説明

放電ランプ

【課題】
本願の目的は、導電箔における外部リード側導電体に対向する面が酸化することを防止した放電ランプを提供することにある。
【解決手段】
第1の発明に係る放電ランプは、内部に発光空間を有する発光管とその両端に連接された封止管とからなる放電容器と、該封止管の内部に設けた封止用絶縁体と、該放電容器の内部の発光管側で対向して配置された電極と、該電極に電気的に接続されると共に該封止管と該封止用絶縁体との間に設けられた導電箔と、接合部を介して該導電箔と電気的に接続されると共に封止用絶縁体の外方に設けられた導電体と、該導電体に電気的に接続された外部リードと、からなる放電ランプにおいて、少なくとも該導電箔における該導電体に対向する面に酸化保護膜を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶や半導体、プリント基板などの露光装置の光源に用いられる放電ランプに関する。特に、封止部がモリブデンからなる導電箔によって封止された箔シール構造の放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置の光源に用いられる放電ランプとして、例えば特許文献1に記載されるものがあった。このような従来から知られている放電ランプの構成を、図24及び図25を用いて説明する。
【0003】
図24は、放電容器2の長手方向に沿った放電ランプ1の断面図である。図25は、図24の放電ランプ1において一方の封止管22(図24の紙面上方側の封止管22)側の拡大断面図である。
【0004】
図24に示す放電ランプ1は、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電容器2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなる。
【0005】
放電ランプ1の放電容器2は、略球状の発光管21と、その両端に連接された円筒状の封止管22とで構成される。また、放電容器2は例えば石英ガラスにより形成される。
この放電容器2の内部には、一対の電極31,32として例えばタングステンからなる陽極31と陰極32とが対向配置され、発光物質として水銀が封入される。
【0006】
ランプ点灯時、一対の電極31,32に給電するための給電構造は、電極31,32をその一端に設けると共に封止管22の中心軸に沿って伸びる棒状の内部リード33と、この棒状の内部リード33における他端側の外周に設けた円盤状の内部リード側導電体34と、この内部リード側導電体34の外面に接合されると共に封止管22の長手方向に沿って伸びる導電箔35と、この導電箔35と接合された円盤状の外部リード側導電体37と、この外部リード側導電体37の中心軸に配置されると共に電気的に接続された棒状の外部リード38とからなる。
給電構造は、内部リード33及び外部リード38が例えばタングステンにより形成され、内部リード側導電体34,外部リード側導電体37及び導電箔35は例えばモリブデンにより形成される。これにより、外部リード38に接続された図示しない電源から給電されると、給電構造は通電され、電極31,32に電力を供給することができる。
【0007】
この内部リード33の外面には、電極31,32と内部リード側導電体34との間に、例えば石英ガラスからなる円筒状の内部リード保持用筒体4が設けられる。この内部リード保持用筒体4は、その内周面に内部リード33の外周面が当接され、その外面に放電容器2の封止管22の内周面が当接される。
【0008】
外部リード38の外面には、例えば石英ガラスからなる円筒状の外部リード保持用筒体6が設けられる。この外部リード保持用筒体6は、その内面に外部リード38の外面が当接され、その外面に放電容器2の封止管22の内面が当接される。
【0009】
放電容器2の封止管22の中心軸方向では、内部リード用導電体34と外部リード用導電体37との間に、例えば石英ガラスからなる円柱状の封止用絶縁体5が配置される。円柱状の封止用絶縁体5には、内部リード用導電体34に対向する面と外部リード用導電体37に対向する面のそれぞれに、リード用凹部51が設けられる。そのリード用凹部51には、内部リード用導電体34の中心軸を挿通した内部リード33の他端と、外部リード用導電体37の中心軸を挿通した外部リード38の一端とが配置される。また、封止用絶縁体5の外周面には導電箔35が配置される。
【0010】
放電ランプ1の箔シール構造は、この封止用絶縁体5と封止管22とを一部導電箔35を介して加熱・溶着されることで構成される。
このように形成された放電ランプ1の箔シール構造は、図25に示す封止用絶縁体5の陽極(図24における符号31、図25には不図示)側(図25の紙面下方側)で、封止管22と封止用絶縁体5とが溶着されているが、封止用絶縁体5の外部リード38側(図25の紙面上方側)で、導電箔側空隙92が形成される。この導電箔側空隙92は、導電箔35を構成する金属部材と放電管22を構成するガラス部材との熱膨張係数の差により、箔シール構造形成後の冷却時において、形成されるものである。
【0011】
【特許文献1】実開平06−060960公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような箔シール構造を有する放電ランプ1は、ランプ点灯を継続的に行なうと、導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面が酸化されて破損する問題があった。
【0013】
これは、放電ランプ1の封止管22の内部の構成に起因する。
図25に示すように、外部リード38を構成する金属部材と外部リード保持用筒体6を構成するガラス部材との熱膨張係数の差により、外部リード38の外周面と外部リード保持用筒体6の内周面との間には外部リード側空隙91が形成される。
また、図25の点線の丸で囲った部分の拡大図である図26に示すように、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間には、各々の部材の熱膨張係数の差により、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する空隙が形成される。
これらにより、放電容器2の封止管22の端部から大気Aが流入し、導電箔側空隙92はランプ点灯時には、大気A雰囲気となる。
【0014】
また、ランプ点灯時、外部リード38から給電されることで、外部リード側導電体37と導電箔35とを溶接する接合部36周辺への電流の集中が起こり、導電箔35は接合部36周辺での抵抗熱が大きくなる。さらに、給電により加熱された外部リード側導電体37からの輻射熱により、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面が加熱される。
【0015】
このように、大気A雰囲気でランプ点灯されると、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面が加熱されて、導電箔35を構成する金属部材が酸化されて破損に至る。
【0016】
そこで、本願の目的は、導電箔における外部リード側導電体に対向する面が酸化することを防止した放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明に係る放電ランプは、内部に発光空間を有する発光管とその両端に連接された封止管とからなる放電容器と、該封止管の内部に設けた封止用絶縁体と、該放電容器の内部の発光管側で対向して配置された電極と、該電極に電気的に接続されると共に該封止管と該封止用絶縁体との間に設けられた導電箔と、接合部を介して該導電箔と電気的に接続されると共に封止用絶縁体の外方に設けられた導電体と、該導電体に電気的に接続された外部リードと、からなる放電ランプにおいて、少なくとも該導電箔における該導電体に対向する面に酸化保護膜を設けたことを特徴とする。
【0018】
第2の発明に係る放電ランプは、第1の発明に係る放電ランプにおいて、該酸化保護膜がルビジウム・モリブデン複酸化物であることを特徴とする。
【0019】
第3の発明に係る放電ランプは、第1の発明に係る放電ランプにおいて、該放電ランプが該導電体の外方であって該外部リードと該封止管との間に外部リード保持用筒体を設けた放電ランプであって、該外部リードと該外部リード保持用筒体との間に外部リードの長手方向に沿った外部リード側空隙を設け、該外部リード側空隙と該接合部とを連通させた経路を設けたことを特徴とする。
【0020】
第4の発明に係る放電ランプは、第3の発明に係る放電ランプにおいて、該導電体と該外部リード保持用筒体との間に凹部又は/及び凸部を構成する経路形成部材を設けたことにより、該経路を構成したことを特徴とする。
【0021】
第5の発明に係る放電ランプは、第4の発明に係る放電ランプにおいて、該経路形成部材に外部リード保持用筒体の内面から該導電体の外面にまで連続する開口部を設けたことを特徴とする。
【0022】
第6の発明に係る放電ランプは、第4の発明に係る放電ランプにおいて、該経路形成部材に外部リード保持用筒体の内面から該導電体の外面にまで連続する皺寄部を設けたことを特徴とする。
【0023】
第7の発明に係る放電ランプは、第4の発明に係る放電ランプにおいて、該経路形成部材を複数の線状部材からなる網状構造で構成したことを特徴とする。
【0024】
第8の発明に係る放電ランプは、第3の発明に係る放電ランプにおいて、該経路を該導電体に凹部又は/及び凸部を設けることで構成したことを特徴とする。
【0025】
第9の発明に係る放電ランプは、第3の発明に係る放電ランプにおいて、該導電体と該外部リード保持用筒体との間に該導電体の外面から該外部リード保持用筒体の内面に連続するように該導電箔を設けたことを特徴とする。
【0026】
第10の発明に係る放電ランプは、第3の発明又は第4の発明に係る放電ランプにおいて、該導電体と該封止用絶縁体との間に封止用絶縁体側空隙を設け、該外部リード側空隙と該封止用絶縁体側空隙とを連通するように、該導電体に貫通孔又は/及び該外部リードに溝部を設け、該封止用絶縁体側空隙と該貫通孔又は/及び該溝部とが該経路を構成することを特徴とする。
【0027】
第11の発明に係る放電ランプは、第3の発明に係る放電ランプにおいて、該外部リードと該外部リード保持用筒体との間に低融点ガラスを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
第1の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、導電箔における導電体に対向する面が大気中の酸素にさらされないので、ランプ点灯時に接合部周辺側空隙が大気雰囲気になって導電箔が加熱されても、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0029】
酸化保護膜と封止管とが密接する場合において、封止管を構成する部材が石英ガラスのとき、酸化保護膜を構成する部材によっては、その部材の例えば金属原子又は金属イオンが石英ガラスへ拡散し、酸化保護膜が設けられた導電箔と封止管との密着性を阻害することがある。
第2の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、ルビジウムの原子半径及びイオン半径が大きいことに起因して、ルビジウムによる石英ガラスへの拡散が少ないことから、酸化保護膜が設けられた導電箔と封止管との密着性を阻害することを防止できる。
【0030】
酸化保護膜を設ける手段としては、例えばモリブデンからなる導電箔に、例えばルビジウム硝酸塩の水溶液からなる酸化保護膜生成溶液を塗布して加熱することで、酸化保護膜を生成する方法が挙げられる。この手段を用いるとき、少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液を塗布する工程が必要である。
第1の発明に係る放電ランプにおいて、導電体の外方に外部リード保持用筒体を設けたとき、酸化保護膜生成溶液は、外部リード保持用筒体の内面と外部リードの内面との間を滴下され、導電体と外部リード保持用筒体との間を介して、導電箔における導電体に対向する面に塗布されることが考えられる。
ところが、導電体の外方に外部リード保持用筒体を設けた放電ランプにおいては、次に示す理由により、導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液を塗布できないことがあった。
放電ランプは、箔シール構造を形成するときに、加熱された導電箔が放電ランプの外方に向かって膨張される。これに伴って、導電箔と接合された導電体も外部リード保持用筒体に向かって移動され、導電体と外部リード保持用筒体が密着されることがあった。箔シール構造は形成された後に冷却されるが、導電箔における封止された部分は、封止された封止管と封止用絶縁体との間に固定されるので、膨張した導電箔の大半は殆んど収縮することができないことがあり、導電体と外部リード保持用筒体が密着されたままになることがあった。この導電体と外部リード保持用筒体との密着した間には、酸化保護膜生成溶液が流入できないことがある。このとき、液体の粘度に対して気体の粘度は低いことから、密着した導電体と外部リード保持用筒体との間に大気が流入してしまい、導電箔における導電体に対向する面が酸化・破損される問題は解決できなかった。
そこで、第3の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0031】
第4の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、凹部又は/及び凸部に沿って経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0032】
第5の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、経路形成部材の開口部に沿って経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0033】
第6の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、経路形成部材の皺寄部に沿って経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0034】
第7の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、網状構造による経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
さらに、第7の発明に係る放電ランプは、次に示す問題も解決することができる。
ランプ点灯時、外部リード側導電体が加熱されることで膨張し、外部リード保持用筒体を押圧することがある。外部リード保持用筒体は、封止管に固定されていることから、外部リード側導電体からの押圧が外部リード保持用筒体への応力となって、破損することがあった。そこで、第5の発明に係る放電ランプは、外部リード側導電体と外部リード保持用筒体との間に網状構造からなる経路形成部材を設けたことにより、外部リード側導電体からの押圧を網状構造からなる経路形成部材が受け、その網状構造を構成する線状部材に応力がかかることで膨張し、その膨張量を網状構造が有する空隙に移動させる。
すなわち、第5の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、外部リード保持用筒体に応力を殆んどかけないで、外部リード側導電体からの押圧を網状構造からなる経路形成部材で許容することで、外部リード保持用筒体の破損を防止できる。
【0035】
第8の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、凹部又は/及び凸部に沿って経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0036】
第9の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、外部リード側導電体と外部リード保持用筒体との間に位置する導電箔に沿って経路が形成され、この経路を介して少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0037】
既述の通り、放電ランプは、箔シール構造を形成するときに、加熱された導電箔が放電ランプの外方に向かって膨張されることで、外部リード側導電体と外部リード保持用筒体が密着される。これに対して外部リード側導電体と封止用絶縁体との間には封止用絶縁体側空隙が形成される。
そこで、第10の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、導電体に設けた貫通孔又は/及び外部リードに設けた溝部と封止用絶縁体側空隙とを介して、少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜生成溶液が塗布され、導電箔における導電体に対向する面の酸化を防止することができる。
【0038】
第1〜第9の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、少なくとも導電箔における導電体に対向する面に酸化保護膜が設けられるが、これの裏面側である導電箔における封止管に対向する面側が、対向する封止管が密着して酸化保護膜が設けられない場合がある。導電箔は給電による抵抗熱や外部リード側導電体からの輻射熱による加熱以外に、発光管からの放電熱が導電箔に伝熱して加熱することもある。
そこで、第11の発明に係る放電ランプは、上記特徴により、導電箔の外方にある空隙への大気流入を抑制し、導電箔における酸化保護膜の生成されていない部分の酸化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明に係る放電ランプ1の第1の実施例について、図1〜3を用いて説明する。
【0040】
図1は、放電ランプ1の長手方向に沿った断面図である。図2は、図1の放電ランプ1において一方の封止管22(図1の紙面上方側の封止管22)側の拡大断面図である。図3は、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の説明図である。図3(a)は、図2の放電ランプ1における点線の丸で囲った部分の拡大図である。図3(b)は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22と外部リード保持用筒体6とを取り除いた図である。
