説明

放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法及び該オルガノポリシロキサンを含む放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物

【解決手段】放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させることを特徴とする放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【効果】本発明の放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの合成方法及びその組成物は、無触媒かつ濾過などの工程なしで容易に放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法並びに保存性に優れる放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を与えるものであり、特に、電気・電子部品及びそれらの回路のコーティング剤や、フラットパネルディスプレイ用シール剤の用途に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法並びにそれを用いた組成物に関する。更に詳しくは、無触媒かつ容易に放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法並びにそれを用いて電気・電子部品及びそれらの回路のコーティング剤やフラットパネルディスプレイ用シール剤の用途に好適な保存性に優れる放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、室温でゴム状弾性体を与える室温硬化性シリコーンゴム組成物(以下、「RTV」という)としては種々のものが知られている。RTVから得られる硬化ゴムは、他の有機系ゴムに比較して優れた耐候性、耐久性、耐熱性、耐寒性等を具備することから種々の分野で使用され、特に建築分野においては、ガラス同士の接着用、金属とガラスとの接着用、コンクリート目地のシール用等に多用されている。
【0003】
また、電気・電子部品用の接着・コーティング剤用としては、エポキシ樹脂等の被着体に対する接着性等の点から脱アルコールタイプRTVが多用される傾向にある。近年、急速に増産されているフラットパネルディスプレイのシール剤に対する適用においても、同様に脱アルコールタイプRTVが多用されている。
【0004】
ところで、電気・電子工業の生産ラインのスピード向上に伴い、これらのラインでシール剤等として使用される硬化性組成物について、硬化速度の向上が要求されている。そこで、従来公知の縮合型、加熱硬化型、白金付加反応型等の硬化性組成物に対し、硬化スピードの速い硬化機構を持つものとしては、放射線硬化型の組成物が公知である。
【0005】
放射線硬化型のオルガノポリシロキサン組成物としては、アクリル基含有ポリシロキサンと増感剤とからなる組成物が提案されている(特許文献1:特公昭53−36515号公報及び特許文献2:特許第2639286号公報参照)。アクリル基含有ポリシロキサンの合成方法として、ヒドロキシシリル基含有シロキサンとクロロシランの脱塩反応、ヒドロキシシリル基含有シロキサンとアクリル官能性アルコキシシランの有機錫触媒を用いた反応、アルコキシシリル基とクロロシランの塩化第二鉄を用いた反応等が示されている。しかし、生成した塩を除去するため濾過が必要となるので工程が増える、又は最終組成物に不必要な触媒が残留することになり、組成物自体の保存性に欠けるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭53−36515号公報
【特許文献2】特許第2639286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術に鑑み、本発明が目的とするところは、無触媒かつ簡単な工程のみで放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、この方法で合成した放射線重合性官能基を導入したオルガノポリシロキサンを用いることにより、放射線硬化し、保存安定性に優れる放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法及びこれにより得られたオルガノポリシロキサンを含む放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
請求項1:
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させることを特徴とする放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項2:
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンが、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化1】


(式中、Xは炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R2、R3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、m、nは0,1又は2である。)
請求項3:
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンが、下記一般式(3)で表される請求項2記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化2】


(式中、Xは炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R2はおのおの独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基である。)
請求項4:
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーが、下記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンポリマーである請求項1〜3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化3】


(式中、R5は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、kは10以上の整数である。)
請求項5:
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーが、下記(I)成分と(II)成分との縮合反応生成物である請求項1〜3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
(I)R3SiO1/2単位(式中、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表す)及びSiO4/2単位を有し、SiO4/2単位1モルに対するR3SiO1/2単位のモル数が0.6〜1.2モルであるケイ素原子に結合したヒドロキシ基含有オルガノポリシロキサン
(II)上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノシロキサンポリマー
請求項6:
前記(II)成分が、下記一般式(5)で表されるオルガノシロキサンポリマーである請求項5記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化4】


