説明

放送局設備及び情報埋め込み方法

【課題】 埋め込み装置を含む送出システム構成を最適化することにより、透かし等の埋め込み情報の欠落を防止可能な送出システムを提供すること。
【解決手段】 1系放送送出系200−1、2系放送送出系200−2は、素材切換機202−1、202−2、データ多重化装置203−1、203−2、圧縮装置204−1、204−2、多重化装置205−1、205−2等を備える。情報埋め込み装置104−1、104−2を各内部装置間のいずれかの位置に備える(例、図中、(1)、(2)、(3)、(4)の位置等)。情報埋め込み装置104の設置場所の候補として、圧縮装置204より前段且つ素材切換機202より後段((2)または、(3))が最適と言える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送局設備及び情報埋め込み方法に係り、特に、視聴率・聴取率・メディア接触率等の調査を実施するための調査システムに利用可能な放送局設備及び情報埋め込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ視聴率やラジオ聴取率測定の手法のひとつに放送識別(ID)信号を利用するシステムが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。放送ID信号とは、放送局を識別するための放送局毎にユニークに割り付けられた信号で、時刻データなども含むことができる。
このシステムでは、放送局側に放送ID信号を放送信号に重畳するための放送ID重畳装置を設け、オーディオ信号周波数帯域内で放送識別(ID)信号を構成し、これを放送番組のオーディオ信号に重畳する。その一方で、受信側では、調査対象者に、マイクロフォンを有する放送ID解読装置を常時携帯させるようにする。調査対象者は、1日の生活の全ての又は起きてる時間、この放送ID解読装置を携帯する。そして、調査対象者が接触する全ての周囲音の中から、もし放送ID番号が解読された場合は、装置内部のメモリーにその事実を記録する。このような放送ID解読記録は、放送IDコードとその解読時刻などを備え、別に用意した回収装置でその記録を調査会社が収集し、テレビ視聴率やラジオ聴取率が計算される。
また、放送波を常時監視することで、その監視結果を視聴率や聴取率集計に反映させるシステムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
図7に、従来のメディア接触率調査システムの構成図を示す。
従来のメディア接触率調査システムは、例えば、モニタ施設1と、計算施設2と、調査対象者宅内装置3を備える。計算施設2は、例えば、コンピューター21と、インターフェイス(I/F)22及び23と、記憶部24を有する。
モニタ施設1は、放送の受信信号から放送識別信号を抽出し、放送識別信号の品位を示す品位データを作成して、出力する。計算施設2は、モニタ施設1から品位データをインターフェイス23を経て入力し、調査対象者宅内装置3からインターフェイス23を経て視聴率・聴取率に関するログデータを入力する。計算施設2のコンピューター21は、受信したログデータに基づいて時間毎の視聴率・聴取率を求め、品位データに基づいて、正常に放送及び放送識別信号が受信されない時間を識別し、その時間に対応する作成された記憶部24の視聴率・聴取率を補正して、視聴率・聴取率に関する集計データファイルに記憶し、出力する。
また、電子透かしを利用した視聴率測定システムは、特許文献4に開示された技術などにより既に提案されており、既に実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−500263号公報
【特許文献2】特開平07−007483号公報
【特許文献3】特開2002−185416号公報
【特許文献4】特許第3810790号公報
【特許文献5】特開2002−515684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の視聴率測定システムでは、日々の運用で情報埋め込み装置の故障などが発生した際に、例え該当チャンネルを視聴していたとしてもデータの検出が出来ない場合があるため、正確な視聴データを提供することが出来ない場合がありうる。
このような課題に対しては、特許文献5などにより、電子透かしとシグネチャマッチングなどの方式を併用することにより、埋め込み・検出機能に障害が発生した場合でも、視聴チャンネルの特定を行う予備的手段を利用する方法が提案されている。
シグネチャマッチング方式によれば、電子透かしによる埋め込み情報の欠落を防ぐ手段が講じられていない場合には、完全なバックアップとは言えないもののバックアップとしての役割を満たす側面も存在する。しかし、シグネチャマッチング方式の場合、同一素材が複数の局から同時に放送されるケースでは、シグネチャマッチングだけでは、視聴チャンネルの特定が困難な場合があるため、予備的手段として不十分であることが推測できる。
