説明

放熱構造および表示装置

【課題】熱伝達性能を高めることが可能な放熱構造およびこれを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】高温部と低温部との間に放熱部材を備え、放熱部材は、弾力性材料よりなるクッション部と、クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部および低温部の両方に接触している熱伝達部とを備えた放熱構造。表示素子を含む高温部と低温部との間に放熱部材を備え、放熱部材は、弾力性材料よりなるクッション部と、クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部および低温部の両方に接触している熱伝達部とを備えた表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品や発光素子などが発生する熱を放熱または冷却するための放熱構造およびこれを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や発光素子などは動作時に大きな熱を発生するので、高温による特性劣化などを回避するため、発生した熱を放散させ冷却する必要がある。例えば特許文献1では、液晶表示装置において、LED(Light Emitting Diode)光源が実装された回路基板の裏面に、放熱部材として熱伝導性の両面テープを貼り付けて下フレームに固定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−163620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来構成では、熱源である回路基板と放熱部材、及び、1次放熱部材と2次放熱部材(1次放熱部材および2次放熱部材が存在する場合には)との間に加圧、もしくは粘着性のある部材を介在させることにより、両者の接触を確保することが、熱伝達性能を高める上で重要である。しかしながら、加圧や接着の構造次第では両者の間に隙間が発生し、熱伝達効率が低下するという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、熱伝達性能を高めることが可能な放熱構造およびこれを備えた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による放熱構造は、高温部と低温部との間に放熱部材を備え、放熱部材は、弾力性材料よりなるクッション部と、クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部および低温部の両方に接触している熱伝達部とを備えたものである。
【0007】
本開示の表示装置は、表示素子を含む高温部と低温部との間に放熱部材を備え、放熱部材は、弾力性材料よりなるクッション部と、クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部および低温部の両方に接触している熱伝達部とを備えたものである。
【0008】
本開示の放熱構造、または本開示の表示装置では、クッション部の弾力性により、熱伝達部と高温部との接触、および熱伝達部と低温部との接触が確保され、熱伝達部を介して高温部から低温部へと熱が伝達される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の放熱構造、または本開示の表示装置によれば、放熱部材が、弾力性材料よりなるクッション部の表面の少なくとも一部に熱伝達部を有し、この熱伝達部が高温部および低温部の両方に接触しているようにしたので、クッション部の弾力性により、熱伝達部が確実に高温部および低温部に接触することを保障し、熱伝達部による熱伝達効率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施の形態に係る放熱構造の構成を概略的に表す図である。
【図2】図1に示した放熱部材の外観を表す斜視図である。
【図3】図1に示した放熱構造の変形例を表す図である。
【図4】変形例1に係る放熱構造の構成を概略的に表す図である。
【図5】変形例2に係る放熱構造の構成を概略的に表す図である。
【図6】変形例3ないし6に係る放熱部材の外観を表す斜視図である。
【図7】図6に示した放熱部材の潰れた後の形状を表す斜視図である。
【図8】変形例7に係る放熱部材の外観を表す斜視図である。
【図9】図1に示した放熱構造を有する表示装置を前面側から見た構成を表す斜視図である。
【図10】図9のX−X線における断面図である。
【図11】図1に示した放熱構造を有する表示装置を背面側から見た構成を表す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線における断面図である。