(式中、R6はおのおの独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Yはおのおの独立に上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基、aは1〜3の整数、bは10以上の整数である。)
請求項7:
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーのヒドロキシシリル基1モルに対して放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンのアミンの割合が、0.5〜1モルである請求項1〜6のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項8:
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとの反応温度が30〜150℃である請求項1〜7のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
請求項9:
請求項1〜8のいずれか1項記載の方法で得られた放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを含む放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
請求項10:
更に、光開始剤を含有し、紫外線硬化型である請求項9記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの合成方法及びその組成物は、無触媒かつ濾過などの工程なしで容易に放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法並びに保存性に優れる放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を与えるものであり、特に、電気・電子部品及びそれらの回路のコーティング剤や、フラットパネルディスプレイ用シール剤の用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法は、放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させるものである。
【0011】
[放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミン]
シリコーンポリマー中に放射線重合性官能基を導入するオルガノシリルアミンは、本発明を特徴づける最も重要な成分である。従来、放射線重合性官能基を導入するためには、脱塩反応や有機錫化合物のような縮合触媒を用いる必要があったが、上記オルガノシリルアミンを用いることにより、最終組成物に不必要な残留物である縮合触媒を使用せず、更に濾過などの工程なしで容易に放射線重合性官能基を導入することができることを見出したものである。
【0012】
本発明の放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンは、分子中に1つ以上の放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンである限り、特に限定されない。
なお、本明細書において、オルガノシリルアミンとは、Si−N結合を有する有機ケイ素化合物を一般的に意味し、オルガノアミノシランのみならずオルガノシラザンをも包含する用語として使用する。オルガノアミノシランに含まれるアミノ基の数は1〜3個のいずれでもよい。オルガノシラザンは、直鎖状でも環状でもよく、分岐を有していてもよい。
【0013】
また、本発明において、放射線とはマイクロ波、赤外線、紫外線(UV線)、X線、γ線等の電磁波;及びα粒子線、陽子線、中性子線、電子線等の粒子線を指す。
【0014】
前記放射線重合性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられ、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0015】
本発明の放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンとしては、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)
【化5】


(式中、Xは炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R2、R3は水素原子、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基又は炭素原子数6〜10、好ましくは6〜8、より好ましくは6又は7のアリール基であり、mは0,1又は2である。)
で表される構造を有するオルガノシリルアミンが挙げられる。このオルガノシリルアミン中に上記一般式(1)で表されるシラザン単位が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0016】
上記Xとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、プロピレン基(トリメチレン基及びメチルエチレン基)、ブチレン基(例えば、テトラメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基)、ペンテン基(例えば、ペンタメチレン基)、ヘキセン基(例えば、ヘキサメチレン基)等のアルキレン基が挙げられ、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基が好ましい。
【0017】
上記R2、R3としては、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、1−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。特に、R2としてはメチル基が好ましく、R3としては水素原子が好ましい。
【0018】
ケイ素原子に結合したアミノ基を有する放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンとしては、上述した一般式(2)
【化6】


(式中、X、R1〜R3、nは前記の通り。)
で表される構造を有する放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンが例示され、シラザン構造を有する放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンとしては、上述した一般式(1)
【化7】


(式中、X、R1〜R3、mは前記の通り。)
で表される構造を有するものが例示される。
【0019】
上記一般式(1)で表されるシリルアミンは、好ましくは下記一般式(6)
【化8】


(式中、X、R1、R2は前記の通りであり、R4は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基で、上記R2、R3と同様のものが例示される。m2及びm3は0〜2の整数であり、p及びqは0以上の整数であり、但し、p+qは典型的には0以上の整数、より典型的には0〜10の整数、更により典型的には0〜5の整数である。)
で表される放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミン等が挙げられ、特に、下記一般式(3)
【化9】

(式中、X、R1及びR2は前記の通りである。)
で表される放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンが好ましい。
【0020】
更に好ましくは、上記一般式(3)で表されるシラザン単位で構成された放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンとしては、例えば、下記一般式(7)
【0021】
【化10】


(式中、R7は独立に水素原子又はメチル基である。)
で表される放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンである。
【0022】
本発明の放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンの具体例としては、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アクリロイルオキシメチルジメチルシリルジメチルアミン、メタクリロイルオキシメチルジメチルシリルジメチルアミン、アクリロイルオキシメチルジメチルシリルジエチルアミン、メタクリロイルオキシメチルジメチルシリルジエチルアミン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルシリルジメチルアミン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルシリルジメチルアミン、3−アクリロイルオキシプロピルジメチルシリルジエチルアミン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルシリルジエチルアミン、アクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、アクリロイルオキシメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルポリシラザンなどが挙げられる。
【0023】
上記オルガノシリルアミンの中では、表面処理剤等として用いた際に副生する窒素化合物が低沸点であるといった観点から、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルトリシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルテトラシラザン、アクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルトリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルテトラシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルポリシラザン、アクリロイルオキシメチルポリシラザン、メタクリロイルオキシメチルポリシラザン、3−アクリロイルオキシプロピルポリシラザン、3−メタクリロイルオキシプロピルポリシラザンが好ましく、更に、化合物の合成・同定が容易であるといった観点から、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(メタクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−アクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(γ−メタクリロイルオキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンが特に好ましい。
【0024】
本発明の放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンの製造方法は、ハロアルキル基を含有するオルガノシリルアミンと、放射線重合性官能基を有する有機酸のアルカリ金属塩及び放射線重合性官能基を有する有機酸のアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも1種の放射線重合性官能基を有する塩とを脱塩反応させることや放射線重合性官能基を有するハロシランとアンモニアの反応等により製造することができる。
【0025】
[ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマー]
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーは、下記一般式(4)で表されるものを挙げることができる。
【化11】

