説明

放電ランプ装置

【課題】 放電ランプの異常点灯を確実に検出することができて放電ランプの異常点灯による事故を未然に防止することのできる放電ランプ装置を提供すること。
【解決手段】 この放電ランプ装置は、一定の微小時間間隔毎に設定された測定対象時に測定される放電ランプのランプ電力測定値およびランプ電圧測定値を順次の測定対象時毎に記録しておき、放電ランプの点灯状態が変更されたとき、直前のランプ点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値および参照ランプ電圧測定値として、ランプ点灯状態変更後の最新の測定対象時におけるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、前記最新の測定対象時におけるランプ電圧測定値の、前記参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより異常点灯検出信号を発する機能を有するランプ点灯状態監視機構を具えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電ランプ装置に関し、特に、例えば、液晶基板や半導体ウエハの露光装置、あるいは、デジタルシネマ用プロジェクター装置に用いられる、ショートアーク型放電ランプを具えた放電ランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ショートアーク型高圧放電ランプ(以下、単に「放電ランプ」という。)は、電極間距離が短くて高輝度が得られるという利点を有することから、例えばリソグラフィーの露光装置の光源として広く用いられてきたが、近年においては、半導体ウエハのみならず、液晶基板、特に、大面積の液晶ディスプレイに用いられる液晶基板の露光用光源として注目されており、製造工程におけるスループットを高める観点から、大出力化が強く求められている。
また、デジタルシネマ用プロジェクター装置で利用されるショートアーク型キセノンランプではより高精細な画像を高照度で投影するため、大出力化が強く求められている。
このような放電ランプは、例えば、耐熱温度の高い石英ガラスよりなる発光管を具え、その内部に各々タングステン製の一対の電極が例えば2〜35mm程度の間隙をもって対向配置されると共に、水銀や、キセノン、アルゴンなどの希ガスが封入されて構成されている。
【0003】
このような露光装置においては、例えば、放電ランプが定電力制御、すなわち放電ランプに投入される電力が一定の大きさとされるよう電流の大きさが制御され、所望の光出力が得られるよう構成されている。
近年においては、処理すべき半導体ウエハや液晶基板の多様化に伴って、被処理物に応じた光出力で光照射処理が行われるよう、放電ランプに投入する電力を制御することが行われる。
具体的には例えば、放電ランプが、互いに異なる大きさの一定の電力で点灯される第1の点灯モードおよび第2の点灯モードの各々の点灯モードによる点灯動作が切り換えられて行われる構成、あるいは、放電ランプの照度を所定時間間隔毎にモニタリングし、一定の大きさの照度が得られるよう電力が制御(定照度点灯制御)される構成とされている。
【0004】
一方、放電ランプの大出力化により定格消費電力が大きくなると、放電ランプに流れるランプ電流は、電流の設計値および電圧の設計値にもよるが、通常大きくなる。このため、電極、特に、直流点灯される場合における陽極は、電子衝突を受ける量が多くなり、容易に昇温して溶融してしまう問題が生じる。
また、例えば、垂直点灯される放電ランプにおいても同様に、上側に位置される電極が、発光管内の熱対流などの影響を受けて、アークからの熱を受けやすくなり、容易に昇温して高温化することにより溶融してしまう問題が生じる。
特に、電極の先端部分が溶融すると、アークが不安定になるばかりでなく、電極を構成する物質が蒸発して発光管の内表面に付着することにより、光出力が低下するという問題が生じる。
【0005】
このような問題に対して、放電ランプにおける少なくとも一方の電極を、内部に密閉空間を形成し、この密閉空間内に、点灯時に溶融状態となる銀や銅などの伝熱体を封入した構造とすることにより、ランプ点灯時における伝熱体の対流作用や沸騰伝達作用を利用して、電極先端の熱を効率良く後部に輸送し、電極の温度上昇を抑制する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
このような特殊な構造の電極(伝熱体封入型電極)を有する放電ランプにおいては、放電ランプの点灯中に電極本体に微小な穴が開いて伝熱体が漏出することがあり、伝熱体が漏出すると、発光管の内壁に付着して放電ランプから放射される光量が低下したり、あるいは、伝熱体の封入量が減少して目的とする輸送効果が得られなくなったりするという問題がある。
【0007】
電極が溶融することに起因して電極間距離が変化すると、あるいは、伝熱体封入型電極を有する放電ランプにおいて伝熱体が漏れ出すと、ランプ電圧が変化することから、例えば、放電ランプのランプ電圧を所定時間間隔毎に測定し、ランプ電圧測定値が放電ランプが例えば定格電力で点灯されている時のランプ電圧値に基づいて設定された許容範囲を逸脱したこと(許容範囲を超えたこと、あるいは、許容範囲を下回ったこと)を検出することにより、放電ランプの異常点灯を検出する異常点灯検出方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、現時点(ランプ電圧の測定が行われた最新の時点)より所定時間前の時点におけるランプ電圧測定値を参照値とし、現時点のランプ電圧測定値と参照値との差が、設定された基準値より大きいこと、あるいは、小さいことを検出することにより、放電ランプの異常点灯を検出する異常点灯検出方法が知られている。
さらにまた、上記技術において、ランプ電圧値の代わりにランプ電流値に基づいて放電ランプの異常点灯を検出する異常点灯検出方法が知られている。
【0008】
