説明

放電装置および画像形成装置

【課題】 劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持できる放電装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 針状電極50、シールドケース55の表面に、コロイド法などの固着法によって白金ナノコロイドを含むコーティング層を形成する。保持部材51の表面には、白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を設ける。絶縁性樹脂としては、たとえば、フッ素樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッド電極を用いた放電装置および該放電装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像手段から供給されかつトナーを含む現像剤により現像して可視像とし、この可視像を紙などの記録材に転写した後、定着ローラによって加熱および加圧し、記録材に定着させることにより、記録紙上に画像が形成される。
【0003】
このような画像形成装置では、感光体表面を帯電させるには、帯電装置が用いられる。画像形成装置において、帯電装置としては、主に、コロナ電極と、グリッド電極と、シールドケースと、支持部材とを含むコロナ放電装置が用いられる。コロナ電極はコロナ放電によって感光体ドラム表面を所定の電位および極性に帯電させる。グリッド電極は、感光体ドラムとコロナ電極との間に設けられ、コロナ電極から感光体ドラム表面に付与される電荷量を調整することによって、感光体ドラム表面の帯電電位を制御する。シールドケースは、コロナ電極と感光体ドラムとの間の空間を除く、コロナ電極の周囲に設けられる。支持部材はコロナ電極とグリッド電極とを支持する。
【0004】
このコロナ帯電装置は、グリッド電極によって感光体ドラム表面の帯電電位をほぼ正確に制御できる。このコロナ帯電装置において、コロナ電極としては、たとえば、複数の針状部(先鋭状突起部)を有する金属板電極(以後「鋸歯電極」とする)が用いられる。鋸歯電極は、ワイヤ電極などに比べて構成部品が少なく、耐用寿命が長く、オゾン発生量が少なく、断線などの故障が起こり難いといった利点を有する。鋸歯電極は、主にステンレス鋼、ニッケルなどの鉄系金属材料からなる金属板に、エッチングによって複数の針状部を形成することにより製造される。このような鉄系金属材料からなる鋸歯電極は、高い耐久性を有する反面、水分、コロナ電極のコロナ放電により発生するオゾンなどによって酸化され易いという欠点を有する。
【0005】
鋸歯電極を長期間にわたって使用すると、高湿環境(水分を比較的多く含む環境)下での使用、オゾンとの接触などを避け得ず、空気中の水分、オゾンなどによって錆などの腐蝕が発生し、窒素酸化物がその表面に付着することによって耐久性が低下する。それとともに、針状部からコロナ放電するために鋸歯電極に印加される電圧の制御能力が低下し、感光体ドラム表面の帯電電位が不均一になり、所望の帯電電位を常に安定して感光体ドラム表面に付与できないという課題がある。
【0006】
このような課題を解決するために、たとえば帯電装置に、オゾンを吸着、分解する構成を設ける技術が提案されている。
【0007】
特許文献1には、活性炭と触媒(酸化マグネシウム)を含むオゾン分解プレートをコロナワイヤに対向して配置する帯電装置が開示されており、特許文献2には、活性炭を塗布したオゾン吸着部材をシールドケースの内面に貼り付けた帯電装置が開示されており、特許文献3には、活性炭の表面に、α−FeOOHと5Fe・9HOからなる鉄触媒を担持したフィルタが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開平4−16964号公報
【特許文献2】特開平5−11575号公報
【特許文献3】特開2002−233718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術では、活性炭を使用しているため、オゾンの分解は、活性炭表面の反応活性度に依存する。さらに活性炭によるオゾンの分解は、炭素の消失反応(O+C→O+CO)であるため、活性炭によるオゾン分解能力の経時的な劣化が免れない。
【0010】
本発明の目的は、劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持できる放電装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、放電電極と、放電電極と間隔を空けて設けられるグリッド電極とを含む放電装置において、
放電電極またはグリッド電極を少なくとも含む一部の面に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を形成してなることを特徴とする放電装置である。
【0012】
また本発明は、グリッド電極の放電電極に対向する側の面にコーティング層を形成することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、絶縁部材の一部の面に、白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、絶縁部材の一部の面に、絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成し、絶縁層上に白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、コーティング層は、コロイド法によって形成されることを特徴とする。
また本発明は、前記放電装置を、感光体の帯電装置として備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、放電電極またはグリッド電極を少なくとも含む一部の面に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を形成する。白金ナノコロイドは、オゾン分解反応の触媒として働くので、オゾンの分解反応により損失することがなく、酸化チタンなどの光触媒に比べ励起エネルギーが不要で、劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持することができる。
【0017】
