説明

放電灯点灯装置

【課題】放電灯の寿命を犠牲にすることなく、フリッカの発生を効果的に抑制する放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】電流パルス発生回路56は、ランプ電圧VLを反映した検出電圧VDを劣化閾値電圧Vaと比較し、検出電圧VDが劣化閾値電圧Vaより大きい場合には、フリッカの兆候が現れているものとして、その劣化度(差分値ΔV)に応じた電流パルス制御値CCをDC/DC制御回路57供給する。DC/DC制御回路57は、電流パルス制御値CCが非ゼロである場合、給電極性反転タイミングが電流パルスの終了タイミングとなるように、給電極性反転周期の前半部分では定電力制御値CPがデューティ制御値となり、該周期の後半部分では定電力制御値CPに電流パルス制御値CCを加えたものがデューティ制御値となるように、給電極性反転タイミングに同期してデューティ制御値を切り替えることにより、電流パルスを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形状の交番電力を印加して放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キセノンガス,水銀,ヨウ化金属などが密封された管(バルブ)の両端に電極が設けられた構造を有し、これら電極の間に起きる放電現象によって発光する放電灯が知られており、車両の前照灯等として広く用いられている。
【0003】
このような放電灯を点灯させる放電灯点灯装置は、点灯時に両電極間の絶縁状態を破壊するための高電圧(例えば約20kV)を印加する制御や、点灯後に放電灯の明るさを一定に保つために、供給電力を一定に保つ制御を行うように構成されている。
【0004】
ところで、放電灯は、長期間使用すると、ガス抜けや電極磨耗等によって、電極間に印加する電圧(以下「ランプ電圧」とう)が増大する現象が生じる。但し、放電灯は、上述したように、供給電力が一定となるように制御されているため、ランプ電圧が増大すると、放電灯を流れる電流(以下「ランプ電流」という)が減少する。
【0005】
そして、ランプ電流が減少すると、電極や管内の温度が低下し、管内での活性が低下する。その結果、交番電力の極性反転時、即ち、ランプ電流の流れる向きが反転する時に、電流が一時的にゼロとなる付近で、放電灯における放電が不安定となり、これが放電灯のちらつき(フリッカ)や立ち消えや電磁ノイズ等の原因となっていた。
【0006】
そこで、これらを抑制するために、交番電力の極性反転の直前に、電流パルスを重畳することで、一時的にランプ電流を増大させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3741727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、放電灯の劣化状況によらず電流パルスを常時投入しているため、電気的なストレスにより、電極磨耗を促進するなど放電灯の寿命を短くする要因にもなり得るという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、放電灯の寿命を犠牲にすることなく、フリッカの発生を効果的に抑制する放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の放電灯点灯装置では、給電手段が、一定期間毎に極性が反転する矩形波状の交番電力を放電灯に供給し、検出手段が、放電灯の電極間を流れる電流であるランプ電流および該放電灯の電極間に生じる電圧であるランプ電圧を検出し、制御手段が、検出手段での検出結果に従って、放電灯への供給電力が一定となるように給電手段を制御する。
【0011】
また、本発明の放電灯点灯装置は、給電手段が供給する交番電力に、該交番電力の極性反転タイミングに同期して電流パルスを重畳するパルス重畳手段を備えており、劣化判定手段が、検出手段での検出結果から放電灯の劣化度を判定し、パルス制御手段が、劣化度判定手段での判定結果に従い、劣化度が大きいほど、パルス重畳手段によって交番電力に重畳される電流パルスの振幅またはパルス幅のうち少なくとも一方を増大させる。
【0012】
このように構成された本発明の放電灯点灯装置によれば、放電灯の劣化度に応じて必要なタイミングで電流パルスの重畳が行われるため、電流パルスの過剰な重畳による放電灯の電極磨耗を抑えることができ、その結果、放電灯の寿命を犠牲にすることなく、放電灯の劣化に伴うフリッカの発生を抑制することができる。
