説明

放電灯点灯装置、プロジェクター、及び放電灯の駆動方法

【課題】放電灯の電極劣化を抑制するとともに、電力可変幅を大きくすることが可能な放電灯点灯装置、及びプロジェクターを提供する。
【解決手段】第1区間では1直流駆動処理と第1交流駆動処理とを交互に行い、第2区間では第2直流駆動処理と第2交流駆動処理とを交互に行い、駆動電流制御として、第1直流駆動処理では第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御、第1交流駆動処理では第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御、第2直流駆動処理では第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御、第2交流駆動処理では第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御、を行い、所定の条件が満たされた場合には、第1直流駆動処理を行う期間及び第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置、プロジェクター、及び放電灯の駆動方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターの光源として、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの放電灯(放電ランプ)が使用されている。これらの放電灯においては、放電による電極の消耗や、累積点灯時間の経過に伴う電極の結晶化の進行などにより、溶融性が低下することにより電極の形状が変化する。また、これらに伴い電極先端部に複数の突起が成長したり、電極本体部の不規則な消耗が進行したりすると、アーク起点の移動やアーク長(電極間の距離)の変化が生じる。これらの現象は、放電灯の輝度低下やフリッカー現象を招き、放電灯の寿命を縮めることになるため、望ましくない。
【0003】
この問題を解決する方法として、周波数の異なる交流電流を用いて放電灯を駆動する放電灯点灯装置(特許文献1)が知られている。また、高周波の交流に直流を間欠的に挿入した駆動電流を放電灯に供給する放電灯点灯装置(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−59790号公報
【特許文献2】特開平1−112698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年のプロジェクターでは、複数の動作電力で放電灯を点灯させることが多く、一般的には高輝度モードと低輝度モードの切り替え機能を有しており、低輝度モードでは使用時のエネルギーや騒音を低減させることが目的である。そのため、近年低輝度モードでの動作電力をさらに低減すること、すなわち動作電力の可変幅を広げることが望まれている。しかしながら、定常点灯中の放電灯は、熱電子放出を伴う、いわゆるアーク放電が1対の電極間で行われているため、動作電力が低い低輝度モードでは、電極の温度が低下し、フリッカーを発生しやすい状況にある。さらに、電極の劣化によって電極間距離が長くなると、電極先端部の温度が低下するため、顕著なフリッカーが発生してしまう。
このような問題に対応するために、上記特許文献1のように、単に周波数の異なる交流電流を用いて放電灯を駆動したり、上記特許文献2のように、単に高周波の交流に直流を間欠的に挿入した駆動電流を放電灯に供給したりしても、動作電力に対応していないため、使用時間に伴い、低輝度モードにおいて早期にフリッカーを発生してしまうか、逆に高輝度モードにおいて電極消耗を早めてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様によれば、放電灯の電極先端部に形成される突起の溶融状態および形状を動作電力に対して制御するため、低輝度モードでのフリッカーを抑制するとともに、高輝度モードでの電極消耗を抑制し、動作電力の広い可変幅とする放電灯点灯装置、放電灯点灯装置の制御方法及びプロジェクターを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の1つである放電灯点灯装置は、放電灯に駆動電流を供給し、前記放電灯を駆動する放電灯駆動部と、前記放電灯駆動部を制御する制御部とを含み、前記制御部は、第1区間では第1直流駆動処理と第1交流駆動処理とを交互に行い、前記第1区間とは異なる第2区間では第2直流駆動処理と第2交流駆動処理とを交互に行い、前記第1直流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御を行い、前記第1交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御を行い、前記第2直流駆動処理では、前記駆動電流として第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御を行い、前記第2交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御を行い、所定の条件が満たされた場合には、前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる。
【0008】
第1直流電流は、複数回の第1極性成分の電流パルスで構成されてもよく、第2直流電流は、複数回の第2極性成分の電流パルスで構成されてもよい。
【0009】
この放電灯点灯装置によれば、所定の条件が満たされた場合、第1直流駆動処理を行う期間及び第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させるため、電極の先端部に形成されている突起について、陽極時の場合の溶融面積と、陰極時になった場合の冷却時間を制御することによって突起形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制する。
【0010】
この放電灯点灯装置において、前記制御部は、前記所定の条件が満たされた場合には、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を高くしてもよい。
【0011】
この放電灯点灯装置によれば、第1交流駆動処理を行う期間及び第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を、所定の条件が満たされた場合に高くするように変化させて、交流駆動処理期間における極性の交番時間を短くすることができるため、電極の先端部に形成されている突起の形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制することができる。
【0012】
この放電灯点灯装置において、前記制御部は、前記所定の条件が満たされた場合には、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを長くするように変化させてもよい。
【0013】
この放電灯点灯装置によれば、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを、所定の条件が満たされた場合に長くなるように変化させることによって、交流駆動処理期間に対する直流駆動処理期間の比率を少なくし、電極の先端部に形成されている突起の溶融面積を少なくすることで突起形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制することができる。
【0014】
この放電灯点灯装置において、前記所定の条件は、外部から前記放電灯の動作電力を所定値以上低減する信号を受けることであってもよい。
【0015】
この放電灯点灯装置によれば、放電灯点灯装置が外部インターフェースなどからの動作電力を低く変更するための信号を受け取ることによって、前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を高くする、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを、所定の条件が満たされた場合に長くなるように変化させるため、動作電力が低下した場合に低輝度モードにおけるフリッカーを抑制するとともに、高輝度モードにおける電極消耗の抑制をすることができる。
【0016】
この放電灯点灯装置において、前記所定の条件は、前記放電灯の定常時における点灯電圧が所定値以上に上昇した場合としてもよい。
【0017】
この放電灯点灯装置によれば、放電灯の電極が劣化し、定常点灯中の電圧が所定値以上に上昇した場合、プロジェクターなどで一般に行われている平均電力を一定とする制御をした場合には、電流値が減少するため、フリッカーはより発生しやすくなる。そのため、前記放電灯の駆動装置が前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を高くする、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを、所定の条件が満たされた場合に長くなるように変化させるため、駆動電圧が低下した場合に低輝度モードにおけるフリッカーを抑制するとともに、高輝度モードにおける電極消耗の抑制をすることができる。
