説明

放送波送信システム

【課題】放送波の送信を従来よりも短時間で検出することができる、放送波送信システムを提供すること。
【解決手段】放送が行われていない空きチャンネルを検出し、当該空きチャンネルにおいて放送波を送信する放送波送信システム1であって、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出部と、このレベル検出部にて検出された一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するチャンネル判定部と、このチャンネル判定部にて空きチャンネルであると判定された検出対象のチャンネルにおいて、放送波を送信する放送波送信装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送が行われていない空きチャンネルを検出し、当該空きチャンネルにおいて放送波を送信する放送波送信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2011年にアナログテレビ放送(以下、アナログ放送)を終了して地上波デジタルテレビ放送(以下、デジタル放送)に移行することが予定されている。このデジタル放送を行う際には、放送を行うチャンネルを決定するために、現在放送が行われているチャンネルを検出し、当該チャンネル以外の空きチャンネルを特定する必要がある。このように空きチャンネルを特定するための方法としては、従来、各チャンネルの電界強度を測定し、電界強度が所定強度以上である場合には、当該チャンネルで放送が行われているものと判定する方法がある。
【0003】
しかしながら、デジタル放送への移行が完全に完了していない現状下においては、アナログ放送とデジタル放送とが混在しており、上述のように電界強度を用いた方法を適用しても、アナログ放送の信号をデジタル放送の信号であると誤って検出してしまい、実際には空いているチャンネルであってもデジタル放送を行うことができない可能性がある。
【0004】
このような問題を解決するため、電界強度に加えて、各チャンネルのシンボルを検出し、このシンボルに基づいて、現在放送が行われているチャンネルの有無やその種別を判定することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、各チャンネルの電界強度を順次測定し、電界強度が所定強度以上であるチャンネルに対しては放送波を復調してシンボルを検出し、シンボルが検出された場合には当該チャンネルにおいてデジタル放送が行われており、シンボルが検出されなかった場合には当該チャンネルにおいてアナログ放送が行われていると判定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−232984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のようにシンボルに基づいてチャンネルの有無や種別を判定する場合には、電界強度の測定を行った上で、さらに放送波を復調する必要があるために、判定に時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、放送波の送信を従来よりも短時間で検出することができる、放送波送信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の放送波送信システムは、放送が行われていない空きチャンネルを検出し、当該空きチャンネルにおいて放送波を送信する放送波送信システムであって、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するチャンネル判定手段と、前記チャンネル判定手段にて空きチャンネルであると判定された前記検出対象のチャンネルにおいて、放送波を送信する送信手段とを備える。
【0009】
また、請求項2に記載の放送波送信システムは、請求項1に記載の放送波送信システムにおいて、検出対象のチャンネルにおける放送波の品質を判定する品質判定手段を備え、前記品質判定手段は、当該放送波送信システムの前記送信手段にて送信されている放送波の品質を判定する。
【0010】
また、請求項3に記載の放送波送信システムは、請求項2に記載の放送波送信システムにおいて、前記送信手段は、当該放送波送信システムの前記送信手段にて送信されている放送波の品質が所定基準以下であることが前記品質判定手段にて判定された場合に、当該放送波が現在送信されているチャンネルを、前記チャンネル判定手段にて空きチャンネルであると判定された他のチャンネルに切り替える。
【0011】