なお、図1〜3には、図24〜26に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0041】
図1に示す放電ランプ1は、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電容器2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する導電箔35に酸化保護膜(図1には不図示、図3における符号71)を設けたことを特徴とする。
【0042】
放電ランプ1の放電容器2は、略球状の発光管21と、その両端に連接された円筒状の封止管22とで構成される。放電容器2を構成する部材としては、光透過性を有する部材が用いられ、特に放電ランプ1が露光装置の用途に使用される場合は、紫外線透過性を有する部材が用いられる。
また、後述する箔シール構造の説明に示すように、放電容器2を構成する封止管22は封止用絶縁体5と加熱・溶着が可能なガラス部材が好ましい。
これらのことから、放電容器2は紫外線透過性を有するガラス部材として例えば石英ガラスが用いられる。
【0043】
この放電容器2の内部には、発光管21側で一対の電極31,32が対向配置され、発光物質が封入される。
一対の電極31,32を構成する部材としては、ランプ点灯時に電極31,32間の放電により高温に加熱されることから、耐熱性を有する高融点金属又は高融点金属からなる合金が用いられ、この高融点金属として例えばタングステンが挙げられる。
発光物質としては、ランプ点灯時に紫外線を放射する例えば水銀が用いられ、その封入量は1〜70mg/cmの範囲内で例えば22mg/cmが挙げられる。さらにランプ点灯開始時の始動性を改善する始動補助用ガスとして、例えばキセノンガスが用いられ、その封入量は例えば0.05〜0.5MPaの範囲内で例えば0.1MPaが挙げられる。
【0044】
ランプ点灯時に、一対の電極31,32に給電するための給電構造は、電極31,32をその一端に設けると共に封止管22の中心軸に沿って伸びる棒状の内部リード33と、この棒状の内部リード33における他端側の外周に設けた円盤状の内部リード側導電体34と、この内部リード側導電体34の外面にその一端が接合されると共に封止管22の長手方向に沿って伸びる導電箔35と、この導電箔35の他端と接合された円盤状の外部リード側導電体37と、この外部リード側導電体37の中心軸にその一端側が配置されると共にその他端が封止管22の外方(図1における封止管22の紙面上方側)に突出された棒状の外部リード38とからなる。
【0045】
給電構造(内部リード33,内部リード側導電体34,導電箔35,外部リード側導電体37及び外部リード38)の部材としては、電気伝導性を具備することは当然であるが、ランプ点灯時における電極31,32間の放電熱の伝熱を考慮して耐熱性を具備する必要があることから、高融点金属又は高融点金属からなる合金が用いられる。高融点金属としては、例えばモリブデン,タングステン,タンタル,ルテニウム及びレニウムが挙げられる。
【0046】
給電構造を構成する導電箔35は、後述する箔シール構造が導電箔35を介して構成されることから、上述の高融点金属の中で、特に厚みを薄くなるように加工しやすいモリブデンが好適に用いられる。
この導電箔35の数値例を挙げると、厚みが例えば0.02〜0.06mmで、幅が例えば6〜15mmである。
【0047】
外部リード側導電体37と導電箔35との接合は、図3(a)に示すように、外部リード側導電体37の外周面と導電箔35とを溶接により接合部36を設けることで実現できる。この溶接の具体的手段としては、例えばアーク溶接のような融接や、例えばスポット溶接のような圧接が用いられる。
外部リード側導電体37の外周面には、放電ランプ1の出力に対応して複数枚(図3(b)においては4枚)の導電箔35が互いに離隔されて設けられる。各導電箔35には、外部リード側導電体37との間に接合部36が設けられる。この複数枚の導電箔35は、封止管22の長手方向に沿って互いに並行して配設され、内部リード側導電体34の外周面に溶接により接合される。
【0048】
放電容器2の封止管22の中心軸方向では、内部リード側導電体34と外部リード側導電体37との間に、円柱状の封止用絶縁体5が配置される(図1参照)。封止用絶縁体5の外周面においては、内部リード側導電体34と外部リード側導電体37とを電気的に接続する複数枚の導電箔35が互いに離隔されて配置される。
【0049】
放電ランプ1の箔シール構造は、放電容器2を気密に封止するため、封止用絶縁体5と封止管22とを一部で導電箔35を介して加熱・溶着することで構成される。
封止用絶縁体5を構成する部材としては、封止管22と溶着しやすい部材が用いられ、特に封止管22の部材と同一の部材であることが好ましい。例えば、封止管22を石英ガラスで構成した場合、封止用絶縁体5を石英ガラスで構成すれば封止管22を加熱することで、封止管22と封止用絶縁体5とが好適に溶着される。
【0050】
箔シール構造を構成する封止用絶縁体5には、内部リード側導電体34に対向する面と外部リード側導電体37に対向する面のそれぞれに、封止用絶縁体5の中心軸の位置にリード用凹部51が設けられる。
封止用絶縁体5において、内部リード側導電体34と対向する面に設けられたリード用凹部51には内部リード33の他端が挿入され、外部リード側導電体37と対向する面に設けられたリード用凹部51には外部リード38の一端が挿入される。
【0051】
封止用絶縁体5のリード用凹部51に他端が挿入された内部リード33は、その一端に電極31,32が設けられ、この電極31,32は放電時の耐熱性を考慮して内部リード33の外径より大型となる。このため、電極31,32を一端に設けた内部リード33には、電極31,32の重量が負荷され、この内部リード33の他端を挿通された封止用絶縁体5へも電極31,32の重量が負荷される。放電ランプ1の出力が例えば6.5KW以上の場合、内部リード33に比して電極31,32が大型化するため、内部リード33の周方向において円筒状の内部リード保持用筒体4を内部リードの外面と封止管22の内面との間に設け、電極31,32を一端に設けた内部リード33の支持を補助することが好ましい。また、内部リード保持用筒体4は、内部リード33の長手方向において、電極31,32と内部リード側導電体34との間であって内部リード側導電体34に当接するように設けられる。
【0052】
また、外部リード38と電気的に接続された外部リード側導電体37の外周方向には、後述する導電箔側空隙(図1には不図示、図3(a)における符号91)が形成されることから、外部リード38の重量は、主に封止用絶縁体5に設けたリード用凹部51に負荷される。封止用絶縁体5は、外部リード38の重量によってはその負荷で破損することがあるため、外部リード38の周方向において円筒状の外部リード保持用筒体6を外部リード38の外面と封止管22の内面との間に設け、外部リード38の支持を補助することが好ましい。また、外部リード保持用筒体6は、外部リード38の長手方向において、外部リード側導電体37の外方(外部リード側導電体37に対して封止用絶縁体5と対向する側の面と反対側の面)側に位置するように設けられる。
【0053】
内部リード保持用筒体4と外部リード保持用筒体6の部材としては、封止管22と溶着しやすい部材が用いられ、特に封止管22の部材と同一の部材であることが好ましい。例えば、封止管22を石英ガラスで構成した場合、内部リード保持用筒体4と外部リード保持用筒体6を石英ガラスで構成すれば、封止管22を加熱することで、封止管22と内部リード保持用筒体4とが、また封止管22と外部リード保持用筒体6とが溶着される。
【0054】
封止管22と加熱・溶着された外部リード保持用筒体6は、熱膨張係数が異なる外部リード38とは溶着されない。このため、外部リード保持用筒体6の内面と外部リード38の外面との間には、外部リード38の長手方向に沿って伸びる外部リード側空隙(図1には不図示、図2における符号91)が設けられる。
【0055】
また、導電箔35における外部リード38側の他端(図2における導電箔35の紙面上方側の端部)の外面と封止管22との間には、これらを構成する部材の熱膨張係数の差による導電箔側空隙92が形成される(図2、詳細には図3(a)を参照)。
【0056】
導電箔側空隙92に取り囲まれた導電箔35における他端(図2における導電箔35の紙面上方側の端部)は、外部リード側導電体37との間で接合部(図2には不図示、図3(a)における符号36)を介して接合されることから、図3(a)に示すように、導電箔35と外部リード側導電体37との間に接合部周辺側空隙94が形成されている。この接合部周辺側空隙94を介して外部リード側導電体37に対向された導電箔の面351のうち、接合部36が接合された部分を除いて酸化保護膜71が設けられる。
【0057】
なお、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図3(a)における符号351、図3(b)には不図示)の範囲は、図3(b)に示すように、円盤状の外部リード側導電体37の中心軸方向において対向するL1と、円盤状の外部リード側導電体37の周方向において対向するL2とからなる範囲である(図3(b)の紙面手前側に位置する2枚の導電箔35は、外部リード側導電体37に対向する面に対して反対側の面が見えている)。
【0058】
図3(a)に示すように、この酸化保護膜71は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体6に対向された面351に設けられるが、後述の酸化保護膜71の生成方法により、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分にも設けられる。特に、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分であって、封止管22と封止用絶縁体5との間に密着された封止部分側(図2の導電箔35における紙面下方側)は、ランプ点灯時における電極31,32間の放電熱による伝熱(ここでいう放電熱による伝熱とは、電極31,32間の放電からの「電子電流」「放電輻射」による伝熱と、放電により電極31,32と発光管21内のガスとが加熱されたことによる「電極31,32からの接触伝熱及びガス対流伝熱」のことをいう)を受けて加熱されるため、この部分にも加熱による酸化を防止する目的で酸化保護膜71が設けられることが好ましい。
【0059】
酸化保護膜71の部材としては、導電箔35を構成する高融点金属又は高融点金属からなる合金と、アルカリ金属とからなる複酸化物で構成される。例えば、導電箔35を構成する部材がモリブデンであって、アルカリ金属が例えばセシウムであった場合、セシウム・モリブデン複酸化物が設けられる。
導電箔35を構成する部材がモリブデンの場合、高温でも安定した化合物であるルビジウム・モリブデン複酸化物が酸化保護膜71として好ましい。
【0060】
酸化保護膜71が設けられる導電箔35は、外部リード側導電体37の外面に、複数枚設けられるが、各導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図3(a)における符号351、図3(b)には不図示)にそれぞれ酸化保護膜71が設けられる。
導電箔35の枚数としては、例えば出力が6.5KW以上のランプの場合4枚以上の導電箔35が必要であり、このように出力が大きな放電ランプ1の場合、接合部36やその周辺の部材の抵抗熱が大きくなり、さらに外部リード側導電体37からの輻射熱も大きくなる。このため、4枚以上の導電箔35を具備する放電ランプ1においては、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図3(a)における符号351、図3(b)には不図示)に酸化保護膜71を設けることで、導電箔35の酸化防止効果が著しく得られる。
【0061】
酸化保護膜71の生成方法として、その一例を以下に示す。
外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間には、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37とが互いの部材の熱膨張係数の差により溶着されないので、図3(a)に示すように空隙が形成される。この空隙は外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通している。
このため、放電ランプ1の端部に位置する外部リード側空隙91の外方(図2の紙面上方にある外部リード側空隙91の入り口)から酸化保護膜71生成溶液として例えば硝酸ルビジウム溶液を滴下させ、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間の空隙を介して、導電箔側空隙92を酸化保護膜71生成溶液で充填させる。この充填する方法としては、気密に封止した放電ランプ1の封止管22の端部から導電箔側空隙92を減圧状態にし、窒素などの不活性ガスで酸化保護膜71生成溶液を押圧して充填させる。このとき、導電箔35と外部リード側導電体37との間にも接合部周辺側空隙94が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)にも酸化保護膜71生成溶液が塗布される。
次に、導電箔側空隙92に酸化保護膜71生成溶液を充填したままで放電ランプ1を、例えば600℃以上で焼成する。
これにより、導電箔35を構成する例えばモリブデンのような高融点金属と酸化保護膜71生成溶液を構成する例えばルビジウム硝酸溶液のようなアルカリ金属塩の溶液とが反応し、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれる部分に例えばルビジウム・モリブデン複酸化物のような高融点金属とアルカリ金属とからなる複酸化物が生成される。酸化保護膜71生成溶液が塗布された導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面にも、例えばルビジウム・モリブデン複酸化物が生成される。
【0062】
なお、図3(a)には、導電箔35がモリブデンであって、外部リード側導電体37はモリブデン以外の例えばタングステンで構成された場合を図示しているため、導電箔35の外面のみに酸化保護膜71が形成される。外部リード側導電体37の部材が、導電箔35の部材と同一のモリブデンであった場合、導電箔側空隙92を充填する際に、外部リード側導電体37における酸化保護膜71生成溶液が通過した部分には、酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、酸化保護膜71が生成される。
【0063】
上述した第1の実施例に係る放電ランプ1は、一対の外部リード38に図示しない電源が接続されており、図示しない電源から給電されることでランプ点灯を開始する。ランプ点灯時、接合部周辺側空隙94は、外部リード側空隙91と連通していることから大気雰囲気である。この大気雰囲気で、導電箔35は、給電による接合部36周辺での抵抗熱と、外部リード側導電体37からの輻射熱とにより加熱される。
第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71が設けられることにより、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351が大気中の酸素に直接さらされない。これにより、第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351が加熱されても、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0064】
さらに、ランプ点灯時、導電箔側空隙92は、外部リード側空隙91と連通していることから大気雰囲気である。この大気雰囲気で、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分は、電極31,32間の放電熱が伝熱されて加熱される。特に、電極31,32に近いので、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分のうちで、封止管22と封止用絶縁体5との間に密着された封止部分側(図2の導電箔35における紙面下方側)が放電熱の伝熱を受けやすくなる。第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分に酸化保護膜71を設けたことにより、導電箔側空隙92中の大気中の酸素に直接さらされないので、放電熱の伝熱を受けても、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分の酸化を防止することができる。
【0065】
また、第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分に酸化保護膜71を設けたことにより、高温に加熱される環境においても導電箔35の酸化が防止されることから、従来の放電ランプ1よりも導電箔の接合部36を内部リード38側に近接することができる。これにより、第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35に接合された外部リード側導電体37も内部リード33側に移動することができ、従来の放電ランプ1と比して、封止管22の長手方向(図1に示す上下方向)の長さを短くすることができるので、放電ランプ1の長手方向における小型化を実現することもできる。
【0066】
酸化保護膜71と封止管22とが密接する場合において、封止管22を構成する部材が石英ガラスのとき、酸化保護膜71を構成する部材によっては、その部材の例えば金属原子又は金属イオンが石英ガラスへ拡散し、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することがある。これは、ランプ点灯時、放電熱の伝熱を受けて運動エネルギーを持った金属原子又は金属イオンが、二酸化ケイ素からなるその網目構造を乗り越え拡散する際に、その金属原子半径又は金属イオン半径の小さいものの方がより容易に網目構造を乗り越えてしまうためと考えられる。
