説明

放電エネルギー回収装置及び画像形成装置

【課題】アクチュエータ駆動電圧波形に影響を与えることなく、アクチュエータの放電電流を効率的に回収し、有効な電力として再利用することにより消費電力を低減する。
【解決手段】圧電素子が駆動されたときに圧電素子から放電される放電エネルギーを回収する放電エネルギー回収装置であって、圧電素子を駆動する電圧を生成する駆動電圧生成手段と、駆動電圧生成手段により圧電素子が駆動されたとき、圧電素子から放電される電圧を監視する放電電圧監視手段と、放電電圧監視手段により監視された電圧に対応する電荷を蓄積する複数の電荷蓄積手段と、複数の電荷蓄積手段の中から、監視された電圧に対応する電荷量を蓄積可能な容量を有する電荷蓄積手段を選択する選択手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電エネルギー回収装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、電圧を印加して圧電素子(以下、「アクチュエータ」ともいう。)を駆動することにより、インク滴を吐出して記録媒体に印字を行う画像形成装置において、アクチュエータ駆動電圧波形の電流増幅を、バイポーラトランジスタを用いて行う方法が一般的に知られている。図7は、一般的な圧電素子駆動回路装置の構成について説明する回路図である。
【0003】
図7において、記録ヘッド制御部81からの制御信号により、電流増幅部82を構成するバイポーラトランジスタQ83、Q84のベース端子が“L”になると共に、アナログスイッチ86がONすると、アクチュエータ85に対して+VDDの電圧が印加され、アクチュエータ充電電流Aが流れると共に、アクチュエータ85に充電された電圧であるVcomの電圧がアクチュエータ放電電流Bとして、GNDに流れ込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7に示した従来のバイポーラトランジスタを用いた電流増幅回路では、アクチュエータの駆動に使用する電力のほとんどがバイポーラトランジスタの熱損失となってしまい、無駄な電力を消費しているという問題があった。また、アクチュエータからのアクチュエータ放電電流Bを回収して、アクチュエータ駆動用電力として再利用するといった構成の発明も多数出願されているが、アクチュエータ駆動電圧波形自体に対する影響(例えば、波形が鈍ってしまいアクチュエータの駆動制御が困難になる等)に関して考慮されていないという問題があった。
【0005】
特許文献1には、アクチュエータに蓄積される電気エネルギーを有効に利用し、消費電力を低減する目的で、アクチュエータの放電電流を2つの充電用コンデンサに充電した後、充電用コンデンサに充電した電力をアクチュエータ駆動用電力として再利用する構成が開示されている。
【0006】
しかしながら、充電用コンデンサとして大容量のコンデンサを使用しているため、充電に時間が掛かってしまい、アクチュエータ自身の駆動周期が遅くなるという問題点がある。また、アクチュエータに対する充電電流及びアクチュエータからの放電電流は、実際に駆動されるアクチュエータの数や容量によって変化するため、それに伴って、充電用コンデンサに充電される電荷量も変化してしまい、結果的に、アクチュエータ駆動電圧波形の立ち上がり時間、立下り時間が変化してしまい、アクチュエータの駆動電圧波形の制御が困難であるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、アクチュエータ駆動電圧波形への影響が現れない構成で、アクチュエータ駆動に使用する電力の一部を効率的に回収し、有効な電力として再利用することができる放電エネルギー回収装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明におけるエネルギー回収装置は、圧電素子が駆動されたときに前記圧電素子から放電される放電エネルギーを回収する放電エネルギー回収装置であって、前記圧電素子を駆動する電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記駆動電圧生成手段により前記圧電素子が駆動されたとき、前記圧電素子から放電される電圧を監視する放電電圧監視手段と、前記放電電圧監視手段により監視された電圧に対応する電荷を蓄積する複数の電荷蓄積手段と、前記複数の電荷蓄積手段の中から、前記監視された電圧に対応する電荷量を蓄積可能な容量を有する電荷蓄積手段を選択する選択手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明におけるエネルギー回収装置は、請求項1に記載の放電エネルギー回収装置において、前記監視された電圧に対応する電荷量は、前記駆動される圧電素子の個数及び/又は静電容量に応じて変動することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明におけるエネルギー回収装置は、請求項1又は2に記載の放電エネルギー回収装置において、前記選択された電荷蓄積手段に蓄積される電荷量に対応する電圧値の合計は、前記圧電素子を駆動する電圧値以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明における画像形成装置は、請求項1から3の何れか1項に記載の放電エネルギー回収装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アクチュエータ駆動電圧波形に影響を与えることなく、アクチュエータの放電電流を効率的に回収し、有効な電力として再利用することにより消費電力を低減することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における画像形成装置の基本構成を示す構造図である。
【図2】本発明の実施形態における画像形成装置の機能ブロックについて説明するブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における画像形成装置の記録ヘッド制御について説明するブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置の構成について説明する回路図である。
【図5】本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置における駆動するアクチュエータの数について説明する模式図である。
【図6】本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置における駆動するアクチュエータの数と接続するコンデンサの数との関係を示す図である。
【図7】一般的な圧電素子駆動回路装置の構成について説明する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化乃至省略する。本発明は、圧電素子が駆動されたときに圧電素子から放電される放電エネルギーを回収する放電エネルギー回収装置において、アクチュエータ放電電流を回収する際に、駆動されるアクチュエータの個数や容量に応じて回収能力を変化させることが特徴になっている。
【0015】
図1に本発明の実施形態における画像形成装置の基本構成を示す。図1において、キャリッジ11はガイドロット12で保持されて、主走査モータ13との間に渡されたプーリー14を介して主走査方向(図1における左右方向)に走査する。このキャリッジ11には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド19が搭載されていて、記録ヘッド19に配列されたインク吐出ノズル18からインクが吐出される。
【0016】
キャリッジ11を主走査方向に移動させながら必要な位置でインク滴を吐出することによって、記録媒体上に画像を形成する。キャリッジ11の位置情報は筐体に固定されたエンコーダシート15に等間隔で記録されたパターンを、キャリッジ11に固定されたエンコーダセンサ16で移動しながら読み取ってカウントを加算/減算することで得ることができる。
【0017】
このような主走査方向のキャリッジ移動とインク吐出動作を1回行うことで、ノズル列の長さと同じ幅のバンドに対して画像を形成することができ、1バンド分の画像形成が終了したら副走査モータ17を駆動して記録媒体を副走査方向(図1における上下方向)に移動させて、再度1バンド分の画像形成動作をさせるように繰り返せば、記録媒体の任意の場所に画像を形成することができる。
【0018】
次に、図2を参照して本発明の実施形態における画像形成装置の機能ブロックを説明する。図2は、本発明の実施形態における画像形成装置の機能ブロックについて説明するブロック図である。画像形成装置のハードウェア制御を行うファームウェアや記録ヘッドの駆動波形データはROM(Read Only Memory)23に格納されており、ホストPC(Personal Computer)21から印刷ジョブ(画像データ)を受信すると、CPU(Central Processing Unit)22は画像データをRAM(Random Access Memory)24に格納し、記録ヘッド19が搭載されたキャリッジ11を主走査制御部25によって記録媒体上の任意の位置に移動する。
【0019】
記録ヘッド制御部27は、主走査エンコーダ29から得られるキャリッジ11の位置情報に連動し、RAM24に格納された画像データ、ROM23に格納された記録ヘッド駆動波形、及び制御信号を記録ヘッド駆動部28に転送する。記録ヘッド駆動部28は、記録ヘッド制御部27より転送されたデータをもとに、記録ヘッド19を駆動し、インク滴を吐出する。
【0020】
