説明

放電ランプ

【課題】簡単な構成で、任意の量の紫外線を安定して放射でき、目的に適合する量の紫外線を安定して放射できる放電ランプを提供する。
【解決手段】冷陰極放電ランプ1は、紫外線と可視光を透過するガラス管10と、ガラス管10の内部に封入された紫外線放射ガスと、ガラス管10の内部及び/又は外部に配設され、ガラス管10内に放電を起こす電極20(20a、20b)と、ガラス管10の一部分に形成され、紫外線の照射を受けて可視光を発光する蛍光体層30(30a、30b、30c)と、を備える。ガラス管10内で発生した紫外線の一部は蛍光体層30に吸収される。蛍光体層30の形成領域は、目的に応じた量の紫外線を放射するように、調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、波長約185nmではオゾン生成作用、波長約254nmでは殺菌作用、波長約360nmでは光触媒活性化作用を示す。このように、波長に応じて異なる作用を有する紫外線は、用途に合わせて広く利用されている。
【0003】
一般に、紫外線の発生(放射)には、低圧放電ランプが使用される。低圧放電ランプは、透明管と、該透明管の両端部に配置された一対の電極と、透明管内に封入された水銀を含む希ガスと、から構成され、一対の電極間に放電を起こすことにより、水銀原子を励起して、紫外線を放射する。
【0004】
低圧放電ランプでは、放電によって、電極がスパッタされてしまう。スパッタされた電極物質はガラス管内に堆積し、ガラス管の端部を黒化し、さらに、封入されている水銀と結合して水銀密度を低下させ、放電を不安定にしてしまう。
【0005】
この問題を解決するため、特許文献1には、ガラス管内面のスパッタ物質が堆積する領域に、電極と同一材料の金属層を形成する技術が開示されている。
【0006】
また、放電ランプは、使用目的に応じた強度の紫外線を照射する必要がある。従来は、紫外線の放射量を、放電ランプの長さを調整することにより適量に設定していた。しかし、この調整方法では、取付け機器の寸法上の制約に柔軟に対応できない。この問題を解決するため、特許文献2には、放電管を、紫外線を透過する透過部と紫外線を透過しない非透過部とから構成し、透過部分と非透過部の長さを調整することで、全体の長さを一定長に維持しつつ、紫外線の放射量を調整する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−70775号公報
【特許文献2】特開平7−330308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された放電管は、放電管内に金属を配置するため、構造が複雑になると共に紫外線と可視光のいずれの照射に寄与できない無駄な領域が形成されてしまう。また、特許文献2に開示されている放電管は、放電管の製造が複雑で、信頼性が低く、放電を長期間安定して維持することが困難である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、任意の量の紫外線を安定して放射可能な放電ランプを提供することを目的とする。また、本発明は、目的に適合する量の紫外線を安定して放射可能な放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る放電ランプは、
紫外線と可視光を透過する管と、
前記管の内部に封入された紫外線放射ガスと、
前記管の内部及び/又は外部に配設され、前記管内に放電を起こす複数の電極と、
前記管の一部分に形成され、前記紫外線の照射を受けて可視光を発光する蛍光体層と、を備え、
紫外線と可視光とを照射する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る放電ランプによれば、簡単な構成で、任意の量の紫外線を安定して放射することができる。また、本発明に係る低圧放電ランプによれば、目的に適合する量の紫外線を安定して放射可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る冷陰極放電ランプを長さ方向に沿って切った場合の概略断面図である。
【図2】第1実施形態に係る冷陰極放電ランプで使用するホウ珪酸ガラスの透過率曲線を表したグラフである。
【図3】第2実施形態に係る冷陰極放電ランプを長さ方向に沿って切った場合の概略断面図である。