【図13】本開示の実施例における実測定系の構成を表す平面図である。
【図14】実施例1の放熱構造を表す断面図である。
【図15】比較例1の放熱構造を表す断面図である。
【図16】比較例2の放熱構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本開示の一実施の形態に係る放熱構造の概略構成を模式的に表したものである。この放熱構造は、表示装置などの各種電子機器の内部に配置された電子部品や発光素子の放熱または冷却に用いられるものであり、高温部10と低温部20との間に放熱部材30を備えている。
【0013】
高温部10は、熱源である電子部品や発光素子(図示せず)が実装されている基板、または、電子部品や発光素子に直接接して、あるいは隣接して配置されている部材である。低温部20は、電子部品や発光素子に対して高温部10および放熱部材30を介在して配置されている部材である。電子部品や発光素子で生じた熱は、まず高温部10に伝わり、更に矢印A1,A2で示したように、高温部10から放熱部材30を介して低温部20に逃がされるようになっている。低温部20は一般的に広い放熱面積を備えており、低温部からの大気などに対する放熱が、熱源を冷却するために重要である。
【0014】
高温部10および低温部20は、ねじや接着剤などにより互いに固定されていることも可能であるし、一方が他方に対して相対移動することも可能である。後者の具体例として、例えば、高温部10が熱により膨張または収縮することにより、矢印A3に示したように、高温部10と低温部20との境界に沿って動く(摺動する)場合が挙げられる。この場合、高温部10と低温部20との境界には、高温部10の相対移動を円滑にするため、隙間Gが設けられていることが望ましい。
【0015】
図2は、図1に示した放熱部材30の外観を表したものである。放熱部材30は、例えば、弾力性材料よりなるクッション部31の表面に、熱伝達部32を有している。熱伝達部32は、高温部10および低温部20の両方に接触している。これにより、この放熱構造では、熱伝達性能を高めることが可能となっている。
【0016】
すなわち、従来では、電子部品等の冷却のため、電気絶縁性を有するが熱伝導性の高い材料、例えばウレタン系材料よりなる放熱シート(または放熱パッド)を設けている。しかしながら、従来の放熱シートはクッション性(弾力性)を変えるために材料の組成を変える必要があり、熱伝導率と独立してクッション性を調整することはできなかった。また、従来の放熱シートにクッション性を持たせるには、内部に空気を含ませる必要があり、熱伝導率が低くなってしまっていた。
【0017】
これに対して、本実施の形態の放熱部材30では、クッション性を主な役割として担うクッション部31と、熱伝達を主な役割として担う熱伝達部32とを分離することにより、クッション性と熱伝達性とをそれぞれ独立に制御することが可能となる。クッション部31のクッション性により、熱伝達部32が確実に高温部10および低温部20に接触することを保障し、熱伝達部32による熱伝達効率を高めることが可能となる。なお、クッション部31のクッション性は、例えば、25%圧縮荷重などにより調整することが可能である。
【0018】
このようなクッション部31は、ゴムシート,ウレタンフォーム(例えば、株式会社ロジャースイノアック製「PORON(登録商標)」)などの弾力のある材質により構成されている。クッション部31の断面形状については、例えば図2に示した楕円のほか、後述する変形例3〜7のように様々な変形が可能である。クッション部31の長さは必要に応じて決めることが可能である。
【0019】
また、クッション部31は、クッション性と熱伝導性とを併せ持つ材料、例えば、上述した熱伝導性の高い材料、例えばウレタン系材料よりなる放熱シートなどにより構成されていることも可能である。これにより、図3に示したように、熱伝達部32を介した放熱経路(矢印A1,A2)と、クッション部31を介した放熱経路(矢印A4)とが形成され、熱伝達性能を更に向上させることが可能となる。
【0020】
熱伝達部32は、例えば、グラファイトシート、または銅(Cu)箔あるいはアルミニウム(Al)箔などの高熱伝導部材により構成されている。熱伝達部32は、例えば両面接着テープ(図示せず)によりクッション部31に貼り付けられている。
【0021】
熱伝達部32の表面には、表面摩擦抵抗を小さくする被覆層33(図2参照。)が設けられていることが好ましい。被覆層33としては、例えば、厚み0.1mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムを熱伝達部32の表面に貼り合わせることが可能である。なお、被覆層33は、図2以外では図示省略している。
【0022】