しかしながら、放電ランプに投入される電力が制御されて光出力が調整される構成の露光装置においては、上記の放電ランプの異常点灯検出方法では、例えば、実際には、電力調整が適正に行われて放電ランプが正常に点灯されているにも関わらず、ランプ電圧値が許容範囲を逸脱して放電ランプが異常点灯していると誤認してしまう、という問題があった。すなわち、例えば、放電ランプが、例えば定格電力で点灯される第1の点灯モードから、定格電力より十分に低い電力で点灯される第2の点灯モードに切り換えられるに際して、放電ランプに投入する電力を定格電力からそれより低い電力に減少させるために電流の大きさを小さくすると、発熱量が低下するので、ランプ電圧値が低下して許容範囲を逸脱してしまう。また、放電ランプが、第2の点灯モードから第1の点灯モードに切り換えられるに際して、放電ランプに投入する電力を定格電力に対して十分に低い電力から定格電力に増大させるために電流を大きくすると、発熱量が高くなるので、ランプ電圧値が増大して許容範囲を逸脱してしまう。
また、放電ランプの異常点灯をランプ電流値に基づいて検出する場合についても、同様の問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−006246号公報
【特許文献2】特開2008−241876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、放電ランプが定電力点灯制御または定照度点灯制御されて点灯される場合には、通常、放電ランプに投入する電力を低下させたときには、ランプ電圧値およびランプ電流値はともに低下し、電力を増大させたときには、ランプ電圧値とランプ電流値はともに増大する傾向を有する、すなわち、電力の増減傾向と、ランプ電圧の増減傾向およびランプ電流の増減傾向とが、互いに同一である特性を有する。
しかしながら、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、例えば、電極の溶融が激しく形状が極端に変化した場合や、伝熱体封入型電極を有する放電ランプにおいて伝熱体が漏出した場合などにおいては、電力の増減傾向と、ランプ電圧の増減傾向およびランプ電流の増減傾向とが、相反することを見出し、このような異常傾向を検出することによりランプ異常点灯を検出できるものと考え、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の目的は、放電ランプの異常点灯を確実に検出することができて放電ランプの異常点灯による照射処理不全やランプ破裂などの事故を未然に防止することのできる放電ランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放電ランプ装置は、発光管の内部に、一対の電極が対向配置されてなる放電ランプと、この放電ランプの点灯状態を監視するランプ点灯状態監視機構と、前記放電ランプの点灯状態を制御するランプ点灯状態制御機構とを具えてなり、
前記ランプ点灯状態監視機構は、
一定の微小時間間隔毎に設定された測定対象時に測定される前記放電ランプのランプ電力測定値およびランプ電圧測定値を順次の測定対象時毎に記録しておき、
前記ランプ点灯状態制御機構によって放電ランプの点灯状態が変更されたとき、直前のランプ点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値および参照ランプ電圧測定値として、ランプ点灯状態変更後における最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、前記最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値の、前記参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより異常点灯検出信号を発する
機能を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の放電ランプ装置は、発光管の内部に、一対の電極が対向配置されてなる放電ランプと、この放電ランプの点灯状態を監視するランプ点灯状態監視機構と、前記放電ランプの点灯状態を制御するランプ点灯状態制御機構とを具えてなり、
前記ランプ点灯状態監視機構は、
一定の微小時間間隔毎に設定された測定対象時に測定される前記放電ランプのランプ電力測定値およびランプ電流測定値を順次の測定対象時毎に記録しておき、
前記ランプ点灯状態制御機構によって放電ランプの点灯状態が変更されたとき、直前のランプ点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値および参照ランプ電流測定値として、ランプ点灯状態変更後における最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、前記最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の、前記参照ランプ電流測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより異常点灯検出信号を発する
機能を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の放電ランプ装置においては、前記放電ランプは、少なくとも一方の電極が、電極本体の内部に当該電極本体を構成する金属よりも融点が低い金属からなる伝熱体が封入されてなるものにより構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放電ランプ装置によれば、放電ランプの点灯状態が変更されたときに、ランプ電力の増減傾向と、ランプ電圧の増減傾向およびランプ電流の増減傾向の一方または両方とが相反することを検出することにより放電ランプの異常点灯を検出する構成とされていることにより、放電ランプの点灯状態を変更したときのランプ電圧値またはランプ電流値の変動の程度が大きい場合であっても、誤検出をすることがなく、放電ランプの異常点灯を、確実に、高い信頼性で検出することができ、従って、放電ランプの異常点灯による照射処理(露光処理)不全やランプ破裂などの事故が生ずることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の放電ランプ装置の一例における構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明の放電ランプ装置を構成する放電ランプの一例における構成の概略を示す説明図である。