電子透かしを利用した視聴率測定の場合、電子透かしによる埋め込み情報の欠落を防ぐ手段を講じることが重要である。
本発明は、以上の点に鑑み、埋め込み装置を含む送出システム構成を最適化することにより、透かし等の埋め込み情報の欠落を防止可能な送出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の解決手段によると、
複数の放送局設備と、複数の調査世帯装置と、前記複数の調査世帯装置から視聴データを収集する収集設備とを備えた視聴データシステムにおける、前記放送局設備であって、
放送素材を出力する素材系機器と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第1の埋め込み装置を含む第1の系と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第2の埋め込み装置を含む第2の系と、
前記第1の系または前記第2の系のいずれかの出力を切り替え選択する現用予備切替装置と、
前記現用予備切替装置の出力を放送するための送信設備と、
前記第1の系に含まれる少なくとも前記第1の埋め込み装置、及び、前記第2の系に含まれる少なくとも前記第2の埋め込み装置から、それぞれの障害を検出した情報であるアラーム情報を入力し、系の現用/予備状態を示す現用予備情報を出力し、前記現用予備切替装置により前記第1の系又は前記第2の系のいずれかに切り替えるアラーム収集装置と、
を備え、
(1)障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、前記アラーム収集装置が、前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置から出力されるアラーム情報に従い、前記現用予備切替装置により現用予備の系を切替えるまでの遅延よりも、障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、放送の本線信号が前記現用予備切替装置へ至るまでの遅延の方が大きくなるような位置に、前記第1の系及び前記第2の系内にそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を設置することにより、又は、
(2)現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置の障害の検出に従い前記アラーム収集装置が前記現用予備切替装置により系を切替える時刻が、放送の本線信号が前記第1又は第2の系で遅延されて前記現用予備切替装置に到達する時刻より、前であるような位置に、前記第1の系及び前記第2の系内にそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を設置することにより、
障害が発生してシステムが切り替えられても埋め込み情報の欠落を防止することを特徴とする前記放送局設備が提供される。
【0006】
本発明の第2の解決手段によると、
複数の放送局設備と、複数の調査世帯装置と、前記複数の調査世帯装置から視聴データを収集する収集設備とを備えた視聴データシステムにおいて、
放送素材を出力する素材系機器と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第1の埋め込み装置を含む第1の系と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第2の埋め込み装置を含む第2の系と、
前記第1の系または前記第2の系のいずれかの出力を切り替え選択する現用予備切替装置と、
前記現用予備切替装置の出力を放送するための送信設備と、
前記第1の系に含まれる少なくとも前記第1の埋め込み装置、及び、前記第2の系に含まれる少なくとも前記第2の埋め込み装置から、それぞれの障害を検出した情報であるアラーム情報を入力し、系の現用/予備状態を示す現用予備情報を出力し、前記現用予備切替装置により前記第1の系又は前記第2の系のいずれかに切り替えるアラーム収集装置と、
を備えた前記放送局設備における情報埋め込み方法であって、

(1)障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、前記アラーム収集装置が、前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置から出力されるアラーム情報に従い、前記現用予備切替装置により現用予備の系を切替えるまでの遅延よりも、障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、放送の本線信号が前記現用予備切替装置へ至るまでの遅延の方が大きくなるような位置で、前記第1の系及び前記第2の系内のそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、情報を埋め込むことで、又は、