【0018】
この放電灯点灯装置において、前記所定の条件は、前記放電灯の定常時における点灯電流が所定値以下に低下した場合としてもよい。
【0019】
この放電灯点灯装置によれば、プロジェクターなどで一般に行われている平均電力を一定とする制御をした場合には、放電灯の電極が劣化し駆動電圧が上昇した場合、電流値はが所定値以下に低下し、フリッカーはより発生しやすくなる。そのため、前記放電灯の駆動装置が前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を高くする、さらに第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを、所定の条件が満たされた場合に長くなるように変化させるため、駆動電流が低下した場合に低輝度モードにおけるフリッカーを抑制するとともに、高輝度モードにおける電極消耗の抑制をすることができる。
【0020】
本発明の態様の1つであるプロジェクターは、これらのいずれかの放電灯点灯装置を具備する。
【0021】
このプロジェクターによれば、電極の先端部に形成されている突起の形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制することができる。
【0022】
本発明の態様の1つである放電灯の駆動方法は、第1区間では第1直流駆動処理と第1交流駆動処理とを交互に行い、前記第1区間とは異なる第2区間では第2直流駆動処理と第2交流駆動処理とを交互に行い、前記第1直流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御を行い、前記第1交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御を行い、前記第2直流駆動処理では、前記駆動電流として第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御を行い、前記第2交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御を行い、所定の条件が満たされた場合には、前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる。
【0023】
この放電灯の駆動方法によれば、所定の条件が満たされた場合、第1直流駆動処理を行う期間及び第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させるため、電極の先端部に形成されている突起について、陽極時の場合の溶融面積と、陰極時になった場合の冷却時間を制御することによって突起形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制する。
【0024】
この放電灯点灯方法において、前記所定の条件が満たされた場合には、前記第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数を高くするように変化させてもよい。
【0025】
この放電灯点灯方法によれば、第1交流駆動処理を行う期間及び第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を、所定の条件が満たされた場合に高くするように変化させて、交流駆動処理期間における極性の交番時間を短くすることができるため、電極の先端部に形成されている突起の形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制することができる。
【0026】
この放電灯点灯方法において、前記所定の条件が満たされた場合には、前記第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを長くするように変化させてもよい。
【0027】
この放電灯点灯方法によれば、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを、所定の条件が満たされた場合に長くなるように変化させることによって、交流駆動処理期間に対する直流駆動処理期間の比率を少なくし、電極の先端部に形成されている突起の溶融面積を少なくすることで突起形状を最適に保ちながら、フリッカーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例としてのプロジェクターを示す説明図。
【図2】本発明の一実施例としての光源装置の構成を示す説明図。
【図3】本発明の一実施例としての放電灯点灯装置の回路図の一例。
【図4】本発明の一実施例としての制御部の構成について説明するための図。
【図5】図5(A)乃至図5(D)は、放電灯に供給する駆動電流の極性と電極の温度との関係を示す説明図。
【図6】図6(A)及び図6(B)は、本発明の第1実施形態における第1区間及び第2区間について説明するための図。
【図7】図7(A)は、本発明の第1実施形態における第1区間における駆動電流Iの波形例、図7(B)は、本発明の第1実施形態における第2区間における駆動電流Iの波形例を示すタイミングチャート。
【図8】図8(A)は、本発明の第1実施形態における第1区間における直流駆動処理の期間を変更した駆動電流Iの波形例、図8(B)は、本発明の第1実施形態における第2区間における直流駆動処理の期間を変更した駆動電流Iの波形例を示すタイミングチャート。
【図9】図9(A)は、本発明の第2実施形態における第1区間における交流駆動処理の周波数を変更した駆動電流Iの波形例、図9(B)は、本発明の第2実施形態における第1区間における交流駆動処理の周波数及び周期数を変更した駆動電流Iの波形を示すタイミングチャート。
【図10】本発明の第3実施形態の放電灯点灯装置の制御例を示すフローチャート。
【図11】本実施の一実施例としてのプロジェクターの回路構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0030】
1.プロジェクターの光学系
図1は、本発明の第1実施形態としてのプロジェクター500を示す説明図である。プロジェクター500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ330R、330G、330Bと、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とを有している。
【0031】
光源装置200は、光源ユニット210と、放電灯点灯装置10と、を有している。光源ユニット210は、主反射鏡112と副反射鏡50と放電灯90とを有している。放電灯点灯装置10は、放電灯90に電力を供給して、放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から放出された光を、照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、光軸AXと平行である。光源ユニット210からの光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。この平行化レンズ305は、光源ユニット210からの光を、平行化する。
【0032】
照明光学系310は、光源装置200からの光の照度を液晶ライトバルブ330R、330G、330Bにおいて均一化する。また、照明光学系310は、光源装置200からの光の偏光方向を一方向に揃える。この理由は、光源装置200からの光を液晶ライトバルブ330R、330G、330Bで有効に利用するためである。照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色に対応付けられた液晶ライトバルブ330R、330G、330Bによって、それぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R、330G、330Bは、液晶パネル560R、560G、560Bと、液晶パネル560R、560G、560Bのそれぞれの光入射側及び出射側に配置される偏光板を備える。変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340によって合成される。合成光は、投写光学系350に入射する。投写光学系350は、入射光を、図示しないスクリーンに投写する。これにより、スクリーン上には画像が表示される。
【0033】
なお、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とのそれぞれの構成としては、周知の種々の構成を採用可能である。
