説明

放物面照明/結像光学系及び傾斜結像面を有する干渉計

【課題】表面を検査するフィゾー干渉計の対物光学系を最適化する。
【解決手段】基準表面と検査表面18の虚像を形成するオフアクシス放物面反射器30及び虚像をカメラ検出器表面48上の実像に変換するカメラレンズ系46がフィゾー干渉計10に組み込まれる。カメラ検出器表面48は、カメラレンズ系46とともに、オフアクシス放物面反射器30による虚像の傾きに適応するように配置される。オフアクシス放物面反射器30に対して配置された実効光源26およびコリメート光を垂直入射で受け、光の第1の部分を反射し、光の第2の部分を透過させるために配向されたフィゾー基準表面16も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は干渉計、特に、周波数スキャン干渉法を実施するために構成されたフィゾー型干渉計、及び検査物体の照明及び結像のための重畳光路内の屈折光学系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フィゾー干渉計は検査物体の照明及び結像のいずれにも用いられるコヒーレント光が進む光路と同じ光路に沿う基準光学素子を備える。一般にフィゾー表面と称される、基準光学素子の基準表面は検査物体に向けられるコヒーレント光の一部分を基準ビームとして反射し、検査物体の検査表面への/からのコヒーレント光の他部分を対物ビームとして透過させる。
【0003】
基準光学素子及び検査物体に近づくコヒーレント光は一般にコリメートされており、多くのフィゾー干渉計において、基準表面及び検査表面は、光を反射して光源に向けて戻すために、近づく光に対して少なくとも公称上は垂直に配向される。光が基準表面に近づくときと同じコリメータされた形態で光を逆反射させるために一般に平滑かつ平坦につくられる基準表面とは異なり、検査表面は拡散性とすることができ、あるいは表面構造を、また一般に測定の対象である表面凹凸も、有することができる。コヒーレント光は検査表面からいくらかの範囲の方向にわたって反射されるから、基準表面及び試験表面の両者からの反射光を集めるために結像系が用いられる。結像系は共通の結像面上にそれぞれの表面を結像させ、結像面上には基準表面及び検査表面方反射されるコヒーレント光の間の位相差の結果として干渉パターンが形成される。
【0004】
そのような位相差はそれだけで、基準表面と検査表面の間の光路長差をコヒーレント光の一波長より小さいアンビギュイティ間隔内で測定するために用いることができる。より大きな構造または凹凸を有する検査表面にともなう、より大きな光路長を測定するため、周波数シフト型干渉計はコヒーレント光の周波数を変え、対応する位相の変化率をモニタすることで、かなり大きな範囲の基準表面と試験表面の間の光路長差を測定する。周波数走査型干渉計による測定が可能な検査表面はかなり広い範囲の変化を有することができるから、検査表面の無収差像を形成するためにさらに強い要件が結像系にも課せられる。
【0005】
検査表面の凹凸構造が無歪で結像されなければならない様々な深さに適応するため、結像系は一般に、少なくとも対物側では、テレセントリック結像系として構成される。したがって、基準表面及び検査表面がいずれもそれを通して照明及び結像される対物光学系はそれにかけて測定値がとられる視野より大きくなければならない。逆にいえば、対物光学系の寸法が測定にかけられる視野の最大寸法を決定する。視野は一般に、可能な最大の検査物体あるいはさらに一層大きな検査物体の少なくとも可能な最大の領域を測定するために、実用的に可能な限り大きく設定されるから、対物光学系自体も実用的に可能な限り大きくつくられることが多い。
【0006】
ほとんどのフィゾー干渉計は、基準表面及び検査表面に近づくコヒーレント光をコリメートするため及び基準表面及び検査表面から反射されるコヒーレント光を、テレセントリック絞りを通して集めて、集束させるため、基準光学素子の直前に配置される。収差の制限に対する強くなる一方の要求のため、大きな対物光学系は作成が困難になり、費用がかかり、実際問題として、寸法及び重量が制限される傾向にある。
【0007】