また、請求項4に記載の放送波送信システムは、請求項3に記載の放送波送信システムにおいて、前記送信手段は、放送波が現在送信されているチャンネルを他のチャンネルに切り替える場合、チャンネルの切り替えを報知する報知情報を、当該放送波に含めて、当該放送波が現在送信されているチャンネルにおいて送信する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の放送波送信システムによれば、一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルにおける放送波の有無を判定するので、レベルのみに基づいて放送波の有無が判定でき、復調やシンボル検出を行うことが必須ではなくなるので、放送波の有無を従来よりも短時間で検出することが可能になる。
【0013】
また、請求項2に記載の放送波送信システムによれば、当該放送波送信システムの送信手段にて送信されている放送波の品質を判定するので、当該放送波送信システムにて現在放送が行われている放送の品質を容易に把握することが可能になる。
【0014】
また、請求項3に記載の放送波送信システムは、当該放送波送信システムにて送信されている放送波の品質が所定基準以下である場合に、当該放送波が現在送信されているチャンネルを、他のチャンネルに切り替えるので、放送波の品質を自動的に改善することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の放送波送信システムは、チャンネルを他のチャンネルに切り替える場合、チャンネルの切り替えを報知する報知情報を送信するので、視聴者に対して、チャンネルの切り替えが行われることを予め報知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る放送波送信システムの構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図2】図1の放送波検出装置の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図3】図2の放送波検出装置の要部の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図4】図1の放送波送信装置の構成を機能概念的に示すブロック図である。
【図5】放送波検出処理のフローチャートである。
【図6】1つのチャンネルに含まれるセグメントを概念的に示す図である。
【図7】放送品質監視処理のフローチャートである。
【図8】チャンネル切り替え処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る放送波送信システムの一実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕本実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕本実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔I〕本実施の形態の基本的概念
まず、本実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態に係る放送波送信システムは、放送が行われていない空きチャンネルを検出し、当該空きチャンネルにおいて放送波を送信する放送波送信システムである。ここで、放送波とは、任意の方式及び内容の放送波を含み、例えば、テレビ放送波やラジオ放送波を含むが、以下では、テレビ放送波を対象とした場合について説明する。放送が行われていない空きチャンネルを検出するとは、放送波がないチャンネルを検出することであるが、放送波がない場合とは、放送波が所定の基準レベル以上の電界強度で存在しているか否かを意味し、所定の基準レベルとしては、ゼロレベル以外にも、任意のレベルを設定することができる。
【0019】
この放送波送信システムの特徴の一つは、検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するチャンネル判定手段と、前記チャンネル判定手段にて空きチャンネルであると判定された前記検出対象のチャンネルにおいて、放送波を送信する送信手段とを備える点にある。すなわち、概略的には、検出対象のチャンネルに含まれる一部のセグメントのレベルを検出し、その相対的な関係に基づいて、空きチャンネルを判定するものであり、各チャンネルの復調を行うことなく空きチャンネルの判定を行った上で、この空きチャンネルにおいて放送波を送信できるために、従来よりも放送波の送信を迅速に行うことが可能になる。
【0020】
〔II〕本実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。最初に、本実施の形態に係る放送波送信システムの構成を説明し、次いで、この放送波送信システムを用いて行われる各種の処理について説明する。
【0021】
(構成)