【0034】
図2は、光源装置200の構成を示す説明図である。光源装置200は、光源ユニット210と放電灯点灯装置10とを有している。図中には、光源ユニット210の断面図が示されている。光源ユニット210は、主反射鏡112と放電灯90と副反射鏡50とを有している。
放電灯90の形状は、第1端部90e1から第2端部90e2まで、照射方向Dに沿って延びる棒形状である。放電灯90の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。放電灯90の中央部は球状に膨らんでおり、その内には、放電空間91が形成されている。放電空間91内には、希ガス、金属ハロゲン化合物、水銀等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
【0035】
また、放電空間91内には、2つの電極(第1電極92、第2電極93)が、放電灯90から突き出している。第1電極92は、放電空間91の第1端部90e1側に配置され、第2電極93は、放電空間91の第2端部90e2側に配置されている。これらの第1電極92、第2電極93の形状は、光軸AXに沿って延びる棒形状である。放電空間91内では、各電極第192、第2電極93の電極先端部(「放電端」とも呼ぶ)が、所定距離だけ離れて向かい合っている。なお、これらの第1電極92、第2電極93の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
【0036】
放電灯90の第1端部90e1には、第1端子536が設けられている。第1端子536と第1電極92とは、放電灯90の内部を通る導電性部材534によって電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2には、第2端子546が設けられている。第2端子546と第2電極93とは、放電灯90の内部を通る導電性部材544によって電気的に接続されている。各端子(第1端子536、第2端子546)の材料は、例えば、タングステン等の金属である。また、各導電性部材534、544としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
これらの端子(第1端子536、第2端子546は、放電灯点灯装置10に接続されている。放電灯点灯装置10は、これらの端子536、546に、交流電流を供給する。その結果、2つの電極(第1電極92、第2電極93)の間でアーク放電が起きる。アーク放電により発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
【0037】
放電灯90の第1端部90e1には、固定部材114によって、主反射鏡112が固定されている。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、回転楕円形状である。主反射鏡112は、放電光を照射方向Dに向かって反射する。なお、主反射鏡112の反射面の形状としては、回転楕円形状に限らず、放電光を照射方向Dに向かって反射するような種々の形状を採用可能である。例えば、回転放物線形状を採用してもよい。この場合は、主反射鏡112は、放電光を、光軸AXにほぼ平行な光に変換することができる。したがって、平行化レンズ305を省略することができる。
【0038】
放電灯90の第2端部90e2側には、固定部材522によって、副反射鏡50が固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間91の第2端部90e2側を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光を、主反射鏡112に向かって反射する。これにより、放電空間91から放射される光の利用効率を高めることができる。
【0039】
なお、固定部材114、522の材料としては、放電灯90の発熱に耐える任意の耐熱材料(例えば、無機接着剤)を採用可能である。また、主反射鏡112及び副反射鏡50と放電灯90との配置を固定する方法としては、主反射鏡112及び副反射鏡50を放電灯90に固定する方法に限らず、任意の方法を採用可能である。例えば、放電灯90と主反射鏡112とを、独立に、プロジェクターの筐体(図示せず)に固定してもよい。副反射鏡50についても同様である。
【0040】
2.第1実施形態に係る放電灯点灯装置
(1)放電灯点灯装置の構成
図3は、本実施形態に係る放電灯点灯装置の回路図の一例である。
【0041】
放電灯点灯装置10は、電力制御回路20を含む。電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を生成する。本実施形態においては、電力制御回路20は、直流電源80を入力とし、当該入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
【0042】
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23及びコンデンサー24を含んで構成することができる。スイッチ素子21は、例えばトランジスターで構成することができる。本実施形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子及びコイル23の一端に接続されている。また、コイル23の他端にはコンデンサー24の一端が接続され、コンデンサー24の他端はダイオード22のアノード端子及び直流電源80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には制御部40から電流制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電流制御信号には、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御信号が用いられてもよい。
【0043】
ここで、スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサー24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
【0044】
放電灯点灯装置10は、極性反転回路30を含む。極性反転回路30は、電力制御回路20から出力される直流電流Idを入力し、所与のタイミングで極性反転することにより、制御された時間だけ継続する直流であったり、任意の周波数をもつ交流であったりする駆動電流Iを生成出力する。本実施形態においては、極性反転回路30はインバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
【0045】
極性反転回路30は、例えば、トランジスターなどの第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34を含んで構成され、直列接続された第1及び第2のスイッチ素子31及び32と、直列接続された第3及び第4のスイッチ素子33及び34を、互いに並列接続して構成される。第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34の制御端子には、それぞれ制御部40から極性反転制御信号が入力され、第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34のON/OFFが制御される。
【0046】
極性反転回路30は、第1及び第4のスイッチ素子31及び34と、第2及び第3のスイッチ素子32及び33を交互にON/OFFを繰り返すことにより、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性を交互に反転し、第1及び第2のスイッチ素子31及び32の共通接続点及び第3及び第4のスイッチ素子33及び34の共通接続点から、制御された時間だけ継続する直流であったり、任意の周波数をもつ交流であったりする駆動電流Iを生成出力する。
【0047】
すなわち、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がONの時には第2及び第3のスイッチ素子32及び33をOFFにし、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がOFFの時には第2及び第3のスイッチ素子32及び33をONにするように制御する。したがって、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がONの時には、コンデンサー24の一端から第1のスイッチ素子31、放電灯90、第4のスイッチ素子34の順に流れる駆動電流Iが発生する。また、第2及び第3のスイッチ素子32及び33をONの時には、コンデンサー24の一端から第3のスイッチ素子33、放電灯90、第2のスイッチ素子32の順に流れる駆動電流Iが発生する。
