説明

放熱構造

【課題】本発明は、HDDなどの発熱部品から発生した熱を効率良く放熱させ、発熱部品の交換時には容易に交換することが可能な放熱構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による放熱構造は、HDD6を内蔵する映像機器の放熱構造であって、映像機器は、画像表示パネル2の裏面側に着脱可能にHDD6が設置された映像機器本体1と、映像機器本体1の裏面全体を覆い、上部に上部通風孔を設け、HDD6の設置位置に対応する箇所に開口部を形成した背面カバー4と、開口部を覆い吸気通風孔を設けたHDD交換用蓋5と、映像機器本体1、背面カバー4、およびHDD交換用蓋5の各々を組み立てた時、HDD6の左右両側の各々に上下方向に延在する隔壁(8a、8b、12a、12b)とを備え、隔壁(8a、8b、12a、12b)によって吸気通風孔から上部通風孔に至る、HDD6が他の部品と隔離された風路が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品を内蔵する映像機器の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるHDD(Hard Disk Drive)などの発熱部品を内蔵した映像機器などの放熱構造は、背面カバー内に発熱量が大きい発熱部品や他の部品を収納しており、背面カバーの底部や下部に設けられた通風孔から外気(冷気)を導入して発熱量が大きい発熱部品や他の部品を冷却した後に、背面カバーの天面や上部に設けられた通風孔から熱気を排出する構造であった。また、背面カバーに凸形状を形成して発熱部品専用の収納スペースを設け、ファンによって強制冷却する構造もあった。
【0003】
しかし、上記前者の構造では、発熱量が大きいため最も冷却が必要な発熱部品に空気が到達するまでの間に、他の電子回路部品などの発熱部品によって空気が温められ、最も冷却が必要な発熱部品に空気が到達する頃には空気の温度が高くなってしまうため、冷却効率が低下するという問題があった。また、上記後者の構造では、背面カバーが平坦でなくなり、またファンを別途に設ける必要がある。
【0004】
このような問題の対策として、発熱量の大きな発熱部品を、中空部材であり通風路が設けられたスタンド支柱の上部であって、スタンド支柱と隔壁板とで形成された風路中に配置することにより、自然対流による煙突効果によって発熱量の大きな部品を冷却する放熱構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、HDDなどの発熱部品は他の部品に比べて故障しやすいため、発熱部品の交換の容易性が要求されている。例えば、筐体内にスライド構造を備えた収納部を設けてHDDを収容し、HDDの故障など交換が必要なときには、筐体前面から前方へ収納部をスライド移動して引き出すことによって容易にHDDを交換することが可能な構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−40424号公報(第4−7頁、第3、7図)
【特許文献2】特開2002−238008号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の放熱構造では、スタンド支柱は中空であり通風孔を設けているため、強度の低下が問題となり、通風孔を設けているため外観的に見た目が悪くなりやすくなるという問題がある。また、細くて短いスタンド支柱が要求される場合は、スタンド支柱に形成される通風孔の開口率が小さくなるという問題がある。さらに、HDDなどの発熱部品の交換時には、背面カバーを開ける(取り外す)必要があるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の構造では、HDDはスライド構造を備えた収納部に収容されているため交換が容易であるが、収納部内は自然対流が発生しにくく熱がこもりやすくなるという問題がある。また、当該熱をファンによって強制的に冷却する場合では、ファンによる騒音や塵埃の問題が生じるとともにコストアップの要因にもなってしまう。