救命装置
【課題】日常生活に不便なく、かつ低コストで地震災害時の救命の可能性を高める救命装置を提供する。
【解決手段】救命装置1は、フレーム部11と、フレーム部11を部屋30の上部に支持するためのフレーム支持部21とを備えている。フレーム部11は、部屋30の壁31際に配置され、かつ部屋30の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材12と、支柱部材12間を部屋30の壁31際に沿って繋ぐように構成された枠部材13とを含んでいる。フレーム支持部21は、フレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持する上側支持部22と、フレーム部11の下側の支柱部材12を部屋30の下部に移動可能に支持する下側支持部23とを含んでいる。下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きい。
【解決手段】救命装置1は、フレーム部11と、フレーム部11を部屋30の上部に支持するためのフレーム支持部21とを備えている。フレーム部11は、部屋30の壁31際に配置され、かつ部屋30の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材12と、支柱部材12間を部屋30の壁31際に沿って繋ぐように構成された枠部材13とを含んでいる。フレーム支持部21は、フレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持する上側支持部22と、フレーム部11の下側の支柱部材12を部屋30の下部に移動可能に支持する下側支持部23とを含んでいる。下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救命装置に関し、特に部屋の上部に支持されたフレーム部を有する救命装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
強い地震が発生した場合、建物が倒壊することにより、倒壊した建物や倒れた家具などの下敷きとなって、圧死または窒息死が発生し得る。特に、就寝中に建物が倒壊した場合に、被害が大きくなる。
【0003】
従来、倒壊した建物や倒れた家具などから就寝者を保護するための装置が提案されている。たとえば、特開2004−208955号公報(特許文献1)には、アーチ型の金属パイプ製の防護フレームを床に立て、かつベッド本体に固定し、一対の防護フレームを金属パイプ製の横桟で連結した防災ベッドが開示されている。
【0004】
また、倒壊した建物から人を保護するために部屋自体を耐震構造にすることが提案されている。たとえば、特開平9−4275号公報(特許文献2)には、建屋の所望の室内に鉄骨組立構造からなる避難室が設置された耐震避難室付き家屋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−208955号公報
【特許文献2】特開平9−4275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特開2004−208955号公報の防災ベッドでは、日常生活において防護フレームが邪魔となるため、日常生活での利便性が悪いという問題がある。
【0007】
また、特開平9−4275号公報の耐震避難室付き家屋では、鉄骨組立構造からなる避難室を設置するため、コストが高いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、日常生活に不便なく、かつ低コストで地震災害時の救命の可能性を高める救命装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の救命装置は、フレーム部と、フレーム部を部屋の上部に支持するためのフレーム支持部とを備えている。フレーム部は、部屋の壁際に配置され、かつ部屋の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材と、支柱部材間を部屋の壁際に沿って繋ぐように構成された枠部材とを含んでいる。フレーム支持部は、フレーム部の上側の枠部材を部屋の上部に載置するように支持する上側支持部と、フレーム部の下側の支柱部材を部屋の下部に移動可能に支持する下側支持部とを含んでいる。下側支持部のフレーム部を支持する強度が、上側支持部のフレーム部を支持する強度より大きい。
【0010】
本発明の救命装置によれば、フレーム支持部の上側支持部がフレーム部の上側の枠部材を部屋の上部に載置するように支持することにより、フレーム部が部屋の上部に支持されている。そのため、部屋が倒壊しないときは部屋の上部にフレーム部が支持されているので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0011】
部屋が倒壊するときはフレーム支持部によって部屋の上部に支持されていたフレーム部が落下することにより形成された空間に人が入ることにより、倒壊した部屋や倒れた家具などから人を保護することができる。
【0012】
下側支持部のフレーム部を支持する強度が、上側支持部のフレーム部を支持する強度より大きいため、先に上側支持部によるフレーム部の支持が解放されるので、フレーム部が下側支持部に支持されながら部屋の下部に移動する。これにより、フレーム部の落下位置は、フレーム部が部屋の上部に配置されたときの位置の真下に近くなるので、部屋の壁際以外で就寝中の就寝者にフレーム部が接触する可能性を低減することができる。
【0013】
また、フレーム部をフレーム支持部によって部屋の上部に支持するだけで救命装置を構成することができるため、コストを低く抑えることができる。
【0014】
上記の救命装置において好ましくは、部屋が倒壊するときに、上側支持部によるフレーム部の支持が解放される。これにより、部屋が倒壊するときに、上側支持部によって部屋の上部に支持されていたフレーム部を落下させることができ、下側支持部によって支持された状態でフレーム部を部屋の下部に移動させることができる。
【0015】
上記の救命装置において好ましくは、部屋が倒壊しないときは、フレーム支持部がフレーム部を部屋の上部に支持する。これにより、弱い地震災害時において部屋が倒壊しないときは、フレーム部が部屋の上部に支持されるので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0016】
上記の救命装置において好ましくは、部屋は柱部材を含み、下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とを含み、アイストラップ部材は、凸部を有し、かつねじ部材により柱部材にねじ止めされており、紐部材は、凸部と柱部材との間を通って、アイストラップ部材の周囲を囲むように構成された輪部を有し、支柱部材が輪部の内側に通されるよう構成されている。
【0017】
下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とにより構成されており、コストを低く抑えることができる。また、アイストラップ部が柱部材にねじ止めされているため、支柱部材を部屋の下部における柱部材の近傍に落下させることができる。よって、柱部材32の近傍以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。
【0018】
上記の救命装置において好ましくは、フレーム部が、分割可能に構成されている。フレーム部を分割することによりフレーム部を容易に運搬することができる。また、分割されたフレーム部の各々がフレーム支持部に載置された後に、各々のフレーム部を組立てることによりフレーム部を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の救命装置によれば、日常生活に不便なく、かつ低コストで地震災害時の救命の可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における救命装置が部屋の上部に配置された状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における救命装置のフレーム部を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における救命装置のフレーム部の中央継手部の近傍を概略的に示す斜視図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図1におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】図1におけるVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図1におけるP部を概略的に示す拡大図である。
【図8】図1におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図1におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるフレーム部が部屋の上部に配置された状態を概略的に示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態における地震によって部屋が倒壊し始めたときのフレーム部の状態を概略的に示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態における地震によってフレーム部の全体が落下した状態を概略的に示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態における地震によってフレーム部の一部が落下した状態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に、本発明の一実施の形態の救命装置の構成について説明する。
【0022】
図1を参照して、本発明の一実施の形態の救命装置1は、フレーム部11と、フレーム支持部21とを主に有している。
【0023】
救命装置1は、地震災害時の救命の可能性を高めるための装置である。より具体的には生存するための空間を確保する確率を高めるための装置である。フレーム部11は、地震災害時に人を保護するためのものである。フレーム部11は、倒壊した部屋30や倒れた家具などを支えることにより、フレーム部11と床などとの間に空間を形成するように構成されている。