【図4】第2実施形態に係る冷陰極放電ランプで使用する、RGB(Red-Green-Blue color model)3色混合蛍光体Y:Eu、LaPO:Ce,Tb、BaMgAl1627:Euの膜厚と波長253.7nm紫外強度比の関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態に係る放電ランプを、冷陰極放電ランプを例に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態に係る放電ランプは、オゾン発生用の冷陰極放電ランプ1であり、図1に示すように、ガラス管10と、電極20と、リード線21と、蛍光体層30と、紫外線放射ガス40と、を備える。
【0015】
ガラス管10は、紫外線透過性のホウ珪酸ガラスから形成され、端部が閉じた円筒状に形成されている。このホウ珪酸ガラスは、SiO、B、Al、NaO、KO、LiO、BaO、CaOを含む。
【0016】
SiOは、ガラスの網目を形成する成分であり、67.5重量%未満では、ガラスの化学的耐久性が低下し、逆に、67.5重量%より割合が高くなればなるほど、ガラスの溶融性が低くなり、加工性が低下する。このような理由から、その含有比率は、67.5〜80重量%であることが好ましい。本実施形態では、ホウ珪酸ガラスは、67.5重量%のSiOを含有し、十分な加工性を保ちつつ、化学的耐久性を担保している。
【0017】
は、ガラスの溶融性を向上し、粘度を調整するために用いられる成分であり、10重量%未満では、溶融性が低下し、また、後述するリード線21の材料であるタングステン等との封着性も低下する。一方、25重量%を超えると、ガラスの化学的耐久性が低下する。このような理由から、その含有比率は、10〜25重量%であることが好ましい。本実施形態では、ホウ珪酸ガラスは、20.5重量%のBを含有している。
【0018】
Alは、ガラスの化学的耐久性を良好にするために用いられる成分であり、1重量%未満では、化学的耐久性が低下し、10重量%を超えると、溶融性が悪化し、透過性が悪化する。このような理由から、その含有比率は、1〜10重量%であることが好ましい。本実施形態では、ホウ珪酸ガラスは、5重量%のAlを含有している。
【0019】
NaO、KO、及びLiOは、ガラスの溶解性を良好にするとともに、膨張係数を調整するために用いられる成分である。これらの含有量の合計が、3重量%未満の場合、膨張係数が大幅に低下し、後述するリード線21の材料であるタングステン等との封着性が悪化する。10重量%を超える場合は、化学的耐久性が悪化する。このような理由から、これらの含有比率は、3〜10重量%であることが好ましい。本実施形態では、ホウ珪酸ガラスは、2.5重量%のNaOと、2重量%のKOと、1重量%のLiOとを含有している。
【0020】
BaO、CaOは、溶融性や透過性を良好にするために用いられる成分である。上述したBaO及びCaO以外の物質を含有することで、適切に保たれる化学的耐久性等を損なわない割合で、BaO、CaOを適宜含有することができる。本実施形態では、ホウ珪酸ガラスは、1重量%のBaOと、0.5重量%のCaOとを含有している。
【0021】
これらの物質によって構成されたホウ珪酸ガラスは、図2のグラフに示すように、オゾン生成機能を有する波長184.9nmの紫外線の約40%を透過する。
【0022】
図1に示す冷陰極放電ランプ1の一対の電極20(20a、20b)は、ガラス管10の内部に、所定間隔をおいて、互いに対向して配設されている。電極20は、それぞれ、モリブデン、ニッケル等の金属、それらを主成分とする合金、等から形成され、一端が開口し他端が閉口したカップ状に形成されている。また、電極20の閉口部には、リード線21が接続されている。
【0023】
リード線21(21a、21b)は、ガラス管10の両端部に、管壁を貫通して設けられている。リード線21は、その一端が電極20に接続されるとともに、他端が図示しない外部電極に接続されている。リード線21は、タングステン、コバール、モリブデン等の材料から形成されている。リード線21とガラス管10の端部が封着されることで、ガラス管10の内部は気密に保たれる。ガラス管10を形成するホウ珪酸ガラスとリード線21の材料とは膨張係数が近いため、ガラス管が石英ガラス等から形成されている場合に比べて容易に、リード線21とガラス管10とを封着することができる。
