説明

放電装置

【課題】 作動効率を向上させることができる放電装置。
【解決手段】 一対の電極21を有する放電部2と、放電部2を駆動する電圧発生部3と、放電部2における放電を検出する放電検出部4と、放電検出部4によって放電を検出した後に、電圧発生部3の発生電圧を設定電圧に切り替える電圧切替部5とを有している放電装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電によりオゾンまたはイオンを発生させるために、放電装置が用いられている。例えば、オゾンを発生させることを目的とした放電装置は、車両のエアコン等に取り付けられている。
【0003】
放電装置は、一対の電極で構成される放電部を有し、この電極間に電圧を印加して、電極間で放電を生じさせることで、オゾンまたはイオンを発生させるものである。オゾンまたはイオンの発生量は電圧に依存するので、この印加電圧は、発生させたいオゾンまたはイオンの発生量によって設定される。
【0004】
このとき、放電部に空気中の水分が存在すると、両電極間の絶縁抵抗が低下し、予め設定された駆動電圧では放電が開始しなくなってしまう。従って、放電部の温度を上昇させることにより、放電部の水分を蒸発させる必要があった。
【0005】
このような放電装置として、例えば特許文献1には、放電部が表面に設けられた絶縁基板の裏面に、ヒータを設けた構成のものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−243905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような放電装置では、ヒータを駆動するために、余分な電力を消費してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電装置は、一対の電極を有する放電部と、該放電部を駆動する電圧発生部と、前記放電部における放電を検出する放電検出部と、該放電検出部によって放電を検出した後に、前記電圧発生部の発生電圧を設定電圧に切り替える電圧切替部とを有していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の放電装置によれば、一対の電極を有する放電部と、放電部を駆動する電圧発生部と、放電部における放電を検出する放電検出部と、放電検出部によって放電を検出した後に、電圧発生部の発生電圧を設定電圧に切り替える電圧切替部とを有していることから、例えば、放電部の周囲の空気中に水分が存在し、放電部の一対の電極間の絶縁抵抗が低下する場合であっても、電圧発生部で発生した、設定電圧より高い電圧によって、放電部の放電を容易に起こさせることができる。よって、ヒータ等が不要となり、余分な電力の消費を防ぐことができる。また、放電検出部により、放電の開始を検出した後は、放電部に印加する電圧を、すぐに低電圧である設定電圧に切り替えるので、放電部に余分な電圧を印加せずにオゾンまたはイオンを効率的に発生させることができる。従って、放電装置の作動効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の放電装置の実施の形態の一例である回路図を示す。
【図2】本発明の放電装置の実施の形態の他の例である回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の放電装置の実施の形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
放電装置1は、一対の電極21を有する放電部2と、放電部2を駆動する電圧発生部3と、放電部2における放電を検出する放電検出部4と、放電検出部4によって放電を検出した後に、電圧発生部3の発生電圧を設定電圧に切り替える電圧切替部5とを有している。
【0013】
放電部2は、一対の電極21の両側または、片側に固体絶縁性の誘電体が密着されている。この誘電体によって、一対の電極21間の放電電流の増大を制限して、無声放電を発生させる。この誘電体は板状に形成されており、この形状に一致するように、一対の電極をそれぞれ貼り付ける。なお、この誘電体としては、誘電率の高い素材が使用される。例えば、ガラス、セラミック、シリコンゴム、マイカ等が使用される。
【0014】
放電部2を構成する一対の電極21は、絶縁基板上に設けられ、この一対の電極21間に交流の高電圧が印加されると、電極外周部付近の空気の絶縁を局部的に破壊し、無声放電を生ぜせしめ、オゾンを発生させる。
【0015】