【0024】
フレーム部11は、複数の支柱部材12と、複数の枠部材13とを有している。支柱部材12は、部屋30の壁31際に配置されている。支柱部材12は、部屋30の高さ方向に延在するように構成されている。枠部材13は、部屋30の上部に配置されている。枠部材13は、支柱部材12間を部屋30の壁31際に沿って繋ぐように構成されている。
【0025】
フレーム部11は、フレーム支持部21によって部屋30の上部に支持されている。部屋30の上部とは、部屋30の高さ方向において天井近傍を意味している。フレーム部11は、壁31と離れて配置されていてもよい。フレーム部11と壁31との間に隙間が形成されることにより、フレーム部11が落下する際にフレーム部11が壁31と接触することが抑制される。このため、より確実にフレーム部11を落下させることができる。
【0026】
フレーム支持部21は、フレーム部11を部屋30の上部に支持するためのものである。フレーム支持部21は、上側支持部22と、下側支持部23とを有している。上側支持部22は、フレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持するよう構成されている。下側支持部23は、フレーム部11の下側の支柱部材12を部屋30の下部に移動可能に支持するよう構成されている。部屋30の下部とは、部屋30の高さ方向において床近傍を意味している。
【0027】
下側支持部23のフレーム部11を支持する強度は、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きい。フレーム部11を支持する強度とは、フレーム部11の支持が解放されるときの力に対する強さを意味している。たとえば、図5および図7に示す紐部材26が切れるときの力やねじ部材25が柱部材32などから引き抜かれるときの力に対する強さが、フレーム部11を支持する強度に該当する。
【0028】
上側支持部22と、下側支持部23とは、部屋30の柱部材32に固定され得る。なお、上側支持部22と、下側支持部23とは、部屋30の壁31に固定されていてもよい。上側支持部22は、部屋30が倒壊するときに、フレーム部11の支持を解放するように構成されている。フレーム支持部21は、部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11を部屋30の上部に支持するように構成されている。
【0029】
図2を参照して、フレーム部11は、支柱部材12と、枠部材13とを主に有している。好ましくは、フレーム部11は分割可能に構成されている。
【0030】
支柱部材12の高さは、就寝状態における寝具の厚さなどを加えた人の高さより高くなるように構成されている。複数の支柱部材12の上部を繋ぐように枠部材13が構成されている。これにより、倒壊した部屋30や倒れた家具を支柱部材12および枠部材13が支えることにより、フレーム部11が形成する空間内の就寝者が保護される。
【0031】
フレーム部11は、複数の枠部材13が平面視において、たとえば矩形状の枠を形成するよう構成されている。4つの支柱部材12は、平面視における矩形状の枠の四隅から一方向に延在するように構成されている。地震災害時に天井板がばらばらに崩れて落ちてくることはほとんどないため、複数の枠部材13が平面視において矩形状の枠を形成することにより、矩形状の枠と床などとの間に空間を形成することができる。
【0032】
枠部材13は、たとえば支柱部材12の間に2本並んで設けられているが、枠部材13は、倒壊した部屋30や倒れた家具を支えることができる構成であれば1本であってもよく、また3本以上の複数であってもよい。
【0033】
支柱部材12には接続部材17が取り付けられている。枠部材13の梁13aの一方端が接続部材17に挿入されてボルト14で固定されている。枠部材13の梁13aの他方端が中央継手部15に挿入されてボルト14で固定されている。この梁13aと中央継手部15と接続部材17とは枠部材13を構成している。なお、枠部材13は、これに限定されず、たとえば中央継手部15が設けられなくてもよい。
【0034】
また、たとえば支柱部材12間には、支柱部材12の軸方向に沿って複数の補助部材16が設けられている。なお、補助部材16は複数の(図2では2本の)梁13aをつないで補強するものであるが、補助部材16は補助部材16を設けなくても倒壊した部屋30や倒れた家具を支えることができる場合には設けられなくてもよい。
【0035】
図3および図4を参照して、中央継手部15の両端から枠部材13の梁13aが挿入されている。中央継手部15の両端から枠部材13の梁13aが挿入されているため、枠部材13の長さを調整することができる。中央継手部15に挿入された枠部材13の梁13aの外周面を中央継手部15の外周面からボルト14で締め付けることにより、中央継手部15に枠部材13の梁13aが固定されている。ボルト14で締め付けることで中央継手部15に枠部材13の梁13aが固定されるため、施工が容易である。
【0036】
図5および図6を参照して、フレーム部11の上側の枠部材13が上側支持部22によって部屋30の上部に吊られている。上側支持部22は、部屋が倒壊しない程度の弱い地震の際には、フレーム部11を落下させないように構成されている。
【0037】
より具体的には、上側支持部22は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とを主に有している。アイストラップ部材24は凸部24aを有している。アイストラップ部材24は、2つのスクリューネジからなるねじ部材25により柱部材32にねじ止めされている。
【0038】
紐部材26は、凸部24aと柱部材32との間を通って、アイストラップ部材24の周囲を囲むように構成された輪部26aを有している。紐部材26は、たとえば径3mmで形成されている。輪部26aは、たとえば紐部材26の一部をもやい結びすることにより構成されている。支柱部材12が輪部26aの内側に通されている。枠部材13の下面に輪部26aの上面が接している。フレーム部11が紐部材26によってアイストラップ部材24を介して柱部材32に吊られている。
【0039】
図7〜図9を参照して、フレーム部11の下側の支柱部材12が下側支持部23によって部屋の下部に移動可能に支持されている。より具体的には、下側支持部23は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とを主に有している。アイストラップ部材24は凸部24aを有している。アイストラップ部材24は、4つのスクリューネジからなるねじ部材25により柱部材32にねじ止めされている。
【0040】
紐部材26は、凸部24aと柱部材32との間を通って、アイストラップ部材24の周囲を囲むように構成された輪部26aを有している。紐部材26は、たとえば径6mmで形成されている。輪部26aは、たとえば紐部材26の一部をもやい結びすることにより構成されている。支柱部材12が輪部26aの内側に通されている。支柱部材12が下側支持部23によって輪部26aの内側を通って部屋30の下部に移動するように支持されている。フレーム部11が紐部材26によって柱部材32から遠くに離れないよう支持されている。
【0041】
図6および図9を参照して、上側支持部22と下側支持部23とは、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなるよう構成されている。上側支持部22および下側支持部23のフレーム部11を支持する強度は、様々な構成により設定することができる。たとえば、ねじ部材25および紐部材26の材質、径、長さ、個数などにより設定することができる。上記では、上側支持部22のねじ部材25が2つのスクリューネジから構成されており、下側支持部23のねじ部材25が4つのスクリューネジから構成されている。
【0042】
つまり、下側支持部23のねじ部材25のスクリューネジの数が上側支持部22のねじ部材25のスクリューネジの数より多くなっている。たとえば下側支持部23のねじ部材25のスクリューネジの数は、上側支持部22のねじ部材25のスクリューネジの数の2倍以上としてもよい。この場合ねじ部材25は共通のサイズおよび材質としてもよい。
【0043】
また、下側支持部23の紐部材26の径が、上側支持部22の紐部材26の径の2倍の大きさに形成されている。つまり、下側支持部23の紐部材26の径は、上側支持部22の紐部材26の径より大きくなっている。たとえば下側支持部23の紐部材26の径は、上側支持部22の紐部材26の径の2倍以上としてもよい。この場合紐部材26は共通の材質としてもよい。
【0044】
これらのことから、上記では下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなっている。上側支持部22および下側支持部23は、これに限定されず、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなるよう構成されていればよい。
【0045】
次に、本発明の一実施の形態の救命装置の動作について説明する。
図10を参照して、部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11が部屋の上部に支持されている。就寝者41は部屋の中央部で就寝している。
【0046】
図11を参照して、地震災害時において部屋30が倒壊するときは、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きいため、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放される。たとえば、下側支持部23の紐部材26は切れずに、上側支持部22の紐部材26が切れる。この結果、たとえば、部屋30において図中右側の上側支持部22Rの支持が解放される。
【0047】
図12を参照して、続いて部屋30において図中左側の上側支持部22Lの支持も解放された場合、部屋30の上部に支持されていたフレーム部11の全体が下側支持部23L,23Rに支持されて落下することにより、フレーム部11が床などとの間に空間61(図12中斜線で示す空間)が形成される。
