説明

放電灯点灯装置

【課題】 トランスの数を減らし、小型で省スペース化した低価格の放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】 2個のインバータトランス23、24の2次巻線をそれぞれ2本の冷陰極蛍光管21、22の電極に接続して点灯する放電灯点灯装置において、2つのトランスの2次巻線と2本の冷陰極蛍光管がフローテイング接続され、2個のインバータトランスはリーケージインダクタンス型であり、それぞれのリーケージインダクタンスLBが冷陰極蛍光管のバラストインダクタンスとして管電流を制御する機能を有する。U字管と1個のインバータトランスでも同様に点灯できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビなどの液晶画面のバックライトとして用いられる大画面多灯点灯用のバックライトに用いられる放電灯点灯装置に係るもので、インバータトランスと冷陰極蛍光管との接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
52インチといった大画面の液晶テレビでは、多数の冷陰極蛍光管(CCFL)を平面的に配置して点灯させる必要がある。そのために複数の直管のCCFLを並べてそれぞれをインバータ回路を用いて点灯している。直管をU字形のCCFLに代えて用いる場合もある。
【0003】
インバータ回路は、入力電圧をインバータトランスを用いて駆動電圧に昇圧し、かつ安定した電圧を得るために管電流を安定させることも必要となる。多数のCCFLを点灯させる場合には、インバータトランスの数を最小限にするとともにその形状をできるだけ小さくすることが望ましい。また、回路素子をできるだけ少なくして回路構成を簡略化することも検討しなければならない。
【0004】
インバータトランスには高結合型(リーケージインダクタンスが少ない)と漏洩磁束を利用するリーケージ型とがある。前者はリーケージインダクタンスが小さいために出力電流が過大となることがあるため、バラストコンデンサを用いて出力を調整する対策が採られている。それに対してリーケージ型ではトランスのコア構造などによって結合を調整することができるので、それを利用してトランスの出力電流を調整することが可能となる。
【0005】
前記のように、多灯点灯においてはトランスの数を減らすことが望ましいので、いわゆる2(ツー)イン1(ワン)と呼ばれるトランスを用いることがある。そのような2イン1のトランスを2個用いて2本のCCFLを点灯する例を図7に示す。2本のCCFL71、72の一端に一方のトランス73の2次巻線の出力端を接続し、CCFL71、72の他端にトランス74の2次巻線の出力端を接続する。この例では図に示したリーケージインダクタンスLBによって電流調整を行っている。
【0006】
また、1出力のトランスと分流コイルを用いる例を図8に示す。インバータトランス83、84の2次巻線の出力を分流コイル85、86によって2つに分けてCCFL81、82にそれぞれ接続するものである。結合された分流コイルによって管電流を安定させている。
【0007】
上記のいずれの構造においても、部品点数が多くなり、基板における占有面積も大きくなって基板全体の大型化は避けられない。高結合(結合が調整できない)トランスを用いると、リーケージインダクタンスの調整は巻き数のみで行わなければならなくなる。そのため、リーケージインダクタンスを得るためには巻き数が膨大となってしまい、設計の自由度が低くなり、また素材の使用量が増大してコスト上昇が避けられない。
【0008】
通常の1イン1トランスとして1次巻線と2次巻線が近接したり、フェライトコアと2次巻線が近接したトランスを用いる場合、2次側の両端を逆相で出力させてフローテイングで用いると1次巻線と2次巻線間あるいはフェライトコアと2次巻線間で放電してしまうので、フローテイングで使用することはできない。
【特許文献1】特開2006‐221994号公報
【特許文献2】特開2007‐59155号公報
【特許文献3】再表WO2004‐109722号
【特許文献4】特開平8−124772号公報
