図3および図4では、筒12を2重構造にしたが、3重構造、4重構造等の多重構造とすれば遮蔽能力を向上させることができる。
【0039】
このほか遮蔽性能を向上させるには、図5に示すように、筒12の中空部に筒状の放射線遮蔽体18を複数配置して放射線遮蔽体18を多重(複重)構造とすることもできる。このように、放射線遮蔽体18を多重に組み込み可能とすることにより遮蔽性能の設計が可能である。なお、図5では、放射線遮蔽体18を2重に配置しているが、3重以上とすることにより遮蔽能力をさらに向上させることができる。
【0040】
筒12の中空部に挿入する放射線遮蔽体は、γ線や荷電粒子線の遮蔽性能が高い高密度材料である鉛、タングステン、タングステン複合材、ステンレス鋼や、とくに中性子線やγ線や荷電粒子線の遮蔽にも向いているコンクリートで形成することが望ましい。
【0041】
このように筒12の中空部に挿入する放射線遮蔽体には、遮蔽性能を付与するために比較的密度の高い材料が採用される。しかしながら、筒12は規格ドラム容器(容量200L)に格納して用いられるものであり、このようなサイズに合わせた放射線遮蔽体を一体物として製作しようとすると、重量があるため製作や取り扱いが困難となる。
【0042】
これに対しては、放射線遮蔽体を分割した遮蔽ブロック体として形成することにより、一体物として放射線遮蔽体を製作する場合に比べ、はるかに製作が容易となり、製作コストも低く抑えられ取り扱いも容易となる。
【0043】
具体的には、放射線遮蔽体18は、図6(a)に示すようにリング状の遮蔽ブロック体18aを積み重ねた形態、あるいは図6(b)に示すように樽板状の遮蔽ブロック体18bを周設した形態にすることが望ましく、このような形態にすれば、中空部への挿脱も容易となる。とくに樽板状の遮蔽ブロック体18bを周設する形態においては、分割した遮蔽ブロック体18aの出し入れが容易に行えるので、遮蔽性能の調整を容易に行うことができる。
【0044】
また、図6(a)のように複数の遮蔽ブロック体を積み重ねる場合においては、これらの遮蔽ブロック体18aは、例えば図7に示すよう凹凸嵌合によって段差をもって積み重ねることが望ましい。これによって、積み重ねた遮蔽ブロック体18aどうしのずれを防止できるとともに、積み重ね部分における遮蔽漏れを防止できる。また、樽板状の遮蔽ブロック体を周設する場合においても同様に凹凸嵌合によりずれや遮蔽漏れを防止できる。
【0045】
図8は、本発明の放射線遮蔽容器10における蓋13の他の例を示す。同図に示すように、蓋13の裏に円盤状の凸部13aを形成し、この凸部13aを筒12の上部開口部に挿着する構造にすれば、ある程度の機密性が確保され、さらに蓋13と筒12とをボルト等により締結するようにすれば、機密性を高めることができる。
【0046】
また、本発明の放射線遮蔽容器においては、図9に示すように蓋13の内部に放射線遮蔽体19を挿入した構造にすれば、蓋13の上方に放射、散乱される放射線を遮蔽することができる。放射線遮蔽体19は、筒12の中空部に挿入される上述の放射線遮蔽体18と同様の材料によって形成できるが、タングステン、タングステン合金やタングステン複合材料のような密度の高い材料を用いれば蓋13の厚みを薄くでき、内容積を大きくすることができる。
【0047】
さらに、本発明の放射線遮蔽容器においては、図10および図11に示すように筒12あるいは蓋13に運搬用のアイボルト21あるいは取手22を設けると、移し替えや取り扱いが容易になる。なお、図10においては蓋を省略して示している。
【0048】
放射線遮蔽容器の重量は廃棄物の種類により変わるが、一般的に使用される200Lの規格ドラム容器に納めるサイズとした場合はかなりの重量となる。したがって、規格ドラム容器30に着脱する際には、手作業ではなくクレーン等で吊り上げが必要となる。そのため、図10に示すように放射性廃棄物を収納する筒12自体に、アイボルト20や取手21を設けることが望ましい。また、蓋13に関しても手作業で開閉を行うことが難しいため、クレーン等で吊り上げている。そのため、蓋にも図11に示すように、アイボルト20や取手21を設けることが望ましい。
【0049】
以下、本発明の放射線遮蔽容器のその他の実施形態を説明する。
【0050】
図12は、放射線遮蔽容器10を多重(実施例では3重)に配置した例である。このように、放射線遮蔽容器10を多重に配置することで、遮蔽性能を幅広く調整できる。
【0051】
図13は、多重(3重)に配置した放射線遮蔽容器10のうち、内側の2つの放射線遮蔽容器10の筒12を中空2重構造にした例である。これによっても遮蔽性能を幅広く調整できる。また、筒12を中空2重構造とすれば、図14に示すように、その中空部に放射線遮蔽体18を必要に応じて挿入することができるので、遮蔽性能をより幅広く調整できる。さらに、図15に示すように、外側の放射線遮蔽容器10の筒12も中空2重構造として、その中空部に放射線遮蔽体18を挿入したり、底板11にも放射線遮蔽体19を挿入したりして、遮蔽性能を調整することもできる。
【0052】
図16は、放射線遮蔽容器10の筒12に蓋13を取り付ける構造例を示す。図1では、ボルト14によって蓋13を筒12に締結するようにしたが、図16(a)に示すように蓋13を筒12にねじ込むことによって着脱自在に締結してもよいし、図16(b)に示すように蝶番22を使用して開閉自在に取り付けてもよい。
【0053】
図17は、放射線遮蔽容器10の蓋13の内部に放射線遮蔽体19を挿入する構造例を示す。図17(a)は、蓋13に下面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、子蓋13bをねじ込むことで凹部13bを密閉した例である。図17(b)は、蓋13に上面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、子蓋13bをねじ込むことで凹部13bを密閉した例である。図17(c)は、蓋13に下面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、蓋13の下面に子蓋13bをボルト13dによって締結することで凹部13bを密閉した例である。図17(d)は、蓋13に上面が開放する凹部13bを設け、凹部13bに放射線遮蔽体19を挿入後、蓋13の上面に子蓋13bをボルト13dによって締結することで凹部13bを密閉した例である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の放射線遮蔽容器の基本構成を示す断面図である。
【図2】本発明の放射線遮蔽容器において、筒の外周側に規格ドラム容器の内面に沿って挿脱自在なステンレス鋼製の外筒を設けた例を示す。