【0048】
図13を参照して、一方、部屋30において図中左側の上側支持部22Lが支持されている場合、上側支持部22Rの支持が解放されているため、部屋30の上部に支持されていたフレーム部11の図中右側が下側支持部23Rに支持されて落下することにより、フレーム部11が床などとの間に空間61(図12中斜線で示す空間)が形成される。
【0049】
また、下側支持部23Rを支点として、引張り力が作用することにより、上側支持部22Lの支持が解放され得る。
【0050】
部屋30が倒壊するときは、天井51が地面に対して平行移動するように壁31が一方向に傾いて倒壊することが多い。そのため、壁31および天井51の移動にあわせてフレーム部11の平面視における位置が大きく変動し得る。
【0051】
フレーム部11が下側支持部23L,23Rの少なくとも一方によって支持されて部屋30の下部に移動することにより、フレーム部11が部屋30の上部に配置されたときの位置の真下に近い位置に落下する。これにより、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、部屋30の壁31際以外で就寝中の就寝者41にフレーム部が接触する可能性を低減することができる。
【0052】
また、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制される。そのため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。
【0053】
次に、本発明の一実施の形態の救命装置の作用効果について説明する。
本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、フレーム支持部21の上側支持部22がフレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持することにより、フレーム部11が部屋30の上部に支持されている。そのため、部屋30が倒壊しないときは部屋30の上部にフレーム部11が支持されているので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0054】
部屋30が倒壊するときはフレーム支持部21によって部屋30の上部に支持されていたフレーム部11が落下することにより、フレーム部11が空間61を形成する。このフレーム部11が形成した空間61に人が入ることにより、倒壊した部屋30や倒れた家具などから人を保護することができる。
【0055】
下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きいため、地震災害時において部屋30が倒壊するときに、下側支持部23によるフレーム支持部21の支持が解放されるより先に上側支持部23によるフレーム部11の支持が解放される。そのため、フレーム部11が下側支持部23に支持されながら部屋30の下部に移動する。これにより、下側支持部23によるフレーム支持部21の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11の落下位置は、フレーム部11が部屋30の上部に配置されたときの位置の真下に近くなる。
【0056】
したがって、部屋30の壁31際以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。また、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制される。そのため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。
【0057】
また、フレーム部11をフレーム支持部21によって部屋30の上部に支持するだけで救命装置1を構成することができるため、コストを低く抑えることができる。
【0058】
また、フレーム部11が部屋30の上部に配置されているため、フレーム部11の構造を簡略化することができる。これにより、軽量化、低コスト化を実現できる。また、フレーム部11は、支柱部材12が床などに接触していない。フレーム部11は、支柱部材12が床に接してから倒壊した部屋30や倒れた家具などを支える。したがって、フレーム部11が部屋30の上部に配置されているため、フレーム部11は、支柱部材12が最初から床に接している場合に比べて、倒壊した部屋30や倒れた家具などによってかかる荷重を低減することができる。
【0059】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、部屋30が倒壊するときに、上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放される。これにより、部屋30が倒壊するときに、上側支持部22によって部屋30の上部に支持されていたフレーム部11を落下させることができ、下側支持部23によって支持された状態でフレーム部11を部屋30の下部に移動させることができる。
【0060】
また、本発明の一実施の形態1によれば、部屋30が倒壊しないときは、フレーム支持部21がフレーム部11を部屋30の上部に支持する。これにより、弱い地震災害時において部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11が部屋30の上部に支持されるので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0061】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、下側支持部23は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とにより構成されており、コストを低く抑えることができる。また、アイストラップ部材24が柱部材32にねじ止めされているため、支柱部材12を部屋30の下部における柱部材32の近傍に落下させることができる。
【0062】
よって、柱部材32の近傍以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。また、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制されるため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。また、支柱部材12が輪部26aの内側に通されているため、支柱部材12を滑らかに落下させることができる。
【0063】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、フレーム部11が、分割可能に構成されている。これにより、フレーム部11を分割することによりフレーム部11を容易に運搬することができる。また、分割されたフレーム部11の各々がフレーム支持部21に載置された後に各々のフレーム部11を組立てることによりフレーム部11を容易に設置することができる。
【実施例1】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。
最初に、フレーム部11の寸法について説明する。
【0065】
天井から床までの距離が2400mmの部屋において、天井から25mmの位置にフレーム部11の支柱部材12の上端部が位置し、床から200mmの位置にフレーム部11の支柱部材12の下端部が位置するようにフレーム部11を部屋30の上部に配置した。
【0066】
フレーム部11の支柱部材12間の枠部材13の長さは、長辺側を3400mmで形成し、短辺側を2500mmで形成した。支柱部材12の高さは、1400mmで形成した。このため、フレーム部11が落下した場合、ベッドで就寝している就寝者41より天井側に枠部材13が位置するため、ベッドで就寝中の就寝者41が保護され得る。
【0067】
接続部材17の上下方向の間隔は、108.2mmで形成した。接続部材17の長さは、150mmで形成した。中央継手部15の長さは、300mmで形成した。ボルト14は中央継手部15の両端部から50mmの位置に取り付けた。
【0068】
支柱部材12、枠部材13の接続部材17および中央継手部15は、直径が60.5mm、厚みが3.8mmで形成した。枠部材13の梁13aおよび補助部材16は、直径が48.6mm、厚みが3.5mmで形成した。
【0069】
支柱部材12、枠部材13の接続部材17、中央継手部15、枠部材13の梁13aおよび補助部材16は、配管用炭素鋼鋼管(SGP)で形成した。ボルト14は、径が8mm、長さが12mmで形成した。ボルト14は、ステンレスで形成した。
【0070】
次に、上側支持部22の耐力について説明する。
フレーム部11の重量は154kgとした。支柱部材12が4つあるため、1つあたりの重量は38.5kgとした。
【0071】
紐部材26の強度について、紐部材26の引張力は、鉛直方向から45°の方向にかかるとして、38.5kg×sec45°=54.5kgとした。紐部材26は、径3mmのビニロンで形成した。紐部材26の耐力は、商品表示より100kgとした。安全率は100/54.5で1.84となる。
【0072】
アイストラップ部材24は、一般構造用圧延鋼材(SS400)で形成した。アイストラップ部材24は、凸部24aを丸鋼によって径6mmで形成し、脚部を幅10mm、厚さ2mm、孔径5mmで形成した。孔は、アイストラップ部材24の両端部の脚部に1つずつ形成した。
【0073】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、凸部24aの丸鋼のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。凸部24aの丸鋼の断面積は、0.6×0.6×π(円周率)/4=0.28cm2とした。凸部24aのせん断耐力は、800×0.28=226kgとした。凸部24aの丸鋼のせん断耐力226kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0074】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、凸部24aの丸鋼の曲げ応力度を計算した。曲げモーメントは、38.5×1.5/2=28.875kg・cmとした。断面係数は、0.63×3.14/32=0.021cm3とした。曲げ応力度は、28.88/0.021=1362kg/cm2とした。凸部24aの丸鋼の曲げ応力度1362kg/cm2は、SS400の許容曲げ応力度1400kg/cm2より小さい。
