散乱係数測定装置およびこれを備える濃度測定装置並びにその方法
【課題】装置の小型化を図りつつ、標本の散乱係数を測定することができる散乱係数測定装置を提供する。
【解決手段】標本A面に対して光を斜めに射出する導光部10と、標本A面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、標本A面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子20と、受光素子20により検出された標本Aからの散乱光の強度の分布から、標本Aの散乱係数を算出するCPU30とを備える散乱係数測定装置1を採用する。
【解決手段】標本A面に対して光を斜めに射出する導光部10と、標本A面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、標本A面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子20と、受光素子20により検出された標本Aからの散乱光の強度の分布から、標本Aの散乱係数を算出するCPU30とを備える散乱係数測定装置1を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱係数測定装置およびこれを備える濃度測定装置並びにその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光散乱体である生体を被検体とし、その散乱係数を測定する散乱係数測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この散乱係数測定装置では、被検体の散乱係数から血糖値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−85712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、このような散乱係数測定装置を用いて血糖値を測定する場合には、血糖値変化により間質液の屈折率が変化し、それに伴い散乱係数が変化する。この散乱係数の変化をOCTの信号変化として捉え、血糖値測定を行う。
しかしながら、特許文献1に開示されている散乱係数測定装置では、干渉計が必要なため、装置が大型になり、小型の測定装置を実現できないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置の小型化を図りつつ、標本の散乱係数を測定することができる散乱係数測定装置およびこれを備える濃度測定装置並びにその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様は、標本面に対して光を斜めに射出する導光部と、前記標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、前記標本面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子と、前記受光素子により検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出部とを備える散乱係数測定装置である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、導光部から標本面に対して光が斜めに射出されると、該標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列された受光素子により、標本からの散乱光の強度がそれぞれ検出される。そして、算出部により、受光素子により検出された散乱光の強度分布から、標本の散乱係数を算出することができる。
上記のように、本発明の第1の態様によれば、導光部、受光素子、および算出部により標本の散乱係数を算出することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0008】
上記態様において、前記算出部が、以下の式に基づいて前記標本の散乱係数を算出することとしてもよい。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)
ここで、
αi:前記標本への入射角
αt:前記標本の屈折角
ni:前記標本の屈折率
nt:前記導光部と前記標本との間の入射側媒質の屈折率
xs:前記標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離
μs:前記標本の散乱係数
μa:前記標本の吸収係数
g:前記標本の異方性
【0009】
このようにすることで、標本の屈折率ni、標本の屈折率nt、標本への入射角αi、標本の吸収係数μa、および標本の異方性gを事前に測定し、標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離xsを受光素子により検出することによって、標本の散乱係数μsを算出することができる。
【0010】
上記態様において、前記導光部に入射させる光の波長を調節する波長調節部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、導光部に入射させる光の波長を波長調節部により調節しながら、波長毎の標本の散乱係数を算出することができ、標本の散乱係数の測定精度を向上することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記の散乱係数測定装置と、前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える濃度測定装置である。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、散乱係数測定装置により標本の散乱係数を算出するとともに、スペクトル測定部により標本からの散乱光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび標本の散乱係数から、演算部により標本の濃度を多変量解析により演算することができる。このように標本の濃度を演算することで、単純に標本の散乱係数から濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、標本面に対して光を斜めに射出する導光ステップと、前記標本面における光の入射点を中心とした射出方向の複数点において、前記標本からの散乱光の強度をそれぞれ検出する散乱光検出ステップと、前記散乱光検出ステップにより検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出ステップとを含む散乱係数測定方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記の散乱係数測定方法と、前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む濃度測定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図りつつ、標本の散乱係数を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置および第2の実施形態に係る濃度測定装置の全体構成図である。
