放物線型プロファイルを有する曲げ補償された光ファイバ
【課題】曲げによるファイバの有効断面積減少の影響を最小にするラージモードエリア光ファイバ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ファイバの曲げによるモード歪みの減少のため、曲げにより生じる勾配を考慮に入れる「あらかじめ歪みを与えられた」「作られた」プロファイルとして製造中に規定する。放物線形屈折率プロファイルは曲げに強い典型的なプロファイルである。嵩上げされた円錐形の屈折率は別の形のプロファイルである。適切に構成された形式のいずれでも曲げが生じるとプロファイルは本質的に一定の勾配の上昇があるため、曲げ損失およびモード歪みなどの要因は顕著に低減される。独創的なファイバについて得られる有効断面積は、敷設中に曲げにさらされる最先端技術によるファイバ以上に十分に改善される。作られたプロファイルはいろいろな形式のファイバ(複屈折、光バンドギャップなど)に受け入れられ、特にファイバ増幅器装置での使用に適切である。
【解決手段】ファイバの曲げによるモード歪みの減少のため、曲げにより生じる勾配を考慮に入れる「あらかじめ歪みを与えられた」「作られた」プロファイルとして製造中に規定する。放物線形屈折率プロファイルは曲げに強い典型的なプロファイルである。嵩上げされた円錐形の屈折率は別の形のプロファイルである。適切に構成された形式のいずれでも曲げが生じるとプロファイルは本質的に一定の勾配の上昇があるため、曲げ損失およびモード歪みなどの要因は顕著に低減される。独創的なファイバについて得られる有効断面積は、敷設中に曲げにさらされる最先端技術によるファイバ以上に十分に改善される。作られたプロファイルはいろいろな形式のファイバ(複屈折、光バンドギャップなど)に受け入れられ、特にファイバ増幅器装置での使用に適切である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国標準技術局(NIST)によって与えられたNIST ATPプログラム、裁定番号70NANB4H3035に基づく米国政府の支援を得て行われた。米国政府は本発明に対して一定の権利を保有する。
【0002】
本発明はラージモードエリア光ファイバ(large mode area optical fiber:LMA光ファイバ)に関し、特に、曲げによるファイバの有効断面積減少の影響を最小にするために特別に設計された屈折率プロファイルを示すラージモードエリア光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバをベースにした通信分野では、ラージモードエリアファイバがラマンおよびブリリュアン散乱などの多くの非線形障害を克服することが知られているので、特にファイバをベースにした光増幅器、およびその類似物の構築に関してラージモードエリアファイバを使用することへの関心が増している。しかしながら、ラージモードエリアファイバを使うことは、マクロベンド損失、内部モード結合およびファイバの屈折率プロファイルの不均一性に対する感度など、別のファイバ関連の感度の存在を増すことがわかっている。
【0004】
光ファイバの曲げによる損失を最小にするために、従来技術には少なくとも2つの取り組み方がある。ひとつは、基本的に機械的な方式だが、極めて曲げにくい棒のようなファイバを使うというものである。本質的にファイバを強制的にまっすぐにしておくため、曲げによる損失は極めて低減される。しかし、そのようなファイバを多くの「敷設現場(field)」で用いるとき、そのようなファイバを曲げる、さらには巻く、必要がある。したがって、ファイバを曲げるという物理的な可能性を制限することは非実用的な解決法と考えられる。他の方式は、特定の「巻き枠(spooling)」を使うよう規定することで常に特定の巻き半径(および巻き数)でファイバを使うことにより、演繹的に一定の曲げ損失を決定することと関係している。やはりこの方式も、そのようなファイバを使った現場での実装および変更における変形を制限するのみならず、ラージエリアファイバのいろいろな用途をも制限すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら、および他の設計は、ファイバモードの曲げによる損失を考慮しているが、曲げによる歪、特に曲げによる有効断面積の減少を含む歪の問題が無視されたままになっている。より従来型のコア寸法を基にする従来方式の用途では、そのようなモード歪の影響は極めて小さかった。しかし、大モードファイバの用途においては、曲げによるモード歪の存在は有効断面積の極めて大きな減少を生じる。
【0006】
したがって、いろいろな用途においてファイバが曲げられるときに有効断面積が著しく歪められないラージモードエリアファイバを提供する技術には課題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するべく、本発明は曲げによるファイバの有効断面積減少の影響を最小にするように特別に設計された屈折率プロファイルを示すラージモードエリア光ファイバ、およびその製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、ラージモードエリア光ファイバの屈折率プロファイル特性は、ファイバの有効断面積に影響する曲げによる歪だけでなく、従来の曲げによる損失パラメータの両方に基づいている。本発明によるラージモードエリアファイバの屈折率プロファイルは、信号がラージモードエリアファイバに沿って伝播するときに「見られる」曲げによる歪を本質的に補償する。
【0009】
信号に「あらかじめ歪」を与えるのと同じように、曲げられているファイバに関するような「あらかじめ曲げる」方法により、本発明のラージモードエリア光ファイバの屈折率プロファイルが特別に規定され、等価屈折率プロファイルが所望の「平坦」で「広い」ガイド領域を持つ。屈折率プロファイルに「あらかじめ歪」を与えられることがファイバベースの増幅器、光バンドギャップファイバ、複屈折ファイバ、および類似のものを含むいろいろな異なるタイプのファイバに対して使えることが、本発明の特徴である。
【0010】
本発明の一実施例において、ラージモードエリア光ファイバは本質的に放物線形屈折率プロファイルを示すように形成され、どのようにファイバを曲げてもそれは放物線形が維持されながら単に屈折率プロファイルをずらすように機能する。その結果、ファイバ特性は曲げに関連する変化に対して相対的に不変となる。
【0011】
