説明

放熱部材、反射部材および照明ユニット

【課題】ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂の高耐熱特性を生かした放熱部材、優れた放熱特性を有する反射部材および照明ユニットを提供する。
【解決手段】放熱部材または反射部材10は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる基材11と、基材11の表面に形成されたニッケル含有膜12と、ニッケル含有膜12の上に形成された銅含有膜13と、を有する。また、照明ユニット1は、この反射部材10と、反射部材10の基材11に取り付けられる発光素子22と、基材11に取り付けられたレンズ部材23と、を有し、基材11の表面の金属膜12、13が、発光素子22の取り付け部位からレンズ部材23まで連続して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱部材、反射部材および照明ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、自動車用ランプリフレクタユニットを開示する。この自動車用ランプリフレクタユニットの反射面は、樹脂製のリフレクタハウジングの表面にアルミニウムを蒸着することで形成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−184915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年LED(Light Emitting Diode)の高輝度化が目覚しく、この高輝度LEDを自動車のヘッドライトなどとして用いることが考えられる。高輝度LEDにより自動車のヘッドライトなどとして必要な光量を得ようとすると、複数の高輝度LEDを用いたり、高輝度LEDに大電流を流したりする必要がある。そのため、高輝度LEDを自動車のヘッドライトなどとして用いた場合には、高輝度LEDの熱を逃がす工夫をしなければならない。
【0005】
一般的に加熱する部材を冷却するためには、放熱フィンを用いる。放熱フィンを設け、放熱フィンと高輝度LEDとを熱的に接続すれば、高輝度LEDを冷却することができる。
【0006】
しかしながら、自動車のヘッドライトなどにおいてはその取付けスペースのサイズに限りがある。また、自動車のデザイン優先で取付けスペースのサイズや形が決定されてしまうため、放熱フィンを追加するスペースが不足したり、スペースがあったとしても、高輝度LEDと低熱抵抗により接続することができない位置であったりする可能性が高い。
【0007】
なお、この放熱性の問題および放熱フィンの追加スペース不足の問題は、自動車のヘッドライトに固有の問題ではなく、高輝度LEDを照明機器などに使用しようとする場合において一般的に生ずる問題である。たとえば既存の街頭などを高輝度LEDのものへ置き換えようとする場合において、既存設備内に十分なスペースを確保できないことはあり得る。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するものであって、高輝度LEDを用いたヘッドライトなどの照明機器に好適な放熱部材を得ることを目的とする。また、本発明は、優れた放熱特性を有する新規な反射部材および照明ユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、上記従来技術の問題を解決するために鋭意研究に励み、リフレクタハウジングなどの基材として、高耐熱特性を有するポリフェニレンサルファイド系樹脂などを用いるとともに、その基材の表面を金属膜で被覆することで、放熱特性に優れたリフレクタハウジングなどを形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第一の態様にしたがえば、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材と、基材の表面に形成されたニッケルリン膜と、ニッケルリン膜の上に形成された銅含有膜と、を有する放熱部材が提供される。なお、基材は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂の替わりに、ポリアミド系樹脂を用いてもよい。また、基材の表面に形成される金属膜としては、上述したニッケルリン膜以外にも、たとえばニッケル膜、ニッケルホウ素膜などがある。以下、これらを総称してニッケル含有膜という。
【0011】
本発明の放熱部材では、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材の表面は、ニッケルリン膜および銅含有膜による金属膜により被覆される。または、ニッケル含有膜および銅含有膜による金属膜により被覆される。したがって、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が有する脆さを改善でき、放熱部材として利用したときの強度を確保することができる。しかも、ポリフェニレンサルファイド系樹脂の表面が銅を含む金属膜により被覆されているので、熱伝達特性が向上する。したがって、ポリフェニレンサルファイド系樹脂をそのまま放熱部材として利用した場合に比べて、放熱部材としての耐熱性を飛躍的に向上できる。
【0012】
また、ポリアミド系樹脂からなる基材の表面は、ニッケル含有膜および銅含有膜による金属膜により被覆される。ポリアミド系樹脂は柔らかくて変形し易い。したがって、被覆ポリアミド系樹脂の基材を金属膜で被覆することで、放熱性が向上し、ポリアミド系樹脂の変形を抑えることができる。
【0013】
また、本発明の放熱部材において、基材の表面部分(表面を含む表層部)には、パラジウム微粒子が分散しているとともに、且つ、ニッケルリン膜若しくはニッケル含有膜は、表面部分のパラジウム微粒子を触媒核として成長したものであってもよい。
【0014】
基材の表面部分にパラジウム微粒子を分散して含有させているので、それを触媒核としてニッケルリン膜などのニッケル含有膜を成長させることができる。その結果、ニッケル含有膜は、基材の内部に食い込んだ状態でしっかりと形成される。そのため、ニッケル含有膜および銅含有膜からなる金属膜は、基材の表面から剥がれ難くなる。また、ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる基材が光源からの輻射熱などによって加熱された状態でも、金属膜が部分的に基材の表面から浮き上がってしまうことを防止でき、良好な耐脆性および耐熱性を長期にわたって維持できる。
【0015】
本発明の第二の態様にしたがえば、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材と、基材の表面に形成されたニッケルリン膜と、ニッケルリン膜の上に形成された銅含有膜と、を有する反射部材が提供される。なお、基材には、ポリフェニレンサルファイド系樹脂の替わりに、ポリアミド系樹脂を用いてもよい。また、基材の表面に形成される金属膜は、ニッケル含有膜であればよく、上述したニッケルリン膜以外にも、たとえばニッケル膜、ニッケルホウ素膜などでもよい。
【0016】
本発明の反射部材では、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材の表面に金属膜が形成することにより、反射面を形成している。しかも、この金属膜は、少なくともニッケルリン膜などのニッケル含有膜および銅含有膜によるものである。したがって、優れた熱伝達特性を有する反射面を形成することができ、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が有する脆性を改善し、且つ、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が有する高耐熱性を生かした反射部材を得ることができる。
【0017】
また、ポリアミド系樹脂からなる基材の表面をニッケル含有膜および銅含有膜による金属膜で被覆することで、放熱性が向上し、ポリアミド系樹脂の変形を抑えることができる。
【0018】
近年、長寿命、省エネルギーの観点から光源としてLEDを用いるランプが登場しており、特に自動車のヘッドライトなどに使用することを考慮した場合には、プラスチック基材には更なる耐熱性が求められる。このような用途では、具体的には、常用耐熱200度以上が必要となる。このような条件を満たす樹脂としては、たとえば、PEI(ポリエーテルイミド)、PES(ポリエーテルサルファイド)、LCP(液晶ポリマー)などが挙げられるが、加工性(成形性)、コスト面などからポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましい。この樹脂としては、たとえばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン6T(PA6T、もしくはポリフタルアミド(PPA))、およびこれらの複合物などがある。
【0019】
また、本発明に係る放熱部材において、基材の表面部分には、パラジウム微粒子が分散しているとともに、且つ、ニッケルリン膜などのニッケル含有膜は、表面部分のパラジウム微粒子を触媒核として成長したものであってもよい。
【0020】
基材の表面部分にパラジウム微粒子を分散して含有させているので、それを触媒核としてニッケル含有膜を成長させることができる。そのため、ニッケル含有膜は、基材の内部に食い込んだ状態でしっかりと形成される。ニッケル含有膜および銅含有膜からなる金属膜は、基材の表面から剥がれ難くなる。また、ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる基材が光源からの輻射熱などにより加熱されている状態でも、金属膜が部分的に基材の表面から浮き上がってしまうことを防止できる。そのため、反射面の鏡面精度を長期にわたって維持することができるとともに、良好な耐脆性および耐熱性を長期にわたって維持することができる。
【0021】
また、本発明に係る放熱部材は、銅含有膜の上に銀含有膜が形成されていてもよい。
【0022】
この構成を採用すれば、反射面の表面が銀含有膜となるので、反射面の表面が銅含有膜である場合に比べて反射率が向上する。
【0023】
また、本発明に係る放熱部材では、銅含有膜の上にニッケル含有膜が形成され、さらにニッケル含有膜の上に銀含有膜が形成されていてもよい。
【0024】