そこで、第1の実施例に係る放電ランプ1は、酸化保護膜71をルビジウム・モリブデン複酸化物で構成することにより、以下の理由から、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することを防止できる。
ルビジウム・モリブデン複酸化物は、これを構成するルビジウムの原子半径及びイオン半径が他のアルカリ金属原子(例えば、リチウム、ナトリウム)又は金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン)に比べて充分大きいことに起因して、石英ガラスへの拡散が少ないものと考えられる。
【0067】
以上のことから、第1の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
第1の実施例に係る放電ランプ1は、内部に発光空間を有する発光管21とその両端に連接された封止管22とからなる放電容器2と、該封止管22の内部に設けた封止用絶縁体5と、該放電容器2の内部の発光管21側で対向して配置された電極31,32と、該電極31,32に電気的に接続されると共に該封止管22と該封止用絶縁体5との間に設けられた導電箔35と、接合部36を介して該導電箔35と電気的に接続されると共に封止用絶縁体5の外方に設けられた外部リード側導電体37と、該外部リード側導電体37に電気的に接続された外部リード38と、からなる放電ランプ1において、少なくとも該導電箔35における該外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことを特徴とする。
【0068】
第1の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことにより、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351が大気中の酸素にさらされないので、ランプ点灯時に接合部周辺側空隙94が大気雰囲気になって導電箔35が加熱されても、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0069】
また、第1の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該酸化保護膜71がルビジウム・モリブデン複酸化物であることを特徴とする。
この特徴により、ルビジウムの原子半径及びイオン半径が大きいことに起因して、ルビジウムによる石英ガラスへの拡散が少ないことか、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することを防止できる。
【0070】
ここまで説明した第1の実施例に係る放電ランプ1は、図3(b)に示すように、外部リード側導電体37が円盤状であった。次に、外部リード側導電体37が円盤状ではない場合について、第1の実施例に係る放電ランプ1の別の例として、図4及び図5を用いて説明する。なお、第1の実施例の別の例においても、放電ランプ1の断面図は図1と概略相違しないため、図1を参照図として用いる。
【0071】
図4は、図1の放電ランプ1において一方の封止管22(図1の紙面上方側の封止管22)側の拡大断面図である。図5は、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の説明図であり、図4の放電ランプ1における点線の丸で囲った部分の拡大図である。
なお、図4及び図5には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0072】
図4及び図5の放電ランプ1は、外部リード側導電体37の形状が円盤状部材に接合用突部371を設けた点で、図1〜3の放電ランプ1と相違する。
図4及び図5の放電ランプ1の説明として、図1〜3との相違点について述べる。
【0073】
外部リード側導電体37と導電箔35とを接合する接合部22を設けるため、図4に示すように、外部リード側導電体37は、円盤状部材に対して、その外周面から封止管22の外方(図4における紙面上方)に向かって突出する接合用突部371が設けられる。接合用突部371は導電箔35の枚数分を用意すればよく、導電箔35が例えば4枚設けられる場合、接合用突部371は4つ設けられる。このように外部リード側導電体37の形状は、円盤状部材と、その外周面から封止管22の外方(図4における紙面上方)に向かって突出する複数の接合用突部371とからなる形状をしており、いわゆる外歯付ワッシャーの形状に類似する。
この接合用突部371が設けられることにより、外部リード側導電体37と導電箔35との対向する面積が増えることから溶接を簡便に行なうことができる。また、接合部22は、外部リード側導電体371に接合された面積と、導電箔35に接合された面積を大きくできることから、電極31,32への給電量も大きくすることができ、大出力の放電ランプ1へ対応することができる。
【0074】
外部リード側導電体37が接合部用突部371を有する場合、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351とは、図5に示すように、封止管22の長手方向の断面において、外部リード側導電体37の接合部用突部371の長さL1を含んだ領域のことをいう。
このため、導電箔35に設けられる酸化保護膜71は、少なくとも導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351に設ければよい。
【0075】
また、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分であって、封止管22と封止用絶縁体5との間に密着された封止部分側(図4の導電箔35における紙面下方側)は、ランプ点灯時における電極31,32間の放電熱による伝熱を受けやすくなるため、この部分にも酸化保護膜71を設けることが好ましい。
【0076】
外部リード側導電体37が接合部用突部371を有する場合であっても、酸化保護膜71の部材としては、導電箔35を構成する高融点金属又は高融点金属からなる合金と、アルカリ金属とからなる複酸化物で構成される。例えば、導電箔35を構成する部材がモリブデンであって、アルカリ金属が例えばセシウムであった場合、セシウム・モリブデン複酸化物が設けられる。
導電箔35を構成する部材がモリブデンの場合、高温でも安定した化合物であるルビジウム・モリブデン複酸化物が酸化保護膜71として好ましい。
【0077】
上述した第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、一対の外部リード38に図示しない電源が接続されており、図示しない電源から給電されることでランプ点灯を開始する。ランプ点灯時、接合部周辺側空隙94は、外部リード側空隙91と連通していることから大気雰囲気である。この大気雰囲気で、導電箔35は、給電による接合部36周辺での抵抗熱と、外部リード側導電体37からの輻射熱とにより加熱される。
第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71が設けられることにより、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351が大気中の酸素に直接さらされない。これにより、第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351が加熱されても、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0078】
さらに、ランプ点灯時、導電箔側空隙92は、外部リード側空隙91と連通していることから大気雰囲気である。この大気雰囲気で、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分は、電極31,32間の放電熱が伝熱されて加熱される。特に、電極31,32に近いので、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分のうちで、封止管22と封止用絶縁体5との間に密着された封止部分側(図4の導電箔35における紙面下方側)が放電熱の伝熱を受けやすくなる。第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分に酸化保護膜71を設けたことにより、導電箔側空隙92中の大気中の酸素に直接さらされないので、放電熱の伝熱を受けても、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分の酸化を防止することができる。
【0079】
また、第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、導電箔35における導電箔側空隙92に取り囲まれた部分に酸化保護膜71を設けたことにより、高温に加熱される環境においても導電箔35の酸化が防止されることから、従来の放電ランプ1よりも導電箔の接合部36を内部リード38側に近接することができる。これにより、第1の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35に接合された外部リード側導電体37も内部リード33側に移動することができ、従来の放電ランプ1と比して、封止管22の長手方向(図1に示す上下方向)の長さを短くすることができるので、放電ランプ1の長手方向における小型化を実現することもできる。
【0080】
酸化保護膜71と封止管22とが密接する場合において、封止管22を構成する部材が石英ガラスのとき、酸化保護膜71を構成する部材によっては、その部材の例えば金属原子又は金属イオンが石英ガラスへ拡散し、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することがある。これは、ランプ点灯時、放電熱の伝熱を受けて運動エネルギーを持った金属原子又は金属イオンが、二酸化ケイ素からなるその網目構造を乗り越え拡散する際に、その金属原子半径又は金属イオン半径の小さいものの方がより容易に網目構造を乗り越えてしまうためと考えられる。
そこで、第1の実施例に係る放電ランプ1は、酸化保護膜71をルビジウム・モリブデン複酸化物で構成することにより、以下の理由から、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することを防止できる。
ルビジウム・モリブデン複酸化物は、これを構成するルビジウムの原子半径及びイオン半径が他のアルカリ金属原子(例えば、リチウム、ナトリウム)又は金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン)に比べて充分大きいことに起因して、石英ガラスへの拡散が少ないものと考えられる。
【0081】
以上のことから、第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、内部に発光空間を有する発光管21とその両端に連接された封止管22とからなる放電容器2と、該封止管22の内部に設けた封止用絶縁体5と、該放電容器2の内部の発光管21側で対向して配置された電極31,32と、該電極31,32に電気的に接続されると共に該封止管22と該封止用絶縁体5との間に設けられた導電箔35と、接合部36を介して該導電箔35と電気的に接続されると共に封止用絶縁体5の外方に設けられると共に接合用突部371を有する外部リード側導電体37と、該外部リード側導電体37に電気的に接続された外部リード38と、からなる放電ランプ1において、少なくとも該導電箔35における該接合用突部371を含んだ該外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことを特徴とする。
【0082】
第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことにより、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351が大気中の酸素にさらされないので、ランプ点灯時に接合部周辺側空隙94が大気雰囲気になって導電箔35が加熱されても、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0083】
また、第1の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該酸化保護膜71がルビジウム・モリブデン複酸化物であることを特徴とする。
この特徴により、ルビジウムの原子半径及びイオン半径が大きいことに起因して、ルビジウムによる石英ガラスへの拡散が少ないことから、酸化保護膜71が設けられた導電箔35と封止管22との密着性を阻害することを防止できる。
【0084】
図1〜5を用いて説明した第1の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことについて述べた。
ところが、第1の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37の外方(図2の外部リード導電体37における紙面上方側)に外部リード保持用筒体6を設けたとき、導電箔35における外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜が設けることができないことがあった。
そこで、この問題を解決する手段として、第1の実施例に係る放電ランプ1に付加するように構成した第2〜9の実施例に係る放電ランプ1について、以下に順次説明する
【0085】
本発明に係る放電ランプ1の第2の実施例について、図6及び図7を用いて説明する。なお、第2の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1,図2及び図3(a)と概略相違しないため、図1,図2及び図3(a)を参照図として用いる。
【0086】
図6は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22を取り除いた分解図である。
図7(a)は図6に示した経路形成部材8のみの拡大図である。図7(b)は、図7(a)の経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた図であり、図7(a)のX方向からみたときの断面図である。
なお、図6及び図7には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0087】
図6及び図7の放電ランプ1は、経路形成部材8を設けた点で、図1〜3の放電ランプ1と相違する。
図6及び図7の放電ランプ1の説明として、図1〜3との相違点について述べる。
【0088】
第2の実施例に係る放電ランプ1は、図1に示すように、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電容器2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する外部リード38の外周に外部リード保持用筒体4を設けてあって、この外部リード保持用筒体6と給電構造を構成する外部リード側導電体37との間に経路形成部材8を設け、この給電構造を構成する導電箔35に酸化保護膜(図1には不図示、図3における符号71)を設けたことを特徴とする。
【0089】
図6は、中心軸の位置にリード用凹部(図6には不図示、図2における符号51)を設けた円柱状の封止用絶縁体5と、このリード用凹部に一端を挿入した棒状の外部リード38と、この外部リード38を中心の外部リード接合穴に挿通すると共に封止用絶縁体5の外方(図6の封止用絶縁体5における紙面上方側)に設けた円盤状の外部リード側導電体37と、外部リード38を中心の外部リード挿通口に挿通すると共に外部リード側導電体37の外方(図6の外部リード側導電体37における紙面上方側)に設けた円形箔状の経路形成部材8と、外部リード38を中心の外部リード保持用穴62に挿通すると共に外部リード側導電体37の外方(図6の経路形成部材8の紙面上方側)に設けた円筒状の外部リード保持用筒体6とを、示した図である。
【0090】
図6を用いて各部材の大小関係を説明する。
外部リード保持用筒体6は、その中心の外部リード保持用穴62に外部リード38を挿入するため、その内径L4が外部リード38の外径L3よりも大径となるように設けられる。また、外部リード保持用筒体6の外径L5は、外部リード側導電体37の外径L8より小径となるように設けられる。
経路形成部材8は、その外径L7が外部リード保持用筒体6の外径L5と同一である。また、経路形成部材8の内径L6は、外部リードの外径L3と同一である。
【0091】
経路形成部材8には、その内周から外周に亘って伸びる開口部811が形成される。経路形成部材8を箔状に形成した場合、刃物などで切り込むことで形成することができる。
経路形成部材8は、ランプ点灯時において、外部リード側導電体37による抵抗熱の伝熱と、放電熱の伝熱を考慮して、耐熱性を具備する必要がある。このため、経路形成部材8を構成する部材としては、高融点金属又は高融点金属からなる合金が用いられる。高融点金属の具体例として、モリブデン,タングステン,タンタル,ルテニウム及びレニウムが挙げられる。
【0092】
この経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在して放電ランプ1を完成させると、箔シール構造形成による加熱や、外部リード保持用筒体6と封止管22との加熱により、図7(b)に示す構成となる。
図7(b)は、図7(a)に示す経路形成部材8のX方向から見たときの断面図である。このため、図7(b)では図示しないが紙面奥方向に開口部811が続いている。
図7(b)に示すように、経路形成部材8の開口部811には、封止管22の長手方向に沿った断面において、外部リード保持用筒体6側に第1のテーパー814が設けられる。この第1のテーパー814は、経路形成部材8の肉厚が小さくなるように、経路形成部材8における外部リード保持用筒体6に当接する平坦面から外部リード側導電体37側に向かって設けられる。この経路形成部材8の第1のテーパー814と外部リード保持用筒体6との間には隙間61が設けられる。