【0026】
式中、R5は炭素原子数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素結合が部分的にハロゲン原子などで置換された基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、特にメチル基が好ましい。上記一般式(4)中の複数のR5は同一の基であっても異種の基であってもよく、またkは10以上の整数であり、特にこのジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度を25〜500,000mm2/sの範囲、好ましくは500〜100,000mm2/sの範囲とする整数である。なお、本発明において、粘度はブルックフィールド粘度計により測定した値である(以下、同様)。
【0027】
また、上記ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとして、下記(I)成分と(II)成分との縮合反応生成物である成分を使用することにより、より柔軟性があり、高強度の硬化物を得ることができる。
【0028】
<(I)成分>
(I)成分は、R3SiO1/2単位(式中、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表す)及びSiO4/2単位からなり、SiO4/2単位1モルに対するR3SiO1/2単位のモル数が0.6〜1.2モルであるケイ素原子に結合したヒドロキシ基を含有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンは、R2SiO2/2単位及びRSiO3/2単位(前記各式中、Rは前記の通り)を、SiO4/2単位1モルに対し、それぞれ0〜1.0モル有していてもよい。ケイ素原子に結合したヒドロキシ基の含有量は、0.01〜6質量%であることが好ましい。
【0029】
上記Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、中でもメチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0030】
上記(I)成分のオルガノポリシロキサン自体は、公知の方法により、上記各単位に対応するアルコキシ基含有シラン化合物を有機溶媒中で共加水分解し縮合させて、実質的に揮発成分を含まないものとして得ることができる。例えば、R3SiOMeとSi(OMe)4とを、所望により、R2Si(OMe)2及び/又はRSi(OMe)3と共に、有機溶媒中で共加水分解し縮合させればよい(なお、前記各式中、Rは独立に前記の通りであり、Meはメチル基を表す)。
【0031】
上記有機溶媒としては、共加水分解・縮合反応により生成するオルガノポリシロキサンを溶解することのできるものが好ましく、典型的にはトルエン、キシレン、塩化メチレン、ナフサミネラルスピリット等を挙げることができる。また、本発明においては、前記有機溶媒を使用せず、その代わりに、後記(II)成分であって、23℃における粘度が20〜2,000mm2/sであるジオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0032】
上記(I)成分に係る各単位の含有モル比については、例えば、各単位に対応するメトキシシラン化合物の仕込みモル比を調整することによって適宜設定することができる。
(I)成分中のSiO4/2単位1モルに対する上記R3SiO1/2単位のモル数は0.6〜1.2モルの範囲とする必要があり、好ましくは0.65〜1.15モルの範囲である。前記モル数が0.6モル未満であると本発明組成物から得られる硬化物の柔軟性が劣ることがあり、また、1.2モルを超えると硬化物の強度が劣ったものとなることがある。
【0033】
上記(I)成分を共加水分解・縮合反応により調製する際にケイ素原子に結合したヒドロキシ基が生成する。このヒドロキシ基を含有することは、上記(II)成分との縮合反応のために必要とされるが、その(I)成分中の含有量は0.01〜6質量%、より好ましくは0.03〜3質量%、特に好ましくは0.07〜1.8質量%である。前記ヒドロキシ基の含有量は、共加水分解・縮合反応条件を調整することにより設定することができる。前記含有量が多すぎると、本発明組成物から得られる硬化物の硬度が高くなりすぎて、柔軟性が損なわれることがある。また、含有量が少なすぎると得られる硬化物の強度が不十分となることがある。
【0034】
<(II)成分>
上記(I)成分と縮合反応させる(II)成分は、上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサンであり、特に下記一般式(5)
【化12】