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、HDDなどの発熱部品から発生した熱を効率良く放熱させ、発熱部品の交換時には容易に交換することが可能な放熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明による放熱構造は、発熱部品を内蔵する映像機器の放熱構造であって、映像機器は、表示パネルの裏面側に着脱可能に発熱部品が設置された本体部と、本体部の裏面全体を覆い、上部に上部通風孔を設け、発熱部品の設置位置に対応する箇所に開口部を形成した背面カバーと、開口部を覆い吸気通風孔を設けた蓋と、本体、背面カバー、および蓋の各々を組み立てた時、発熱部品の左右両側の各々に上下方向に延在する隔壁とを備え、隔壁によって吸気通風孔から上部通風孔に至る、発熱部品が他の部品と隔離された風路が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、本体部の裏面全体を覆い、上部に上部通風孔を設け、発熱部品の設置位置に対応する箇所に開口部を形成した背面カバーと、開口部を覆い吸気通風孔を設けた蓋と、本体、背面カバー、および蓋の各々を組み立てた時、発熱部品の左右両側の各々に上下方向に延在する隔壁とを備え、隔壁によって吸気通風孔から上部通風孔に至る、発熱部品が他の部品と隔離された風路が形成されるため、HDDなどの発熱部品から発生した熱を効率良く放熱させ、発熱部品の交換時には容易に交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による映像機器全体を斜め前方から見た外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による映像機器全体を斜め後方から見た外観斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による映像機器全体を後方から見た外観図である。
【図4】本発明の実施形態による映像機器全体を斜め下方から見た分解立体図である。
【図5】本発明の実施形態による映像機器全体を斜め前方から見た分解立体図である。
【図6】本発明の実施形態による映像機器の中央の縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による映像機器全体を斜め前方から見た外観斜視図であり、図2は、映像機器全体を斜め後方から見た外観斜視図である。図1および図2に示すように、画像表示パネル2を有する映像機器本体1(本体部)はスタンド3上に設置されており、画像表示パネル2の裏面は背面カバー4によって覆われている。また、背面カバー4の一部には、HDD(発熱部品)交換用のHDD交換用蓋5(蓋)が設けられている。
【0015】
図3は、本発明の実施形態による映像機器全体を後方から見た外観図であり、図4は、映像機器全体を斜め下方から見た分解立体図である。また、図5は、映像機器全体を斜め前方から見た分解立体図である。
【0016】
なお、図3は、背面カバー4からHDD交換用蓋5を取り外した状態を示しており、画像表示パネル2の裏面側に着脱可能にHDD6が設置される。また、背面カバー4は、映像機器本体1の裏面全体を覆い、上部に上部通風孔を設け、HDD6の設置位置に対応する箇所に開口部を形成している。HDD交換用蓋5は通風孔(吸気通風孔)を設けており、背面カバー4の開口部を覆うように設置される。なお、本実施形態では各通風孔は、図示のように、等長の線状孔が多数並列に配列されて形成されている。
【0017】
図3および図4に示すように、背面カバー4の中央の下部付近はHDD6を配置するために前記開口部が開口した凹形状12となっている。凹形状12の垂直方向(映像機器設置時の上下方向)の両側には立ち壁12a、12b(第1の隔壁)が平行して形成され、立ち壁12a、12bの上部の左右方向には通気可能な(すなわち通風孔が設けられた)上壁12c(壁)が形成されている。また、立ち壁12aにはネジボス11a、11cが、立ち壁12bにはネジボス11b、11dがそれぞれ形成されている。さらに、凹形状12の上部には穴4a〜4cが、下部には穴4d〜4fがそれぞれ形成されている。
【0018】
HDD交換用蓋5には、引っ掛けリブ5a〜5cおよびスナップフィット5d〜5fを形成しており、引っ掛けリブ5a〜5cを穴4a〜4cにそれぞれ嵌合させるとともに、スナップフィット5d〜5fを穴4d〜4fにそれぞれ嵌合させることによって、HDD交換用蓋5が背面カバー4に位置決めされる。当該位置決めの後、HDD交換用蓋5に形成されたネジ締結部位10a〜10dとネジボス11a〜11dとをネジ止めすることによって、HDD交換用蓋5が背面カバー4に固定される。また、HDD交換用蓋5は、背面カバー4の開口部と対向する面(第1の面)と、第1の面の下辺において当該第1の面と垂直方向の面(第2の面)とからなるL字形状であり、少なくとも第2の面に(本実施形態では第1、第2の面の両方に)通風孔が形成されている。