【0024】
蛍光体層30は、ガラス管10の内面に形成された第1と第2の蛍光体層30a、30bと、外面に形成された第3の蛍光体層30cとを備える。第1〜第3の蛍光体層30a、30b、30cは、それぞれ、紫外線を遮蔽(吸収)するに必要な膜厚で、一周にわたって形成されている。
【0025】
第1の蛍光体層30aは、ガラス管10の内面の一端部に、該一端部から該他端部側の電極20aの先端の先20mmまでの領域に形成されている。
【0026】
第2の蛍光体層30bは、ガラス管10の内面の他端部に、該他端部から該一端部側の電極20bの先端の先20mmまでの領域に形成されている。
【0027】
第3の蛍光体層30cは、ガラス管10の外面中央部の、第1と第2の蛍光体層30a、30bと重ならない位置に形成されている。
【0028】
第1〜第3の蛍光体層30a〜30cは、その管軸方向の長さl、l、lの和(l+l+l)が、冷陰極放電ランプ1の放射する紫外線を所望の割合で制限して、放射される紫外線の総量が所定量となるように、予め調整されて形成されている。なお、紫外線を制限する手法については、後述する。
【0029】
蛍光体層30(30a〜30c)は、(Y,Gd)BO:Eu及びBaO・6Al:Mnを含んで構成されている。波長184.9nmの紫外線の照射を受けた際、(Y,Gd)BO:Euは赤色可視光の発光強度が大きい物質であり、BaO・6Al:Mnは緑色可視光の発光強度が大きい物質である。蛍光体層30に占める両物質の割合は、適切に調整されており、波長184.9nmの紫外線の照射を受けた際、蛍光体層30は、観測者が視認し易い色合いの光を発光する。
【0030】
蛍光体層30(30a〜30c)の塗布は、例えば、蛍光体層30を組成する物質の粘性懸濁液を、端部封止前のガラス管10を浸漬して引き上げることにより行われる。封止前のガラス管10の、蛍光体層30を形成したい領域以外の領域に、所定の樹脂からなるレジスト膜を形成し、懸濁液が乾燥した後、このレジスト膜を剥離すれば、図1のように、蛍光体層30(30a〜30c)を形成することができる。このようにして、紫外線の放射量を制限する蛍光体層30を形成すればよいので、冷陰極放電ランプ1は、構成が簡単である。
【0031】
紫外線放射ガス40は、気密状態のガラス管10の内部に封入され、アルゴン、キセノン等の希ガスと、水銀とから構成される。
【0032】
冷陰極放電ランプ1は、以上のように構成されることで紫外線を放射し、空気中の酸素を反応させてオゾンを生成する。具体的には、外部電極からリード線21(21a、21b)を介して電極20a、20bが給電され、電極20a、20b間が放電する。なお、放電には希ガスが寄与する。放電によって、水銀が励起され、ガラス管10内に紫外線が発生する。発生した前記紫外線の一部は、蛍光体層30(30a〜30c)が形成されていない領域を通過して、ガラス管10の外部へ放出する。放出された紫外線が含む波長184.9nmの紫外線が、空気中の酸素を反応させてオゾンを生成する。また、発生した紫外線のうち、外部へ放出しない紫外線は、蛍光体層30に吸収される。蛍光体層30は、紫外線の照射を受けて励起され、可視光を発光する。これにより、冷陰極放電ランプ1は照明する。
【0033】
本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1は、紫外線を遮蔽する膜厚で形成された蛍光体層30(30a〜30c)を備える。ガラス管10内部で発生した紫外線は、この蛍光体層30を通過することができないため、蛍光体層30が形成されていない領域から、ガラス管10の外部へ通過する。
【0034】
放電ランプの紫外線放射量はランプ長さに略比例する原理が一般的に知られている。ここで、蛍光体層30を備えないこと以外は冷陰極放電ランプ1と各構成が全く同様な冷陰極放電ランプの紫外線放射量を考える。この冷陰極放電ランプのランプ長さをLとすれば、その紫外線放射量Eは、概ね、以下のように表せる。
(数1)
=kL(kは比例定数)
【0035】