【0048】
本実施形態において、電力制御回路20と極性反転回路30とを合わせて放電灯駆動部に対応する。
【0049】
放電灯点灯装置10は、制御部40を含む。制御部40は、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御することにより、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数等を制御する。制御部40は、極性反転回路30に対して駆動電流Iの極性反転タイミングにより、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの周波数等を制御する極性反転制御を行う。また、制御部40は、電力制御回路20に対して、出力される直流電流Idの電流値を制御する電流制御を行う。
【0050】
制御部40の構成は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、制御部40は、システムコントローラー41、電力制御回路コントローラー42及び極性反転回路コントローラー43含んで構成されている。なお、制御部40は、その一部又は全てを半導体集積回路で構成してもよい。
【0051】
システムコントローラー41は、電力制御回路コントローラー42及び極性反転回路コントローラー43を制御することにより、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御する。システムコントローラー41は、後述する放電灯点灯装置10内部に設けた電圧検出部60により定常点灯時に検出した駆動電圧Vla及び駆動電流Iに基づき、電力制御回路コントローラー42及び極性反転回路コントローラー43を制御してもよい。
【0052】
本実施形態においては、システムコントローラー41は記憶部44を含んで構成されている。なお、記憶部44は、システムコントローラー41とは独立に設けてもよい。
【0053】
システムコントローラー41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数、波形、変調パターン等の駆動パラメーターに関する情報が格納されていてもよい。
【0054】
電力制御回路コントローラー42は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電流制御信号を出力することにより、電力制御回路20を制御する。
【0055】
極性反転回路コントローラー43は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、極性反転回路30へ極性反転制御信号を出力することにより、極性反転回路30を制御する。
【0056】
なお、制御部40は、専用回路により実現して上述した制御や後述する処理の各種制御を行うようにすることもできるが、例えばCPU(Central Processing Unit)が記憶部44等に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。すなわち、図4に示すように、制御部40は、制御プログラムにより、電力制御回路20を制御する電流制御手段40−1、極性反転回路30を制御する極性反転制御手段40−2として機能するように構成してもよい。
【0057】
放電灯点灯装置10は、動作検出部を含んでもよい。動作検出部は、例えば放電灯90の定常点灯時の駆動電圧Vlaを検出し、駆動電圧情報を出力する電圧検出部60や、駆動電流Iを検出し、駆動電流情報を出力する電流検出部を含んでもよい。本実施形態においては、電圧検出部60は、第1及び第2の抵抗61及び62を含んで構成されている。
【0058】
電圧検出部60は、本発明における放電灯90の第1電極92及び第2電極93の状態を検出する動作検出部に対応する。すなわち、駆動電圧Vlaは第1電極92と第2電極93の先端間の距離の指標となるため、電圧検出部60は電極の劣化状態の程度を表す値として駆動電圧Vlaを検出する。
本実施形態において、電圧検出部60は、放電灯90と並列に、互いに直列接続された第1及び第2の抵抗61及び62で分圧した電圧により駆動電圧Vlaを検出する。また、本実施形態において、電流検出部は、放電灯90に直列に接続された第3の抵抗63に発生する電圧により駆動電流Iを検出する。
【0059】
放電灯点灯装置10は、イグナイター回路70を含んでもよい。イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作し、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(放電灯90の通常点灯時よりも高い電圧)を放電灯90の電極間に供給する。本実施形態においては、イグナイター回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
【0060】
図5(A)乃至図5(D)は、放電灯90に供給する駆動電流の極性と電極の温度との関係を示す説明図である。図5(A)及び図5(B)は、2つの第1電極92、第2電極93の動作状態を示している。図中には、2つの電極(第1電極92、第2電極93)の先端部分が示されている。第1電極92、第2電極93の先端には突起552p、562pがそれぞれ設けられている。放電は、これらの突起552p、562pの間で生じる。本実施例では、突起が無い場合と比べて、各電極(第1電極92、第2電極93)における放電位置(アーク位置)の移動を抑えることができる。ただし、このような突起を省略してもよい。
【0061】
図5(A)は、第1電極92が陽極として動作し、第2電極93が陰極として動作する第1極性状態P1を示している。第1極性状態P1では、放電によって、第2電極93(陰極)から第1電極92(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極93)からは、電子が放出される。陰極(第2電極93)から放出された電子は、陽極(第1電極92)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、そして、陽極(第1電極92)の先端(突起552p)の温度が上昇する。
【0062】
図5(B)は、第1電極92が陰極として動作し、第2電極93が陽極として動作する第2極性状態P2を示している。第2極性状態P2では、第1極性状態P1とは逆に、第1電極92から第2電極93へ電子が移動する。その結果、第2電極93の先端(突起562p)の温度が上昇する。
【0063】
このように、陽極時の電極の温度は、陰極時の電極の温度と比べて高くなりやすい。ここで、一方の電極の温度が他方の電極と比べて高い状態が続くことは、種々の不具合を引き起こし得る。例えば、高温電極の先端が過剰に溶けた場合には、意図しない電極変形が生じ得る。その結果、アーク長が適正値からずれる場合がある。また、低温電極の先端の溶融が不十分な場合には、先端に生じた微少な凹凸が溶けずに残り得る。また、同様に低温電極の先端の溶融が不十分な場合には、突起が中途半端な温度にさらされ、扁平化する。その結果、いわゆるアークジャンプあるいはフリッカーと呼ばれる現象が生じる場合がある。
【0064】
このような不具合を抑制する技術として、各電極の極性を繰り返し交替させる交流駆動を利用可能である。図5(C)は、放電灯90(図2)に供給される駆動電流Iの一例を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は駆動電流Iの電流値を示している。駆動電流Iは、放電灯90を流れる電流を示す。正値は、第1極性状態P1を示し、負値は、第2極性状態P2を示す。図5(C)に示す例では、矩形波交流電流が利用されている。そして、第1極性状態P1と第2極性状態P2とが交互に繰り返される。ここで、第1極性区間Tpは、第1極性状態P1が続く時間を示し、第2極性区間Tnは、第2極性状態P2が続く時間を示す。また、第1極性区間Tpの平均電流値はIm1であり、第2極性区間Tnの平均電流値は−Im2である。なお、放電灯90の駆動に適した駆動電流Iの周波数は、放電灯90の特性に合わせて、実験的に決定可能である(例えば、30Hz〜1kHzの範囲の単一または複数の値が採用される)。他の値Im1、−Im2、Tp、Tnも、同様に実験的に決定可能である。
【0065】
図5(D)は、第1電極92の温度変化を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は温度Hを示している。第1極性状態P1では、第1電極92の温度Hが上昇し、第2極性状態P2では、第1電極92の温度Hが降下する。また、第1極性状態P1と第2極性状態P2状態が繰り返されるので、温度Hは、最小値Hminと最大値Hmaxとの間で周期的に変化する。なお、図示は省略するが、第2電極93の温度は、第1電極92の温度Hとは逆位相で変化する。すなわち、第1極性状態P1では、第2電極93の温度が降下し、第2極性状態P2では、第2電極93の温度が上昇する。