【0019】
なお、HDD交換用蓋5の裏面側(外側)の面は、背面カバー4の裏面側(外側)の面と同一平面としてもよい。すなわち、HDD交換用蓋5の開口部と対向する面は、背面カバー4の背面側の面と同一平面としてもよい。当該同一面とすることによって、映像機器本体1の裏面全体がフラットとなり、映像機器本体1を壁掛けして設置することが可能となる。
【0020】
HDD6は、HDD保持板金7によって保持されている。また、HDD保持板金7は、映像機器本体1が有する基板保持用構造板金8に形成された切り起こし8c、8dに引っ掛けた後に、ネジ締結部位9a〜9dと基板保持用構造板金8とをネジ止めすることによって固定される。このとき、HDD6と基板保持用構造板金8との間、およびHDD6と背面カバー4との間には所定の間隔で空間が確保されている。
【0021】
図4に示すように、映像機器本体1の裏面の中央の上部には、立ち壁12a、12b(第1の隔壁)のそれぞれと連続するように、立ち壁8a、8b(第2の隔壁)が基板保持用構造板金8(板金)を折り曲げて形成されている。また、立ち壁8a、8bの背面カバー4側には、バーリング穴8e、8fがそれぞれ形成されている。
【0022】
図5に示すように、背面カバー4の上部側には、立ち壁12aと連続するように風路用リブ4iが、立ち壁12bと連続するように風路用リブ4jがそれぞれ形成されている。背面カバー4の装着の際において、ネジ締結部位4g、4hとバーリング穴8e、8fとがネジ止めによって固定されるが、このとき、風路用リブ4i、4jと立ち壁8a、8bとは接した状態で保持される。
【0023】
ここで、HDDの配置および交換方法について説明する。図3および図4に示すように、HDD6は、映像機器本体1の中央から下部側であってスタンド3付近に配置されている。当該配置位置は、外部からの衝撃を最も受けにくい安定した位置である。また、HDD6以外の他の発熱部品からの影響も受けにくい位置でもある。さらに、HDD6を映像機器本体1の下部に配置しているため、HDD6の発熱による熱気を、映像機器本体1の下部においてHDD交換用蓋5に設けられた通気孔から導入された外気(冷気)によって、映像機器本体1の上部に設けられた通気孔から排出しやすくなる(HDD6の冷却効率が向上する)。
【0024】
HDD6の交換方法は、HDD交換用蓋5をネジ締結部位10a〜10dからネジを取り外し、スナップフィット5d〜5fを穴4d〜4fから外し、引っ掛けリブ5a〜5cを穴4a〜4cから外すことによって、HDD交換用蓋5を背面カバー4から取り外す。その後、ネジ締結部位9a〜9dからネジを取り外し、HDD保持板金7を切り起こし8c、8dから外すことによって、HDD保持板金7によって保持されたHDD6を基板保持用構造板金8から取り外す。このように、HDD6は、背面カバー4が映像機器本体1に取り付けられた状態で容易に交換可能となる。
【0025】
次に、HDD6の放熱構造について説明する。図4および図5に示すように、HDD6の両側には、背面カバー4に設けられた凹形状12の立ち壁12a、12b(第1の隔壁)が配置されて風路を形成している。また、映像機器本体1の上部側には、基板保持用構造板金8を折り曲げて形成した立ち壁8a、8b(第2の隔壁)と、立ち壁8a、8bのそれぞれと接するように背面カバー8に一体形成された風路用リブ4i、4j(リブ)とによって風路が形成されている。立ち壁8a、8bは、背面カバー4に形成されたネジ締結部位4g、4hと、立ち壁8a、8bに形成されたバーリング穴8e、8fとをネジ止めして固定することによって、立ち壁8a、8bの折り曲げ強度が保たれて風路が崩れないようにしている。上壁12cは、空気の流れを妨げないように通風孔を設けている。上記の構成によって、映像機器本体1、背面カバー4、およびHDD交換用蓋5の各々を組み立てた時、HDD6の左右両側の各々に上下方向に延在する隔壁が形成され、当該隔壁によってHDD交換用蓋5の通風孔(吸気通風孔)から背面カバー4の上部通風孔に至る、HDD6が他の部品と隔離された風路が形成されている。
【0026】