【0013】
ところで、劣化度判定手段は、例えば、検出手段にて検出されるランプ電圧と予め設定された劣化閾値電圧との差分値を用い、ランプ電圧の方が大きいほど劣化度が大きいと判定するように構成されていてもよい。
【0014】
即ち、放電灯は寿命末期になるほど電極間距離が広がってフリッカが発生し易くなり、また、電極間距離が広がるほど定常的なランプ電圧が増大することが知られている。つまり、定常的なランプ電圧と、放電灯の寿命(ひいはフリッカの発生し易さ)との間には相関関係があるため、ランプ電圧から放電灯の劣化度を判定することができるのである。
【0015】
また、劣化度判定手段は、例えば、検出手段にて検出されるランプ電圧が予め設定された異常閾値電圧を超えた回数をカウントした異常電圧カウント値を用い、予め設定された判定期間内でカウントされる前記異常電圧カウント値が大きいほど劣化度が大きいと判定するように構成されていてもよい。
【0016】
即ち、フリッカが発生すると、ランプ電流が途切れたり減少したりすることにより、ランプ電圧が一時的に急増して異常電圧を発生する現象が生じるため、この異常電圧の発生頻度から、放電灯の劣化度を判定することができるのである。
【0017】
また、劣化度判定手段は、例えば、交番電力の極性が反転する時に、ランプ電流が流れていないと見なせる状態が、予め設定された継続時間以上続いた回数をカウントしたゼロ期間カウント値を用い、予め設定された判定期間内でカウントされる前記ゼロ期間カウント値が大きいほど劣化度が大きいと判定するように構成されていてもよい。
【0018】
即ち、上述したように、フリッカが発生すると、ランプ電流が途切れたり減少したりするため、その現象をランプ電流から抽出することで、放電灯の劣化度を判定することができるのである。
【0019】
ところで、パルス制御手段は、劣化度合いが予め設定された許容レベルを超えた場合に、前記パルス重畳手段に前記電流パルスの重畳を行わせるように構成してもよい。
特に、定常的なランプ電圧の大きさから劣化度を判定する場合は、フリッカが発生する前でも、ランプ電圧が除々に増大するため、このような制御を行うことによって、電流パルスの過剰な印加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の放電灯点灯装置の構成を示すブロック図。
【図2】(a)が算出電力から定電力制御値への変換特性を模式的に示したグラフ、(b)が検出電圧から電流パルス制御値への変換特性を模式的に示したグラフ。
【図3】放電灯点灯装置の動作例を示す模式図。
【図4】(a)が電流パルスのない場合のランプ電流の波形図、(b)が電流パルスのある場合のランプ電流の波形図。
【図5】(a)が第2実施形態における電流パルス発生回路での変換特性を示すグラフ、(b)〜(d)がおよび装置各部の動作例を示す模式図。
【図6】第3実施形態の放電灯点灯装置の構成を示すブロック図。
【図7】(a)が第2実施形態における電流パルス発生回路での変換特性を示すグラフ、(b)〜(d)がおよび装置各部の動作例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る車両の前照灯として使用される放電灯Lの点灯を制御する放電灯点灯装置1の構成を示すブロック図(一部回路図を含む)である。
【0022】
なお、放電灯Lは、気体が密封された管の両端に電極が設けられ、これら電極の間に起きる放電現象によって発光する周知のものである。
図1に示すように、放電灯点灯装置1は、車両のバッテリBから供給される直流電力を矩形状の交番電力に変換して放電灯Lに供給する給電回路3と、放電灯Lを点灯させると共に、点灯した放電灯Lの明るさが一定となるように給電回路3の動作を制御する制御回路5とを備えている。
【0023】
<給電回路>
給電回路3は、バッテリBから供給される直流電力を昇圧するDC/DCコンバータ10と、DC/DCコンバータ10によって昇圧された直流電力を、矩形波状の電圧波形を有する交番電力に変換して放電灯Lに印加するインバータ20とからなる。
【0024】
このうち、DC/DCコンバータ10は、バッテリBおよびトランジスタ12と共に閉回路を形成するトランス11の一次コイル111に流れる電流を、トランジスタ12によって断続することにより、トランス11の二次コイル112に高電圧の交流電力を発生させ、その交流電力を整流回路14により整流することで、直流電力を発生させる周知のものである。