別の実施例において、嵩上げされた円錐形の屈折率プロファイルはファイバが曲げられても平らな屈折率ピークを持つ比較的大きなガイド領域を生成することがわかっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のよりよい理解のために、本発明のその他の更なる特徴を含め、実施例、添付の図、および添付の請求の範囲とにより以下に説明する。なお、これらの図面中の構成要素は必ずしも寸法通りではない。
【0013】
図1は、所定の曲げ半径を示すように曲げられた大コア径光ファイバの典型的な断面10を示す。図示するように曲げられたファイバ10は、x−y方向に曲げ半径Rbendを持つように規定される。上に述べたように、大コア径光ファイバの曲げは有効断面積の減少という形で歪を持ち込むことが知られている。特に、曲げられたファイバ10の等価屈折率モデルは決定され、さらに光信号が以下のように半径Rbendの曲げの周りを進む時に異なる横断面位置xでの伝播光によって「見られる」経路長の差異を明らかにするために解析される。
【数1】
ここで経路長は等価屈折率プロファイルneq2を規定することによって調節され、その関係は、
【数2】
であり、それは光ファイバ材料の名目上の屈折率プロファイル(n2)の修正版であると考えられる。図2は、ファイバの屈折率に対する曲げの影響を示し、図2(a)は本質的にファイバの「まっすぐ」な部分の屈折率プロファイルを示し、図2(b)は図1のように曲げられたファイバの屈折率プロファイルを示す。図示するように、等価屈折率は以下の関係で規定される傾斜に沿って上方に位置がずれる。
【数3】
【0014】
図3に示すように、典型的なファイバについて計算したモードフィールドと曲げ寸法は従来技術によるファイバの曲げの影響を示し、1つは適度に大きなコア領域(30μm)のものであり−上の2つの像;1つは極めて大きなコア領域(50μm)のファイバのものである−下の2つの像。それぞれの場合に、左側の像は「まっすぐな」ファイバ部分の基底モード強度を示し、右側の像は7.5cm曲げ半径のファイバの基底モード強度を示す。図示する目的で、ステップインデックスコア型のラージモードエリアファイバがこれらの像を作るために使われた。本発明による曲げ補償された屈折率プロファイルを使わないと、曲げの結果としてそれぞれのファイバのモード強度プロファイルが乱れ、その乱れが大きなコア領域ファイバについてはより大きくなることが明らかである。こうして、この乱れが曲げられた光ファイバを経て伝播する光信号の乱れをもたらす。本発明は、ファイバの屈折率プロファイルを「あらかじめ補償する」ことによって、この乱れを補償し、ラージモードエリアファイバの相対的に平らな「等価プロファイル」を提供する。
【0015】
曲げられたファイバのモードの歪は図4の強度および屈折率のプロットを参照することでもっともよく理解できるが、ここで図4(a)は「まっすぐな」ファイバの強度と屈折率プロファイルのプロットを示し、図4(b)は曲げられたファイバの強度と屈折率プロファイルのプロットを示す。曲げられたファイバでは、モード強度のプロットがより非対称で鋭いピークのある屈折率を持つように歪むことが明らかである。図4(a)の屈折率プロファイルを参照すると、まっすぐなファイバは、屈折率プロファイルの参照文字BおよびCで示される複数のより高次のモード(HOM)と同様に、(参照文字Aで示される屈折率をもつ)基底モードを維持するとして示される。これらのモードはかなり広い横断面領域x1全体によく分布し維持されていることが示されている。反対に、図4(b)の屈折率プロットは曲げられたファイバ(従来型のファイバ)の場合、ファイバはいくつかのモードを維持する(この場合、モードAおよびB)ことができ、これら複数のモードがコアx2のより狭いガイド領域に閉じ込められていることを示している。閉じ込めは、かなり狭く低い屈折率の溝x3により生じる。右側の溝の先にはかなり高い屈折率の外側クラッド領域があり、図4(b)のグラフの矢印で示されるように、モードが染み出すようにクラッドの中に通り抜けていくことが出来る。
【0016】
ラージモードエリア光ファイバを曲げることにより影響を受けるキー・パラメータはその「有効断面積」である。図5は、上で解析したものと同じ2つのファイバについて有効断面積Aeffを曲げ半径Rbendの関数として表している。特に、点線は「まっすぐな」ファイバの有効断面積を表し、それに対応する曲線はファイバに曲げを加えることによる有効断面積の変化を表す。それらの曲線は、コア領域がより大きい(50μm)ファイバのモードは(曲線と点線の間の両端矢印で示されるように)適度な曲げ半径のいずれに対しても有効断面積が大きく減少することを明らかに示している。
【0017】
上に規定した等価屈折率モデルは、ファイバ(特にラージエリアファイバ)の曲げによる影響はファイバの材料そのもの(あまり違わないと仮定して)のプロファイルに一定の屈折率勾配を加えることに例えられるという結論に導く。曲げがきつくなればなるほど勾配と曲げによる歪が大きくなる。しかしながら上に述べたように、従来の光システムとファイバ設計はこの効果を考慮に入れていない。むしろ、従来の技術は曲げによる損失の量を制限/制御するいろいろな方法に集中している。しかし本発明によれば、曲げによる損失と曲げによる歪の両方を考慮する大コアエリアファイバの屈折率プロファイルを構成することが提案される。実際に、ファイバが曲げられたとき光信号から「見られる」屈折率プロファイルが有効断面積を増加させるように構成(これ以降、「作られた」プロファイルとして参照)されることがわかっている。
【0018】
図6は本発明のこの大前提を示し、図6(b)は多くの用途で望まれる(つまり、かなり大きく平らな領域であって光信号がほとんどあるいはまったく歪を生じることなく伝播する)屈折率プロファイル(コアの中心からの距離の関数としての屈折率)を含んでいる。図6(a)は、ファイバが曲げられたときに結果として生じる図6(b)の「等価」屈折率プロファイルをもたらすように求められる「作られた」屈折率プロファイルを示す。図6(a)に示されるプロファイルは理想的には所望のプロファイルをもたらすが、多くの光ファイバ製造プロセスにおいて妥当な形で同じものを作ることはかなりむずかしい。
【0019】
したがって、製造可能であり、またファイバが曲げられたときにプロファイルを平らにするという事前補償された性状をもたらすいろいろな「作られた」光ファイバプロファイルが提案されている。上に述べたように、本発明の屈折率処理の利点は事実上どのような形式の光ファイバ(ラージエリアファイバ)にも適用できるということである。特に、また以下にさらに詳細に扱われるように、ファイバ増幅器はそのような事前補償の利用に特によく適合するファイバ形式の1つの部類であると考えられる。しかし独創的な技法は、これらに限定されるものではないが、複屈折ファイバ、(縦軸方向に伸びる空気孔あるいは固体を充填した孔を含む)光バンドギャップファイバ、およびUV感作された領域あるいはグレーティング特性などの「特性」を含むファイバを含むいろいろな他の形式のファイバに等しく適用可能である。本発明の1つの際立った実施例は「作られた」プロファイルとして放物線形の屈折率プロファイルを利用していて、放物線プロファイルは一定の勾配(つまりファイバが曲げられたとき)を加えても基本的に不変である。放物線形屈折率プロファイルは以下のように規定される。