一方、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1は、紫外線を遮蔽する膜厚で形成された蛍光体層30(30a〜30c)を備える。ガラス管10内部で発生した紫外線は、管軸方向の長さの和が(l+l+l)である蛍光体層30を通過することができないことを考慮すれば、先程の原理を応用して、その紫外線放射量Eは、先程の冷陰極放電ランプと印可される電圧や電極サイズ等の諸条件が同じであるとして、概ね、以下のように表せる。なお、εは、蛍光体層30のうち、紫外線の遮蔽に寄与しない部分(第1、2の蛍光体層30a、bのガラス管10の端部側等)を考慮した寄与率である。
(数2)
E=k{L−ε(l+l+l)}(ε<1)
【0036】
即ち、本実施形態に係る蛍光体層30を備える冷陰極放電ランプ1によれば、数式1、2からわかるように、その紫外線放射量を、蛍光体層30がない場合の紫外線の放射量の{L−ε(l+l+l)}/L倍に制限することができる。このように紫外線の量が制限されることを利用し、ガラス管10における蛍光体層30の形成領域を予め調整することで、冷陰極放電ランプ1は、任意の量の紫外線を放射することができる。本実施形態では、発生させたいオゾンの量に適合する紫外線を放射するように、適宜、蛍光体層30の形成領域を調整すればよい。
【0037】
また、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1によれば、紫外線を安定して放射することができる。以下に理由を説明する。ガラス管10内には、放電及び紫外線の放射を不安定にするスパッタ物質が堆積する。スパッタ物質が過剰に堆積すると、ガラス管10内の水銀がスパッタ物質に取り込まれていく。すると、紫外線を放射する水銀の量が少なくなるため、紫外線の放射が不安定になる。また、スパッタ物質が過剰に堆積すると、希ガスがスパッタ物質に取り込まれていく。すると、放電に寄与する希ガスの量が少なくなるため、電気特性に異常を来し易くなり、放電が不安定になる。スパッタ物質の堆積し易い範囲は、電極20a、20bの電極径、電極長、及び管電流値の3つの値の組み合わせにより変化するが、通常使用される冷陰極放電ランプでは、これまでの実績から、ガラス管の端部から前記端部側の前記電極先端の先20mmまでの範囲に収まることがわかった。そこで、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1では、スパッタ物質が堆積し易い、ガラス管10の端部から前記端部側の電極20先端の先20mmまでの領域に第1と第2の蛍光体層30a、bを形成している。この第1と第2の蛍光体層30a、bが、スパッタ物質を効果的に吸着する。これにより、ガラス管10内に封入された希ガス及び水銀の減少を抑えることができ、放電及び紫外線の放射の状態を良好に保つことができる。
【0038】
また、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1は、ガラス管10の両端部に第1と第2の蛍光体層30a、bを有しているため、紫外線がガラス管10両端部からガラス管10の外部に、直接、放出することを抑制できる。そのため、ガラス管10両端の外部周辺にある取付け機器等の部材が、紫外線により劣化することを防止することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ1によれば、ランプの交換時期を適切に把握することができる。蛍光体層30に、主に波長184.9nmの紫外線が照射されることによって、蛍光体層30を構成する物質中の電子が励起され、蛍光体層30は可視光を発光する。紫外線放射量の減少に伴って蛍光体層30が発光する可視光は減少するため、観測者は、その可視光の量を目安に冷陰極放電ランプ1の交換時期を把握すればよい。
【0040】
(第2実施形態)
本実施形態に係る放電ランプは、殺菌用の冷陰極放電ランプ2である。冷陰極放電ランプ2の構成を、図3を参照して説明する。以下、第1実施形態の冷陰極放電ランプ1と共通する構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
冷陰極放電ランプ2は、第1実施形態とは異なる、ガラス管210と、蛍光体層230と、を備える。
【0042】
ガラス管210は、波長253.7nmの紫外線の透過率に優れた、第1実施形態で使用したものとは異なるホウ珪酸ガラスから形成されている。このホウ珪酸ガラスは、混合物としてFe2+を酸化する種及び硝酸塩等のような紫外線を吸収する種を含まずに形成される。ガラス管210は、前述した、第1実施形態に係るガラス管10に使用したホウ珪酸ガラスと同じ組成のものを使用してもよいが、冷陰極放電ランプ2では、主に、波長253.7nmの紫外線の殺菌作用を利用することから、波長184.9nmの紫外線の透過率に優れていることは必須の要素ではないため、第2実施形態では、このようなホウ珪酸ガラスを使用する。