この放熱構造は、例えば次のようにして製造することができる。クッション部31および熱伝達部32を用意し、クッション部31の周囲に熱伝達部32を巻き付け、両面接着テープを用いて貼り合わせることにより、放熱部材30を形成する。次いで、この放熱部材30を、高温部10と低温部20との間に設置する。
【0023】
この放熱構造では、電子部品や発光素子で生じた熱は、まず高温部10に伝わり、更に矢印A1,A2で示したように、高温部10から放熱部材30を介して低温部20に逃がされる。ここでは、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触、および熱伝達部32と低温部20との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。
【0024】
また、高温部10が矢印A3方向に摺動する場合には、放熱部材30は、高温部10に追随して摺動しつつ、高温部10と低温部20との両方に接触することにより熱伝達を促進する。すなわち、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触、および熱伝達部32と低温部20との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。よって、高温部10の摺動性を阻害することなく、熱伝達および放熱が行われる。
【0025】
これに対して従来では、被冷却部材と放熱シートとの確実な接触のためにビスなどによる加圧固定を行っており、それは必然的に位置自由度を損なうことを意味していた。そのため、摺動が発生する箇所では、位置自由度の確保のために充分な加圧や接着が出来ず、熱伝達効率が悪化しており、位置自由度(摺動性)と熱伝達効率との両立はできなかった。
【0026】
このように本実施の形態では、放熱部材30が、弾力性材料よりなるクッション部31と、クッション部31の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部10および低温部20の両方に接触している熱伝達部32とを備えるようにしている。よって、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32が確実に高温部10および低温部20に接触することを保障し、熱伝達部32による熱伝達効率を高めることが可能となる。
【0027】
また、高温部10が熱により伸び縮みして高温部10および低温部20が相対移動(摺動)する場合にも熱伝達性能を確保することが可能となり、位置自由度(摺動性)と熱伝達効率との両立が可能となる。
【0028】
特に、電子部品や発光素子などの熱源を含む高温部10が摺動する場合には、熱源の放熱効率が向上し、より高エネルギーで運用可能になり、機器の性能向上が可能となる。あるいは、熱源の個数を減らし、高エネルギーの熱源を用いることが可能となり、コスト低減が可能となる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、熱伝達部32がクッション部31の表面の全部に設けられている場合について説明したが、熱伝達部32は、クッション部31の表面の少なくとも一部(高温部10または低温部20に接触する領域、または押圧により接触しうる領域)に設けられていれば足りる。以下の変形例1,2は、熱伝達部32がクッション部31の表面の一部に設けられている場合である。
【0030】
(変形例1)
図4は、変形例1に係る放熱構造の概略構成を表したものである。本変形例は、二つのクッション部31A,31Bを設け、熱伝達部32を、一方のクッション部31Aの高温部10側の表面と、他方のクッション部31Bの低温部20側の表面との間に、S字状に設けるようにしたものである。特に、寸法が小さいことにより、クッション部31A,31Bの周囲に熱伝達部32を巻き付けることが困難な場合に好適であり、熱伝達部32が剥がれてしまうのを抑えることが可能となる。このことを除いては、この放熱構造は上記実施の形態と同様の構成、作用および効果を有し、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0031】
この放熱構造では、電子部品や発光素子(図示せず)で生じた熱は、まず高温部10に伝わり、更に矢印A5で示したように、高温部10から放熱部材30を介して低温部20に逃がされる。ここでは、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触、および熱伝達部32と低温部20との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。
【0032】