また本発明によれば、グリッド電極の放電電極に対向する側の面にコーティング層を形成することで、効率よくオゾンを分解することができる。
【0018】
また本発明によれば、絶縁部材の一部の面には、白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成する。
【0019】
これにより、絶縁部材の絶縁性を保つとともに、白金ナノコロイドによるオゾン分解能を長期にわたって維持することができる。
【0020】
また本発明によれば、絶縁部材の一部の面に、絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成し、絶縁層上に白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成する。
【0021】
絶縁層を設けることによって、確実に絶縁性を確保するとともに、絶縁コーティング層の密着性を向上させることができる。
【0022】
また本発明によれば、コーティング層は、コロイド法によって形成されるので、放電電極やグリッド電極などの表面に強固に固定することができる。
【0023】
また本発明によれば、上記の放電装置を、感光体の帯電装置として備えることにより、長期にわたって良好な帯電特性を維持することができる画像形成装置を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、本発明の第2実施形態である帯電装置24の構成を概略的に示す斜視図である。
【0025】
画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機である。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータなどの外部ホスト装置からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。
【0026】
画像形成装置1は、記録媒体を貯留しかつ後述の画像形成部3に記録媒体を送給する給紙ユニット部2と、記録媒体に画像を形成する画像形成部3と、排紙部4と、複写用原稿に記載される画像および/または文字を読み取り、その情報を電気的信号に変換して画像形成部3に伝達する原稿読み取り部5とを含んで構成される。
【0027】
給紙ユニット部2は、記録紙、OHPなどの記録媒体を収容する給紙トレイ10,11,12,13と、給紙トレイ10〜13に収容される記録媒体を画像形成部3に搬送するための第1および第2搬送路14,15と、給紙トレイ10〜13ならびに第1および第2搬送路14,15を収容して保護するフレーム16と、フレーム16の上部に設けられる手差し部17とを含んで構成される。
【0028】
給紙トレイ10〜13は、たとえば、トレイ毎に異なるサイズおよび/または種類の記録媒体を収容できる。ここで、サイズとは、たとえば、JIS P 0138またはJIS P 0202に規定されるA3,A4,B4,B5などのサイズを意味する。また、これらのサイズに限定されず、不定形の記録媒体を収容することもできる。一方、種類とは、普通紙、カラーコピー用紙などの記録紙、OHPフィルムなどを意味する。勿論、給紙トレイ10〜13には、同じサイズおよび同じ種類の記録媒体を収容することもできる。
【0029】
給紙トレイ10,11は互いに並列配置され、これらの下側に給紙トレイ12が配置され、さらにその下側に給紙トレイ13が配置される。給紙トレイ10〜13への記録媒体の補給は、たとえば、画像形成装置1の正面側(操作側)に、給紙トレイ10〜13を引き出して行われる。
【0030】
第1搬送路14は、給紙ユニット部2のフレーム16に沿って、画像形成装置1の設置面100に対して垂直方向であるほぼ鉛直方向に延びるように設けられ、給紙トレイ10,12,13に収容される記録媒体を画像形成部3に送給する。また、第2搬送路15は、給紙ユニット部2のフレームに沿って、画像形成装置1の設置面100に対して平行方向であるほぼ水平方向に延びるように設けられ、給紙トレイ11に収容される記録媒体を画像形成部3に送給する。
【0031】
このように、給紙ユニット部2のフレーム16内には、給紙トレイ10〜13ならびに第1および第2搬送路14,15が効率良く配置され、省スペース化が実現される。
【0032】
手差し部17は、フレーム16の上方に設けられ、手差しトレイ18と、手差しトレイ18に供給される記録媒体を画像形成装置1の内部に取り込むための給紙ローラ19a,19bと、第2搬送路15に接続するように設けられ、給紙ローラ19a,19bにより画像形成装置1の内部に取り込まれる記録媒体を画像形成部3に送給する手差し送給路20とを含んで構成される。
【0033】
手差しトレイ18は、画像形成装置1の内部において、フレーム16の上側に固定され、かつその一部が画像形成装置1の側面1aから外方に向けて突出するように設けられる。また、手差しトレイ18は、画像形成装置1の内部に収納可能に設けられる。手差しトレイ18から、画像形成装置1の内部に記録媒体が供給される。
【0034】
給紙ローラ19a,19bは、互いに圧接し、かつそれぞれ図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に設けられる。手差しトレイ18から給紙ローラ19a,19bの圧接部に供給される記録媒体は、給紙ローラ19a,19bの回転駆動によって、手差し送給路20に送られる。
【0035】
手差し送給路20は、フレーム16を貫通して第2搬送路15に接続するように設けられる。給紙ローラ19a,19bによって手差し送給路20に送られて来た記録媒体は、第2搬送路15を通過して画像形成部3に送給される。
【0036】
手差し部17によれば、手差しトレイ18から供給される記録媒体は、給紙ローラ19a,19bによって手差し送給路20に送られ、さらに第2搬送路15を介して、画像形成部3に送られる。
【0037】
給紙ユニット部2においては、記録媒体に画像形成を行う場合に、給紙トレイ10〜13の中から、予め指定されるサイズおよび種類の記録媒体が収容されるトレイが選択され、そのトレイから記録媒体が1枚ずつ分離され、分離される記録媒体は、第1搬送路14および第2搬送路15のいずれかを介して、画像形成部3に送給され、画像形成が行われる。または、手差し部17から供給される記録媒体は、同様にして、画像形成部3に送給され、画像形成が行われる。