【図3】放電ランプにおける陽極の構成の概略を示す断面図である。
【図4】ランプ異常点灯検出動作を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の放電ランプ装置の一例における構成の概略を示すブロック図、図2は、本発明の放電ランプ装置を構成する放電ランプの一例における構成の概略を示す説明図、図3は、放電ランプにおける陽極の構成の概略を示す断面図である。
この放電ランプ装置は、放電ランプ10と、放電ランプ10の点灯状態を制御するランプ点灯状態制御機構60と、放電ランプ10の点灯状態を監視するランプ点灯状態監視機構30とを具えてなる。
【0018】
放電ランプ10は、放電空間Sを形成する略球形状の発光部12と、その両端の各々に連設されて軸方向外方に伸びるロッド状の封止部13A,13Bとを有する、例えば石英ガラスよりなる発光管11を具えてなり、発光部12の内部には、陽極15および陰極16の一対の電極が対向して配置されている。ここに、陰極16には、例えばトリウムなどのエミッター物質が含有されている。
各々の封止部13A,13Bの内部には、それぞれ、例えばモリブデンよりなる導電用金属箔(図示せず)が、例えばシュリンクシールにより気密に埋設されており、陽極15および陰極16における電極軸部15A,16Aの基端部が封止部13A,13Bによって保持された状態で導電用金属箔の一端側部分に電気的に接続され、更に、この導電用金属箔の他端側部分に、基端側部分が封止部13A,13Bの外端より軸方向外方に突出して伸びるよう封止部13A,13Bによって保持されたロッド状の外部リード18A,18Bの先端部が電気的に接続されている。
【0019】
陽極15は、高融点金属、もしくは、高融点金属を主成分とする合金からなる電極本体20の内部に伝熱体Mが封入されて構成されている。
電極本体20は、蓋部材21と、電極本体20の主体をなす容器部材22とにより構成されており、容器部材22の先端部分220が陰極16の先端と対向し、ランプ点灯中において、アーク放電に曝される部位を構成している。
蓋部材21は、電極軸部15Aが取り付けられる挿入穴213が形成された円錐台部212と、円錐台部212の先端側の面に連続する、円錐台部212の先端部の外径より小径の円柱部211とを有し、蓋部材21の円柱部211が有底筒状体の容器部材22の開口縁部に嵌入されて円錐台部212の先端側の面と容器部材22の開口端面とが密接状態とされて例えば溶接により外周部が固定されており、これにより、伝熱体Mが封入される密閉空間Cが形成されている。
【0020】
電極本体20を構成する高融点金属としては、例えば、タングステン、レニウム、タンタルなどの融点が3000(K)以上のものを例示することができる。特に、タングステンは、伝熱体Mと反応しにくい点で好ましく、さらに、純度99.9%以上のいわゆる純タングステンが好ましい。また、電極本体20を構成する金属としてレニウムを採用した場合には、ハロゲンを封入した水銀ランプやメタルハライドランプの長寿命化を図ることができる。
また、高融点金属を主成分とする合金としては、例えば、タングステンを主成分とするタングステン−レニウム合金を例示することができる。このような高融点金属を主成分とする合金が採用されることにより、高温時の繰り返し応力に対する耐性が高いものとなり、電極の長寿命化を図ることができる。
【0021】
伝熱体Mは、電極本体20を構成する金属より融点の低い金属であり、また、電極本体20を構成する金属よりも熱伝導率が高い金属により構成されている。
具体的には、電極本体20の構成材料としてタングステンを用いた場合は、伝熱体Mとして、金、銀、銅、あるいはこれらを主成分とする合金を採用することができる。これら、金、銀、銅は、タングステンと合金を作らないので、安定的に熱輸送体として働くという意味においても望ましい金属とされる。このうち、金は高価であるために、銀、銅が実用上好ましい材料である。
【0022】
発光部12の内部には、水銀や、キセノンガスやアルゴンガスなどの希ガスが封入されている。
水銀は、必要な波長、例えば365nmや405nmという放射光を得るためのもので、例えば2〜50mg/mm3 封入されている。水銀の封入量は、温度条件によっても異なるが、所望の水銀蒸気圧に応じて適宜変更することができる。
希ガスは、点灯始動性を改善するためや、必要な可視光波長、例えば400〜750nmという放射光を得るためのもので、例えば静圧で0.05〜2MPaの封入圧力で封入されている。
この放電ランプ10は、例えば、陽極15が上方、陰極16が下方に位置されるよう、発光管11の管軸が大地に対して略垂直方向に伸びる姿勢で点灯される、いわゆる「垂直点灯型」のものである。
【0023】
ランプ点灯状態制御機構60は、放電ランプ10の外部リード18A、18Bと接続される点灯電源50と、点灯電源50を制御する電源制御手段40とにより構成されており、例えば、放電ランプ10を、寿命初期から末期にわたって一定の大きさ(実際上、±1%の範囲内での変動)の照度が得られるよう放電ランプ10に投入する電力を制御して、点灯させる機能(定照度点灯制御)を有する。また、本発明の放電ランプ装置は、図示されてはいないが、放電ランプ10の照度を測定する照度測定手段を含む。
【0024】
ランプ点灯状態監視機構30は、放電ランプ10のランプ電力を測定する電力測定手段32と、放電ランプ10のランプ電圧を測定する電圧測定手段33と、放電ランプ10のランプ電流を測定する電流測定手段34と、電力測定手段32、電圧測定手段33および電流測定手段34の各々を一定の微小時間間隔(以下、「単位測定時間」という。)毎に動作させる測定手段制御手段31と、電力測定手段32、電圧測定手段33および電流測定手段34によって単位測定時間毎の測定対象時に測定される、ランプ電力測定値、ランプ電圧測定値およびランプ電流測定値を順次の単位測定時間毎に記録する記憶手段35と、ランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40および測定手段制御手段31に対して動作指令信号を発する機能を有するメイン制御手段36とにより構成されている。ここに、単位測定時間は、例えば1秒間に設定される。また、電力測定手段32、電圧測定手段33および電流測定手段34によって測定される放電ランプ10のランプ電力測定値、ランプ電圧測定値およびランプ電流測定値は、入力値であっても、出力値であってもいずれであってもよい。