対物光学系自体が戻り基準ビーム及び戻り対物ビームと同じ光路に沿うコヒーレント光の一部を逆反射する傾向がある、光軸の近傍に、対物光学系がいわゆる「ホットスポット」をつくることも知られている。対物光学系から逆反射された光は結像面の中心近傍の位相コントラストを低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、フィゾー干渉計の対物光学系の、寸法及び収差を含む、最適化を図るための手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態にしたがうオフアクシス放物面反射器はフィゾー干渉計の対物光学素子として機能する。オフアクシス放物面反射器は放物面軸に対して偏心させた放物面の小切片によって形成される。コリメート光で基準表面及び検査表面を照明する目的のため、オフアクシス放物面反射器の焦点にコヒーレント光源を配置することができる。コヒーレント光は、焦点を通り、主光軸に沿って、オフアクシス放物面反射器に進む。オフアクシス放物面反射器によって反射されたコリメート光を受ける、フィゾー基準表面は放物面反射器の焦点面と交差する位置においてコリメートビームに実質的に垂直に配向されることが好ましい。基準表面及び検査表面から反射された光はオフアクシス放物面反射器によって集められ、結像されて、基準表面及び検査表面の重畳虚像を形成する。カメラレンズ系が基準表面及び検査表面の重畳虚像をカメラ検出器表面上の実像に変換する。
【0010】
オフアクシス放物面反射器は、通常の屈折対物光学系に比較して、かなり低費用で、容易に、所望の寸法につくることができる。したがって、本発明は一層大きな検査物体の測定またはさらに一層大きな検査物体の大きな領域の測定を提供する。
【0011】
オフアクシス放物面反射器はその軸上焦点から発する光のコリメートには理想的であるが、オフアクシス放物面反射器によって形成される虚像は傾き、かつ歪む。虚像は主光軸に対して非直角をなして傾き、倍率が放物面軸からの物点の距離とともに変化する。この問題はそれぞれの物点に対する放物面の等価焦点距離が放物面軸からの物点の距離とともに変化することから生じる。焦点面自体は放物面と同じ曲率中心を共有する放物面の切片である。フィゾー基準表面は放物型焦点面と交差する位置におくことができるが、放物型焦点面はフィゾー基準表面に対して局所的に傾いたままである。放物型焦点面の傾きの結果、基準表面及び検査表面の重畳虚像も傾くことになり、したがって物点位置にともなう焦点の変動がある。等価焦点距離の変動は傾いた虚像内の物点の倍率を変化させる。
【0012】
一般に好ましいように、オフアクシス放物面反射器は基準表面上及び検査表面上の対応する点の間の間隔のいくらかの変化に適応するためにテレセントリック絞りを通して光を集束させる。個々の物点から集められたそれぞれの光線束は放物面の限定された領域に当たり、これには波面収差を制限する傾向がある。しかし、虚像は傾いたままであり、歪んだままである。好ましくは本発明にしたがって配置されるような、カメラレンズ系は基準表面及び検査表面の虚像を、虚像の傾きの光学方位に整合する光学方位を有するカメラ検出器表面上の実像に変換する。
【0013】
例えば、カメラ検出器表面はカメラレンズ系の光軸に対して非垂直な角度をなして傾けることができ、カメラレンズ系の光軸は、非垂直な虚像の傾き角度との整合のため、照明/結像系の主光軸と一致している。あるいは、虚像の傾きの光学方位にカメラ検出器表面の光学方位を整合させる補正光学素子をカメラレンズ系に組み込むことができる。この目的のため、カメラ検出器表面の前に配置されたくさび形光学素子を用いることができる。
【0014】
残る歪は一般に視野マッピングによって補正することができる。カメラ検出器表面上に像点が現れる場所と歪がなければ像点があるはずの場所の間の差はあらかじめ計算することができる。歪はあらかじめ予測することができるから、カメラ検出器表面上の像点は検査表面上の所期の場所にマッピングすることができる。そうではあっても、歪にはカメラ検出器表面上で検査表面の像を偏心させる効果もある。大倍率で再現される点には小倍率で再現される点よりも広いスペースがカメラ検出器表面上に必要である。本発明では、必要に応じて、オフアクシス放物面反射器及びフィゾー基準表面の機械的中心を通る中心線の主光軸からのオフセットが講じられる。すなわち、カメラレンズ系の軸は主光軸(折り返されているが)に合わせられたままであるが、オフアクシス放物面反射器とフィゾー基準表面の間に延びる主光軸はオフアクシス放物面反射器及びフィゾー基準表面を通る中心線よりも放物面軸の近くに配置される。