【数4】
こうして一定の勾配を加えたときに不変であるように規定される。そして、関連する境界効果が比較的小さいままであるかぎり、事実上どのような曲げ半径に対しても自動的にあらかじめ補償される。この特性が図7に示され、図7(a)に放物線形屈折率プロファイルを示す。プロファイルの先端を切り取ったものが図7(a)に暗線で示され、先端を切り取ったプロファイルはr>Rcoreに対してn(x,y)=ncoreである。数学的に厳密に求めると、
【数5】
ここでΔn=ncore−ncladである。こうして曲げによる項Bxを加えることは変移xdに等しく、ここで、
【数6】
かつ、一定の屈折率のずれの加算Cは以下によって規定される。
【数7】
【0020】
そのような変換は、図7(a)に示されるプロファイルを図7(b)のプロファイルと比較することでわかるように、ファイバが曲げられる時にモード寸法あるいは形状にほとんど変化を生じない。そのうえ、先端を切り取った放物線形プロファイルのファイバは曲げによる有効断面積の減少に対していくらか追加的な免疫を示し、非線形障害に対してより良好な耐性を示す。導入された光の曲げによる歪および変移も光と利得媒体の間の重複部で重要な変化をする。曲げによる歪をあらかじめ補償することは入力信号から見て利得の重複を改善する更なる利点がある。図示のように、放物線形屈折率機能は曲げの影響の下でも当然ながら不変(しかし変換される)であり、モードフィールドは概して曲げによる歪、非対称、および収縮がない。この理解の結果として、本発明のこの実施例によって有効断面積は曲げのない同じファイバのモードと比較したとき「曲げられた」ファイバでは顕著に減少してもよいことがわかっている。この結果はファイバ増幅器との関連で極めて重要である。なぜなら多くのファイバは現場に敷設されるときに曲げられる(巻かれる)からである。本発明によって屈折率プロファイルをあらかじめ補償することにより、伝播する信号の所望の(信号)モードと利得媒体との間の重複が改善され、その一方望ましくない(「雑音」)モードと利得媒体との間の重複も減少させる。実際、本発明のファイバ増幅器は希土類をドープしたコア領域(例えばエルビウム、イットリビウム、および類似の希土類元素)を用いて従来のファイバ増幅器に似た方法で形成されてもよい。実際、さらに所望の信号モードと利得領域の間の重複を改善し、なお増幅器の効率を改善するためにコアドーパントはコアの一部に限定してもよい。利得媒体中でポンプ光の効率よい吸収をもたらすために、モード混合特性がファイバ増幅器に与えられてもよい。ある場合には、ポンプ信号がクラッド領域に沿ってガイドされるように低屈折率の外側クラッド層が規定のクラッド領域の周囲に形成されてもよい。
【0021】
図8は、本発明によるこの特定の実施例放物線形屈折率プロファイルファイバの安定性を確認するシミュレーション結果を含む。図8(a)は放物線形プロファイルを持つ「まっすぐな」ファイバのモードフィールドプロファイルを示し、図8(b)は7.5cmの曲げ半径を持つファイバのモードフィールドプロファイルを示す。この結果を図3に示す従来の屈折率プロファイルを持つファイバと比較すると、放物線形屈折率プロファイルを使うことは歪がより少ない結果となることが明らかである。かなりきつい曲げであってもモードは本質的に歪がない、あるいは収縮がないことを示す。
【0022】
本発明のこの実施例の特定の構成において、屈折率プロファイルの放物線形はそれぞれが僅かに異なる屈折率である多くの個々の段階の区分的線形近似によって得られてもよい。図9はそのような部分的に一定な屈折率の実施例の屈折率プロファイルを含む。このファイバのシミュレートした有効断面積(Aeff)が、図10に曲げ半径の関数でプロットされた濃い曲線で示されている。放物線形プロファイルを使うと、その結果、曲げ半径が8cm未満から少なくとも20cmまでの範囲にわたって有効断面積を本質的に一定に保持することが明らかに示されている。比較のために、30μmコアの従来技術によるファイバ(曲線II)および50μmコアの従来技術によるファイバ(曲線III)の有効断面積の変化を、同じく図10に示す。従来技術によるファイバは、ファイバの曲げによってより多く影響を受けることは明らかである。
【0023】
図11は、本発明のこの実施例(曲線I)の放物線形プロファイルファイバの有効断面積の関数として表した損失比のプロットを含み、図2に示す標準のステップインデックスコアファイバ、および従来のフォトニッククリスタルファイバ(微小構造光ファイバとして形成されている)のプロットと比較している。このプロットは有効断面積と高次モードの間の得失評価を比較でき、「もっともよい性能」がプロット(シングルモードでの性能を示す)に沿った上のほうでかつ右側(ラージモードエリア)に得られる。図示のように、本発明の放物線形プロファイルファイバは、この手段によって従来技術によるファイバを越える改善された性能をもたらす。比較のために図12は同じプロットを含むが、ここではモードエリアの曲げによる変化は無視されている。曲げによるモードエリアの低減を無視することにより、このプロットが放物線設計の潜在的に重要な利点を完全に見落とすことは明らかである。さらにこのプロットは実験を行い、特にラージコアエリアファイバが使われる用途において「曲げられた」ファイバ部分による結果を理解する必要性を立証している。
【0024】
図13は、本発明の別の実施例の「作られた」屈折率プロファイルを含んでいて、この場合は「嵩上げされた円錐形」屈折率プロファイルであり、同じくファイバが曲げられたときかなり平らな屈折率プロファイルをもたらす。放物線形プロファイルのように嵩上げされた円錐形屈折率プロファイルは、限られた数の一定な屈折率層の区分的近似として形成される。特に、嵩上げされた円錐形の実施例の屈折率プロファイルは以下のように規定される;
n(x,y)=ncore − Ar(for r<Rcore)、および
=nclad (for r>Rcore)
ここでrはコアの中心からの半径方向の距離として規定される。
【0025】