(2)現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置の障害の検出に従い前記アラーム収集装置が前記現用予備切替装置により系を切替える時刻が、放送の本線信号が前記第1又は第2の系で遅延されて前記現用予備切替装置に到達する時刻より、前であるような位置で、前記第1の系及び前記第2の系内のそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、情報を埋め込むことで、
障害が発生してシステムが切り替えられても埋め込み情報の欠落を防止することを特徴とする前記情報埋め込み方法が提供される。

【発明の効果】
【0007】
本発明によると、埋め込み装置を含む送出システム構成を最適化することにより、透かし等の埋め込み情報の欠落を防止可能な送出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電子透かしを利用した視聴率測定システムの構成図。
【図2】放送局送出設備における、地上デジタル放送設備の放送局系統の構成図。
【図3】データ多重化装置と圧縮装置の間(2)の位置に情報埋め込み装置を設置した場合の例の説明図。
【図4】素材切換機とデータ多重化装置の間(3)の位置に情報埋め込み装置を設置した場合の例の説明図。
【図5】情報埋め込み装置の構成図。
【図6】情報埋め込み装置から現用予備切替装置までの系統で発生する信号遅延の説明図。
【図7】従来のメディア接触率調査システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、電子透かしを利用した視聴率測定システムの構成図の一例を示す。
本視聴率測定システムは、例えば、調査世帯装置101−1〜101−mと、放送局送出設備102−1〜102−nと、収集・集計設備103を備える。調査世帯装置101−1は、受信機105−1及び情報検出装置106−1を有する。また、他の調査世帯装置101も同様にそれぞれ受信機105及び情報検出装置106を有する。放送局送出設備102−1は、情報埋め込み装置104−1を有する。また、他の放送局送出設備102も同様にそれぞれ情報埋め込み装置104を有する。
この視聴率測定システムでは、放送局送出設備102−1〜102−nに、それぞれ、情報埋め込み装置104−1〜104−nを設置し、放送局・放送サービス・番組・時刻などを特定できる情報を埋め込み、送信設備を経由して放送する。調査世帯装置101−1〜101−mにおいては、それぞれ、受信機105−1〜105−mから出力される選局された放送内容を、各情報検出装置106−1〜106−mに入力し、埋め込まれた情報と検出された時刻を内部の記憶部に記録する。各調査世帯装置101−1〜101−mで記録されたデータは、視聴データとして収集・集計設備103に収集される。収集・集計設備103では、収集された視聴データを集計することにより視聴率データを求める。なお、埋め込み情報には、例えば、局コード、サービスコード等の適宜の視聴・聴取・メディア接触等の調査のための識別情報が含まれる。なお、サービスコードは、例えば、地上デジタル放送の場合、HD放送、SD放送1~3、1セグ放送等の各種の放送サービスのコードを示す。
【0010】
図2に、放送局送出設備における、地上デジタル放送設備の放送局系統の構成図の一例を示す。
この図は、あくまでも一例であり、この系統上に表現されている機器に限定されるものではない。また、図示の例では、2重の系統を持ったシステムの場合を例にあげているが、3重化された系統を持つシステムについても応用可能である。
各放送局送出設備102−1〜102−nは、放送素材系機器201、1系放送送出系200−1、2系放送送出系200−2、現用予備切替装置206、送信設備207、アラーム収集装置209を備える。1系放送送出系200−1、2系放送送出系200−2は、それぞれ、例えば、素材切換機202−1、202−2、データ多重化装置203−1、203−2、圧縮装置204−1、204−2、多重化装置205−1、205−2等を備える。また、1系放送送出系200−1、2系放送送出系200−2は、それぞれ情報埋め込み装置104−1、104−2を各内部装置間のいずれかの位置に備える(例、図中、(1)、(2)、(3)、(4)のいずれかの位置等)。なお、1系放送送出系200−1、2系放送送出系200−2は、これに限らず、情報埋め込み装置104を含む適宜の構成とすることができる。
素材再生機やスタジオ生映像などの放送素材系機器201から出力された放送素材は、1系放送送出系200−1と2系放送送出系200−2のそれぞれにおいて、素材切換機202−1、202−2に入力される。素材切換機202−1、202−2は、放送スケジュールに基づき放送素材の選択切換を行い、データ多重化装置203−1、203−2に出力する。データ多重化装置203−1、203−2は、字幕信号、放送局間制御信号、CM確認データ等のデータを多重化し、圧縮装置204−1、204−2に出力する。圧縮装置204−1、204−2は、放送素材(信号)を、圧縮等により、データストリームに変換し、多重化装置205−1、205−2に出力する。多重化装置205−1、205−2は、放送素材やデータ放送などのデータストリームを多重化して、現用予備切替装置206に出力する。現用予備切替装置206は、2系統以上用意された冗長性を備えた放送送出系から1つ(この例では、1系及び2系放送送出系200−1及び200−2のいずれか)を選択し、送信設備207へ出力する。送信設備207は、信号に変調をかけた後、電波をアンテナ経由で送信する。