このように、放電部2による放電によって、オゾンを発生させるためには、放電部2の一対の電極21間に交流電圧を印加すればよい。また、放電によってイオンを発生させるためには、放電部2の一対の電極21間に直流電圧を印加すればよい。なお、正電圧を印加した場合には、正イオンが発生し、負電圧を印加した場合には、負イオンが発生する。また、印加する電圧を交流電圧から直流電圧に変換するためには、リレー素子等の整流素子を使用すればよい。なお、正電圧または負電圧のいずれに変換するかは、リレー素子の向きを変えることによって決定される。
【0016】
電圧発生部3は、一対の電極21間に印加するための電圧を発生させる。図1に示す例においては、電圧発生部3は、矩形波発振部3a、FET駆動部3b、昇圧部3cからなる。
【0017】
矩形波発振部3aは、発振部品であるIC31、32、周波数調整用のコンデンサ33、34および抵抗素子35、36が使用されている。矩形波発振部3aは、矩形波を生成し、これを出力する役割を果たす。なお、IC31、32はNANDゲートとしての役割を果たす。矩形波発振部3aの出力は、FET駆動部3bの第1トランジスタ37および第2トランジスタ38のベースにそれぞれ接続されている。
【0018】
FET駆動部3bは、第1トランジスタ37、第2トランジスタ38、バイアス抵抗素子39、40、電流調整用抵抗素子41が使用される。FET駆動部3bは、昇圧部3cのFET42に対して出力するために電流を調整する役割を果たす。なお、第1トランジスタ37のエミッタは、グランドに接続されている。第1トランジスタ37のコレクタは、第2トランジスタ38のエミッタに接続されている。第1トランジスタ37のベースは、バイアス抵抗素子40を介して矩形波発振部3aの出力に接続されている。また、第2トランジスタ38のエミッタは、第1トランジスタ37のコレクタに接続されている。第2トランジスタ38のコレクタは、電源に接続されている。第2トランジスタ38のベースは、バイアス抵抗素子39、40を介して第1トランジスタのベースに接続されており、バイアス抵抗素子39を介して矩形波発振部3aの出力に接続されている。
【0019】
昇圧部3cは、FET42、昇圧トランス43等が使用される。なお、FET42のゲートは、FET駆動部3bの出力に接続されている。FET42のソースは、グランドに接続されている。FET42のドレインは、昇圧トランス43の一次側コイルに接続されている。また、昇圧トランス43の一次側コイルの一端は、FET42のドレインに接続されている。昇圧トランス43の一次側コイルの他端は、電源に接続されている。昇圧トランス43の二次側コイルの両端は、放電部2の一対の電極21にそれぞれ接続されている。なお、以上の説明においては、FETを用いたが、これに代えてIGBT素子を用いても良い。
【0020】
図1に示す例においては、放電検出部4は、検出用電極44、検出電圧調整抵抗素子45、46、基準電圧調整抵抗素子47、48、オペアンプ49等が使用される。なお、検出用電極44は、一端が放電部2に設けられおり、他端が検出電圧調整抵抗素子45に接続されている。検出用電極44は、放電部2における放電を検出するアンテナのような役割を果たす。また、オペアンプ49は、非反転入力が検出電圧調整抵抗素子45,46に接続されており、反転入力が基準電圧調整抵抗素子47、48に接続されている。また、オペアンプ49の出力は、インバータ51等に接続されている。また、検出電圧調整抵抗素子45、46は、検出用電極44で検出した電圧を低減させる役割を果たす。例えば、一方の抵抗素子45は、2MΩで、他方の抵抗素子46は、1kΩとすると、検出用電極44で検出した電圧を2千分の1に低減させることができる。
【0021】
図1に示す例においては、電圧切替部5は、第1リレー素子52、第2リレー素子53、インバータ51、第1トランジスタ54、第2トランジスタ55、バイアス抵抗素子56、57等が使用される。なお、第1トランジスタ54のベースは、バイアス抵抗素子56を介して放電検出部4のオペアンプ49の出力に接続されている。第1トランジスタ54のエミッタは、グランドに接続されている。第1トランジスタ54のコレクタは、第1リレー素子52のコイル(図示せず)に接続されている。また、第2トランジスタ55のベースは、バイアス抵抗素子57およびインバータ51を介して放電検出部4のオペアンプ49の出力に接続されている。第2トランジスタ55のエミッタは、グランドに接続されている。第2トランジスタ55のコレクタは、第2リレー素子53のコイル(図示せず)に接続されている。また、第1リレー素子52は、一端が昇圧トランス43の二次側コイルの一端に接続されており、他端が放電部2の一対の電極21の一方に接続されている。また、第2リレー素子53は、一端が昇圧トランス43の二次側コイルの中途の部分に接続されており、他端が放電部2の一対の電極21の一方に接続されている。なお、以上の説明においては、リレー素子を使用するとしたが、これに代えて半導体スイッチ等を使用してもよい。