【0075】
フレーム部11の重量の水平力に対して、脚部のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。有効断面積は、0.2×0.2×2×2=0.16cm2とした。脚部のせん断耐力は、800×0.16=128kgとした。脚部のせん断耐力128kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0076】
ねじ部材25は、径4mm、長さ57mmで形成した。ねじ部材25は2つのスクリューネジで構成されている。
【0077】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、ねじ部材25のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25のせん断耐力は、800×0.10×2=160.8kgとした。ねじ部材25のせん断耐力160.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0078】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、ねじ部材25と柱部材32の支圧耐力を計算した。柱部材32は木材とした。木材の許容支圧応力度は、20kg/cm2とした。スクリューネジと柱部材32との支圧面積は、0.4×5.3=2.12cm2とした。ねじ部材25のせん断耐力は、20×2.12×2=84.8kgとした。ねじ部材25のせん断耐力84.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0079】
フレーム部11の重量の水平力に対して、ねじ部材25の引張応力を計算した。SS400の許容引張り応力度は1400kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25の引張耐力は、1400×0.10×2=281.3kgとした。ねじ部材25のせん断耐力281.3.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0080】
フレーム部11の重量の水平力に対して、柱部材32のせん断耐力(ねじ部材25の引抜き耐力)を計算した。木材の許容せん断応力度は、12kg/cm2とした。スクリューネジ引抜き時の柱部材のせん断面積は、0.4×π×5.3=6.66cm2とした。ねじ部材25の引抜き耐力は、12×6.66×2=160kgとした。ねじ部材25の引抜き耐力160kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0081】
以上より、上側支持部22は、鉛直力に対しては、ねじ部材25のせん断耐力84.8kgが最も強度が小さく、水平力に対しては、紐部材26の耐力100kgが最も強度が小さいことがわかった。
【0082】
続いて、下側支持部23の耐力について説明する。
下側支持部23の紐部材26は、径6mmのビニロンで形成した。紐部材26の耐力は、商品表示より370kgとした。
【0083】
アイストラップ部材24は、一般構造用圧延鋼材(SS400)で形成した。アイストラップ部材24は、凸部24aおよび脚部とも幅15mm、厚さ2mm、孔径4.4mmで形成した。孔は、アイストラップ部材24の両端部の脚部に2つずつ形成した。
【0084】
アイストラップ部材24の凸部24a水平耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。凸部24aの有効断面積は、1.5×0.2=0.30cm2とした。凸部24aのせん断耐力は、800×0.30×2=240kgとした。
【0085】
アイストラップ部材24の脚部の水平耐力を計算した。脚部の有効断面積は、(1.5−0.44)×0.2×2=0.42cm2とした。脚部のせん断耐力は、800×0.42=339kgとした。
【0086】
ねじ部材25の引張耐力を計算した。SS400の許容引張り応力度は1400kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25の引張耐力は、1400×0.10×4=563kgとした。
【0087】
柱部材32のせん断耐力(ねじ部材25の引抜き耐力)を計算した。木材の許容せん断応力度は、12kg/cm2とした。スクリューネジ引抜き時の柱部材のせん断面積は、0.4×π×5.7=7.2cm2とした。ねじ部材25の引抜き耐力は、12×7.2×4=344kgとした。
【0088】
アイストラップ部材24の許容耐力は、安全率を考慮して、240kgである。したがって、下側支持部23は、最低でも240kgの強度があることがわかった。
【0089】
次に、地震災害時において部屋30が倒壊するときの救命装置1の挙動について説明する。部屋30の柱部材32に傾くことによって、上側支持部22と下側支持部23とに引張り力Fが作用する。たとえば、図10を参照して、上側支持部22Rに対して図中右側に引っ張り力Fが作用した場合について説明する。
【0090】
この引張り力Fにより支柱部材12には曲げが作用する。上側支持部22Lと下側支持部23Lとの高さ方向の距離を0.967mとする。引張り力Fの場合の曲げモーメントMは、M=F×0.967mとなる。一方、支柱部材12の曲げ耐力Mrは、Mr=降伏応力度(σsy)×支柱部材12の断面係数(z)となる。ここでσsyは、SGPの降伏応力度より1835kg/cm2とした。zは、z=π(D4−d4)/D/32より、π(6.054−5.294)/6.05/32=9.03cm3となる。
【0091】
M=Mrより、引張り力Fは、1650/0.967=171kgとした。したがって、上側支持部22Lと下側支持部23Lとに171kgの荷重が作用すると支柱部材12が曲がる。ここで、下側支持部23Lの引張耐力は、240kgであり、上側支持部22Rの引張耐力は、100kgである。これより、図11に示すように、柱部材32が傾き始めてから最初に上側支持部22Rの紐部材26が切れる。
【0092】
同様に、図12に示すように、上側支持部22Lが切れてフレーム部11の全体が落下する。または、上側支持部22Lが切れる前に、フレーム部11が下側指示部23Rの輪部26aの内側をすべり落ちる。これにより、下側支持部23Rが支点となり、上側支持部22Lに引張力が作用する。下側支持部23Rのフレーム部11を支持する強度が上側支持部22Lのフレーム部11を支持する強度より大きいため上側支持部22Lが切れる。このため、フレーム部11の全体が落下する。
【0093】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、組立てキットとして販売され得る。組立てキットは、救命装置の部品一式である。使用者が組立てキットを組立てることにより、救命装置は使用可能な状態になる。組立てキットは宅配便で送付されてもよい。
【0094】
本発明の一実施の形態の救命装置は、倒壊した部屋や倒れた家具などから安全度をさらに上げるために、短辺側に平行に補助部材を追加することも可能であり、これらを支えることが可能な材料で形成されていればよく、たとえば倒壊した部屋や倒れた家具などを支える強度を有するプラスチックなどによって形成され得る。
【0095】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、組立て家具のようにスーパーマーケット、ホームセンターおよび雑貨店などで販売され得る。
【0096】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、軽量で低価格の素材(たとえばカーボンなど)によって形成され得る。
【0097】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、救出隊に生存者の存在を知らせるために、体温を感知できるセンサーおよび発信装置を組み込んで形成されてもよい。
【0098】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、倒壊後の暗闇による生存者の不安感を緩和させるために、フレーム部が蛍光塗料で塗布されていてもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、部屋の上部に支持されたフレーム部を有する救命装置に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0101】
1 救命装置、11 フレーム部、12 支柱部材、13 枠部材、14 ボルト、15 中央継手部、16 補助部材、17 接続部材、21 フレーム支持部、22 上側支持部、23 下側支持部、24 アイストラップ部材、25 ねじ部材、26 紐部材、30 部屋、31 壁、32 柱、41 就寝者、51 天井、61 空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、救命装置に関し、特に部屋の上部に支持されたフレーム部を有する救命装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
強い地震が発生した場合、建物が倒壊することにより、倒壊した建物や倒れた家具などの下敷きとなって、圧死または窒息死が発生し得る。特に、就寝中に建物が倒壊した場合に、被害が大きくなる。
【0003】
従来、倒壊した建物や倒れた家具などから就寝者を保護するための装置が提案されている。たとえば、特開2004−208955号公報(特許文献1)には、アーチ型の金属パイプ製の防護フレームを床に立て、かつベッド本体に固定し、一対の防護フレームを金属パイプ製の横桟で連結した防災ベッドが開示されている。
【0004】
また、倒壊した建物から人を保護するために部屋自体を耐震構造にすることが提案されている。たとえば、特開平9−4275号公報(特許文献2)には、建屋の所望の室内に鉄骨組立構造からなる避難室が設置された耐震避難室付き家屋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−208955号公報