ここに示したように放送送出系上には複数の機器が存在する。例えばこれらの現用系の機器に故障が生じた場合、その情報を拾い上げ速やかに冗長系にシステムを切換えて放送信号への影響を抑制する必要がある。各機器・装置は、それぞれ障害の発生のときにアラーム情報を出力する。アラーム情報は、障害が発生した機器を識別するための情報である。
アラーム収集装置209は、放送送出系200−1、200−2上に存在する各機器から出力されるアラーム情報を一括収集する。また、アラーム収集装置209は、収集したアラーム情報に従い、現用/予備のシステム切換え操作を促す、または、自動でシステム切換え指示を出力するなど、適宜の方法で放送信号への影響を抑制する。
なお、送信設備207にも冗長性を持たせることが一般的だが、図2では省略しているので、冗長性を持たせるようにしてもよい。また、地上デジタル放送においては、SD割放送など、同時に複数の放送サービスを行うことも想定されており、素材切換機202−1、202−2から圧縮装置204−1、204−2までの機器を放送サービス毎に独立して用意し、多重化装置205−1、205−2で1つのストリームにまとめる構成にしてもよい。
【0011】
情報埋め込み装置104−1、104−2は、放送送出系200−1、200−2上に設置することになる。情報埋め込み装置104−1、104−2は、例えば放送局コード及び/又はサービスコード等視聴率測定に必要となる情報(放送識別(ID)信号等)を放送素材に埋め込む。この埋め込みには、例えば、画像透かし技術、音声透かし技術等の適宜の埋め込み技術を用いることができる。また、情報埋め込み装置104−1、104−2から出力されるアラーム情報には、例えば、透かし埋め込みのためのデコーダであるローカルデコーダの障害及び出力信号(放送信号)の異常の両方の障害情報を含むことができる。
情報埋め込み装置104−1、104−2の機能として、自らの動作状況を監視する機能、及びその情報をアラーム収集装置209へ通知する機能を具備する。そして、情報埋め込み装置104−1、104−2は、障害が発生した場合にアラーム収集装置209に通知し、アラーム収集装置209が系の切換制御を行うための遅延時間を、情報埋め込み装置104の出力信号又は本線の放送信号が現用予備切替装置206に至るまでの遅延時間より短くなるような場所に、情報埋め込み装置104を設置することで、透かし埋め込み情報の欠落を防止することが可能となる。
【0012】
図5に、情報埋め込み装置の構成図を示す。
この図は、自らの動作状況を監視する機能、及び、その情報をアラーム収集装置209へ通知する機能を具備した情報埋め込み装置104の構成例を示す。
情報埋め込み装置104は、例えば、インターフェース(IF)部401、403、404及び410と、情報埋め込み部402と、埋め込み情報監視部405と、出力信号監視部406と、入力信号監視部407と、電源監視部408と、動作状況判定部409を備える。
IF部401は、放送信号を入力するためのインターフェースであり、例えば、SDI(Serial Digital Interface)信号や、MPEG2_TS(MPEG2_Transport Stream)信号などが入力されることが考えられる。情報埋め込み部402は、IF部404経由で入力される時刻情報や、放送局・放送サービス・番組などを特定可能な情報を受信して、映像及び/又は音声等の放送信号へ、データの埋め込みを行う。放送局・放送サービスを特定可能な情報は、埋め込み装置203を設置する系統ごとに予め決まるため、予め埋め込み装置203内部に保持できる仕組みを設けておけば、必ずしも埋め込み装置203のIF部404経由で都度受信する必要はない。埋め込みが行われた信号は、IF部403から出力され後段の機器へ渡される。埋め込み情報監視部405は、データの埋め込みが正常に行われていることを確認する仕組みとして、調査世帯装置101に設置される情報検出装置106と同様の方法で検出する仕組みを具備している。埋め込み情報監視部405は、埋め込んだ内容は既知であるため、検出されたデータが完全に一致しない場合は、異常と判定し、動作状況判定部409へエラーを通知する。出力信号監視部406は、データ埋め込み前後の映像データ及び/又は音声データの差分信号をとり、その振幅が埋め込まれるデータの振幅以上の場合は、異常と判定し動作状況判定部409へエラーを通知する。なお、出力信号監視部406は、差分を取る際に、埋め込み処理に伴う遅延量にあわせて入力信号を遅延させる必要がある。入力信号監視部407は、情報埋め込み装置104に入力される信号の異常有無を監視する。