【0025】
但し、DC/DCコンバータ10では、一次コイル111と二次コイル112の接地側端子が共通に接続され、その共通端子がトランジスタ12を介して接地されるように接続されている共に、一次コイル111およびトランジスタ12と並列に、コンデンサ13が接続されている。また、整流回路14には、ダイオード141およびコンデンサ142で構成された周知の半波整流回路が用いられている。
【0026】
なお、DC/DCコンバータ10は、ここで例示した構成に限定されるものではなく、電圧を昇圧して所望の直流電力を供給できるものであればよい。
インバータ20は、制御回路5からの指令に従ってスイッチング制御される4個のトランジスタ211〜214で構成され、負荷として放電灯Lが接続された周知のHブリッジ回路21と、二次コイル222が放電灯Lと直列に接続されたトランス22と、制御回路5からの指令に従って、トランス22の一次コイル221の通電,非通電状態を切り替えることで、二次コイル222に放電灯Lを点灯するのに必要な点灯用高電圧(約20kV)を発生させる始動回路23と、Hブリッジ回路21に流れる電流、ひいては放電灯Lを流れる負荷電流を検出するための電流検出用抵抗24とを備えている。
【0027】
以下では、放電灯Lの電極間に流れる電流をランプ電流IL、放電灯Lの電極間に生じる電圧をランプ電圧VL、放電灯Lへの供給電力をランプ電力WL(=VL×IL)という。また、トランジスタ211,214をオン、トランジスタ212,213をオフした時のランプ電流IL,ランプ電圧VL,ランプ電力WLの極性(以下「給電極性」という)を正極性とし、トランジスタ211,214をオフ、トランジスタ212,213をオンした時の給電極性を負極性とする。
【0028】
なお、ここではインバータ20が、Hブリッジ回路21を用いて構成されているが、これに限定されるものではなく、直流電力を交流電力に変換できるものであればよい。
<制御回路>
制御回路5は、放電灯Lの給電極性が予め設定された給電極性反転周期(例えば、数m〜数百ms周期)で交互に切り替わるように、Hブリッジ回路21の各トランジスタ21〜24をオンオフ駆動するブリッジ制御回路51と、外部から点灯指令が入力されると、始動回路23を作動させることで放電灯Lを点灯させると共に、ブリッジ制御回路51を起動して矩形状の電圧波形を有する交番電力を放電灯Lに供給し続けることで点灯状態を継続させる始動制御回路52とを備えている。
【0029】
また、制御回路5は、DC/DCコンバータ10からインバータ20に印加される電圧(検出電圧)VD(ひいてはランプ電圧VL)の大きさを検出するランプ電圧検出回路53と、電流検出用抵抗24の両端電圧を検出することで、電流検出用抵抗24を流れる検出電流ID(ひいてはランプ電流IL)の大きさを検出するランプ電流検出回路54と、ランプ電圧検出回路53およびランプ電流検出回路54での検出結果VD,IDから算出される算出電力WD(ひいてはランプ電力WL)の大きさが、予め設定された目標電力と一致するように制御するための定電力制御値CPを発生させるランプ電力制御回路55と、ランプ電圧検出回路53での検出結果に基づき、電流パルスを発生させるための電流パルス制御値CCを発生させる電流パルス発生回路56と、定電力制御値CPおよび電流パルス制御値CCに基づいて設定されるデューティ制御値に従い、デューティ制御値に応じたデューティ比を有する駆動信号SDを、ブリッジ制御回路51が給電極性を反転させる給電極性反転タイミングに同期して発生させて、トランジスタ12をスイッチングするDC/DC制御回路57とを備えている。
【0030】
ここで、図2は、(a)がランプ電力制御回路55にて算出電力WD(ひいてはランプ電力WL)から定電力制御値CPを生成する際に用いる変換特性を模式的に示したグラフであり、(b)が電流パルス発生回路56にて検出電圧VDから電流パルス制御値CCを生成する際に用いる変換特性を模式的に示したグラフである。
【0031】
図2(a)に示すように、定電力制御値CP(ひいては駆動信号SDのオンデューティ期間)は、算出電力WDが目標電力より大きいほど小さな値となり、また、目標電力より小さいほど大きな値となるように設定される。
【0032】