【特許文献5】特開平10−233325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の1イン1のトランスを用いて2本のCCFLを点灯させてトランスの数を減らし、小型で省スペース化した低価格の放電灯点灯装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、リーケージ型のトランスを用いて2次側の両端をそれぞれCCFLに接続してフローテイング接続することによって、上記の課題を解決するものである。すなわち、2個のインバータトランスの2次巻線をそれぞれ2本の冷陰極蛍光管の電極に接続して点灯する放電灯点灯装置において、2つのトランスの2次巻線と2本の冷陰極蛍光管がフローテイング接続され、2個のインバータトランスはリーケージインダクタンス型であり、それぞれのリーケージインダクタンスが冷陰極蛍光管のバラストインダクタンスとして管電流を制御する機能を有することに特徴を有するものである。
【0011】
また、インバータトランスの2次巻線をそれぞれU字形の冷陰極蛍光管の一方の電極に接続して点灯する放電灯点灯装置において、トランスの2次巻線と2本の冷陰極蛍光管がフローテイング接続され、インバータトランスはリーケージインダクタンス型であり、それぞれのリーケージインダクタンスが冷陰極蛍光管のバラストインダクタンスとして管電流を制御する機能を有することに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1イン1(シングル)トランスで2本のCCFLを同時点灯駆動できる。基板に占めるトランスの面積を最小限に抑えることができるので、省スペース化が容易となり、コスト低減も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による放電管点灯装置の構成要素は次のものである。
(1)インバータトランス:(a)リーケージインダクタンスを有する構造であり、かつ
(b)2次側の両端がCCFLの電極に接続される。
(2)CCFL:直管(またはU字管)の両端がインバータトランスの2次巻線にフローテイングで接続される。
(3)リーケージインダクタンス:トランスの2次巻線とCCFL間のバラストインダクタとなって管電流を安定させる。
CCFLは並列点灯される場合は逆相で点灯される。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0015】
図1は、本発明に用いるリーケージ型のトランスの例を示す正面断面図である。フェライト磁性体によるEコア100の一つの脚部に取り付けた1次ボビン101に1次巻線102を巻回し、他の脚部に取り付けた2次ボビン103に2次巻線104を巻回す。1次ボビン101と2次ボビン103とは別個に分離して形成し、水平方向に間隔を置いて配置して耐圧を高める構造を採用している。
【0016】
Eコア100はスペーサ105を介してIコア106と対向して磁路を形成しており、スペーサ105を介することによるギャップを備えることによって磁気飽和を抑える構造となっている。Eコア100の巻線を施す2つの脚部間に1次/2次間の結合を調整する突起107が形成されており、この突起107の高さ(すなわちIコア106との間隔)によってこの突起107を通過する磁束を調整することができ、それによって1次巻線と2次巻線との結合を調整することができる。
【0017】
1次巻線と2次巻線の結合を調整することは、インバータトランスのリーケージインダクタンスを調整することを意味する。すなわち、2次巻線のインダクタンスLSとリーケージインダクタンスLBは、LB=(1−k2)LS(ただしkは結合係数)の関係があるので、結合係数kを調整すれば任意のリーケージインダクタンスLBを得ることができる。つまり、トランスのインダクタンスに対して独立してリーケージインダクタンスを設定できることを意味する。
【0018】
図2は本発明の実施例を示す回路図である。2本のCCFL21、22の一端の電極にリーケージ型のインバータトランス23の2次巻線の両端が接続され、CCFLの他端にインバータトランス24の2次巻線の両端が接続されている。リーケージインダクタンスLBがCCFLとトランス間に接続されたのと等価な回路構成となる。これによって、2次巻線−CCFL−2次巻線‐CCFLのフローテイングとされた回路が構成され、2つのCCFLが逆相で駆動されて点灯する。
【0019】
図3は本発明の他の実施例を示す回路図である。2本のCCFLと2つのインバータトランスとをフローテイング状態で接続して2本のCCFLを逆相で点灯させることは図2の例と同じである。この例においては、2本のCCFLの電極間に共振コンデンサC1、C2を直列に接続し、コンデンサC1、C2の中点に抵抗Rを接続して接地し、この中点の電圧を検出して点灯状態の異常を検出するものである。一方のCCFLが点灯しないとこの中点の電圧が変化するので、その変化を検出した信号をフィードバックして駆動回路の動作を制御することができる。