この場合、円錐形の勾配が曲げによる勾配と一致するなら、その結果である等価屈折率プロファイルは広くて平らなガイド領域を持つであろう。図14はこのファイバの屈折率プロファイルの等高線プロットを示し、図14(a)は「まっすぐな」ファイバ部分の等高線プロットを示し、図14(b)は「曲げられた」ファイバ部分の等高線プロットを示す。図14(b)を参照すると、この特別な嵩上げされた円錐形プロファイルは、ファイバが曲げられたとき、平らな屈折率のピークを持つラージエリアガイド領域をもたらすことが明らかである。
【0026】
図15は、有効断面積を曲げ半径の関数として表したプロットで、本発明(実線)によって形成された嵩上げされた円錐形の曲げによって変化しないファイバと、従来技術(点線)によるステップインデックスファイバを比較している。約12cmよりもきつい曲げに対して、嵩上げされた円錐形のプロファイルがより大きな有効断面積を生じていることがわかる。こうして嵩上げされた円錐形のプロファイルでラージモードエリアファイバを形成することにより、従来技術に見られる有効断面積が減少する問題は解消される。
【0027】
要約すると、発明の概念は曲げられた光ファイバ中に導入される光によって「見られる」曲げによる勾配を本質的に補償する「作られた」屈折率プロファイルを規定することに向けられている。一般論としては「作られた」屈折率プロファイルは従来型のプロファイルから曲げによる勾配が差し引かれた「従来型の」プロファイルであると定義できる。
【0028】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、いろいろな修正および変更が本発明になされ得ることは当業者には明らかであろう。特に、曲げを考慮に入れたファイバに関わる勾配を得るために、屈折率プロファイルを「あらかじめ変形させる」ためにいろいろ別の屈折率プロファイルの配列が利用され得る。したがって、本発明はここに加えられる請求の範囲、および同等のものによってこの発明の修正および変更を保護するものであると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ファイバの形にある程度の曲げを含むラージモードエリアファイバの典型的な断面を示す。
【図2】図1のファイバの屈折率を示す1組のグラフを含み、図2(a)は従来型の「まっすぐな」ファイバの屈折率を示し、図2(b)は図1に示すように曲げられたファイバの等価屈折率を示す。
【図3A】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3B】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3C】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3D】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図4】1組の強度および屈折率のプロットを含み、図4(a)は「まっすぐな」ファイバの強度および屈折率プロファイルのプロットを示し、図4(b)は「曲げられた」ファイバの強度および屈折率プロファイルのプロットを示す。
【図5】曲げ半径の関数として表したファイバの有効断面積の変化のグラフである。
【図6】1組の屈折率プロファイルを含み、図6(a)はその後に曲げられ図6(b)に示す「仮想的な」平らで広いプロファイルを示すファイバに対応する「仮想的な」作られたプロファイルを示す。
【図7】放物線形屈折率プロファイルファイバのグラフで、図7(a)は「まっすぐな」ファイバに対応するプロファイルを示し、図7(b)は「曲げられた」ファイバに対応するプロファイルを示す。
【図8】本発明による典型的な放物線形プロファイルを持つ曲げ耐性のあるファイバの安定性を確認するシミュレーションの結果を含む。
【図9】本発明による典型的な放物線形プロファイルを持つファイバの区分ごとに一定な配列のプロットである。
【図10】曲げ半径の関数として表した図9のファイバの有効断面積のプロットである。
【図11】有効断面積の関数として表した本発明の曲げ耐性のあるファイバの損失比のプロットを含む。
【図12】曲げが加えられたことによる有効断面積の変化を無視する結果の誤った性能比較のプロットを比較のために示す。
【図13】本発明の別の実施例の高くなった円錐形の屈折率プロファイルのプロットである。
【図14】まっすぐなファイバおよび曲げられたファイバの両方の「嵩上げされた円錐形」プロファイルに対する屈折率プロファイルの等高線プロットである。
【図15】従来のステップインデックスコアファイバと本発明による曲げで変化しないファイバの嵩上げされた円錐形プロファイルとを比較する有効断面積対曲げ半径のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国標準技術局(NIST)によって与えられたNIST ATPプログラム、裁定番号70NANB4H3035に基づく米国政府の支援を得て行われた。米国政府は本発明に対して一定の権利を保有する。
【0002】
本発明はラージモードエリア光ファイバ(large mode area optical fiber:LMA光ファイバ)に関し、特に、曲げによるファイバの有効断面積減少の影響を最小にするために特別に設計された屈折率プロファイルを示すラージモードエリア光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバをベースにした通信分野では、ラージモードエリアファイバがラマンおよびブリリュアン散乱などの多くの非線形障害を克服することが知られているので、特にファイバをベースにした光増幅器、およびその類似物の構築に関してラージモードエリアファイバを使用することへの関心が増している。しかしながら、ラージモードエリアファイバを使うことは、マクロベンド損失、内部モード結合およびファイバの屈折率プロファイルの不均一性に対する感度など、別のファイバ関連の感度の存在を増すことがわかっている。
【0004】
光ファイバの曲げによる損失を最小にするために、従来技術には少なくとも2つの取り組み方がある。ひとつは、基本的に機械的な方式だが、極めて曲げにくい棒のようなファイバを使うというものである。本質的にファイバを強制的にまっすぐにしておくため、曲げによる損失は極めて低減される。しかし、そのようなファイバを多くの「敷設現場(field)」で用いるとき、そのようなファイバを曲げる、さらには巻く、必要がある。したがって、ファイバを曲げるという物理的な可能性を制限することは非実用的な解決法と考えられる。他の方式は、特定の「巻き枠(spooling)」を使うよう規定することで常に特定の巻き半径(および巻き数)でファイバを使うことにより、演繹的に一定の曲げ損失を決定することと関係している。やはりこの方式も、そのようなファイバを使った現場での実装および変更における変形を制限するのみならず、ラージエリアファイバのいろいろな用途をも制限すると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら、および他の設計は、ファイバモードの曲げによる損失を考慮しているが、曲げによる歪、特に曲げによる有効断面積の減少を含む歪の問題が無視されたままになっている。より従来型のコア寸法を基にする従来方式の用途では、そのようなモード歪の影響は極めて小さかった。しかし、大モードファイバの用途においては、曲げによるモード歪の存在は有効断面積の極めて大きな減少を生じる。