経路形成部材8の第1のテーパー814が経路形成部材8の内周から外周にまでに伸びるように設けられていることから、隙間61も第1のテーパー814に沿って経路形成部材の内周から外周にまでに伸びるように設けられる。
【0093】
また、図7(b)に示すように、経路形成部材8の開口部811には、封止管22の長手方向に沿った断面において、外部リード側導電体37側に第2のテーパー815が設けられる。この第2のテーパー815は、経路形成部材8の肉厚が小さくなるように、経路形成部材8における外部リード側導電体37に当接する平坦面から外部リード保持用筒体6に向かって設けられる。この経路形成部材8の第2のテーパーと外部リード側導電体37との間には隙間375が設けられる。
経路形成部材8の第2のテーパー815が経路形成部材8の内周から外周にまでに伸びるように設けられていることから、隙間375も第2のテーパー815に沿って経路形成部材8の内周から外周にまでに伸びるように設けられる。
【0094】
経路形成部材8を設けなかった第1の実施例の放電ランプにおいては、少なくとも導電箔35における少なくとも外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を生成する方法として、既述のとおり、外部リード側空隙91の外方(図2の紙面上方にある外部リード側空隙91の入り口)から酸化保護膜71生成溶液として例えば硝酸ルビジウム溶液を滴下させ、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液を塗布する方法がある。このとき、酸化保護膜71生成溶液は、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間(図3(a)参照)を通ることになる。
【0095】
ところが、第1の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37の外方(図2の外部リード導電体37における紙面上方側)に外部リード保持用筒体6を設けたとき、下記の理由により、導電箔35における外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を設けることができないことがあった。
第1の実施例に係る放電ランプ1は、箔シール構造を形成するときに、加熱された導電箔35が放電ランプ1の外方(図2の導電箔35における紙面上方側)に向かって膨張される。これに伴って、導電箔35と接合された外部リード側導電体37も外部リード保持用筒体6に向かって移動され、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6が密着されることあった。箔シール構造は形成された後に冷却されるが、導電箔35は、封止された封止管22と封止用絶縁体5との間に固定されるので、膨張した導電箔35の大半は殆んど収縮することができないことがあり、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6が密着されたままになることがあった。
このように、第1の実施例に係る放電ランプ1の場合は、外部リード側導電体37の外方に外部リード保持用筒体6を設けたとき、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との密着した間に酸化保護膜71生成溶液が流入できないことがあった。
このとき、酸化保護膜71生成溶液の粘度に対して大気の粘度は低いことから、密着した外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に大気が流入してしまい、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351が大気中の酸素にさらされ、酸化して破損する問題が解決できなかった。
【0096】
このため、第2の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に開口部811を有する経路形成部材8を介在させることにより、箔シール構造を形成するときに、経路形成部材8の平坦面と外部リード保持用筒体6とが密着するが、第1のテーパー814と外部リード保持用筒体6との間に隙間61が設けられる。また、経路形成部材8の平坦面と外部リード側導電板37とも密着するが、第2のテーパー815と外部リード保持用筒体6との間に隙間375が設けられる。
【0097】
外部リード保持用筒体6を設けた場合、外部リード保持用筒体6と封止管22とを溶着する加熱工程において、加熱された外部リード保持用筒体6は軟化するだけであり、経路形成部材8の第1のテーパーに向かって僅かに突出するだけである。このため、外部リード保持用筒体6は、経路形成部材8の第1のテーパーを充填することがほとんどなく、隙間61は保持される。
仮に、加熱工程において、経路形成部材8の第1のテーパーと外部リード保持用筒体6との間の隙間61を軟化した又は溶融した外部リード保持用筒体6が充填したとしても、加熱工程後に常温にまで冷却されるので、放電ランプ1は、外部リード保持用筒体6を構成する部材の熱膨張係数と経路形成部材8を構成する部材の熱膨張係数との差により、隙間61が設けられる。
上述の理由から、経路形成部材8の開口部811の第1のテーパー部分には、隙間61が設けられる。この経路形成部材の第1のテーパーを経路形成部材の外周から内周に至るまで設けることにより、外部リードの外周から経路形成部材8の外周に伸びる隙間61が設けられる。
【0098】
経路形成部材8の内径L6が外部リード38の外径L3と同一であることから、外部リード保持用筒体6と経路形成部材8との間の隙間61は、外部リード側空隙91に連通される。さらに、経路形成部材8の外径L7が外部リード保持用筒体6の外径L5と同一であることから、外部リード保持用筒体6と経路形成部材8との間の隙間61は、図3(a)に示す導電箔側空隙92を介して、接合部周辺側空隙94に連通される。
また、外部リード側導電体37と経路形成部材8との間の隙間375も、外部リード側空隙91と連通され、導電箔側空隙92とも連通される。
【0099】
すなわち、経路形成部材8が外部リード側空隙91から外部リード側導電体37の外面に伸びる開口部811を設けると共に、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間にこの経路形成部材8を介在させることで、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とが連通される。この連通された経路9により、外部リード側空隙91から滴下された酸化保護膜71生成溶液が導電箔側空隙92に充填される。このとき、導電箔35と外部リード側導電体37との間にも接合部周辺側空隙94が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、第2の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0100】
上述のように、放電ランプ1において、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けるためには、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9を経路形成部材8に設け、この経路9が結果的に外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通すればよい。
このため、円形箔状の経路形成部材8に設ける経路9は、必ずしも第1のテーパー及び第2のテーパーの両方を具備する必要が無く、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する第1のテーパー814又は第2のテーパー815のいずれかでもかまわない。
また、経路形成部材8に設ける経路9としては、必ずしもテーパー814,815を有する開口部811である必要が無く、例えば、外部リード保持用筒体6から外部リード側導電体37側に向かった凹部や、外部リード側導電体37から外部リード保持用筒体6側へ向かった凹部を設ければ、経路形成部材8と外部リード保持用筒体6との間に隙間や、経路形成部材8と外部リード側導電体37との間に隙間が設けられ、これが経路9として機能する。
さらにまた、経路形成部材8の経路9が、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通すれば良いことから、放電ランプ1における各部材の大小関係は図6のものに限定されるものではない。例えば、外部リード保持用筒体6の外径L5が外部リード側導電体37の外径L8より大径となるとき、経路形成部材8の外径L7は、外部リード側導電体37の外径L8と同一以上であって、経路形成部材8の外周から内周に連通する開口部9を有すれば、この開口部811が外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能する。
【0101】
以上のことから、第2の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
【0102】
第2の実施例に係る放電ランプ1は、該放電ランプ1が該外部リード側導電体37の外方であって該外部リード38と該封止管22との間に外部リード保持用筒体6を設けた放電ランプ1であって、該外部リード38と外部リード保持用筒体6との間に外部リード38の長手方向に沿った外部リード側空隙91を設け、該外部リード側空隙91と該接合部36とを連通させた経路9を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第2の実施例に係る放電ランプ1は、経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0103】
さらに、第2の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該外部リード側導電体37と該外部リード保持用筒体6との間に凹部又は/及び凸部を構成する経路形成部材8を設けたことにより、該経路9を構成したことを特徴とする。
この特徴により、第2の実施例に係る放電ランプ1は、凹部又は/及び凸部に沿って経路9が形成され、この経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0104】
ここまで説明した第2の実施例に係る放電ランプ1は、図6に示すように、外部リード側導電体37が円盤状であった。次に、外部リード側導電体37が円盤状ではない場合について、第2の実施例に係る放電ランプ1の別の例として、図8及び図9を用いて説明する。なお、第2の実施例の別の例においても、放電ランプ1の断面図は図1,図4及び図5と概略相違しないため、図1,図4及び図5を参照図として用いる。また、図8に示す経路形成部材8が、図7(a)と同一であることから、図7(a)及び図7(b)も参照図として用いる。
【0105】
図8は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22を取り除いた分解図である。
図9は、外部リード側導電体37において、円盤状部分に接合用突部371を設けたときに、接合用突部371と外部リード保持用筒体6との間に隙間61が経路として機能することを示した図であり、外部リード側導電体37における円盤状部材と接合用突部371との部分を拡大した断面図である。
なお、図8及び図9には、図1,図4及び図5に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0106】
図8及び図9の放電ランプ1は、外部リード側導電体37に接合用突部371を設け、この接合用突部371と外部リード保持用筒体6との間に隙間61を設けた点で、図6及び図7の放電ランプ1と相違する。
図8及び図9の放電ランプ1の説明として、図6及び図7との相違点について述べる。
【0107】
図8は、中心軸の位置にリード用凹部(図8には不図示、図2における符号51)を設けた円柱状の封止用絶縁体5と、このリード用凹部に一端を挿入した棒状の外部リード38と、この外部リード38を中心の外部リード接合穴に挿通すると共に封止用絶縁体5の外方(図8の封止用絶縁体5における紙面上方側)に設けた円盤状の外部リード側導電体37と、この外部リード側導電体37の外周に外部リード保持用筒体6に向かって突出する接合用突部371と、外部リード38を中心の外部リード挿通口に挿通すると共に外部リード側導電体37の外方(図8の外部リード側導電体37における紙面上方側)に設けた円形箔状の経路形成部材8と、外部リード38を中心の外部リード保持用穴62に挿通すると共に外部リード側導電体37の外方(図8の経路形成部材8の紙面上方側)に設けた円筒状の外部リード保持用筒体6とを、示した図である。
【0108】
図8を用いて各部材の大小関係を説明する。
外部リード保持用筒体6は、その中心の外部リード保持用穴62に外部リード38を挿入するため、その内径L4が外部リード38の外径L3よりも大径になるように設けられる。また、外部リード保持用筒体6の外径L5は、外部リード側導電体37の外径L8より小径となると共に、外部リード側導電体37の接合用突部371の内径L9と同一となるように設けられる。
経路形成部材8は、その内径L6が外部リードの外径L3と同一である。また、経路形成部材8は、その外径L7が外部リード保持用筒体6の外径L5と同一であるので、外部リード側導電体37の接合用突部371の内径L9と同一である。
【0109】
図8及び図9に示した経路形成部材8の構成は、前述の図7(a)に示した経路形成部材8の構成と同一であることから説明を省略する。
【0110】
この経路形成部材8の開口部811が、図8に示すように、外部リード側導電体37の接合用突部371に向かって設けられた場合、外部リード側空隙91から接合用突部371を連通する隙間(図8に不図示、図7(b)における符号61,815)が設けられる。
【0111】
接合用突部371の内面における構成について、図9を用いて説明する。
図9に示すように、経路形成部材8の外面と、経路形成部材8の外面から垂直方向に伸びる接合用突部371の内面との間で、外部リード保持用筒体6の端面が屈曲される。この屈曲により、外部リード保持用筒体6と接合用突部371と経路形成部材8とで囲まれた隙間63が設けられる。この隙間63は、接合用突部371の内面に沿って(図9の紙面奥〜手前に伸びるように)設けられる。
すなわち、経路形成部材8の開口部(図8における符号811)に沿って伸びる隙間(図9における符号61,375)と、接合用突部371の内面に沿って伸びる隙間63とが連通される。
【0112】
上述のように、経路形成部材8の開口部811と接合用突部371の内面63の隙間とを介して、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とが連通される。この連通された経路9により、外部リード側空隙91から滴下された酸化保護膜71生成溶液が導電箔側空隙92に充填される。このとき、導電箔35と接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37との間にも接合部周辺側空隙94が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37に対向する面(図4には不図示、図5における符号351)に酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、第2の実施例の別の例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における接合用突部371を含んだ外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けることができる。
【0113】
このように、図8及び図9に示した放電ランプ1は、外部リード側導電体37に接合用突部371を有する場合においても、図6及び図7の放電ランプ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0114】
図6〜図9に示した第2の実施例に係る放電ランプ1は、経路形成部材8に設けた開口部811がテーパー814,815を有することで、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に経路形成部材8による凹部又は/及び凸部が介在され、この凹部又は凸部に沿った隙間61,375が設けられた。
次に、第3の実施例に係る放電ランプ1として、開口部811にテーパー814,815を設けない場合について、図10及び図11を用いて説明する。なお、第3の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1,図2及び図3(a)と概略相違しないため、図1,図2及び図3(a)を参照図として用いる。
【0115】
まず、第3の実施例に係る経路形成部材8の一つ目の例として、図10を用いて説明する。
図10(a)は、経路形成部材8のみの拡大図である。図10(b)は、図10(a)の経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた図であり、図10(a)のX方向からみたときの断面図である。
なお、図10には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0116】
図10の経路形成部材8は、その周方向に大きく開口した開口部811を設け、この開口部811にテーパーを設けなかった点で、図7の経路形成部材8と相違する。
図10の経路形成部材8の説明として、図7の経路形成部材8との相違点について述べる。
【0117】
図10(a)に示すように略円形箔状の経路形成部材8において、内周から外周に亘って開口すると共に周方向に開口した開口部811が設けられる。
この経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在して放電ランプ1を完成させると、箔シール構造形成による加熱や、外部リード保持用筒体6と封止管22との加熱により、図10(b)に示す構成となる。
図10(b)は、図10(a)に示す経路形成部材8のX方向からみたときの断面図である。このため、図10(b)では図示しないが紙面奥方向に開口部811が続いている。
【0118】