また、図2(b)に示すように、電流パルス制御値CCは、予め設定された劣化閾値電圧Vaより検出電圧VDの方が小さい間はゼロに設定され、劣化閾値電圧Vaより検出電圧VDの方が大きくなると、その差分値(VD−Va)が大きいほど大きな値となるように設定される。
【0033】
但し、駆動信号SDのデューティ周期TDは、発生させる電流パルスのパルス幅TPより十分に短く(例えば、TD<TP/10)、また、パルス幅TPは、放電灯Lへの印加電力の給電極性反転周期TXより短く(例えば、TP<TX/2)設定される。
【0034】
また、DC/DC制御回路57は、電流パルス制御値CCがゼロである場合は、定電力制御値CPをデューティ制御値とし、電流パルス制御値CCが非ゼロである場合、給電極性反転タイミングが電流パルスの終了タイミングとなるように、給電極性反転タイミングに挟まれた期間(給電極性反転周期)の前半部分では定電力制御値CPがデューティ制御値となり、該期間の後半部分では定電力制御値CPに電流パルス制御値CCを加えたものがデューティ制御値となるように、給電極性反転タイミングに同期してデューティ制御値を切り替えるように構成されている。これにより、給電極性反転周期の後半部分では放電灯Lへの供給電力が増大するが、ランプ電圧VLは供給電力によらず放電灯Lの状態に応じた一定値となるため、結果的に、ランプ電流ILが増大することによって、図4に示すように、電流パルスが重畳されることになる。なお、図4は、ランプ電流ILの波形図であり、(a)が電流パルスのない場合、(b)が電流パルスのある場合である。
【0035】
なお、ランプ電圧検出回路53およびランプ電流検出回路54は、電流パルス制御値CCの影響を受けない(電流パルスが重畳されることのない)タイミング(給電極性反転タイミングに挟まれた期間の前半部分)で、検出電圧VDや検出電流IDを検出するように構成されている。但し、検出電圧VDや検出電流IDは、検出値をそのまま用いてもよいし、過去一定期間の算出値に基づく移動平均値や、前回算出値との過重平均値等を用いてもよい。
【0036】
また、電流パルス発生回路56、およびDC/DC制御回路57のデューティ制御値を生成するための構成以外は周知のものであるためその詳細についての説明は省略する。また、電流パルス発生回路56は、劣化閾値電圧Vaを発生させる分圧回路や、差動増幅回路等を用いて簡単に構成することができる。更に、デューティ制御値を生成する回路も、加算回路や、一定電力制御値CPおよび電流パルス制御値CCを給電極性反転タイミングに同期して加算回路への供給を制御する回路を、各種論理回路を組み合わせることで構成すればよく、当業者であれば容易に構成することができるため、その詳細についての説明は省略する。
【0037】
<動作>
ここで図3は、放電灯点灯装置1の動作例を示す模式図であり、(a)がランプ電圧VL、および検出電圧VDの各波形、(b)が電流パルス制御値CCである。
【0038】
なお、図3において、Vaは、放電灯Lの劣化度を判定するために予め設定された劣化閾値電圧であり、具体的には、多くの放電灯Lがフリッカを発生し始める(例えば、全ての放電灯Lのうち5%以上がフリッカを生じる)ような大きさに設定される。
【0039】
図3に示すように、検出電圧VDが劣化閾値Va未満である間は、定電力制御値CPがそのままデューティ制御値として用いられ、算出電力WD(=VD×ID)が目標電力と一致するように制御が行われる。
【0040】
放電灯Lに劣化(電極磨耗やガス抜け等)が生じることにより、ランプ電圧VL(ひいては検出電圧VD)が増大して、劣化閾値電圧Vaを超えると(時刻t1)、検出電圧VDと劣化閾値電圧Vaとの差分値ΔV=VL−Vaに応じた大きさを有する電流パルス制御値CCが電流パルス発生回路56から出力される。
【0041】
すると、DC/DC制御回路57は、定電力制御値CPおよび電流パルス制御値CCの両方に基づくデューティ制御値に従った駆動信号SDを発生させる。
<効果>
以上説明したように、放電灯点灯装置1では、ランプ電圧VLを反映した検出電圧VDによって、放電灯Lの劣化を判定し、放電灯Lが劣化したと判定した場合には、フリッカの兆候が現れているものとして、その劣化度(差分値ΔV)に応じた大きさ電流パルスを、給電極性反転タイミングの直前に印加するようにされている。
【0042】
従って、放電灯点灯装置1によれば、フリッカの発生の抑止に効果のある電流パルスが、その重畳が必要な時期に、必要な大きさで重畳されるため、電極磨耗による放電灯Lの劣化を必要以上に進行させてしまうことを防止でき、放電灯Lの寿命を効果的に延ばすことができる。