【0038】
画像形成部3は、画像データに対応して形成されるトナー像を記録媒体に転写する電子写真プロセス部21と、電子写真プロセス部21において記録媒体上に転写されるトナー像を記録媒体に定着させる定着部22とを含んで構成される。
【0039】
電子写真プロセス部21は、感光体ドラム23と、帯電装置24と、光走査ユニット25と、現像ユニット26と、現像剤貯留ユニット27と、転写ユニット28と、クリーニングユニット29とを含んで構成される。
【0040】
感光体ドラム23は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、円筒状、円柱状または薄膜シート状、好ましくは円筒状の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含んで構成される。
【0041】
導電性基体の材料になる導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および/または導電性ポリマーを含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0042】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化する、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止する、低温および/または低湿環境下における感光層の帯電特性の向上させるといった利点が得られる。
【0043】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着剤樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環および/またはフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないけれども、電荷発生層中の結着剤樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。
【0044】
電荷発生層用の結着剤樹脂としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着剤樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0045】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着剤樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
【0046】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着剤樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは電荷輸送物質中の結着剤樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。
【0047】
電荷輸送層用の結着剤樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着剤樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0048】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着剤樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないけれども、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0049】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着剤樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。
【0050】
なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着剤樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0051】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体を用いるけれども、それに代えて、シリコンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体を用いることもできる。
【0052】
図2は帯電装置24の構成を概略的に示す斜視図である。帯電装置24は、放電装置であり、複数の先鋭状突起部58を有する板状の針状電極50と、針状電極50を保持する保持部材51と、針状電極50に対して相対的に移動可能に設けられ、移動時に針状電極50を擦過することによって針状電極50の表面を清掃する2枚の清掃部材52a,52bと、清掃部材52a,52bを支持する支持部材53と、清掃部材52a,52bおよび支持部材53を移動させる移動用部材54と、針状電極50、保持部材51、清掃部材52a,52bおよび支持部材53を収容するシールドケース55と、感光体ドラム23表面の帯電電位を調整する板状グリッド56とを含む構成である。この帯電装置24は、電子写真プロセス部21において、感光体ドラム23を臨み感光体ドラム23の長手方向に沿って配置される。
【0053】
針状電極50は、たとえばステンレス鋼製の薄板状部材であり、一方向に長く延びる平板部57と平板部57の短手方向の一端面から短手方向に突出するように形成される先鋭状の突起部58とによって構成される放電電極である。
【0054】
針状電極50の寸法について例示すると、平板部57の短手方向の長さL1は、10mm程度が好ましく、突起部58の突出方向の長さL2は、2mm程度が好ましく、突起部58の先端の曲率半径Rは、40μm程度が好ましく、突起部58の形成されるピッチTPは、2mm程度が好ましい。
【0055】
針状電極50は、公知の方法に従って製造できる。その一例として、化学研磨工程、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程、純水浸漬工程、ニッケルめっき工程、コーティング工程、水洗処理および乾燥処理を含む製造法が挙げられる。これらの工程のうち、ニッケルめっき工程は必須の工程ではなく、必要に応じて実施される。