図10(b)に示すように、周方向に開口する開口部811を有する経路形成部材8の場合は、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間に経路形成部材8が介在されない部分ができ、この部分では外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37とが当接する。
経路形成部材8の開口部811の端面には、屈曲した外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37とに囲まれた隙間61が設けられる。
経路形成部材8における周方向に開口した開口部811が経路形成部材8の内周から外周にまで伸びるように設けられていることから、隙間61も開口した開口部811に沿って経路形成部材の内周から外周にまで伸びるように設けられる。
この隙間61が外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能し、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0119】
図10(b)に示すように、経路形成部材8に設けた周方向に開口した開口部811は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間で凹部として構成される。この経路形成部材8による凹部によって隙間61が形成され、この隙間61が外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通する経路9として機能する。
【0120】
以上のことから、第3の実施例の一つ目に係る放電ランプ1は、周方向に開口した開口部811を有する経路形成部材8を具備することにより、第2の実施例に係る放電ランプ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0121】
また、図10(a)に示す経路形成部材8は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体37に設けることもできる。この場合、経路形成部材8の周方向に開口した開口部811に沿って設けられる隙間61が、外部リード側空隙91と接合用突部371の内面に設けられる隙間63とを連通するように配置されることにより、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通することができる。
【0122】
続いて、第3の実施例に係る経路形成部材8の二つ目の例として、図11を用いて説明する。
図11(a)は経路形成部材8のみの拡大図である。図11(b)は、図11(a)の経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた図であり、図11(a)のX方向からみたときの断面図である。
なお、図11には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0123】
図11の経路形成部材8は、その開口部811が重なり合った一部螺旋状になった点と、この開口部811にテーパーを設けなかった点で、図7の経路形成部材8と相違する。
図11の経路形成部材8の説明として、図7の経路形成部材8との相違点について述べる。
【0124】
図11(a)に示すように略円形箔状の経路形成部材8において、内周から外周に亘って開口すると共に、この開口部811が重なり合った螺旋状態となる。
この経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在して放電ランプ1を完成させると、箔シール構造形成による加熱や、外部リード保持用筒体6と封止管22との加熱により、図11(b)に示す構成となる。
図11(b)は、図11(a)に示す経路形成部材8のX方向からみたときの断面図である。このため、図11(b)では図示しないが紙面奥方向に重なり合った開口部811が続いている。
【0125】
図11(b)に示すように、開口部811で一部重なり合った螺旋状の経路形成部材8の場合は、外部リード側導電体37側において、外部リード側導電体37と、これに当接する経路形成部材8の開口部811と、この開口部811で重なり合った経路形成部材8の部分とからなる隙間375が設けられる。
経路形成部材8における重なった部分がその内周から外周にまで伸びるように設けられることから、この隙間375も重なった部分に沿って経路形成部材8の内周から外周にまで伸びるように設けられる。
【0126】
また、外部リード保持用筒体6側において、屈曲した外部リード保持用筒体6と、これに対向する経路形成部材8の開口部811とに囲まれた隙間61が設けられる。
経路形成部材8の開口部811が内周から外周にまで伸びるように設けられることから、この隙間61も開口部811に沿って経路形成部材8の内周から外周に亘って形成される。
【0127】
これら隙間61,375が外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能し、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0128】
図11(b)に示すように、経路形成部材8に設けた開口部811で重なり合った部分は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間で凸部及び凹部として構成される。この経路形成部材8による凸部によって隙間61が形成され、凹部によって隙間375が形成され、これら隙間61,375が外部リード側空隙(図11(b)には不図示、図2における符号91)と接合部周辺側空隙(図11(b)には不図示、図3(a)における符号94)とを連通する経路9として機能する。
【0129】
以上のことから、第3の実施例の二つ目の例に係る放電ランプ1は、周方向に開口した開口部811を有する経路形成部材8を具備することにより、第2の実施例に係る放電ランプ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0130】
また、図11(a)に示す経路形成部材8は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体37に設けることもできる。この場合、経路形成部材8の周方向に開口した開口部811に沿って設けられる隙間61が、外部リード側空隙91と接合用突部371の内面に設けられる隙間63とを連通するように配置されることにより、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通することができる。
【0131】
このように、図10及び図11を用いて第3の実施例に係る放電ランプ1を説明したように、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に、その内周から外周に亘って伸びる凹部又は/凸部を有する経路形成部材8を介在させれば、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通する経路9を設けることができる。
【0132】
このため、第2の実施例及び第3の実施例に放電ランプ1に示した経路形成部材8は、開口部811を経路形成部材の内周から外周にまで伸びるように設けたものであったが、このような開口部811とは異なる例として第4の実施例を説明する。
本発明に係る放電ランプ1の第4の実施例について、図12〜15を用いて説明する。なお、第4の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1と概略相違しないため、図1を参照図として用いる。
【0133】
図12(a)は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22と外部リード保持用筒体6とを取り除いた分解図である。
図12(b)は、図12(a)の外方(図12(a)の路形成部材8における紙面上方)からみた図であり、経路形成部材8の外径と外部リード側導電体37の外径との大小関係をみた図である。
図13(a)は、図12(a)における放電ランプ1の封止用絶縁体5の中心軸に沿った断面図である。図13(b)は、図13(a)において、経路形成部材8の外方(紙面上方側)から外部リード保持用筒体6を外部リードに挿入したときの図である。
図14は、図13(b)において放電ランプ1を完成させたときの図であり、図1の放電ランプ1において一方の封止管22(図1の紙面上方側の封止管22)側の拡大断面図である。
図15は、図14における放電ランプ1の点線の丸で囲った部分の拡大図である。
なお、図12〜15には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0134】
図12〜15の放電ランプ1は、経路形成部材8が外部リード側導電体37の外径よりも大径であると共に開口部811が経路形成部材8の内周から外周に至るまで設けていない点で、図6及び図7の放電ランプ1と相違する。
図12〜15の放電ランプ1の説明として、図6及び図7との相違点について述べる。
【0135】
図12は、中心軸の位置にリード用凹部(図12には不図示、図13における符号51)を設けた円柱状の封止用絶縁体5と、このリード用凹部に一端を挿入した棒状の外部リード38と、この外部リード38を中心の外部リード接合穴に挿通すると共に封止用絶縁体5の外方(図12の封止用絶縁体5における紙面上方側)に設けた円盤状の外部リード側導電体37と、外部リード38を中心の外部リード挿通口に挿通すると共に外部リード側導電体37の外方(図12の外部リード側導電体37における紙面上方側)に設けた円形箔状の経路形成部材8と、を示した図である。
【0136】
図12(a)及び図12(b)に示すように、経路形成部材8の外径L10は、外部リード側導電体37の外径L8よりも大径である。
この経路形成部材8に設けた開口部811は、図12(b)に示すように、内周から外部リード側導電体37の外径を超えて伸びて設けられるが、その端部812は外部リード側導電体37の外径と経路形成部材8の外径との間に位置する。
【0137】
経路形成部材8は、図13(b)に示すように、外部リード側導電体37よりも大きな部分を折り曲げて外部リード側導電体37を被覆するように設けられる。この折曲被覆部813は、ガラス瓶に栓をする王冠のように、互いに重なり合って凹凸を形成して外部リード側導電体37の外周形状(円状)に沿って設けられる。
【0138】
外部リード側導電体37の外周を被覆するように設けた経路形成部材8の外方(図13(b)の紙面上方側)には、円筒状の外部リード保持用筒体6が設けられる。
図13(b)の放電ランプ1の外周方向には、図14に示すように、封止管22が設けられて完成される。
【0139】
このように、経路形成部材8に設けた開口部811は、少なくとも外部リード側導電体37の外周にまで伸びて設けられることから、図15に示す外部リード側導電体37と導電箔35との間(接合部36が設けられている部分)の接合部周辺空隙94と、外部リード側空隙(図15には不図示、図14の符号91)とを連通する。
これにより、放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けられる。
【0140】
さらに、放電ランプ1は、経路形成部材8の開口部811は、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とも連通する経路9となることから、導電箔35における導電箔側空隙92と対向する面にも酸化保護膜71を設けられる
【0141】
このように、経路形成部材8の二つ目の例のように、その外径が外部リード導電体37の外径よりも大径の場合、少なくとも外部リード側導電体37の外周にまで伸びて設けることにより、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71を設けることができる。
【0142】
その上で、本発明に係る放電ランプ1のように、導電箔35の外部リード側の端部(図15の導電箔35における紙面上方側)が封止管22に対向される場合、ランプ点灯時に、導電箔35が膨張して封止管22と接触することがある。このとき、封止管22に導電箔35の端部形状が鋭角な角を有していることから傷をつけて破損させてしまうことがあった。そこで、第4の実施例に係る放電ランプ1は、図15に示すように、導電箔35の端部を箔状の経路形成部材8で被覆することにより、屈曲した経路形成部材8が導電箔35と封止管22との間に介在される。これにより、第4の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35の端部が封止管22に直接接触することを防止されるので、導電箔35による封止管22の破損を防止することができる。
【0143】
以上のことから、第4の実施例に係る放電ランプ1は、具備する経路形成部材に少なくとも外部リード側導電体37の外周372にまで伸びる開口部811が設けられることにより、第2の実施例に係る放電ランプ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0144】
第2〜4の実施例に係る放電ランプ1が具備する経路形成部材8には、経路9を形成するために開口部811が設けられた。
第5の実施例に係る放電ランプ1について、開口部811を設けずに経路9を形成する例として、図16を用いて説明する。なお、第5の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1,図2及び図3(a)と概略相違しないため、図1,図2及び図3(a)を参照図として用いる。
【0145】
図16(a)は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22を取り除いた分解図である。図16(b)は、図16(a)の経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた図であり、図16(a)のX方向からみたときの断面図である。
なお、図16には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0146】
図16の放電ランプ1は、具備する経路形成部材8に開口部を設けずに、皺を寄せて一部重ね合わせた点で、図6及び図7の放電ランプ1と相違する。
図16の放電ランプ1の説明として、図6及び図7の放電ランプとの相違点について述べる。
【0147】
図16(a)に示すように略円形箔状の経路形成部材8において、内周から外周に亘って連続するように皺を寄せた皺寄部816が設けられる。
この経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在して放電ランプ1を完成させると、図16(b)に示す構成となる。
図16(b)は、図16(a)に示す経路形成部材8のX方向から見たときの断面図である。このため、図16(b)では図示しないが紙面奥方向に皺寄部816が続いている。
【0148】
図16(b)に示すように、皺を寄せた略円形箔状の経路形成部材8には、三層に重なった皺寄部816が形成される。この経路形成部材8の皺寄部816と外部リード側導電体37との間に隙間375が設けられる。
この経路形成部材8における皺寄部816がその内周から外周にまで伸びるように連続して設けられることから、この隙間375も皺寄部816に沿って経路形成部材8の内周から外周にまで伸びるように設けられる。
【0149】
また、外部リード保持用筒体6側において、経路形成部材8の皺寄部816に向かって屈曲した外部リード保持用筒体6と、これに対向する経路形成部材8の皺寄部816とに囲まれた隙間61が設けられる。
この経路形成部材8における皺寄部816がその内周から外周にまで伸びるように連続して設けられることから、この隙間61も皺寄部816に沿って経路形成部材8の内周から外周にまで伸びるように設けられる。
【0150】
これら隙間61,375が外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能し、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0151】
図16(b)に示すように、経路形成部材8に設けた皺寄部816で重なり合った部分は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間で凸部及び凹部として構成される。この経路形成部材8による凸部によって隙間61が形成され、凹部によって隙間375が形成され、これら隙間61,675が外部リード側空隙(図16(b)には不図示、図2における符号91)と接合部周辺側空隙(図16(b)には不図示、図3(a)における符号94)とを連通する経路9として機能する。
【0152】
以上のことから、第5の実施例に係る放電ランプ1は、内周から外周に連続的に皺寄部816を設けた経路形成部材8を具備することにより、第2の実施例に係る放電ランプ1と同様の作用・効果を得ることができる。
【0153】
また、図16(b)に示す経路形成部材8は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体37に設けることもできる。この場合、経路形成部材8の皺寄部816に沿って設けられる隙間61,675が、外部リード側空隙91と接合用突部371の内面に設けられる隙間63とを連通するように配置されることにより、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通することができる。
【0154】
このように、第5の実施例に係る放電ランプ1は、皺寄部816に沿って形成される隙間61,375が、外部リード側空隙(図16(b)には不図示、図2における符号91)と接合部周辺側空隙(図16(b)には不図示、図3(a)における符号94)とを連通する経路9として機能すればよく、図16に示すように、経路形成部材8の内周から外周に亘って一様な重なりを構成した皺寄部816を設けなくてもかまわない。例えば、円形箔状の経路形成部材8を多数の皺を寄せて、その皺による皺寄部816が構成する凸部や凹部に沿った隙間61,375が互いに連通し、結果的に、外部リード側空隙(図2における符号9)と接合部周辺側空隙(図3(a)における符号94)とが連通された経路9を形成したものであってもかまわない。