【0006】
したがって、いろいろな用途においてファイバが曲げられるときに有効断面積が著しく歪められないラージモードエリアファイバを提供する技術には課題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するべく、本発明は曲げによるファイバの有効断面積減少の影響を最小にするように特別に設計された屈折率プロファイルを示すラージモードエリア光ファイバ、およびその製造方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、ラージモードエリア光ファイバの屈折率プロファイル特性は、ファイバの有効断面積に影響する曲げによる歪だけでなく、従来の曲げによる損失パラメータの両方に基づいている。本発明によるラージモードエリアファイバの屈折率プロファイルは、信号がラージモードエリアファイバに沿って伝播するときに「見られる」曲げによる歪を本質的に補償する。
【0009】
信号に「あらかじめ歪」を与えるのと同じように、曲げられているファイバに関するような「あらかじめ曲げる」方法により、本発明のラージモードエリア光ファイバの屈折率プロファイルが特別に規定され、等価屈折率プロファイルが所望の「平坦」で「広い」ガイド領域を持つ。屈折率プロファイルに「あらかじめ歪」を与えられることがファイバベースの増幅器、光バンドギャップファイバ、複屈折ファイバ、および類似のものを含むいろいろな異なるタイプのファイバに対して使えることが、本発明の特徴である。
【0010】
本発明の一実施例において、ラージモードエリア光ファイバは本質的に放物線形屈折率プロファイルを示すように形成され、どのようにファイバを曲げてもそれは放物線形が維持されながら単に屈折率プロファイルをずらすように機能する。その結果、ファイバ特性は曲げに関連する変化に対して相対的に不変となる。
【0011】
別の実施例において、嵩上げされた円錐形の屈折率プロファイルはファイバが曲げられても平らな屈折率ピークを持つ比較的大きなガイド領域を生成することがわかっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のよりよい理解のために、本発明のその他の更なる特徴を含め、実施例、添付の図、および添付の請求の範囲とにより以下に説明する。なお、これらの図面中の構成要素は必ずしも寸法通りではない。
【0013】
図1は、所定の曲げ半径を示すように曲げられた大コア径光ファイバの典型的な断面10を示す。図示するように曲げられたファイバ10は、x−y方向に曲げ半径Rbendを持つように規定される。上に述べたように、大コア径光ファイバの曲げは有効断面積の減少という形で歪を持ち込むことが知られている。特に、曲げられたファイバ10の等価屈折率モデルは決定され、さらに光信号が以下のように半径Rbendの曲げの周りを進む時に異なる横断面位置xでの伝播光によって「見られる」経路長の差異を明らかにするために解析される。
【数1】
ここで経路長は等価屈折率プロファイルneq2を規定することによって調節され、その関係は、
【数2】
であり、それは光ファイバ材料の名目上の屈折率プロファイル(n2)の修正版であると考えられる。図2は、ファイバの屈折率に対する曲げの影響を示し、図2(a)は本質的にファイバの「まっすぐ」な部分の屈折率プロファイルを示し、図2(b)は図1のように曲げられたファイバの屈折率プロファイルを示す。図示するように、等価屈折率は以下の関係で規定される傾斜に沿って上方に位置がずれる。
【数3】
【0014】
図3に示すように、典型的なファイバについて計算したモードフィールドと曲げ寸法は従来技術によるファイバの曲げの影響を示し、1つは適度に大きなコア領域(30μm)のものであり−上の2つの像;1つは極めて大きなコア領域(50μm)のファイバのものである−下の2つの像。それぞれの場合に、左側の像は「まっすぐな」ファイバ部分の基底モード強度を示し、右側の像は7.5cm曲げ半径のファイバの基底モード強度を示す。図示する目的で、ステップインデックスコア型のラージモードエリアファイバがこれらの像を作るために使われた。本発明による曲げ補償された屈折率プロファイルを使わないと、曲げの結果としてそれぞれのファイバのモード強度プロファイルが乱れ、その乱れが大きなコア領域ファイバについてはより大きくなることが明らかである。こうして、この乱れが曲げられた光ファイバを経て伝播する光信号の乱れをもたらす。本発明は、ファイバの屈折率プロファイルを「あらかじめ補償する」ことによって、この乱れを補償し、ラージモードエリアファイバの相対的に平らな「等価プロファイル」を提供する。
【0015】
曲げられたファイバのモードの歪は図4の強度および屈折率のプロットを参照することでもっともよく理解できるが、ここで図4(a)は「まっすぐな」ファイバの強度と屈折率プロファイルのプロットを示し、図4(b)は曲げられたファイバの強度と屈折率プロファイルのプロットを示す。曲げられたファイバでは、モード強度のプロットがより非対称で鋭いピークのある屈折率を持つように歪むことが明らかである。図4(a)の屈折率プロファイルを参照すると、まっすぐなファイバは、屈折率プロファイルの参照文字BおよびCで示される複数のより高次のモード(HOM)と同様に、(参照文字Aで示される屈折率をもつ)基底モードを維持するとして示される。これらのモードはかなり広い横断面領域x1全体によく分布し維持されていることが示されている。反対に、図4(b)の屈折率プロットは曲げられたファイバ(従来型のファイバ)の場合、ファイバはいくつかのモードを維持する(この場合、モードAおよびB)ことができ、これら複数のモードがコアx2のより狭いガイド領域に閉じ込められていることを示している。閉じ込めは、かなり狭く低い屈折率の溝x3により生じる。右側の溝の先にはかなり高い屈折率の外側クラッド領域があり、図4(b)のグラフの矢印で示されるように、モードが染み出すようにクラッドの中に通り抜けていくことが出来る。
【0016】