また、高温部10が矢印A3方向に摺動する場合には、放熱部材30は、高温部10に追随して摺動しつつ、高温部10と低温部20との両方に接触することにより熱伝達を促進する。すなわち、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触、および熱伝達部32と低温部20との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。よって、高温部10の摺動性を阻害することなく、熱伝達および放熱が行われる。
【0033】
(変形例2)
図5は、変形例2に係る放熱構造の概略構成を表したものである。本変形例は、熱伝達部32の一端がクッション部31の高温部10側の表面を覆い、熱伝達部32の他端が両面接着テープなどの固定部34により低温部20に固定されているものである。特に、変形例1と同様に、寸法が小さいことにより、クッション部31A,31Bの周囲に熱伝達部32を巻き付けることが困難な場合に好適であり、熱伝達部32が剥がれてしまうのを抑えることが可能となる。このことを除いては、この放熱構造は上記実施の形態と同様の構成、作用および効果を有し、上記実施の形態と同様にして製造することができる。
【0034】
この放熱構造では、電子部品や発光素子(図示せず)で生じた熱は、まず高温部10に伝わり、更に矢印A6で示したように、高温部10から放熱部材30を介して低温部20に逃がされる。ここでは、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。
【0035】
また、高温部10が矢印A3方向に摺動する場合には、放熱部材30は、高温部10に追随して摺動しつつ、高温部10と低温部20との両方に接触することにより熱伝達を促進する。すなわち、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と高温部10との接触、および熱伝達部32と低温部20との接触が確保され、熱伝達部32を介して高温部10から低温部20へと熱が伝達される。よって、高温部10の摺動性を阻害することなく、熱伝達および放熱が行われる。
【0036】
なお、図示しないが、熱伝達部32の一端がクッション部31の低温部20側の表面を覆い、熱伝達部32の他端が両面接着テープなどの固定部34により高温部10に固定されていてもよい。
【0037】
(変形例3ないし6)
図6は、変形例3ないし6に係る放熱部材30の外観を表したものである。放熱部材30(具体的にはクッション部31)の断面形状は、図2および図6(B)に示した楕円のほか、図6(A)に示した円、図6(C)に示した長方形などが可能である。図6(D)に示したように、長方形の中央に長方形の孔31Cを設けた角筒、または、図6(E)に示したように、円の中央に正方形の孔31Cを設けた円筒なども可能である。
【0038】
熱伝達性の向上のためには、高温部10と放熱部材30、及び、低温部20と放熱部材30との接触面積を広くすることが有効である。そのため、放熱部材30にかかる圧力を考慮し、所定の圧力がかかった際に最も接触面積が大きくなるような形状にて、クッション部31を構成することが望ましい。本変形例では、クッション部31の形状の調整により、圧力による潰れ量や、潰れた後の形状をコントロールすることが可能となる。
【0039】
図7は、図6に示した放熱部材30(クッション部31)の潰れた後の形状を表したものである。図6(A)ないし図6(C),図6(E)から分かるように、楕円,円または中空の円とした場合には、長方形の場合よりも潰れ量を大きくすることが可能である。また、図6(C)および図6(D)を比較すると、中空の長方形の場合には、中実の長方形の場合よりも潰れ量を大きくすることが可能となることが分かる。
【0040】
(変形例7)
図8は、変形例7に係る放熱部材30の外観を表したものである。本変形例は、放熱部材30(具体的にはクッション部31)の断面形状を、長方形の両側面に切欠き31Dを設けたI字形としたものである。本変形例では、クッション部31の切欠き31Dの形状や大きさの調整により、変形例3ないし6と同様に、圧力による潰れ量や、潰れた後の形状をコントロールすることが可能である。
【0041】
(適用例)
以下、上述した実施の形態で説明した放熱構造の適用例について説明する。適用例1は、この放熱構造を液晶表示装置のバックライト内部に設けた場合である。適用例2は、この放熱構造を液晶表示装置の回路基板の裏側に設けた場合である。
【0042】
(適用例1)
図9は、図1に示した放熱構造を有する表示装置(テレビジョン装置)を前面側から見た構成を表したものである。この表示装置1は、液晶表示パネルよりなる本体部2をスタンド3により保持した構成を有している。
【0043】
図10は、図9のX−X線における断面構成を表したものである。この表示装置1は、前面側(視聴者側)から順に、前面板41,液晶セル42、光学シート43,反射部材44,導光板45および熱源46,反射シート47,ヒートスプレッダー48,バックシャーシ49を有している。ヒートスプレッダー48とバックシャーシ49との間に、上記実施の形態の放熱部材30が配置されている。
