説明

放電ランプ用の蛍光体混合物および放電ランプ、殊に水銀低圧放電ランプ

本発明は、第1の蛍光体化合物および第2の蛍光体化合物を有する、放電ランプ(1)用の蛍光体混合物に関する。第1の蛍光体化合物は緑色および/または黄色のスペクトル領域にある発光スペクトルを有し、水銀源から放射される紫外線放射を吸収し、且つ前記水銀源から放射される青色スペクトル領域にある放射を吸収するよう構成されている。本発明はまた、上述の蛍光体混合物を有する蛍光体層を備えた放電ランプに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電ランプ用の蛍光体混合物に関し、蛍光体混合物は第1の蛍光体化合物および第2の蛍光体化合物を有する。さらに本発明は、この種の蛍光体混合物を有する放電ランプに関する。
【0002】
背景技術
水銀(Hg)低圧放電ランプのコーティングには通常の場合、ジャッドの直線(Judd Gerade)の領域において2500Kよりも高い色温度、例えば標準化されたIEC色度座標許容範囲内の色温度を実現するために、放射変換用の青色、赤色および緑色の蛍光体が使用される。通常使用されている公知の蛍光体(BAM,CAT,YOE)は、水銀低圧放電ランプによって形成され、185nmおよび254nmの波長を有する放射の大部分を可視光に変換する。水銀放電によって付加的に可視領域で放射される、例えば435nmの放射成分は使用されている蛍光体によっては吸収されない、または極僅かにしか吸収されない。
【0003】
したがって蛍光体スペクトルには、付加的な青色の水銀可視(Vis)スペクトルが重畳されている。これにより、UV(紫外線)領域(254nmよりも短い波長)において励起される蛍光体によって張られる色三角の全ての色度座標を達成できなくなる。それどころか達成可能な色三角が縮小されており、また頂点は水銀可視色度座標の方向にシフトされている。シフトの度合は、蛍光体放射に対する水銀可視放射の相対的な放射割合に依存し、水銀放射の割合はランプの放電容器内の放電電流が増加するにつれ、また電流密度が上昇するにつれ減少する。したがって、ランプの高負荷時には水銀可視放射の割合が高いことによって、IEC許容範囲内の2700Kの色温度は緑色を発する蛍光体と赤色を発する蛍光体の混合物だけではもはや達成することができない。さらには、ジャッドの直線の領域における2500Kよりも低い色温度は今日の蛍光体では達成することができない。
【0004】
従来のランプにおいては、青色の水銀放射を吸収するためにランプバルブの外面に、染料または顔料が備えられたフィルタバッグが使用されている。さらには放電容器内に複数のフィルタ層を設けることができ、これらのフィルタ層はランプバルブの内側面と蛍光体層との間に取り付けられている。さらにはカラー放電容器、例えば着色された放電容器を設けることができる。
【0005】
また吸収、放射変換および放射の一部の長波長のスペクトル領域における発光のために、放電容器外、例えばバッグ材料におけるコーティングの成分として、または放電容器内での放電容器と蛍光体コーティング部との間のコーティングの成分として、例えば黄色のスペクトル領域で発光する蛍光体L175,Y3Al512:Ce,Tbを使用することができる。しかしながら蛍光体層におけるこの蛍光体の使用は、紫外線領域での励起可能性が低いために余り有利ではない。
【0006】
発明の開示
本発明の課題は、比較的低い色温度、理想的にはジャッドの直線の領域にある色温度とより高い光効率を同時に達成することができる、放電ランプ用の蛍光体混合物ならびに放電ランプを提供することである。
【0007】
この課題は、請求項1に記載されている特徴を有する蛍光体混合物および請求項21に記載されている特徴を有する放電ランプによって解決される。
【0008】
本発明による放電ランプ用の蛍光体混合物は第1の蛍光体化合物および少なくとも1つの第2の蛍光体化合物を有する。蛍光体化合物とは殊に、蛍光体粒子を形成する原子の化合物と解される。
【0009】
蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物は緑色から黄色のスペクトル領域にある発光スペクトルを有し、水銀源から放射されるUV(紫外線)放射を吸収し、また水銀源から放射される青色スペクトル領域にある放射を吸収するために構成されている。蛍光体混合物のこの構成によって、青色の水銀放射の吸収に基づきより低い色温度を達成することができる。さらには、水銀放射の吸収、またこの水銀放射の長波長の発光に基づきより高い光効率を保証することができる。
【0010】
蛍光体混合物の特性、殊に第1の蛍光体化合物の特性によって、紫外線放射も青色のスペクトル領域にある水銀源の放射も吸収し変換することができるので、従来技術に比べて低い色温度、理想的にはジャッドの直線の領域にある色温度を実現することができる。