【0043】
蛍光体層230は、ガラス管210の内面に形成された第1と第2と第3の蛍光体層230a、230b、230cを備える。第1〜第3の蛍光体層230a、230b、230cは、それぞれ、紫外線を遮蔽(吸収)するに必要な膜厚で、一周にわたって形成されている。なお、蛍光体層230の膜厚は、例えば、図4のグラフに示す、紫外線の透過率と膜厚の関係、及び、ガラス管210の紫外線透過率を鑑み、目的に応じて適宜、決定される。
【0044】
第1の蛍光体層230aは、ガラス管210の内面の一端部に、該一端部から該他端部側の電極20aの先端の先20mmまでの領域に形成されている。
【0045】
第2の蛍光体層230bは、ガラス管210の内面の他端部に、該他端部から該一端部側の電極20bの先端の先20mmまでの領域に形成されている。
【0046】
第3の蛍光体層230cは、ガラス管10の内面中央部の、第1と第2の蛍光体層230a、230bと重ならない位置に形成されている。また、第3の蛍光体層230cは、管軸方向に所定の間隔を空けて塗布された複数の蛍光体層の集まりであり、観測者によって、管軸方向と垂直方向の縦縞模様として視認される。
【0047】
第1、2の蛍光体層230a、bの管軸方向の長さをl、l、第3の蛍光体層230cを構成する複数の蛍光体層の管軸方向の長さの和をΣlとすれば、これらの和(l+l+Σl)が、冷陰極放電ランプ2の放射する紫外線を所望の割合で制限して、放射される紫外線の総量が所定量となるように、予め調整されて形成されている。なお、紫外線を制限する手法については、後述する。
【0048】
蛍光体層230(230a〜230b)は、Y:Eu、LaPO:Ce,Tb、BaMgAl1627:Euの所謂RGB(Red-Green-Blue color model)3色混合蛍光体で構成されている。主に波長253.7nmの紫外線の照射を受けた際、Y:Euは赤色可視光の発光強度が大きい物質であり、LaPO:Ce,Tbは黄緑色可視光の発光強度が大きい物質であり、BaMgAl1627:Euは青色可視光の発光強度が大きい物質である。蛍光体層230に占めるこれら物質の割合は、適切に調整されており、主に波長253.7nmの紫外線の照射を受けた際、蛍光体層230は、観測者が視認し易い色合いの光を発光する。
【0049】
冷陰極放電ランプ2は、以上のように構成されることで紫外線を照射し、対象物を殺菌する。具体的には、ガラス管210内に発生した前記紫外線の一部は、蛍光体層230(230a〜230c)が形成されていない領域を通過して、ガラス管210の外部へ放出する。放出された紫外線が含む、主に波長253.7nmの紫外線が対象物に照射し、細菌やウイルスのDNA(DeoxyriboNucleic Acid)を破壊することで、対象物を殺菌する。なお、波長184.9nmの紫外線のほとんどはガラス管210を通過しない。また、発生した紫外線のうち、外部へ放出しない紫外線は、蛍光体層230に吸収される。蛍光体層230は、紫外線の照射を受けて励起され、可視光を発光する。これにより、冷陰極放電ランプ2は照明する。
【0050】
本実施形態に係る冷陰極放電ランプ2は、紫外線を遮蔽する膜厚で形成された蛍光体層230(230a〜230c)を備える。ガラス管210内部で発生した紫外線は、管軸方向の長さの和が(l+l+Σl)である蛍光体層230を通過することができないことを考慮すれば、第1実施形態と同様にして、その紫外線放射量Eは、以下のように表せる。
(数3)
E=k{L−ε(l+l+Σl)}(ε<1)
【0051】
即ち、本実施形態に係る蛍光体層230を備える冷陰極放電ランプ2によれば、数式1、3からわかるように、その紫外線放射量を、蛍光体層230がない場合の紫外線の放射量の{L−ε(l+l+Σl)}/L倍に制限することができる。このように紫外線の量が制限されることを利用し、ガラス管210における蛍光体層230の形成領域を予め調整することで、冷陰極放電ランプ2は、任意の量の紫外線を放射することができる。本実施形態では、求める殺菌性能に応じて紫外線を放射するように、適宜、蛍光体層230の形成領域を調整すればよい。