具体的には、入力信号監視部407は、SDI信号の場合、例えばその信号に付加されているEDH(Error Detection and Handling)信号やCRC(Cyclical Redundancy Check)信号を使用して、情報埋め込み装置104への入力までの伝送系統上でビットエラーが発生していないかをチェックし、エラーありの場合は、異常と判定し動作状況判定部409へエラーを通知する。電源監視部408は、情報埋め込み装置104に供給されるAC電源電圧ならびに素子に供給されるDC電源電圧を監視し、これらの電源電圧のいずれか又は両方が予め定められた閾値以下の場合異常と判定し、動作状況判定部409へエラーを通知する。動作状況判定部409は、埋め込み情報監視部405、出力信号監視部406、入力信号監視部407、電源監視部408の各監視部から通知されるエラー通知を受信し、どの監視部からのエラーであるかを示す識別情報とともに、情報埋め込み装置104に異常が発生していることを現用予備切換制御のためのアラーム情報として、IF部410を経由して外部(アラーム収集装置209)へ通知する。なお、動作状況判定部409は、例えば既にある障害が発生中の場合は、その後別の障害が発生したとしてもアラーム情報を改めて外部に通知を行わないように構成することができる。
【0013】
情報埋め込み装置104から出力される障害情報に基づき、アラーム収集装置209が、現用予備切替装置206を制御してシステム切換が行われる。この際、障害発生から現用予備のシステム切換までの遅延(時間)又は情報埋め込み装置104による障害検出のアラーム情報出力から現用予備のシステム切換までの遅延(時間)よりも、情報埋め込み装置104の本線信号(放送信号)出力から現用予備切替え装置206へ至るまでの本線信号の遅延(時間)の方が大きくなるようなポイントに情報埋め込み装置104を設置する。これにより、たとえ障害が発生しても埋め込み情報の欠落を防止することができる。または、現用系の情報埋め込み装置104の障害の検出に従いアラーム収集装置209が現用予備切替装置206により系を切替える時刻が、放送の本線信号が放送送出系200で遅延されて現用予備切替装置206に到達する時刻より、前であるような位置に、それぞれ埋め込み装置104を放送送出系200内に設置することで、障害が発生してシステムが切り替えられても透かし埋め込み情報の欠落を防止することが可能になる。
各放送送出系200が各装置を経て本線信号(放送信号)が出力されるまでの信号遅延は、例えば次の要因が考えられる。
・素材切換機202の遅延は、例えば、各放送素材を切り換える際の切換時間を含む。
・データ多重化装置203の遅延は、例えば、多重化する各字幕、音声等の多重化処理時間を含む。
・情報埋め込み装置104の遅延は、例えば、放送信号に埋め込みデータを挿入するための処理時間を含む。
・圧縮装置204の遅延は、例えば、MPEG2等の圧縮エンコーダ内の圧縮処理時間を含む。
・多重化装置205の遅延は、例えば、多重化する各データ放送等の多重化処理時間を含む。
・現用予備切替装置206の遅延は、例えば、系切替え処理の時間を含む。
【0014】
例えば図2に上げた系統例において、情報埋め込み装置104の設置場所の候補としては、圧縮装置204と多重化装置205の間(1)、データ多重化装置203と圧縮装置204の間(2)、素材切換機202とデータ多重化装置203の間(3)、放送素材系機器201と素材切換機202の間(4)が上げられる。
(1)の場合、多重化装置205の遅延は、現在一般的に100ms程度でありさほど大きくなく、適当ではない場合が多い。また、圧縮装置204から出力される映像信号・音声信号はそれぞれ圧縮されたストリームとなっているため、情報埋め込み装置104の仕様によっては、圧縮装置204の出力に情報を埋め込む際、一旦圧縮ストリームを復号化する必要が生じることもあり、情報埋め込み装置104内の遅延量が増大し、放送運用上好ましくない。
(2)の場合、圧縮装置204の遅延量は、現在一般的に500ms以上であり、システム切換動作に比べて十分大きい場合が多いので、(2)以前のポイントに情報埋め込み装置104を設置することが望ましい。また、データ多重化装置203の遅延は、現在一般的に数十μs程度であり非常に小さく、また、素材切換機202の遅延も同様である。
一方、(4)に設置する場合、全ての再生機器出力段に情報埋め込み装置104を設置する必要があるため、膨大な数の情報埋め込み装置104が必要となり、システム構成の増大を招くため好ましくない。
以上より、情報埋め込み装置104の設置場所の候補として圧縮装置204より前段、且つ、素材切換機202より後段、即ち、(2)または、(3)が最適と言える。

例えば、図3に、(2)の位置に情報埋め込み装置104を設置した場合の例を示し、図4に、(3)の位置に情報埋め込み装置104を設置した場合の例を示す。
【0015】
図6は、情報埋め込み装置から現用予備切替装置までの系統で発生する信号遅延を図示したものである。