(式中、R6はおのおの独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Yはおのおの独立に上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基、aは1〜3の整数、bは10以上の整数である。)
で表されるジオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【0035】
上記R6としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
【0036】
上記ジオルガノポリシロキサンの末端基である官能基Yとしては、上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と縮合反応するものであれば、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基;及びメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;N,N−ジメチルアミノキシ基、N,N−ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等の加水分解性基が挙げられ、中でも好ましくはヒドロキシ基、アルコキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。
【0037】
また、bは10以上の整数であるが、上記ジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が300,000mm2/s以下、好ましくは100〜100,000mm2/sの範囲の流体となる程度の数であることが好ましい。
【0038】
上記一般式(5)で表されるジオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、好ましくは一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンである。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0039】
<(I)成分と(II)成分との縮合反応>
本発明組成物の(I)成分と(II)成分の縮合反応生成物は、縮合反応生成物中にヒドロキシ基が残存するように反応させればよく、好ましくは上記(I)成分100質量部に対して、上記(II)成分を1〜200質量部、より好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは70〜120質量部の範囲で用いて縮合反応させることにより得ることができる。前記(II)成分の使用量が1質量部未満、又は、200質量部を超えて用いると、柔軟性が損なわれることがある。
なお、上記したように、(I)成分を製造する際に有機溶媒を用いる代わりに上記(II)成分を用いた場合、(I)成分と(II)成分との縮合反応もその時に終了する。従って、この場合、(I)成分製造時の(II)成分の配合量が上記した範囲にあれば、製造後の(I)成分に別の(II)成分を加える必要はない。
【0040】
(I)成分と(II)成分との縮合反応においては、縮合反応触媒を用いることが好ましい。前記縮合反応触媒としては、チタン化合物、アミン化合物、アルカリ金属化合物等が挙げられるが、好ましくはアミン化合物であり、具体的には、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア水等が例示される。この縮合反応触媒の使用量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、(I)成分と(II)成分の合計100質量部に対して、通常、0.05〜3.0質量部程度でよい。
【0041】
また、縮合反応温度は、特に限定されるものではないが、通常、1〜120℃、好ましくは10〜80℃の範囲とすればよい。反応時間も特に限定されないが、0.5〜12時間程度である。
【0042】
縮合反応終了後は、必要に応じて、溶媒及び/又は未反応のオルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサン、縮合反応触媒等を留去しても差し支えない。また、更に縮合反応生成物の粘度を調整するために、末端がトリメチルシロキシ基、ビニル基等で封鎖されたオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の低分子環状シロキサン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、流動パラフィン、イソパラフィン、アクリル酸エステル等の光反応性希釈剤等を添加してもよい。前記粘度調整のため添加される成分としては、23℃における粘度が5〜1,000mm2/s程度のものを使用することが有効である。
【0043】
[放射線重合性官能基含有オルガノポリシロキサンの合成方法]
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させて放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを合成する方法は、本発明を特徴づける最も重要な反応である。
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させる場合、アミンに対してヒドロキ基が過剰となるように反応させることが好ましく、具体的にはヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーのヒドロキシシリル基1モルに対して放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンのアミンの割合が、0.5〜1モル、特に0.7〜0.95モルとすることが好ましい。
【0044】
放射線重合性官能基含有オルガノポリシロキサンを合成するにあたって、触媒を必要としないが、その反応速度を促進させる点から、加熱下で行うことが好ましい。反応温度は30〜150℃、より好ましくは50〜100℃である。30℃より低い場合は反応が進行しにくく、150℃より高い場合は生成した放射線重合性官能基が重合してしまう可能性がある。
また、必要に応じて、有機溶媒を使用しても差し支えない。有機溶媒としては活性水素を持たない有機溶媒が好ましい。その中でもトルエンなどの芳香族炭化水素系、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系が好ましい。有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本反応を行うにあたって、生成する放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンを安定化する目的から、重合禁止剤を用いることが好ましい。使用する重合禁止剤は一般に市販されているものでよく、その中でもヒンダードフェノール系の化合物が特に好ましい。添加量は一般的な重合禁止剤を用いる際の添加量で問題なく、例えば、放射線重合性官能基含有オルガノシリルアミンに対して0.001〜1.0質量%が好ましい。
反応後は、生成したアンモニアを除去するため、加熱下で減圧処理をすることが好ましい。
更に、縮合反応生成物の粘度を調整するために、末端がトリメチルシロキシ基やビニル基等で封鎖されたオルガノポリシロキサン又はオクタメチルシクロテトラシロキサン等の低分子環状シロキサン;脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;流動パラフィン;イソパラフィン;アクリル酸エステル等の光反応性希釈剤等を添加してもよい。
【0046】
上記のようにして得られた放射線重合性官能基含有オルガノポリシロキサンは、電気・電子部品用等のコーティング剤として有用な放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物のベースポリマーとして用いられ、従って、本発明は、かかる放射線重合性官能基含有オルガノポリシロキサンを含む放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
この場合、このオルガノポリシロキサン組成物には、光開始剤等を添加することができる。
【0047】
[光開始剤]