図1は、本実施の形態に係る放送波送信システムの構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波送信システム1は、概略的に、受信アンテナ2、放送波検出装置10、放送波送信装置20、及び送信アンテナ3を備えて構成されている。
【0022】
受信アンテナ2は、放送波を受信して放送信号として放送波検出装置10に出力する受信手段である。放送波検出装置10は、受信アンテナ2から出力された放送信号を用いて、空きチャンネルを検出する空きチャンネル検出手段である。放送波送信装置20は、放送信号を生成し、この放送信号を、放送波検出装置10にて検出された空きチャンネルの周波数に変調して送信アンテナ3に出力する放送手段である。送信アンテナ3は、放送波送信装置20から出力された放送信号を放送波として送信する送信手段である。なお、これら受信アンテナ2及び送信アンテナ3については、従来と同様に構成できるので、その詳細は省略する。
【0023】
(構成−放送波検出装置)
次に、放送波検出装置10の構成について説明する。図2は、図1の放送波検出装置10の構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波検出装置10は、周波数選択部11、レベル検出部12、復調部13、チャンネル判定部14、品質判定部15、表示部16、及び制御部17を備えて構成されている。
【0024】
周波数選択部11は、受信アンテナ2から出力された放送信号の中から、所望の周波数の放送信号を抽出してレベル検出部12に出力する周波数選択手段である。レベル検出部12は、周波数選択部11にて抽出された所望の周波数の放送信号のレベルを検出するレベル検出手段である。復調部13は、周波数選択部11にて抽出されレベル検出部12にてレベル検出が行われた所望の周波数の放送信号を復調する復調手段である。チャンネル判定部14は、レベル検出部12にて検出された放送信号のレベルと、復調部13にて復調された放送信号とに基づいて、検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するチャンネル判定手段である。品質判定部15は、検出対象のチャンネルにおける放送波の品質を判定する品質判定手段である。表示部16は、検出された放送波に関する情報を表示する表示手段であり、ここでは、液晶ディスプレイを含んで構成されている。制御部17は、放送波検出装置10の各部を制御する制御手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、任意の記憶媒体やネットワークを介してインストールされた放送波検出プログラムを解釈及び実行する。
【0025】
図3は、図2の放送波検出装置の要部の構成を機能概念的に示すブロック図である。この図3には、図2の放送波検出装置の各部の中の一部のみを示しており、実際にはこの他にも、上記説明した機能を奏するための構成を含み得る。この図3に示すように、周波数選択部11は、ミキサー11a、発振器11b、及び1セグSawフィルタ11cを備えており、制御部17から制御された周波数にて発振器11bを発振させ、発振器11bの出力をミキサー11aに入力することで、所望のセグメントの放送信号が抽出される。このように抽出された放送信号は、1セグSawフィルタ11cでノイズ成分が除去された上で、レベル検出部12に出力される。
【0026】
レベル検出部12は、AGC12aとAGC検知部12bを備えて構成されており、周波数選択部11から出力された所望のセグメントの放送信号の利得調整をAGC12aにて行い、AGC検知部12bにてこの放送信号のレベルを検知する。
【0027】
チャンネル判定部14は、保持メモリ14aとパターン比較器14bを備えて構成されており、AGC検知部12bにて検知されたレベルが保持メモリ14aに一時的に記憶され、当該記憶されたレベルを複数のセグメントの相互間や所定値とパターン比較器14bによって比較等することで、アナログ放送波の有無が判定される。
【0028】
(構成−放送波送信装置)
次に、図1の放送波送信装置20の構成について説明する。図4は、図1の放送波送信装置20の構成を機能概念的に示すブロック図である。この放送波送信装置20は、入力部21、放送信号生成部22、増幅部23、変調部24、及び制御部25を備えて構成されている。入力部21は、放送用データの入力や、放送の開始又は終了の指示を受け付ける入力手段であり、放送用データとしては、図示しない映像機器からの映像信号や図示しない音声機器からの音声信号の入力を受け付ける。放送信号生成部22は、入力部21にて受け付けられた放送用データを合成等することにより、放送信号を生成する放送信号生成手段である。増幅部23は、放送信号生成部22にて生成された放送信号を所定レベルに増幅する増幅手段である。変調部24は、増幅部23にて増幅された放送信号を所定の変調方式(例えば、64QAM(Quadrature amplitude moduration))により変調する変調手段であり、放送波検出装置10にて検出された空きチャンネルの周波数により変調を行う。制御部25は、放送波送信装置20の各部を制御する制御手段であり、例えば、CPUを含んで構成され、任意の記憶媒体やネットワークを介してインストールされた放送波検出プログラムを解釈及び実行する。