【0052】
また、本実施形態に係る冷陰極放電ランプ2によれば、スパッタ物質が堆積し易い、ガラス管210の端部から前記端部側の電極20先端の先20mmまでの領域に第1と2の蛍光体層230a、bを形成しているため、紫外線を安定して放射することができる。
【0053】
また、冷陰極放電ランプ2によれば、ランプの交換時期を適切に把握することができる。蛍光体層230に、主に波長253.7nmの紫外線が照射されることによって、蛍光体層230は可視光を発光する。紫外線放射量の減少に伴って蛍光体層230が発光する可視光は減少するため、観測者は、その可視光の量を目安に、冷陰極放電ランプ2の交換時期を把握すればよい。
【0054】
(変形例)
なお、以上の実施形態では、本発明に係る放電ランプを冷陰極放電ランプとしたが、これに限られない。放電ランプは、熱陰極放電ランプ、外部電極放電ランプ等であってもよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、放電ランプが備える管を直管とする例を示したが、これに限られない。管は、U字形やW字形等の曲げ管であってもよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、蛍光体層を紫外線を遮蔽する膜厚として、放電ランプが放射する紫外線の量を調整したが、これに限られない。蛍光体層の、紫外線を完全には遮蔽しない膜厚と、形成領域との組合せにより、紫外線の放射量を調整してもよい。
【0057】
また、以上の実施形態では、放電ランプが備える管にホウ珪酸ガラスを使用したが、これに限られない。紫外線の透過性に優れた、純度の高い合成石英ガラス、その他の透過部材を使用してもよい。
【0058】
また、以上の実施形態では、蛍光体を、波長280nm未満の紫外線で発光するUVC(UltraViolet C)発光蛍光体としたが、これに限られない。発光用途により、波長400〜315nmの紫外線で発光するUVA(UltraViolet A)発光蛍光体、波長315〜280nmの紫外線で発光するUVB(UltraViolet B)発光蛍光体、可視光蛍光発光体、残光蛍光体等を、用途に応じて適宜一種類以上選択して放電ランプを構成する管に形成してもよい。
【0059】
また、以上の実施形態では、放電ランプを、オゾン発生用、又は、殺菌用の冷陰極放電ランプとして使用した例を述べたが、これに限られない。放電ランプを、光触媒活性化作用を有する紫外線ランプとして使用してもよい。かかる場合、蛍光体層を、光触媒活性化作用を有する波長300〜400nm(特に360nm)の紫外線を受けて可視光を発光するZnO:Zn、ZnS:Ag,Cu,Ga,Cl等を含む材料で構成すればよい。また、蛍光体層に、光触媒活性化にほとんど寄与しない波長300nmの紫外線を、光触媒の活性化に適した波長300〜400nmの紫外線に変換する、波長変換用の蛍光体を使用してもよい。なお、以上で述べた蛍光体を組成する物質の中から適宜一種以上を選択して、蛍光体を形成してもよい。
【0060】
また、蛍光体層を、第1実施形態ではガラス管10の内面及び外面に、第2実施形態ではガラス管210の内面に、形成したが、これに限られない。本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいては、例えば、外部陰極放電ランプ等において、管の外面にのみ蛍光体を形成してもよい。
【0061】
また、第2実施形態では、第3の蛍光体層230cを縦縞状に形成したが、これに限られない。蛍光体層の一部を、横縞状、斜め縞状、ドット状等に形成してもよい。形成態様に合わせて、管が有する面に占める蛍光体層の割合を適宜計算し、蛍光体層を形成することで、紫外線の放射量を調整すればよい。
【0062】
また、蛍光体層に併せて、蛍光体層と放電ランプの管との間に、Al、Mg、Gd、La、Zr、Y等の金属酸化物のコーティングである紫外線反射保護膜を設けるとともに、蛍光体層の膜厚を適宜調整することで、紫外線の放射量を制限してもよい。
なお、紫外線を任意の量放射するという点に関しては、前記(数2)(数3)に示したのと同様な考えにより、蛍光体層に依らずとも、上記の紫外線反射保護膜又はその他の紫外線遮蔽(吸収)物質を管に予め調整してコーティングすれば、実現が可能である。
【0063】