ラージモードエリア光ファイバを曲げることにより影響を受けるキー・パラメータはその「有効断面積」である。図5は、上で解析したものと同じ2つのファイバについて有効断面積Aeffを曲げ半径Rbendの関数として表している。特に、点線は「まっすぐな」ファイバの有効断面積を表し、それに対応する曲線はファイバに曲げを加えることによる有効断面積の変化を表す。それらの曲線は、コア領域がより大きい(50μm)ファイバのモードは(曲線と点線の間の両端矢印で示されるように)適度な曲げ半径のいずれに対しても有効断面積が大きく減少することを明らかに示している。
【0017】
上に規定した等価屈折率モデルは、ファイバ(特にラージエリアファイバ)の曲げによる影響はファイバの材料そのもの(あまり違わないと仮定して)のプロファイルに一定の屈折率勾配を加えることに例えられるという結論に導く。曲げがきつくなればなるほど勾配と曲げによる歪が大きくなる。しかしながら上に述べたように、従来の光システムとファイバ設計はこの効果を考慮に入れていない。むしろ、従来の技術は曲げによる損失の量を制限/制御するいろいろな方法に集中している。しかし本発明によれば、曲げによる損失と曲げによる歪の両方を考慮する大コアエリアファイバの屈折率プロファイルを構成することが提案される。実際に、ファイバが曲げられたとき光信号から「見られる」屈折率プロファイルが有効断面積を増加させるように構成(これ以降、「作られた」プロファイルとして参照)されることがわかっている。
【0018】
図6は本発明のこの大前提を示し、図6(b)は多くの用途で望まれる(つまり、かなり大きく平らな領域であって光信号がほとんどあるいはまったく歪を生じることなく伝播する)屈折率プロファイル(コアの中心からの距離の関数としての屈折率)を含んでいる。図6(a)は、ファイバが曲げられたときに結果として生じる図6(b)の「等価」屈折率プロファイルをもたらすように求められる「作られた」屈折率プロファイルを示す。図6(a)に示されるプロファイルは理想的には所望のプロファイルをもたらすが、多くの光ファイバ製造プロセスにおいて妥当な形で同じものを作ることはかなりむずかしい。
【0019】
したがって、製造可能であり、またファイバが曲げられたときにプロファイルを平らにするという事前補償された性状をもたらすいろいろな「作られた」光ファイバプロファイルが提案されている。上に述べたように、本発明の屈折率処理の利点は事実上どのような形式の光ファイバ(ラージエリアファイバ)にも適用できるということである。特に、また以下にさらに詳細に扱われるように、ファイバ増幅器はそのような事前補償の利用に特によく適合するファイバ形式の1つの部類であると考えられる。しかし独創的な技法は、これらに限定されるものではないが、複屈折ファイバ、(縦軸方向に伸びる空気孔あるいは固体を充填した孔を含む)光バンドギャップファイバ、およびUV感作された領域あるいはグレーティング特性などの「特性」を含むファイバを含むいろいろな他の形式のファイバに等しく適用可能である。本発明の1つの際立った実施例は「作られた」プロファイルとして放物線形の屈折率プロファイルを利用していて、放物線プロファイルは一定の勾配(つまりファイバが曲げられたとき)を加えても基本的に不変である。放物線形屈折率プロファイルは以下のように規定される。
【数4】
こうして一定の勾配を加えたときに不変であるように規定される。そして、関連する境界効果が比較的小さいままであるかぎり、事実上どのような曲げ半径に対しても自動的にあらかじめ補償される。この特性が図7に示され、図7(a)に放物線形屈折率プロファイルを示す。プロファイルの先端を切り取ったものが図7(a)に暗線で示され、先端を切り取ったプロファイルはr>Rcoreに対してn(x,y)=ncoreである。数学的に厳密に求めると、
【数5】
ここでΔn=ncore−ncladである。こうして曲げによる項Bxを加えることは変移xdに等しく、ここで、
【数6】
かつ、一定の屈折率のずれの加算Cは以下によって規定される。
【数7】
【0020】
そのような変換は、図7(a)に示されるプロファイルを図7(b)のプロファイルと比較することでわかるように、ファイバが曲げられる時にモード寸法あるいは形状にほとんど変化を生じない。そのうえ、先端を切り取った放物線形プロファイルのファイバは曲げによる有効断面積の減少に対していくらか追加的な免疫を示し、非線形障害に対してより良好な耐性を示す。導入された光の曲げによる歪および変移も光と利得媒体の間の重複部で重要な変化をする。曲げによる歪をあらかじめ補償することは入力信号から見て利得の重複を改善する更なる利点がある。図示のように、放物線形屈折率機能は曲げの影響の下でも当然ながら不変(しかし変換される)であり、モードフィールドは概して曲げによる歪、非対称、および収縮がない。この理解の結果として、本発明のこの実施例によって有効断面積は曲げのない同じファイバのモードと比較したとき「曲げられた」ファイバでは顕著に減少してもよいことがわかっている。この結果はファイバ増幅器との関連で極めて重要である。なぜなら多くのファイバは現場に敷設されるときに曲げられる(巻かれる)からである。本発明によって屈折率プロファイルをあらかじめ補償することにより、伝播する信号の所望の(信号)モードと利得媒体との間の重複が改善され、その一方望ましくない(「雑音」)モードと利得媒体との間の重複も減少させる。実際、本発明のファイバ増幅器は希土類をドープしたコア領域(例えばエルビウム、イットリビウム、および類似の希土類元素)を用いて従来のファイバ増幅器に似た方法で形成されてもよい。実際、さらに所望の信号モードと利得領域の間の重複を改善し、なお増幅器の効率を改善するためにコアドーパントはコアの一部に限定してもよい。利得媒体中でポンプ光の効率よい吸収をもたらすために、モード混合特性がファイバ増幅器に与えられてもよい。ある場合には、ポンプ信号がクラッド領域に沿ってガイドされるように低屈折率の外側クラッド層が規定のクラッド領域の周囲に形成されてもよい。
【0021】
図8は、本発明によるこの特定の実施例放物線形屈折率プロファイルファイバの安定性を確認するシミュレーション結果を含む。図8(a)は放物線形プロファイルを持つ「まっすぐな」ファイバのモードフィールドプロファイルを示し、図8(b)は7.5cmの曲げ半径を持つファイバのモードフィールドプロファイルを示す。この結果を図3に示す従来の屈折率プロファイルを持つファイバと比較すると、放物線形屈折率プロファイルを使うことは歪がより少ない結果となることが明らかである。かなりきつい曲げであってもモードは本質的に歪がない、あるいは収縮がないことを示す。
【0022】