【特許文献2】特開平9−4275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特開2004−208955号公報の防災ベッドでは、日常生活において防護フレームが邪魔となるため、日常生活での利便性が悪いという問題がある。
【0007】
また、特開平9−4275号公報の耐震避難室付き家屋では、鉄骨組立構造からなる避難室を設置するため、コストが高いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、日常生活に不便なく、かつ低コストで地震災害時の救命の可能性を高める救命装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の救命装置は、フレーム部と、フレーム部を部屋の上部に支持するためのフレーム支持部とを備えている。フレーム部は、部屋の壁際に配置され、かつ部屋の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材と、支柱部材間を部屋の壁際に沿って繋ぐように構成された枠部材とを含んでいる。フレーム支持部は、フレーム部の上側の枠部材を部屋の上部に載置するように支持する上側支持部と、フレーム部の下側の支柱部材を部屋の下部に移動可能に支持する下側支持部とを含んでいる。下側支持部のフレーム部を支持する強度が、上側支持部のフレーム部を支持する強度より大きい。
【0010】
本発明の救命装置によれば、フレーム支持部の上側支持部がフレーム部の上側の枠部材を部屋の上部に載置するように支持することにより、フレーム部が部屋の上部に支持されている。そのため、部屋が倒壊しないときは部屋の上部にフレーム部が支持されているので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0011】
部屋が倒壊するときはフレーム支持部によって部屋の上部に支持されていたフレーム部が落下することにより形成された空間に人が入ることにより、倒壊した部屋や倒れた家具などから人を保護することができる。
【0012】
下側支持部のフレーム部を支持する強度が、上側支持部のフレーム部を支持する強度より大きいため、先に上側支持部によるフレーム部の支持が解放されるので、フレーム部が下側支持部に支持されながら部屋の下部に移動する。これにより、フレーム部の落下位置は、フレーム部が部屋の上部に配置されたときの位置の真下に近くなるので、部屋の壁際以外で就寝中の就寝者にフレーム部が接触する可能性を低減することができる。
【0013】
また、フレーム部をフレーム支持部によって部屋の上部に支持するだけで救命装置を構成することができるため、コストを低く抑えることができる。
【0014】
上記の救命装置において好ましくは、部屋が倒壊するときに、上側支持部によるフレーム部の支持が解放される。これにより、部屋が倒壊するときに、上側支持部によって部屋の上部に支持されていたフレーム部を落下させることができ、下側支持部によって支持された状態でフレーム部を部屋の下部に移動させることができる。
【0015】
上記の救命装置において好ましくは、部屋が倒壊しないときは、フレーム支持部がフレーム部を部屋の上部に支持する。これにより、弱い地震災害時において部屋が倒壊しないときは、フレーム部が部屋の上部に支持されるので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0016】
上記の救命装置において好ましくは、部屋は柱部材を含み、下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とを含み、アイストラップ部材は、凸部を有し、かつねじ部材により柱部材にねじ止めされており、紐部材は、凸部と柱部材との間を通って、アイストラップ部材の周囲を囲むように構成された輪部を有し、支柱部材が輪部の内側に通されるよう構成されている。
【0017】
下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とにより構成されており、コストを低く抑えることができる。また、アイストラップ部が柱部材にねじ止めされているため、支柱部材を部屋の下部における柱部材の近傍に落下させることができる。よって、柱部材32の近傍以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。
【0018】
上記の救命装置において好ましくは、フレーム部が、分割可能に構成されている。フレーム部を分割することによりフレーム部を容易に運搬することができる。また、分割されたフレーム部の各々がフレーム支持部に載置された後に、各々のフレーム部を組立てることによりフレーム部を容易に設置することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の救命装置によれば、日常生活に不便なく、かつ低コストで地震災害時の救命の可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における救命装置が部屋の上部に配置された状態を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態における救命装置のフレーム部を概略的に示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態における救命装置のフレーム部の中央継手部の近傍を概略的に示す斜視図である。
【図4】図3におけるIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図1におけるV−V線に沿った断面図である。
【図6】図1におけるVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図1におけるP部を概略的に示す拡大図である。
【図8】図1におけるVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図1におけるXI−XI線に沿った断面図である。
【図10】本発明の一実施の形態におけるフレーム部が部屋の上部に配置された状態を概略的に示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態における地震によって部屋が倒壊し始めたときのフレーム部の状態を概略的に示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態における地震によってフレーム部の全体が落下した状態を概略的に示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態における地震によってフレーム部の一部が落下した状態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に、本発明の一実施の形態の救命装置の構成について説明する。
【0022】
図1を参照して、本発明の一実施の形態の救命装置1は、フレーム部11と、フレーム支持部21とを主に有している。
【0023】
救命装置1は、地震災害時の救命の可能性を高めるための装置である。より具体的には生存するための空間を確保する確率を高めるための装置である。フレーム部11は、地震災害時に人を保護するためのものである。フレーム部11は、倒壊した部屋30や倒れた家具などを支えることにより、フレーム部11と床などとの間に空間を形成するように構成されている。
【0024】
フレーム部11は、複数の支柱部材12と、複数の枠部材13とを有している。支柱部材12は、部屋30の壁31際に配置されている。支柱部材12は、部屋30の高さ方向に延在するように構成されている。枠部材13は、部屋30の上部に配置されている。枠部材13は、支柱部材12間を部屋30の壁31際に沿って繋ぐように構成されている。
【0025】
フレーム部11は、フレーム支持部21によって部屋30の上部に支持されている。部屋30の上部とは、部屋30の高さ方向において天井近傍を意味している。フレーム部11は、壁31と離れて配置されていてもよい。フレーム部11と壁31との間に隙間が形成されることにより、フレーム部11が落下する際にフレーム部11が壁31と接触することが抑制される。このため、より確実にフレーム部11を落下させることができる。
【0026】
フレーム支持部21は、フレーム部11を部屋30の上部に支持するためのものである。フレーム支持部21は、上側支持部22と、下側支持部23とを有している。上側支持部22は、フレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持するよう構成されている。下側支持部23は、フレーム部11の下側の支柱部材12を部屋30の下部に移動可能に支持するよう構成されている。部屋30の下部とは、部屋30の高さ方向において床近傍を意味している。
【0027】
下側支持部23のフレーム部11を支持する強度は、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きい。フレーム部11を支持する強度とは、フレーム部11の支持が解放されるときの力に対する強さを意味している。たとえば、図5および図7に示す紐部材26が切れるときの力やねじ部材25が柱部材32などから引き抜かれるときの力に対する強さが、フレーム部11を支持する強度に該当する。
【0028】
上側支持部22と、下側支持部23とは、部屋30の柱部材32に固定され得る。なお、上側支持部22と、下側支持部23とは、部屋30の壁31に固定されていてもよい。上側支持部22は、部屋30が倒壊するときに、フレーム部11の支持を解放するように構成されている。フレーム支持部21は、部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11を部屋30の上部に支持するように構成されている。
【0029】
図2を参照して、フレーム部11は、支柱部材12と、枠部材13とを主に有している。好ましくは、フレーム部11は分割可能に構成されている。
【0030】
