説明

放電ランプ装置

【課題】 パルスリークを抑制することにより、信頼性を高めた放電ランプ装置を提供する。
【解決手段】
本発明の放電ランプ装置は、ソケット5の前端側には発光管LBが保持され、後端側には発光管LBから導出されたアウターワイヤ2a4、サポートワイヤ2cが延出している放電ランプDLと、内部に金属端子813、823を有し、金属端子813、823にアウターワイヤ2a4、サポートワイヤ2cを接続するとともに、前端側にソケット5の後端側を接続する始動器IGとを具備し、ソケット5の後端側にはアウターワイヤ2a4を囲繞するように円筒部52が延出形成されており、アウターワイヤ2a4と金属端子813は円筒部52の内部で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプと始動器とがほぼ一体の形態で使用される自動車前照灯用の放電ランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハロゲンランプと比較してかなりの明るさが得られる高輝度放電ランプ(以下、放電ランプ)が自動車前照灯の光源として用いられるようになっている。この放電ランプは、放電が行われる発光管と、その発光管を保持するとともに、イグナイタと呼ばれる始動器等への接続を行うソケットとで構成される。ここで、日本では放電ランプが始動器に着脱可能な構成であるのが一般的であるが、欧米では、放電ランプと始動器とが一体化された放電ランプ装置として構成されるのが一般的である。
【0003】
放電ランプ装置の例としては、国際公開第2004/066686号パンフレット(特許文献1)がある。特許文献1に記載のように、放電ランプと始動器は溶着等の方法により接続される。なお、同文献には詳しい記載はないが、その機械的な接続と同時に、始動器内部において放電ランプと始動器の電気的接続が行われる。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/066686号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放電ランプ装置を点灯させていると、寿命中にランプが点灯しなくなることがあるがわかった。この課題について発明者が検討したところ、始動器内部において電気的に接続された放電ランプのリード線の接合部間で始動時に印加される高圧パルスがリーク(以下、パルスリーク)していることが原因であることが判明した。
【0006】
本発明の目的は、パルスリークを抑制することにより、信頼性を高めた放電ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の放電ランプ装置は、ソケットの前端側には発光管が保持され、後端側には前記発光管から導出された第1、第2のリード線が延出している放電ランプと、内部に第1、第2の端子を有し、前記第1、第2の端子に前記第1、第2のリード線を接続するとともに、前端側に前記ソケットの後端側を接続する始動器とを具備し、前記ソケットの後端側には内部に第1のリード線が挿通される円筒部が延出形成されており、前記第1のリード線と前記第1の端子は前記円筒部の内部で接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パルスリークを抑制することにより、信頼性を高めた放電ランプ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態の放電ランプ装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の放電ランプ装置を説明するための図である。
【0010】
本実施の形態の放電ランプ装置は、放電ランプDLと始動器IGとで構成されている。
【0011】
放電ランプDLの発光部を構成する発光管LBは2重管構造であり、内部には内管1が配置されている。内管1は、例えば石英ガラスからなり、細長い形状をしている。内管1の長手方向の略中央には長楕円形の放電部11が形成されている。この放電部11の両端部には、板状の封止部12a、12bが形成され、さらにその両端部には円筒状の非封止部13a、13bが形成されている。
【0012】
放電部11の内部には、中央部は略円筒状、その両端部はテーパ状の放電空間14が形成されている。この放電空間14の容積は、ショートアーク型の放電ランプでは100μl以下程度、特に自動車用としては、10μl〜40μlであるのが好適である。
【0013】
放電空間14には、金属ハロゲン化物および希ガスとからなる放電媒体が封入される。金属ハロゲン化物としては、ナトリウム、スカンジウム、亜鉛、インジウムのハロゲン化物が封入されている。金属に結合されるハロゲンとしては、ハロゲンの中で反応性が低いヨウ素を選択するのが最も好適であるが、ヨウ素のみに限られず、臭素、塩素、または複数のハロゲンを組み合わせて使用したりしてもよい。
【0014】