この構成を採用すれば、銀含有膜と銅含有膜との間にはニッケル含有膜が介在する。一般に銀と銅とは混ざりやすく、高温もしくは高温多湿の環境下では銅が銀含有膜へ拡散する。しかし、この構成では、銀含有膜と銅含有膜との間にニッケル含有膜が介在するので、下地の銅含有膜から銀含有膜への銅の拡散を抑制できる。このため、銀含有膜における不純物(銅)の混入を抑制して、銀含有膜本来の高い反射特性を維持することができる。
【0025】
また、本発明に係る放熱部材では、銀含有膜の上に保護膜が形成されていてもよい。
【0026】
この構成を採用すれば、反射面の表面が銀含有膜となることで良好な正反射が得られる。特に、銀含有膜を銀膜とすることで、反射率はより高くなる。しかも、銀含有膜は酸化などにより反射率が低下し易いものであるが、保護膜により被覆されているので、良好な正反射が得られる高い反射率を長期にわたって維持することができる。
【0027】
また、本発明に係る放熱部材では、前記保護膜が、アクリル成分とポリシロキサンの有機−無機ハイブリッド材料、またはポリシロキサンのゾルゲル無機材料からなってもよい。
【0028】
銀膜などの銀含有膜は、アルミニウムなどと比べて反射率が高いものであるが、酸化したり、さびたりし易い。保護膜で被覆することで銀含有膜の酸化やさびの発生を抑制できる。しかも、保護膜を、アクリル成分とポリシロキサンの有機−無機ハイブリッド材料、またはポリシロキサンのゾルゲル無機材料からなる保護膜とすることで、ウェットプロセスにより保護膜を形成できる。金属膜の形成から保護膜の形成を一貫してウェットプロセスとすることが可能になる。それに加えて、これらの材料は、可視光の波長帯域において透明であり、且つ、加熱硬化後にはガラスに近い200度程度の耐熱性を有する。
【0029】
また、本発明に係る放熱部材では、前記保護膜の膜厚が0.1〜10μmであってもよい。
【0030】
保護膜の膜厚が0.1μm未満であると、保護膜によるガスバリア性が低下し、銀含有膜の酸化や腐食を防止する効果が低下してしまう。結果として反射率の経時的な劣化を好適に抑えることが困難となり、保護膜として十分に機能しないものとなってしまう。また、保護膜の膜厚が10μmを越えると、保護膜による光の吸収の影響を無視できなくなる。また、保護膜の膜厚を上記範囲とすることで材料の無駄なく有効な保護膜を形成できるので、材料コストなどの観点からしても上記範囲が望ましい。
【0031】
また、本発明に係る放熱部材では、基材には、発光素子が取り付けられる取り付け部位および放熱フィン部が形成され、ニッケルリン膜などのニッケル含有膜および銅含有膜は、放熱フィン部の表面、および、発光素子の取り付け部位から放熱フィン部まで連続して形成されていてもよい。
【0032】
この構成を採用すれば、放熱フィンを一体的に形成することができる。しかも、発光素子から放熱フィン部までの熱伝導体は、反射膜と同時に形成することができる。
【0033】
また、本発明に係る放熱部材では、基材には、発光素子の取り付け部位と放熱フィン部との間となる部位に貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には、ニッケルリン膜などのニッケル含有膜および銅含有膜による金属膜が形成されていてもよい。
【0034】
この構成を採用すれば、発光素子と放熱フィン部との間では、貫通孔においても熱が伝わる。発光素子と放熱フィン部との間の熱抵抗が下がり、発光素子は効率よく冷却される。
【0035】
また、本発明に係る放熱部材では、基材には、発光素子と放熱フィンとが設けられ、ニッケルリン膜などのニッケル含有膜および銅含有膜は、発光素子の取り付け部位から放熱フィンの取り付け部位まで連続して形成されていてもよい。
【0036】
この構成を採用すれば、放熱フィンを基材に取り付けることで、発光素子から放熱フィン部まで熱が伝達するようになる。しかも、発光素子から放熱フィンまでの熱伝導体は、反射膜と同時に形成することができる。
【0037】
また、本発明に係る放熱部材では、基材には、発光素子の取り付け部位と放熱フィンの取り付け部位との間となる部位に貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には、ニッケルリン膜などのニッケル含有膜および銅含有膜による金属膜が形成されていてもよい。
【0038】
この構成を採用すれば、発光素子と放熱フィンとの間では、基材表面の金属膜および貫通孔の金属膜により熱が伝わる。基材表面の金属膜のみで熱を伝える場合に比べて、発光素子と放熱フィン部との間の熱抵抗が下がり、発光素子は効率よく冷却される。
【0039】
本発明の第三の態様にしたがえば、上述した第二の態様のいずれか1つに記載の反射部材と、反射部材の基材に取り付けられる発光素子と、基材に取り付けられたレンズ部材と、を有し、基材の表面の金属膜が、発光素子の取り付け部位からレンズ部材まで連続して形成されている照明ユニットが提供される。
【0040】
この構成を採用すれば、第二の態様の発明の効果に加えて、発光素子などが発生する熱を、金属膜によりレンズ部材へ伝達することができる。この熱により、レンズ部材は暖められ、レンズ部材の曇りが防止される。
【0041】
また、本発明に係る照明ユニットでは、発光素子が高輝度LEDであり、車両の前照灯として用いられるものであってもよい。
【0042】
この構成を採用すれば、高輝度LEDを用いた車両の前照灯ユニットを形成することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明では、従来技術の問題を解決して、高輝度LEDを用いたヘッドライトなどの照明機器に好適な放熱部材を得ることができる。また、本発明では、優れた放熱特性を有する新規な反射部材および照明ユニットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施例に係る放熱部材、反射部材および照明ユニットを、図面に基づいて説明する。放熱部材および反射部材は、リフレクタハウジングを例として説明する。照明ユニットは、自動車用ランプリフレクタユニットを例に説明する。
【実施例1】
【0045】
図1は、実施例1に係るリフレクタハウジング10を示す断面図である。説明上、図1において、リフレクタハウジング10は、その表面の金属膜の厚さが誇張されている。図2は、リフレクタハウジング10の裏面側の斜視図である。リフレクタハウジング10は、反射部材および放熱部材の一種である。リフレクタハウジング10は、図1に示すように反射面14の奥に高輝度LED22が配設され、自動車用ランプリフレクタユニット1などとして用いられる。自動車用ランプリフレクタユニット1は、照明ユニットの一種であり、車両の前照灯やフォグランプなどとして用いられる。また、このリフレクタハウジング10は、その裏面に放熱フィン部21が一体的に形成されている。
【0046】
図3および図4は、表面改質装置50の装置構成図である。表面改質装置50は、図1中のリフレクタハウジング10を形成するために使用される。図5は、図1中のリフレクタハウジング10の形成工程図である。図6から図8は、各工程における成型状態を示すための図1中のリフレクタハウジング10の部分断面図である。
【0047】
本実施例で製造したリフレクタハウジング10は、図1および図2に示すように、主に、すり鉢状の本体部10aと、本体部10aの底面から突出した突出部10bと、本体部10aの外周面から半径方向外側に互いに平行に延在する複数のフィン21とにより構成されており、それらは一体的に成形されている。本体部10aの内面(前面)10cが反射面14を画成し、突出部10bの底面10dがリフレクタハウジング10を照明モジュールの筐体などに取り付けるための取付面として機能する。
【0048】
本実施例に係るポリマー成形品(基材)11は、図2に示す放熱フィン一体型のリフレクタハウジング10と同様の形状(一回り小さい相似形状)を有する。ポリマー成形品(基材)11は、その全体がNiP、Cuをそれぞれ主成分とする2層が形成された金属膜12,13により被覆される。なお、リフレクタハウジング10の反射面14には、反射率を上げたりするために、NiP、Cu以外の金属膜が更に積層されてもよい。これに対して、リフレクタハウジング10の反射面14以外の表面には、熱が伝達し易くなるように、その全体あるいは一部において、少なくともNiP、Cuをそれぞれ主成分とする2層からなる金属膜12,13が形成されていればよい。
【0049】
本実施例では、射出成形装置を用いてポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリフェニレンサルファイド系樹脂)をリフレクタハウジング形状(所望の形状)に成形した後、バッチ方式にて無電解メッキを形成した。金属触媒核付与、及び無電解ニッケルメッキにおいては、密着強度を良くするため、高圧二酸化炭素を用いた方法について説明する。
【0050】
本実施例のポリマー成形品11は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂(大日本インキ化学工業(株)のFZ8600)を使用した。
【0051】
[ニッケルリンメッキ膜12の形成方法]
本実施例において使用する無電解ニッケルメッキ液63には、奥野製薬工業製ニコロンDKを用いた。全メッキ液量に対して50vol%となるように、このニコロンDKにアルコール(エタノール)を添加して使用した。
【0052】
ポリマー成形品11にニッケルリンメッキ膜(ニッケル含有膜)12を形成するために、まず、ポリマー成形品11と金属錯体61とを、図2に示す表面改質装置50の高圧容器51内に装着した(図5中のステップS21)。なお、この際、ポリマー成形品11は、その全表面が、後に高圧容器51に導入される超臨界状態の二酸化炭素(以下、超臨界二酸化炭素という)と接するように高圧容器51内で保持される。また、この例では、金属錯体61には、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用い、仕込み量は100mgとした。
【0053】
次いで、シリンジバルブ44,46を開放し、高圧容器51内に15MPaの超臨界二酸化炭素を導入した。この超臨界二酸化炭素は、ボンベ41から逆止弁42を介してシリンジポンプ43にて加圧され、シリンジバルブ44,46および導入口47を介して、高圧容器51内へ導入される。この際、高圧容器51内に仕込まれた金属錯体61は、超臨界二酸化炭素に溶解し、超臨界二酸化炭素とともにポリマー成形品11の表面に浸透する。次いで、高圧容器51を150℃で30分間圧力を保持する。これにより、ポリマー成形品11の表面全体に浸透した金属錯体61の一部が還元される。こうして、金属微粒子(パラジウム微粒子)15が表面内部に浸透したポリマー成形品11を作製した(図5中のステップS22)。図6にその模式図を示す。図6に示すように、ポリマー成形品11の表面およびその内側(所定深さの領域)には、浸透した金属微粒子15が分散している。