【0011】
有利には、蛍光体混合物全体の発光スペクトルの支配的な波長は540nm、殊に600nmよりも長い。
【0012】
ランプパターンの支配的な波長(lambda_dom)の測定に際し、小型蛍光ランプ(CFL)に関するデータ(測定点)と懐中電灯(FL)に関するデータ(測定点)とが非常に良好に一致していることが分かった。
【0013】
蛍光体混合物によって形成されるランプ発光スペクトルは以下の範囲の支配的な波長を達成する:
有利には、蛍光体混合物全体のランプ発光スペクトルの支配的な波長は540nmである。殊に、波長は2750Kよりも低い色温度に関しては575nmよりも長く、2000Kよりも低い色温度に関しては585nmよりも長く、1750Kよりも低い色温度に関しては590nmよりも長く、1250Kよりも低い色温度に関しては600nmよりも長い。
【0014】
支配的な波長はCIE1931xy色度図において規定される。支配的な波長はスペクトル軌跡(色度図の縁部曲線)の波長に相当し、このスペクトル軌跡においては直線がx=0.313およびy=0.337において、またスペクトル軌跡を有する蛍光体混合物の測定された色度座標において白点を通過する。
【0015】
殊に有利には、第1の蛍光体化合物と第2の蛍光体化合物の調整可能な質量比に依存して、放出される放射の色温度を調整できるように蛍光体混合物は構成されている。有利には、第1の蛍光体化合物の質量割合は50%以下である。殊に、2500Kよりも低い色温度を調整できるように蛍光体化合物は構成されている。このことを殊に、少なくとも2つの蛍光体化合物の質量比を調整することによって実現することができる。したがって蛍光体混合物のこの構成によって、より高い光効率にもかかわらず比較的低い色温度を実現することができる。
【0016】
有利には、第1の蛍光体化合物は440nmよりも短い波長を有する放射を強く吸収する。強く吸収するとは、45°/0°幾何学で測定された、圧縮成形された粉末タブレットの反射がAl23標準に相対的に60%よりも低いことを意味する。
【0017】
有利には、第1の蛍光体化合物は254nmよりも短い波長の放射を非常に強く吸収する。非常に強く吸収するとは、45°/0°幾何学で測定された、圧縮成形された粉末タブレットの反射がAl23標準に相対的に40%よりも低いことを意味する。
【0018】
殊に蛍光体混合物は、第1の蛍光体化合物が530nmよりも長い波長を有する放射を弱く吸収するようにも構成されている。したがって弱く吸収するとは、45°/0°幾何学で測定された、圧縮成形された粉末タブレットの反射がAl23標準に相対的に900%よりも高いことを意味する。
【0019】
第1の蛍光体化合物の発光スペクトルは有利には、支配的な波長が530nm〜570nmの波長を有するように構成されている。
【0020】
殊に、第1の蛍光体化合物の発光帯域の半値幅は100nmよりも短い。
【0021】
有利には、蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物はオルトケイ酸塩を有する。殊にオルトケイ酸塩は一般式(Ba,Sr,Ca)2SiO4から形成される。蛍光体化合物のこの種の成分は殊に有利には、非常に強い吸収、強い吸収および弱い吸収に関する前述の判定基準を実現することができる。
【0022】
蛍光体混合物の別の有利な実施形態では、第1の蛍光体化合物が成分として窒化物または酸窒化物のクラス、殊に(Sr1-x-yBaxCay)Si222:Eu(以下ではSrSiONと略記する)からなる蛍光体を有する。第1の蛍光体化合物のこの特別な組成構成によっても、相応の波長領域における上述の非常に強い吸収、強い吸収および弱い吸収に関する判定基準を殊に有利に達成することができる。
【0023】
有利には、蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物はEu(ユーロピウム)によってドープされている。Euでのドープの重量割合は有利には0.1%〜15%である。殊にこのドープ割合は0.2%〜2%である。1%〜2%のEuでのドープ割合が殊に有利であることが分かった。このことは、第1の蛍光体化合物がSrSiON:Euとして構成されている場合には殊に有利である。
【0024】
有利には、第2の蛍光体化合物が赤色スペクトル領域にある発光スペクトルを有する。第2の蛍光体化合物も有利にはEuでドープすることができる。殊に、蛍光体混合物全体がEuでドープされており、したがって蛍光体混合物の全ての蛍光体化合物がEuでドープされている。
【0025】
第2の蛍光体化合物は有利には成分としてY23、殊にY23:Euを有する。
【0026】