なお、本発明は、以上の実施形態(図面の内容も含む)によって限定して解釈されるものではない。以上の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。
【0064】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0065】
(付記1)
紫外線と可視光を透過する管と、
前記管の内部に封入された紫外線放射ガスと、
前記管の内部及び/又は外部に配設され、前記管内に放電を起こす複数の電極と、
前記管の一部分に形成され、前記紫外線の照射を受けて可視光を発光する蛍光体層と、を備え、
紫外線と可視光とを照射する、ことを特徴とする放電ランプ。
【0066】
(付記2)
前記蛍光体層は、前記放電によるスパッタ物質が堆積する領域に形成されている、
ことを特徴とする付記1に記載の放電ランプ。
【0067】
(付記3)
前記蛍光体層は、前記管の端部から前記端部側の前記電極先端の先20mmまでの領域に形成されている、
ことを特徴とする付記1に記載の放電ランプ。
【0068】
(付記4)
前記蛍光体層は、縞状に形成されている、
ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【0069】
(付記5)
前記蛍光体層は、前記一部に照射される前記紫外線の90%以上を遮蔽する厚みで形成されている、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【0070】
(付記6)
前記管は、ホウ珪酸ガラスから形成されている、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【0071】
(付記7)
前記ホウ珪酸ガラスは、質量%でSiOを67.5〜80%、Bを10〜25%、Alを1〜10%、NaO+KO+LiOを3〜10%含むとともに、少なくともBaO及び/又はCaOを含む、
ことを特徴とする付記6に記載の放電ランプ。
【符号の説明】
【0072】
1…冷陰極放電ランプ、
10…ガラス管
20…電極(20a、20b)
21…リード線(21a、20b)
30…蛍光体層
30a…第1の蛍光体層、30b…第2の蛍光体層、30c…第3の蛍光体層
40…紫外線放射ガス

2…冷陰極放電ランプ
210…ガラス管
230…蛍光体層
230a…第1の蛍光体層、230b…第2の蛍光体層、230c…第3の蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線と可視光を透過する管と、
前記管の内部に封入された紫外線放射ガスと、
前記管の内部及び/又は外部に配設され、前記管内に放電を起こす複数の電極と、
前記管の一部分に形成され、前記紫外線の照射を受けて可視光を発光する蛍光体層と、を備え、
紫外線と可視光とを照射する、ことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記蛍光体層は、前記放電によるスパッタ物質が堆積する領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記蛍光体層は、前記管の端部から前記端部側の前記電極先端の先20mmまでの領域に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記蛍光体層は、縞状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記蛍光体層は、前記一部に照射される前記紫外線の90%以上を遮蔽する厚みで形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項6】
前記管は、ホウ珪酸ガラスから形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放電ランプ。
【請求項7】
前記ホウ珪酸ガラスは、質量%でSiOを67.5〜80%、Bを10〜25%、Alを1〜10%、NaO+KO+LiOを3〜10%含むとともに、少なくともBaO及び/又はCaOを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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