【0054】
次に、表面部分に金属微粒子15が分散しているポリマー成形品11を、内部容器62に収容した。なお、この内部容器62は、図4において高圧容器51に収容された状態で図示されている。具体的には、内部容器ケース62aの図示しない保持部材にポリマー成形品11を装着した後、内部容器62の蓋部62bを閉める。内部容器62内には、容器本体51aの内容積の70%を満たすように無電解メッキ液63が予め入っている。ポリマー成形品11は、この無電解メッキ液63中に完全に浸漬するように吊るされる。この間、無電解メッキ液63の温度は60℃に保持される。無電解メッキ液63のメッキ反応温度は70℃〜90℃である。したがって、この状態では、ポリマー成形品11の表面にメッキ膜12は未だ成長しない。
【0055】
次いで、予め90℃に温調されている高圧容器51内に、内部容器62を収容し、蓋51bを閉める。直ちに、導入口47から高圧容器51内へ15MPaの超臨界二酸化炭素を導入し、ポリマー成形品11と接触させた。また、無電解メッキ液63を攪拌子64により攪拌する。内部容器62には熱伝導性の低い樹脂を使用している。そのため、この攪拌を開始した時点において、内部容器62内の温度が急激に上昇することはない。内部容器62内の温度は、メッキ反応が起こる温度未満の低温度に維持されている。そのため、ポリマー成形品11の表面にメッキ膜12が成長することはない。それゆえ、攪拌開始時点では、ポリマーが超臨界二酸化炭素と接触することによりポリマー成形品11の表面が膨潤しており、且つ、超臨界二酸化炭素の混合したメッキ液はその表面張力が低くなっているので、無電解メッキ液63が超臨界二酸化炭素とともに、ポリマー表面よりポリマー成形品11の内部へ浸透する。つまり、無電解メッキ液63は、ポリマー成形品11の内部に存在する金属微粒子15まで到達することになる(図5中のステップS23)。
【0056】
攪拌を開始してから時間が経過すると、内部容器62内の温度は上昇する。内部容器62内の無電解メッキ液63の温度は、最終的には、メッキ反応温度まで上昇する。内部容器62では、メッキ反応が起こる。ポリマー成形品11の表面には、メッキ膜12が成長する(図5中のステップS24)。上述したようにこのメッキ反応が生じる前に、無電解メッキ液63は、ポリマー成形品11の内部に存在する金属微粒子15のところまで浸透している。したがって、メッキ膜12は、ポリマー成形品11の表面において成長するだけでなく、その表面内部においても、金属微粒子15を触媒核として成長する。すなわち、この実施例のメッキ膜12の形成方法では、メッキ膜12は、ポリマー成形品11内部の自由体積内においても成長することで、ポリマー成形品11の内部に食い込んだ状態でポリマー上に形成される。
【0057】
図7は、ポリマー成形品11の表面部分にメッキ膜12が形成された状態を示す模式図である。図7では、メッキ膜12は、ポリマー成形品11の表面内部に入り込んで金属微粒子15に到達している。すなわち、メッキ膜12は、ポリマー成形品11の表面部分の金属微粒子15を触媒核として成長している。これにより、メッキ膜12は、強い密着強度によりポリマー成形品11の表面部分に形成される。
【0058】
メッキ終了後、攪拌子64を停止する。これにより、高圧容器51内では、二酸化炭素とメッキ液とが2相分離する。その後、手動バルブ44を閉じ、手動バルブ45を開き、高圧容器51内の二酸化炭素を排気する。次いで、高圧容器51を開けて、ポリマー成形品11を高圧容器51から取り出す。取り出されたポリマー成形品11を目視で確認したところ、ポリマー成形品11の表面全体に均一にニッケルリンメッキ膜12が形成されていることを確認することができた。
【0059】
次いで、上記方法によりニッケルリン膜12が形成されたポリマー成形品11上に、電解銅メッキにより銅膜13を形成した。本実施例における電解銅メッキ液は下記表1のとおりである。また、添加剤(光沢剤)として、奥野製薬工業製トップルチナ2000MU5ml/L、トップルチナ2000A0.5ml/Lを用いた。電流密度3A/dm、処理時間45分の電解メッキにより、約30μm厚の電解銅メッキ膜13を形成した。図8にその模式図を示す。図8では、メッキ膜12の上に、全面的に銅膜13が堆積されている。
【0060】
【表1】

【0061】
上記方法により、本実施例に係るリフレクタハウジング10を得た。このリフレクタハウジング10では、ポリマー成形品11の表面に、ニッケルリン、銅をそれぞれ主成分とする2層により形成された金属膜12,13が形成されている。
【0062】
この例で作製されたリフレクタハウジング10に対して、金属膜12,13の密着性評価を行なった。具体的には、85℃且つ85%RH(Relative Humidity)の高温多湿環境試験を1000hr(時間)にて行った。また、温度150℃下に500時間にわたって放置する高温試験を行なった。また、−30℃と150℃との間で温度を切り替えるヒートッショク試験を、20サイクルにわたって繰り返した。その結果、すべての試験において金属膜12,13の密着性の低下は認められなかった。
【0063】
また、この例で作製された金属膜12,13の表面粗さRaを測定したところ、Ra=50nmであった。この表面粗さは、後述する製造装置500の金型の表面粗さと同等である。
【0064】
したがって、この例のメッキ膜12の形成方法によれば、ポリマー成形品11の表面処理と同時に(連続的に)下地の金属膜12の無電解メッキ処理を行うことができる。メッキプロセスが簡略化される。しかも、この例のメッキ膜12の形成方法によれば、密着性が高く且つ平滑な金属膜12,13を、耐熱性の高い樹脂材料に形成することができる。
【0065】
また、本実施例におけるリフレクタハウジング10の放熱性を評価したところ、熱伝導率が20W/mKと良好な放熱特性を示すことが確認できた。ポリマー成形品11の表面にニッケルリンと銅の積層構造による金属膜12,13を形成することにより、リフレクタハウジング10の放熱性を向上させることができることが分かった。
【0066】
[比較例1]
本比較例のリフレクタハウジングでは、実施例1で作製したポリマー成形品の表面に、ニッケルリンメッキおよび銅メッキの代わりに、Al(アルミニウム)蒸着膜を形成した。
【0067】
本比較例により得られたリフレクタハウジングの放熱性を評価したところ、熱伝導率が1W/mKであり、良好な放熱特性が得られないことが確認できた。
【実施例2】
【0068】
図9は、実施例2のリフレクタハウジング10を示す断面図である。説明上、図9においてリフレクタハウジング10の表面膜12,13,17,18の厚さは誇張して描画されている。このリフレクタハウジング10は、図1に示すように、反射面14の奥に高輝度LED22が配設され、自動車用ランプリフレクタユニット1などとして用いられる。
【0069】
本実施例のリフレクタハウジング10は、実施例1により得られたリフレクタハウジング10の反射面14に、更に銀膜17および保護膜18を積層したものである。これにより、反射面14では、ニッケルリン、銅、銀をそれぞれ主成分とする3層により形成された金属膜12,13,17が形成されている。
【0070】
本実施例における銀メッキ液には、奥野製薬製ムデンシルバーNCNを用いた。そして、反射面14の銅膜13の表面に、銀メッキを約100nmの厚さで積層した。図10に断面の模式図を示す。図10では、銅膜13の上に銀膜17が積層されている。
【0071】
本発明においては、このように無電解メッキにより反射膜12,13,17を得た場合、耐候性向上のため、各種公知の保護膜18を形成することが望ましい。特に銀は、アルミニウムなどと比べて反射率が高いものの酸化しやすく錆びやすいので、公知の紫外線硬化樹脂、無電解メッキ膜等にて保護することが望ましい。本発明において保護膜18の種類は任意であるが、本実施例においては、ウエットプロセスで成膜でき且つ熱硬化後にはガラスに近い200℃程度の耐熱性を有するアクリル成分とポリシロキサンの有機―無機ハイブリット材料(JSR製グラスカ)とを用いて保護膜18を形成した。ディッピングにより、銅膜13を形成した後の成形品上に約0.5μmの膜を形成し、100℃において2hrで硬化させることで、保護膜18を形成した。図11では、銀膜17の上に保護膜18が積層されている。
【0072】
本実施例のリフレクタハウジング10について、実施例1のものと同様にメッキ膜12,13,17の密着性の評価および放熱性の評価を行ったところ、実施例1のものと同様に良好であった。
【0073】
また、本実施例で得られたリフレクタハウジング10の反射面14の可視域(400〜700nm)での分光スペクトルを測定したところ、各波長においてほぼ均一の反射率が得られた。また、反射率の波長平均が95%となった。良好な反射率が得られた。
【0074】
図12は、図9のリフレクタハウジング10を用いた自動車用ランプリフレクタユニット1を示す部分断面図である。説明上、図12においてリフレクタハウジング10の表面膜12,13,17,18の厚さは、誇張して描画されている。この自動車用ランプリフレクタユニット1は、レンズ部材23を有する。レンズ部材23は、レンズ熱伝達用固定冶具24によりリフレクタハウジング10の前面外周に固定され、これによりリフレクタハウジング10の反射面14に覆いかぶさるように配設されている。
【0075】
レンズ熱伝達用固定冶具24としては、熱伝導率の比較的高いアルミ、銅、金、銀等の金属であればよい。本実施例ではアルミ材質のものを用いた。このようにレンズ熱伝達用固定冶具24として熱伝導率の高い金属を用いることにより、リフレクタハウジング10の表面の金属膜12,13,17を伝達する熱の一部は、レンズ熱伝達用固定冶具24を介してレンズ部材23へ伝達する。高輝度LED22が発する熱は、メッキ膜12,13,17およびレンズ熱伝達冶具24を介してレンズ部材23へ効率よく伝達される。これにより、レンズ部材23の曇りが防止される。
【0076】
なお、レンズ熱伝達冶具24は、リフレクタハウジング10とレンズ部材23(の金具)の外周を完全に覆う環状のものでも、複数の分割された冶具24を所定間隔を隔ててリフレクタハウジング10とレンズ部材23の外周に分割配置してもよい。
【実施例3】
【0077】