【0029】
(処理)
次に、この放送波送信システム1において行われる放送処理について説明する。この放送処理は、空きチャンネルを検出するため、主として放送波検出装置10により行われる放送波検出処理と、放送波を送信するため、主として放送波送信装置20により行われる放送波送信処理と、放送波送信システム1にて送信されている放送波の品質を判定するため、主として放送波検出装置10により行われる放送品質監視処理と、放送波送信システム1にて放送波が送信されているチャンネルを切り替えるため、主として放送波送信装置20により行われるチャンネル切り替え処理とに大別されるため、以下、これら各処理を順次説明する。なお、以下では、ステップを「S」と略記する。
【0030】
(処理−放送波検出処理)
最初に、放送波検出処理について説明する。図5は、放送波検出処理のフローチャートである。この放送波検出処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後に繰り返し実行される。なお、特記する場合を除き、放送波検出処理の各ステップは、放送波検出装置10の制御部17にて実行されるものとする。
【0031】
まず、受信アンテナ2にて放送波が受信されて放送信号として放送波検出装置10に出力される。この放送波検出装置10において、制御部17は、放送波の検出対象となるチャンネルの周波数を決定し、この決定に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力することで、検出対象となるチャンネルの放送信号を周波数選択部11に抽出させる(SA1)。
【0032】
この放送信号の抽出は、チャンネルスキャンとセグメントスキャンを組合せて行われる。チャンネルスキャンとは、チャンネル単位で周波数を切り替えて放送信号を抽出することを意味し、ここでは、デジタル放送の周波数帯である470MHzから770MHzの間で6MHz毎に区分されたチャンネルの中で、最初の周波数帯(470〜476MHz)が最初に抽出され、チャンネル判定部14による判定が終了すると次の周波数帯(476〜482MHz)が次に抽出され、以降同様に、チャンネル判定部14による判定が終了する毎に次のチャンネルが順次抽出されることで、各チャンネルがスキャンされる。
【0033】
また、セグメントスキャンとは、各チャンネルの中のセグメント単位で周波数を切り替えて放送信号を抽出することを意味し、ここでは、チャンネルスキャンによりスキャンされているチャンネルに含まれる14セグメントの内、ガードバンドを除いた13セグメントを対象として、所定のセグメント番号の一部のセグメントを所定順序でスキャンする。ここでは、セグメント番号とは、地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式の標準規格であるARIB STD−B31にて規定されているセグメント番号であり、図6に示すように、13セグメントの中で、中央のセグメントを0番とし、左右に離れるに連れて交互に1つずつ増加する番号である。このセグメントスキャンでは、最初にワンセグ放送用のセグメント(具体的には、0番のセグメント)を抽出し、次いでアナログ放送の搬送波に対応するセグメント(具体的には、アナログ放送の映像搬送波に対応する7番のセグメントと、アナログ放送の音声搬送波に対応する12番のセグメント)を抽出する。最初にワンセグ放送用のセグメントを抽出するのは、このセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、デジタル放送が行われているものと判定でき、特に、13セグメントの中でも、HDTV放送用の12セグメントに比べて、高感度で判定を行うことが可能なためである。また、アナログ放送用のセグメントを抽出するのは、このセグメントのレベルが所定レベル以上である場合には、アナログ放送が行われているか、あるいは、デジタル放送にアナログ妨害波が混在しているものと判定できるからである。
【0034】
次いで、レベル検出部12は、上述のチャンネルスキャンによりスキャンされているチャンネルに含まれる14セグメントの内、セグメントスキャンによりスキャンされたセグメントのレベルを検出する。具体的には、0番のセグメントのレベル(以下、0番レベル)、7番のセグメントのレベル(以下、7番レベル)、及び12番のセグメントのレベル(以下、12番レベル)を順次検出する(SA2)。そして、このように検出したセグメントのレベルをチャンネル判定部14に出力する。