【0025】
メイン制御手段36は、ランプ点灯状態制御機構60によって放電ランプ10に投入する電力の大きさが調整されて放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、直前の点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値、参照ランプ電圧測定値および参照ランプ電流測定値として、ランプ点灯状態変更後において最初にランプ電力値、ランプ電圧値およびランプ電流値の測定が行われる最新の測定対象時におけるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより、あるいは、最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の、参照ランプ電流測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより、異常点灯検出信号を発する機能を有する。
実際には、最新の測定対象時におけるランプ電力測定値が、前記参照ランプ電力測定値に対して増大するときに、最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値が、参照ランプ電圧測定値に対して所定値以上減少すること、および/または、最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値が、参照ランプ電流測定値に対して所定値以上減少することがメイン制御手段36によって検出された場合に、あるいは、最新の測定対象時におけるランプ電力測定値が、前記参照ランプ電力測定値に対して減少するときに、最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値が、参照ランプ電圧測定値に対して所定値以上増大すること、および/または、最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値が、参照ランプ電流測定値に対して所定値以上増大することがメイン制御手段36によって検出されたときに、異常点灯検出信号が発せられる。
このように、異常点灯検出信号を発する判断基準として、最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値の参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向および最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の参照ランプ電流測定値に対する増減傾向の一方または両方とが相反するその程度を考慮する(一定の許容範囲を設ける)理由は、次に示す通りである。すなわち、放電ランプ10が定照度点灯制御される場合において、一定の照度を保つために、電力調整が行われ、例えばランプ電力値を増大させたときに、発光管内でガスの対流が揺動してガスの密度が揺らぐことによって、実際には、電力調整が適正に行われて放電ランプが正常に点灯されているにも関わらず、ランプ電圧値が所定の範囲内で減少し、ランプ電流値が所定の範囲内で増大すること、あるいは、ランプ電圧値が所定の範囲内で増大し、ランプ電流値が所定の範囲内で減少することがある。また例えばランプ電力値を減少させたときに、発光管内でガスの対流が揺動してガスの密度が揺らぐことによって、実際には、電力調整が適正に行われて放電ランプが正常に点灯されているにも関わらず、ランプ電圧値が所定の範囲内で減少し、ランプ電流値が所定の範囲内で増大すること、あるいは、ランプ電圧値が所定の範囲内で増大し、ランプ電流値が所定の範囲内で減少することがある。以上のような現象を異常であると認識して異常点灯検出信号が発せられること、すなわち、誤検出を防止するためである。ここに、許容範囲は、ランプ電圧値については、例えば±1Vの範囲内、ランプ電流値については、例えば±5Aの範囲内とされる。
【0026】
以下、上記放電ランプ装置における放電ランプ10のランプ異常点灯検出動作について説明する。
先ず、メイン制御手段36よりランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に動作指令信号が発せられ、電源制御手段40によって一定の大きさの電力(定格電力)が点灯電源50より放電ランプ10に投入されて放電ランプ10が点灯されると、メイン制御手段36から測定手段制御手段31に動作指令信号が発せられ、測定手段制御手段31によって、電力測定手段32、電圧測定手段33および電流測定手段34が動作されて単位測定時間毎、例えば1秒間の時間間隔毎の測定対象時に、ランプ電力、ランプ電圧およびランプ電流が順次に測定され、その検出結果が記憶手段35に順次に記録される。
【0027】
そして、放電ランプ10の照度が変化したとき、放電ランプ10に投入する電力の大きさが、照度が所定の大きさとなるよう、調整されることにより、放電ランプ10の点灯状態が変更された場合(αの時点)には、図4に示すように、直前の点灯状態(La)における測定対象時、例えば、変更された点灯状態(Lb)において最初にランプ電力、ランプ電圧およびランプ電流の測定が行われる最新の測定対象時t(n)より所定の時間間隔Trをおいた先行する測定対象時(以下、「参照測定対象時」ともいう。)t(m)におけるランプ電力測定値、ランプ電圧測定値およびランプ電流測定値を、それぞれ、参照ランプ電力測定値、参照ランプ電圧測定値および参照ランプ電流測定値として、最新の測定対象時t(n)におけるランプ電力測定値の、参照ランプ電力測定値に対する増減傾向(以下、「電力増減傾向」ともいう。)、最新の測定対象時t(n)におけるランプ電圧測定値の、参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向(以下、「電圧増減傾向」ともいう。)および最新の測定対象時t(n)におけるランプ電流測定値の、参照ランプ電流測定値に対する増減傾向(以下、「電流増減傾向」ともいう。)が、それぞれ、取得されて比較処理が行われる。ここに、参照測定対象時t(m)は、放電ランプ10の点灯状態が切り換えられる時間間隔によっても異なるが、例えば最新の測定対象時t(n)より例えば1〜30分前の測定対象時が採択される。