【0056】
化学研磨工程では、板金に複数の先鋭状突起部が形成されるように、マスキングおよびエッチングを行う。マスキングは公知の方法に従って実施できる。エッチングも公知の方法に従って実施でき、たとえば、塩化第2鉄水溶液などのエッチング液を板金に噴霧する方法などが挙げられる。ここで、板金の材料になる金属としては、電圧の印加によりコロナ放電が可能であり、また先鋭状突起部の形成が可能でありかつめっき可能なものであれば特に制限なく使用でき、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄などが挙げられる。これらの中でも、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼の具体例としては、たとえば、SUS304,SUS309,SUS316などが挙げられ、これらの中でもSUS304が好ましい。板金の厚さは特に制限されないけれども、好ましくは0.05〜1mm、さらに好ましくは0.05〜0.3mmである。
【0057】
化学研磨工程で複数の先鋭状突起部が形成される板金は、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程および純水浸漬工程において、水洗、酸洗浄または純水洗浄を施され、その表面から異物が除去され、針状電極基板が得られる。
【0058】
ニッケルめっきは一般的に実施される方法により行うことができる。また、ニッケルめっき層の層厚も特に制限されないけれども、好ましくは0.03〜3μm、さらに好ましくは0.5〜1.5μm、特に好ましくは1μm程度である。
【0059】
コーティング工程は、たとえば、コロイド法などの固着法によって針状電極50の表面に、白金ナノコロイドを含むコーティング層(以下では「白金コーティング層」ともいう)を形成する。
【0060】
コロイド法による白金ナノコロイドの電極表面への固着は、物理現象を利用するため簡便である。より具体的には、TiOなどの金属酸化物微粉末または、金属微粉末と白金ナノコロイドを混合攪拌し、さらに、金属酸化物微粉末または、金属微粉末の洗浄を兼ねてコロイド分散を安定させる分散安定剤を洗浄除去すると、白金ナノコロイドがコロイド状で付着した沈澱物を得ることができる。この沈澱物を凍結乾燥等の低温乾燥することにより、乾燥時の水等の分散媒体の蒸発減量による凝集力で安定して強固な付着力を得ることができる。金属コロイドは安定化をするための分散剤(ポリアクリル酸ナトリウムなど)を含んでもよい。
【0061】
針状電極50を保持する保持部材51は、針状電極50と同様に一方向に長く延び、長手方向に直交する断面が逆T字状の部材であり、たとえば樹脂製である。針状電極50は、その長手方向の両端部付近において、保持部材51の突出部分の一側面に、ねじ部材59によってねじ止めされる。この針状電極50には、前述の感光体23を帯電させるべく動作中は、コロナ放電するために5kV程度の電圧が印加される。
【0062】
針状電極50を保持する保持部材51の表面に白金ナノコロイドをコーティングしてもよい。保持部材51は上記のように樹脂製絶縁部材であり、絶縁性を備える必要がある。したがって、コロイド法により白金ナノコロイドおよび他の金属粉末などを含む導電性のコーティング層を、保持部材51表面に形成することはできない。
【0063】
保持部材51の表面にコーティングする場合は、白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を設けることが好ましい。絶縁性樹脂としては、白金ナノコロイドを適度に分散することが可能で絶縁性を有するものであれば使用可能であるが、たとえば、フッ素樹脂が好ましい。
【0064】
フッ素樹脂をバインダー樹脂として、白金ナノコロイドが一部露出するように、絶縁コーティング層を形成する。絶縁コーティング層の形成は、以下のように設けることができる。
【0065】
たとえば、1次粒子径が0.1μmのPTFE(平均分子量10000)と、1次粒子径が3nmの白金ナノ粒子を、PTFEに対して白金ナノ粒子の濃度が所定の量(2〜25mg/cm)となるように混合攪拌してコーティング液を作製し、このコーティング液をスプレー法にて塗布する。
【0066】
さらに、白金ナノコロイドを含まないフッ素樹脂のみからなる絶縁層を絶縁部材表面に1層形成し、この絶縁層上に、白金ナノコロイドを分散させた絶縁コーティング層を形成することが好ましい。
【0067】
このように、絶縁樹脂中に白金ナノコロイドを分散させてコーティングすることにより、保持部材51などの絶縁部材の表面であっても白金ナノコロイドを保持することができる。また、絶縁層を設けることによって、確実に絶縁性を確保するとともに、絶縁コーティング層の密着性を向上することができる。
【0068】
清掃部材52a,52bは、板状の形状、より詳しくは平面投影形状がT字状を有し、厚さtが20〜40μmの金属素材または高分子材料の弾性体からなる。厚さtが20μm未満では、針状電極50に当接する際に容易に変形するけれども、変形に伴う反力である針状電極50に対する押圧力が弱くなるので、針状電極50に付着する汚染物質を充分に除去できない。厚さtが40μmを超えると、針状電極50に付着する汚染物質を充分に除去できるけれども、剛性が高くなって針状電極50に対する押圧力が強くなり過ぎるので、針状電極50の突起部58先端を変形破損するおそれがある。この結果、厚さtが20〜40μmの範囲を外れると、帯電不良による画像むらなどが発生する可能性がある。清掃部材52a,52bを構成する金属素材としては、りん青銅、普通鋼、ステンレス鋼などを使用できる。これらの中でも、清掃部材52a,52bがコロナ放電によって発生するオゾン雰囲気中で使用されることを考慮すると、耐酸化性に基づく耐久寿命の観点から、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼としては、日本工業規格(JIS)G4305に規定されるオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304またはフェライト系ステンレス鋼であるSUS430などが代表例として挙げられるけれども、これらに限定されることなく、他のステンレス鋼を用いてもよい。