【0015】
物体の検査表面を測定するためのフィゾー干渉計としての本発明の一態様は、放物面軸及び、放物面軸からオフセットされた、放物型反射面を有するオフアクシス放物面反射器を備える。光源から主光軸に沿ってオフアクシス放物面反射器に放射されるコヒーレント光がオフセットされた放物型反射面からの反射によってコリメートされるように、実効光源がオフアクシス放物面反射器に対して配置される。垂直入射でコリメート光を受けるように配向されたフィゾー基準表面が、光の第1の部分を反射し、検査表面への/からの光の第2の部分を透過させる。オフアクシス放物面反射器は基準表面及び検査表面の重畳虚像を形成するが、重畳虚像は主光軸に対して非垂直な角度をなして傾いている。カメラレンズ系が基準表面及び検査表面の虚像を、虚像の傾きの光学方位に整合する光学方位を有するカメラ検出器表面上の、実像に変換する。
【0016】
カメラ検出器表面上に結像されたままの基準表面上及び検査表面上の対応する点の倍率の差違を補償するため、プロセッサがカメラ検出器表面上の像点を基準表面上及び検査表面上の対応する点の所期の場所にマッピングする。さらに、カメラ検出器表面上の基準表面及び検査表面の偏心を補償するため、オフアクシス放物面反射器及びフィゾー基準表面の中心線が、オフアクシス放物面反射器とフィゾー基準表面の間を延びる主光軸からオフセットされる。(a)オフアクシス放物面反射器及びフィゾー基準表面の中心線、及び(b)オフアクシス放物面反射器とフィゾー基準表面の間を延びる主光軸のいずれもが放物面軸に平行に延びることが好ましく、基準とされる中心線は放物面軸から主光軸をこえてオフセットされることが好ましい。
【0017】
光源からオフアクシス放物面反射器に進む光をオフアクシス放物面反射器からカメラレンズ系に進む光から分離するために、ビームスプリットプレートが用いられることが好ましい。好ましいビームスプリットプレートは、結像系の光軸に対して傾けられた法線を有し、コヒーレント光が傾斜面を通って進むことにより生じる収差を補償するくさび角を、前面と背面の間に有する。
【0018】
周波数シフト干渉計の目的のため、コヒーレント光源は周波数が連続して変化する光ビームを放射するように構成されることが好ましい。カメラレンズ系は連続して変化する干渉パターンを取り込むことが好ましい。プロセッサはカメラ検出器表面上の複数の像点についての位相の変化率を、フィゾー基準表面と検査表面の間の違いの尺度として、計算することが好ましい。
【0019】
物体の検査表面を、フィゾー干渉計を用いて測定する方法としての本発明の別の態様は、実効光源からコヒーレント光を放射するステップ、コヒーレント光を主光軸に沿いオフアクシス放物面反射器に向けて進ませる工程、及びコヒーレント光をオフアクシス反射器からフィゾー基準表面に向けてコリメートビームとして反射するステップを含む。コリメートビームの一部分がフィゾー基準表面から反射し、検査表面への/からのコリメートビームの他部分がフィゾー基準表面を透過する。それぞれの光部分はオフアクシス放物面反射器によって集められ、オフアクシス放物面反射器から反射されて、主光軸に対して非垂直の角度をなして傾けられた光学方位に、基準表面及び検査表面の重畳虚像を形成する。基準表面及び検査表面の虚像は、虚像の傾きの光学方位に整合する光学方位を有するカメラ検出器表面上の、実像に変換される。基準表面と検査表面の間の違いを測定するため、基準表面の実像と検査表面の実像によって形成された干渉パターンがモニタされる。
【0020】
周波数が連続して変化する光ビームが実効光源から放射され、連続して変化する干渉パターンがモニタされることが好ましい。位相の変化率が、フィゾー基準表面と検査表面の間の違いの尺度として、像面内の複数の像点について計算されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明にしたがって構成された、照明系のためのコリメータ及び結像系の対物光学素子のいずれとしても機能するオフアクシス放物面反射器を有する、フィゾー干渉計の略図である。