この図では、一例として図3で示したようなシステム構成、すなわち、(2)の位置に情報埋め込み装置104が設置される場合について説明する。
本線信号(放送信号)は、情報埋め込み装置104内で情報埋め込み処理の遅延等、圧縮装置204内でMPEG2エンコーダ内の遅延等、多重化装置205内で多重化処理の遅延等により、現用予備切替装置206に至るまでに遅延される(時間を要する)。一方、系切替えの制御信号については、情報埋め込み装置104内でエラー検出までの遅延等、アラーム収集装置209内でアラーム収集処理の遅延等、現用予備切替装置206内で現用予備切替えるまでの遅延等により、現用予備切替装置206による系切替えまで遅延される(時間を要する)。この例では、系切替えの後に本線信号が現用予備切替装置206に到達するため、予備系の情報埋め込み装置104が正常に機能するので、現用予備切替えの際の埋め込み情報の欠落を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、テレビ、パソコン、ラジオ、携帯機器等の視聴率・聴取率・メディア接触率等の様々な調査に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
101 調査世帯装置
102 放送局送出設備
103 収集・集計設備
104 情報埋め込み装置
105 受信機
106 情報検出装置
201 放送素材系機器
202 素材切換機
203 データ多重化装置
204 圧縮装置
205 多重化装置
206 現用予備切替装置
207 送信設備
209 アラーム収集装置
401、403、404、410 インターフェース(IF)部
402 情報埋め込み部
405 埋め込み情報監視部
406 出力信号監視部
407 入力信号監視部
408 電源監視部
409 動作状況判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放送局設備と、複数の調査世帯装置と、前記複数の調査世帯装置から視聴データを収集する収集設備とを備えた視聴データシステムにおける、前記放送局設備であって、
放送素材を出力する素材系機器と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第1の埋め込み装置を含む第1の系と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第2の埋め込み装置を含む第2の系と、
前記第1の系または前記第2の系のいずれかの出力を切り替え選択する現用予備切替装置と、
前記現用予備切替装置の出力を放送するための送信設備と、
前記第1の系に含まれる少なくとも前記第1の埋め込み装置、及び、前記第2の系に含まれる少なくとも前記第2の埋め込み装置から、それぞれの障害を検出した情報であるアラーム情報を入力し、系の現用/予備状態を示す現用予備情報を出力し、前記現用予備切替装置により前記第1の系又は前記第2の系のいずれかに切り替えるアラーム収集装置と、
を備え、
(1)障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、前記アラーム収集装置が、前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置から出力されるアラーム情報に従い、前記現用予備切替装置により現用予備の系を切替えるまでの遅延よりも、障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、放送の本線信号が前記現用予備切替装置へ至るまでの遅延の方が大きくなるような位置に、前記第1の系及び前記第2の系内にそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を設置することにより、又は、
(2)現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置の障害の検出に従い前記アラーム収集装置が前記現用予備切替装置により系を切替える時刻が、放送の本線信号が前記第1又は第2の系で遅延されて前記現用予備切替装置に到達する時刻より、前であるような位置に、前記第1の系及び前記第2の系内にそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を設置することにより、
障害が発生してシステムが切り替えられても埋め込み情報の欠落を防止することを特徴とする前記放送局設備。
【請求項2】
前記第1の系及び前記第2の系はそれぞれ、
放送素材の選択切換を行い出力する第1及び第2の素材切換機と、
映像及び/又は音声信号を圧縮してデータストリームに変換する第1及び第2の圧縮装置と、
を備え、
前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を、それぞれ、前記第1及び第2の素材切替機の後段且つ前記第1及び第2の圧縮装置の前段に設置することを特徴とする請求項1に記載の放送局設備。
【請求項3】