支柱部材12の高さは、就寝状態における寝具の厚さなどを加えた人の高さより高くなるように構成されている。複数の支柱部材12の上部を繋ぐように枠部材13が構成されている。これにより、倒壊した部屋30や倒れた家具を支柱部材12および枠部材13が支えることにより、フレーム部11が形成する空間内の就寝者が保護される。
【0031】
フレーム部11は、複数の枠部材13が平面視において、たとえば矩形状の枠を形成するよう構成されている。4つの支柱部材12は、平面視における矩形状の枠の四隅から一方向に延在するように構成されている。地震災害時に天井板がばらばらに崩れて落ちてくることはほとんどないため、複数の枠部材13が平面視において矩形状の枠を形成することにより、矩形状の枠と床などとの間に空間を形成することができる。
【0032】
枠部材13は、たとえば支柱部材12の間に2本並んで設けられているが、枠部材13は、倒壊した部屋30や倒れた家具を支えることができる構成であれば1本であってもよく、また3本以上の複数であってもよい。
【0033】
支柱部材12には接続部材17が取り付けられている。枠部材13の梁13aの一方端が接続部材17に挿入されてボルト14で固定されている。枠部材13の梁13aの他方端が中央継手部15に挿入されてボルト14で固定されている。この梁13aと中央継手部15と接続部材17とは枠部材13を構成している。なお、枠部材13は、これに限定されず、たとえば中央継手部15が設けられなくてもよい。
【0034】
また、たとえば支柱部材12間には、支柱部材12の軸方向に沿って複数の補助部材16が設けられている。なお、補助部材16は複数の(図2では2本の)梁13aをつないで補強するものであるが、補助部材16は補助部材16を設けなくても倒壊した部屋30や倒れた家具を支えることができる場合には設けられなくてもよい。
【0035】
図3および図4を参照して、中央継手部15の両端から枠部材13の梁13aが挿入されている。中央継手部15の両端から枠部材13の梁13aが挿入されているため、枠部材13の長さを調整することができる。中央継手部15に挿入された枠部材13の梁13aの外周面を中央継手部15の外周面からボルト14で締め付けることにより、中央継手部15に枠部材13の梁13aが固定されている。ボルト14で締め付けることで中央継手部15に枠部材13の梁13aが固定されるため、施工が容易である。
【0036】
図5および図6を参照して、フレーム部11の上側の枠部材13が上側支持部22によって部屋30の上部に吊られている。上側支持部22は、部屋が倒壊しない程度の弱い地震の際には、フレーム部11を落下させないように構成されている。
【0037】
より具体的には、上側支持部22は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とを主に有している。アイストラップ部材24は凸部24aを有している。アイストラップ部材24は、2つのスクリューネジからなるねじ部材25により柱部材32にねじ止めされている。
【0038】
紐部材26は、凸部24aと柱部材32との間を通って、アイストラップ部材24の周囲を囲むように構成された輪部26aを有している。紐部材26は、たとえば径3mmで形成されている。輪部26aは、たとえば紐部材26の一部をもやい結びすることにより構成されている。支柱部材12が輪部26aの内側に通されている。枠部材13の下面に輪部26aの上面が接している。フレーム部11が紐部材26によってアイストラップ部材24を介して柱部材32に吊られている。
【0039】
図7〜図9を参照して、フレーム部11の下側の支柱部材12が下側支持部23によって部屋の下部に移動可能に支持されている。より具体的には、下側支持部23は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とを主に有している。アイストラップ部材24は凸部24aを有している。アイストラップ部材24は、4つのスクリューネジからなるねじ部材25により柱部材32にねじ止めされている。
【0040】
紐部材26は、凸部24aと柱部材32との間を通って、アイストラップ部材24の周囲を囲むように構成された輪部26aを有している。紐部材26は、たとえば径6mmで形成されている。輪部26aは、たとえば紐部材26の一部をもやい結びすることにより構成されている。支柱部材12が輪部26aの内側に通されている。支柱部材12が下側支持部23によって輪部26aの内側を通って部屋30の下部に移動するように支持されている。フレーム部11が紐部材26によって柱部材32から遠くに離れないよう支持されている。
【0041】
図6および図9を参照して、上側支持部22と下側支持部23とは、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなるよう構成されている。上側支持部22および下側支持部23のフレーム部11を支持する強度は、様々な構成により設定することができる。たとえば、ねじ部材25および紐部材26の材質、径、長さ、個数などにより設定することができる。上記では、上側支持部22のねじ部材25が2つのスクリューネジから構成されており、下側支持部23のねじ部材25が4つのスクリューネジから構成されている。
【0042】
つまり、下側支持部23のねじ部材25のスクリューネジの数が上側支持部22のねじ部材25のスクリューネジの数より多くなっている。たとえば下側支持部23のねじ部材25のスクリューネジの数は、上側支持部22のねじ部材25のスクリューネジの数の2倍以上としてもよい。この場合ねじ部材25は共通のサイズおよび材質としてもよい。
【0043】
また、下側支持部23の紐部材26の径が、上側支持部22の紐部材26の径の2倍の大きさに形成されている。つまり、下側支持部23の紐部材26の径は、上側支持部22の紐部材26の径より大きくなっている。たとえば下側支持部23の紐部材26の径は、上側支持部22の紐部材26の径の2倍以上としてもよい。この場合紐部材26は共通の材質としてもよい。
【0044】
これらのことから、上記では下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなっている。上側支持部22および下側支持部23は、これに限定されず、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きくなるよう構成されていればよい。
【0045】
次に、本発明の一実施の形態の救命装置の動作について説明する。
図10を参照して、部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11が部屋の上部に支持されている。就寝者41は部屋の中央部で就寝している。
【0046】
図11を参照して、地震災害時において部屋30が倒壊するときは、下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きいため、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放される。たとえば、下側支持部23の紐部材26は切れずに、上側支持部22の紐部材26が切れる。この結果、たとえば、部屋30において図中右側の上側支持部22Rの支持が解放される。
【0047】
図12を参照して、続いて部屋30において図中左側の上側支持部22Lの支持も解放された場合、部屋30の上部に支持されていたフレーム部11の全体が下側支持部23L,23Rに支持されて落下することにより、フレーム部11が床などとの間に空間61(図12中斜線で示す空間)が形成される。
【0048】
図13を参照して、一方、部屋30において図中左側の上側支持部22Lが支持されている場合、上側支持部22Rの支持が解放されているため、部屋30の上部に支持されていたフレーム部11の図中右側が下側支持部23Rに支持されて落下することにより、フレーム部11が床などとの間に空間61(図12中斜線で示す空間)が形成される。
【0049】
また、下側支持部23Rを支点として、引張り力が作用することにより、上側支持部22Lの支持が解放され得る。
【0050】
部屋30が倒壊するときは、天井51が地面に対して平行移動するように壁31が一方向に傾いて倒壊することが多い。そのため、壁31および天井51の移動にあわせてフレーム部11の平面視における位置が大きく変動し得る。
【0051】
フレーム部11が下側支持部23L,23Rの少なくとも一方によって支持されて部屋30の下部に移動することにより、フレーム部11が部屋30の上部に配置されたときの位置の真下に近い位置に落下する。これにより、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、部屋30の壁31際以外で就寝中の就寝者41にフレーム部が接触する可能性を低減することができる。
【0052】
また、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制される。そのため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。
【0053】
次に、本発明の一実施の形態の救命装置の作用効果について説明する。
本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、フレーム支持部21の上側支持部22がフレーム部11の上側の枠部材13を部屋30の上部に載置するように支持することにより、フレーム部11が部屋30の上部に支持されている。そのため、部屋30が倒壊しないときは部屋30の上部にフレーム部11が支持されているので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0054】
部屋30が倒壊するときはフレーム支持部21によって部屋30の上部に支持されていたフレーム部11が落下することにより、フレーム部11が空間61を形成する。このフレーム部11が形成した空間61に人が入ることにより、倒壊した部屋30や倒れた家具などから人を保護することができる。
【0055】