希ガスとしては、始動直後の発光効率が高く、主に始動用ガスとして作用するキセノンが封入されている。なお、キセノンの圧力は常温(25℃)において5atm以上、好適には10〜15atmであるのが望ましい。また、希ガスとしては、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを使用することができるほか、それらを組み合わせて使用してもよい。
【0015】
ここで、放電空間14には、本質的に水銀は含まれていない。この「本質的に水銀を含まない」とは、水銀を全く含まないか、または従来の水銀入りの放電ランプと比較してもほとんど封入されていないに等しい程度の量、例えば1mlあたり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀量が存在していても許容するものとする。
【0016】
封止部12a、12bには、マウント2a、2bが封着されている。マウント2a、2bは、金属箔2a1、2b1、電極2a2、2b2、コイル2a3、2b3、アウターリード2a4、2b4からなる。
【0017】
金属箔2a1、2b1はモリブデンからなり、その平面が封止部12a、12bの板状面と平行するように封止されている。
【0018】
電極2a2、2b2は、一端は金属箔2a1、2b1の放電部11側の端部に接続され、他端は放電空間14内で所定の電極間距離を保って、互いの先端同士が対向するように配置されている。ここで、上記「所定の電極間距離」については、ショートアーク形ランプでは5mm以下、自動車の前照灯に使用する場合はさらに4.2mm程度であるのが望ましい。なお、本実施の形態で使用している電極は、タングステンに微量の酸化トリウムがドープされた、いわゆるトリタン電極である。
【0019】
コイル2a3、2b3は、例えば、ドープタングステンからなり、金属箔2a1、2b1の端部から放電空間14方向に向けて電極2a2、2b2に螺旋状に巻装されている。
【0020】
アウターリード2a4、2b4はモリブデンからなる。アウターリード2a4は、一端は金属箔2a1の端部に接続され、他端は封止部12aの外部から後述するソケット5の方向に延出している。アウターリード2b4は、一端は金属箔2b1の端部に接続され、他端は封止部12bの外部に延出している。なお、アウターリード2b4の他端には、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ2cの一端が接続されており、そのサポートワイヤ2cの他端は、後述するソケット5の方向に延出している。そして、管軸と平行するサポートワイヤ2c部分には、セラミックからなる絶縁スリーブ3が被覆されている。
【0021】
上記で構成された内管1の外側には、透光性かつ紫外線遮断性を有する筒状の外管4が、内管1の大部分を覆うように設けられている。これらの接続は、非封止部13a、13bの外側端に外管4の両端部を溶着することによって行なわれている。なお、内管1と外管4により密閉された空間には、0.1atm程度の窒素が封入されている。
【0022】
上記で構成された発光管LBの非封止部13a側には、ソケット5が接続されている。これらの接続は、外管4の外周に装着された金属バンド61を、ソケット5の前端側に延出形成された4本の金属製の舌片62(図2では、そのうちの3本を図示)により挟持することによって行なわれている。なお、それらの金属の重なり部分をさらにレーザー溶接してもよい。
【0023】
ここで、ソケット5の構造について、図2を参照して詳しく説明する。図2(a)はソケットを後端側から見た図、(b)はA−A’断面を矢印方向から見た図、(c)はB−B’断面を矢印方向から見た図である。
【0024】
ソケット5は耐電圧性、耐熱性、成形性に優れた材料であるPPS樹脂からなり、本体部51、円筒部52、小円筒部53で構成されている。本体部51には、その内部に前端側が開口している空間54が形成されている。円筒部52は、本体部51の裏面の中央に後端側方向に突出するように形成されており、その内部には空間55が形成されている。空間55は中央付近は狭く、その前端側、後端側は比較的広く形成されているため、前端側には発光管LBの一端が、中央付近および後端側にはアウターリード2a4が挿通されることになる。小円筒部53は、本体部51の裏面の円筒部52付近に後端側方向に突出するように形成されており、その内部には空間56が形成されている。空間56は前端側が比較的広く、後端側が狭く形成されているため、前端側には絶縁スリーブ3の一端が、後端側にはサポートワイヤ2cが挿通されることになる。
【0025】