前記第1及び第2の素材切替機の後段且つ前記第1及び第2の圧縮装置の前段に、字幕信号及び/又は放送局間制御信号及び/又はCM確認データを多重化するための第1又は第2のデータ多重化装置をさらに備え、
前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置を、前記第1及び第2の素材切替機と前記第1及び第2のデータ多重化装置の間、または、前記第1及び第2の圧縮装置と前記第1及び第2のデータ多重化装置の間に設置することを特徴とする請求項1の放送局設備。
【請求項4】
前記第1及び第2の圧縮装置から出力された放送信号に、データ放送などのデータストリームを多重化する第1及び第2の多重化装置をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の放送局設備。

【請求項5】
複数の放送局設備と、複数の調査世帯装置と、前記複数の調査世帯装置から視聴データを収集する収集設備とを備えた視聴データシステムにおいて、
放送素材を出力する素材系機器と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第1の埋め込み装置を含む第1の系と、
前記素材系機器から出力された放送素材に局データ及び/又はサービスコードを埋め込むための第2の埋め込み装置を含む第2の系と、
前記第1の系または前記第2の系のいずれかの出力を切り替え選択する現用予備切替装置と、
前記現用予備切替装置の出力を放送するための送信設備と、
前記第1の系に含まれる少なくとも前記第1の埋め込み装置、及び、前記第2の系に含まれる少なくとも前記第2の埋め込み装置から、それぞれの障害を検出した情報であるアラーム情報を入力し、系の現用/予備状態を示す現用予備情報を出力し、前記現用予備切替装置により前記第1の系又は前記第2の系のいずれかに切り替えるアラーム収集装置と、
を備えた前記放送局設備における情報埋め込み方法であって、

(1)障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、前記アラーム収集装置が、前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置から出力されるアラーム情報に従い、前記現用予備切替装置により現用予備の系を切替えるまでの遅延よりも、障害発生又は現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置による障害検出から、放送の本線信号が前記現用予備切替装置へ至るまでの遅延の方が大きくなるような位置で、前記第1の系及び前記第2の系内のそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、情報を埋め込むことで、又は、
(2)現用系の前記第1又は第2の埋め込み装置の障害の検出に従い前記アラーム収集装置が前記現用予備切替装置により系を切替える時刻が、放送の本線信号が前記第1又は第2の系で遅延されて前記現用予備切替装置に到達する時刻より、前であるような位置で、前記第1の系及び前記第2の系内のそれぞれ前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、情報を埋め込むことで、
障害が発生してシステムが切り替えられても埋め込み情報の欠落を防止することを特徴とする前記情報埋め込み方法。
【請求項6】
前記第1の系及び前記第2の系はそれぞれ、
放送素材の選択切換を行い出力する第1及び第2の素材切換機と、
映像及び/又は音声信号を圧縮してデータストリームに変換する第1及び第2の圧縮装置と、
を備え、
前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、それぞれ、前記第1及び第2の素材切替機の後段且つ前記第1及び第2の圧縮装置の前段で、情報を埋め込むことを特徴とする請求項5に記載の情報埋め込み方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の素材切替機の後段且つ前記第1及び第2の圧縮装置の前段に、字幕信号及び/又は音声信号を多重化するための第1又は第2のデータ多重化装置をさらに備え、
前記第1の埋め込み装置又は第2の埋め込み装置により、前記第1及び第2の素材切替機と前記第1及び第2のデータ多重化装置の間、または、前記第1及び第2の圧縮装置と前記第1及び第2のデータ多重化装置の間で、情報を埋め込むことを特徴とする請求項5に記載の情報埋め込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−171870(P2010−171870A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14247(P2009−14247)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(591101434)株式会社ビデオリサーチ (52)
【Fターム(参考)】