光開始剤は、放射線で硬化させるために必要な添加剤である。一般的に、上で得られた放射線重合性官能基含有オルガノポリシロキサン100質量部当たり、0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部の量で使用されることが望ましい。0.01質量部よりも少ないと、光開始剤としての能力が十分に発揮されず、また10質量部よりも多量に使用されると、柔軟性が損なわれる等の不都合を生じることがある。
【0048】
光開始剤としては、これに限定されるものではないが、以下のものを例示することができる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
ベンゾインとその誘導体、ベンゾインアクリルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルとその誘導体、芳香族ジアゾニウム塩、アントラキノンとその誘導体、アセトフェノンとその誘導体、ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物、ベンゾフェノンとその誘導体
【0049】
[その他の成分]
本発明組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、各種充填剤、添加剤を配合することもでき、一般に公知の充填剤、添加剤等を添加・配合しても差し支えない。充填剤としては、煙霧状シリカ、湿式シリカなどが挙げられるが、表面硬化のみで深部硬化性が必要とならない用途では粉砕シリカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛など放射線を通しにくい充填剤も使用できる。その他、ポリエーテル類等のチクソ性向上剤、防かび剤、抗菌剤が挙げられる。
【0050】
[オルガノポリシロキサン組成物の用途]
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、従来放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物が使用されている用途、特には電気・電子部品及びそれらの回路のコーティング剤やフラットパネルディスプレイ用シール剤等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」は特に明示しない限り、質量部及び質量%を示す。
【0052】
[放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンの合成例]
アクリル酸カリウム220部、ジメチルホルムアミド200部、トルエン200部、ビス−t−ブチルヒドロキシトルエン2.7部を、温度計、水冷コンデンサー、滴下ロートを備えたガラス製の1Lセパラブルフラスコに収め、140℃で加熱し、トルエンとアクリル酸カリウムとに含まれる水を留出させ、反応系から除去した。その後、温度を120℃に下げ、反応系に1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン230部を滴下投入した。ガスクロマトグラフィーで反応追跡を行いながら、撹拌下、120℃で加熱還流した。3時間後、原料のシラザン由来のピークが完全に消失し、新たに生成物由来のピークが出現したことをGC(ガスクロマトグラフィー)により確認して反応終了とした。その後、生成した塩化カリウムを濾別し、減圧下で反応溶剤を留去させることで1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン淡黄色液体を得た。
【0053】
[実施例1]
温度計、撹拌棒、還流冷却管及び窒素導入管を備えた四つ口セパラブルフラスコに23℃における粘度が20,000mm2/sで末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100部と1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.7部、トルエン40部を収め、70℃で8時間反応後、減圧下で反応溶剤を留去させた。
【0054】
[実施例2]
温度計、撹拌棒、還流冷却管及び窒素導入管を備えた四つ口セパラブルフラスコに、(I)成分として、(CH33SiO1/2単位及びSiO4/2単位からなり、(CH33SiO1/2単位/SiO4/2単位(モル比)=0.74、ケイ素原子に結合したヒドロキシ基含有量が1.62%であるオルガノポリシロキサンを固形分が50%となるようにトルエンに溶解した溶液100部と、(II)成分として、23℃における粘度が20,000mm2/sで末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン50部とを、均一に撹拌混合した後、アンモニア水0.5部を滴下して20℃で3時間縮合反応を行った。次いで、120℃に加熱しながら、トルエン及び低分子量副生成物を除去し、固形分が50%となるように調整した。その後、1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン4.5部を添加し、70℃で8時間反応後、減圧下で反応溶剤を留去し、固形分が70%となるように調整した。
【0055】
[実施例3]
実施例2の粘度調整として、70℃で8時間反応後、アクリル酸ラウリル25部を添加し、反応溶剤のトルエンを減圧下で完全留去した以外は、実施例2と全く同様にして調製した。
【0056】
[比較例1]
実施例1の1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの代わりにアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン10部を添加した以外は、実施例1と全く同様に反応させた。
【0057】
[比較例2]
実施例1の1,3−ビス(アクリロイルオキシメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンの代わりにアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン10部を添加し、更に触媒として錫オクトエート0.5部を添加した以外は、実施例1と全く同様にして反応させた。
【0058】
[比較例3]
温度計、撹拌棒、還流冷却管及び窒素導入管を備えた四つ口セパラブルフラスコに23℃における粘度が20,000mm2/sで末端がシラノール基で封鎖されたポリジメチルシロキサン100部、トリエチルアミン0.5部、トルエン100部を収め、室温で撹拌を行いながらアクリロイルオキシプロピルジメチルクロロシシラン0.9部を滴下した。滴下終了後、70℃で3時間反応を行った後、冷却した。その後、生成した白色沈殿物を濾別し、減圧下でトルエンを留去させた。
【0059】
上記で得られた各反応物(実施例1〜3及び比較例1〜3)の粘度を確認した。更に、各反応物を70℃で7日間密封保管後にも粘度を確認した。粘度は、JIS K−6251に準拠してB型回転粘度計(東機産業製)で測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
上記で得られた各反応物を70℃で7日間密封保管すると、比較例2の反応物は縮合触媒を含有しているため、ゲル化した。また、比較例3では、沈殿物を濾過する工程が必要となった。
更に、上記で得られた各反応物(実施例1〜3及び比較例1)に光開始剤ジエトキシアセトフェノンを上記反応物100部に対して2部を配合し、組成物を調製した。
【0062】
上記で得られた各組成物を3mm厚のシートに成形し、UV照射装置(日本電池社製コンベアタイプ)により、高圧水銀灯(80W/cm)、距離10cm、速度1m/minで3回紫外線照射し、硬化させた。このもののゴム物性を評価した。
(1)硬さ
JIS K−6253に準拠して硬化物のデュロメータ硬度A(Duro.A)を測定した。
(2)切断時伸び
JIS K−6251に準拠して硬化物の切断時伸び(%)を測定した。
(3)引っ張り強さ
JIS K−6251に準拠して硬化物の引張り強さ(MPa)を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとを反応させることを特徴とする放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンが、下記一般式(1)及び/又は下記一般式(2)で表される構造を有する化合物である請求項1記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化1】