【0066】
第1極性状態P1では、第1電極92(突起552p)の先端が溶融するので、第1電極92(突起552p)の先端が滑らかになる。これにより、第1電極92での放電位置の移動を抑制できる。また、第2電極93(突起562p)の先端の温度が降下するので、第2電極93(突起562p)の過剰な溶融が抑制される。これにより、意図しない電極変形を抑制できる。第2極性状態P2では、第1電極92と第2電極93の立場が逆である。したがって、2つの状態P1、P2を繰り返すことによって、2つの電極(第1電極92、第2電極93)のそれぞれにおける不具合を抑制できる。
【0067】
ここで、電流Iの波形が対称である場合、すなわち、電流Iの波形が「|Im1|=|−Im2|、Tp=Tn」という条件を満たす場合には、2つの電極(第1電極92、第2電極93)の間で、供給される電力の条件が同じである。したがって、2つの電極(第1電極92、第2電極93)の間の温度差が小さくなると推定される。ところが、このような対称の電流波形での駆動を維持し続けた場合でも、第1電極92、第2電極93はアーク放電に伴う熱などで消耗して、一般的に突起552pや562pの変形が進行してくる。突起552pや562pの変形が進行し、さらに扁平化すると、放電の輝点が不安定となるため、フリッカーが発生しやすい状況となり、プロジェクターの照射画面上で画質の乱れとなって現れる。
【0068】
また、比較的低い周波数の交流電流が供給されると、陽極時は電極が広い範囲にわたり加熱されすぎる(アークスポット(アーク放電に伴う電極表面上のホットスポット)が大きくなる)。それに伴い過剰な溶融により電極の形状が崩れ、同時に電極材料の飛散も増加する。逆に、電極が冷えすぎる(アークスポットが小さくなる)と電極の先端が十分に溶融できず、先端を滑らかに戻せない。また、低い周波数を供給する場合、陰極時には中途半端でありながら粒子衝突にさらされる期間が長くなる。すなわち、これらの要因によって電極の先端が変形しやすくなる。一方、高い周波数で交流駆動を行うと、アークスポットが小さくなるため、微弱な突起しか形成されず、アーク輝点となる電極突起が不明確となるため、複数の電極突起が形成され、その複数の突起間でアークジャンプを発生しやすくなる。したがって、電極に対して一様なエネルギー供給状態を継続すると、電極の先端(突起552p、562p)が意図しない形状に変形する、あるいはフリッカー現象が生じやすくなる。
【0069】
さらに、最近のプロジェクターでは一般的に高輝度モードと低輝度モードを具備していることが多い。定格電力を放電灯90に供給する高輝度モードよりも放電灯90への供給電力が低い低輝度モードでは、2つの電極(第1電極92、第2電極93)の放電時の温度が低くなるため、放電が安定化しにくい傾向となり、フリッカーはより発生しやすい状態になる。
【0070】
また、放電灯90の使用時間が長くなり、第1電極電極92、第2電極93が消耗し、両電極間の距離(アーク長)が長くなると、定常点灯時の電圧(駆動電圧Vla)が上昇する。一般的にプロジェクターで用いられている定電力動作の場合には、放電灯90の駆動電圧Vlaの上昇に伴って、放電灯90の点灯時の電流値が減少し、フリッカーが発生しやすい状態になる。
【0071】
(2)放電灯点灯装置の制御例
次に、第1実施形態に係る放電灯点灯装置10の制御の具体例について説明する。
制御部40は、放電灯90の点灯開始直後にイグナイター回路70を動作させ、放電灯90の電極間を絶縁破壊して放電路を形成する。放電路が形成されると、制御部40は、イグナイター回路70の動作を停止させ、所定の期間点灯始動用の駆動条件で電力制御回路20及び極性反転回路30を制御して放電灯90の電極間に始動用の駆動電流を供給する。その後、放電灯90が一定の電力で駆動可能になると、制御部40は、定常点灯時の駆動条件により所定の電力を放電灯90に供給するように、電力制御回路20及び極性反転回路30を制御する。
【0072】
第1実施形態に係る放電灯点灯装置10の制御部40は、定常点灯時の第1区間では第1直流駆動処理D1(第1直流駆動工程)と第1交流駆動処理A1(第1交流駆動工程)とを交互に行い、第1区間とは異なる第2区間では第2直流駆動処理D2(第2直流駆動工程)と第2交流駆動処理A2(第2交流駆動工程)とを交互に行う。
【0073】
図6(A)及び図6(B)は、定常点灯時の第1区間及び第2区間について説明するための図である。
【0074】
図6(A)に示す例では、制御部40は、第1直流駆動処理D1と第1交流駆動処理A1とを交互に行う第1区間と、第2直流駆動処理D2と第2交流駆動処理A2とを交互に行う第2区間とが交互に現れるように放電灯駆動部を制御している。
【0075】
また、図6(A)に示す例では、第1区間においては、第1直流駆動処理D1で始まり第1交流駆動処理A1で終わるように、第1直流駆動処理D1と第1交流駆動処理A1とを交互に行っている。同様に、第2区間においては、第2直流駆動処理D2で始まり第2交流駆動処理A2で終わるように、第2直流駆動処理D2と第2交流駆動処理A2とを交互に行っている。
【0076】
なお、制御部40は、第1区間及び第2区間とは異なる第3区間が現れるように放電灯駆動部を制御してもよい。例えば、図6(B)に示す例では、制御部40は、第1区間と第2区間との間に、第3の交流駆動処理A3を行う第3区間が現れるように放電灯駆動部を制御している。
【0077】
制御部40は、第1直流駆動処理D1では、駆動電流Iとして第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御を行い、第1交流駆動処理A1では、駆動電流Iとして第1周波数で第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御を行う。
【0078】
制御部40は、第2直流駆動処理D2では、駆動電流Iとして第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御を行い、第2交流駆動処理A2では、駆動電流Iとして第2周波数で第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御を行う。
【0079】
なお、例えば図6(A)及び図6(B)に示す例において、第1交流駆動処理A1における第1周波数、及び第2交流駆動処理A2の第2周波数は同じであってもよい。
【0080】
なお、例えば図6(B)に示す例において、制御部40は、第3交流駆動処理A3では、駆動電流Iとして第1周波数及び第2周波数とは異なる第3周波数で第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第3交流電流を供給する制御を行ってもよい。
【0081】
図7(A)は、定常点灯時において定格電力が放電灯90に供給される高輝度モードの第1区間における駆動電流Iの波形例、図7(B)は、定常点灯時において定格電力が放電灯90に供給される高輝度モードの第2区間における駆動電流Iの波形例を示すタイミングチャートである。図7(A)及び図7(B)においては、第1極性の駆動電流Iを正値、第2極性の駆動電流Iを負値としている。
【0082】
図7(A)に示す例では、制御部40は、時刻t0から時刻t1までの期間においては第1直流駆動処理D1を、時刻t1から時刻t2までの期間においては第1交流駆動処理A1を、時刻t2から時刻t3までの期間においては第1直流駆動処理D1を、時刻t3から時刻t4までの期間においては第1交流駆動処理A1を、それぞれ行っている。
【0083】
図7(A)に示す例では、制御部40は、第1直流駆動処理D1においては、第1交流駆動処理A1における駆動電流Iの1/2周期よりも長い時間に亘って同一極性(第1極性)を保持する駆動電流Iを供給する制御を行っている。
【0084】
また、図7(A)に示す例では、制御部40は、第1交流駆動処理A1においては、直前の第1直流駆動処理D1と同一極性(第1極性)となる位相から開始する矩形波交流となる駆動電流Iを供給する制御を行っている。
【0085】
図7(B)に示す例では、制御部40は、時刻t5から時刻t6までの期間においては第2直流駆動処理D2を、時刻t6から時刻t7までの期間においては第2交流駆動処理A2を、時刻t7から時刻t8までの期間においては第2直流駆動処理D2を、時刻t8から時刻t9までの期間においては第2交流駆動処理A2を、それぞれ行っている。
【0086】
図7(B)に示す例では、制御部40は、第2直流駆動処理D2においては、第2交流駆動処理A2における駆動電流Iの1/2周期よりも長い時間に亘って同一極性(第2極性)を保持する駆動電流Iを供給する制御を行っている。
【0087】
また、図7(B)に示す例では、制御部40は、第2交流駆動処理A2においては、第1交流駆動処理A1と同じく、第1直流駆動処理D1と同一極性(第1極性)となる位相から開始する矩形波交流となる駆動電流Iを供給する制御を行っている。