【0069】
清掃部材52a,52bの硬さは、米国材料試験協会(ASTM)規格D785に規定されるロックウェル硬さMスケールで115以上であることが望ましい。ロックウェル硬さが115未満では、軟質にすぎるので、針状電極50に当接させて擦過するとき、清掃部材52a,52bが必要以上に変形し過ぎて清掃効果が得られない。清掃部材52a,52bの硬さが高くても特に機能上の問題が現出しないので上限を設ける必要がないけれども、ロックウェル硬さMスケールの上限値が130であるので、あえて上限を設けるとすれば130である。
【0070】
清掃部材52a,52bの、針状電極50と当接する部分であるT字の縦棒部分における幅寸法w、すなわち清掃部材52a,52bの移動方向に対して垂直方向かつ突起部58が延びる方向に対して垂直方向における清掃部材52a,52bの寸法wは、3.5mm以上に形成するのが望ましい。幅寸法wが3.5mm未満では、針状電極50に押圧されて変形する際に生じる力の単位面積あたりの値が大きくなるので、繰返し変形に対する疲労破壊を起こしやすくなり、耐久寿命が低下する。幅寸法wを3.5mm以上にすることによって、前述した力の単位面積あたりの値を小さくして繰返し変形に対する耐久寿命を長くできるけれども、過度に幅広にすると剛性が強くなり過ぎるとともに、装置が大型化するので、上限は10mm程度に設定されるのが望ましい。
【0071】
支持部材53は、清掃部材52a,52bを支持する逆L字状の形状を有する部材であり、その梁状部分に、T字状を有する清掃部材52a,52bの腕部分が装着される。2枚の清掃部材52a,52bは、針状電極50に対して相対的に移動する方向に関して予め定められる間隔L3を有するように設けられる。間隔L3は、一方の清掃部材52aが針状電極50に当接して変形するとき、他方の清掃部材52bが変形している清掃部材52aに当たることのない距離に選ばれ、装着される支持部材53の梁状部分の厚みで調整できる。この間隔L3は、清掃部材52a,52bを構成する素材によって変形状態が変化するので、該素材の変形状態を事前に試験して定めるのが望ましい。清掃部材52a,52bが、たとえば厚さtが30μmのステンレス鋼からなるとき、間隔L3は2mmが好ましい。2枚の清掃部材52a,52bに間隔L3を設けることによって、一方の清掃部材52aが針状電極50を擦過する間中、他方の清掃部材52bによってその変形を阻害されることなく好適範囲の押圧力を維持できるので、針状電極50の先端部を変形損傷させることなく充分に清掃できる。
【0072】
シールドケース55は、たとえばステンレス鋼製であり、その外観形状が直方体で内部空間を有するとともに、前述の感光体23を臨む一方の面に開口部を有する容器状の部材である。またシールドケース55は、針状電極50と同一方向に長く延び、長手方向に直交する方向の断面形状が略U字状を有する。シールドケース55の底面63に保持部材51が装着される。また、シールドケース55の内側面61と保持部材51とによって形成される溝部62には、支持部材53の柱状部分の端部が摺動可能に挿入される。
【0073】
シールドケース55の表面、特には内表面に白金ナノコロイドを含む白金コーティング層を形成してもよい。シールドケース55表面の白金コーティング層は、針状電極50表面の白金コーティング層と同様にして形成することができる。
【0074】
支持部材53の柱状部分には、針状電極50の延びる方向と平行に貫通孔60が形成され、貫通孔60を挿通して移動用部材54が設けられる。移動用部材54は、貫通孔60に挿通される部位で支持部材53に固定されるので、移動用部材54を針状電極50の延びる方向に牽引することによって、支持部材53は、溝部62に対して摺動し、かつ溝部62に案内されて針状電極50の延びる方向に移動できる。すなわち、支持部材53に支持される清掃部材52a,52bを針状電極50に当接させて擦過することができる。
【0075】
移動用部材54は糸状またはワイヤ状の部材であり、シールドケース55に形成される孔または隙間からシールドケース55の外方に延び、シールドケース55の外面または複写機2の機体に設けられる滑車を介してその端部が垂下される。移動用部材54の端部は、画像形成装置1の機体外方にまで延長するのが好ましい。これによって、帯電装置24を画像形成装置1から取外すことなくまたは画像形成装置1を開放することなく、針状電極50の清掃を実施できる。
【0076】
板状グリッド56は、針状電極50と感光体ドラム23との間に設けられ、電圧が印加されることによって、感光体ドラム23表面の帯電状態のばらつきを調整し、帯電電位を均一化する。板状グリッド56は、針状電極50と同様金属素材を含んで構成される。また、板状グリッド56は、化学研磨工程において多孔状に形成されるようにマスキングおよびエッチングを行う以外は、針状電極50と同様に作製できる。さらに、板状グリッド56の表面には、針状電極50と同様に白金コーティング層を形成することが好ましく、板状グリッド56の、針状電極50に対向する側の面に白金コーティング層を形成することが特に好ましい。
【0077】
板状グリッド56表面の白金コーティング層は、針状電極50表面の白金コーティング層と同様にして形成することができる。
【0078】
帯電装置24によれば、針状電極50に電圧が印加されることによりコロナ放電が起こり、感光体ドムラ23の表面が帯電されるとともに、板状グリッド56に所定のグリッド電圧が印加されることにより、感光体ドラム23の表面の帯電状態が均一化されるので、感光体ドラム23の表面を所定の電位および極性に帯電させることができる。また、移動用部材54の牽引により、支持部材53ひいては針状電極50に当接する清掃部材52a,52bが移動し、針状電極50に付着するトナーなどの汚染物質が効率良くかつ確実に除去される。
【0079】
ここで、図1に戻り、光走査ユニット25は、半導体レーザなどからなり、原稿読み取り部5または外部機器から入力される画像原稿情報に応じて変調されるレーザ光を出射するレーザ光源25aと、レーザ光源25aから出射されるレーザ光を主走査方向に偏向させるポリゴンミラー25bと、ポリゴンミラー25bにより主走査方向に偏向されるレーザ光を感光体ドラム23の表面に結像するように収束するレンズ25cと、レンズ25cにより収束されるレーザ光を反射するミラー25d,25eとを含んで構成される。レーザ光源25aから出射されるレーザ光は、ポリゴンミラー25bにより偏向され、さらにレンズ25cにより収束され、ミラー25d,25eによって反射されて、所定の電位および極性に帯電する感光体ドラム23の表面に照射され、画像原稿情報に応じた静電潜像が形成される。