【0155】
本発明に係る放電ランプ1の第6の実施例について、図17を用いて説明する。なお、第6の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1〜3と概略相違しないため、図1〜3を参照図として用いる。また、図17(a)の経路形成部材8を配置する位置が、図6に示した経路形成部材8と同一であることから、図6も参照図として用いる。
【0156】
図17(a)は図6に示した経路形成部材8のみの拡大図である。図17(b)は、図17(a)の一部を拡大した図である。図17(c)は、図17(b)の断面図である。図17(d)は、図17(c)を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた図である。
なお、図17には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0157】
図17(a)の経路形成部材8は、複数の線状部材からなる網状構造で構成した点で、図7(a)に示した経路形成部材8と相違する。
図17(a)の経路形成部材8を具備した第6の実施例に係る放電ランプ1の説明として、図7の経路形成部材8を具備した放電ランプ1との相違点について述べる。
【0158】
第6の実施例に係る放電ランプ1は、図1に示すように、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電ランプ2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する外部リード38の外周に外部リード保持用筒体6を設けてあって、この外部リード保持用筒体6と給電構造を構成する外部リード側導電体37との間に経路形成部材8を設け、この給電構造を構成する導電箔35に酸化保護膜(図1には不図示、図3における符号71)を設けたことを特徴とする。
特に、第6の実施例に係る放電ランプ1は、具備する経路形成部材8を、複数の線状部材からなる網状構造で構成したことを特徴とする。
【0159】
第6の実施例における放電ランプ1は、図6の構成及び各部材の大小関係が同一であることから説明を省略する。
図6に示した経路形成部材8の詳細は、図17(a)〜図17(c)に示す経路形成部材8になる。
【0160】
図17(a)に示す経路形成部材8は、図17(b)及び図17(c)に示すように、複数の線状部材を交互に重ねることを繰り返すことで、編みこんだ網状構造を構成する。
この網状構造は、図17(c)に示すように、線状部材が紙面上下方向に屈曲を繰り返し、屈曲した位置で他の線状部材が重なり合うように構成される。
【0161】
経路形成部材8は、ランプ点灯時において、外部リード側導電体37による抵抗熱の伝熱と、放電熱の伝熱を考慮して、耐熱性を具備する必要がある。このため、経路形成部材8を構成する線状部材としては、高融点金属又は高融点金属からなる合金が用いられる。高融点金属の具体例としては、モリブデン,タングステン,タンタル,ルテニウム及びレニウムが挙げられる。
【0162】
この網状構造からなる経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在して放電ランプ1を完成させると、箔シール構造形成による加熱や、外部リード保持用筒体6と封止管22との加熱により、図17(d)に示す構成となる。
図17(b)及び図17(c)に示すように、網状構造からなる経路形成部材8は、網状構造を構成する線状部材が二重に重なっている山部分と、線状部材が重なっていない谷部分とにより構成される。この谷部分と外部リード保持用筒体6との間に隙間61が設けられる。また、網状構造からなる経路形成部材8の谷部分には、外部リード側導電体37との間に隙間375が設けられる。
【0163】
これら隙間61、375は、図17(b)に示すように、異なる線状部材に囲まれた網目821に連通している。また、網状構造を有する経路形成部材8は、その内周から外周に至るまで網状構造で構成される。
これらのため、隙間61,375が外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能し、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0164】
上述のように、放電ランプ1において、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面に酸化保護膜71を設けるためには、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9を経路形成部材8に設け、この経路9が結果的に外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通すればよい。
このため、必ずしも経路形成部材8の網状構造は二重構造に限定されるものではなく、網状構造を構成した結果、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体822との間に凹凸822,823が設けられればよい。この場合、網状構造を有する経路形成部材8の凸部822には、外部リード保持用筒体6や外部リード側導電体37が当接する。また、網状構造を有する経路形成部材8の凹部823には、外部リード保持用筒体6との間に隙間61が設けられ、外部リード側導電体37との間にも隙間375が設けられ、これが経路9として機能する。
【0165】
第6の実施例における放電ランプ1の網状構造で構成した経路形成部材8は、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通する経路9を設けることができる点で、第2の実施例に係る放電ランプ1の開口部811を有する経路形成部材8と同一である。
【0166】
ところが、第2の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とが経路形成部材8を介して密着した場合、下記の理由により、外部リード保持用筒体6や、これを保持する封止管22を破損することがあった。
第2の実施例に係る放電ランプ1は、ランプ点灯時、給電による抵抗熱や、放電による伝熱により、導電箔35が加熱され、導電箔側空隙92に位置する導電箔35の部分が膨張し、この導電箔35に接合された外部リード側導電体37が外部リード保持用筒体6に向かって移動され、外部リード保持用筒体6を押圧することがある。さらに、外部リード側導電体37自体も、給電による抵抗熱や、放電による伝熱により膨張し、外部リード保持用筒体6を押圧する。
外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在された円形箔状の経路形成部材8は、外部リード側導電体37からの伝熱により膨張される。通常、円形箔状の経路形成部材8は、加熱・膨張するとき、その周方向に向かって膨張する。しかしながら、第2の実施例における経路形成部材8は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との密着した間に位置することから、その膨張を周方向に向かって行なうことができず、外部リード保持用筒体6や外部リード側導電体37に向かって押圧する。
このように第2の実施例に係る放電ランプ1は、ランプ点灯時、外部リード保持用筒体6へ押圧がかかることにより、これが外部リード保持用筒体6にとっての応力となる。外部リード保持用筒体6はガラス部材により構成されることにより、この応力によって破損する問題があった。
【0167】
第6の実施例に係る放電ランプ1は、図17(a)〜(c)に示すように、複数の線状部材を交互に重ねることを繰り返すことで、編みこんだ網状構造を有する。例えば、線状部材が二重に重ねた網状構造の場合、二重に重なった山部分(凸部)822に対して、その周辺に一重の線状部材からなる谷部分(凹部)823が構成される。
第6の実施例に係る放電ランプ1は、網状構造を有する経路形成部材8を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に具備することにより、ランプ点灯時において、経路形成部材8の山部分822に外部リード側導電体37から外部リード保持用筒体6へ向かう押圧がかかる。このとき、谷部分823は山部分822に対して線状部材の重なりが少ないので、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とに挟まれない空隙が存在する。また、網状構造からなる網目821には、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とからの押圧がかからない。
このため、ランプ点灯時、経路形成部材8を構成する網状構造における山部分822にかかった押圧により、山部分822を構成する線状部材は膨張するが、その膨張量は谷部分823や網目821へ移動し、網状構造からなる経路形成部材8の内部で許容される。すなわち、経路形成部材8は、網状構造からなることにより、弾性を具備する。
このように、第6の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に、網状構造を有する経路形成部材8を介在させることにより、ランプ点灯時における外部リード保持用筒体6への押圧を防止することができる。
【0168】
なお、図17(a)に示す経路形成部材8は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体371に設けることもできる。この場合、経路形成部材8の網状構造に沿って設けられる隙間61,375が、外部リード側空隙91と接合用突部371の内面に設けられる隙間63とを連通するように配置されることにより、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通することができる。
【0169】
以上のことから、第6の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
【0170】
第6の実施例に係る放電ランプ1は、第2の実施例に係る放電ランプ1の特徴と同様に、該放電ランプ1が該外部リード側導電体37の外方であって該外部リード38と該封止管22との間に外部リード保持用筒体6を設けた放電ランプ1であって、該外部リード38と外部リード保持用筒体6との間に外部リード38の長手方向に沿った外部リード側空隙91を設け、該外部リード側空隙91と該接合部36とを連通させた経路9を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第6の実施例に係る放電ランプ1は、経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0171】
さらに、第6の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該外部リード側導電体37と該外部リード保持用筒体6との間に凹部又は/及び凸部を構成する該経路形成部材8を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第6の実施例に係る放電ランプ1は、凹部又は/及び凸部に沿って経路9が形成され、この経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができ
【0172】
その上、第6の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該経路形成部材8を複数の線状部材からなる網状構造で構成したことを特徴とする。
この特徴により、第6の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード保持用筒体6に応力を殆んどかけないで、外部リード側導電体37からの押圧を網状構造からなる経路形成部材8で許容することで、外部リード保持用筒体6の破損を防止できる。
【0173】
本発明に係る放電ランプ1の第7の実施例について、図18を用いて説明する。なお、第7の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1,図2及び図3(a)と概略相違しないため、図1,図2及び図3(a)を参照図として用いる。
【0174】
図18(a)は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22と導電箔35を取り除いた分解図である。
図18(b)は、図18(a)に封止管(図18には不図示、図2における符号22)を設けて完成した放電ランプ1において、外部リード側導電板37の溝部374と外部リード保持用筒体6とが当接する部分の拡大断面図である。
なお、図18には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0175】
図18における放電ランプ1の経路9は、外部リード側導電体37に設けた溝部(凹部)374により構成される点で、図6における放電ランプ1の経路9とは相違する。
図17における放電ランプ1の説明として、図6との相違点について述べる。
【0176】
第7の実施例に係る放電ランプ1は、図1に示すように、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電ランプ2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する外部リード38の外周に外部リード保持用筒体6を設けてあって、この給電構造を構成する外部リード側導電体37における外部リード保持用筒体6に対向する面に溝部(凹部)374を設け、この給電構造を構成する導電箔35に酸化保護膜(図1には不図示、図3における符号71)を設けたことを特徴とする。
【0177】
図18(a)における放電ランプ1は、図6の構成及び各部材の大小関係が同一であることから説明を省略する。
【0178】
外部リード側導電体37には、その外部リード保持用筒体6に対向する面に、その内周から外周にまで伸びる溝部(凹部)374が設けられる。この外部リード側導電体37の溝部(凹部)374は、外部リード保持用筒体6に当接される平坦面に対して凹んだ直方体状の凹形状で形成される。
この外部リード側導電体37の溝部(凹部)374に対して、外部リード保持用筒体6を当接させて放電ランプ1を完成させると、箔シール構造形成による加熱や、外部リード保持用筒体6と封止管22との加熱により、図18(b)に示す構成となる。
外部リード側導電体37における直方体状の溝部(凹部)374に対して、外部リード保持用筒体6は屈曲され、これにより、外部リード側導電体37の溝部(凹部)374と外部リード保持用筒体6の屈曲部との間に隙間61が設けられる。この隙間61は、溝部(凹部)374に沿って設けられることから、外部リード側導電体37の内周から外周にまで伸びるように設けられる。
【0179】
経路形成部材8を設けなかった第1の実施例に係る放電ランプ1においては、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向した面に酸化保護膜71を生成する方法として、既述のとおり、外部リード側空隙91の外方(図2の紙面上方にある外部リード側空隙91の入り口)から酸化保護膜71生成溶液として例えば硝酸ルビジウム溶液を滴下させ、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液を塗布する方法がある。このとき、酸化保護膜71生成溶液は、外部リード保持用筒体6と外部リード側導電体37との間を通ることになる。
【0180】
ところが、第2の実施例に係る放電ランプ1の説明で述べたように、外部リード側導電体37の外方(図2の外部リード側導電体37における紙面上方側)に外部リード保持用筒体6を設けたとき、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とが密着してしまい、導電箔35における少なくとも外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を設けることができないことがあった。
【0181】
このため、第7の実施例に係る放電ランプ1の外部リード側導電体37には、外部リード保持用筒体6に対向する面であって、その内周から外周に伸びる溝部(凹部)374が設けられる。この第7の実施例に係る放電ランプ1は、箔シール構造を形成するときに、外部リード側導電体37の平坦面と外部リード保持用筒体6の平坦面が密着するが、溝部(凹部)374に向かって外部リード保持用筒体6が屈曲するが、その屈曲した面と外部リード側導電体37の溝部(凹部)374との間には隙間61が設けられる。
【0182】
外部リード保持用筒体6を設けた場合、外部リード保持用筒体6と封止管22とを溶着する加熱工程において、加熱された外部リード保持用筒体6は軟化されるだけであり、外部リード側導電体37の溝部(凹部)374に向かって僅かに屈曲するだけである。このため、外部リード保持用筒体6は、外部リード側導電体37の溝部(凹部)374を充填することがほとんどなく、隙間61は保持される。
仮に、加熱工程において、外部リード側導電体37の溝部(凹部)374と外部リード保持用筒体6との間の隙間61を軟化した又は溶融した外部リード保持用筒体6が充填しても、加熱工程後に常温にまで冷却されるので、放電ランプ1は、外部リード保持用筒体6を構成する部材の熱膨張係数と経路形成部材8を構成する部材の熱膨張係数との差により、隙間61が設けられる。
上述の理由から、外部リード側導電体37の凹部には、隙間61が設けられる。この外部リード側導電体37の溝部(凹部)374は、その内周から外周に至るまで設けられることにより、外部リード38の外周から外部リード側導電体37の外周に伸びる隙間61が設けられる。このため、外部リード側導電体37の内周側では、外部リード側空隙91に連通される。また、外部リード側導電体37の外周側では、導電箔側空隙92に連通される。
【0183】