したがって殊に有利には、蛍光体化合物であるオルトケイ酸塩:EuまたはSrSiON:Euによって、紫外線水銀放射および青色の水銀可視放射も吸収することができ、前述の特別な蛍光体化合物は緑色から黄色までのスペクトル領域にある発光スペクトルを有する。さらにこの前述の蛍光体化合物は、紫外線スペクトル領域および青色スペクトル領域における高い励起性と効率の点で傑出している。さらには、前述の水銀放射成分はこの特別な蛍光体化合物によって、主要な部分のみが可視光に変換されるだけでなく、大部分も可視光に変換することができ、この場合の蛍光体の支配的な波長は540nmである。
【0027】
殊に、上述の有利な第1の蛍光体化合物と赤色スペクトル領域において放射する第2の蛍光体化合物、殊にY23:Euとの組み合わせによって、殊に有利には高効率で2500Kよりも低い色温度を達成することができる。
【0028】
本発明による蛍光体混合物および/または有利な実施形態のうちの少なくとも1つは専らそれぞれの前述の組成から構成されており、したがって別の化学的な組成を有していない。しかしながら、これは成分を排他的に表しているものではなく、本発明による蛍光体混合物および/またはそれらの有利な実施形態はさらに別の化学的な組成、殊に別の蛍光体を含むことができる。
【0029】
蛍光体混合物および蛍光体化合物に関して記した全ての化学式は理想的な式であるが、この理想的な式を超える化学量論的に(僅かに)偏差する全ての化合物も明示的に本発明に含まれることを言及しておく。このことは殊に、結晶構造が等しいままであり、発光スペクトルおよび吸収スペクトルにおける偏差がピーク位置では1%を下回り、ピーク幅では5%を下回る程度で異なる偏差に関して当てはまる。
【0030】
幾つかの別の蛍光体に関する理想的な式としては以下のものが挙げられる:
(Ce,Tb)MgAl1119で表すCAT;(La,Ce,Tb)PO4で表すLAP;(Ba,Eu)MgAl1017で表すBAM;(Ba,Eu)(Mg,Mn)Al1017で表すBAMMn;(Gd,Ce,Tb)(Mg,Zn,Mn)B510で表すCBT;(Sr,Ba,Ca,Mg,Eu)5(PO43(F,Cl)で表すSCAP;(Sr,Ba,Ca,Mg,Eu,Mn)5(PO43(F,Cl)で表すSCAPMn;(Zn,Mg,Mn)2SiO4で表すケイ酸亜鉛;Y23:Euで表すYOE。
【0031】
本発明の別の態様は、蛍光体層が構成されている放電容器を有する放電ランプに関する。少なくとも1つの蛍光体層が放電容器に形成されており、この蛍光体層は本発明による蛍光体混合物またはそれらの有利な構成を有する。
【0032】
有利には、第1の蛍光体層は放電容器の内側面に直接的に形成されている。第1の蛍光体層と放電容器の内側面との間に少なくとも1つの水銀拡散保護層を形成することもできる。例えば、放電容器の内側面と、第1の蛍光体化合物としてSrSiON:Euを有する第1の蛍光体層との間にこの種の保護層を形成することができる。この特別な保護層は、回避すべき放電容器のガラスへの水銀拡散に対する機能を担うことができる。
【0033】
有利には、放電容器の内側面とは反対側にある第1の蛍光体層の表面には、第1の蛍光体化合物をVUV放射および/または水銀イオンとの反応から保護するための保護層が形成されている。VUV放射および/または蛍光体化合物の水銀イオンとの反応から保護するための保護層は、例えば成分としてAl23および/またはY23を有することができる。放射障害保護層を蛍光体層の個々の蛍光体化合物に直接的に被着させることができる。もしくは、放射障害保護層は蛍光体化合物を包囲することができる。VUV放射は200nmよりも短い波長を有する放射を表す。
【0034】
放電容器の内側面とは反対側における第1の蛍光体層の表面上には、Tb(テルビウム)を有する第2の蛍光体層を形成することもできる。第1の蛍光体層はTbを含有しないように形成されており、第2の蛍光体層はTbを含有するように形成されているので、これら2つの蛍光体層はそれ自体で既にこの差異に基づき、前述の素子において種々の層として設計されている。
【0035】
有利にはこの第2の蛍光体層がCATとYOEの蛍光体混合物を有する。CATは実質的にCeMgAl1119:Tbによって表される化学的化合物であり、YOEは実質的にY23:Euによって表される化学的化合物である。CATの他に代替的な緑色蛍光体としてLAPおよび/またはCBTおよび/またはケイ酸亜鉛を使用することができる。
【0036】
有利には、第1の蛍光体層の第1の蛍光体化合物が保護層によって包囲されている。保護層の材料成分は有利には第1の蛍光体化合物とは異なる。
【0037】