【0028】
比較処理においては、放電ランプ10に投入する電力が減少されるよう放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、すなわち、電力増減傾向が減少傾向であるときには、電圧増減傾向および電流増減傾向が共に減少傾向であることが検出された場合には、放電ランプ10が正常に点灯されているものと判断され、一方、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方が増大傾向であること、すなわち、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、互いに相反することが検出された場合には、例えば伝熱体の漏出などの異常が放電ランプ10に生じているものと判断され、メイン制御手段36によって、ランプ異常点灯検出信号がランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に発せられて、例えば放電ランプ10が消灯される。
また、放電ランプ10に投入する電力が増大されるよう放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、すなわち、電力増減傾向が増大傾向であるときには、電圧増減傾向および電流増減傾向が共に増大傾向であることが検出された場合には、放電ランプ10が正常に点灯されているものと判断され、一方、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方が減少傾向であること、すなわち、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、互いに相反することが検出された場合には、例えば電極の消耗や伝熱体の漏出などの異常が放電ランプ10に生じているものと判断され、メイン制御手段36によって、ランプ異常点灯検出信号がランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に発せられて、例えば放電ランプ10が消灯される。
【0029】
而して、上記構成の放電ランプ装置によれば、放電ランプ10の点灯状態が変更されたときに、ランプ電力の増減傾向と、ランプ電圧の増減傾向およびランプ電流の増減傾向の一方または両方とが相反することを検出することにより放電ランプ10の異常点灯を検出する構成とされていることにより、放電ランプ10の異常点灯を、確実に、高い信頼性で検出することができる。
【0030】
すなわち、上記構成の放電ランプ装置においては、放電ランプ10が正常に点灯されている場合には、放電ランプ10に投入する電流を小さくして電力が小さくなるよう調整したとき、放電ランプ10から出力される光量が減ることに伴って、発光管11によって吸収される光量および発熱量も減ることになる。このため、発光管11の温度が低下すると共に発光管11内の圧力が低下し、ランプ電圧が低下する。また、放電ランプ10に投入する電流を大きくして電力が大きくなるよう調整したときに、放電ランプ10から出力される光量が増えることに伴って、発光管11によって吸収される光量および発熱量も増えることになる。このため、発光管11の温度が上昇すると共に発光管11内の圧力が上昇し、ランプ電圧が増大する。すなわち、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向とは互いに同一の傾向を示すことになる。
しかしながら、例えば、陽極16における伝熱体Mが漏出すると、伝熱体Mを構成する金属が発光し、また、当該金属が霧状になって光散乱するために、照度(出力される光量)が低下し、その結果、照度を増大させるために、放電ランプ10に投入する電流を大きくして電力が増大されるよう調整されるが、伝熱体Mが滴となって発光管11内に落ちて電極間距離が短くなるためにランプ電圧が逆に低下することとなり、電力増減傾向と電圧増減傾向とが相反する傾向を示すことになる。
従って、放電ランプ10の点灯状態の変更前後において、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、相反すること、いわば異常現象を検出することにより、放電ランプ10の異常点灯を検出する構成とされていることにより、上記の放電ランプ装置によれば、放電ランプ10の異常点灯の原因となる電極の異常、例えば陽極16における伝熱体Mが漏出したことを、確実に、高い信頼性で検出することができ、従って、放電ランプ10の異常点灯による照射処理(露光処理)不全やランプ破裂などの事故が生ずることを未然に防止することができる。
【0031】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
<実験例1>
水銀の封入量が6mg/mm3 、アルゴンガスの封入量が0.3MPa、電極間距離が10mm、陽極を故意にランプ点灯中において伝熱体である銀が漏出する設計とした伝熱体封入型電極(図3)により構成した試験用の放電ランプを作製すると共に、この試験用ランプを用い、図1に示す構成に従って本発明に係る試験用の放電ランプ装置を作製した。
放電ランプは垂直点灯方式のものであって、照度が一定になるよう放電ランプに投入される電力が制御(定照度点灯制御)されるものである。
放電ランプの点灯中におけるランプ電力およびランプ電圧を測定する単位測定時間を1秒間に設定すると共に、ランプ点灯状態監視動作を行うに際しての参照測定対象時を、最新の測定対象時の180秒前における測定対象時とした。
また、以下に示す(条件1)または(条件2)を満足することを検出したとき、放電ランプを消灯させるよう設定した。
(条件1) 放電ランプの点灯状態が変更されたときに、最新の電力測定値が参照電力測定値に対して0.8W以上減少するにも関わらず、最新の電圧測定値が参照電圧測定値に対して1V以上増大すること.