下側支持部23のフレーム部11を支持する強度が、上側支持部22のフレーム部11を支持する強度より大きいため、地震災害時において部屋30が倒壊するときに、下側支持部23によるフレーム支持部21の支持が解放されるより先に上側支持部23によるフレーム部11の支持が解放される。そのため、フレーム部11が下側支持部23に支持されながら部屋30の下部に移動する。これにより、下側支持部23によるフレーム支持部21の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11の落下位置は、フレーム部11が部屋30の上部に配置されたときの位置の真下に近くなる。
【0056】
したがって、部屋30の壁31際以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。また、下側支持部23によるフレーム部11の支持が解放されるより先に上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放されない場合に比べて、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制される。そのため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。
【0057】
また、フレーム部11をフレーム支持部21によって部屋30の上部に支持するだけで救命装置1を構成することができるため、コストを低く抑えることができる。
【0058】
また、フレーム部11が部屋30の上部に配置されているため、フレーム部11の構造を簡略化することができる。これにより、軽量化、低コスト化を実現できる。また、フレーム部11は、支柱部材12が床などに接触していない。フレーム部11は、支柱部材12が床に接してから倒壊した部屋30や倒れた家具などを支える。したがって、フレーム部11が部屋30の上部に配置されているため、フレーム部11は、支柱部材12が最初から床に接している場合に比べて、倒壊した部屋30や倒れた家具などによってかかる荷重を低減することができる。
【0059】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、部屋30が倒壊するときに、上側支持部22によるフレーム部11の支持が解放される。これにより、部屋30が倒壊するときに、上側支持部22によって部屋30の上部に支持されていたフレーム部11を落下させることができ、下側支持部23によって支持された状態でフレーム部11を部屋30の下部に移動させることができる。
【0060】
また、本発明の一実施の形態1によれば、部屋30が倒壊しないときは、フレーム支持部21がフレーム部11を部屋30の上部に支持する。これにより、弱い地震災害時において部屋30が倒壊しないときは、フレーム部11が部屋30の上部に支持されるので、日常生活における不便をなくすことができる。
【0061】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、下側支持部23は、アイストラップ部材24と、ねじ部材25と、紐部材26とにより構成されており、コストを低く抑えることができる。また、アイストラップ部材24が柱部材32にねじ止めされているため、支柱部材12を部屋30の下部における柱部材32の近傍に落下させることができる。
【0062】
よって、柱部材32の近傍以外で就寝中の就寝者41にフレーム部11が接触する可能性を低減することができる。また、フレーム部11が部屋30の外に大きくはみ出すことが抑制されるため、部屋30の中においてフレーム部11が形成する空間61をより大きくすることができる。また、支柱部材12が輪部26aの内側に通されているため、支柱部材12を滑らかに落下させることができる。
【0063】
また、本発明の一実施の形態の救命装置1によれば、フレーム部11が、分割可能に構成されている。これにより、フレーム部11を分割することによりフレーム部11を容易に運搬することができる。また、分割されたフレーム部11の各々がフレーム支持部21に載置された後に各々のフレーム部11を組立てることによりフレーム部11を容易に設置することができる。
【実施例1】
【0064】
以下、本発明の実施例について説明する。
最初に、フレーム部11の寸法について説明する。
【0065】
天井から床までの距離が2400mmの部屋において、天井から25mmの位置にフレーム部11の支柱部材12の上端部が位置し、床から200mmの位置にフレーム部11の支柱部材12の下端部が位置するようにフレーム部11を部屋30の上部に配置した。
【0066】
フレーム部11の支柱部材12間の枠部材13の長さは、長辺側を3400mmで形成し、短辺側を2500mmで形成した。支柱部材12の高さは、1400mmで形成した。このため、フレーム部11が落下した場合、ベッドで就寝している就寝者41より天井側に枠部材13が位置するため、ベッドで就寝中の就寝者41が保護され得る。
【0067】
接続部材17の上下方向の間隔は、108.2mmで形成した。接続部材17の長さは、150mmで形成した。中央継手部15の長さは、300mmで形成した。ボルト14は中央継手部15の両端部から50mmの位置に取り付けた。
【0068】
支柱部材12、枠部材13の接続部材17および中央継手部15は、直径が60.5mm、厚みが3.8mmで形成した。枠部材13の梁13aおよび補助部材16は、直径が48.6mm、厚みが3.5mmで形成した。
【0069】
支柱部材12、枠部材13の接続部材17、中央継手部15、枠部材13の梁13aおよび補助部材16は、配管用炭素鋼鋼管(SGP)で形成した。ボルト14は、径が8mm、長さが12mmで形成した。ボルト14は、ステンレスで形成した。
【0070】
次に、上側支持部22の耐力について説明する。
フレーム部11の重量は154kgとした。支柱部材12が4つあるため、1つあたりの重量は38.5kgとした。
【0071】
紐部材26の強度について、紐部材26の引張力は、鉛直方向から45°の方向にかかるとして、38.5kg×sec45°=54.5kgとした。紐部材26は、径3mmのビニロンで形成した。紐部材26の耐力は、商品表示より100kgとした。安全率は100/54.5で1.84となる。
【0072】
アイストラップ部材24は、一般構造用圧延鋼材(SS400)で形成した。アイストラップ部材24は、凸部24aを丸鋼によって径6mmで形成し、脚部を幅10mm、厚さ2mm、孔径5mmで形成した。孔は、アイストラップ部材24の両端部の脚部に1つずつ形成した。
【0073】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、凸部24aの丸鋼のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。凸部24aの丸鋼の断面積は、0.6×0.6×π(円周率)/4=0.28cm2とした。凸部24aのせん断耐力は、800×0.28=226kgとした。凸部24aの丸鋼のせん断耐力226kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0074】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、凸部24aの丸鋼の曲げ応力度を計算した。曲げモーメントは、38.5×1.5/2=28.875kg・cmとした。断面係数は、0.63×3.14/32=0.021cm3とした。曲げ応力度は、28.88/0.021=1362kg/cm2とした。凸部24aの丸鋼の曲げ応力度1362kg/cm2は、SS400の許容曲げ応力度1400kg/cm2より小さい。
【0075】
フレーム部11の重量の水平力に対して、脚部のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。有効断面積は、0.2×0.2×2×2=0.16cm2とした。脚部のせん断耐力は、800×0.16=128kgとした。脚部のせん断耐力128kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0076】
ねじ部材25は、径4mm、長さ57mmで形成した。ねじ部材25は2つのスクリューネジで構成されている。
【0077】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、ねじ部材25のせん断耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25のせん断耐力は、800×0.10×2=160.8kgとした。ねじ部材25のせん断耐力160.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0078】
フレーム部11の重量の鉛直力に対して、ねじ部材25と柱部材32の支圧耐力を計算した。柱部材32は木材とした。木材の許容支圧応力度は、20kg/cm2とした。スクリューネジと柱部材32との支圧面積は、0.4×5.3=2.12cm2とした。ねじ部材25のせん断耐力は、20×2.12×2=84.8kgとした。ねじ部材25のせん断耐力84.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0079】
フレーム部11の重量の水平力に対して、ねじ部材25の引張応力を計算した。SS400の許容引張り応力度は1400kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25の引張耐力は、1400×0.10×2=281.3kgとした。ねじ部材25のせん断耐力281.3.8kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0080】
フレーム部11の重量の水平力に対して、柱部材32のせん断耐力(ねじ部材25の引抜き耐力)を計算した。木材の許容せん断応力度は、12kg/cm2とした。スクリューネジ引抜き時の柱部材のせん断面積は、0.4×π×5.3=6.66cm2とした。ねじ部材25の引抜き耐力は、12×6.66×2=160kgとした。ねじ部材25の引抜き耐力160kgは、支柱部材12の1つあたりの重量38.5kgより大きい。
【0081】
以上より、上側支持部22は、鉛直力に対しては、ねじ部材25のせん断耐力84.8kgが最も強度が小さく、水平力に対しては、紐部材26の耐力100kgが最も強度が小さいことがわかった。
【0082】
続いて、下側支持部23の耐力について説明する。