【0035】
そして、チャンネル判定部14は、レベル検出部12から出力されたレベルに基づいて、放送波の有無又は種類を判定する。具体的には、チャンネル判定部14は、0番レベルと、7番レベルと、12番レベルとについて、この中の少なくとも一つのレベルが、所定レベル以上であるか否かを判定する(SA3)。この所定レベルとしては、放送波又は妨害波として認識すべき程度の最低限のレベルが設定される。そして、一つのレベルも所定範囲以上でない場合には(SA3、No)、周波数選択部11のチャンネルスキャンにてスキャンされているチャンネル(以下、検出対象チャンネル)において、デジタル放送波もアナログ放送波もないと判定して、後述するSA10に移行する(SA4)。一方、少なくとも一つのレベルが、所定レベル以上である場合には(SA3、Yes)、SA5に移行する。
【0036】
SA5において、チャンネル判定部14は、0番レベルと、7番レベルと、12番レベルとについて、これらの相互の差異が所定範囲内にあるか否かを判定する(SA5)。そして、これらの相互の差異が所定範囲内にある場合には(SA5、Yes)、検出対象チャンネルにおいて、デジタル放送波があるものと判定する(SA6)。このように判定する理由は、アナログ放送波がある場合には、映像搬送波に対応する7番レベル及び音声搬送波に対応する12番レベルが、ワンセグ信号がある0番レベルに対して大きくなるのに対して、デジタル放送波がある場合には、7番レベル及び12番レベルが、ワンセグ信号がある0番レベルとほぼ同じ大きさになると想定できるためである。このような判定を行った場合、後述するSA10に移行して、デジタル放送波の詳細を特定する。
【0037】
一方、これらの相互の差異が所定範囲内にない場合(SA5、No)、チャンネル判定部14は、0番レベルが所定レベル以上であるか否かを判定する(SA7)。この所定レベルとしては、ワンセグ放送波があると認識すべき程度の最低限のレベルが設定される。そして、0番レベルが所定レベル以上でない場合には(SA7、No)、検出対象チャンネルにおいて、アナログ放送波のみがあるものと判定する(SA8)。
【0038】
逆に、0番レベルが所定レベル以上である場合には(SA7、Yes)、検出対象チャンネルにおいて、デジタル放送が行われているもののアナログ妨害波があるものと判定する(SA9)。この場合、チャンネル判定部14は、後述するSA10に移行して、デジタル放送波の詳細を特定する。
【0039】
SA10では、復調部13は、検出対象チャンネルの0番のセグメントを復調し、復調された放送信号をチャンネル判定部14に出力する(SA10)。その後、チャンネル判定部14は、0番のセグメントに対する復調部13による復調結果に基づいて、検出対象のチャンネルのチャンネル番号を特定する(SA11)。具体的には、復調部13にて復調された0番のセグメントの放送信号から、当該放送信号に多重化されたID(例えば、NIT(Network Information Table)、SDT(Service Description Table)、BIT(Broadcaster Information Table)、EIT(Event Information Table)、あるいはCDT(Common Data Table))を取得し、当該取得したIDに基づいて公知の方法でチャンネル番号を特定する。そして、チャンネル判定部14は、このように特定した結果を表示部16に出力する。ただし、チャンネル番号の特定が不要である場合には、SA10及びSA11を省略してもよい。
【0040】
制御部17は、この判定結果を表示部16に表示させる(SA12)。例えば、検出対象のチャンネルの周波数、放送波の有無及び種類(デジタル放送波又はアナログ放送波のいずれが存在するか、及び妨害波としてのアナログ放送波の有無)、及び各放送波のレベルを文字及び数値にて表示させる。
【0041】
次いで、制御部17は、デジタルチャンネルの全てのチャンネルの検出が終了したか否かを判定し(SA13)、終了していない場合には(SA13、No)、次のチャンネルを検出対象チャンネルに変更すべく、放送波の検出対象となるチャンネルの周波数を決定し、SA1において、この周波数に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力することで、検出対象となるチャンネルの放送信号を周波数選択部11に抽出させる。以降、全てのチャンネルが検出対象チャンネルとして抽出されるまで、検出対象チャンネルを変更し、当該変更を行う毎に、検出対象チャンネルに対する0番レベル、10番レベル、及び5番レベルに基づいた放送波の有無及び種別の判定や、判定結果の表示が行われる。そして、デジタルチャンネルの全てのチャンネルの検出が終了した場合(SA13、Yes)、制御部17は、各チャンネルに対する判定結果を放送波送信装置20に出力して(SA14)、放送波検出処理を終了する。