【図1A】図1Aは、コンポーネント中心線のオフセットを示す、照明系及び結像系の主光軸に沿う拡大図である。
【図2】図2は、放物面軸からの距離にともなう焦点距離シフトを誇張して示すための、オフアクシス放物面反射器への/からの光線経路を示す略図である。
【図3】図3は、オフアクシス放物面反射器によって形成される虚像の予想される傾きを示すために別の態様で誇張されて示される、オフアクシス放物面反射器への/からの光線経路を示す略図である。
【図4】図4は、虚像を同様に傾いている実像に変換するためのカメラレンズ系を示す、フィゾー干渉計の相対的に拡大された部分である。
【図5】図5は結像へのオフアクシス放物面反射器の関与にともなう歪を示すための視野制限アパーチャ格子である。
【図6】図6は、垂直方向に等間隔の基準表面16上及び検査表面18上の重畳点にそれぞれの間隔が対応する3本の水平線を含む、同じ視野制限アパーチャ格子である。
【図7】図7は、図4と同様であるが、虚像の方位を光軸に垂直に配向されたカメラ検出器表面に整合させるための補正光学素子を有する、別のカメラレンズ系を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示されるようなフィゾー干渉計10は、本発明の好ましい実施形態にしたがって構成されている。フィゾー基準光学素子12及び検査物体14のいずれをもコリメートされたコヒーレント光で照明する目的のために、レーザダイオードのような、光源20がコヒーレント光ビームを放射し、コヒーレント光ビームはレンズ22によって集められ、回転拡散板24上に集束される。回転拡散板24から放射される光パターンは、干渉計10内の(スペックルと称されることが多い)望ましくない干渉効果を避けるため、コヒーレンスが空間的に制限された実効光源26としてはたらく。
【0023】
実効光源26から放射される光は、ビームスプリッタ板28を透過して、主光軸40に沿いオフアクシス放物面反射器30に向かう。実効光源26は、ビームスプリッタ板28を通して見えるように、オフアクシス放物面反射器30の焦点に配置される。オフアクシス放物面反射器30は、放物面の放物面軸36に対して偏心した放物面の小切片に対応する、反射放物面34を有する。オフアクシス放物面反射器30の焦点32は放物面軸36に沿って配置される。
【0024】
オフアクシス放物面反射器30は実効光源26から受けた光を、放物線軸36に平行な方向にフィゾー基準表光学素子12に向けて進むコリメート光として、主光軸40の別の区画に沿って反射する。フィゾー基準光学素子12は主光軸40に沿って進むコリメート光に対して非垂直な角度で傾けられた入射表面38を有する、軽度のくさびとして形成される。傾けられた入射表面38により、不要な干渉効果に寄与するであろう方向の光の反射が避けられる。フィゾー基準光学素子12は、コリメート光の一部分を基準ビームとして逆反射するための、フィゾー基準表面16も有する。傾けられた入射表面38の小さなくさび効果に適応するため、フィゾー基準光学素子12も少しだけ傾けられる。例えば、フィゾー基準光学素子は、中心厚が50ミリメートル(mm)で、くさび角がほぼ1°であり、フィゾー基準光学素子12が主光軸40に対する法線からほぼ0.45°傾けられている、くさびの形態で、石英ガラスでつくることができる。
【0025】
コリメート光の一部分を基準ビームとして逆反射するだけでなく、フィゾー基準光学素子12は検査物体への/からの他部分の光を検査ビームとして透過させる。検査物体14は、フィゾー基準光学素子12から隔てられて示されているが、フィゾー基準表面16の可能な限り近くに取り付けられ、フィゾー基準表面16に公称上平行であり、よって、検査表面18によって逆反射された光が、フィゾー基準面16から逆反射されたコリメート光として、同じ経路に沿って戻ることが好ましい。
【0026】