【図3】本発明の放射線遮蔽容器において、筒を中空2重構造とした例を示す。
【図4】図3に示す筒の中空部に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図5】本発明の放射線遮蔽容器において、筒の中空部に筒状の放射線遮蔽体を複数配置した例を示す。
【図6】放射線遮蔽体を複数の遮蔽ブロック体によって形成した例を示す。
【図7】遮蔽ブロック体の積み重ねの構造例を示す。
【図8】本発明の放射線遮蔽容器における蓋の他の例を示す。
【図9】本発明の放射線遮蔽容器において、蓋の内部に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図10】本発明の放射線遮蔽容器において、筒に運搬用のアイボルトあるいは取手を設けた例を示す。
【図11】本発明の放射線遮蔽容器において、蓋に運搬用のアイボルトあるいは取手を設けた例を示す。
【図12】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置した例を示す。
【図13】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、その筒を中空2重構造にした例を示す。
【図14】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、中空2重構造の筒に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図15】放射線遮蔽容器を多重(3重)に配置し、中空2重構造の筒および底板に放射線遮蔽体を挿入した例を示す。
【図16】放射線遮蔽容器の筒に蓋を取り付ける構造例を示す。
【図17】放射線遮蔽容器の蓋の内部に放射線遮蔽体を挿入する構造例を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 放射線遮蔽容器
11 底板
12 筒
13 蓋
13a 凸部
13b 凹部
13c 子蓋
13d ボルト
14 ボルト
15 外筒
16 支持部材
17 シール部材
18,19 放射線遮蔽体
20 アイボルト
21 取手
22 蝶番
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規格ドラム容器に格納して用いられる、一端が底板で閉口されたステンレス鋼製の筒と、この筒の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋とを備える放射線遮蔽容器。
【請求項2】
筒が中空複重構造の円筒である請求項1に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項3】
中空複重構造の円筒の中空部に放射線遮蔽体が挿入されている請求項2に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項4】
放射線遮蔽体が、リング状の遮蔽ブロック体を積み重ねた形態、または樽板状の遮蔽ブロック体を周設した形態を有する請求項3に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項5】
蓋の内部に放射線遮蔽体が挿入されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項6】
放射線遮蔽体が、鉛、コンクリート、ステンレス鋼、タングステン、タングステン合金、タングステン複合材のうちの一種または二種以上の材料で形成されて請求項3から請求項5のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項7】
蓋の裏に凸部が形成され、この凸部が筒の開口部に挿着され、かつ蓋と筒とがボルトにより締結される構造を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項8】
筒および/または蓋に、運搬用のアイボルトおよび/または取手が設けられている請求項1から請求項7のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項1】
規格ドラム容器に格納して用いられる、一端が底板で閉口されたステンレス鋼製の筒と、この筒の開口部に着脱自在となるように形成されたステンレス鋼製の蓋とを備える放射線遮蔽容器。
【請求項2】
筒が中空複重構造の円筒である請求項1に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項3】
中空複重構造の円筒の中空部に放射線遮蔽体が挿入されている請求項2に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項4】
放射線遮蔽体が、リング状の遮蔽ブロック体を積み重ねた形態、または樽板状の遮蔽ブロック体を周設した形態を有する請求項3に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項5】
蓋の内部に放射線遮蔽体が挿入されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項6】
放射線遮蔽体が、鉛、コンクリート、ステンレス鋼、タングステン、タングステン合金、タングステン複合材のうちの一種または二種以上の材料で形成されて請求項3から請求項5のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項7】
蓋の裏に凸部が形成され、この凸部が筒の開口部に挿着され、かつ蓋と筒とがボルトにより締結される構造を有する請求項1から請求項6のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【請求項8】
筒および/または蓋に、運搬用のアイボルトおよび/または取手が設けられている請求項1から請求項7のいずれかに記載の放射線遮蔽容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−8224(P2010−8224A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167834(P2008−167834)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000229173)日本タングステン株式会社 (80)
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