【0044】
前面板41は、液晶セル42の強度を確保するためのものであり、例えばガラス板により構成されている。光学シート43は、拡散シートや輝度向上フィルムなどを含んでいる。反射部材44は、光学シート43等を保持するための枠状の部材(いわゆるミドルシャーシ)であり、白色ポリカーボネートなど反射率の高い樹脂により構成されている。導光板45は、例えばアクリル(PMMA)により構成されている。熱源46は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子により構成されている。ヒートスプレッダー48は、例えばアルミニウム(Al)により構成されている。バックシャーシ49は、例えばアルミニウム(Al)板により構成されている。
【0045】
ここで、ヒートスプレッダー48は、上記実施の形態における高温部10の一具体例に対応する。一方、バックシャーシ49は、上記実施の形態における低温部20の一具体例に対応する。
【0046】
また、熱源46,ヒートスプレッダー48および反射部材44は、導光板45に対して固定されており、導光板45の膨張収縮に応じて摺動する。よって、高温部10は、低温部20との境界に沿って矢印A3方向に摺動する。ヒートスプレッダー48とバックシャーシ49との間には、摺動を容易にするため、例えば0.2mm〜0.3mmの隙間Gが設けられている。
【0047】
放熱部材30は、例えば、ヒートスプレッダー48に設けられた放熱部材配設用の凹部48Aに収容されている。また、放熱部材30は、脱落防止のため、凹部48Aの底面に両面接着テープ(図示せず)等で貼られていてもよい。
【0048】
この表示装置では、熱源46で生じた熱は、まずヒートスプレッダー48(高温部10)に伝わり、更に矢印A1,A2で示したように、ヒートスプレッダー48(高温部10)から放熱部材30を介してバックシャーシ49(低温部20)に逃がされる。ここでは、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32とヒートスプレッダー48(高温部10)との接触、および熱伝達部32とバックシャーシ49(低温部20)との接触が確保され、熱伝達部32を介してヒートスプレッダー48(高温部10)からバックシャーシ49(低温部20)へと熱が伝達される。
【0049】
また、ヒートスプレッダー48(高温部10)が矢印A3方向に摺動すると、放熱部材30は、ヒートスプレッダー48(高温部10)に追随して摺動しつつ、ヒートスプレッダー48(高温部10)とバックシャーシ49(低温部20)との両方に接触することにより熱伝達を促進する。すなわち、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32とヒートスプレッダー48(高温部10)との接触、および熱伝達部32とバックシャーシ49(低温部20)との接触が確保され、熱伝達部32を介してヒートスプレッダー48(高温部10)からバックシャーシ49(低温部20)へと熱が伝達される。よって、ヒートスプレッダー48(高温部10)の摺動性を阻害することなく、熱伝達および放熱が行われる。
【0050】
(適用例2)
図11は、図1に示した放熱構造を有する表示装置(テレビジョン装置)を背面側から見た構成を表したものである。本体部2の背面はリアカバー2Aで覆われている。リアカバー2Aの内側には、バックシャーシ49(図10参照)の裏側に、電源基板や信号基板などの回路基板50が設けられている。
【0051】
図12は、図11のXII−XII線における断面構成を表したものである。回路基板50の表面(A面)にはIC(Integrated Circuit)チップなどの電子部品51が実装されている。回路基板50の裏面(B面)とバックシャーシ49との間には、上記実施の形態の放熱部材30が配置されている。
【0052】
ここで、回路基板50は、上記実施の形態における高温部10の一具体例に対応する。一方、バックシャーシ49は、上記実施の形態における低温部20の一具体例に対応する。
【0053】
回路基板50は、例えば図11に示したように四隅でビス52によりバックシャーシ49に固定されており、高温部10または低温部20の相対移動(摺動)はほとんど生じない。放熱部材30は、脱落防止のため、回路基板50に実装された電子部品51の直下において、回路基板50の裏面またはバックシャーシ49に両面接着テープ(図示せず)等で貼られていてもよい。
【0054】