【0020】
図4は、インバータトランスを2イン1構造として、インバータトランスの2次側を2つの巻線としてそれぞれの両端から出力を得て、計4本のCCFLを点灯させるものである。2本のCCFLについて見ると、図2と全く同じ回路構成となっており、トランスの1入力に対して2つの出力トランスが配置されて4本の冷陰極管が接続されるものである。1入力に対して3つ以上の出力トランスを配置して、その2倍の数のCCFLに接続することも可能となる。
【0021】
図5は、1イン1トランスで1本のU字管を点灯する例を示したものである。インバータトランスの2次側にリーケージインダクタンスLBを介してU字管の両端の電極に接続したものである。この場合にも、両端の電圧は逆相となるので所定の駆動電圧が印加されて点灯され、リーケージインダクタンスLBのバラスト作用によって管電流を制御することができる。図6はU字管を一端を短絡した2本の直管に代えたものである。
【0022】
本発明は上記の例に限られるものではなく、複数のCCFLを点灯する装置に利用可能である。また、トランスの構造も前記の例の構造だけでなく、他のリーケージインダクタンスを有するインバータトランスを使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、大画面の液晶テレビ等複数の長いCCFLを多数配列して点灯させる場合に特に有用で、基板の省スペースや低コスト化が要求される液晶表示装置に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に使用するトランスの例の正面断面図
【図2】本発明の実施例を示す回路図
【図3】本発明の他の実施例を示す回路図
【図4】本発明の他の実施例を示す回路図
【図5】本発明の他の実施例を示す回路図
【図6】本発明の他の実施例を示す回路図
【図7】2イン1トランスを用いた従来の例を示す回路図
【図8】分流回路を用いた従来の例を示す回路図
【符号の説明】
【0025】
100、106:コア
101、103:ボビン
102:1次巻線
104:2次巻線
106:スペーサ
107:突起
21、22、81、82:冷陰極蛍光管(CCFL)
23、24、83、84:インバータトランス
85、86:分流コイル
LB:バラストインダクタンス(リーケージインダクタンス)
C1、C2:共振コンデンサ
R:抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のインバータトランスの2次巻線をそれぞれ2本の冷陰極蛍光管の電極に接続して点灯する放電灯点灯装置において、
2つのトランスの2次巻線と2本の冷陰極蛍光管がフローティング接続され、
2個のインバータトランスはリーケージインダクタンス型であり、
それぞれのリーケージインダクタンスが冷陰極蛍光管のバラストインダクタンスとして管電流を制御する機能を有する
ことを特徴とする放電管点灯装置。
【請求項2】
インバータトランスの2次巻線をそれぞれU字形の冷陰極蛍光管の一方の電極に接続して点灯する放電灯点灯装置において、
トランスの2次巻線と2本の冷陰極蛍光管がフローティング接続され、
インバータトランスはリーケージインダクタンス型であり、
それぞれのリーケージインダクタンスが冷陰極蛍光管のバラストインダクタンスとして管電流を制御する機能を有する
ことを特徴とする放電管点灯装置。
【請求項3】
インバータトランスの1次巻線と2次巻線は水平方向に間隔を置いて配置されたコアの脚部に巻回されており、コアの中央に1次巻線と2次巻線の結合を調整する突起を備えた請求項1または請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
突起の長さを調整することによって1次巻線と2次巻き線の結合を調整してリーケージインダクタンスを調整する請求項3記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
同じインバータトランスの2次側に接続される冷陰極蛍光管の電極間に共振コンデンサを接続してその中点の電圧を検出することによって点灯状態の異常を検出する手段を備えた請求項1または請求項2記載の放電灯点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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