すなわち、外部リード側導電体37において、外部リード保持用筒体6に対向する面であって、その内周から外周に伸びる溝部(凹部)374を設けることで、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とが連通される。この連通された経路9により、外部リード側空隙91から滴下された酸化保護膜71生成溶液が導電箔側空隙92に充填される。このとき、導電箔35と外部リード側導電体37との間にも空隙が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、第7の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面(図2には不図示、図3(a)における符号351)に酸化保護膜71を設けることができる。
【0184】
上述のように、放電ランプ1において、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けるためには、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9を外部リード側導電体37に設け、この経路9が結果的に外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通すればよい。
このため、外部リード側導電体37に設ける溝部(凹部)374は、直方体状であることは一例であって、三角柱状のような角柱形状であれば、その溝部(凹部)374を構成する隣接した面が角を形成する。この角には軟化した又は溶融した外部リード保持用筒体6が充填することができないので、この角の位置に隙間61が形成され、これが経路9として機能する。
また、外部リード側導電体37に設ける経路9が、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通すれば良いことから、外部リード側導電体37の径方向全体に溝部(凹部)374を設ける必要が無く、例えば、外部リード側導電体37の内周側に位置する溝部(凹部)374は、少なくとも外部リード保持用筒体6の内周の位置から設けてあれば良い。また外部リード側導電体37の外周側に位置する溝部(凹部)374は、外部リード側導電体37の外径が外部リード保持体6の外径よりも大径である場合、外部リード保持体6の外周の位置まで設けてあれば良い。このように構成すれば、外部リード側導電体37に設けた溝部(凹部)374が、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とを連通する経路9として機能する。
【0185】
さらにまた、外部リード側導電体37には、外部リード保持体6に対向する平坦な面に対して溝部(凹部)374のような段差を設ければ、経路9が形成されることから、同じく段差となるように、外部リード保持用筒体6に対向する面に対して凸部を設けても、外部リード保持用筒体6との間に隙間を設けることができる。
【0186】
なお、図18(a)に示す外部リード側導電体37に設けた溝部(凹部)374は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体37に設けることもできる。この場合、溝部(凹部)374に沿って設けられる隙間61が、外部リード側空隙91と接合用突部371の内面に設けられる隙間63とを連通するように設けられることにより、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通することができる。
【0187】
以上のことから、第7の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
【0188】
第7の実施例に係る放電ランプ1は、第2の実施例に係る放電ランプ1の特徴と同様に、該放電ランプ1が該外部リード側導電体37の外方であって該外部リード38と該封止管22との間に外部リード保持用筒体6を設けた放電ランプ1であって、該外部リード38と該外部リード保持用筒体6との間に外部リード38の長手方向に沿った外部リード側空隙91を設け、該外部リード側空隙91と該接合部36とを連通させた経路9を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第7の実施例に係る放電ランプ1は、経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0189】
さらに、第7の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該外部リード側導電体37と該外部リード保持用筒体6との間に凹部又は/及び凸部を構成する経路形成部材8を設けたことにより、該経路9を構成したことを特徴とする。
この特徴により、第7の実施例に係る放電ランプ1は、凹部又は/及び凸部に沿って経路9が形成され、この経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0190】
本発明に係る放電ランプ1の第8の実施例の放電ランプ1について、図19及び図20を用いて説明する。なお、第8の実施例においても、放電ランプ1の断面図は、図1及び図2と概略相違しないため、図1及び図2を参照図として用いる。
【0191】
図19(a)は、図2の放電ランプ1の斜視図であり、図2の放電ランプ1において封止管22を取り除いた分解図である。図19(b)は、図19(a)において外部リード38の端部から見た上面図である。図19(c)は、図19(b)の点線の丸で囲った部分の拡大図である。
図20(a)は、図19に封止管(図20(a)には不図示、図2の符号22)を設けて完成した放電ランプ1において、導電箔35を介して当接された外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とが当接する部分の拡大断面図である。図20(b)は、図2の放電ランプ1における点線の丸で囲った部分の拡大図である。
なお、図19及び図20には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0192】
図19における放電ランプ1の経路9は、導電箔35を外部リード側導電体37の外周から外部リード38の外周にまで設けたことで、その導電箔35に沿って構成した点で、図6における放電ランプ1の経路9とは相違する。
図19における放電ランプ1の説明として、図6との相違点について述べる。
【0193】
第8の実施例に係る放電ランプ1は、図1に示すように、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電ランプ2の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する外部リード38の外周に外部リード保持用筒体6を設けてあって、この給電構造を構成する導電箔35を外部リード側導電体37の外周から内周に伸びるように設け、この導電箔35の伸ばした部分を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に配置し、この給電構造を構成する導電箔35の少なくとも外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜(図1には不図示、図3における符号71)を設けたことを特徴とする。
【0194】
図19(a)における放電ランプ1は、図6の構成及び各部材の大小関係が同一であることから説明を省略する。
【0195】
この導電箔35は、封止用絶縁体5の中心軸方向にその外周面に沿って複数枚(図18における導電箔35は4枚)が互いに離隔されて設けられる。この複数枚の導電箔35は、円盤状の外部リード側導電体37の外周面と溶接などにより接合部を設けて電気的に接続される。さらに、この導電箔35は、外部リード側導電体37の外周面から折り曲げて、図18(b)に示すように、外部リード38の外周にまで伸びるように設けられる。この導電箔35において、外部リード側導電体37の外周面から外部リード38の外周にまで伸びる部分は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在される。
【0196】
経路形成部材8を設けなかった第1の実施例に係る放電ランプ1においては、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を生成する方法として、既述のとおり、外部リード側空隙91の外方(図2の紙面上方にある外部リード側空隙91の入り口)から酸化保護膜71生成溶液として例えば硝酸ルビジウム溶液を滴下させ、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液を塗布する方法がある。このとき、酸化保護膜71生成溶液は、外部リード側保持用筒体6と外部リード側導電体37との間を通ることになる。
【0197】
ところが、第2の実施例に係る放電ランプ1の説明で述べたように、外部リード側導電体37の外方(図2の外部リード側導電体37における紙面上方側)に外部リード保持用筒体6を設けたとき、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とが密着してしまい、導電箔35における少なくとも外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を設けることができないことがあった。
【0198】
このため、第8の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35を外部リード側導電体37の外周から外部リード38の外周まで伸ばし、この導電箔35を外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に介在させた。このとき、外部リード側導電体37における外部リード保持用筒体6に対向する平坦面に、図20(a)に示すように導電箔35の肉厚分の段差が設けられる。このため、外部リード側導電体37の平坦面と導電箔35の肉厚分の側面とに対向した外部リード保持用筒体6の屈曲面に囲まれた隙間61が設けられる。
【0199】
外部リード保持用筒体6を設けた場合、外部リード保持用筒体6と封止管22とを溶着する加熱工程において、加熱された外部リード保持用筒体6は軟化されるだけであり、外部リード側導電体37の平坦面と導電箔35の肉厚による側面とに向かって屈曲するだけである。このため、外部リード保持用筒体6は、外部リード側導電体37の平坦面と導電箔35の肉厚による側面との隙間61を充填することがほとんどなく、隙間61は保持される。
仮に、加熱工程において、外部リード側導電体37の平坦面と導電箔35の肉厚による側面と、これに対向する外部リード保持用筒体6との間の隙間61を、軟化した又は溶融した外部リード保持用筒体6が充填しても、加熱工程後に常温にまで冷却されるので、放電ランプ1は、外部リード保持用筒体6を構成する部材の熱膨張係数と経路形成部材8を構成する部材との差により、隙間61が設けられる。
上述の理由から、外部リード側導電体37の平坦面に導電箔35を設けることにより、導電箔35の肉厚分の側面に隙間が設けられる。このため、導電箔35が、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間であって、外部リード側導電体37の外周から外部リード38の外周にまで設けられることにより、隙間61は導電箔35における外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に位置する部分の側面に沿って設けられる。これにより、導電箔35における外部リード38側では、外部リード側空隙93と連通される。また、導電箔35における外部リード側導電体37の外周側では、導電箔側空隙92と連通される。
【0200】
すなわち、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間であって、外部リード側導電体37の外周から外部リード38の外周に伸びる導電箔35を設けることで、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とが連通される。この連通された経路9により、外部リード側空隙91から滴下された酸化保護膜71生成溶液が導電箔側空隙92に充填される。このとき、導電箔35と外部リード側導電体37との間にも接合部周辺側空隙94が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、第5の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けることができる。
【0201】
さらに、酸化保護膜71生成溶液は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間で、経路9を構成する導電箔35の肉厚分の側面にも塗布されるので、この部分にも酸化保護膜(図20(a)における符号71)が設けられる。また、酸化保護膜71生成溶液は、導電箔側空隙92にも充填されることから、導電箔35における導電箔側空隙92に対向する面にも酸化保護膜(図20(b)における符号71)が設けられる。
【0202】
上述のように、放電ランプ1において、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面に酸化保護膜71を設けるためには、外部リード側空隙91と接合部周辺側空隙94とを連通する経路9を、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に設けた導電箔35によって構成すればよい。
このため、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に設けられる導電箔35は、その端部を、外部リード38の外周まで設ける必要は無く、外部リード側空隙91を構成する外部リード保持用筒体6の内周面まで設ければ、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92を連通することができる。
【0203】
既述のように、第1の実施例に係る放電ランプ1のように、導電箔35の外部リード38側の端部(図15の導電箔35における紙面上方側)が封止管22に対向される放電ランプ1においては、ランプ点灯時に、導電箔35が膨張して封止管22と接触することがある。このとき、封止管22に導電箔35の端部形状が鋭角な角を有していることから傷をつけて破損させてしまうことがあった。
そこで、第8の実施例に係る放電ランプ1は、導電箔35を外部リード側導電体37の外周で屈曲させ、導電箔35の端部を外部リード38の外周に対向配置させたことにより、導電箔35における屈曲した部分が封止管22に対向される。導電箔35における屈曲した部分は、導電箔35の端部のように鋭角な角を有していないので、封止管22に傷をつけることを防止することができる。
【0204】
以上のことから、第8の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
【0205】
第8の実施例に係る放電ランプ1は、第2の実施例に係る放電ランプ1の特徴と同様に、該放電ランプ1が該外部リード側導電体37の外方であって該外部リード38と該封止管22との間に外部リード保持用筒体6を設けた放電ランプ1であって、該外部リード38と外部リード保持用筒体6との間に外部リード38の長手方向に沿った外部リード側空隙91を設け、該外部リード側空隙91と該接合部36とを連通させた経路9を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第8の実施例に係る放電ランプ1は、経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0206】
さらに、第8の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて、該外部リード側導電体37と該外部リード保持用筒体6との間に該外部リード側導電体37の外面から該外部リード保持用筒体6の内面に連続するように該導電箔35を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第5の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に位置する導電箔35に沿って経路9が形成され、この経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面の酸化351を防止することができる。
【0207】
本発明に係る放電ランプ1の第9の実施例について、図21及び図22を用いて説明する。なお、第9の実施例においても、放電ランプ1の断面図は図1と概略相違しないため、図1を参照図として用いる。
【0208】
図21(a)は、図1の放電ランプ1において一方の封止管22(図1の紙面上方側の封止管22)側の拡大断面図である。図21(b)は、図21(a)の放電ランプ1における点線の丸で囲った部分の拡大図である。図22(a)は、図21(a)の放電ランプ1の斜視図であり、図21(a)の放電ランプ1において封止管22を設ける前の分解図である。図22(b)は、図22(a)における外部リード側導電体37のみを示した図であり、外部リード側導電体37の貫通孔373を説明するための上面図である。
なお、図21及び図22には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0209】
図21及び図22の放電ランプ1は、外部リード38の外周面においてその長手方向に沿って伸びる溝部381を設け、外部リード側導電体37の内周面においてその中心軸方向に沿った貫通孔373を設けた点で、図1〜3の放電ランプ1と相違する。
図21及び図22の説明として、図1〜3との相違点について述べる。
【0210】
第9の実施例に係る放電ランプ1は、図1に示すように、放電容器2と、この放電容器2を封止する箔シール構造と、この封止された放電ランプ1の内部で対向配置される一対の電極31,32と、この一対の電極31,32に給電する給電構造と、からなり、この給電構造を構成する外部リード38の外周に外部リード保持用筒体6を設けてあって、この給電構造を構成する導電箔35に酸化保護膜(図1には不図示、図21(b)における符号71)を設け、この給電構造を構成する外部リード38に溝部(図1には不図示、図21(a)における符号381)を設け、この給電構造を構成する外部リード側導電体37に貫通孔(図1には不図示、図21(a)における符号373)を設けたことを特徴とする。
【0211】