(条件2) 放電ランプの点灯状態が変更されたときに、最新の電力測定値が参照電力測定値に対して0.8W以上増大するにも関わらず、最新の電圧測定値が参照電圧測定値に対して1V以上減少すること.
【0032】
放電ランプに投入する初期時の入力電力を8kWとして点灯させると共に放電ランプの照度をモニタリングしたところ、放電ランプが点灯されてから10.8時間が経過した時点で、照度を一定に保とうとして電力と電圧及び電流が共に急に上昇し始め、その後、約45秒後に放電ランプが消灯されることが確認された。消灯後の放電ランプを目視で確認したところ、伝熱体である銀が発光管の内面にうっすらと付着している程度であり、放電ランプが破損する兆候は見られなかった。
以上の結果より、放電ランプが点灯されてから10.8時間が経過した時点で電力と電圧及び電流が共に急に上昇し始めた理由は、伝熱体が漏出し始めたため(電極の異常)、照度が低下したことに伴って放電ランプに投入する電力が調整され、電力の増減が許容範囲を逸脱して約45秒後に上記条件2を満足する状態、実際には、最新の測定対象時における電力測定値が参照電力測定値より0.8W以上増大しているにも関わらず、最新の測定対象時における電圧測定値が参照電圧測定値より1V以上減少している状態となることが検出されたことにより放電ランプが消灯され、これによって、ランプ破損などの事故が生ずることを未然に防止することができることが確認された。
【0033】
また、上記実験例1において、適正に設計した電極封入型電極により陽極を構成した試験用の放電ランプを用い、放電ランプを8kWの電力で点灯させている状態から、放電ランプに投入する電力を6kWに故意に調整して点灯状態を変更させた場合、あるいは、放電ランプを6kWの電力で点灯させている状態から、放電ランプに投入する電力を8kWに故意に調整して点灯状態を変更させた場合であっても、放電ランプは消灯されないことが確認された。この結果より、ランプ電力測定値が0.8W以上増大または減少する場合であっても、ランプ電圧測定値の増減傾向がランプ電力測定値の増減傾向と同一であって放電ランプが電極に異常を生じていないものであれば、放電ランプが継続して点灯されることが理解される。
【0034】
<実験例2>
上記実験例1において、ランプ電圧の代わりにランプ電流を単位測定時間毎に測定すると共に、以下に示す(条件3)または(条件4)を満足することを検出したとき、放電ランプを消灯させるよう設定したことの他は、上記実験例1と同様の試験を行った。
(条件3) 放電ランプの点灯状態が変更されたときに、最新の電力測定値が参照電力測定値に対して0.8W以上減少するにも関わらず、最新の電流測定値が参照電流測定値に対して5A以上増大すること.
(条件4) 放電ランプの点灯状態が変更されたときに、最新の電力測定値が参照電力測定値に対して0.8以上増大するにも関わらず、最新の電流測定値が参照電流測定値に対して5A以上減少すること.
【0035】
放電ランプに投入する初期時の入力電力を8kWとして点灯させたところ、放電ランプが点灯されてから15.3時間が経過した時点で、照度を一定に保とうとして電力と電圧及び電流が共に急に上昇し始め、その後、約40秒後に放電ランプが消灯されることが確認された。消灯後の放電ランプを目視で確認したところ、伝熱体である銀が発光管の内面にうっすらと付着している程度であり、放電ランプが破損する兆候は見られなかった。
以上の結果より、放電ランプが点灯されてから15.3時間が経過した時点で電力と電圧及び電流が共に急に上昇し始めた理由は、照度を一定に保とうとしたことによるものであるが、実際には、伝熱体が漏出し始めたため(電極の異常)、照度が低下したことに伴って放電ランプに投入する電力が調整され、電力の増減が許容範囲を逸脱して約40秒後に、上記条件4を満足する状態、実際には、最新の測定対象時における電力測定値が参照電力測定値より0.8W以上増大しているにも関わらず、最新の測定対象時における電流測定値が参照電流測定値より5A以上減少している状態となることが検出されたことにより放電ランプが消灯され、これによって、ランプ破損などの事故が生ずることを未然に防止することができることが確認された。
【0036】
また、上記実験例2において、適正に設計した電極封入型電極により陽極を構成した試験用の放電ランプを用い、放電ランプを8kWの電力で点灯させている状態から、放電ランプに投入する電力を6kWに故意に調整して点灯状態を変更させた場合、あるいは、放電ランプを6kWの電力で点灯させている状態から、放電ランプに投入する電力を8kWに故意に調整して点灯状態を変更させた場合であっても、放電ランプは消灯されないことが確認された。この結果より、ランプ電力測定値が0.8W以上増大または減少する場合であっても、ランプ電圧測定値の増減傾向がランプ電力測定値の増減傾向と同一であって放電ランプが電極に異常を生じていないものであれば、放電ランプが継続して点灯されることが理解される。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
上記実施例においては、放電ランプが定照度点灯制御で点灯される構成のものについて説明したが、本発明は、放電ランプが互いに異なる大きさの一定の入力電力で点灯される第1の点灯モードおよび第2の点灯モードの各々の点灯モードで点灯される構成のものにも適用することができる。
このような構成の放電ランプ装置においては、ランプ点灯状態制御機構60が、放電ランプ10を、一定の大きさの電力例えば定格電力が投入される第1の点灯モード(定格電力点灯モード)および定格電力より低い一定の大きさの電力が投入される第2の点灯モード(低電力点灯モード)の各々の点灯モードで点灯させる機能を有する構成とされる。ここに、定格電力点灯モードにおいて投入される電力に対する低電力点灯モードにおいて投入される電力の比は、例えば50〜90%とされる。
【0038】