第1の蛍光体化合物を包囲する保護層が金属酸化物を有していてもよい。これらの金属酸化物は例えばAl23,Y23であるが、SiO2でもよい。同様に、第1の蛍光体化合物を包囲する保護層がホウ酸塩および/またはリン酸塩を有していてもよい。第1の蛍光体化合物を包囲する保護層が3元の材料、例えばアルミニウムホウ酸塩およびアルミニウムリン酸塩を有していてもよい。一般的に金属酸化物または水中で正の表面電荷を有する材料を使用することができる。何故ならば、それらは傾向として水銀の吸着を低減するからである。したがってAl23およびY23が殊に良好に適している。他方では、第1の蛍光体化合物に対する保護層をSiO2から製造することもでき、これらの化合物を殊に密で、薄く且つ廉価に保護層として製造することができ、またこれらの化合物は放射安定性および水安定性に寄与するので、表面電荷が少なく、また傾向として水銀の吸着が高いにもかかわらず使用することができる。
【0038】
この保護層がフッ化物を有していてもよい。
【0039】
蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物ないし蛍光体粒子のこのコーティングによって、励起される放射に対する安定性に関して、水銀に対する低い親和性、したがってランプ駆動中の水銀の僅かな吸収に関して、また水中での安定性に関して、水を基礎とする懸濁液が使用される今日の一般的な環境に優しいコーティング法を使用できるようにするために、蛍光体ランプおよび小型蛍光体ランプを使用することは好適に作用する。蛍光体粒子ないし第1の蛍光体化合物を包囲するこの保護層は可能な限り密で薄い層として形成されており、その組成において蛍光体粒子の内部における組成もしくは中心の組成とは区別される。表面の組成は例えば、XPSまたはSNMSのような表面感応式方式によって決定することができる。蛍光体化合物の中央の組成を例えば、EDX,RFAのような体積感応式方式でもって求めることができるが、しかしながら化学的な分析によっても求めることができる。
【0040】
有利には、保護層によって覆われているその種の第1の蛍光体化合物が放電ランプの蛍光体層内に使用される。
【0041】
放電ランプは有利には水銀低圧放電ランプとして形成されている。
【0042】
本発明による蛍光体混合物またはその有利な構成によって、一般的に80の領域の色再現を達成することができる。光効率は2700Kの領域にある著しく高い色温度における今日の光源と同等である。同一の光効率に関して、本発明による蛍光体混合物により、2500Kよりも低い色温度を達成することができる。この解決手段によりエネルギ効率クラスAも達成することができる。
【0043】
以下では、概略的な図面に基づき本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による放電ランプの実施例の断面図を示す。
【図2】蛍光体混合物の総質量に関して特別な混合比を有する本発明による蛍光体混合物の実施例と比較した、従来技術による蛍光体混合物を有する放電ランプの発光スペクトルを示す。
【図3】第1の蛍光体化合物と第2の蛍光体化合物の質量比が異なる本発明による蛍光体混合物の発光スペクトルを示す。
【図4】一方では従来技術による蛍光体混合物を有する放電ランプの光電値、他方では本発明の蛍光体混合物の実施例による蛍光体混合物を有する放電ランプの光電値を示す。
【図5】種々の蛍光体混合物の色度ないし標準色値割合が表されているグラフを示す。
【図6】プランクの特性曲線を有するCIEカラーチャートならびにISO温度線および本発明による蛍光体混合物の特別な実施形態の色度座標を示す。
【図7】期待される効率と色再現との関係を表すグラフを示す。
【図8】254nmの波長において励起された後の本発明による蛍光体混合物の特別な実施形態の発光スペクトルを示す。
【図9】本発明による蛍光体混合物の図8において基礎とした実施例の反射率曲線を表すグラフを示す。
【0045】
発明の有利な実施形態
図1には、水銀低圧放電ランプとして設計されている放電ランプ1が概略的な断面図で示されている。放電ランプ1は棒状に構成されており、またガラスバルブである管状の放電容器2を有する。放電容器2の一方の端部にはソケット3が取り付けられており、このソケット3は外側に向かって延びる電気的な接触接続部4および5を有する。放電容器2の反対側にも同様にソケット6が配置されており、このソケット6には外側に向かって延びる電気的な接触接続部7および8が固定されている。これらの電気的な接触接続部7および8は電流供給部を介して、放電容器2の放電空間13内に延在する電極10と電気的に接続されている。相応に、電気的な接触接続部4および5は電流供給部と接続されており、この電流供給部は別の電極9と接続されている。この別の電極9も放電容器2の放電空間13内に延在している。
【0046】