次に、図3を参照して本発明の実施形態における画像形成装置の記録ヘッド制御部27について説明する。図3は、本発明の実施形態における画像形成装置の記録ヘッド制御について説明するブロック図である。記録ヘッド19に設置されたアクチュエータ31を変位させることによりインク滴を吐出する。
【0021】
アクチュエータ31に対する充電電圧Vcomの印加を、アナログスイッチ32をON/OFFすることによりアクチュエータ31を変位させる。画像データ制御部33からの情報に基づいてアナログスイッチ32のON/OFFを制御する。アクチュエータ31に対する充電電圧Vcomは、記録ヘッド制御部27の駆動波形制御部34からの情報に基づいて電流増幅を行うことにより生成する。
【0022】
次に、図4を参照して、本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置の構成について説明する。図4は、本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置の構成について説明する回路図である。図4において、アナログスイッチ32がONされ、バイポーラトランジスタQ44がONされることにより、アクチュエータ31に蓄積された電荷が、アクチュエータ放電電流Bとして流れる。
【0023】
アクチュエータ放電電流回収部45は、コンデンサC1とFETQ1、C2とQ2、C3とQ3、C4とQ4とがそれぞれ直列に接続されており、FETQ1、Q2、Q3、Q4がそれぞれONすることにより、これらに直列に接続されたコンデンサC1、C2、C3、C4のそれぞれに対してアクチュエータ放電電流Bか流れ込み、アクチュエータ31から放電された電荷が、コンデンサC1、C2、C3、C4にそれぞれ蓄積されることになる。
【0024】
そして、アクチュエータ31から放電される電荷量に応じて、コンデンサC1、C2、C3、C4の中の何れのコンデンサに蓄積すべきかについて記録ヘッド制御部27が判断し、その判断結果に応じて記録ヘッド制御部27からの制御信号により、FETQ1、Q2、Q3、Q4の中のいずれかのFETを選択しONさせることになる。
【0025】
ここで注意すべき点は、記録ヘッド制御部27からの制御信号によりONされたFETによって充電をすべきコンデンサとして選択されたコンデンサに対して蓄積された電荷量に対応する充電電圧値の総合計は、アクチュエータ31を駆動するための電圧値以下であることが条件となる。これにより、アクチュエータを駆動するための駆動電圧の波形が、充電用のコンデンサの充電電圧を下回らないこととなり、充電用コンデンサがアクチュエータ駆動電圧波形に対して与える影響を極力排除することができる。
【0026】
次に、アクチュエータ31からの放電によって得られた電荷を充電すべきコンデンサの選択方法について図4及び図5を用いて説明する。図5は、本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置における駆動するアクチュエータの数について説明する模式図である。なお、図4においては、アクチュエータ31は1個のみ図示しているが、アクチュエータ31の数は1個に限られず、複数個(以下、アクチュエータの個数のことを「チャンネル」ともいう。)設けられているものとする。
【0027】
まず、記録ヘッド制御部27から駆動すべきアクチュエータ31を指示するための画像データが、記録ヘッド制御部27からアクチュエータ31に送信される転送信号(dclk)の送信タイミングに合わせて送信される。そして、アクチュエータ31は、記録ヘッド制御部27から送信されるラッチ信号(lt_n)のタイミングで、送信された画像データの取り込みを行う。
【0028】
ここで、記録ヘッド制御部27からアクチュエータ31に対して送信された画像データに含まれるインクを吐出するデータの数が、実際に駆動されるアクチュエータの個数となる。そして、送信された画像データが、果たして何チャンネルのアクチュエータに対して駆動するよう指示したものであるかを記録ヘッド制御部27の回路において演算し、その演算結果求められたアクチュエータのチャンネル数に応じて、アクチュエータ放電電流回収部45の中の充電すべきコンデンサの数を決定する。
【0029】
駆動するアクチュエータのチャンネル数が多い場合には、充電すべきコンデンサの数を増やして全体の充電電荷量が多くなるよう設定される。逆に、駆動するアクチュエータのチャンネル数が少ない場合は、充電すべきコンデンサの数を減らすことで、全体の充電電荷量は減るが、その分負荷も減ることになるため、アクチュエータ駆動電圧波形への影響もさらに抑えることが可能となる。
【0030】
次に、図6を用いて、具体的に駆動するアクチュエータのチャンネル数とアクチュエータからの放電電流に対する電荷を充電するコンデンサの数との関係について説明する。図6は、本発明の実施形態における放電エネルギー回収装置における駆動するアクチュエータの数と接続するコンデンサの数との関係を示す図である。