この表示装置では、電子部品51で生じた熱は、まず回路基板50(高温部10)に伝わり、更に矢印A1,A2で示したように、回路基板50(高温部10)から放熱部材30を介してバックシャーシ49(低温部20)に逃がされる。放熱部材30が存在しない場合、ビス52による固定箇所から距離が遠い箇所では、場合によっては隙間が開き、高温部10から低温部20への熱伝達が低下することが考えられる。それに対して放熱部材30が存在する場合には、クッション部31のクッション性により、熱伝達部32と回路基板50(高温部10)との接触、および熱伝達部32とバックシャーシ49(低温部20)との接触が確保され、熱伝達部32を介して回路基板50(高温部10)からバックシャーシ49(低温部20)へと熱が伝達される。よって、ビス52と電子部品51との距離が遠い場合にも、放熱部材30と回路基板50(高温部10)またはバックシャーシ49(低温部20)との接触面積が確保され、放熱効率が向上する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0056】
(実施例1)
上記実施の形態の放熱構造を作製した。まず、図13に示したように、熱源であるLED11を光源基板(図示せず)に実装し、この光源基板をヒートスプレッダー(光源基板の冷却部材)12に取り付けて高温部10を形成した。LEDの発熱量は約7.2Wであった。また、アルミニウム板よりなる低温部20を用意した。
【0057】
次いで、断面楕円形のウレタンよりなるクッション部31と、グラファイトシートよりなる熱伝達部32とを用意した。熱伝達部32の表面には、表面の接触抵抗の調整のため、被覆層33として、厚みが0.05mm程度のPETフィルムを付けた。クッション部31の周囲に熱伝達部32を巻き付け、両面接着テープ(図示せず)で貼り付けて、放熱部材30を形成した(図2参照。)。
【0058】
そののち、高温部10を、アルミニウム板よりなる低温部20の上に配置した。その際、図14に示したように、高温部10と低温部20との間に放熱部材30を挟んだ。高温部10,低温部20および放熱部材30は互いに固定されていなかった。すなわち、高温部10は、矢印A3に示したように、高温部10と低温部20との境界に沿って動く(摺動する)ことが可能であった。
【0059】
(比較例1)
放熱部材を用いず、図15に示したように、LED111を実装した光源基板をヒートスプレッダー112に取り付けて高温部110を形成し、この高温部110と低温部120との間に断熱部材(図示せず)を用いて0.5mm程度の隙間140を空けた。このことを除いては、実施例1と同様にして放熱構造を作製した。
【0060】
(比較例2)
放熱部材を用いず、図16に示したように、高温部110をビス150を用いて低温部120に固定した。このことを除いては、実施例1と同様にして放熱構造を作製した。
【0061】
(評価)
得られた実施例1および比較例1,2の放熱構造について、六か所の測定点1〜6の温度と平均温度(単位はいずれも℃)とを調べた。その結果を表1に示す。なお、環境温度は25℃換算とした。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から分かるように、高温部10と低温部20との間に放熱部材30を配置した実施例1では、高温部110と低温部120との間に隙間を空けた比較例1に比べて、平均温度が著しく低くなっていた。これは、実施例1では、クッション部31の弾力性により、熱伝達部32が確実に高温部10および低温部20に接触しており、熱伝達部32による熱伝達効率が高くなったことによるものであると考えられる。
【0064】
また、実施例1では、高温部110をビス130により低温部120に固定した比較例2に比べて平均温度が低くなっていた。この理由としては、以下のようなことが考えられる。すなわち、ビスで固定しても、剛性の高い部材同士、すなわちクッション性のない部材同士の結合では、両者の隙間を完全になくすことは出来ないため、間の空気層により熱伝達の低下が起きる。特に、ビス固定箇所から遠い部分では、隙間がより開きやすく、熱伝達の低下も顕著に発生すると考えられる。それに対し、間にクッション性のある放熱部材を挟むことで接触がより確実に確保され、熱伝達率が向上し、ビス固定の場合よりも高い放熱効率を示したと考えられる。
【0065】
すなわち、放熱部材30が、弾力性材料よりなるクッション部31と、クッション部31の表面の少なくとも一部に設けられると共に高温部10および低温部20の両方に接触している熱伝達部32とを備えるようにすれば、熱伝達部32による熱伝達効率を高めることが可能となることが分かった。