【0043】
<発明との対応>
給電回路3が給電手段、ランプ電圧検出回路53およびランプ電流検出回路54が検出手段、ランプ電力制御回路55およびDC−DC制御回路57が制御手段、電流パルス制御値CCが非ゼロである時のDC/DC制御回路57がパルス重畳手段、電流パルス発生回路56が劣化度判定手段およびパルス制御手段に相当する。
【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
本実施形態では、電流パルス発生回路56の動作が異なるだけであるため、この異なる部分を中心に説明する。
【0045】
<電流パルス発生回路>
電流パルス発生回路56は、予め設定された異常閾値電圧Vbと検出電圧VDとを比較し、検出電圧VDが異常閾値電圧Vbを超えた回数をカウントするカウンタを用い、予め設定された一定の計測期間内にカウントされた値(以下「期間内カウント値」という)に応じて、電流パルス制御値CCを発生させるように構成されている。
【0046】
但し、異常閾値電圧Vbは、フリッカの発生時に、ランプ電流ILが途切れたり減少したりすることによって一時的に急増するランプ電圧VLを検出するものであり、少なくとも劣化閾値電圧Vaより大きな値となるように設定されている。
【0047】
ここで、図5(a)は、電流パルス発生回路56にて期間内カウント値から電流パルス制御値CCを生成する際に用いる変換特性を示したグラフである。
図5(a)に示すように、電流パルス制御値CC(ひいては駆動信号SDのオンデューティ期間の加算値)は、カウント値(計測期間内で検出電圧VDが異常閾値電圧Vbを超えた回数)が大きいほど大きな値となるように設定されている。
【0048】
<動作>
次に、図5(b)(c)(d)は、本実施形態における放電灯点灯装置1の動作例を示す模式図であり、(b)にはランプ電圧VLの波形、(c)にはカウント値、(d)には電流パルス制御値CCを示す。
【0049】
なお、図5(b)では、図面を見やすくするため、電流パルスによるランプ電圧VLの変化は図示を省略している。また、図5(b)において、VL=0の軸でVL<0の部分の波形を折り返して、VL>0の部分の波形と合成したものが、検出電圧VDの波形となる。更に、ここでは、計測期間が給電極性反転周期の8倍の長さに設定されているものとする。
【0050】
図5(b)〜(d)に示すように、放電灯Lの使用開始からの経過時間が十分に短い間は、フリッカの発生がなく、期間内カウント値(ひいては電流パルス制御値CC)もゼロとなるため、定電力制御値CPがそのままデューティ制御値として設定され、そのディーティ制御値に従って駆動信号SDが生成される。
【0051】
放電灯Lが劣化してフリッカが発生すると、異常閾値電圧Vb超える検出電圧VDが検出される毎にカウント値が増大する。
そして、計測期間毎に、期間内カウント値に応じた加算量だけ大きくなるように電流パルス制御値CCが更新され、この電流パルス制御値CCと定電力制御値CPとによってデューティ制御値が設定され、そのデューティ制御値に従って駆動信号SDが生成される。
【0052】
なお、電流パルス制御値CCが設定されることによって、フリッカの発生が止まると、期間内カウント値がゼロになるが、この場合、電流パルス制御値CCは、ゼロに戻るのではなく、値が保持され、再びフリッカが発生すると、現在の電流パルス制御値CCに期間内カウント値に基づく新たな加算値が加算されていくことになる。つまり、電流パルス制御値CCは増大する一方であり減少することはない。
【0053】
<効果>
以上説明したように、放電灯点灯装置1では、ランプ電圧VLによって、放電灯Lの劣化によって発生するフリッカを検出し、フリッカを検出した場合には、その発生頻度に応じた電流パルス制御値CCを求め、その電流パルス制御値CCに基づいて制御された電流パルスを、放電灯Lに印加するようにされている。
【0054】
従って、第1実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、電流パルス制御値CC(ひいては電流パルスの大きさ)を、必要最小限の大きさとすることができるため、放電灯Lの劣化がより効果的に抑制され、放電灯Lの寿命をより延ばすことができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