放電容器2の内側面11には蛍光体層12が形成されている。この実施例において、蛍光体層12は放電容器2の全長にわたり延在している。蛍光体層12はこの実施例において内側面11に直接的に形成されている。図示されている実施例においては蛍光体層12のみが示されているが、放電空間13と面している表面14、したがって放電容器2の内側面11とは反対側に位置する表面14に別の層を形成することも可能である。この別の層として、例えば蛍光体層12の蛍光体化合物ないし蛍光体粒子のための保護が考えられる。
【0047】
同様にこの表面14に別の蛍光体層を形成することも可能である。また、蛍光体層12と内側面11との間に別の層を配置および形成することも可能である。
【0048】
蛍光体化合物は有利には金属酸化物、ホウ酸塩、リン酸塩または三元材料から成る保護層によって包囲されている。
【0049】
蛍光体層12は複数の第1の蛍光体化合物ないし蛍光体粒子と複数の第2の蛍光体化合物ないし蛍光体粒子とを有する蛍光体混合物を含む。第1の蛍光体化合物は緑色から黄色のスペクトル領域にある発光スペクトルを有し、さらには水銀源から放出される紫外線放射と、水銀源から放出される青色スペクトル領域にある放射とを吸収するよう形成されている。さらに第1の蛍光体化合物は、吸収した紫外線放射および青色スペクトル領域にある放射をこの第1の蛍光体化合物の発光スペクトルに変換するために構成されている。水銀源とは例えば、放電空間13内に存在する水銀原子または水銀イオンと解される。電極9ないし10からの電子の発光によって放電空間13内の水銀源が励起され、紫外線放射ならびに青色スペクトル領域にある放射を放出する。
【0050】
この実施例において、第1の蛍光体化合物は有利にはSrSiON:Euであり、これによって水銀放射の一部の吸収およびこの放射の可視放射への変換を殊に効果的に行うことができる。蛍光体混合物の支配的な波長は450nmを上回る。
【0051】
有利には、蛍光体層12内の蛍光体混合物は第2の蛍光体化合物を有し、この第2の蛍光体化合物は赤色のスペクトル領域にある発光スペクトルを有する。殊に、第2の蛍光体化合物としてY23:Euが設けられており、これらの蛍光体化合物の組み合わせによって2500Kを下回る色温度を高効率で達成することができる。
【0052】
さらには、蛍光体混合物の2つの蛍光体化合物の質量比を変えることによって種々の色温度を調整することができる。成分SrSiONの質量割合は蛍光体混合物の総質量100に関して常に50%以下である。
【0053】
第1の蛍光体化合物の別の有利な実施形態は、オルトケイ酸塩:Eu、殊に(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Euによって形成されている。蛍光体混合物の蛍光体粒子ないし蛍光体化合物を保護層によって覆うことができ、このために可能な限り密で薄い保護層が形成されている。保護層のこの種の被着によって、励起される放射に対する安定性を改善することができる。さらには水中での安定性も改善することができ、またランプの駆動中の水銀に対するより低い親和性、したがって水銀のより僅かな吸収を達成することができる。
【0054】
殊に蛍光体混合物に関する放電ランプ1のこの種の構成によって、2500Kよりも低い色温度をジャッドの直線の領域においても実現することができる。80の領域における一般的な色再現も達成することができ、光効率は2700Kにおいて今日の光源と同等である。エネルギ効率クラスAは図1に示した放電ランプ1により達成されている。
【0055】
蛍光体層12を放電容器2の内側面11に直接的に配置することができ、殊に蛍光体混合物として、第2の蛍光体化合物としてのY23:Euおよび第1の蛍光体化合物としてのSrSiON:Euを有する。
【0056】
有利には第1の蛍光体化合物は、水銀低圧放電ランプの主強度が放出される254nmの波長における吸収が非常に強く、440nmよりも短い波長における吸収が強く、530nmよりも長い波長領域における吸収が弱いように構成されている。さらに蛍光体化合物は、500nm〜565nmの優勢な波長を有する緑色の発光が得られるように構成されている。
【0057】
図2には、パーセンテージで表した発光強度と波長λとの関係のグラフが示されている。図2に示されている発光スペクトルは図1による放射ランプに由来する。ここでは破線が、従来技術により形成されており、したがって蛍光体化合物としてY23:E(L581H)およびCATを含む蛍光体層を有する放電ランプ1の発光スペクトルを表す。
【0058】