非鏡面検査表面を含む、フィゾー基準表面からの検査表面のずれを測定するため、検査表面18から反射される光はある反射角範囲にわたってオフセット放物面反射器30により集められて、基準表面16及び検査表面18の重畳虚像を形成する。光が集められる角度範囲は、実効光源26に対して光学共役になる位置にある、テレセントリック絞り42によって制限される。ビームスプリッタ板28の前面44は、カメラレンズ系46がそれを通して虚像をカメラ検出器表面48上の実像に変換するテレセントリック絞り42に向けて、戻り光(すなわち、基準ビーム及び検査ビーム)を反射する。したがって、ビームスプリッタ板28はテレセントリック絞り42を実効光源26から空間的に分離する。
【0027】
ビームスプリッタ板28は、発散ビーム内の傾斜板であるから、基準表面16及び検査表面18に近づく光の所望のコリメーションに悪影響を与える収差をオフアクシス放物面反射器30に近づく発散ビームに導入すると思われるであろう。予想される効果の中には非点収差及びコマ収差のいずれも含まれる。しかし、ビームスプリッタ板28は、予想される収差効果を補償するために、ビームスプリッタ板28の厚さ、傾き及び屈折率に関係付けられる若干のくさび角を有するように形成されることが好ましい。
【0028】
オフアクシス放物面反射器30は、その焦点32において発する光のコリメートには理想的であるが、結像目的にはそれほど理想的ではない。図2に誇張して示されるように、焦点32を中心とし、様々な角度をなしてコリメートされた光ビームは、オフアクシス放物面反射器30の有効反射放物面34の曲率中心と共通の曲率中心を有する放物面の形態の焦点面50上にあるが焦点距離は相異なる、等価な焦点52,54及び56にオフアクシス放物面反射器32によって集束される。
【0029】
フィゾー基準表面16は焦点面50と交差するが、主光軸40に対して実質的に垂直に配向されたままであることが好ましく、この結果、焦点面50はフィゾー基準表面16に対して局所的に傾けられることになる。例えば、物空間内で放物面軸36から主光軸40よりも遠くにある、等価焦点52はフィゾー基準表面16の向こう側に配され、物空間内で放物面軸36から主光軸40よりも近くにある、等価焦点56はフィゾー基準表面16の手前側に配される。
【0030】
これもオフアクシス放物面反射器30を誇張形態で示す、図3は基準表面16及び検査表面18の相互に符合する領域のそれぞれの物点72,74及び76からの光線束62,64及び66の伝搬を示す。軸上物点74からの光線束64はコリメート光として実効アパーチャ面68に戻る。しかし、放物面軸36から遠い物点72から出てくる光線束62は発散ビームとして戻り、放物面軸36に近い物点76から出てくる光線束66は収斂ビームとして戻る。この結果、アパーチャ面68に結合された接眼レンズを通して見られる、基準表面16及び検査表面18の重畳虚像80は、主光軸40に対して非垂直な角度で(すなわち法線から偏角αをなして)傾いている。
【0031】
図4に相体的に拡大されて示されている、カメラレンズ系46は重畳虚像80をカメラ検出器表面48上の実像82に変換する。虚像80の傾きはカメラレンズ系46を通して伝えられ、よって、カメラ検出器表面48は、対応して、実像82を一層良く捕捉するように(例えば法線から測定して角度βをなして)傾けられる。虚像80及びカメラ検出器表面48がそれぞれ傾けられる角度α及びβは互いに一致する必要はないが、実像82がカメラ検出器表面48上に載るように関係付けられる。
【0032】
虚像80及び実像82を傾けるだけでなく、オフアクシス放物面反射器30は虚像80のセット及び実像82のセットのいずれも歪ませる。放物面軸36からの物点72,74及び76の距離にともなって変化するオフアクシス放物面反射器30の等価焦点距離は、対応して、傾けられたカメラ検出器表面42にわたり倍率の変化を生じさせる。一括して歪と称される、倍率の変化は、直交性からの外れが歪の指標である、格子の形態で、図5によって示される。歪は、物点が放物面軸26から漸次離れていく方向に対応する、格子の垂直方向で大きく現れる。図6は、基準表面16及び検査表面18上の垂直方向に等間隔の点を表す、視野制限アパーチャ内の3本の水平線84,86及び88を示す。
【0033】