図6は、本実施形態の放電灯点灯装置1aの構成を示すブロック図である。
【0056】
本実施形態では、制御回路5aの構成、より詳しくは電流パルス発生回路56aの構成が異なるだけであるため、この構成の異なる部分を中心に説明する。
本実施形態において、電流パルス発生回路56aは、ランプ電流検出回路54の検出結果IDに基づいて電流パルス制御値CCを生成するように構成されている。
【0057】
具体的には、給電極性反転タイミングで、検出電流ID(ひいてはランプ電流IL)がゼロであると見なせる期間(予め設定されたゼロ閾値電流Icより小さくなる期間)が、予め設定された許容時間以上継続しているゼロ期間を検出した回数をカウントするカウンタを用い、計測期間内にカウントされた値(期間内カウント値)に応じた電流パルス制御値CCを発生させるように構成されている。
【0058】
なお、ゼロ期間が許容時間以上継続しているか否かの判断は、例えば、給電極性反転タイミングから許容時間が経過したタイミングで検出電流IDを検出し、その検出電流IDをゼロ閾値電流Icと比較するようにすればよい。
【0059】
また、許容時間は、フリッカが発生していない時に、給電極性反転タイミングで生じる検出電流IDの瞬時的な減少を、ゼロ期間と判定してしまうことのない必要最小限の時間に設定すればよい。
【0060】
ここで、図7(a)は、電流パルス発生回路56aにてカウント値から電流パルス制御値CCを生成する際に用いる変換特性を示したグラフである。
図7(a)に示すように、電流パルス制御値CC(ひいては駆動信号SDのオンデューティ期間の加算値)は、期間内カウント値(計測期間内でゼロ期間が発生した回数)が大きいほど大きな値となるように設定されている。
【0061】
<動作>
次に、図7(b)(c)(d)は、本実施形態における放電灯点灯装置1の動作例を示す模式図であり、(b)にはランプ電流ILの波形、(c)にはカウント値、(d)には電流パルス制御値CCを示す。
【0062】
なお、図7(b)では、図面を見やすくするため、電流パルスによるランプ電流ILの変化については、図示を省略している。また、図7(b)において、IL=0の軸でIL<0の部分の波形を折り返して、IL>0の部分の波形と合成したものが、検出電流IDの波形となる。更に、ここでは、計測期間が給電極性反転周期の8倍の長さに設定されているものとする。
【0063】
図7(b)〜(d)に示すように、放電灯Lの使用開始からの経過時間が十分に短い間は、フリッカの発生がなく、期間内カウント値(ひいては電流パルス制御値CC)もゼロとなるため、定電力制御値CPがそのままデューティ制御値として設定され、そのディーティ制御値に従って駆動信号SDが生成される。
【0064】
放電灯Lの使用開始からの経過時間が長くなり、放電灯Lが劣化してフリッカが発生すると、ゼロ期間(ゼロ閾値電流Ic以下の検出電流IDが許容時間を超えて継続する期間)が検出されることによってカウント値が増大する。
【0065】
そして、計測期間毎に、期間内カウント値に応じた加算量だけ大きくなるように電流パルス制御値CCが更新され、この電流パルス制御値CCと定電力制御値CPとによってデューティ制御値が設定され、そのディーティ制御値に従って駆動信号SDが生成される。
【0066】
なお、電流パルス制御値CCが設定されることによって、フリッカの発生が止まると、期間内カウント値がゼロになるが、この場合、電流パルス制御値CCは、ゼロに戻るのではなく、値が保持され、再びフリッカが発生すると、現在の電流パルス制御値CCに期間内カウント値に基づく新たな加算値が加算されていくことになる。つまり、電流パルス制御値CCは増大する一方であり減少することはない。
【0067】
<効果>
以上説明したように、放電灯点灯装置1では、フリッカの発生頻度を、検出電圧VD(ランプ電圧VL)ではなく、検出電流ID(ランプ電流IL)によって検出している以外は、第2実施形態と同様に動作するため、第3実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
[他の実施形態]
以上本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0069】
例えば、上記各実施形態では、劣化度を判定する条件(検出電圧VDと劣化閾値電圧Vaとの差分値,異常閾値電圧Vbを超える検出電圧VDの発生回数のカウント値,検出電流IDにおけるゼロ期間の発生回数のカウント値)が一つずつ設定されているが、複数の条件を組み合わせて使用してもよい。