下側支持部23の紐部材26は、径6mmのビニロンで形成した。紐部材26の耐力は、商品表示より370kgとした。
【0083】
アイストラップ部材24は、一般構造用圧延鋼材(SS400)で形成した。アイストラップ部材24は、凸部24aおよび脚部とも幅15mm、厚さ2mm、孔径4.4mmで形成した。孔は、アイストラップ部材24の両端部の脚部に2つずつ形成した。
【0084】
アイストラップ部材24の凸部24a水平耐力を計算した。SS400の許容せん断応力は、800kg/cm2とした。凸部24aの有効断面積は、1.5×0.2=0.30cm2とした。凸部24aのせん断耐力は、800×0.30×2=240kgとした。
【0085】
アイストラップ部材24の脚部の水平耐力を計算した。脚部の有効断面積は、(1.5−0.44)×0.2×2=0.42cm2とした。脚部のせん断耐力は、800×0.42=339kgとした。
【0086】
ねじ部材25の引張耐力を計算した。SS400の許容引張り応力度は1400kg/cm2とした。スクリューネジの有効断面積は、0.4×0.4×π/4×0.8=0.10cm2とした。ねじ部材25の引張耐力は、1400×0.10×4=563kgとした。
【0087】
柱部材32のせん断耐力(ねじ部材25の引抜き耐力)を計算した。木材の許容せん断応力度は、12kg/cm2とした。スクリューネジ引抜き時の柱部材のせん断面積は、0.4×π×5.7=7.2cm2とした。ねじ部材25の引抜き耐力は、12×7.2×4=344kgとした。
【0088】
アイストラップ部材24の許容耐力は、安全率を考慮して、240kgである。したがって、下側支持部23は、最低でも240kgの強度があることがわかった。
【0089】
次に、地震災害時において部屋30が倒壊するときの救命装置1の挙動について説明する。部屋30の柱部材32に傾くことによって、上側支持部22と下側支持部23とに引張り力Fが作用する。たとえば、図10を参照して、上側支持部22Rに対して図中右側に引っ張り力Fが作用した場合について説明する。
【0090】
この引張り力Fにより支柱部材12には曲げが作用する。上側支持部22Lと下側支持部23Lとの高さ方向の距離を0.967mとする。引張り力Fの場合の曲げモーメントMは、M=F×0.967mとなる。一方、支柱部材12の曲げ耐力Mrは、Mr=降伏応力度(σsy)×支柱部材12の断面係数(z)となる。ここでσsyは、SGPの降伏応力度より1835kg/cm2とした。zは、z=π(D4−d4)/D/32より、π(6.054−5.294)/6.05/32=9.03cm3となる。
【0091】
M=Mrより、引張り力Fは、1650/0.967=171kgとした。したがって、上側支持部22Lと下側支持部23Lとに171kgの荷重が作用すると支柱部材12が曲がる。ここで、下側支持部23Lの引張耐力は、240kgであり、上側支持部22Rの引張耐力は、100kgである。これより、図11に示すように、柱部材32が傾き始めてから最初に上側支持部22Rの紐部材26が切れる。
【0092】
同様に、図12に示すように、上側支持部22Lが切れてフレーム部11の全体が落下する。または、上側支持部22Lが切れる前に、フレーム部11が下側指示部23Rの輪部26aの内側をすべり落ちる。これにより、下側支持部23Rが支点となり、上側支持部22Lに引張力が作用する。下側支持部23Rのフレーム部11を支持する強度が上側支持部22Lのフレーム部11を支持する強度より大きいため上側支持部22Lが切れる。このため、フレーム部11の全体が落下する。
【0093】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、組立てキットとして販売され得る。組立てキットは、救命装置の部品一式である。使用者が組立てキットを組立てることにより、救命装置は使用可能な状態になる。組立てキットは宅配便で送付されてもよい。
【0094】
本発明の一実施の形態の救命装置は、倒壊した部屋や倒れた家具などから安全度をさらに上げるために、短辺側に平行に補助部材を追加することも可能であり、これらを支えることが可能な材料で形成されていればよく、たとえば倒壊した部屋や倒れた家具などを支える強度を有するプラスチックなどによって形成され得る。
【0095】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、組立て家具のようにスーパーマーケット、ホームセンターおよび雑貨店などで販売され得る。
【0096】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、軽量で低価格の素材(たとえばカーボンなど)によって形成され得る。
【0097】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、救出隊に生存者の存在を知らせるために、体温を感知できるセンサーおよび発信装置を組み込んで形成されてもよい。
【0098】
なお、本発明の一実施の形態の救命装置は、倒壊後の暗闇による生存者の不安感を緩和させるために、フレーム部が蛍光塗料で塗布されていてもよい。
【0099】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、部屋の上部に支持されたフレーム部を有する救命装置に特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0101】
1 救命装置、11 フレーム部、12 支柱部材、13 枠部材、14 ボルト、15 中央継手部、16 補助部材、17 接続部材、21 フレーム支持部、22 上側支持部、23 下側支持部、24 アイストラップ部材、25 ねじ部材、26 紐部材、30 部屋、31 壁、32 柱、41 就寝者、51 天井、61 空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、
前記フレーム部を部屋の上部に支持するためのフレーム支持部とを備え、
前記フレーム部は、前記部屋の壁際に配置され、かつ前記部屋の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材と、
前記支柱部材間を前記部屋の前記壁際に沿って繋ぐように構成された枠部材とを含み、
前記フレーム支持部は、前記フレーム部の上側の前記枠部材を前記部屋の上部に載置するように支持する上側支持部と、
前記フレーム部の下側の前記支柱部材を前記部屋の下部に移動可能に支持する下側支持部とを含み、
前記下側支持部の前記フレーム部を支持する強度が、前記上側支持部の前記フレーム部を支持する強度より大きい、救命装置。
【請求項2】
前記部屋が倒壊するときに、少なくとも前記上側支持部による前記フレーム部の支持が解放される、請求項1に記載の救命装置。
【請求項3】
前記部屋が倒壊しないときは、前記フレーム支持部が前記フレーム部を前記部屋の上部に支持する、請求項1または2に記載の救命装置。
【請求項4】
前記部屋は柱部材を含み、
前記下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とを含み、
前記アイストラップ部材は、凸部を有し、かつ前記ねじ部材により前記柱部材にねじ止めされており、
前記紐部材は、前記凸部と前記柱部材との間を通って、前記アイストラップ部材の周囲を囲むように構成された輪部を有し、
前記支柱部材が前記輪部の内側に通されるよう構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の救命装置。
【請求項5】
前記フレーム部が、分割可能に構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の救命装置。
【請求項1】
フレーム部と、
前記フレーム部を部屋の上部に支持するためのフレーム支持部とを備え、
前記フレーム部は、前記部屋の壁際に配置され、かつ前記部屋の高さ方向に延在するように構成された複数の支柱部材と、
前記支柱部材間を前記部屋の前記壁際に沿って繋ぐように構成された枠部材とを含み、
前記フレーム支持部は、前記フレーム部の上側の前記枠部材を前記部屋の上部に載置するように支持する上側支持部と、
前記フレーム部の下側の前記支柱部材を前記部屋の下部に移動可能に支持する下側支持部とを含み、
前記下側支持部の前記フレーム部を支持する強度が、前記上側支持部の前記フレーム部を支持する強度より大きい、救命装置。
【請求項2】
前記部屋が倒壊するときに、少なくとも前記上側支持部による前記フレーム部の支持が解放される、請求項1に記載の救命装置。
【請求項3】
前記部屋が倒壊しないときは、前記フレーム支持部が前記フレーム部を前記部屋の上部に支持する、請求項1または2に記載の救命装置。
【請求項4】
前記部屋は柱部材を含み、
前記下側支持部は、アイストラップ部材と、ねじ部材と、紐部材とを含み、
前記アイストラップ部材は、凸部を有し、かつ前記ねじ部材により前記柱部材にねじ止めされており、
前記紐部材は、前記凸部と前記柱部材との間を通って、前記アイストラップ部材の周囲を囲むように構成された輪部を有し、
前記支柱部材が前記輪部の内側に通されるよう構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の救命装置。
【請求項5】
前記フレーム部が、分割可能に構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の救命装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−122309(P2011−122309A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278628(P2009−278628)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(399006478)株式会社ジャパックス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(399006478)株式会社ジャパックス (2)
【Fターム(参考)】
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