【0022】
以下に、この電圧切替部5の動作を説明する。まず、初期状態は、第1リレー素子52がON状態となっている。ここで、放電部2で放電が開始されない場合には、予め設定された通りオペアンプがHIGH信号を出力する。この場合には、インバータは反転しない。従って、第1トランジスタ54は、初期状態と同様にON状態なので、第1リレー素子52もON状態のままである。次に、放電部2で放電が開始された場合には、前述した放電検出部4がその放電を検出し、予め設定された通りオペアンプ49がLOW信号を出力する。この場合には、インバータ51が反転し、第1トランジスタ54に代わって第2トランジスタ55がON状態となる。従って、第2リレー素子53がON状態となる。
【0023】
図1に示すように、第1リレー素子52がON状態のときは、放電部2に高電圧が印加され、第2リレー素子53がON状態のときは、放電部2に低電圧が印加されることとなる。従って、例えば、放電部2の周囲の空気中に水分が存在し、放電部2の一対の電極21間の絶縁抵抗が低下する場合であっても、電圧発生部3で発生した、設定電圧より高い電圧により、放電部2の放電を容易に起こさせることができる。よって、ヒータ等が不要となり、余分な電力の消費を防ぐことができる。また、放電検出部4により、放電が開始したこ
とを検出した後は、放電部に印加する電圧を、すぐに低電圧である設定電圧に切り替えるので、放電部2に余分な電圧を印加せずにオゾンまたはイオンを効率的に発生させることができる。従って、放電装置1の作動効率を向上させることができる。
【0024】
ここで、前述した設定電圧とは、発生させたいオゾンまたはイオンの量等の所望の条件によって、予め設定される、放電部に印加される電圧のことを意味する。なお、オゾンの発生量の測定には、オゾンチェッカー(会社名:ジー・イー・メディカル有限会社、型番:OC−300、測定範囲:0〜0.25ppm)等が使用される。また、イオンの発生量の測定には、空気イオン測定器(会社名:有限会社アルトン、型番:KEC−900、測定範囲:10〜199万個/cm)等が使用される。
【0025】
なお、放電を開始させるための電圧(放電開始電圧)の値は、放電部2の湿度および温度によって決定される。放電は、湿度および温度によって影響される。なお、湿度が高ければ、放電しにくいので、この電圧の値は高くなければならない。また、温度が低ければ、放電しにくいので、同様に、電圧の値は高くなければならない。例えば、放電部2の温度が5℃であり、湿度が50%である場合には、放電を開始させるための電圧(放電開始電圧)の値は、約10kVとなる。
【0026】
電圧切替部5は、放電が開始すると同時に、電圧発生部3の発生電圧を設定電圧に切り替えることが好ましい。この場合には、放電が開始すると同時に、電圧切替部5によって低電圧である設定電圧に切り替えられるため、放電部に余計に高電圧が印加されなくなるので好ましい。また、迅速に低電圧に切り替えられるため、オゾンまたはイオン等を効率的に発生させることが可能となるので好ましい。また、電圧切替部5は、放電が開始した後、所定の時間を置いて、電圧発生部3の発生電圧を設定電圧に切り替えてもよい。
【0027】
例えば、電圧切替部5によって10kVから、6kVに切り替える場合の、以上で説明した各素子のそれぞれの値の具体例を以下に示す。矩形波発振部3aの周波数調整用のコンデンサ33、34は、6800pFであり、抵抗素子35、36は1kΩである。FET駆動部3bのバイアス抵抗素子39、40は、それぞれ500Ω、470Ωであり、電流調整用抵抗素子41は、1kΩである。昇圧部3cの昇圧トランス43の一次側コイルの巻数は10回であり、2次側コイルの巻数は10万回である。ちなみに、第2リレー素子の一端側は、6万回の巻数の部分で二次側コイルと接続している。検出電圧調整抵抗素子45、46は、それぞれ2MΩ、1kΩであり、基準電圧調整抵抗素子47、48は、それぞれ7kΩ、5kΩである。なお、当該放電装置1の電源の電圧は12Vである。
【0028】
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良等が可能である。
【0029】
例えば、図2に示すように、放電部2に設けられた熱抵抗素子61を有する温度検出部6が、電圧発生部3に接続されていてもよい。この場合には、熱抵抗素子61によって放電部2の温度の上昇を検出し、それに併せて、電圧発生部3で生成される放電部2の駆動電圧を低下させる等の調整を行なうことができるようになるので、放電装置1の作動効率を向上させることができるようになるため、好ましい。
【0030】