実施例3では、実施例2とは異なる他の製造方法により、実施例2のもの(図9)と同様の構造のリフレクタハウジング10を形成した。図17は、実施例3のリフレクタハウジング10を形成する工程を示すフロー図である。具体的には、射出成形装置を用いてPd微粒子を混合したポリフェニレンサルファイドを成形した後、同じ射出成形装置内で超臨界二酸化炭素とメッキ液との混合溶液により無電解ニッケルリンメッキを同時に(続けて)行った。次いで、射出成形装置より取り出した後に、実施例2と同様に、成形品に対して電解銅メッキおよび銀メッキを施した。これにより、成形品の表面に、ニッケルリン、銅、銀をそれぞれ主成分とする3層により形成された金属膜12,13,17を形成することができる。
【0078】
[ポリマー成形品11の製造装置]
図13、図15および図16は、本実施例で用いたポリマー成形品11の製造装置を示す概略構成図である。本実施例の製造装置500は、金型を含む縦型の射出成形装置部503と、無電解メッキ装置部501と、表面改質部502とを有する。無電解メッキ装置部501は、高圧二酸化炭素を含む蒸留水及び無電解メッキ液について、金型への供給及び排出を制御する。表面改質部502は、射出成形装置部503の可塑化シリンダー内の溶融樹脂に対して、金属錯体61を溶解した高圧二酸化炭素を浸透させる。
【0079】
縦型の射出成形装置部503は、図13に示すように、主に、ポリマー成形品11の形成樹脂を可塑化溶融する可塑化溶融装置511と、金型を開閉する型締め装置512とを有する。
【0080】
可塑化溶融装置511は、主に、スクリュー521を内蔵した可塑化シリンダー522と、ホッパー523と、可塑化シリンダー522内の先端部(フローフロント部)付近に設けられた高圧二酸化炭素の導入バルブ524とを有する。また、可塑化シリンダー522の導入バルブ524と対向する位置には、樹脂内圧を計測するための圧力センサー525が設けられている。なお、ホッパー523内から可塑化シリンダー522内に供給される図示しない樹脂ペレットの材料としては、大日本インキ化学工業(株)製ポリフェニレンサルファイドを用いた。
【0081】
また、型締め装置512は、主に、固定金型531と、可動金型532とを有する。可動金型532は、4本のタイバー534により可動プラテン533とともに軸支されている。可動金型532は、4本のタイバー534が図示しない油圧型締め機構により駆動されることに連動して縦方向へ移動し、固定金型531と開閉する。金型を閉じた状態において、可動金型532及び固定金型531との間には、射出成型のためのキャビティ535が画成される。キャビティ535のシールは、固定金型531の外径部に設けられたバネ内蔵シール538と、可動金型532との勘合により行われる。
【0082】
また、可動金型532には、このキャビティ535へ高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液を供給及び排出するためのメッキ液導入路536,537が形成される。図13に示すように、このメッキ液導入路536,537は、後述する無電解メッキ装置部501の配管580と接続される。この配管580を介して、高圧二酸化炭素及び無電解メッキ液がキャビティ535へ導入される。
【0083】
表面改質部502は、図13に示すように、主に、液体二酸化炭素ボンベ551と、シリンジポンプ552,553と、フィルター554と、背圧弁555と、金属錯体61を高圧二酸化炭素に溶解する溶解槽556と、これらの構成要素を繋ぐ配管557とを有する。表面改質部502の配管557は、可塑化シリンダー522の導入バルブ524に接続される。配管557には、導入バルブ524付近において圧力センサー558が設けられている。なお、この実施例では、溶解槽556に仕込んだ金属微粒子15の原料は、パラジウム金属錯体61(ヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II))である。
【0084】
無電解メッキ装置部501は、図13に示すように、主に、別の液体二酸化炭素ボンベ571と、ポンプ572と、バッファータンク573と、無電解メッキ液63と高圧二酸化炭素とを混合させる高圧容器574と、循環ポンプ575と、無電解メッキ液63を補給するためのメッキタンク576と、シリンジポンプ577と、無電解メッキ液63を回収する回収容器578と、回収槽579と、これらの構成要素を繋ぐ配管580とを有する。配管580の所定箇所には、高圧二酸化炭素および無電解メッキ液の流動を制御するための自動バルブ581〜585が設けられる。また、配管580は、図13に示すように、可動金型532のメッキ液導入路536,537と接続される。なお、この実施例では、無電解ニッケルリンメッキ液の原料として奥野製薬工業製ニコロンDKを用い、エタノール50vol%を含むニッケルリン無電解メッキ液を用いた。
【0085】
[ポリマー成形品11の成形方法]
次に、金属微粒子15が表面内部に浸透しているポリマー成形品11の成形方法について説明する。なお、本発明において樹脂への金属微粒子15への浸透方法は任意であるが、本実施例では、可塑化シリンダー522内で可塑化計量した溶融樹脂の先端部(フローフロント部)に、金属微粒子15を溶解した高圧二酸化炭素を導入することで、樹脂へ金属微粒子15を浸透させている。
【0086】
まず、金属錯体61は、溶解槽556においてエタノールに溶解される。金属錯体61が溶解したエタノールは、シリンジポンプ553内で15MPaに昇圧される。一方、液体二酸化炭素は、液体二酸化炭素ボンベ551からフィルター554を介してシリンジポンプ552へ供給され、シリンジポンプ552内で15MPaへ昇圧される。金属錯体61が溶解したエタノールと、昇圧された二酸化炭素とは、配管557内で混合される。これにより、高圧混合流体が生成される。なお、この高圧混合流体を可塑化溶融装置511に供給する際、背圧弁555により高圧混合流体の供給圧力を制御し、圧力計558の表示が15MPaになるようにした。また、両シリンジポンプ552,553からのエタノール溶液と高圧二酸化炭素との高圧混合流体の送液は、各シリンジポンプ552,553の制御を圧力制御から流量制御に切り替えて行った。さらに、高圧混合流体を可塑化溶融装置511に供給する際には、高圧混合流体を、配管557内で図示しないヒーターにより50℃に温度制御しつつ、可塑化溶融装置511へ供給した。
【0087】
次に、図14及び15を参照しながら、高圧混合流体を可塑化溶融装置511内へ導入する手順を説明する。図14(a)及び14(b)は、可塑化溶融装置511の導入バルブ524付近の拡大断面図である。まず、ホッパー523から樹脂ペレットを供給しながら、可塑化シリンダー522内のスクリュー521を回転させて、樹脂の可塑化計量を行った。図14(a)は、可塑化計量完了時における導入バルブ524付近の状態を示す。なお、この際、図14(a)に示すように、導入バルブ524の導入ピン524aが後退(図14(a)中の左側に移動)して遮断する。これにより、溶融樹脂601が高圧混合流体602へ導入されない。
【0088】
次いで、スクリュー521をサックバック(後退)して、溶融樹脂601の内圧力を低下させる。これと同時に、両シリンジポンプ552,553を圧力制御から流量制御に切り替える。これにより、図14(b)に示すように、導入バルブ524の導入ピン524aが前進し、高圧混合流体602は、導入バルブ524を介して可塑化シリンダー522内のフローフロント部へ導入されて、溶融樹脂601と混合される。なお、このとき、金属錯体61が溶解しているエタノールと二酸化炭素との流量比は、上述した方法により1:10とされる。図14(b)において、領域603が高圧混合流体602が浸透した溶融樹脂部分である。
【0089】
なお、本実施例の可塑化シリンダー522の導入バルブ524では、溶融樹脂601と高圧混合流体602との圧力差が5MPa以上となったときに、高圧混合流体602が可塑化シリンダー522内の溶融樹脂601へ導入される構造になっている。この導入原理は、詳しくは次の通りである。可塑化計量完了後にスクリュー521をサックバックさせると、溶融樹脂601が減圧され、その密度が低下する。そして、溶融樹脂601と高圧混合流体602との圧力差が5MPa以上となったとき、高圧混合流体602の圧力が導入バルブ524内のバネ524bの戻し力(弾性力)に打ち勝ち、導入ピン524aが溶融樹脂601側へ前進する。これにより、高圧混合流体602が溶融樹脂601内部へ導入される。なお、高圧混合流体602の導入は、樹脂圧および高圧混合流体602の圧力を、それぞれ圧力センサー525,47で監視しながら行った。
【0090】
次いで、両シリンジポンプ552,553を停止する。これより、高圧混合流体602の送液が停止する。また、それと同時に、スクリュー521を前進させて、樹脂圧力を20MPaまで再度上昇させる。これにより、導入ピン524aは、図14(b)中で左方向へ移動し、後退する。以上の処理により、高圧混合流体602の導入が停止する。また、導入済みの高圧混合流体602と溶融樹脂601とが相溶する。
【0091】
次いで、両シリンジポンプ552,553を、配管557中の図示しない自動バルブにより閉鎖した後、可塑化溶融装置511に供給した高圧二酸化炭素の流量分及び金属錯体61が溶解したエタノール溶液の流量分をシリンジポンプ552,553内に補液した。その後、圧力制御に切り替え、15MPaの高圧に保持し、次ショットの送液まで待機させた。
【0092】
次に、図15に示すように、型締め装置512の図示しない油圧型締め機構により型締めし、図示しない温調回路により温度制御された金型内に画成されたキャビティ535へ、可塑化シリンダー522内のフローフロント部の溶融樹脂601に高圧混合流体602が導入されている溶融樹脂を射出充填した。次いで、成形品を冷却固化した。なお、溶融樹脂を金型内に射出成形する際、最初に射出されるフローフロント部の溶融樹脂603は噴水効果(ファウンテンフロー)により、射出成形品613の表皮612を形成する。すなわち、この例では、フローフロント部近傍に金属錯体61由来の金属微粒子15が分散しているので、図6に示すように、ポリマー成形品11の表皮(表面内部)612には金属微粒子15が含浸したポリマー成形品11が得られる(図17中のステップS61)。この例では、このようにして、表皮であるスキン層612に金属微粒子15が分散し、内皮であるコア層611には金属微粒子15がほとんど存在しない成形品613(ポリマー成形品11)が得られる。
【0093】