図1に示されるように、プロセッサ90が情報(例えばカメラ検出器表面48上の相対光強度)を受け取り、基準表面16と検査表面18の間の、高さ変化のような、光路長差の尺度に変換するために、相対光強度を干渉像として処理する。プロセッサ90は、基準表面16と検査表面18の間の差の(例えば高さの差)より大きな範囲を測定するための、ビーム周波数の変化の干渉パターンの処理との統制のために、光源20にも接続される。例えば、プロセッサ90は、個々の像点の局所光強度を干渉サイクル内の位相角(例えば0から2π)の尺度に変換し、干渉の1サイクルより大きく広がる位相差(例えば2πの倍数の位相差)を2πを法として解くために、局所位相の変化率もビーム周波数の変化率を用いて変換する。クラワイエク(Kulawaiec)等の米国特許第7268889号の明細書は周波数シフト型干渉計の一例をさらに詳細に説明している。この特許明細書は本明細書に参照として含まれる。
【0034】
前もって分かっている、オフアクシス放物面反射器によって付加される歪を用いて、プロセッサ90はカメラ検出器表面48上の像点の、検査表面18上のそれぞれの対応する場所へのマッピングも行う。このようにして、カメラ検出器表面48上にそのままでは見られる歪が全く無い、検査表面18の地形学的マップを得ることができる。
【0035】
歪にはカメラ検出器表面48上の基準表面16及び検査表面18の偏心の効果もある。基準表面及び検査表面の倍率が大きい領域ほど、拡大されていない領域より広いスペースをカメラ検出器表面48上でとる。カメラ検出器表面48上で基準表面16及び検査表面18の中心を合わせ直すため、基準表面16の中心線92が、対応して、主光軸40に対して偏心される。反射放物面34の中心線94が、同様に、主光軸40に対して偏心される。中心線92及び94のいずれも放物面軸36から離れる方向に主光軸に対して同じ大きさだけ変位されることが好ましい。図1Aは主光軸40に沿う拡大図であり、基準表面16の中心線92のオフセットを一層明解に示す。
【0036】
アパーチャ42は、特に図1に示されるように、基準表面16及び検査表面18からの光を集めるために、テレセントリック絞りとして配置されることが好ましい。3つの物点72,74及び76の主光線は全てアパーチャ絞り42の中心―実効光源26及びオフアクシス放物面反射器30の焦点32のいずれとも光学共役になる位置―を通過する。対応する光線束62,64及び66の集光角度範囲は、それぞれの光線束が反射放物面34の限定された領域だけに当たるように制限されることが好ましい。そのようにすれば、反射放物面34の個々の限定された領域の円形状からのいかなるずれも制限される。波面収差、特にコマ収差及び非点収差も、対応して、制限される。
【0037】
オフアクシス放物面反射器30は、下表に示されるような仕様を有する、ダイアモンド旋盤製反射放物面34で形成されることが好ましい。
【表1】

【0038】
カメラ検出器表面48を与えるために、Dalsa Falcon 4M60のような、カメラを用いることができる。カメラレンズ系46は、鏡面部分の弓反りまたは傾きを受け入れるために、反射放物面34によって結像される光より大きい開口数を通る光を結像するように構成されることが好ましい。
【0039】
図4に示されるようにカメラ検出器表面48を傾けて、傾いた虚像80を補償する代わりに、補正光学素子98を修正カメラレンズ系106を組み込んで、主光軸40に垂直に配向されたカメラ検出器表面108上に実像102を配向することができる。カメラ検出器表面108に隣接して配置されることが好ましい、補正光学素子98は、実像102を主光軸40に対して垂直に実像を配向するため、全体にくさび形であることが好ましい。くさび形であることで、補正光学素子98は平前面及び、主光軸に対して垂直に配向されカメラ検出器表面108と一致する共通像面上に像点が集束されるように光路長を像視野にわたって変えるためにくさび角をなして配向された、背面を有することができる。
【0040】
基準表面及び検査表面を照明及び結像するための光は同じ主光軸40に沿って進むことが好ましいが、個々のコンポーネントはオフアクシス放物面反射器30によって生じる歪に適応するために主光軸40に対して偏心させることができる。実際に、オフアクシス放物面反射鏡30は、基準表面16及び検査表面18がそれによって照射及び結像される光の境界の中心が主光軸40に対してほぼ合わせられるように、基準表面16及び検査表面18とともに偏心されることが好ましい。
【0041】