【0088】
駆動電流Iが直流である期間には同一極性で電流が流れるため、アークスポットが大きくなり、不要な突起等を含めて電極先端部を滑らかに溶かすことができる。駆動電流Iが交流である期間には第1極性と第2極性とを交互に繰り返す電流が流れるため、アークスポットが小さくなり、放電起点として必要な電極先端部の突起の成長を促進することができる。
【0089】
したがって、駆動条件(駆動電流Iが交流である期間における周波数、駆動電流Iが直流である期間の長さや、交流である期間の長さ等)を適切に設定することにより、駆動電流Iが直流である期間と交流である期間を交互に繰り返すことにより、良好な電極形状を維持し、放電灯90を安定して点灯することができる。
【0090】
しかしながら、上記駆動条件を放電灯90に定格電力を供給する高輝度モードに合わせて寿命を長くするために適切に設定している場合、定格電力よりも低い電力を放電灯90に共有する低輝度モードにおいても同一の条件で点灯すると、駆動電流Iの直流である期間が長すぎて直流駆動を行っているときに陰極側となる電極の突起部が変形する、あるいは駆動電流Iが交流である期間の周波数が低すぎる、あるいは交流である期間の長さが短すぎることなどによって突起552p及び突起562pが変形し、輝点が安定せず、フリッカーが発生する可能性がある。
【0091】
また、同一モードにおいて同一の駆動条件で放電灯90を点灯し続けると、第1電極92及び第2電極93は消耗し、突起552p及び突起562pが変形し、輝点が安定せず、フリッカーが発生する可能性がある。
【0092】
したがって、第1実施形態の放電灯点灯装置10では、制御部40が、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の少なくとも一方の長さを供給電力に応じて変化させる。例えば、図11に示すプロジェクターの回路構成の一例において、ユーザーの求めに応じてCPU580より放電灯点灯装置10に高輝度モードから低輝度モードに変更する外部信号を受けた場合、制御部40が、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の少なくとも一方の長さを、短くするように変化させてもよい。これにより、突起552p及び突起562pの変形を抑制し、輝点を安定させて、フリッカーを抑制することができる。
【0093】
本実施形態において、制御部40は、高輝度モードでは放電灯90に供給される電力が230W一定に維持されるように駆動電流Iを調整する電力制御をしており、また、低輝度モードでは放電灯90に供給される電力が160W一定に維持されるように駆動電流Iを調整する電力制御をする。高輝度モードでは、図7(A)及び図7(B)に示す例のように、第1直流処理D1を行う期間、及び第2直流処理D2を行う期間を0.077〔s〕とし、第1交流処理A1、及び第2交流処理A2の周波数を95Hz、周期数を3としている。
【0094】
高輝度モード時に図7(A)及び図7(B)に示す例のように放電灯90を点灯させると、放電による発熱量と第1電極92、第2電極93の熱的特性とに対して適切に駆動電流Iが制御されるため、突起552p、および突起562pが良好に保たれ、黒化などの問題も起こしにくく、長寿命の放電灯を実現することができる。
【0095】
しかしながら、低輝度モード時に図7(A)及び図7(B)に示す例のように放電灯90を点灯させると、第1直流処理D1を行う期間、及び第2直流処理D2を行う期間が長すぎて、第1電極92および第2電極93が陰極時に変形を受けるとともに、アークが安定せず、フリッカーが発生する可能性がある。
【0096】
それに対して、定常点灯時において低輝度モードが選択された場合には、図8(A)及び図8(B)に示す例ように、第1直流処理D1を行う期間、及び第2直流処理D2を行う期間を0.059〔s〕とし、第1交流処理A1、及び第2交流処理A2の周波数を95Hz、周期数を3としている。
【0097】
本実施例では、低輝度モードが選択された場合には高輝度モードの時の図7(A)及び図7(B)に示す例から、図8(A)及び図8(B)に示す例にすぐに変化させている。それにより、低輝度モードとなって、第1電極92及び第2電極93の先端部の温度が低下して、突起552p及び562pの溶融性が低下した場合に対しても、直流期間を短縮することで陰極側となる電極の変形を抑制して良好な形状の突起を保ち、フリッカーを抑制することが可能となる。
【0098】
また他の例として、制御部40が、上記高輝度モードから低輝度モードに変更するための外部信号を受け取った場合、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の少なくとも一方の長さを、段階的に減少していくように時間的に変化させてもよい。
【0099】
なお、上述の例では、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の両方の長さを減少させる例について説明したが、例えば放電灯90の第1電極92及び第2電極93の熱的条件(電極温度の上がりやすさ等)が大きく異なる場合には、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の長さのいずれか一方を変化させてもよい。
【0100】
3.第2実施形態に係る放電灯点灯装置
第2実施形態の放電灯点灯装置10では、定常点灯時において低輝度モードが選択された場合、制御部40は、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするとともに、さらに第1交流駆動処理A1及び第2交流駆動処理A2の少なくとも一方の周波数を高くする。
前述した第1実施形態では、低輝度モードが選択された場合には高輝度モードの時の図7に示す例から、図8の例に示す例に放電灯90に供給される駆動電流Iがすぐに変化し、直流期間が短縮され陰極側となる電極の変形を抑制できる一方で、低輝度モードで供給される駆動電流Iの値が高輝度モードの場合より低下し且つ直流期間が短縮されることで陽極時の第1電極92及び第2電極93の先端部の温度が低下して、突起552p及び562pの溶融性が低下する場合がある。
そこで、本実施形態では、低輝度モードが選択された場合には、直流期間を短縮することで陰極側となる電極の変形を抑制するとともに、交流の周波数を高くすることでアークの安定性を高め、両電極において良好な形状の突起を保ち、フリッカーを抑制することが可能となる。
【0101】
また、さらに、低輝度モードが選択された場合、制御部40は、第1交流駆動処理A1を行う期間及び第2交流駆動処理A2を行う期間の少なくとも一方の長さを、増加させるように変化させてもよい。
【0102】
図9(A)は、定常点灯時において高輝度モード時の第1区間における駆動電流Iの波形例を示すタイミングチャートである。図9(B)は、定常点灯時において低輝度モード時の第1区間における駆動電流Iの波形を示すタイミングチャートである。
図9(B)に示されるように本実施形態での低輝度モード時の駆動電流Iは、第1実施形態として図8(B)に示した第1交流駆動処理A1を行う周波数95Hzとする例に対して、165Hzまで高くした例について示している。
また、本実施形態では、図9(B)に示した低輝度モード時の駆動電流Iは、図9(A)に示した高輝度モード時の第1交流駆動処理A1における95〔Hz〕の周波数に対して第1交流駆動処理A1における周波数を165Hzにするとともに、周期数を3から11に増加させた例について示している。なお、本実施形態における駆動電流Iでは、第2区間の第2交流駆動処理A2についても、第1実施形態として図8(B)に示した例に対して周波数と周期数を本実施形態の第1区間の駆動電流Iと同様に変更する。
【0103】
図9(B)の一例に示す第1交流駆動処理A1における周波数を高める変更によって、交流駆動期間における一方の極性に保持される時間が短くなる。低輝度モード時は、第1電極及び第2電極93の先端の溶融性が高輝度モード時に比べて低下するため、一方の極性に保持される期間が長すぎるとより陰極側での突起変形を引き起こしやすい状態になる。そこで、交流駆動処理期間の周波数を高めることによって、低輝度モード時に直流駆動期間を短くすることによる突起の変形を抑制する効果をよりいっそう効果的にすることができ、低い電力で動作させる場合でもフリッカーの発生をより抑制することができる。
【0104】
さらに、図9(B)に示す例のように、交流駆動処理における周波数を高めるとともに、その周期数を増加させ、直流駆動処理期間の頻度を適切に減少させることにより、さらにより低い電力で動作させる場合にもフリッカーの発生を抑制することができる。
【0105】
4.第3実施形態に係る放電灯点灯装置