さらに図2には実線によって、蛍光体層12が本発明による蛍光体混合物を有する、図1による本発明の放電ランプ1の発光スペクトルが示されている。図2による発光スペクトルにおいて、この蛍光体混合物は第2の蛍光体化合物としてのY23:Eu(L581H)および第1の蛍光体化合物としてのSrSiON:Euから構成されている。本発明による蛍光体混合物の前述の特別な実施例における2つの蛍光体化合物の混合比は、蛍光体混合物全体の割合のそれぞれ50%(50/50)である。この実施例において第1の蛍光体化合物はEuでドープされており、Euの質量割合ないし重量割合は1%である。50/50の質量割合は100の全体の割合に関する。
【0059】
図3には、パーセンテージで表した発光強度Iと波長λとの関係のグラフが示されている。図3によるグラフには、蛍光体混合物の2つの蛍光体化合物の質量比が異なる、本発明による蛍光体混合物の種々の実施例の放射スペクトルが示されている。グラフから見て取れるように、蛍光体混合物の放射スペクトルが示されており、第2の蛍光体化合物Y23:Eu(L581H)と第1の蛍光体化合物SrSiON:Euとの質量割合は50%対50%(50/50)、75%対25%(75/25)ならびに90%対10%(90/10)である。本発明による蛍光体混合物の上記の3つの異なる実施形態の発光スペクトルは上述の順番で太い実線、破線および細い実線で示されている。
【0060】
図4による表には、T8L36W懐中電灯として形成されている図1による放電ランプ1に関する光電値が示されている。これに関して最初の3つの行には、蛍光体層12がそれぞれ本発明による蛍光体混合物の種々の実施形態を含む場合のこれらの放電ランプ1に関する光電値が示されている。これに対し図4による表の4番目の最後の行には、前述のこの放電ランプ1が蛍光体層内に従来技術から公知の蛍光体を有するように形成されている場合の光電値のデータが記載されている。
【0061】
図5には、一方では本発明による蛍光体混合物および他方では従来技術から公知の蛍光体混合物の種々の実施形態による種々の蛍光体混合物の色度xyないし標準色度座標が示されている。このグラフには、2成分混合物でもって、重ね合わせによって期待される色度座標が(実線で)示されている。蛍光体混合物の成分SrSiONを有する第1の蛍光体化合物による450nmよりも短い波長を有する水銀放射の吸収および放射変換はこのグラフにおいて考慮されていない。種々の蛍光体混合物を用いて実験によりT8L36W懐中電灯において求められた色度座標がこのグラフに示されている。青色の水銀可視放射の吸収によって達成される、より高いx値への色度座標シフトがはっきりと見て取れる。これによって一層低い色温度が達成される。
【0062】
図6には、プランクの特性曲線を有するCIE1931xyカラーチャートならびにISO温度線が示されている。図5によるグラフのSrSiON蛍光体混合物およびYOE蛍光体混合物の色度座標が示されている。2500Kよりも低い色温度をジャッドの直線の領域において達成することができる。従来技術は菱形で2514Kの色温度に示されている。
【0063】
図7には、期待される効率と種々の蛍光体混合物の色温度との関係のグラフが示されている。このグラフには、2成分混合物でもって、重ね合わせによって期待される効率と一般的な色再現が(実線で)示されている。300nmの波長から450nmよりm短い波長までの水銀放射の第1の蛍光体化合物の成分SrSiONによる放射変換はここでは考慮していない。
【0064】
T8L36W懐中電灯において実験により検出された、従来技術による蛍光体混合物(CAT/L581H)および本発明による蛍光体混合物(SrSiON/L581H)の実施例の効率および色再現がプロットされている。従来技術から公知の蛍光体混合物(CAT/L581H)に関しては効率と色再現は一致することが分かった。このことは約87の効率のグラフおよび約2600Kの色温度のグラフにおける黒い点によって示されている。SrSiONに関しては、色温度が低下するにつれ、300nm〜450nmの波長領域における水銀放射の放射変換が成功することによって達成できる効率は高まることが分かった。色再現は一般的な照明用途に関連する80の領域にあり、また計算によって正確に再現される。したがって従来技術に比べて、より低い色温度の領域におけるより高い効率の利点が得られる。
【0065】
図8には、254nmの波長を有する水銀放射の励起後の、パーセンテージで表した相対的なエネルギと、本発明による蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物SrSiON:Euの波長λとの関係(1%)が示されている。蛍光体混合物は第1の蛍光体化合物と第2の蛍光体化合物とで50%対50%である。
【0066】
図9には、SrSiON:Eu(1%)として形成されている第1の蛍光体化合物の発光曲線と波長との関係のグラフが示されている。ここでもまた、蛍光体混合物の第1の蛍光体化合物と第2の蛍光体化合物との質量比は50%対50%である。