【0070】
但し、条件を組み合わせる場合、電流パルス発生回路56,56aは、各条件から個々に求められる電流パルス制御値CCの加算値をDC/DC制御回路57に供給するように構成してもよいし、最も大きな値を有する電流パルス制御値CCをDC/DC制御回路57に供給するように構成してもよい。
【0071】
上記実施形態では、検出電圧VDや検出電流IDから判定される劣化度に応じて、パルス電流パルスの振幅を制御するように構成したが、電流パルスのパルス幅を制御するように構成したり、振幅,パルス幅の両方を制御するように構成したりしてもよい。
【0072】
上記第2および第3実施形態では、カウント値が1以上であれば、電流パルスを発生させるように構成したが、カウント値が予め設定された閾値(0より大)以上である場合に、電流パルスを発生させるように構成してもよい。
【0073】
上記第2および第3実施形態では、計測期間が互いに重なり合うことのないように設定されているが、期間の一部が互いに重なり合うように設定してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1,1a…放電灯点灯装置 3…給電回路 5,5a…制御回路 10…DC/DCコンバータ 11,22…トランス 12…トランジスタ 13…コンデンサ 14…整流回路 20…インバータ 21…Hブリッジ回路 23…始動回路 24…電流検出用抵抗 51…ブリッジ制御回路 52…始動制御回路 53…ランプ電圧検出回路 54…ランプ電流検出回路 55…ランプ電力制御回路 56,56a…電流パルス発生回路 57…DC/DC制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定期間毎に極性が反転する矩形波状の交番電力を放電灯に供給する給電手段と、
前記放電灯の電極間を流れる電流であるランプ電流および該放電灯の電極間に生じる電圧であるランプ電圧を検出する検出手段と、
前記検出手段での検出結果に従って、前記放電灯への供給電力が一定となるように前記給電手段を制御する制御手段と、
前記給電手段が供給する交番電力に、該交番電力の極性反転タイミングに同期して電流パルスを重畳するパルス重畳手段と、
前記検出手段での検出結果から、放電灯の劣化度を判定する劣化度判定手段と、
前記劣化度判定手段での判定結果に従い、前記劣化度が大きいほど、前記パルス重畳手段が前記交番電力に重畳する電流パルスの振幅またはパルス幅のうち少なくとも一方を増大させるパルス制御手段と、
を備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記劣化度判定手段は、前記検出手段にて検出されるランプ電圧と予め設定された劣化閾値電圧との差分値を用い、前記ランプ電圧の方が大きいほど劣化度が大きいと判定することを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記劣化度判定手段は、前記検出手段にて検出されるランプ電圧が予め設定された異常閾値電圧を超えた回数をカウントした異常電圧カウント値を用い、予め設定された判定期間内でカウントされる前記異常電圧カウント値が大きいほど劣化度が大きいと判定することを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記劣化度判定手段は、前記交番電力の極性が反転する時に、前記ランプ電流が流れていないと見なせる状態が、予め設定された継続時間以上続いた回数をカウントしたゼロ期間カウント値を用い、予め設定された判定期間内でカウントされる前記ゼロ期間カウント値が大きいほど劣化度が大きいと判定することを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記パルス制御手段は、前記劣化度合いが予め設定された許容レベルを超えた場合に、前記パルス重畳手段に前記電流パルスの重畳を行わせることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186013(P2012−186013A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48222(P2011−48222)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】