【0080】
現像ユニット26は、感光体ドラム23に対向しかつ圧接するように設けられ、感光体ドラム23表面に形成される静電潜像にトナーを含む現像剤を供給する現像ローラ26aと、現像ローラ26aに圧接するように設けられ、現像ローラ26aにトナーを含む現像剤を供給する供給ローラ26bと、現像ローラ26aおよび供給ローラ26bを回転自在に支持するとともに、その内部空間に現像剤を収容するケーシング26cとを含んで構成される。ケーシング26c中に収容される現像剤は、供給ローラ26bの回転駆動により現像ローラ26aの表面に付着し、さらに現像ローラ26aの表面から感光体ドラム23表面の静電潜像に供給され、静電潜像が現像されてトナー像が得られる。
【0081】
現像剤貯留ユニット27は、現像ユニット26に隣接するように設けられる現像剤貯留容器であり、現像ユニット26内の現像剤残量に応じて、適量の現像剤を現像ユニット26に供給する。
【0082】
転写ユニット28は、図示しない駆動手段により軸線回りに回転駆動可能に設けられる駆動ローラ28aと、従動ローラ28b,28cと、駆動ローラ28aおよび従動ローラ28b,28cに張架される無端ベルト28dとを含んで構成される。駆動ローラ28aは、回転駆動可能に設けられるだけでなく、無端ベルト28dを介して感光体ドラム23と対向しかつ感光体ドラム23、無端ベルト28dおよび駆動ローラ28aがこの順番で圧接するように設けられる。転写ユニット28によれば、記録媒体は給紙ユニット部2から第3搬送路32を通過して感光体ドラム23と無端ベルト28dとの間に供給され、駆動ローラ28aによる押圧によって記録媒体が感光体ドラム23表面に圧接し、該表面のトナー像が記録媒体に転写される。このようにトナー像が転写された後、記録媒体は定着部22に送給される。
【0083】
クリーニングユニット29は、転写ユニット28にて記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム23の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム23の表面を清浄化する。クリーニングユニット29には、たとえば、クリーニングブレードが用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム23として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体の表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット29よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。
【0084】
電子写真プロセス部21によれば、感光体ドラム23の回転駆動に伴い、帯電、露光による静電潜像の形成、静電潜像の現像によるトナー像の形成、トナー像の記録媒体への転写、および感光体ドラム23表面の清浄化という一連の動作を実行することにより、トナー像が記録媒体に転写され、この記録媒体は定着部22に送給される。
【0085】
定着部22は、軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その内部に図示しない加熱手段を有する定着ローラ30と、定着ローラ30の表面に圧接し、軸線回りに回転駆動可能に設けられる加圧ローラ31と、定着ローラ30の表面に対向するように設けられ、定着ローラ30の表面温度を検出する温度センサ32とを含んで構成される。定着ローラ30の内部に設けられる不図示の加熱手段には、たとえば、ヒータなどが使用できる。また、温度センサ32による検出結果に応じて、定着ローラ30の表面温度が所定温度に維持されるように、図示しない制御部によって、ヒータに供給される電力量が制御される。定着部22によれば、電子写真プロセス部21において得られる、トナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ30と加圧ローラ31との圧接部に供給され、定着ローラ30および加圧ローラ31の回転駆動に伴って該圧接部中を通過する際に加圧および加熱を受けることによって、トナー像が記録媒体に固定化され、画像記録済み記録媒体が得られる。
【0086】
画像形成部3によれば、給紙ユニット部2から送給される記録媒体に、画像原稿情報に応じたトナー像が転写され、さらに加熱加圧してトナー像を記録媒体に固定化することにより、長期的かつ連続的に、高画質画像が形成された記録媒体が得られる。
【0087】
排紙部4は、画像形成部3の定着部22において得られる画像記録済み記録媒体を後述の反転ローラ36a,36bに供給する第4搬送路34と、画像記録済み記録媒体の搬送方向を変更する反転ローラ36a,36bと、画像記録済み記録媒体を画像形成装置1の外部に設けられる図示しない排紙トレイまたは第6搬送路37に搬送する第5搬送路35と、画像記録済み記録媒体を再度第3搬送路33に搬送する第6搬送路37とを含んで構成される。ここで、反転ローラ36a,36bは、いずれも軸線回りに順逆回転可能に設けられ、かつ圧接するように設けられる。第4搬送路34を介して反転ローラ36a,36bの圧接部に供給される画像記録済み記録媒体は、その端部が反転ローラ36a,36bの順方向の回転によって反転ローラ36a,36b間に挟持される。その後、反転ローラ36a,36bの逆方向の回転によって、第5搬送路35内を搬送される。そして、記録媒体の片面のみに画像が記録される場合には、第5搬送路35を介して、図示しない切換えゲートの動作によって矢符101の方向に、画像形成装置1外部の図示しない排紙トレイに排出される。また、記録媒体の両面に画像が形成される場合には、図示しない切換えゲートの動作によって第5搬送路35から第6搬送路37に搬送され、表裏反転された後、第3搬送路を経由して画像形成部3に搬送され、トナー像の転写および定着が行われる。
【0088】
原稿読み取り部5は、原稿供給部38と画像読み取り部39とを含む。