【図2】標本上にレーザ光が入射する状態を示す斜視図である。
【図3】図1の散乱係数測定装置の部分拡大図である。
【図4】図1の散乱係数測定装置の部分拡大図である。
【図5】散乱係数の測定原理を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る濃度測定装置により実行される処理を示すブロック図である。
【図7】第1の変形例に係る濃度測定装置の全体構成図である。
【図8】第2の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図9】第3の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図10】第4の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図11】第5の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1について、図1から図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る散乱係数測定装置1は、図1に示されるように、波長可変レーザ25と、レンズL1と、導光部10と、レンズL2,L3と、受光素子20と、導光部材21と、CPU(算出部)30と、モニタ31と、制御装置38を備えている。
【0018】
波長可変レーザ25は、レーザ光の波長を調節可能なレーザ光源であり、後述する制御装置38からの指令に基づいて、レーザ光の波長を選択して射出するようになっている。
波長可変レーザ25の射出光軸上には、波長可変レーザ25からのレーザ光を導光部10の入射端面11に集光するレンズL1と、レンズL1により集光されたレーザ光を導く導光部10とが配置されている。
【0019】
導光部10は、例えば光ファイバであり、図3に示すように、入射端面11から入射させたレーザ光を、内側面により内面反射させて入射端面11とは他端側に配置された出射端面12まで導いて、出射端面12から標本Aに向けて射出するようになっている。また、導光部10の射出光軸は、標本面Aに対して斜めに配置されている。なお、標本Aへの入射角は、例えば30°以上とする。
【0020】
導光部10の射出光軸上には、レンズL2,L3が配置されている。レンズL2,L3は、導光部10から射出されたレーザ光の光束径を小さくするとともに、レーザ光を平行光にするようになっている。
【0021】
標本A面上には、図2に示すように、導光部10からのレーザ光が入射する入射位置Pを中心として、その散乱光を測定するための測定ポイントが2次元的に複数配列されている。
【0022】
各測定ポイントには、図4に示すように、標本Aからの散乱光を導光する導光部材21a〜21dがそれぞれ接続されている。導光部材21a〜21dは、各測定ポイントからの散乱光を導くようになっている。
なお、図4においては、作図の都合上、複数の導光部材21a〜21dおよび受光素子20a〜20dが紙面に沿う方向にのみ配置されている例を示しているが、紙面に直交する方向に複数配置されていることとしてもよい。
【0023】
導光部材21a〜21dには、受光素子20a〜20dがそれぞれ接続されている。受光素子20a〜20dは、導光部材21a〜21dにより導かれた各測定ポイントにおける標本Aからの散乱光の強度を検出するようになっている。
なお、以降では、導光部材21a〜21dを区別しない場合には単に「導光部材21」と表記する。同様に、受光素子20a〜20dを区別しない場合には単に「受光素子20」と表記する。
【0024】
CPU30は、受光素子20により検出された標本Aからの散乱光の強度分布から、標本Aの散乱係数を算出するようになっている。具体的な標本Aの散乱係数の算出方法については後述する。
【0025】
モニタ31は、CPU30より算出された標本Aの散乱係数や、波長可変レーザ25により選択されたレーザ光の波長等の情報を表示するようになっている。
制御装置38は、CPU30からの指令に基づいて波長可変レーザ25を動作させて、波長可変レーザ25から射出するレーザ光の波長を制御するようになっている。
【0026】
ここで、本実施形態に係る散乱係数測定装置1による標本Aの散乱係数の測定原理について以下に説明する。
図5に示すように、標本A面上に対して斜めにレーザ光を入射させると、レーザ光は標本A内に潜ってから反射されるため、その散乱反射光の強度分布は、レーザ光の入射方向にずれた形となる。
【0027】
なお、図5において、縦軸は散乱反射光の強度(光量)、横軸はレーザ光の入射方向の座標(レーザ光の入射位置を中心とした座標)を表わしている。符号Pは標本A面上におけるレーザ光の入射位置、符号Mは散乱反射光の強度分布、符号Cは散乱反射光の強度分布Mの中心線、符号xsはレーザ光の入射位置Pと散乱反射光の強度分布の中心線Cとのズレ量、すなわち標本A表面に投影された見かけの輝点の移動距離を示している。
【0028】
標本A表面に投影された見かけの輝点の移動距離xsは、標本Aへの入射角αt、標本Aの換算散乱係数μs’および吸収係数μaの関数として以下の式で表される(例えばV、L.V.Wang and H.−I Wu(2007),Biomedical Optics:Principles and Imaging,Wiley−Interscience,pp140参照)。
xs=sinαt/(μs’+μa)・・・(1)
【0029】
標本Aへの入射角αiは、標本Aの屈折角αt、導光部10と標本Aとの間の入射側媒質(本実施形態では空気)の屈折率nt、標本Aの屈折率niと以下の関係がある。
sinαi/sinαt=nt/ni・・・(2)
【0030】
ここで、標本Aの換算散乱係数μs’は、標本Aの散乱係数μsおよび異方性gを用いて以下のように定義される。
μs’=μs(1−g)・・・(3)
【0031】
上記の(1)〜(3)より、以下の式が導かれる。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)・・・(4)