前記第1及び第2実施形態の放電灯点灯装置10では、制御部40は、図7〜図9に示す例のような制御によって電極消耗を抑制することが可能となるものの、放電灯90を同じモード(高輝度モード又は低輝度モード)で長時間点灯させた場合に、第1電極92における突起552p及び第2電極93の突起562pの間の距離の増加、すなわち劣化の進行を止めることはできない。
そこで本実施形態では、第1直流駆動処理D1を行う期間及び第2直流駆動処理D2を行う期間の少なくとも一方の長さを短くする変化、第1交流駆動処理A1を行う期間及び第2交流駆動処理A2を行う期間の少なくとも一方の周波数を増加させる変化、および第1交流駆動処理A1を行う期間及び第2交流駆動処理A2を行う期間の少なくとも一方の周期数を増加させる変化を電極間距離に応じて段階的に行う。一般的に突起552pおよび突起562pの間の距離が電極消耗によって増加すると定常点灯時の駆動電圧Vlaが高くなる。そのため、例えば、放電灯点灯装置10内部に設けた電圧検出部60により検出した駆動電圧Vlaに基づいて、制御部40が上述した段階的な変更を行うようにしてもよい。
【0106】
【表1】

表1には、低輝度モードにおいて駆動電圧Vlaに応じて、駆動パラメーターを変更する例を示している。表1に示すテーブルにおいては、駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周波数が高くなり、さらに駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周期数が多くなる。
【0107】
図10は、第3実施形態の放電灯点灯装置10の定常点灯時の制御例を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートでは、放電灯90が安定に点灯した後から消灯までの制御について示している。
まず、電圧検出部60が駆動電圧Vlaを検出する(ステップS100)。次に、制御部40は、記憶部44に記憶された表1に示すテーブルからステップS100で検出した駆動電圧Vlaに対応する駆動条件を選択する(ステップS102)。
図10のステップS102で駆動条件を選択した後に、制御部40は、駆動条件を変更する必要があるか否かを判定する(ステップS104)。制御部40が、駆動条件を変更する必要があるものと判定した場合(ステップS104でYESの場合)には、ステップS102で選択した駆動条件に変更して放電灯90を駆動する(ステップS106)。制御部40が、駆動条件を変更する必要がないものと判定した場合(ステップS104でNOの場合)には、従前の駆動条件で放電灯90を駆動し続ける。
ステップS104でNOの場合及びステップS106の後に、制御部40は、放電灯90の消灯命令があるか否かを判定する(ステップS108)。制御部40が、消灯命令があるものと判定した場合(ステップS108でYESの場合)には、放電灯90の点灯を終了(消灯)する(ステップS110)。制御部40が、消灯命令がないものと判定した場合(ステップS108でNOの場合)には、消灯命令があるまでステップS100〜ステップS108までの制御を繰り返す。
【0108】
これにより、同一モードでの駆動継続時間が長くなって放電灯90の電極の消耗が進行してしまい、駆動電流Ilaが減少し、低輝度モードにおけるフリッカーが発生しやすい状況となった場合でも、駆動電圧Vlaに応じて、上述した駆動処理のパラメーターを変更することによってフリッカーを抑制することができる。急激に交流駆動処理期間における周波数や周期数を増加させると、突起552p、および562pの溶融量が低下し、結果的に微小な突起となり、電極間距離の増大を招いてしまう。それに対して本実施形態では、駆動電圧Vlaに応じて、放電灯90の駆動条件を段階的な変更とすることによって、電極間距離の増加を抑制しながら、フリッカーを抑制することができる。
【0109】
なお、表1では低輝度モードの例について示したが、高輝度モードについても同様に対応することが可能となる。
【0110】
また、表1に示した駆動電圧Vlaの範囲や駆動パラメーターを変更する回数は放電灯の仕様によって適宜設定でき、また、交流駆動処理期間A1及び交流駆動処理期間A2における周波数、または周期数の一方を変化させているが、同時に変更しても構わない。
【0111】
(1)第3実施形態の変形例1
上記第3実施形態では、定常点灯時の駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周波数が高くなり、さらに駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周期数が多くなる駆動条件(表1)のテーブルから、検出された駆動電圧Vlaに適した駆動条件を選択していた。変形例1ではさらに、駆動電圧Vlaが高くなると、直流駆動処理期間の長さを短くする駆動条件(表2)とすることも可能である。
【0112】
【表2】

表2には、低輝度モードにおいて駆動電圧Vlaに応じて、駆動パラメーターを変更する例を示している。表2に示すテーブルにおいては、駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周波数が高くなり、さらに駆動電圧Vlaが高くなると、交流駆動処理期間における周期数が多くなるとともに、駆動電圧Vlaが高くなると、直流駆動処理期間が長くなる。
【0113】
(2)第3実施形態の変形例2
上記第3実施形態では、所定の条件として定常点灯時に検出した駆動電圧Vlaの値に応じて駆動条件を選択していたが、定常点灯時に駆動電流Ilaを検出して、検出された駆動電流Ilaを所定の条件として駆動条件を選択することも可能である。
【0114】
【表3】

表3には、低輝度モードにおいて駆動電流Ilaに応じて、駆動パラメーターを変更する例を示している。表3に示すテーブルにおいては、駆動電圧Ilaが低くなると、交流駆動処理期間における周波数が高くなり、さらに駆動電流Ilaが低くなると、交流駆動処理期間における周期数が多くなるとともに、駆動電流Ilaが高くなると、直流駆動処理期間が長くなる。
【0115】
5.プロジェクターの回路構成
図11は、本実施の形態に係るプロジェクターの回路構成の一例を示す図である。プロジェクター500は、先に説明した光学系の他に、画像信号変換部510、直流電源装置520、放電灯点灯装置10、放電灯90、液晶パネル560R、560G、560B、画像処理装置570を含む。
【0116】
画像信号変換部510は、外部から入力された画像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R、512G、512Bを生成し、画像処理装置570に供給する。
【0117】
画像処理装置570は、3つの画像信号512R、512G、512Bに対してそれぞれ画像処理を行い、液晶パネル560R、560G、560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R、572G、572Bを出力する。
【0118】
直流電源装置520は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換し、トランス(図示しないが、直流電源装置520に含まれる)の2次側にある画像信号変換部510、画像処理装置570及びトランスの1次側にある放電灯点灯装置10に直流電圧を供給する。
【0119】
放電灯点灯装置10は、起動時に放電灯90の電極間に高電圧を発生して絶縁破壊させて放電路を形成し、以後放電灯90が放電を維持するための駆動電流Iを供給する。
【0120】
液晶パネル560R、560G、560Bは、それぞれ駆動信号572R、572G、572Bにより、先に説明した光学系を介して各液晶パネルに入射する色光の輝度を変調する。
【0121】
CPU(Central Processing Unit)580は、プロジェクターの点灯開始から消灯に至るまでの動作を制御する。例えば、点灯命令や消灯命令を、通信信号582を介して放電灯点灯装置10に出力してもよい。また、CPU580は、放電灯点灯装置10から放電灯90の点灯情報を、通信信号532を介して受け取ってもよい。
【0122】
このように構成したプロジェクター500は、放電灯90内における定常的な対流の形成をより抑えて、電極の偏った消耗や電極材料の偏った析出を防止することができる。
【0123】
上記各実施形態においては、3つの液晶パネルを用いたプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。
【0124】
上記各実施形態においては、透過型のプロジェクターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型のプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶パネル等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶パネルやマイクロミラー型光変調装置などのように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス;Texas Instruments社の商標)を用いることができる。反射型のプロジェクターにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクターと同様の効果を得ることができる。