【0042】
(処理−放送波送信処理)
次に、放送波送信処理について説明する。この放送波送信処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後に繰り返し実行される。なお、特記する場合を除き、放送波送信処理の各ステップは、放送波送信装置20の制御部25にて実行されるものとする。
【0043】
この処理では、入力部21が放送の開始指示を受け付けた場合、放送信号生成部22は、入力部21に入力された映像信号や音声信号を合成等することにより放送信号を生成し、増幅部23はこの放送信号生成を増幅する。一方、制御部25は、放送波検出装置10からの出力に基づいて、放送波検出処理で空きチャンネルであるとして特定されたチャンネルの周波数を、変調部24に出力する。そして、変調部24は、増幅部23にて増幅された放送信号を、制御部25から出力された空きチャンネルの周波数で変調して送信アンテナ3に出力する。この結果、空きチャンネルの周波数でデジタル放送波が送信される。以降、入力部21が放送の終了指示を受け付けるまで放送が継続され、入力部21が放送の終了指示を受け付けた時点で放送波送信処理を終了する。
【0044】
(処理−放送品質監視処理)
次に、放送品質監視処理について説明する。図7は、放送品質監視処理のフローチャートである。この放送品質監視処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後、放送波送信システム1で放送波が送信されている間、繰り返し実行される。なお、特記する場合を除き、放送品質監視処理の各ステップは、放送波検出装置10の制御部17にて実行されるものとする。
【0045】
まず、受信アンテナ2にて放送波が受信されて放送信号として放送波検出装置10に出力される。この放送波検出装置10において、制御部17は、放送波の検出対象となる周波数を決定し、この周波数に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力することで、当該周波数の放送信号を周波数選択部11に抽出させる(SB1)。この際、制御部17は、放送波送信装置20において放送波が現在送信されているチャンネルを当該放送波送信装置20から取得し、当該チャンネルの周波数に基づいて周波数選択部11に制御信号を出力し、当該周波数の放送信号を周波数選択部11に抽出させる。
【0046】
次いで、品質判定部15は、周波数選択部11にて抽出された放送信号の品質に関する所定の指標値を算定する(SB2)。具体的には、品質判定部15は、この放送信号に対して、C/N(Carrier/Noise)比、ビット誤り率(BER:Bit Error Rate)、又は変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)の少なくとも一つを算定し、当該算定結果を制御部17に出力する。制御部17は、このような算定結果を表示部16に文字及び数値にて表示させる(SB3)。
【0047】
次いで、品質判定部15は、SB2で算定した指標値を、予め設定された所定値と比較することで、放送信号の品質が所定基準以上であるか否かの判定を行い(SB4)、この判定結果を制御部17に出力する。制御部17は、この判定結果が、放送信号の品質が所定基準に満たないことを示す場合には(SB4、No)、チャンネル切り替え処理を起動し(SB5)、放送品質監視処理を終了する。
【0048】
(処理−チャンネル切り替え処理)
最後に、チャンネル切り替え処理について説明する。図8は、チャンネル切り替え処理のフローチャートである。このチャンネル切り替え処理は、放送波送信システム1の各装置への電源投入後、図7の放送品質監視処理のSB5において起動される。なお、特記する場合を除き、チャンネル切り替え処理の各ステップは、放送波検出装置10の制御部17又は放送波送信装置20の制御部25にて実行されるものとする。
【0049】
この処理では、放送波検出装置10の制御部17は、放送波送信装置20において放送波が現在送信されているチャンネルを当該放送波送信装置20から取得し、当該チャンネルとは異なる空きチャンネルを検出する(SC1)。この検出は、チャンネルスキャンの対象から、放送波送信装置20において放送波が現在送信されているチャンネルを除外する点を除いて、上述した放送波検出処理と同様に行われるので、その詳細の説明は省略する。
【0050】