したがって、標本Aの屈折率ni、導光部10と標本Aとの間の入射側媒質の屈折率nt、標本Aへの入射角αi、標本Aの吸収係数μaおよび異方性gは事前に測定することができ、本実施形態に係る散乱係数測定装置1により見かけの輝点の移動距離xsが求まるので、標本Aの散乱係数μsを算出することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る散乱係数測定装置1によれば、導光部10から標本A面に対してレーザ光を斜めに射出することで、標本A面においてレーザ光の入射点を中心として射出方向に複数配列された受光素子20により、標本Aからの散乱光の強度がそれぞれ検出される。そして、CPU30により、受光素子20により検出された散乱光の強度分布から、標本Aの散乱係数を算出することができる。
上記のように、本発明の第1の態様によれば、導光部10、受光素子20、およびCPU30により標本Aの散乱係数を算出することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
また、導光部10に入射させるレーザ光の波長を調節可能な波長可変レーザ25を備えることで、導光部10に入射させるレーザ光の波長を調節しながら、波長毎の標本Aの散乱係数を算出することができ、標本Aの散乱係数の測定精度を向上することができる。導光部10には、調節する波長範囲の広さに応じて、マルチモードファイバもしくはシングルモードファイバを用いればよい。
【0034】
なお、本実施形態において、レーザ光の波長を調節可能な波長可変レーザ25を備えることとして説明したが、これに代えて、広帯域な光を射出する白色光源と、該白色光源からの光のうち特定波長の光を選択的に透過させる波長調節装置とを備えることとしてもよい。この場合には、導光させたい光の波長帯域に応じてマルチモードファイバもしくはシングルモードファイバを用いれば良い。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、主に図1および図6を参照して説明する。本実施形態においては、前述の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1を、例えば血糖値等を測定する濃度測定装置に適用した例について説明する。以下、本実施形態の濃度測定装置2について、第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0036】
本実施形態に係る濃度測定装置2は、図1に示すように、第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1と同様の構成を有している。本実施形態において、受光素子20は、前述の第1の実施形態と同様の機能に加えて、標本A面からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部としての機能も有している。また、CPU30は、前述の第1の実施形態と同様の機能に加えて、標本Aの濃度を演算する演算部としての機能も有している。
【0037】
受光素子20は、波長可変レーザ25により選択的に射出されたレーザ光の波長毎に、標本Aからの散乱光の強度を検出するようになっている。これにより、受光素子20は、標本Aからの散乱光の波長スペクトルを測定するようになっている。
【0038】
ここで、標本Aにおける全反射の現象では、導光部10からのレーザ光は標本A内に少しだけ潜り込んで反射されるので、標本Aに吸収があるとこの影響を受けて反射光のエネルギーが減少する。したがって、レーザ光の波長を種々変えることにより、あるいは反射光を分光することにより、標本Aからの散乱光のスペクトルが得られる。これは減衰全反射法(ATR:attenuated total reflection)と呼ばれるスペクトル測定法である。
【0039】
本実施形態に係る濃度測定装置2において、CPU30は、受光素子20により測定された標本Aからの散乱光の波長スペクトルと、前述の第1の実施形態に記載に方法により測定した標本Aの散乱係数とから、標本Aの濃度を多変量解析により演算するようになっている。
【0040】
上記演算における情報処理の流れは図6に示すようになる。本実施形態に係る濃度測定装置2によれば、アルコール類、糖類、脂肪酸、ポリマーなど広範囲な溶質の濃度測定が可能であるが、ここでは血糖値測定を例に説明する。減衰全反射法によるスペクトル測定値と屈折率測定値はPLS法などの回帰分析手法を含む演算処理を経て血糖値として最終的な値を得る。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る濃度測定装置2によれば、前述の実施形態に係る散乱係数測定装置1により標本Aの散乱係数を算出するとともに、受光素子20により標本Aからの散乱光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび標本Aの散乱係数から、CPU30により標本Aの濃度を多変量解析により演算することができる。このように標本Aの濃度を演算することで、単純に標本Aの散乱係数から濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0042】
[第1の変形例]
なお、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第1の変形例として、図7に示すように、導光部材21を設けずに、標本A面上に受光ユニット26,27を直接配置することとしてもよい。この場合には、レーザ光を標本Aに射出する射出ユニット14の前後(レーザ光の射出方向)に受光ユニット26,27をそれぞれ配置する。
【0043】
受光ユニット26,27は、例えばInSbセンサであり、標本Aの表面上において2次元方向に複数の受光素子が配列されている。
なお、図7において、導光部10と射出ユニット14との接続部には射出端16が設けられ、射出端16の射出光軸上には射出端16からのレーザ光をレンズL2,L3に向けて反射するミラー15が設けられている。
【0044】
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置3によれば、導光部材21による標本Aからの散乱光の光量の低下を防止することができ、標本Aからの散乱光の検出精度を向上することができる。
【0045】