【0125】
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクターに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクターに適用する場合にも可能である。
【0126】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0127】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0128】
例えば、上述の実施形態においては、駆動電流Iとして供給する交流電流として、第1極性の所定電流値が継続する期間と第2極性の所定電流値が継続する期間とを交互に繰り返す交流電流(矩形波交流電流)を例にとり説明したが、駆動電流Iとして供給する交流電流は、第1極性又は第2極性が継続する期間中に電流値が変化する交流電流としてもよい。
【0129】
また、例えば、第1直流駆動処理、第2直流駆動処理を行う期間、第1交流駆動処理及び第2交流駆動処理を行う周波数及び周期数は、放電灯の仕様等に合わせて任意に設定することが可能である。
【0130】
また、第1直流駆動処理、第2直流駆動処理を行う期間、第1交流駆動処理及び第2交流駆動処理を行う周波数及び周期数はそれぞれ同一としたが、放電灯90、および第1電極92、第2電極93の置かれる熱的、または光学的に非対称な場合など、適宜差異を設けても構わない。
【0131】
また、第1直流駆動処理、第2直流駆動処理を行う期間、第1交流駆動処理及び第2交流駆動処理を行う周波数及び期間を所定の設定値まで連続的に変化させることも可能である。
【0132】
また、本発明のプロジェクターでは高輝度モードと低輝度モードをそれぞれ一例ずつ示したが、輝度モードを二つ以上持つ場合は、第1直流駆動処理、第2直流駆動処理を行う期間、第1交流駆動処理及び第2交流駆動処理を行う周波数及び周期数を各々の輝度モードに対して適切なに設定することが可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 放電灯点灯装置、20 電力制御回路、21 スイッチ素子、22 ダイオード、23 コイル、24 コンデンサー、30 極性反転回路、31〜34 スイッチ素子、40 制御部、40−1 電流制御手段、40−2 極性反転制御手段、41 システムコントローラー、42 電力制御回路コントローラー、43 極性反転回路コントローラー、44 記憶部、50 副反射鏡、60 電圧検出部、61〜63 抵抗、70 イグナイター回路、80 直流電源、90 放電灯、91 放電空間、92 第1電極、93 第2電極、112 主反射鏡、114 固定部材、200 光源装置、210 光源ユニット、305 平行化レンズ、310 照明光学系、320 色分離光学系、330R,330G,330B 液晶ライトバルブ、340 クロスダイクロイックプリズム、350 投写光学系、500 プロジェクター、502 画像信号、510 画像信号変換部、512R 画像信号(R)、512G 画像信号(G)、512B 画像信号(B)、520 直流電源装置、522 固定部材、532 通信信号、534 導電性部材、536 第1端子、544 導電性部材、546 第2端子、552p 突起、560G 液晶パネル(G)、560B 液晶パネル(B)、562p 突起、570 画像処理装置、572R 液晶パネル(R)駆動信号、572G 液晶パネル(G)駆動信号、572B 液晶パネル(B)駆動信号、580 CPU、582 通信信号、600 交流電源、700 スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯に駆動電流を供給し、前記放電灯を駆動する放電灯駆動部と、
前記放電灯駆動部を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、
第1区間では第1直流駆動処理と第1交流駆動処理とを交互に行い、
前記第1区間とは異なる第2区間では第2直流駆動処理と第2交流駆動処理とを交互に行い、
前記第1直流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御を行い、
前記第1交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御を行い、
前記第2直流駆動処理では、前記駆動電流として第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御を行い、
前記第2交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御を行い、
所定の条件が満たされた場合には、前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、前記所定の条件が満たされた場合には、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数の平均値を高くする放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の放電灯点灯装置において、
前記制御部は、前記所定の条件が満たされた場合には、第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを長くする放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の放電灯点灯装置において、
前記所定の条件は、外部から前記放電灯の動作電力を所定値以上低減する信号を受けることである放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1乃至3に記載の放電灯点灯装置において、
前記所定の条件は、前記放電灯の定常点灯時の電圧が所定値以上に上昇することである放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1乃至3に記載の放電灯点灯装置において、
前記所定の条件は、前記放電灯の定常点灯時の電流が所定値以下に低下することである放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の放電灯点灯装置を具備するプロジェクター。
【請求項8】
放電灯に駆動電流を供給することにより点灯する放電灯の駆動方法であって、
第1区間では第1直流駆動処理と第1交流駆動処理とを交互に行い、
前記第1区間とは異なる第2区間では第2直流駆動処理と第2交流駆動処理とを交互に行い、
前記第1直流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性から始まって第1極性成分で構成される第1直流電流を供給する制御を行い、
前記第1交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第1交流電流を供給する制御を行い、
前記第2直流駆動処理では、前記駆動電流として第2極性から始まって第2極性成分で構成される第2直流電流を供給する制御を行い、
前記第2交流駆動処理では、前記駆動電流として第1極性成分と第2極性成分とを繰り返す第2交流電流を供給する制御を行い、
所定の条件が満たされた場合には、前記第1直流駆動処理を行う期間及び前記第2直流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを短くするように変化させる放電灯の駆動方法。
【請求項9】
請求項8に記載の放電灯の駆動方法であって、
前記所定の条件が満たされた場合には、前記第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の周波数を高くするように変化させる放電灯の駆動方法。
【請求項10】
請求項8乃至9のいずれか一項に記載の放電灯の駆動方法であって、
前記所定の条件が満たされた場合には、前記第1交流駆動処理を行う期間及び前記第2交流駆動処理を行う期間の少なくとも一方の長さを長くするように変化させる放電灯の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−98147(P2013−98147A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243130(P2011−243130)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】