本実施例においては、可塑化シリンダー522内のフローフロント部の樹脂圧力を20MPaに保持して金属微粒子15を樹脂に十分に浸透させてから、樹脂内圧を1MPaまで減圧した。この動作により、金属錯体61は高温度高圧力下にて熱分解してクラースターを形成し、有機物である金属錯体61より比重の重い金属微粒子15と変化する。また、二酸化炭素は低圧のガスとなるので、射出充填時に金属微粒子15や二酸化炭素ガスが表面に浮き出てきにくくなる。その後、本実施例においては、射出充填するまでの射出速度を100m/sと低速にして、金属微粒子15であるPd微粒子が成形品の最表面に偏析してしまわないように射出成形した。つまりスキン層612には金属微粒子15が分散しているが、成形品の最表面には、触媒核として寄与する量が不十分となる表面状態に成型した。本実施例に用いるメッキ液の反応温度は60〜90℃である。大気圧にて70℃のメッキ液中に、本実施例の成形品を10分間浸漬させても、表面にメッキが成長しないことをあらかじめ確認した。
【0094】
[メッキ膜12の形成方法]
上述のようにして作製された表面内部に金属微粒子15が分散した成形品613(ポリマー成形品11)に対して、次のようにして、金型531,532内で無電解メッキ処理を行った。なお、無電解メッキ処理を行っている間、金型531,532の内部は80℃に温調した。
【0095】
まず、図16に示すように、型締め装置512の油圧型締め機構(不図示)を後退(図15中の下方向)させることにより、可動プラテン533および可動金型532を後退させ、固定金型531と成形品613(ポリマー成形品11)との間に隙間614(キャビティ)を設けた。
【0096】
次いで、次のようにして、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液をキャビティ614に導入して、成形品613(ポリマー成形品11)に接触させた。まず、予め、無電解メッキ装置部501のメッキタンク576から供給されたアルコールの無電解メッキ液と、バッファータンク573から供給された15MPaの高圧二酸化炭素とを、高圧容器574内にて7:3の比で混合させた。
【0097】
本発明においては、高圧二酸化炭素とメッキ液の混合比は、1:9から5:5(=1:1)までの範囲で、メッキ液の量が多いほうが望ましい。また、この際、スタラー574aの駆動および、攪拌子574bの高速回転により、高圧二酸化炭素と無電解メッキ液とを高圧容器574内で相溶させた。次いで、自動バルブ581を閉鎖し、自動バルブ582,583を開放した。
【0098】
次いで、循環ポンプ575を運転して、高圧容器574、配管580およびキャビティ614からなる循環流路に、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を循環させる。これにより、成形品613(ポリマー成形品11)の表面に無電解メッキ液が一時的に滞留および接触して、メッキ膜(ニッケル含有膜)12が形成される(図17中のステップS63)。この際、成形品613(ポリマー成形品11)の最表面ではメッキ反応は起きない。無電解メッキ液は、ポリマー613の表面からポリマー内部へ浸透して、成形品613内部に分散している金属微粒子15を触媒核として、メッキ膜12を成長させる。すなわち、メッキ膜12は、成形品613(ポリマー成形品11)の内部に食い込んだ状態で成長するので、成形品613上には密着性に優れたメッキ膜12が形成される。なお、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液が循環している期間、キャビティ614の圧力および循環ライン580の圧力は、圧力センサー586,587で計測され、同圧になっていた。また、無電解メッキ液の補給は、メッキタンク576より供給したメッキ液をシリンジポンプ577で昇圧して、自動バルブ584の開放と同時に送液することで随時行った。
【0099】
次いで、上述のようにして成形品613(ポリマー成形品11)上にメッキ膜12を形成した後、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液の循環経路から高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器578を介して回収槽579から排気した。具体的には、自動バルブ582,583を閉鎖し、次いで、自動バルブ585を開放することで、高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液を回収容器578に排出した。回収容器578では、回収した高圧二酸化炭素を含む無電解メッキ液は、遠心分離の原理で水溶液(メッキ液)と高圧ガス(二酸化炭素)に分離される。メッキ液は回収槽579で回収される。この回収されたメッキ液は再利用することができる。ガス化した二酸化炭素は回収容器578の上部から排出され、図示しない排気ダクトに回収される。
【0100】
次いで、自動バルブ581を一定時間開いて、固定金型531と成形品613(ポリマー成形品11)との間の隙間(キャビティ)614に高圧二酸化炭素を導入する。これにより、キャビティ614に残っているメッキ液の残留物が、高圧二酸化炭素とともに金型531,532の外へ排出される。次いで、キャビティ614の内圧が下がって圧力センサー587のモニター値がゼロになったところで、金型531,532を開いて、成形品613(ポリマー成形品11)を取り出した。
【0101】
この例で作製された成形品613(ポリマー成形品11)のスキン層612内部には、金属微粒子15が分散していることが確認された。また、ポリマー成形品11の片側には、金型531,532内で成長させたニッケルリンの金属膜12が形成されており、ニッケルリンの金属膜12は、成形品613(ポリマー成形品11)の内部から成長していた(金属膜12の浸透層が形成されていた)。
【0102】
上記方法によりニッケルリン膜12が形成されたポリマー成形品11上に、実施例2と同様に、電解銅メッキおよび銀メッキを施した。本実施例においては、電解銅メッキを約30μm、銀メッキを約100nm形成した。
【0103】
本実施例におけるリフレクタハウジング10について実施例1と同様にメッキ膜12,13,17の密着性の評価および放熱性の評価を行ったところ、同様に良好であった。
【0104】
また、本実施例で得られたリフレクタハウジング10の反射面の可視域(400〜700nm)での分光スペクトルを測定したところ、各波長においてほぼ均一の反射率が得られ、しかも、平均で95%と良好な反射率が得られることが分かった。
【0105】
以上の実施例1から3では、ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなるポリマー成形品(基材)11の表面に金属膜12,13または金属膜12,13,17が形成されることにより、反射面14が形成される。しかも、この金属膜12,13または金属膜12,13,17は、少なくともニッケルリン膜12および銅膜13によるものである。電解銅メッキ膜13は、約30μm厚である。したがって、優れた熱伝達特性を有する反射面14を形成することにより、ポリフェニレンサルファイド系樹脂のポリマー成形品11が有する脆性を改善し、且つ、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が有する高耐熱性を生かしたリフレクタハウジング(放熱部材、反射部材)10を得ることができる。
【0106】
特に、ポリマー成形品11の表面部分には金属微粒子(パラジウム微粒子)15が分散しており、ニッケルリン膜12は、この金属微粒子(パラジウム微粒子)15を触媒核として成長するので、ニッケルリン膜12は、ポリマー成形品11の内部に食い込んだ状態でしっかりと形成される。ニッケルリン膜12および銅膜13からなる金属膜は、ポリマー成形品11の表面から剥がれ難くなる。ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなるポリマー成形品11が加熱している状態でも金属膜13,14が部分的にポリマー成形品11の表面から浮いたりし難くなる。したがって、反射面14の鏡面精度は維持され、脆性および耐熱性の改善効果を長期にわたって安定的に得ることができる。
【0107】
実施例2および3のリフレクタハウジング10では、反射面14において銅膜13の上に、銀膜17が積層されている。これにより、銅膜13やアルミニウムなどにより反射面14を形成した場合より、高い反射率(90%以上の反射率)を得ることができる。
【0108】
また、実施例2および3のリフレクタハウジング10において、銀膜17は純銀であり、その上に保護膜18が積層されている。これにより、反射面14の表面が純銀の膜17となることで高い反射率となる。しかも、その表面の純銀の膜17は酸化などにより反射率が低下し易いものであるが、保護膜18により被覆されているので、高い反射率を長期にわたって維持することができる。
【0109】
上記実施例1から3では、放熱フィン部21の表面、および高輝度LED22の取り付け部分から放熱フィン部21までに金属膜12,13または金属膜12,13,17が形成されている。また、銅膜13の厚さは、約30μmである。これにより、放熱フィンを一体的に形成することができる。しかも、高輝度LED22の取り付け部分から放熱フィン部21までの熱伝導体は、反射膜14と同時に形成することができる。なお、銅膜13は、20μm以上の厚さであれば、ヘッドランプの用途において十分な熱伝導特性を得ることができる。
【0110】
上記実施例2の図12では、レンズ部材23がレンズ熱伝達用固定冶具24によりリフレクタハウジング10に固定された自動車用ランプリフレクタユニット1が示されている。そして、高輝度LED22の取り付け部分から冶具24の固定部分にかけて、金属膜12,13または金属膜12,13,17が形成されている。したがって、高輝度LED22などが発生する熱は、金属膜12,13または金属膜12,13,17によりレンズ部材23へ伝達される。この熱により、レンズ部材23は暖められ、レンズ部材23の曇りが防止される。
【実施例4】
【0111】
本実施例のリフレクタハウジング1は、図18に示すように、図1に示す実施例1のリフレクタハウジング1のNiP膜12、Cu膜13の上に、さらに別のニッケルリン膜(ニッケル含有膜)101、銀膜102を形成したものである。
【0112】
具体的には、まず、ニッケルリン膜12および銅膜13が形成されたポリマー成形品11上に、新たなニッケルリン膜101を形成した。本実施例においては、上記ニッケルリン膜101の形成に、無電解ニッケルリンメッキ液を用い、メッキ液には奥野製薬工業株式会社製のニコロンDKを用いた。85度で処理時間10分のメッキ処理により、約2μm厚の無電解ニッケルリンメッキ膜101を形成した。
【0113】
次に、このニッケルリン膜101の上に銀膜102を形成し、反射膜とした。本実施例では、無電解銀メッキ液を用いて銀膜102を形成した。銀メッキ液には、メルテックス株式会社製のアルファスター300を用いた。反射面14のニッケルリン膜101の表面に銀メッキを行い、約100nm厚さの銀膜102を形成した。