なお、円筒部52の後端側には、切り欠き部521が形成されている。この切り欠き部521は、円筒部52と小円筒部53の間を避けて形成されている。また、円筒部52の前端側には、空間54に突出するように、沿面距離を確保しパルスリークの発生を抑制する目的で円筒壁522が形成されている。さらに、(C)からわかるように、空間55が狭まった円筒部52部分の後端側には、スリット523が形成されている。これは当該部分に突起が形成された金型によってソケット5を射出形成することにより形成されたものである。この部分は樹脂の肉厚があり、射出形成の際に圧力がかかりにくいが、突起状の金型を使用することで当該部分に圧力がかかりやすくなる。すなわち、スリット523の形成により、当該部分付近の樹脂密度が増し、樹脂内部にボイド(空洞)が発生しにくくなり、耐電圧性の低下を防止できる。なお、スリット523を形成した部分は樹脂厚みが小さくなり実質耐電圧性が低い部位となってしまうため、スリット523はアウターリード2a4とサポートワイヤ2cの直線状に設けないのが望ましい。
【0026】
また、ソケット5の裏面の円周端には凸部57、凹部58、調整部59が形成されている。凸部57はリング状に形成されており、凸部57その中央には、さらに突起部571が形成されている。凸部57は幅が1.0mm、高さが本体部51の裏面を基準として、0.70mm、突起部571は幅が0.2mm、高さが0.15mmである。凹部58は、凸部57に沿ってその両サイドに形成されており、幅が0.75mm、深さは本体部51の裏面を基準として、0.50mmである。調整部59は、45度ずつ位置をずらして合計8つ形成されており、高さはそれぞれ0.5mmである。
【0027】
次に始動器IGの構成について説明する。図3は、始動器を構成する各部品を組み込む前の状態について説明するための図である。図からわかるように、始動器IGは、前面容器71、背面容器72、回路アセンブリ81、82、前面シールドケース91、背面シールドケース92で構成されている。
【0028】
図4は前面容器の構造を説明するための図であり、(a)は前端側から見た図、(b)はC−C’の断面を矢印方向から見た図である。前面容器71はPPS樹脂からなり、図3に示したようにその外表面は2段形状となっており、低段差部分には嵌合突起711が形成されている。前面容器71の前端側には、載置面712が形成されている。載置面712の中央には円筒部52および小円筒部53が挿通可能な大きさの貫通穴713が形成されている。また、載置面712の側端にはリング状の凸部714、突起部7141、凹部715が形成されている。凸部714、突起部7141、凹部715は、ソケット5を載置面712に配置したときにその後端側に形成されている凸部57、突起部571、凹部58と一致する位置に、かつそれらとそれぞれ同じ大きさに形成されている。前面容器71の内部には、回路アセンブリ81、82の間に位置する仕切り壁716が形成されている。
【0029】
図5は背面容器の構造を説明するための図であり、(a)は前端側から見た図、(b)はD−D’の断面を矢印方向から見た図である。背面容器72はPPS樹脂からなり、その中央には楕円状の包囲壁721が底部から前端側に突出形成されている。背面容器72の側部には、切り欠き部722が形成されている。
【0030】
回路アセンブリ81、82については、前面容器に放電ランプおよび回路アセンブリを組み込こんだ状態を後端側から見た図である図6を参照して説明する。
【0031】
回路アセンブリ81は、主としてトランス811からなり、その一端には接続端子812が形成されている。また、他方には金属端子813を内蔵保持したPPS樹脂製の保持部814が形成されている。
【0032】
回路アセンブリ82は、基板821上に抵抗、ギャップ、コンデンサおよびノイズ除去用のコイルからなる回路素子を構成してなり、一端には回路アセンブリ81の金属端子813と接続するための接続端子822が形成されている。また、基板821の中央付近には金属端子823が形成されている。
【0033】
シールドケース91、92は、点灯時に発生したノイズを除去するためのケースであり、載置面712を除いた前面容器71、背面容器72の全体を囲繞する形状をしている。このシールドケース91、92は、例えばアルミニウムからなる。
【0034】
上記のように構成された放電ランプDLおよび始動器IGは、ソケット5の後端側と前面容器71の前端側とを接続することにより一体化される。その接続には熱板溶着法を用いている。熱板溶着法とは、金属製の熱板を電磁誘導装置により熱し、対象物を加熱溶着する方法であり、ソケット5の凸部57、突起部571と前面容器71の凸部714、突起部7141を熱板で溶融したのち、張り合わせることでそれらを溶着する。
【0035】
次に放電ランプDLと始動器IGを一体化した状態について、図6および図7を用いて説明する。図7は、図6の一点鎖線E付近について説明するための斜視図である。
【0036】