【0066】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、本開示の放熱構造を表示装置(テレビジョン装置)に適用した場合について説明したが、本開示の放熱構造は、テレビジョン装置のほか、デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、熱源となる電子部品や発光素子を備えたあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0067】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚みなどは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよい。
【0068】
更に、例えば、上記実施の形態において表示装置(テレビジョン装置)の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。
【0069】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
高温部と低温部との間に放熱部材を備え、
前記放熱部材は、
弾力性材料よりなるクッション部と、
前記クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に前記高温部および前記低温部の両方に接触している熱伝達部と
を備えた放熱構造。
(2)
前記高温部および前記低温部の一方が他方に対して相対移動する
前記(1)記載の放熱構造。
(3)
前記熱伝達部の表面に、表面摩擦抵抗を小さくする被覆層が設けられている
前記(2)記載の放熱構造。
(4)
前記クッション部は、クッション性と熱伝導性とを併せ持つ材料により構成されている
前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の放熱構造。
(5)
前記クッション部は二つ設けられ、
前記熱伝達部は、一方の前記クッション部の前記高温部側の表面と、他方の前記クッション部の前記低温部側の表面との間に、S字状に設けられている。
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の放熱構造。
(6)
前記熱伝達部の一端は、前記クッション部の前記高温部または前記低温部の一方の側の表面を覆い、前記熱伝達部の他端は、前記高温部または前記低温部の他方に固定されている
前記(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の放熱構造。
(7)
表示素子を含む高温部と低温部との間に放熱部材を備え、
前記放熱部材は、
弾力性材料よりなるクッション部と、
前記クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に前記高温部および前記低温部の両方に接触している熱伝達部と
を備えた表示装置。
【符号の説明】
【0070】
10…高温部、20…低温部、30…放熱部材、31,31A,31B…クッション部、32…熱伝達部、33…被覆層、34…固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温部と低温部との間に放熱部材を備え、
前記放熱部材は、
弾力性材料よりなるクッション部と、
前記クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に前記高温部および前記低温部の両方に接触している熱伝達部と
を備えた放熱構造。
【請求項2】
前記高温部および前記低温部の一方が他方に対して相対移動する
請求項1記載の放熱構造。
【請求項3】
前記熱伝達部の表面に、表面摩擦抵抗を小さくする被覆層が設けられている
請求項2記載の放熱構造。
【請求項4】
前記クッション部は、クッション性と熱伝導性とを併せ持つ材料により構成されている
請求項1記載の放熱構造。
【請求項5】
前記クッション部は二つ設けられ、
前記熱伝達部は、一方の前記クッション部の前記高温部側の表面と、他方の前記クッション部の前記低温部側の表面との間に、S字状に設けられている。
請求項1記載の放熱構造。
【請求項6】
前記熱伝達部の一端は、前記クッション部の前記高温部または前記低温部の一方の側の表面を覆い、前記熱伝達部の他端は、前記高温部または前記低温部の他方に固定されている
請求項1記載の放熱構造。
【請求項7】
表示素子を含む高温部と低温部との間に放熱部材を備え、
前記放熱部材は、
弾力性材料よりなるクッション部と、
前記クッション部の表面の少なくとも一部に設けられると共に前記高温部および前記低温部の両方に接触している熱伝達部と
を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−4783(P2013−4783A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135120(P2011−135120)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】