原稿供給部38は、原稿を載置する原稿トレイ40と、原稿を送給する原稿規制板41と、原稿の画像面が反転するように搬送する湾曲搬送路42と、原料供給部38と後述する原稿台(プラテンガラス)44との接触面に設けられる保護マット43とを含んで構成される。原稿トレイ40には、原稿の画像面が上方を向くように載置される。原稿規制板41は、原稿を1枚ずつ湾曲搬送路42に送給する。湾曲搬送路42は、原稿の画像面が下方を向くように反転させながら原稿を原稿台44の真上まで搬送する。また、原稿規制板41は、主に、プラテンガラスで形成される原稿台44を保護する。原稿供給部38によれば、画像形成装置1の外装前面部に配置される図示しない操作パネルにおいて、条件入力キーにより印刷枚数、印刷倍率、用紙サイズなどの印刷条件を入力したのち、スタートキーを押すことにより、コピー動作が開始され、原稿トレイ40に画像面を上方に向けて載置される原稿が1枚ずつ自動的に搬送され、搬送の途中で画像面が下方を向くように反転処理され、原稿台45の真上まで搬送される。そして、原稿が原稿台45の上を通過する間に、原稿の画像原稿情報が後述の画像読み取り部39により読み取られる。なお、原稿台45上を通過する原稿は、その後、排出ローラ49によって、画像形成装置1の外部に設けられる図示しない排出トレイに排出される。
【0089】
画像読み取り部39は、自動搬送が不可能な原稿を載置し、その画像原稿情報を読み取るための原稿台44と、副走査方向において原稿台44から離間して設けられ、原稿トレイ40からの自動搬送が可能な原稿を通過させ、通過の際にその画像原稿情報を読み取るための原稿台45と、原稿台44,45の面に平行な方向(副走査方向)に移動可能に設けられる光源ユニット46と、原稿からの反射光を後述のCCD読み取りユニット48に導くミラーユニット47と、原稿からの反射光を電気信号に変換するCCD読み取りユニット48とを含んで構成される。
【0090】
光源ユニット46は、光源46aと、光源46aから出射される読み取り用の照明光を原稿台44または原稿台45の所定の読み取り位置に集光する図示しない凹面のレフレクタと、原稿からの反射光のみを選択的に通過させる図示しないスリットと、原稿からの反射光をさらに90°反射するミラー46bとを含む。光源ユニット46は、原稿に読み取り用照明光を出射し、原稿から反射される光をミラーユニット47に供給する。
【0091】
ミラーユニット47は、反射面が相互に直交するように配置される一対のミラー47a,47bを含む。光源ユニット46から供給される原稿からの反射光は、ミラー47a,47bによって、その光路を180°変更され、CCD読み取りユニット48に導かれる。
【0092】
CCD読み取りユニット48は、ミラーユニット47からの反射光を結像する結像レンズ48aと、結像レンズ48aにより結像される光に応じる電気信号を出力するCCDイメージセンサ48bとを含む。ミラーユニット47から結像レンズ48aに入射する反射光は結像され、その像がCCDイメージセンサ48bによって電気信号に変換され、図示しない制御部を介して、電気信号としての画像原稿情報が光走査ユニット25に入力され、それに応じる画像形成が実行される。
【0093】
画像読み取り部39によれば、原稿台44,45に載置される原稿の画像原稿情報が、光源ユニット46からの光照射により原稿からの反射光として取り込まれ、さらにこの反射光がミラーユニット47を介してCCD読み取りユニット48に導かれ、電気信号の画像原稿情報に変換される。この情報は、予め設定される条件で画像処理が行われ、画像形成部3の光走査ユニット25へ送信され、画像形成が実施される。
【0094】
以下では、白金コーティング層について説明する。
白金コーティング層は、白金ナノコロイドを含み、白金ナノコロイドにより、コロナ放電によって生成したオゾンを分解することができる。
【0095】
白金ナノコロイドの触媒反応によるオゾンの分解は、Pt−O+O→Pt−O+Oで表わされる第1反応と、Pt−O+O→Pt−O+2Oで表わされる第2反応との連鎖反応による。
【0096】
白金ナノコロイドは、分解反応の触媒として働くため、第1反応および第2反応により損失することがなく、酸化チタンなどの光触媒に比べ励起エネルギーが不要で、劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持することができる。
【0097】
さらに、白金ナノコロイドは、粒径が1〜5nmのナノ微粒子であるので、表面積が大きく、高い分解効率を達成できる。
【0098】
十分なオゾン分解能を達成するための白金ナノコロイドの付着量は、白金ナノコロイドのみを付着したときに、1平方センチメートルあたり1.6×10−2g以上、13×10−2g以下とする。付着量が1.6×10−2gよりも少ないと、オゾン分解能が充分に発揮されず、13×10−2gを超えると、それ以上付着してもオゾン分解能が向上せず、コストが増加するのみである。
【0099】
また、フッ素樹脂中に白金ナノコロイドを分散させた絶縁コーティング層の場合、層中の含有量は、2mg/cm以上、25mg/cm以下とする。
【0100】
含有量が2mg/cmよりも少ないと、オゾン分解能が充分に発揮されず、25mg/cmを超えると、フッ素樹脂中に白金ナノコロイドが安定して分散することができない。
【0101】
さらに、白金ナノコロイドは、オゾン分解能に加えて、窒素酸化物による腐食防止効果、トナー付着防止効果を有している。
【0102】
一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)などの窒素酸化物は、空気中の水分と混ざって化学反応を起こし、硝酸となって金属表面を腐食する。白金は、硝酸腐食に対する耐性が高く、白金コーティング層を形成することで、放電電極などの金属部材の腐食を防止することができる。
【0103】
白金コーティング層は、導電性を有しているので、帯電したトナーが白金コーティング層に付着すると、トナーの保持する電荷が除去され静電気力によるトナーの付着を防止することができる。特に、シールドケースや、シールドケース保持部材、放電電極であるチャージワイヤのホルダなどの表面に設けることが好ましい。
【0104】
絶縁コーティング層は、絶縁性であるため静電気を帯びやすいが、白金ナノコロイドの導電性により、トナーの保持する電荷が除去され、フッ素樹脂を用いた場合は、表面自由エネルギーが低く、飛散したトナーの付着をさらに防止することができる。
【0105】