光源によって放射される光の公称波長は、測定の要件にしたがって選択することができるが、可能であれば、費用を抑えることができ、容易に可視範囲に拡張することができる近赤外範囲にあることが好ましい。上例については、830ナノメートル(nm)の公称波長が想定されている。
【0042】
特定の実施形態に関して説明したが、当業者であれば、本発明の全体的教示にしたがい本発明をそれによって実施することができる広範な変形を認めるであろう。
【符号の説明】
【0043】
10 フィゾー干渉計
12 フィゾー基準光学素子
14 検査物体
16 フィゾー基準表面
18 検査表面
20 光源
22 レンズ
24 回転拡散板
26 実効光源
28 ビームスプリッタ板
30 オフアクシス放物面反射器
32 焦点
34 反射放物面
36 放物面軸
38 入射表面
40 主光軸
42 テレセントリック絞り
44 ビームスプリッタ板前面
46 カメラレンズ系
48 カメラ検出器表面
72,74,76 物点
90 プロセッサ
92 基準表面中心線
94 反射放物面中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の検査表面を測定するためのフィゾー干渉計において、
放物面軸及び、前記放物面軸からオフセットされた、放物反射面を有するオフアクシス放物面反射器、
前記オフアクシス放物面反射器の主光軸に沿って光源から放射されるコヒーレント光が前記オフセットされた放物反射面からの反射によってコリメートされるように、前記オフアクシス放物面反射器に対して配置された実効光源、
前記コリメート光を垂直入射で受け、前記光の第1の部分を反射し、前記検査表面への/からの前記光の第2の部分を透過させるために配向されたフィゾー基準表面、
前記オフアクシス反射器は前記基準表面と前記検査表面の重畳虚像を形成するために構成され、前記重畳虚像は前記主光軸に対して非垂直な角度をなして傾けられている、
及び
カメラ検出器表面並びに、前記基準表面と前記検査表面の前記重畳虚像を、前記虚像の傾きがなす光学方位と整合する光学方位を有する、前記カメラ検出器表面上の実像に変換するための、カメラレンズ系、
を備えることを特徴とする干渉計。
【請求項2】
前記カメラレンズ系が光軸を有し、前記カメラが、
(a)前記カメラ検出器表面が、前記虚像の傾きがなす前記非垂直な角度に整合するために、前記カメラレンズ系の前記光軸に対して前記非垂直な角度をなして傾けられる、及び
(b)前記カメラレンズ系が、前記カメラ検出器表面の前記光学方位を前記虚像の傾きがなす前記光学方位に整合させるための補正光学素子を含む、
の少なくとも一方にしたがって構成されることを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
(a)前記オフアクシス放物面反射器が回転放物面の一切片としての形をとる焦点面を有し、前記フィゾー基準表面が、前記基準表面の一方の領域が前記焦点面の一方の側に配置されて前記基準表面の他方の領域が前記焦点面の反対側に配置されるように、前記オフアクシス放物面反射器の前記焦点面と交差し、及び(b)前記カメラ検出器表面上に結像されたままでの前記基準表面上及び前記検査表面上の対応する点の倍率が前記対応する点の前記放物面軸からのオフセットにともなって変化し、前記干渉計が、前記基準表面上及び前記検査表面上の前記対応する点の所期の場所に前記カメラ検出器表面上の像点をマッピングするためのプロセッサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項4】
(a)前記オフアクシス放物面反射器及び前記フィゾー基準表面を通る中心線が、前記カメラ検出器表面上の前記基準表面及び前記検査表面の前記実像の中心を合わせるために、前記オフアクシス放物面反射器と前記フィゾー基準表面の間を延びる前記主光軸をこえてオフセットされ、及び(b)前記オフセット放物面反射器が前記基準表面及び前記検査表面からの前記光を、前記実効光源に共役のテレセントリック絞りを通して、反射することを特徴とする請求項1に記載の干渉計。
【請求項5】