【0114】
上記方法により、本実施例のリフレクタハウジング1を得た。このリフレクタハウジング1について、金属膜12,13,101,102の密着性試験を行った。具体的には、温度80度且つ湿度80%RHの高温多湿環境試験を1000時間にて行った。また、温度150度の環境下に500時間にわたって放置する高温試験を行った。さらに、−30度と150度との間で温度を切り替えるヒートショック試験を20サイクルにわたって繰り返した。その結果、すべての試験において、ニッケルリン膜12、銅膜13、別のニッケルリン膜101および銀膜102からなる金属膜にふくれ、剥離などが見られず、密着性が良好であることが確認できた。
【0115】
また、この金属膜(銀膜102)の表面粗さRaを測定したところ、Ra=50nmだった。この金属膜の表面粗さは、製造装置500の金型の表面粗さと同等である。
【0116】
したがって、この例の金属膜の形成方法によれば、ポリマー成形品11の表面処理と同時に(連続的に)下地のニッケルリン膜12を無電解メッキ処理により形成することができる。そのため、メッキプロセスが簡略化できる。しかも、この方法によれば、密着性が高く且つ平滑な表面を有する金属膜を、耐熱性の高い樹脂材料の成形品11に形成できる。
【0117】
また、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、反射膜12,13,101,102の耐食性試験を実施した。具体的には、温度80度且つ湿度80%RHの高温多湿環境試験を1000時間にて行い、リフレクタハウジング1の外観および可視光の反射率の変動(具体的には、可視光の中心波長(λ=550nm)での反射率変動率)を評価した。反射率の測定には、大塚電子株式会社製のスペクトロメータ(MCPD−3000)を用い、可視光域での分光スペクトルを測定した。結果を下記表3に示す。
【実施例5】
【0118】
本実施例のリフレクタハウジングは、実施例4とは異なり、図1に示す実施例1のリフレクタハウジングのNiP、Cuの上に、銀膜を直接に形成したものである。具体的には、本実施例では、無電解銀メッキ液を用いて、銅膜の上に約100nm厚さの銀膜を形成した。銀メッキ液には、メルテックス株式会社製のアルファスター300を用いた。
【0119】
そして、本実施例のリフレクタハウジングに対して、実施例4と同様の耐食性試験を実施した。結果を下記表3に示す。
【実施例6】
【0120】
本実施例のリフレクタハウジング1は、図19に示すように、実施例4のリフレクタハウジング1の銀膜102の上に、さらに保護膜103を形成した。保護膜103は、JSR株式会社製グラスカを用いて、アクリル成分とポリシロキサンの有機−無機ハイブリッド材料により形成した。
【0121】
保護膜103の塗布方法は任意であるが、本実施例ではディップコート法で塗布した。JSR株式会社製グラスカをメチルエチルケトンなどの任意の溶媒により5倍に希釈して、ディップコートにより銀膜102の上に塗布した。その後、100度において10分で硬化させることにより、0.1μm厚の保護膜103を形成した。
【0122】
そして、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様の耐食性試験を実施した。結果を下記表3に示す。
【実施例7】
【0123】
本実施例のリフレクタハウジング1は、保護膜103の厚さを10μmにしたこと以外は、実施例5のリフレクタハウジング1と同様である。また、この10μm厚の保護膜103は、希釈したJSR株式会社製グラスカをディップコート法により銀膜102に塗布し、その後、100度において10分で硬化させることにより形成した。
【0124】
そして、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様の耐食性試験を実施した。結果を下記表3に示す。
【実施例8】
【0125】
本実施例のリフレクタハウジング1は、0.1μm厚さの保護膜103を、ポリシロキサンネットワーク構造を有するゾルゲル無機材料を用いて形成したこと以外は、実施例6のリフレクタハウジング1と同様である。具体的には、この保護膜103は、JSR株式会社製グラスカ・ダイナセラを、ディップコート法により銀膜102に塗布し、その後、100度において10分で硬化させることにより形成した。
【0126】
そして、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様の耐食性試験を実施した。結果を下記表3に示す。
【0127】
[(初期)反射率測定]
さらに、上記方法により得られたリフレクタハウジング1に対し、可視光反射率を測定した。反射率測定には、大塚電子株式会社製スペクトロメータ(MCPD−3000)を用い、可視光域での分光スペクトルを測定した。結果を図24に示す。
【0128】
図24には、この実施例8の測定結果とともに、実施例6および7の測定結果が記載されている。これらの実施例のリフレクタハウジング1には、保護膜103が形成されている。なお、膜構造は、実施例6ではNiP/Cu/NiP/Agおよび有機・無機0.1μmであり、実施例7ではNiP/Cu/NiP/Agおよび有機・無機10μmであり、実施例8ではNiP/Cu/NiP/Agおよびゾルゲル無機0.1μmである。そして、図24に示すように、これらの実施例では、可視光全域において高い反射率が確保でき、可視中心波長(@λ=550nm)で95%以上となり良好な反射率が得られた。
【実施例9】
【0129】
本実施例のリフレクタハウジング1は、銀膜102の直下に形成したニッケル含有膜101を、電解ニッケルメッキにより形成したこと以外は、実施例4のリフレクタハウジング1と同様である。具体的には、ニッケルリン膜12および銅膜13を形成したポリマー成形品11上に、電解ニッケルメッキによりニッケル含有膜101を形成した。本実施例においては、メッキ液にワット浴を用いた。本実施例における電解ニッケルメッキ液は、下記表2のとおりである。また、添加剤(光沢剤)として、奥野製薬工業製の改良アクナAを20ml/L、改良アクナBを1ml/L用いた。電流密度3A/dm、処理時間50分の電解メッキにより、約30μm厚の電解ニッケルメッキ膜101を形成した。
【0130】
【表2】

【0131】
次いで、上記方法により形成されたニッケル含有膜101の上に銀膜102を形成し、反射膜とした。具体的には、メルテックス株式会社製アルファスター300を銀メッキ液として用いて、無電解銀メッキにより銀膜102を形成した。反射面の銅膜13の表面に銀メッキを行い、約100nmの銀膜102を形成した。
【0132】
[(初期)反射率測定]
上記方法により得られたリフレクタハウジング1に対し、可視光反射率を測定した。結果を図25に示す。
【0133】
図25には、この実施例9の測定結果とともに、実施例4および5の測定結果が記載されている。これらの実施例のリフレクタハウジング1には、保護膜103が形成されていない。なお、金属膜の積層構造は、実施例4ではNiP/Cu/NiP/Agであり、実施例5ではNiP/Cu/Agであり、実施例9ではNiP/Cu/Ni/Agである。そして、図25に示すように、これらの実施例では、可視光全域において高い反射率が確保でき、可視中心波長(@λ=550nm)で95%以上となり良好な反射率が得られた。しかも、図24の保護膜103を形成した場合には低波長側での反射率が他の波長に比べて低下(約80%)するが、そのような劣化の問題も生じない。
【0134】
[反射膜の耐食性試験]
また、本実施例におけるリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様に反射膜の耐食性試験を行った。結果を下記表3に示す。
【0135】
【表3】

【0136】
表3は、上記実施例4〜9のリフレクタハウジング1に対する反射膜の耐食性試験の試験結果を示す。具体的には、高温多湿試験を行い、試験前後での外観変化および可視光中心波長(λ=550nm)での反射率変動(環境試験前反射率、環境試験後反射率およびそれらの差)を評価した。可視光反射率の測定には、大塚電子株式会社製スペクトロメータ(MCPD−3000)を用い、可視光域での分光スペクトルを測定した。
【0137】
そして、表3に示すように、Cu膜13に直接にAg膜102を重ねた実施例5においては、初期反射率は良好であるが、環境試験後に外観に黄変が観察され、反射率の大幅な劣化が確認された。これは、銀膜102が銅膜13の上に直接に形成され、この銅膜13からの拡散により銀膜102内において合金化が進行し、銀の持つ高い反射特性が低下したためであると考えられる。このように、Cu膜13が下地である場合には、銀膜102の初期状態の反射率として良好なものが得られるものの、環境試験などの後ではその反射率の低下が認められる。
【0138】
これに対して、NiP膜やNi膜などのニッケル含有膜101を下地として銀膜102を重ねた実施例4および6〜9では、初期反射率が良好であり、環境試験前後で外観の変化がなく、しかも、反射率は殆ど低下しない。その結果、環境試験後においても95%以上の高い反射率を保ち、良好な反射特性が維持できた。
【0139】
このように、初期反射率特性は、実施例5を含む上述したすべての実施例において良好であるが、耐食性などを考慮した場合には、少なくともニッケル含有膜101を下地とすることが望ましい。
【実施例10】
【0140】
本実施例のリフレクタハウジング1は、ポリフェニレンサルファイド樹脂(ポリフェニレンサルファイド系樹脂)の替わりにポリアミド系樹脂を用いて基材11を形成した以外は、図18に示す実施例4のリフレクタハウジング1と同様のものである。なお、ポリアミド系樹脂として用いることができる樹脂は任意であるが、本実施例ではポリフタルアミド(PPA)樹脂(ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製アモデルAS−1566HS)を用いた。射出成形装置により、ポリフタルアミド樹脂をリフレクタハウジング形状(所望の形状)に成形した後、実施例4と同様にバッチ方式にて無電解メッキ膜12を形成し、その上に電解銅メッキ、ニッケルリンメッキ、銀メッキを施した。これにより、プラスチック基材11の表面にはニッケルリン膜12、銅膜13、別のニッケルリン膜101、銀膜102がこの順番で形成(積層)され、これらにより金属膜が形成される。
【0141】
そして、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例1と同様の金属膜12,13,101,102の密着性試験を行った。その結果、すべての試験において金属膜のふくれ、剥離などが生じず、密着性が良好であることが確認できた。