図22(a)における放電ランプ1は、図6の構成及び各部材の大小関係が同一であることから説明を省略する。
【0212】
給電構造を構成する外部リード側導電体37と、外部リード保持用筒体6との間には、これらの溶着を防止するため、例えばモリブデンからなる円形箔状の溶着防止体が設けられる。
溶着防止体を構成する部材としては、耐熱性を具備する必要があることから、高融点金属又は高融点金属からなる合金が用いられる。高融点金属としては、例えばモリブデン,タングステン,タンタル,ルテニウム及びレニウムが挙げられる。
また、溶着防止体が外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6との間に位置することから、ランプ点灯時に放電による加熱を受けて膨張しても、外部リード保持用筒体6を押圧しないことを求められることから、箔状であることが好ましい。このため、上述の高融点金属の中で厚みを薄くなるように加工しやすいモリブデンが好適に用いられる。
【0213】
また、給電構造を構成する外部リード側導電体37と、箔シール構造を構成する封止用絶縁体5との間には、外部リード38の外周から径方向に伸びる封止用絶縁体側空隙93が設けられる。
【0214】
図21(a)及び図22(a)に示すように、外部リード38には、その外周面において、半円柱状の溝部381がその長手方向に沿って伸びるように設けられる。
また、図21(b)に示すように、外部リード側導電体37には、その中心軸に外部リード38を挿通するための円柱状のリード用穴部376が設けられる。また、外部リード側導電体37の内周面には、そのリード用穴部376の外径(すなわち外部リード側導電体37の内径L6)よりも小さな外径の貫通孔373が設けられる(図21(b)参照)。
【0215】
この外部リード38における溝部381と外部リード側導電体37における貫通孔373は、図21(a)に示すように、外部リード側導電体37と封止用絶縁体5との間の封止用絶縁体側空隙93と外部リード側空隙91とを連通する経路9となる。
【0216】
経路形成部材8を設けなかった第1の実施例に係る放電ランプ1においては、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体に対向した面351に酸化保護膜を生成する方法として、既述のとおり、外部リード側空隙91の外方(図2の紙面上方にある外部リード側空隙91の入り口)から酸化保護膜71生成溶液として例えば硝酸ルビジウム溶液を滴下させ、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液を塗布する方法がある。このとき、酸化保護膜71生成溶液は、外部リード側保持用筒体6と外部居リード側導電体37との間を通ることになる。
【0217】
ところが、第2の実施例に係る放電ランプ1の説明で述べたように、外部リード側導電体37の外方(図2の外部リード側導電体37における紙面上方側)に外部リード保持用筒体6を設けたとき、外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6とが密着してしまい、導電箔35における少なくとも外部リード側導電体37に対向した面351に酸化保護膜71を設けることができないことがあった。
【0218】
外部リード側導電体37と外部リード保持用筒体6が密着するとき、膨張する導電箔35に接合された外部リード側導電体37が外部リード保持用筒体6に向かって移動する。これに伴って、外部リード側導電体37と封止用絶縁体5との間には封止用絶縁体側空隙93が形成される。
【0219】
このため、第9の実施例に係る放電ランプ1は、この封止用絶縁体側空隙93を利用して、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたものである。
【0220】
具体的には、外部リード側空隙91と封止用絶縁体側空隙93とを連通するために、外部リード38の外周面において外部リード側導電体37と対向する面に溝部381を設け、外部リード側導電体37の内周面において外部リード38と対向する面に貫通孔373を設けた。
これにより、外部リード側空隙91の外方から滴下された酸化保護膜71生成溶液は、外部リード38の溝部381や外部リード側導電体37の貫通孔373を通って、封止用絶縁体側空隙93を介して導電箔側空隙92を充填する。このとき、導電箔35と外部リード側導電体37との間にも接合部周辺側空隙94が存在し、この接合部周辺側空隙94と導電箔側空隙92とが連通していることから、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布されるので、第9の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けることができる。
【0221】
さらに、酸化保護膜71生成溶液は、導電箔側空隙92にも充填されることから、導電箔35における導電箔側空隙92に対向する面にも酸化保護膜71が設けられる。
【0222】
上述のように、放電ランプ1において、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37と対向する面351に酸化保護膜71を設けるためには、外部リード側空隙91と封止用絶縁体側空隙93とを連通する経路9を設ければ良い。
このため、この経路9としては、外部リード38における外部リード側導電体37に対向した面に設けた溝部381と、外部リード側導電体37における外部リード38に対向した面に設けた貫通孔373とのいずれかを設ければよい。
また、外部リード38に設けた溝部381は、図22(a)に示すように、外部リード38の長手方向に沿って設けたが、外部リード側導電体側空隙91と封止用絶縁体側空隙93とを連通するためには、外部リード38の長手方向において、少なくとも外部リード側導電体37に対向する面に溝部381を設ければよい。
【0223】
なお、図22(a)に示した溶着防止体を設けた場合において、この溶着防止体が外部リード側空隙91と封止用絶縁体側空隙93とを連通することを妨げるときは、外部リード38の長手方向において、少なくとも溶着防止体に対向する面に溝部381を設けると好ましい。
【0224】
また、第9の実施例で示した外部リード38の溝部381や外部リード側導電体37の貫通孔373は、図8に示すような接合用突部371を有する外部リード側導電体37に設けることもできる。
【0225】
以上のことから、第9の実施例に係る放電ランプ1は、その構成と効果を以下のようにまとめられる。
【0226】
第9の実施例に係る放電ランプ1は、該放電ランプ1が該外部リード側導電体37の外方であって該外部リード38と該封止管22との間に外部リード保持用筒体6を設けた放電ランプ1であって、該外部リード38と該外部リード保持用筒体6との間に外部リード38の長手方向に沿った外部リード側空隙91を設け、該外部リード側空隙91と該接合部36とを連通させた経路9を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第9の実施例に係る放電ランプ1は、経路9を介して少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0227】
さらに、第9の実施例に係る放電ランプ1は、上記特徴に加えて該外部リード側導電体37と該封止用絶縁体5との間に封止用絶縁体側空隙93を設け、該外部リード側空隙91と該封止用絶縁体側空隙93とを連通するように、該外部リード側導電体37に貫通孔373又は/及び該外部リード38に溝部381を設け、該封止用絶縁体側空隙93と該貫通孔373又は/及び該溝部381とが該経路9を構成することを特徴とする。
この特徴により、第9の実施例に係る放電ランプ1は、外部リード側導電体37に設けた貫通孔373又は/及び外部リードに設けた溝部381と封止用絶縁体側空隙93とを介して、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面に酸化保護膜71生成溶液が塗布され、導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351の酸化を防止することができる。
【0228】
図1〜5を用いて説明した第1の実施例に係る放電ランプ1は、少なくとも導電箔35における外部リード側導電体37に対向する面351に酸化保護膜71を設けたことについて述べた。また、第2〜9の実施例に係る放電ランプ1は、第1の実施例に係る放電ランプ1の構成に、外部リード側空隙91と接合部36とを連通させた経路9を設けた構成を付加して示した。
続いて、導電箔側空隙92への大気流入を制限する手段として、第1〜9の実施例に係る放電ランプ1に付加するように構成した第10の実施例に係る放電ランプ1について、以下のように示す。
【0229】
本発明に係る放電ランプ1の第10の実施例について、図23を用いて説明する。
【0230】
図23は、放電ランプ1において一方の封止管22側の拡大断面図である。
なお、図22には、図1〜3に示したものと同じものに同一の符号が付されている。
【0231】
図23の放電ランプ1は、その外方(図23の紙面上方側)における外部リード側空隙91の入り口に低融点ガラスを設けた点で、図1〜3の放電ランプと相違する。
図23の説明として、図1〜3との相違点について述べる。
【0232】
図23に示すように、外部リード38と外部リード保持用筒体6との間には、外部リード側空隙91が設けられる。この外部リード側空隙91に蓋をするように、外部リード保持用筒体6の外方(図23の外部リード保持用筒体6の紙面上方側)で、外部リード保持用筒体6と外部リード38との間に低融点ガラス72が充填される。
【0233】
この低融点ガラス72は、酸化ホウ素と酸化ビスマスを主成分とし、この主成分の合計重量が全体の重量の70%以上である。また、示差熱分析法(Differential thermal analysis:DTA)におけるDTA転移温度は370〜550℃の範囲にある。なお、低融点ガラス72のDTA転移温度は酸化ホウ素と酸化ビスマスの組成比によって異なり、通常、DTA転移温度が高くなるに伴い融点も高くなる。
【0234】
第1〜9の実施例における放電ランプ1は、外部リード側空隙91と導電箔側空隙92とが連通していることから、ランプ点灯時においても、外部リード保持用筒体の外方から外部リード側空隙91に大気が流入するので、導電箔35における酸化保護膜71が設けられていない部分があれば、その部分が大気にさらされている。
このため、図23に示すように外部リード側空隙91に蓋をするように低融点ガラス72を設けたことにより、導電箔側空隙92への大気流入が制限され、導電箔35による酸化を抑制することができる。
【0235】
なお、図23に示す低融点ガラス72は、第1〜9の実施例に係る放電ランプ2のいずれにおいても適用することができる。
【0236】
第10の実施例の放電ランプ2は、上記第1〜9の実施例に係るいずれの放電ランプ2に付加することにより、各実施例の特徴に加えて、該外部リード38と該外部リード保持用筒体6との間に低融点ガラス72を設けたことを特徴とする。
この特徴により、第10の実施例の放電ランプ1は、導電箔35の外方にある空隙への大気流入を抑制し、導電箔35における酸化保護膜71の生成されていない部分の酸化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】本発明に係る放電ランプの第1の実施例の説明図である。
【図2】本発明に係る放電ランプの第1の実施例の説明図である。
【図3】本発明に係る放電ランプの第1の実施例の説明図である。
【図4】本発明に係る放電ランプの第1の実施例の説明図である。
【図5】本発明に係る放電ランプの第1の実施例の説明図である。
【図6】本発明に係る放電ランプの第2の実施例の説明図である。
【図7】本発明に係る放電ランプの第2の実施例の説明図である。
【図8】本発明に係る放電ランプの第2の実施例の説明図である。
【図9】本発明に係る放電ランプの第2の実施例の説明図である。
【図10】本発明に係る放電ランプの第3の実施例の説明図である。
【図11】本発明に係る放電ランプの第3の実施例の説明図である。
【図12】本発明に係る放電ランプの第4の実施例の説明図である。
【図13】本発明に係る放電ランプの第4の実施例の説明図である。
【図14】本発明に係る放電ランプの第4の実施例の説明図である。
【図15】本発明に係る放電ランプの第4の実施例の説明図である。
【図16】本発明に係る放電ランプの第5の実施例の説明図である。
【図17】本発明に係る放電ランプの第6の実施例の説明図である。
【図18】本発明に係る放電ランプの第7の実施例の説明図である。
【図19】本発明に係る放電ランプの第8の実施例の説明図である。
【図20】本発明に係る放電ランプの第8の実施例の説明図である。
【図21】本発明に係る放電ランプの第9の実施例の説明図である。
【図22】本発明に係る放電ランプの第9の実施例の説明図である。
【図23】本発明に係る放電ランプの第10の実施例の説明図である。
【図24】従来に係る放電ランプの説明図である。
【図25】従来に係る放電ランプの説明図である。
【図26】従来に係る放電ランプの説明図である。
【符号の説明】
【0238】
1 放電ランプ
2 放電容器
21 発光管
22 封止管
31 陽極
32 陰極
33 内部リード
34 内部リード側導電体
35 導電箔
351 導電箔における導電体に対向する面
36 接合部
37 外部リード側導電体
371 接合用突部
372 外周面
373 貫通孔
374 溝部
375 隙間
376 リード用穴部
38 外部リード
381 導電体側溝部
382 外周面
4 内部リード保持用筒体
5 封止用絶縁体
51 リード用凹部
6 外部リード保持用筒体
61 隙間
62 内周面(外部リード保持用穴)
63 隙間
71 酸化保護膜
72 低融点ガラス
8 経路形成部材
81 箔
811 開口部
812 開口部の端部
813 折曲被覆部
814 第1のテーパー
815 第2のテーパー
816 皺寄部
82 網状構造
821 網目
822 山部分(凸部)
823 谷部分(凹部)
9 経路
91 外部リード側空隙
92 導電箔側空隙
93 封止用絶縁体側空隙

L1 円盤状の導電体の軸方向における導電体に対向する領域
L2 円盤状の導電体の周方向における導電体に対向する領域
L3 外部リードの外径
L4 外部リード保持用筒体の内径
L5 外部リード保持用筒体の外径
L6 導電箔の内径
L7 導電箔の外径
L8 外部リード側導電体の外径
L9 外部リード側導電体の接合用突部の内径
L10 導電箔の外径

A 大気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に発光空間を有する発光管とその両端に連接された封止管とからなる放電容器と、
該封止管の内部に設けた封止用絶縁体と、
該放電容器の内部の発光管側で対向して配置された電極と、
該電極に電気的に接続されると共に該封止管と該封止用絶縁体との間に設けられた導電箔と、
接合部を介して該導電箔と電気的に接続されると共に封止用絶縁体の外方に設けられた導電体と、
該導電体に電気的に接続された外部リードと、
からなる放電ランプにおいて、
少なくとも該導電箔における該導電体に対向する面に酸化保護膜を設けた
ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
該酸化保護膜がルビジウム・モリブデン複酸化物である
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
該放電ランプが該導電体の外方であって該外部リードと該封止管との間に外部リード保持用筒体を設けた放電ランプであって、
該外部リードと該外部リード保持用筒体との間に外部リードの長手方向に沿った外部リード側空隙を設け、
該外部リード側空隙と該接合部とを連通させた経路を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
該導電体と該外部リード保持用筒体との間に凹部又は/及び凸部を構成する経路形成部材を設けたことにより、該経路を構成した
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
該経路形成部材に外部リード保持用筒体の内面から該導電体の外面にまで連続する開口部を設けた
ことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ。
【請求項6】
該経路形成部材に外部リード保持用筒体の内面から該導電体の外面にまで連続する皺寄部を設けた
ことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ。
【請求項7】
該経路形成部材を複数の線状部材からなる網状構造で構成した
ことを特徴とする請求項4に記載の放電ランプ。
【請求項8】
該経路を該導電体に凹部又は/及び凸部を設けることで構成した
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項9】
該導電体と該外部リード保持用筒体との間に該導電体の外面から該外部リード保持用筒体の内面に連続するように該導電箔を設けた
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項10】
該導電体と該封止用絶縁体との間に封止用絶縁体側空隙を設け、
該外部リード側空隙と該封止用絶縁体側空隙とを連通するように、該導電体に貫通孔又は/及び該外部リードに溝部を設け、
該封止用絶縁体側空隙と該貫通孔又は/及び該溝部とが該経路を構成する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の放電ランプ。
【請求項11】
該外部リードと該外部リード保持用筒体との間に低融点ガラスを設けた
ことを特徴とする請求項3に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−218069(P2009−218069A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59929(P2008−59929)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】