前記実効光源から前記オフアクシス放物面反射器に進む光を前記オフアクシス放物面反射器から前記カメラレンズ系に進む光から分離するためのビームスプリッタ板を備え、前記ビームスプリッタ板が前記主光軸に対して傾けられた法線、及び、前記傾けられたビームスプリッタ板を通る前記コヒーレント光の進行によって生じる収差を補償する、前面と背面の間のくさび角を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フィゾー干渉計を用いて物体の検査表面を測定する方法において、
実効光源からコヒーレント光を放射するステップ、
前記コヒーレント光を、オフアクシス放物面反射器に向けて主光軸に沿って進行させるステップ、
前記コヒーレント光を、前記オフアクシス放物面反射器からフィゾー基準表面に向けてコリメートビームとして反射するステップ、
前記コリメートビームの一部分を前記フィゾー基準表面から反射し、前記検査表面への/からの前記コリメートビームの他部分に前記フィゾー基準表面を透過させるステップ、
前記基準表面からの前記光部分及び前記検査表面からの光部分を前記オフアクシス放物面反射器によって集め、前記主光軸に対して非垂直な角度をなして傾けられた光学方位に前記基準表面及び前記試験表面の重畳虚像を形成するために前記集められた光を前記オフアクシス放物面反射器から反射するステップ、
前記基準表面及び前記検査表面の前記虚像を前記虚像の傾きがなす前記光学方位に整合する光学方位を有するカメラ検出器表面上の実像に変換するステップ、及び
前記基準表面と前記検査表面の間の差違を測定するために前記基準表面の前記実像及び前記検査表面の前記実像によって形成される干渉パターンをモニタするステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記放射するステップが前記オフアクシス放物面反射器から反射される前記コヒーレント光をコリメートするために前記オフアクシス放物面反射器の焦点を通して前記コヒーレント光を放射するステップを含み、前記放射するステップが、周波数が連続して変化する光ビームを放射するステップを含み、前記モニタするステップが連続して変化する干渉パターンをモニタするステップを含み、前記方法が前記フィゾー基準表面と前記検査表面の間の差違の尺度として前記カメラ検出器表面内の複数の像点について位相の変化率を計算するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準表面及び前記検査表面の前記虚像を変換する前記ステップが、(a)前記虚像の傾きがなす前記非垂直な角度に整合させるためにカメラレンズ系の光軸に対して非垂直な角度で前記カメラ検出器表面を傾けるステップ、及び(b)前記カメラ検出器表面の前記光学方位を前記虚像の傾きがなす前記光学方位に整合させるために補正光学素子を使用するステップの内の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記オフアクシス放物面反射器及び前記フィゾー基準表面の中心線を前記オフアクシス放物面反射器と前記フィゾー基準表面の間に延びる前記主光軸からオフセットするするステップ、及び
前記フィゾー基準表面を前記オフアクシス放物面反射器の焦点面と、前記基準表面の一方の領域が前記焦点面の一方の側におかれ、前記基準表面の他方の領域が前記焦点面の反対側におかれるように、交差させるための位置に配置するステップ、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記実効光源から前記オフアクシス放物面反射器に進む光を前記オフアクシス放物面反射器から前記カメラレンズ系に進む光からビームスプリッタ板を用いて分離するステップを含み、前記ビームスプリッタ板が、前記主光軸に対して傾けられた法線及び、前記傾けられたビームスプリッタ板を通るコヒーレント光の進行によって生じる収差を補償する前面と背面の間のくさび角を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132912(P2012−132912A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−275515(P2011−275515)
【出願日】平成23年12月16日(2011.12.16)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】