【0067】
図1による放電ランプ1の簡略化された図においては、蛍光体層12が放電容器12の内側面11に直接的に被着されている。別の蛍光体層または付加的な他の層、例えば保護層などは図示していない。
【0068】
しかしながら、放電容器2は少なくとも1つの付加的な別のコーティング部を有することもできる。放電容器2の内側面11と第1の蛍光体層12との間に少なくとも1つの付加的なコーティング部を形成することができる。有利には、それらの間にあるこの層が放電容器2のガラスへの水銀の拡散に対する保護層として形成されている。
【0069】
付加的または代替的に、少なくとも2つの第1の蛍光体層12を放電容器2に形成することができる。
【0070】
図1に示した構成から出発して、別の層を第1の蛍光体層12の表面14に形成することもできる。放電空間13に対向するこの別の層も同様に保護層でよく、この保護層は第1の蛍光体層12の蛍光体化合物をVUVスペクトル領域における放射障害または水銀イオンとの反応から保護する。相応のコーティング部を第1の蛍光体層12の蛍光体混合物の個々の蛍光体化合物ないし蛍光体粒子に直接的に設けることもできる。例えば、この種の放射障害保護層および/または反応阻止保護層をAl23保護層またはY23保護層として形成することができる。
【0071】
付加的または代替的に、放電容器2に本発明による蛍光体混合物を有する少なくとも1つの第1の蛍光体層12を形成することができ、放電空間13と第1の蛍光体層12との間には、成分としてTb(テルビウム)を有する付加的な第2の蛍光体層(図示せず)を設けることができる。殊に、Tbを含まない本発明による蛍光体混合物を有する第1の蛍光体層が形成されている。第2の蛍光体層は例えば、CATおよびYOEの蛍光体化合物からなる蛍光体混合物を有することができる。
【0072】
上記の全ての実施例を任意のやり方で相互に組み合わせることもできるので、個々の蛍光体層および保護層の種々の層構成および実施形態を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蛍光体化合物および第2の蛍光体化合物を有する、放電ランプ(1)用の蛍光体混合物において、
前記第1の蛍光体化合物は緑色および/または黄色のスペクトル領域にある発光スペクトルを有し、水銀源から放射される紫外線放射を吸収し、且つ前記水銀源から放射される青色スペクトル領域にある放射を吸収することを特徴とする、蛍光体混合物。
【請求項2】
前記第1の蛍光体化合物は、吸収した前記紫外線放射および前記青色スペクトル領域にある放射を該第1の蛍光体化合物の発光スペクトルに変換するために構成されている、請求項1記載の蛍光体混合物。
【請求項3】
蛍光体混合物全体の前記発光スペクトルの支配的な波長は540nm、殊に600nmよりも長い、請求項1または2記載の蛍光体混合物。
【請求項4】
前記第1の蛍光体化合物と前記第2の蛍光体化合物と間の調整可能な質量比に依存して、蛍光体混合物から放射される放射を調整する、請求項1から3までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項5】
前記第1の蛍光体化合物の質量割合は50%以下である、請求項4記載の蛍光体化合物。
【請求項6】
色温度は2500Kよりも低く調整可能である、請求項4または5記載の蛍光体混合物。
【請求項7】
前記第1の蛍光体化合物は440nmよりも短い波長を有する放射を強く吸収する、請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光体化合物。
【請求項8】
前記第1の蛍光体化合物は約254nmの波長を有する放射を非常に強く吸収する、請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光体化合物。
【請求項9】
前記第1の蛍光体化合物は530nmよりも長い波長を有する放射を弱く吸収する、請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光体化合物。
【請求項10】
前記第1の蛍光体化合物の発光スペクトルは530nmから570nmの支配的な波長を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光体化合物。
【請求項11】
前記第1の蛍光体化合物の発光帯域の半値幅は100nmよりも短い、請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項12】
前記第1の蛍光体化合物はオルトケイ酸塩を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項13】