このように新しい空きチャンネルが検出されると、制御部17は、当該チャンネルの周波数を特定する情報を含んだチャンネル切り替え制御信号を放送波送信装置20に送信する(SC2)。このチャンネル切り替え制御信号を受けた放送波送信装置20の制御部25は、入力部21に入力された放送用データに対して、チャンネルの切り替えに関する報知情報を含んだデータを合成等することにより、放送信号を生成する(SC3)。この報知情報の内容としては、例えば、チャンネルの切り替えが行われる旨、チャンネルの切り替えが行われる予想時間(例えば、実際にチャンネルの切り替えを行うまでに待機する時間として予め設定された待機時間であり、数秒から数分)、及び切り替え先となるチャンネルの番号(例えば、切り替え先となるチャンネルの周波数に基づいて、予め設定された周波数−チャンネル対応テーブルを参照して取得された番号)を含めることができる。また、報知情報の出力形態としては、テキストデータや音声データとすることができる。このように生成された放送信号が、増幅部23による増幅や変調部24による変調を経て送信アンテナ3で放送波として出力されることで、視聴者に対して、チャンネルの切り替えが行われることが予め報知される。
【0051】
次いで、制御部25は、現在放送を行っているチャンネルの周波数を、チャンネル切り替え制御信号に含まれた新しい空きチャンネルの周波数に切り替えるように、変調部24を制御する(SC4)。この結果、放送信号が、空きチャンネルの周波数により変調されて、送信アンテナ3で放送波として出力される。このように切り替えが行われた後の放送信号には、チャンネルの切り替えに関する報知情報を含んだデータは不要であるため、当該データを合成することなく生成された放送信号が放送される。ただし、切り替え後のチャンネルであることを示す報知情報を含んだデータを、当該切り替え後の所定時間だけ合成してもよい。この報知情報の内容としては、例えば、チャンネルの切り替えが行われた旨、チャンネルの切り替えが行われた時間、及び切り替え元となったチャンネルの番号(例えば、切り替え元となるチャンネルの周波数に基づいて、予め設定された周波数−チャンネル対応テーブルを参照して取得された番号)を含めることができる。また、この報知情報の出力形態としては、テキストデータや音声データとすることができる。これにてチャンネル切り替え処理が終了する。
【0052】
(効果)
このように本実施の形態によれば、一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するので、レベルのみに基づいて空きチャンネルを判定でき、復調やシンボル検出を行うことが必須ではなくなるので、空きチャンネルを従来よりも短時間で判定することが可能になる。
【0053】
また、放送波送信システム1の放送波送信装置20にて送信されている放送波の品質を判定するので、放送波送信システム1にて現在放送が行われている放送の品質を容易に把握することが可能になる。
【0054】
また、放送波送信システム1にて送信されている放送波の品質が所定基準以下である場合に、当該放送波が現在送信されているチャンネルを、他のチャンネルに切り替えるので、放送波の品質を自動的に改善することができる。
【0055】
また、チャンネルを他のチャンネルに切り替える場合、チャンネルの切り替えを報知する報知情報を送信するので、視聴者に対して、チャンネルの切り替えが行われることを予め報知することが可能になる。
【0056】
〔III〕本実施の形態に対する変形例
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0057】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0058】
(空きチャンネルの検出単位について)
上記実施の形態においては、空きチャンネルをチャンネル単位で検出しているが、さらにセグメント単位で検出してもよい。すなわち、将来的にはワンセグ放送が自由化されることも検討されており、自由化が認められた場合には、一つのチャンネルに含まれる13のセグメントの中で、いずれかのセグメントで放送が行われている場合であっても、他の空きセグメントで放送を行うことが可能になるため、空きセグメントを検出し、当該空きセグメントで放送を行うようにしてもよい。すなわち、特許請求の範囲における空きチャンネルとは、当該チャンネルにおける全てのセグメントで放送が行われていないチャンネルに限定されず、放送が行われていないセグメントを一つでも含むチャンネルを意味する。
【0059】
空きセグメントの検出は、例えば、チャンネルスキャンとセグメントスキャンを組合せて行ない、各チャンネルの各セグメントのレベルを順次全て検出し、一定レベル以下のセグメントを空きセグメントとすることで行うことができる。さらに、各セグメントについて、C/N比、ビット誤り率、又は変調誤差比を算定し、この算定結果に基づいて、放送を行うセグメントを選択するようにしてもよい。
【0060】
(品質判定について)