[第2の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第2の変形例として、図8に示すように、受光ユニット26,27が、複数の受光素子をレーザ光の射出方向に1列のみ配列されていることとしてもよい。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0046】
[第3の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第3の変形例として、図9に示すように、受光ユニット26,27が、それぞれ1つの受光素子をレーザ光の射出方向に配列することとしてもよい。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、さらに装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0047】
なお、この場合において、例えば第1の変形例の濃度測定装置3による測定データを、図示しないメモリにバックデータとして有していることにより、このバックデータと受光素子により検出した標本Aからの散乱光の強度とから、散乱光の強度分布を推定することができる。このようにすることで、受光ユニット26,27として1つの受光素子を用いた場合でも、標本Aからの散乱係数の測定精度を向上することができる。
【0048】
[第4の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第4の変形例として、図10に示すように、波長可変レーザ25に代えて、それぞれ異なる波長で発光する単色LED25a〜25cを複数並べることとしてもよい。LED25a〜25cのうちのどれを発光させるかをCPU30により制御する。これにより、発光波長の選択が可能である。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、高輝度な単色LEDを用いることができ、標本Aからの散乱光の検出精度を向上することができる。また、照明光学系を単純化して装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0049】
[第5の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第5の変形例として、図11に示すように、ブロードな波長帯域を有する光源を用いるとともに、受光ユニット26,27として、例えばPbSeラインセンサ等の高い波長分解能を有するセンサを採用することとしてもよい。この場合において、受光ユニット26,27は、複数の受光素子がレーザ光の射出方向に1列配列されており、受光素子によって検出する波長が異なる。
【0050】
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、照明光学系の波長制御のために必要な要素を少なくすることができ、照明光学系を単純化して装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0051】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および各変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
L1,L2,L3 レンズ
A 標本
1 散乱係数測定装置
2,3 濃度測定装置
10 導光部
11 入射端面
12 出射端面
20 受光素子
21 導光部材
25 波長可変レーザ(波長調節部)
26,27 受光ユニット
30 CPU(算出部、演算部)
31 モニタ
38 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱係数測定装置およびこれを備える濃度測定装置並びにその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光散乱体である生体を被検体とし、その散乱係数を測定する散乱係数測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この散乱係数測定装置では、被検体の散乱係数から血糖値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−85712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、このような散乱係数測定装置を用いて血糖値を測定する場合には、血糖値変化により間質液の屈折率が変化し、それに伴い散乱係数が変化する。この散乱係数の変化をOCTの信号変化として捉え、血糖値測定を行う。
しかしながら、特許文献1に開示されている散乱係数測定装置では、干渉計が必要なため、装置が大型になり、小型の測定装置を実現できないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置の小型化を図りつつ、標本の散乱係数を測定することができる散乱係数測定装置およびこれを備える濃度測定装置並びにその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様は、標本面に対して光を斜めに射出する導光部と、前記標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、前記標本面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子と、前記受光素子により検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出部とを備える散乱係数測定装置である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、導光部から標本面に対して光が斜めに射出されると、該標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列された受光素子により、標本からの散乱光の強度がそれぞれ検出される。そして、算出部により、受光素子により検出された散乱光の強度分布から、標本の散乱係数を算出することができる。
上記のように、本発明の第1の態様によれば、導光部、受光素子、および算出部により標本の散乱係数を算出することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0008】
上記態様において、前記算出部が、以下の式に基づいて前記標本の散乱係数を算出することとしてもよい。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)
ここで、
αi:前記標本への入射角
αt:前記標本の屈折角