前記オルトケイ酸塩は一般式(Ba,Sr,Ca)2SiO4から形成されている、請求項12記載の蛍光体混合物。
【請求項14】
前記第1の蛍光体化合物は組成としてSrSiONを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項15】
少なくとも前記第1の蛍光体化合物はEuでドープされている、請求項1から14までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項16】
前記Euによるドープの質量割合は0.1%から15%である、請求項15記載の蛍光体混合物。
【請求項17】
前記Euによるドープの質量割合は1%から2%である、請求項16記載の蛍光体混合物。
【請求項18】
前記第2の蛍光体化合物は赤色スペクトル領域にある発光スペクトルを有する、請求項1から17までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項19】
前記第2の蛍光体化合物はEuでドープされている、請求項1から18までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項20】
前記第2の蛍光体化合物は成分としてY23を有する、請求項1から19までのいずれか1項記載の蛍光体混合物。
【請求項21】
蛍光体層(12)が形成されている放電容器(2)を有する放電ランプにおいて、
請求項1から20までのいずれか1項記載の蛍光体混合物を有する、少なくとも1つの第1の蛍光体層(12)が形成されていることを特徴とする、放電ランプ。
【請求項22】
前記第1の蛍光体層(12)は前記放電容器(2)の内側面(11)に直接的に形成されている、請求項21記載の放電ランプ。
【請求項23】
前記第1の蛍光体層(12)と前記放電容器(2)の内側面(11)との間に少なくとも1つの水銀拡散保護層が形成されている、請求項21記載の放電ランプ。
【請求項24】
前記放電容器(2)の内側(11)面とは反対側にある前記第1の蛍光体層(12)の表面(14)には、第1の蛍光体化合物をVUV放射および/または水銀イオンとの反応から保護する保護層が形成されている、請求項21から23までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項25】
前記保護層は成分としてAl23および/またはY23を有する、請求項24記載の放電ランプ。
【請求項26】
前記放電容器(2)の内側面(11)とは反対側にある前記第1の蛍光体層(12)の表面(14)には、テルビウムを有する第2の蛍光体層が形成されている、請求項21から25までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項27】
前記第2の蛍光体層は蛍光体化合物としてCATとYOEの混合物を有する、請求項26記載の放電ランプ。
【請求項28】
前記第1の蛍光体層(12)の第1の蛍光体化合物は保護層によって包囲されている、請求項21から27までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項29】
前記保護層の材料成分は前記第1の蛍光体化合物とは異なる、請求項28記載の放電ランプ。
【請求項30】
前記第1の蛍光体化合物を包囲する前記保護層は金属酸化物を有する、請求項28または29記載の放電ランプ。
【請求項31】
前記第1の蛍光体化合物を包囲する前記保護層はホウ酸塩および/またはリン酸塩を有する、請求項28から30までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項32】
前記第1の蛍光体化合物を包囲する前記保護層はフッ化物を有する、請求項28から31までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項33】
前記第1の蛍光体化合物を包囲する前記保護層はSiO2を有する、請求項28から32までのいずれか1項記載の放電ランプ。
【請求項34】
水銀低圧放電ランプとして構成されている、請求項21から33までのいずれか1項記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−533943(P2010−533943A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516463(P2010−516463)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058913
【国際公開番号】WO2009/010433
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】