上記実施の形態では、放送波検出装置10により行われる放送品質監視処理を、放送波送信装置20において放送波が現在送信されているチャンネルのみを対象として行っているが、放送波送信処理における空きチャンネルの検出時に行うようにしてもよい。すなわち、放送波送信処理で空きチャンネルが検出された場合に、当該空きチャンネルの品質を上記と同様に判定し、品質が所定基準以上であると判定された空きチャンネルのみを放送波送信装置20に出力して放送を行わせてもよい。この場合、放送波送信処理で空きチャンネルが複数検出された場合には、当該複数の空きチャンネルの中から、最も品質の良い空きチャンネルを一つ選択し、当該選択した空きチャンネルにおいて放送波送信装置20に放送を行わせてもよい。
【0061】
(抽出するセグメントについて)
上記実施の形態においては、抽出するセグメントとして、ワンセグ放送用のセグメントである0番のセグメントと、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントである7番及び12番のセグメントを抽出しているが、このように抽出するセグメントは変更可能である。例えば、ワンセグ放送用のセグメント以外の他のデジタル放送専用のセグメント(つまり、0番のセグメント以外であり、かつ、7番又は12番以外のセグメント)を利用しても十分な感度が得られる環境下においては、当該他のデジタル放送専用のセグメントを抽出し、当該抽出したセグメントのレベルを利用して判定を行ってもよい。また、将来的には0番以外のセグメントによるワンセグ放送が自由化される可能性もあるため、このような場合には、ワンセグ放送用のセグメントとして、0番以外の他のワンセグ放送用のセグメントを抽出し、当該抽出したセグメントのレベルを利用して判定を行ってもよい。また、アナログ放送の搬送波に対応するセグメントとしては、7番と12番の両方のセグメントを利用することで判定精度が向上すると考えられるが、必ずしも7番と12番の両方のセグメントを利用する必要はなく、いずれか一方のセグメントのみを用い、他のセグメントは省略してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 放送波送信システム
2 受信アンテナ
3 送信アンテナ
10 放送波検出装置
11 周波数選択部
11a ミキサー
11b 発振器
11c 1セグSawフィルタ
12 レベル検出部
12a AGC
12b AGC検知部
13 復調部
14 チャンネル判定部
14a 保持メモリ
14b パターン比較器
15 品質判定部
16 表示部
17、25 制御部
20 放送波送信装置
21 入力部
22 放送信号生成部
23 増幅部
24 変調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送が行われていない空きチャンネルを検出し、当該空きチャンネルにおいて放送波を送信する放送波送信システムであって、
検出対象のチャンネルに含まれる複数のセグメントの内、所定の一部の複数のセグメントの各々のレベルを検出するレベル検出手段と、
前記レベル検出手段にて検出された前記一部の複数のセグメントの各々のレベルと、これらレベルの相互の差異に基づいて、前記検出対象のチャンネルが空きチャンネルであるか否かを判定するチャンネル判定手段と、
前記チャンネル判定手段にて空きチャンネルであると判定された前記検出対象のチャンネルにおいて、放送波を送信する送信手段と、
を備える放送波送信システム。
【請求項2】
検出対象のチャンネルにおける放送波の品質を判定する品質判定手段を備え、
前記品質判定手段は、当該放送波送信システムの前記送信手段にて送信されている放送波の品質を判定する、
請求項1に記載の放送波送信システム。
【請求項3】
前記送信手段は、当該放送波送信システムの前記送信手段にて送信されている放送波の品質が所定基準以下であることが前記品質判定手段にて判定された場合に、当該放送波が現在送信されているチャンネルを、前記チャンネル判定手段にて空きチャンネルであると判定された他のチャンネルに切り替える、
請求項2に記載の放送波送信システム。
【請求項4】
前記送信手段は、放送波が現在送信されているチャンネルを他のチャンネルに切り替える場合、チャンネルの切り替えを報知する報知情報を、当該放送波に含めて、当該放送波が現在送信されているチャンネルにおいて送信する、
請求項3に記載の放送波送信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−124848(P2012−124848A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276027(P2010−276027)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】