図2に示す例においては、熱抵抗素子61は、ポジスタ、サーミスタ等が使用される。この熱抵抗素子61は、放電部2に設けられ、この放電部2の温度を検出するためのものである。熱抵抗素子61の一端は、グランドに接続されており、他端はPWM波形成部6bの入力に接続されている。
【0031】
三角波形成部6aは、矩形波発振部3aから発振された矩形波を三角波に変更させる役
割を果たす。図2に示す例においては、三角波形成部6aは、オペアンプ62、バッファ抵抗素子63、三角波形成用コンデンサ64が使用されている。オペアンプ62の反転入力は、矩形波発振部3aの出力が接続されている。オペアンプ62の非反転入力は、グランドに接続されている。三角波形成部6の出力は、PWM波形成部6bのオペアンプ65の反転入力に接続されている。
【0032】
図2に示す例においては、PWM波形成部6bは、オペアンプ65、基準電圧調整用抵抗素子66が使用される。オペアンプ65の反転入力は、三角波形成部6aの出力が接続されている。オペアンプ65の非反転入力は、基準電圧調整抵抗素子66を介して電源に接続されているとともに、熱抵抗素子61の一端に接続されている。オペアンプ65の非反転入力における、基準電圧の増減によって、当該PWM波形成部6bによって形成されるPWM波のON・OFF時間の割合が決定される。例えば、基準電圧が増大することによって、ON時間の割合が減少し、基準電圧が減少することによって、ON時間の割合が増大する。なお、図2に示す例においては、熱抵抗素子61で検知する温度が高いほど、基準電圧が増大するので、PWM波のON時間の割合が減少し、放電部2に印加される電圧が小さくなる。従って、放電部2によって温度が上昇し、比較的低い電圧であっても、発生するオゾン等の量を最大にする電圧値に保つことができる。よって、余分な電力を使わずに、放電装置1を効率よく作動させることが可能となる。一方、図2に示す例においては、熱抵抗素子61で検知する温度が低いほど、基準電圧が減少するので、PWM波のON時間の割合が増大し、放電部2に印加される電圧が大きくなる。従って、放電部2によって温度が低下している場合であっても、電圧値を高くすることにより、発生するオゾン等の量を最大にする電圧値に保つことができる。なお、この基準電圧は、基準電圧調整用抵抗素子66の抵抗値の調整によって設定される。
【0033】
また、例えば、前述した説明では、電圧発生部3で発生させる電圧を、放電部で発生した温度変化に基づいて調整する機構としての温度検出部6を記載したが、これに代えて、当該放電装置1の使用者が、手動で電圧発生部3で発生させる電圧の大きさを調整するような構成としてもよい。
【0034】
また、例えば、前述した説明では、矩形波発振部3aにおいて使用されている発振部品はICであるとしたが、これに代えてタイマICを使用してもよい。この場合には、前述したIC2つに代えて、1つのタイマICを使用すれば足りるため、放電装置1の部品点数を抑えることができるので好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1:放電装置
2:放電部
3:電圧発生部
4:放電検出部
5:電圧切替部
6:温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する放電部と、
該放電部を駆動する電圧発生部と、
前記放電部における放電を検出する放電検出部と、
該放電検出部によって放電を検出した後に、前記電圧発生部の発生電圧を設定電圧に切り替える電圧切替部と
を有していることを特徴とする放電装置。
【請求項2】
前記電圧切替部は、放電が開始すると同時に、前記電圧発生部の発生電圧を設定電圧に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の放電装置。
【請求項3】
前記電圧発生部は、矩形波発振部、FET駆動部、昇圧部を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電装置。
【請求項4】
前記放電部に設けられた熱抵抗素子を有する温度検出部が、前記電圧発生部に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の放電装置。
【請求項5】
前記温度検出部は、三角波形成部、PWM波形成部を含むことを特徴とする請求項4に記載の放電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30986(P2012−30986A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169405(P2010−169405)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】