また、メイン制御手段36は、ランプ点灯状態制御機構60によって放電ランプ10に投入する電力の大きさが調整されて放電ランプ10の点灯モードが切り換えられたとき、直前の点灯モードにおけるいずれかの測定対象時におけるランプ電力測定値、ランプ電圧測定値およびランプ電流測定値を、それぞれ、参照ランプ電力測定値、参照ランプ電圧測定値および参照ランプ電流測定値として、点灯モードの切り換え後において最初にランプ電力、ランプ電圧およびランプ電流の測定が行われる最新の測定対象時におけるランプ電力測定値の、参照ランプ電力測定値に対する増減傾向(電力増減傾向)と、最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値の、参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向(電圧増減傾向)とが、相反することを検出することにより、あるいは、最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、参照ランプ電力測定値に対する増減傾向(電力増減傾向)と、最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の、参照ランプ電流測定値に対する増減傾向(電流増減傾向)とが、相反することを検出することにより、異常点灯検出信号を発する機能を有する構成とされる。
【0039】
このような構成の放電ランプ装置においては、放電ランプ10に投入する電力が減少されて放電ランプ10の点灯モードが定格電力点灯モードから低電力点灯モードに切り換えられたとき、すなわち、電力増減傾向が減少傾向であるとき、電圧増減傾向および電流増減傾向が共に減少傾向であることが検出された場合には、放電ランプ10が正常に点灯されているものと判断され、一方、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方が増大傾向であること、すなわち、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、互いに相反することが検出された場合には、例えば伝熱体Mの漏出などの異常が放電ランプ10に生じているものと判断され、メイン制御手段36によって、ランプ異常点灯検出信号がランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に発せられて、例えば放電ランプ10が消灯される。
また、放電ランプ10に投入する電力が増大されて放電ランプ10の点灯モードが低電力点灯モードから定格電力点灯モードに切り換えられたとき、すなわち、電力増減傾向が増大傾向であるとき、電圧増減傾向および電流増減傾向が共に増大傾向であることが検出された場合には、放電ランプ10が正常に点灯されているものと判断され、一方、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方が減少傾向であること、すなわち、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、互いに相反することが検出された場合には、例えば電極の消耗や伝熱体Mの漏出などの異常が放電ランプ10に生じているものと判断され、メイン制御手段36によって、ランプ異常点灯検出信号がランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に発せられて、例えば放電ランプ10が消灯される。
【0040】
上記構成の放電ランプ装置によれば、放電ランプ10の点灯モードが切り換えられたときに、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、相反することを検出することにより放電ランプ10の異常点灯を検出する構成とされていることにより、放電ランプ10の異常点灯の原因となる放電ランプ10における電極の異常、例えば陽極16における伝熱体Mが漏出したことを、確実に、高い信頼性で検出することができるので、放電ランプ10の異常点灯による照射処理(露光処理)不全やランプ破裂などの事故が生ずることを未然に防止することができる。
【0041】
また、本発明は、放電ランプが定電力制御されて点灯される構成のものにも適用することができる。
このような構成の放電ランプ装置においては、ランプ点灯状態制御機構60が、放電ランプ10を、定電力制御で点灯、すなわち一定の大きさ(実際上、±1%の範囲内での変動)の電力が投入されるよう電流を制御して点灯させる機能を有するものとされる。
また、メイン制御手段36は、ランプ点灯状態制御機構60によって放電ランプ10に投入する電流の大きさが調整されて放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、直前の点灯状態におけるいずれかの測定対象時におけるランプ電力測定値、ランプ電圧測定値およびランプ電流測定値を、それぞれ、参照ランプ電力測定値、参照ランプ電圧測定値および参照ランプ電流測定値として、ランプ点灯状態変更後において最初にランプ電力、ランプ電圧およびランプ電流の測定が行われる最新の測定対象時におけるランプ電力測定値の、参照ランプ電力測定値に対する増減傾向(電力増減傾向)と、最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値の、参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向(電圧増減傾向)とが、相反することを検出することにより、あるいは、最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、参照ランプ電力測定値に対する増減傾向(電力増減傾向)と、最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の、参照ランプ電流測定値に対する増減傾向(電流増減傾向)とが、相反することを検出することにより、異常点灯検出信号を発する機能を有する構成とされる。