(式中、Xは炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R2、R3は水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、m、nは0,1又は2である。)
【請求項3】
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンが、下記一般式(3)で表される請求項2記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化2】


(式中、Xは炭素原子数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R2はおのおの独立に水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基である。)
【請求項4】
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーが、下記一般式(4)で表されるオルガノポリシロキサンポリマーである請求項1〜3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化3】


(式中、R5は独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、kは10以上の整数である。)
【請求項5】
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーが、下記(I)成分と(II)成分との縮合反応生成物である請求項1〜3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
(I)R3SiO1/2単位(式中、Rは独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜6の1価炭化水素基を表す)及びSiO4/2単位を有し、SiO4/2単位1モルに対するR3SiO1/2単位のモル数が0.6〜1.2モルであるケイ素原子に結合したヒドロキシ基含有オルガノポリシロキサン
(II)上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基含有シリル基で分子鎖末端が封鎖されたジオルガノシロキサンポリマー
【請求項6】
前記(II)成分が、下記一般式(5)で表されるオルガノシロキサンポリマーである請求項5記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【化4】


(式中、R6はおのおの独立に非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基、Yはおのおの独立に上記(I)成分のケイ素原子に結合したヒドロキシ基と反応可能な官能基、aは1〜3の整数、bは10以上の整数である。)
【請求項7】
ヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーのヒドロキシシリル基1モルに対して放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンのアミンの割合が、0.5〜1モルである請求項1〜6のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項8】
放射線重合性官能基を含有するオルガノシリルアミンとヒドロキシシリル基を有するオルガノシロキサンポリマーとの反応温度が30〜150℃である請求項1〜7のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の方法で得られた放射線重合性官能基を含有するオルガノポリシロキサンを含む放射線硬化型オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項10】
更に、光開始剤を含有し、紫外線硬化型である請求項9記載のオルガノポリシロキサン組成物。

【公開番号】特開2010−18727(P2010−18727A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181258(P2008−181258)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】