図6からわかるように、放電ランプDLと始動器IGの接続状態では、ソケット5の切り欠き部521に回路アセンブリ81の保持部814が嵌合している。また、放電ランプDLのアウターリード2a4とサポートワイヤ2cは、始動器IGの金属端子813、823にそれぞれ接続されている。ここで、アウターリード2a4と金属端子813との接続は、図7からわかるように、円筒部52の内部で行われている。したがって、それらの接続部分の間に円筒部52が介在する構成となり、その接続部分間において絶縁性が向上している。つまり、放電ランプDLのアウターリード2a4、サポートワイヤ2c間には、始動器IGの金属端子813、823から始動時に高圧パルスが印加されるが、そのパルスが接続部分間で短絡することによるランプの不灯の発生を抑制することができる。また、切り欠き部521に保持部814を嵌合させるため、放電ランプDLの位置合わせが正確になり、放電ランプDLと始動器IGの接続を強固かつ確実に行うことができる。
【0037】
なお、図8に示しているように前面容器71と背面容器72を合わせると、アウターリード2a4と金属端子813、サポートワイヤ2cと金属端子823間に背面容器72の包囲壁721が介在する構造にすることが可能である。しかし、これのみでは寿命中に同じように不灯に至ることがある。これは繰り返し印加される高圧パルスにより包囲壁721の樹脂が劣化し、当該部分を透過してしまうことによるものであると考えられ、特に電極間の放電開始電圧が従来よりも高くなった水銀フリーランプにおいてはこの問題が生じやすい。すなわち、接続部分間が短いため絶縁を確保しにくい本実施の形態のような放電ランプ装置では、始動器IG側のみならず、放電ランプDL側においても絶縁対策を施すことによって、長時間パルスリークを抑制するのが効果的である。
【0038】
したがって、本実施の形態では、ソケット5の後端側にアウターワイヤ2a4を囲繞するように延出形成された円筒部52の内部で、アウターワイヤ2a4と金属端子813とを接続することにより、他方の接続部分であるサポートワイヤ2cと金属端子823との間で円筒部52が介在することになり、絶縁性が増すため、長期間にわたりパルスリークを抑制でき、信頼性の高い放電ランプ装置を提供することができる。
【0039】
また、円筒部52に形成された切り欠き部521にアウターワイヤ2a4を保持する保持部814が嵌合されていることにより、円筒部52に切り欠き部の内部でアウターワイヤ2a4と金属端子813とを接続しているため、始動器IGに対する放電ランプDLの位置合わせを正確に行うことができる。
【0040】
なお、本発明の実施の形態は上記に限られるわけではなく、例えば次のように変更してもよい。
【0041】
本実施の形態においては、アウターリード2a4を第1のリード線、サポートワイヤ2cを第2のリード線として構成したが、アウターリード2b4を2度直角に曲げ、ソケット5の後端側に延出させることでアウターリード2b4を第2のリード線として構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施の形態の放電ランプ装置を説明するための図。
【図2】ソケットについて説明するための図。
【図3】始動器を構成する各部品を組み込む前の状態について説明するための図。
【図4】前面容器について説明するための図。
【図5】背面容器について説明するための図。
【図6】前面容器に放電ランプおよび回路アセンブリを組み込こんだ状態を後端側から見た図。
【図7】図6の一点鎖線E付近について説明するための斜視図。
【図8】放電ランプ装置の断面について説明するための図。
【符号の説明】
【0043】
DL 放電ランプ
LB 発光管
IG 始動器
1 内管
11 放電部
2a、2b マウント
2a1、2b1 金属箔
2a2、2b2 電極
2a4、2b4 アウターワイヤ
2c サポートワイヤ
3 絶縁スリーブ
4 外管
5 ソケット
51 本体部
52 円筒部
53 小円筒部
61 金属バンド
62 舌片
71 前面容器
712 載置面
713 貫通穴
716 仕切り壁
72 背面容器
721 包囲壁
81、82 回路アセンブリ
813、823 金属端子
814 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケットの前端側には発光管が保持され、後端側には前記発光管から導出された第1、第2のリード線が延出している放電ランプと、
内部に第1、第2の端子を有し、前記第1、第2の端子に前記第1、第2のリード線を接続するとともに、前端側に前記ソケットの後端側を接続する始動器とを具備し、
前記ソケットの後端側には第1のリード線を囲繞するように円筒部が延出形成されており、前記第1のリード線と前記第1の端子は前記円筒部の内部で接続されていることを特徴とする放電ランプ装置。
【請求項2】
前記円筒部には切り欠き部が形成され、前記切り欠き部には前記第1の端子を保持する保持部が嵌合されていることにより、前記第1のリード線と前記第1の端子は前記円筒部の内部で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−159509(P2008−159509A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349126(P2006−349126)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】