【0142】
また、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様の金属膜(反射膜)12,13,101,102の耐食性試験を行った。その結果、環境試験前後での外観の変化は観察されず、反射率の劣化も生じなかった。また、環境試験後においても、反射率が95%以上に維持されており、良好な反射率が得られた。ポリアミド系樹脂は、柔らかくて変形しやすいものであるが、このように金属膜で被覆することにより、放熱性が向上し、ポリアミド系樹脂の変形を抑制することができる。
【実施例11】
【0143】
本実施例では、実施例3の製造方法により、実施例4と同様の構造のリフレクタハウジング1を形成した。具体的には、成形時にニッケルリン膜12が形成された成形品に対して電解銅メッキ、ニッケルリンメッキおよび銀メッキを実施して、プラスチック基材11の表面に、ニッケルリン膜12、銅膜13、他のニッケルリン膜101および銀膜102をその順番で形成(積層)した。なお、電解銅メッキ膜13は約30μmの膜厚に形成し、別のニッケルリンメッキ膜101は約2μmの膜厚に形成し、銀メッキ膜102は約100nmの膜厚に形成した。
【0144】
そして、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例1と同様の金属膜12,13,101,102の密着性試験を行った。その結果、すべての試験において金属膜のふくれ、剥離などが生じず、密着性が良好であることが確認できた。
【0145】
また、本実施例のリフレクタハウジング1に対して、実施例4と同様の金属膜(反射膜)12,13,101,102の耐食性試験を行った。その結果、環境試験前後での外観の変化は観察されず、反射率の劣化も生じなかった。また、環境試験後においても、反射率が95%以上に維持されており、良好な反射率が得られた。
【0146】
以上の実施例1から11では、ポリフェニレンサルファイド系樹脂もしくはポリアミド系樹脂からなるポリマー成形品(基材11)の表面に金属膜が形成されることにより、反射面14が形成される。しかも、この金属膜は、少なくとも約30μm厚の銅膜13を含む。したがって、優れた熱伝達特性を有する反射面14を形成でき、ポリフェニレンサルファイド系樹脂が有する脆性や、ポリアミド系樹脂が有する変形し易さを改善でき、しかも、これらの樹脂が有する高耐熱性を生かしたリフレクタハウジング(放熱部材、反射部材)を得ることができる。
【0147】
特に、ポリマー成形品の表面部分には金属微粒子(パラジウム微粒子)が分散しており、ニッケルリン膜12などは、この金属微粒子(パラジウム微粒子)を触媒核として成長するので、ニッケルリン膜12は、ポリマー成形品の内部に食い込んだ状態でしっかりと形成される。そのため、ニッケルリン膜12は、ポリマー成形品の表面から剥がれ難くなる。また、ポリマー成形品が加熱された状態でも金属膜がポリマー成形品の表面から部分的に浮いたりし難くなる。したがって、反射面14の鏡面精度は維持され、脆性および耐熱性の改善効果を長期にわたって安定的に得ることができる。
【0148】
また、実施例2〜11のリフレクタハウジング1では、反射面14の表面に銀膜102が積層されている。これにより、銅、ニッケル、アルミニウムなどにより反射面を形成した場合より、高い反射率(90%以上の反射率)を得ることができる。
【0149】
また、実施例2,3,6〜8のリフレクタハウジング1では、銀膜102の上に保護膜103が積層されている。銀膜102の酸化などにより、反射面14の反射率は低下し易いものであるが、保護膜103により被覆されているので、高い反射率を長期にわたって維持できる。
【0150】
上記実施例1〜11では、放熱フィン部21の表面、および高輝度LED22の取り付け部分から放熱フィン部21までに金属膜が形成されている。また、金属膜には、約30μmの厚さの銅膜が含まれる。このように放熱フィン21を一体的に形成することができる。しかも、高輝度LED22の取り付け部分から放熱フィン部21までの熱伝導体は、反射膜と同時に形成できる。なお、銅膜13は、20μm以上の厚さであれば、ヘッドランプの用途において十分な熱伝導特性を得ることができる。
【0151】
以上の実施例は、本発明の好適な実施例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
【0152】
上記実施例では、Pd微粒子は、ポリマー成形品11の表面部分に分散している。この他にもたとえば、Pd微粒子は、ポリマー成形品11の表面から内部にかけて全体的に分散していてもよい。
【0153】
上記実施例では、ニッケルリンメッキ膜12の上に銅膜13を形成している。この他にもたとえば、ニッケルリンメッキ膜12の上に銅合金膜、たとえば銅と亜鉛との合金膜を形成するようにしてもよい。また、銅膜13あるいはこの銅合金膜の上には、銀膜17の代わりに、銀合金膜を形成するようにしてもよい。
【0154】
上記実施例では、ポリマー成形品11の表面にのみ、金属膜12,13または金属膜12,13,17が形成されている。この他にもたとえば、ポリマー成形品11に貫通孔や溝を形成し、この貫通孔や溝の内面においても、金属膜12,13または金属膜12,13,17を形成するようにしてもよい。
【0155】
図20および図21は、リフレクタハウジング10の変形例を示す図である。図20および図21においてリフレクタハウジング10の表面膜12,13,17,18の厚さは、実際より厚く描画されている。
【0156】
図20では、ポリマー成形品11は、高輝度LED22の取付け部位と放熱フィン部21との間となる部位に貫通孔19が形成されている。そして、NiP、Cuをそれぞれ主成分とする2層による金属膜12,13は、この貫通孔19内にも形成されている。高輝度LED22の取付け部位と放熱フィン部21との間となる部位には、スルーホールが形成されている。なお、この貫通孔19内の金属膜は、さらに銀膜17を有するものであってもよい。
【0157】
このように光源であって発熱する高輝度LED22と放熱フィン部21との間にスルーホールを形成することで、放熱性が向上する。
【0158】
上記実施例では、ポリマー成形品11は、ポリフェニレンサルファイド樹脂またはポリフタルアミド樹脂により形成されている。この他にも、ポリマー成形品11は、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルファイド、LCP(液晶ポリマー)などにより形成されていてもよい。ただし、耐熱性の観点から、ポリマー成形品11としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂またはポリアミド系樹脂が最適である。
【0159】
また、この貫通孔19が形成されたポリマー成形品11に対して上述した各製造方法により金属膜を形成したところ、スルーホール内においてもメッキ膜12の形成が確認された。一般的な金属メッキでは、たとえば直径100マイクロメートルで且つその20倍程度の長さを有するハイアスペクトの貫通孔を形成した場合、貫通孔の内面に適切な下地処理ができないため、金属膜を貫通孔の軸方向において連続的に形成することができない。しかし、上述した各製造方法により金属膜を形成した場合には、そのようなハイアスペクトの貫通孔であっても、NiP膜12が形成され、さらにその上に銅膜13を積層することができた。
【0160】
そして、得られたポリマー成形品11の放熱性を評価したところ、良好な放熱特性を示すことが確認され、スルーホールにおいても熱が伝わり、放熱性が向上することが分かった。高輝度LED22と放熱フィン部21との間の熱抵抗が下がり、高輝度LED22は効率よく冷却される。
【0161】
また、本発明においては、一体型の放熱フィンを用いる代わりに、図21に示すようにヒートシンク(放熱フィン)25をポリマー成形品11の表面に取り付けるようにしてもよい。ヒートシンク25とポリマー成形品11との接合には一般的にリフローはんだ付け法が用いられるが、本発明によるメッキ方法によれば、メッキ膜12,13の密着性が良好であり、リフローはんだ付けをしても熱による剥離等が見られない。したがって、本方法によれば、より高い放熱特性を得ることができる。なお、ヒートシンク25の替わりに、ポリマー成形品11の表面に複数の溝を形成し、各溝にアルミ板(金属板)を取り付けることでも、放熱フィンを形成することができる。この変形例でも、高輝度LED22からヒートシンク25まで熱が伝達するようになる。しかも、高輝度LED22からヒートシンク25までの熱伝導体は、反射膜と同時に形成することができる。
【0162】
本発明においては、上記スルーホール(貫通孔19)を形成する替わりに、成形時に金属インサートを金型内に挿入して、インサート成形により、スルーホール用の金属を樹脂と一体化させてもよい。このように、金属とプラスチックのインサート成形を行うことにより、放熱機構の形成が容易になり、光源である高輝度LEDと接触させて良好な放熱性が得られる。
【0163】
図22は、本発明に係る自動車用ランプリフレクタユニット1の変形例を示す部分断面図である。図22の自動車用ランプリフレクタユニット1のリフレクタハウジング10は、その前面10cに反射面14が画成され、その背面10eには、LED駆動回路31が実装されている。このため、リフレクタハウジング10の背面10eには、LED駆動回路用の配線パターンが、金属膜12,13により形成されている。ポリマー成形品11の背面には、この配線パターンに応じて選択的に金属膜12,13が形成されている。
【0164】
また、リフレクタハウジング10には、高輝度LED22の取付け部位と放熱フィン部21との間の部位と、高輝度LED22の取付け部位とリフレクタハウジング10の背面10eとの間の部位とに、複数のスルーホール19,32が形成されている。複数のスルーホール19,32内には、金属膜12,13が形成されている。高輝度LED22の取付け部位とリフレクタハウジング10の背面10eの間のスルーホール32内の金属膜12,13により、高輝度LED22とLED駆動回路31とが電気的に接続される。
【0165】
また、図22の自動車用ランプリフレクタユニット1では、反射面14(金属膜12,13,17)の表面および高輝度LED22の全体が、保護膜18により被覆されている。特に、高輝度LED22上の部位の保護膜18は、凸レンズ形状に形成されている。保護膜18には、たとえば酸化ケイ素、シリコーンなどのポッティング材料を用いることができる。
【0166】