本発明のこの実施例の特定の構成において、屈折率プロファイルの放物線形はそれぞれが僅かに異なる屈折率である多くの個々の段階の区分的線形近似によって得られてもよい。図9はそのような部分的に一定な屈折率の実施例の屈折率プロファイルを含む。このファイバのシミュレートした有効断面積(Aeff)が、図10に曲げ半径の関数でプロットされた濃い曲線で示されている。放物線形プロファイルを使うと、その結果、曲げ半径が8cm未満から少なくとも20cmまでの範囲にわたって有効断面積を本質的に一定に保持することが明らかに示されている。比較のために、30μmコアの従来技術によるファイバ(曲線II)および50μmコアの従来技術によるファイバ(曲線III)の有効断面積の変化を、同じく図10に示す。従来技術によるファイバは、ファイバの曲げによってより多く影響を受けることは明らかである。
【0023】
図11は、本発明のこの実施例(曲線I)の放物線形プロファイルファイバの有効断面積の関数として表した損失比のプロットを含み、図2に示す標準のステップインデックスコアファイバ、および従来のフォトニッククリスタルファイバ(微小構造光ファイバとして形成されている)のプロットと比較している。このプロットは有効断面積と高次モードの間の得失評価を比較でき、「もっともよい性能」がプロット(シングルモードでの性能を示す)に沿った上のほうでかつ右側(ラージモードエリア)に得られる。図示のように、本発明の放物線形プロファイルファイバは、この手段によって従来技術によるファイバを越える改善された性能をもたらす。比較のために図12は同じプロットを含むが、ここではモードエリアの曲げによる変化は無視されている。曲げによるモードエリアの低減を無視することにより、このプロットが放物線設計の潜在的に重要な利点を完全に見落とすことは明らかである。さらにこのプロットは実験を行い、特にラージコアエリアファイバが使われる用途において「曲げられた」ファイバ部分による結果を理解する必要性を立証している。
【0024】
図13は、本発明の別の実施例の「作られた」屈折率プロファイルを含んでいて、この場合は「嵩上げされた円錐形」屈折率プロファイルであり、同じくファイバが曲げられたときかなり平らな屈折率プロファイルをもたらす。放物線形プロファイルのように嵩上げされた円錐形屈折率プロファイルは、限られた数の一定な屈折率層の区分的近似として形成される。特に、嵩上げされた円錐形の実施例の屈折率プロファイルは以下のように規定される;
n(x,y)=ncore − Ar(for r<Rcore)、および
=nclad (for r>Rcore)
ここでrはコアの中心からの半径方向の距離として規定される。
【0025】
この場合、円錐形の勾配が曲げによる勾配と一致するなら、その結果である等価屈折率プロファイルは広くて平らなガイド領域を持つであろう。図14はこのファイバの屈折率プロファイルの等高線プロットを示し、図14(a)は「まっすぐな」ファイバ部分の等高線プロットを示し、図14(b)は「曲げられた」ファイバ部分の等高線プロットを示す。図14(b)を参照すると、この特別な嵩上げされた円錐形プロファイルは、ファイバが曲げられたとき、平らな屈折率のピークを持つラージエリアガイド領域をもたらすことが明らかである。
【0026】
図15は、有効断面積を曲げ半径の関数として表したプロットで、本発明(実線)によって形成された嵩上げされた円錐形の曲げによって変化しないファイバと、従来技術(点線)によるステップインデックスファイバを比較している。約12cmよりもきつい曲げに対して、嵩上げされた円錐形のプロファイルがより大きな有効断面積を生じていることがわかる。こうして嵩上げされた円錐形のプロファイルでラージモードエリアファイバを形成することにより、従来技術に見られる有効断面積が減少する問題は解消される。
【0027】
要約すると、発明の概念は曲げられた光ファイバ中に導入される光によって「見られる」曲げによる勾配を本質的に補償する「作られた」屈折率プロファイルを規定することに向けられている。一般論としては「作られた」屈折率プロファイルは従来型のプロファイルから曲げによる勾配が差し引かれた「従来型の」プロファイルであると定義できる。
【0028】
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、いろいろな修正および変更が本発明になされ得ることは当業者には明らかであろう。特に、曲げを考慮に入れたファイバに関わる勾配を得るために、屈折率プロファイルを「あらかじめ変形させる」ためにいろいろ別の屈折率プロファイルの配列が利用され得る。したがって、本発明はここに加えられる請求の範囲、および同等のものによってこの発明の修正および変更を保護するものであると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ファイバの形にある程度の曲げを含むラージモードエリアファイバの典型的な断面を示す。
【図2】図1のファイバの屈折率を示す1組のグラフを含み、図2(a)は従来型の「まっすぐな」ファイバの屈折率を示し、図2(b)は図1に示すように曲げられたファイバの等価屈折率を示す。
【図3A】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3B】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3C】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図3D】ファイバのコア径と曲げ半径の関数として計算されたモードフィールドを示す。
【図4】1組の強度および屈折率のプロットを含み、図4(a)は「まっすぐな」ファイバの強度および屈折率プロファイルのプロットを示し、図4(b)は「曲げられた」ファイバの強度および屈折率プロファイルのプロットを示す。
【図5】曲げ半径の関数として表したファイバの有効断面積の変化のグラフである。
【図6】1組の屈折率プロファイルを含み、図6(a)はその後に曲げられ図6(b)に示す「仮想的な」平らで広いプロファイルを示すファイバに対応する「仮想的な」作られたプロファイルを示す。
【図7】放物線形屈折率プロファイルファイバのグラフで、図7(a)は「まっすぐな」ファイバに対応するプロファイルを示し、図7(b)は「曲げられた」ファイバに対応するプロファイルを示す。
【図8】本発明による典型的な放物線形プロファイルを持つ曲げ耐性のあるファイバの安定性を確認するシミュレーションの結果を含む。
【図9】本発明による典型的な放物線形プロファイルを持つファイバの区分ごとに一定な配列のプロットである。
【図10】曲げ半径の関数として表した図9のファイバの有効断面積のプロットである。
【図11】有効断面積の関数として表した本発明の曲げ耐性のあるファイバの損失比のプロットを含む。
【図12】曲げが加えられたことによる有効断面積の変化を無視する結果の誤った性能比較のプロットを比較のために示す。
【図13】本発明の別の実施例の高くなった円錐形の屈折率プロファイルのプロットである。