【0042】
このような構成の放電ランプ装置においては、放電ランプの電力が許容範囲を逸脱して増大したことに伴って放電ランプ10に投入する電流を減少させて電力が減少されるよう放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、あるいは、放電ランプの電力が許容範囲を逸脱して減少したことに伴って放電ランプ10に投入する電流を増大させて電力が増大されるよう放電ランプ10の点灯状態が変更されたとき、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向とが互いに同一の傾向を示すことが検出された場合には、放電ランプ10が正常に点灯されているものと判断され、一方、電力増減傾向と、電圧増減傾向および電流増減傾向の一方または両方とが、互いに相反することが検出された場合には、例えば伝熱体Mの漏出などの異常が放電ランプ10に生じているものと判断され、メイン制御手段36によって、ランプ異常点灯検出信号がランプ点灯状態制御機構60における電源制御手段40に発せられて、例えば放電ランプ10が消灯される。
【0043】
上記構成の放電ランプ装置によれば、放電ランプ10の点灯状態が変更されたときに、電力増減傾向と、電圧増減傾向または電流増減傾向とが、相反することを検出することにより放電ランプ10の異常点灯を検出する構成とされていることにより、放電ランプ10の異常点灯の原因となる放電ランプ10における電極の異常、例えば陽極16における伝熱体Mが漏出したことを、確実に、高い信頼性で検出することができるので、放電ランプ10の異常点灯による照射処理(露光処理)不全やランプ破裂などの事故が生ずることを未然に防止することができる。
【0044】
さらにまた、本発明においては、ランプ電力値、ランプ電圧値およびランプ電流値を測定する時間間隔(単位測定時間t)およびその他の具体的条件は、目的に応じて適宜に設定することができる。
さらにまた、放電ランプは、伝熱体封入型電極を具えた構成のものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
10 放電ランプ
11 発光管
12 発光部
13A,13B 封止部
15 陽極
15A 電極軸部
16 陰極
16A 電極軸部
18A,18B 外部リード
S 放電空間
20 電極本体
21 蓋部材
211 円柱部
212 円錐台部
213 挿入穴
22 容器部材
220 先端部分
M 伝熱体
C 密閉空間
30 ランプ点灯状態監視機構
31 測定手段制御手段
32 電力測定手段
33 電圧測定手段
34 電流測定手段
35 記憶手段
36 メイン制御手段
40 電源制御手段
50 点灯電源
60 ランプ点灯状態制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の内部に、一対の電極が対向配置されてなる放電ランプと、この放電ランプの点灯状態を監視するランプ点灯状態監視機構と、前記放電ランプの点灯状態を制御するランプ点灯状態制御機構とを具えてなり、
前記ランプ点灯状態監視機構は、
一定の微小時間間隔毎に設定された測定対象時に測定される前記放電ランプのランプ電力測定値およびランプ電圧測定値を順次の測定対象時毎に記録しておき、
前記ランプ点灯状態制御機構によって放電ランプの点灯状態が変更されたとき、直前のランプ点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値および参照ランプ電圧測定値として、ランプ点灯状態変更後における最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、前記最新の測定対象時に測定されるランプ電圧測定値の、前記参照ランプ電圧測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより異常点灯検出信号を発する
機能を有することを特徴とする放電ランプ装置。
【請求項2】
発光管の内部に、一対の電極が対向配置されてなる放電ランプと、この放電ランプの点灯状態を監視するランプ点灯状態監視機構と、前記放電ランプの点灯状態を制御するランプ点灯状態制御機構とを具えてなり、
前記ランプ点灯状態監視機構は、
一定の微小時間間隔毎に設定された測定対象時に測定される前記放電ランプのランプ電力測定値およびランプ電流測定値を順次の測定対象時毎に記録しておき、
前記ランプ点灯状態制御機構によって放電ランプの点灯状態が変更されたとき、直前のランプ点灯状態におけるいずれかの測定対象時の測定値をそれぞれ参照ランプ電力測定値および参照ランプ電流測定値として、ランプ点灯状態変更後における最新の測定対象時に測定されるランプ電力測定値の、前記参照ランプ電力測定値に対する増減傾向と、前記最新の測定対象時に測定されるランプ電流測定値の、前記参照ランプ電流測定値に対する増減傾向とが、相反することを検出することにより異常点灯検出信号を発する
機能を有することを特徴とする放電ランプ装置。
【請求項3】
前記放電ランプは、少なくとも一方の電極が、電極本体の内部に当該電極本体を構成する金属よりも融点が低い金属からなる伝熱体が封入されて構成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電ランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−129455(P2011−129455A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288888(P2009−288888)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】