図6は、本発明の実施形態による映像機器本体1の中央の縦断面を示す図である。図中の矢印は、空気の流れ(自然対流)を示している。なお、スタンド3の図示は省略している。図6に示すように、HDD交換用蓋5の裏面(第1の面)側および底面(第2の面)側には通風孔が設けられており、当該通風孔から取り込まれた外気(冷気)は、HDD6と背面カバー4との間およびHDD6と基板保持用構造板金8との間を通ってHDD6を冷却している。HDD6を冷却した後の空気(熱気)は、上壁12cに設けられた通風孔を通り抜け、立ち壁8a、8b(図4)と風路用リブ4i、4j(図5)とによって形成された風路に沿って背面カバー4の上部通風孔から排出される(自然対流による煙突効果)。このように、空気の流れ(自然対流)は、映像機器本体1内の風路に沿って下部から上部へと生じているため、映像機器本体1を壁掛けして設置してもHDD6の冷却が可能となる。
【0027】
以上のことから、映像機器本体1内に風路を形成し、当該風路にHDD6(発熱部品)を設置しているため、HDD6から発生した熱を効率良く放熱させることが可能となる。また、HDD6はHDD交換用蓋5を取り外すことによって交換可能であるため、背面カバー4を取り外すことなく容易にHDD6を交換することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 映像機器本体、2 画像表示パネル、3 スタンド、4 背面カバー、4a〜4 穴、4g,4h ネジ締結部位、4i,4j 風路用リブ、5 HDD交換用蓋、5a〜5c 引っ掛けリブ、5d〜5f スナップフィット、6 HDD、7 HDD保持板金、8 基板保持用構造板金、8a,8b 立ち壁、8c,8d 切り起こし、8e,8f バーリング穴、9a〜9d ネジ締結部位、10a〜10d ネジ締結部位、11a〜11d ネジボス、12 凹形状、12a,12b 立ち壁、12c 上壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を内蔵する映像機器の放熱構造であって、
前記映像機器は、
表示パネルの裏面側に着脱可能に前記発熱部品が設置された本体部と、
前記本体部の裏面全体を覆い、上部に上部通風孔を設け、前記発熱部品の設置位置に対応する箇所に開口部を形成した背面カバーと、
前記開口部を覆い吸気通風孔を設けた蓋と、
前記本体、前記背面カバー、および前記蓋の各々を組み立てた時、前記発熱部品の左右両側の各々に上下方向に延在する隔壁と、
を備え、
前記隔壁によって前記吸気通風孔から前記上部通風孔に至る、前記発熱部品が他の部品と隔離された風路が形成されることを特徴とする、放熱構造。
【請求項2】
前記映像機器は、当該映像機器を設置するためのスタンドをさらに備え、
前記発熱部品は、前記本体部の中央から下部側であって前記スタンド付近に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記隔壁は、
前記背面カバーに設けられた第1の隔壁と、
前記第1の隔壁と連続するように前記本体部に設けられた第2の隔壁と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記第2の隔壁は、前記本体部に設置された板金を折り曲げて形成されることを特徴とする、請求項3に記載の放熱構造。
【請求項5】
前記背面カバーは、各前記第2の隔壁と接するようにリブを設けることを特徴とする、請求項3に記載の放熱構造。
【請求項6】
前記背面カバーは、前記第1の隔壁を左右方向につなぐ通気可能な壁を設けることを特徴とする、請求項3に記載の放熱構造。
【請求項7】
前記蓋は、前記開口部と対向する第1の面と、前記第1の面の下辺において当該第1の面と垂直方向の第2の面とからなるL字形状であり、少なくとも前記第2の面に前記通風孔が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の放熱構造。
【請求項8】
前記蓋の前記開口部と対向する面は、前記背面カバーの背面側の面と同一平面であることを特徴とする、請求項1または7に記載の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−61505(P2011−61505A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209105(P2009−209105)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】