【図14】まっすぐなファイバおよび曲げられたファイバの両方の「嵩上げされた円錐形」プロファイルに対する屈折率プロファイルの等高線プロットである。
【図15】従来のステップインデックスコアファイバと本発明による曲げで変化しないファイバの嵩上げされた円錐形プロファイルとを比較する有効断面積対曲げ半径のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較的大きなコア領域と、前記コア領域を取り囲むクラッド領域を含む曲げの影響に強い光ファイバにおいて、前記光ファイバの曲げに関わるモード歪を補償するあらかじめ歪を与えられたプロファイルを示すように、前記比較的大きなコア領域の屈折率プロファイルが製造中に規定されることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記光ファイバがラージモードエリアファイバであるように規定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、予想される曲げによる勾配によって低減される本質的に広く平らなプロファイルであるように規定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、本質的に放物線形であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、本質的に嵩上げされた円錐形屈折率プロファイルであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記比較的大きなコア領域が利得媒体を含み、前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、所望の伝播する光信号モードと利得媒体との間での重複を強めるように特に構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記所望の伝播する光信号モードと前記利得媒体との間での重複を改善するために、前記利得媒体が前記比較的大きなコア領域の中心部に限定されることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが望ましくない伝播モードと前記利得媒体との間の重複を最小にするように特に構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記ファイバが前記利得媒体内でのポンプ信号の吸収の改善をもたらすモード混合特性を示すことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記光ファイバがさらに前記クラッド領域を取り囲むように配される低屈折率の外側クラッド層を含み、前記低屈折率の外側クラッド層の存在によって前記ポンプ信号が前記クラッド領域に沿ってガイドされることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項1】
比較的大きなコア領域と、前記コア領域を取り囲むクラッド領域を含む曲げの影響に強い光ファイバにおいて、前記光ファイバの曲げに関わるモード歪を補償するあらかじめ歪を与えられたプロファイルを示すように、前記比較的大きなコア領域の屈折率プロファイルが製造中に規定されることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記光ファイバがラージモードエリアファイバであるように規定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、予想される曲げによる勾配によって低減される本質的に広く平らなプロファイルであるように規定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、本質的に放物線形であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、本質的に嵩上げされた円錐形屈折率プロファイルであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記比較的大きなコア領域が利得媒体を含み、前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが、所望の伝播する光信号モードと利得媒体との間での重複を強めるように特に構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記所望の伝播する光信号モードと前記利得媒体との間での重複を改善するために、前記利得媒体が前記比較的大きなコア領域の中心部に限定されることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記あらかじめ歪を与えられたプロファイルが望ましくない伝播モードと前記利得媒体との間の重複を最小にするように特に構成されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記ファイバが前記利得媒体内でのポンプ信号の吸収の改善をもたらすモード混合特性を示すことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記比較的大きなコア領域が前記利得媒体を含み、前記光ファイバがさらに前記クラッド領域を取り囲むように配される低屈折率の外側クラッド層を含み、前記低屈折率の外側クラッド層の存在によって前記ポンプ信号が前記クラッド領域に沿ってガイドされることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図8】
【図14】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図8】
【図14】
【公開番号】特開2007−179058(P2007−179058A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349089(P2006−349089)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(302003314)フルカワ エレクトリック ノース アメリカ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(302003314)フルカワ エレクトリック ノース アメリカ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】
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