【0031】
図6は、例えば、1つのアクチュエータ駆動電圧波形が駆動させることができるアクチュエータの最大チャンネル数が192チャンネルであり、充電用コンデンサがC1、C2、C3、C4の4個で構成されている場合、192チャンネルのうち実際に駆動されるアクチュエータの数に対して、充電すべきコンデンサの数を確保するために、FETQ1、Q2、Q3、Q4のうち、いずれのFETをONさせるべきかを表したものである。
【0032】
いま、充電用コンデンサC1、C2、C3、C4の静電容量がすべて同じ容量で構成されていると仮定した場合、駆動するアクチュエータのチャンネル数を単純に増加させていくと、それに追随してON制御するFETの数も増していき、結果的に充電されるコンデンサの数が増していくため、コンデンサに充電される電荷量も増大していく。
【0033】
図6では、充電用コンデンサの静電容量がすべて同じ容量である場合について説明しているが、充電用コンデンサの静電容量を、複数種類の静電容量を有する構成とした場合には、ON制御されるFETの組み合わせによって、充電されるコンデンサの組み合わせも様々に変化し、充電用コンデンサに充電される電荷量をバラエティに富むものとすることが可能となり、放電される電荷量に対応した充電コンデンサの組み合わせを形成することにより、さらにアクチュエータ駆動電圧波形への影響を少なくすることが可能となる。
【0034】
以上説明したように、本発明は、駆動するアクチュエータの個数や容量に応じて使用する充電用コンデンサの数を変化させるので、アクチュエータ駆動電圧波形の制御に影響を与えることなくアクチュエータ放電電流を回収できる。
【0035】
また、アクチュエータ放電電流の回収を、アクチュエータ駆動電圧波形の電圧値以下で行うので、アクチュエータ駆動電圧波形の制御に影響を与えることなくアクチュエータ放電電流を回収でき、アクチュエータ駆動電圧波形が充電用コンデンサの充電電位よりも下がってしまうという問題を解消することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨及び範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
11 キャリッジ
12 ガイドロット
13 主走査モータ
14 プーリー
15 エンコーダシート
16 エンコーダセンサ
17 副走査モータ
18 インク吐出ノズル
19 記録ヘッド
22 CPU
23 ROM
24 RAM
25 主走査制御部
26 副走査制御部
27 記録ヘッド制御部
28 記録ヘッド駆動部
29 主走査エンコーダ
31 アクチュエータ
32 アナログスイッチ
33 画像データ制御部
34 駆動波形制御部
42 電流増幅部
45 アクチュエータ放電電流回収部
48 低電圧回路(ロジック系)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2002−103603号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が駆動されたときに前記圧電素子から放電される放電エネルギーを回収する放電エネルギー回収装置であって、
前記圧電素子を駆動する電圧を生成する駆動電圧生成手段と、
前記駆動電圧生成手段により前記圧電素子が駆動されたとき、前記圧電素子から放電される電圧を監視する放電電圧監視手段と、
前記放電電圧監視手段により監視された電圧に対応する電荷を蓄積する複数の電荷蓄積手段と、
前記複数の電荷蓄積手段の中から、前記監視された電圧に対応する電荷量を蓄積可能な容量を有する電荷蓄積手段を選択する選択手段と、を有することを特徴とする放電エネルギー回収装置。
【請求項2】
前記監視された電圧に対応する電荷量は、前記駆動される圧電素子の個数及び/又は静電容量に応じて変動することを特徴とする請求項1に記載の放電エネルギー回収装置。
【請求項3】
前記選択された電荷蓄積手段に蓄積される電荷量に対応する電圧値の合計は、前記圧電素子を駆動する電圧値以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放電エネルギー回収装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の放電エネルギー回収装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−111201(P2012−111201A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264239(P2010−264239)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】