さらに、図23に、本発明に係る自動車用ランプリフレクタユニットの変形例を示す。このランプリフレクタユニットは、たとえば平板形状を有し、その一方の面に複数の反射面14が形成されているものであり、且つ、各反射面14内には、高輝度LED22が収容されている。なお、各反射面14内に複数の高輝度LED22が収容されていてもよい。
【0167】
また、図23のランプリフレクタユニットは、一方の面に複数の反射面が画成され、高輝度LED22の取付部位には熱伝達用の銅もしくはアルミなどによる金属インサート38が形成され、さらに、ハウジング(基材11)の背面には放熱板37が形成されている。これにより、放熱機構を容易に形成することができ、且つ、高輝度LED22からの熱は効率よく図示外の放熱板37へ伝達でき、良好な放熱性が確保できる。
【0168】
また、高輝度LED22の取付部位には、LED駆動回路31の配線パターンが形成されている。この配線パターンは複数のスルーホールからなり、スルーホールの内面には少なくとも金属膜12,13もしくは金属膜12,20が、配線パターンに応じて選択的に形成されている。さらに、この配線パターンは、絶縁層39により電気的に絶縁されている。
【0169】
上記実施例では、金属膜12,13または金属膜12,13,17を形成したポリフェニレンサルファイド樹脂製の基材11は、平滑な表面の金属膜を形成することができるので、リフレクタハウジング10として利用される。この他にもたとえば、金属膜12,13または金属膜12,13,17を形成したポリフェニレンサルファイド樹脂製の基材11には、金属膜12,13または金属膜12,13,17により被覆されているので、ポリフェニレンサルファイド樹脂が有する脆さや紫外線による劣化を防止することができる。ポリアミド系樹脂の場合も同様である。したがって、この発明は、リフレクタ、電熱線ドアミラー、屋内用の照明器具などとしてだけでなく、他にも、電磁波シールド機能を必要とするパーソナルコンピュータ用の筐体、携帯電話機の筐体、各種半導体やLEDの冷却部材、回路基板(プリント配線基板など)のベース材、ディスプレイ基材(背面シャーシなど)、紫外線にさらされる屋外用の照明器具などとしても用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の放熱部材、反射部材および照明ユニットは、高輝度LEDを用いた自動車のヘッドライト、フォグランプ、照明機器などにおいて好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、実施例1に係るリフレクタハウジングを示す断面図を示す。
【図2】図2は、図1のリフレクタハウジングの裏面側の斜視図を示す。
【図3】図3は、図1のリフレクタハウジングを形成するための表面改質装置の装置構成図を示す(金属微粒子浸透工程)。
【図4】図4は、図1のリフレクタハウジングを形成するための表面改質装置の装置構成図を示す(無電解メッキ工程)。
【図5】図5は、図1のリフレクタハウジングの形成工程図を示す。
【図6】図6は、金属微粒子浸透後のリフレクタハウジングの部分断面図を示す。
【図7】図7は、無電解メッキ後のリフレクタハウジングの部分断面図を示す。
【図8】図8は、銅メッキ後のリフレクタハウジングの部分断面図を示す。
【図9】図9は、実施例2に係るリフレクタハウジングを示す断面図を示す。
【図10】図10は、銀メッキ後のリフレクタハウジングの部分断面図を示す。
【図11】図11は、保護膜形成後のリフレクタハウジングの部分断面図を示す。
【図12】図12は、図9のリフレクタハウジングを用いた自動車用ランプリフレクタユニットを示す部分断面図を示す。
【図13】図13は、実施例3に係るリフレクタハウジングを形成する製造装置を示す概略構成図を示す(成形前)。
【図14】図14は、図13の製造装置中の、可塑化溶融装置の導入バルブ付近の拡大断面図を示す。
【図15】図15は、図13の製造装置の成形時を示す。
【図16】図16は、図13の製造装置での無電解メッキ時を示す。
【図17】図17は、実施例3のリフレクタハウジングの形成工程図を示す。
【図18】図18は、実施例4に係るリフレクタハウジングを示す断面図を示す。
【図19】図19は、実施例5に係るリフレクタハウジングを示す断面図を示す。
【図20】図20は、貫通孔を有するリフレクタハウジングの変形例を示す。
【図21】図21は、ヒートシンクが別体であるリフレクタハウジングの変形例を示す。
【図22】図22は、自動車用ランプリフレクタユニットの変形例の部分断面図を示す。
【図23】図23は、自動車用ランプリフレクタユニットの他の変形例の部分断面図を示す。
【図24】図24は、実施例6〜8での反射率測定の測定結果を示す。
【図25】図25は、実施例4,5,9での反射率測定の測定結果を示す。
【符号の説明】
【0172】
1 自動車用ランプリフレクタユニット(照明ユニット)
10 リフレクタハウジング(放熱部材、反射部材)
11 ポリマー成形品(基材)
12 ニッケルリンメッキ膜(ニッケル含有膜、金属膜)
13 銅膜(銅含有膜、金属膜)
15 金属微粒子(パラジウム微粒子)
17 銀膜(銀含有膜、金属膜)
14 反射面
18 保護膜
21 放熱フィン部
22 高輝度LED(発光素子)
19 貫通孔
25 放熱フィン
23 レンズ部材
24 レンズ熱伝達用固定冶具(冶具)
101 ニッケルリン膜
102 銀膜
103 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる基材と、
上記基材の表面に形成されたニッケル含有膜と、
上記ニッケル含有膜の上に形成された銅含有膜と、
を有することを特徴とする放熱部材。
【請求項2】
ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材と、
上記基材の表面に形成されたニッケルリン膜と、
上記ニッケルリン膜の上に形成された銅含有膜と、
を有することを特徴とする放熱部材。
【請求項3】
前記基材の表面部分には、パラジウム微粒子が分散しているとともに、且つ、前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜は、上記表面部分の上記パラジウム微粒子を触媒核として成長したものであることを特徴とする請求項1または2記載の放熱部材。
【請求項4】
ポリフェニレンサルファイド系樹脂またはポリアミド系樹脂からなる基材と、
上記基材の表面に形成されたニッケル含有膜と、
上記ニッケル含有膜の上に形成された銅含有膜と、
を有することを特徴とする反射部材。
【請求項5】
ポリフェニレンサルファイド系樹脂からなる基材と、
上記基材の表面に形成されたニッケルリン膜と、
上記ニッケルリン膜の上に形成された銅含有膜と、
を有することを特徴とする反射部材。
【請求項6】
前記基材の表面部分には、パラジウム微粒子が分散しているとともに、且つ、前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜は、上記表面部分の上記パラジウム微粒子を触媒核として成長したものであることを特徴とする請求項4または5記載の反射部材。
【請求項7】
前記銅含有膜の上に銀含有膜が形成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項記載の反射部材。
【請求項8】
前記銅含有膜の上にニッケル含有膜が形成され、さらに前記ニッケル含有膜の上に銀含有膜が形成されていることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項記載の反射部材。
【請求項9】
前記銀含有膜の上に保護膜が形成されていることを特徴とする請求項7または8記載の反射部材。
【請求項10】
前記保護膜が、アクリル成分とポリシロキサンの有機−無機ハイブリッド材料、またはポリシロキサンのゾルゲル無機材料からなることを特徴とする請求項9記載の反射部材。
【請求項11】
前記保護膜の膜厚が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項9または10記載の反射部材。
【請求項12】
前記基材には、発光素子が取り付けられる取り付け部位および放熱フィン部が形成され、
前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜および前記銅含有膜は、上記放熱フィン部の表面、および、上記発光素子の取り付け部位から上記放熱フィン部まで連続して形成されていることを特徴とする請求項4から11のいずれか1項に記載の反射部材。
【請求項13】
前記基材は、前記発光素子の取り付け部位と前記放熱フィン部との間となる部位に貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には、前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜および前記銅含有膜による金属膜が形成されていることを特徴とする請求項12記載の反射部材。
【請求項14】
前記基材には、発光素子と放熱フィンとが設けられ、
前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜および前記銅含有膜は、上記発光素子の取り付け部位から上記放熱フィンの取り付け部位まで連続して形成されていることを特徴とする請求項4から11のいずれか1項に記載の反射部材。
【請求項15】
前記基材は、前記発光素子の取り付け部位と前記放熱フィンの取り付け部位との間となる部位に貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には、前記ニッケルリン膜若しくは前記ニッケル含有膜および前記銅含有膜による金属膜が形成されていることを特徴とする請求項14記載の反射部材。
【請求項16】
請求項4から15のいずれか一項に記載の反射部材と、
前記反射部材の前記基材に取り付けられる発光素子と、
前記基材に取り付けられたレンズ部材と、を有し、
前記基材の表面の前記金属膜は、上記発光素子の取り付け部位から上記レンズ部材まで連続して形成されていることを特徴とする照明ユニット。
【請求項17】
前記発光素子は、高輝度LEDであり、車両の前照灯として用いられるものであることを特徴とする請求項16記載の照明ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−99533(P2009−99533A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186762(P2008−186762)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】