上記では、針状電極50、板状グリッド56、シールドケース55の表面に白金コーティング層または絶縁コーティング層を設ける構成について説明したが、白金ナノコロイドを含むコーティング層を設ける部位は、これらに限らず、オゾンと接触する部位、飛散トナーが付着する部位であればよく、放電電極であるチャージワイヤの表面にコーティングすることでも効果を発揮する。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
表1に示すように実施例1,2および比較例1〜4を作製した。実施例1,2および比較例1は、絶縁コーティング層を保持部材51表面に形成した。
【0107】
【表1】

【0108】
オゾンフィルターAは、市販のハニカム構造のオゾンフィルター200cm(10cm×20cm)であり、オゾンフィルターBは、市販のハニカム構造のオゾンフィルター100cm(10cm×10cm)である。
【0109】
(オゾン濃度測定)
オゾン濃度の測定は、BAM規格『RAL−UZ62、RAL−UZ85およびYYによる事務機器へのエコラベル授与の枠内におけるハードコピー機器からのエミッション決定のための試験方法』(2003年4月版)を参考に行った。
【0110】
オゾン濃度は、UV光度式の連続自動オゾン濃度計(日本サーモエレクトロン社製:MODEL49C)を用いて、チャンバーの出口から排出される空気をテフロン(登録商標)チューブで吸引し、オゾン濃度を連続モニターした。測定レンジは0〜100ppbとし、15秒毎にデータを記録する。
【0111】
[測定条件]
検出限界:1.0ppb
応答時間:20秒
サンプル流量:1〜3L/分
レンジ:0−0.05〜200ppm(0−0.1〜400mg/m
【0112】
(オゾン分解能)
オゾンの分解能は、下記のようにエミッション率によって評価した。
【0113】
【数1】

【0114】
【数2】

【0115】
ここで、
SER:オゾンのエミッション率 [μg/min]
max :最大オゾン濃度 [μgm−3
k’ :比例定数 [min−1
H’ :試験条件下でのオゾン半値時間 [min]
V :試験室容積 [m] (ここでは、6.5m
P :大気圧 [Pa] (ここでは、101,325Pa)
T :絶対温度 [K] (ここでは、273+25K)
R :気体定数 [PaK−1]、オゾンに対しては339.8 [PaK−1
である。
【0116】
エミッション率が小さい程、オゾンを分解、または吸着していると評価することができる。
【0117】
画像形成装置(シャープ株式会社製、MX3500N)を用いて、印字を行い、印字前および95000(95K)枚印字後それぞれのエミッション率を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
【表2】

【0119】
比較例1は、塗布量が少なかったためにオゾン分解能力が低く、エミッション率が大きくなった。比較例2,3のフィルタでは、印字量が増加するにつれ、エミッション率は、上限値である2mg/hを超える結果となった。これは、フィルタがオゾンの分解ではなく吸着によるため、吸着量が増加するにつれて、エミッション率が上昇したものと考えられる。
【0120】
比較例4は、分解、吸着いずれも起こっていないためにエミッション率は非常に大きくなった。
【0121】
これに対して実施例1,2は、白金コーティング層を設けることによって、オゾンが分解されエミッション率を低く抑えることができた。印字量が増加しても、エミッション率の上昇は抑えられており、白金コーティング層が劣化に強く、オゾン分解能が長期に亘り維持されることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の第1実施形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態である帯電装置24の構成を概略的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0123】
1 画像形成装置
2 給紙ユニット部
3 画像形成部
4 排紙部
5 原稿読み取り部
24 帯電装置
50 針状電極
51 保持部材
52a,52b 清掃部材
53 支持部材
54 移動用部材
55 シールドケース
56 板状グリッド
57 平板部
58 先鋭状突起部
59 ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、放電電極と間隔を空けて設けられるグリッド電極とを含む放電装置において、
放電電極またはグリッド電極を少なくとも含む一部の面に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を形成してなることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
グリッド電極の放電電極に対向する側の面にコーティング層を形成することを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項3】
絶縁部材の一部の面に、白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成することを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項4】
絶縁部材の一部の面に、絶縁性樹脂からなる絶縁層を形成し、絶縁層上に白金ナノコロイドと絶縁性樹脂とを含む絶縁コーティング層を形成することを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項5】
コーティング層は、コロイド法によって形成されることを特徴とする請求項1記載の放電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の放電装置を、感光体の帯電装置として備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−113254(P2010−113254A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287199(P2008−287199)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】