ni:前記標本の屈折率
nt:前記導光部と前記標本との間の入射側媒質の屈折率
xs:前記標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離
μs:前記標本の散乱係数
μa:前記標本の吸収係数
g:前記標本の異方性
【0009】
このようにすることで、標本の屈折率ni、標本の屈折率nt、標本への入射角αi、標本の吸収係数μa、および標本の異方性gを事前に測定し、標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離xsを受光素子により検出することによって、標本の散乱係数μsを算出することができる。
【0010】
上記態様において、前記導光部に入射させる光の波長を調節する波長調節部を備えることとしてもよい。
このように構成することで、導光部に入射させる光の波長を波長調節部により調節しながら、波長毎の標本の散乱係数を算出することができ、標本の散乱係数の測定精度を向上することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記の散乱係数測定装置と、前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える濃度測定装置である。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、散乱係数測定装置により標本の散乱係数を算出するとともに、スペクトル測定部により標本からの散乱光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび標本の散乱係数から、演算部により標本の濃度を多変量解析により演算することができる。このように標本の濃度を演算することで、単純に標本の散乱係数から濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、標本面に対して光を斜めに射出する導光ステップと、前記標本面における光の入射点を中心とした射出方向の複数点において、前記標本からの散乱光の強度をそれぞれ検出する散乱光検出ステップと、前記散乱光検出ステップにより検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出ステップとを含む散乱係数測定方法である。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記の散乱係数測定方法と、前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む濃度測定方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、装置の小型化を図りつつ、標本の散乱係数を測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置および第2の実施形態に係る濃度測定装置の全体構成図である。
【図2】標本上にレーザ光が入射する状態を示す斜視図である。
【図3】図1の散乱係数測定装置の部分拡大図である。
【図4】図1の散乱係数測定装置の部分拡大図である。
【図5】散乱係数の測定原理を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る濃度測定装置により実行される処理を示すブロック図である。
【図7】第1の変形例に係る濃度測定装置の全体構成図である。
【図8】第2の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図9】第3の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図10】第4の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【図11】第5の変形例に係る濃度測定装置の要部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施形態]
以下に、本発明の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1について、図1から図5を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る散乱係数測定装置1は、図1に示されるように、波長可変レーザ25と、レンズL1と、導光部10と、レンズL2,L3と、受光素子20と、導光部材21と、CPU(算出部)30と、モニタ31と、制御装置38を備えている。
【0018】
波長可変レーザ25は、レーザ光の波長を調節可能なレーザ光源であり、後述する制御装置38からの指令に基づいて、レーザ光の波長を選択して射出するようになっている。
波長可変レーザ25の射出光軸上には、波長可変レーザ25からのレーザ光を導光部10の入射端面11に集光するレンズL1と、レンズL1により集光されたレーザ光を導く導光部10とが配置されている。
【0019】
導光部10は、例えば光ファイバであり、図3に示すように、入射端面11から入射させたレーザ光を、内側面により内面反射させて入射端面11とは他端側に配置された出射端面12まで導いて、出射端面12から標本Aに向けて射出するようになっている。また、導光部10の射出光軸は、標本面Aに対して斜めに配置されている。なお、標本Aへの入射角は、例えば30°以上とする。
【0020】
導光部10の射出光軸上には、レンズL2,L3が配置されている。レンズL2,L3は、導光部10から射出されたレーザ光の光束径を小さくするとともに、レーザ光を平行光にするようになっている。
【0021】
標本A面上には、図2に示すように、導光部10からのレーザ光が入射する入射位置Pを中心として、その散乱光を測定するための測定ポイントが2次元的に複数配列されている。
【0022】
各測定ポイントには、図4に示すように、標本Aからの散乱光を導光する導光部材21a〜21dがそれぞれ接続されている。導光部材21a〜21dは、各測定ポイントからの散乱光を導くようになっている。
なお、図4においては、作図の都合上、複数の導光部材21a〜21dおよび受光素子20a〜20dが紙面に沿う方向にのみ配置されている例を示しているが、紙面に直交する方向に複数配置されていることとしてもよい。
【0023】
導光部材21a〜21dには、受光素子20a〜20dがそれぞれ接続されている。受光素子20a〜20dは、導光部材21a〜21dにより導かれた各測定ポイントにおける標本Aからの散乱光の強度を検出するようになっている。
なお、以降では、導光部材21a〜21dを区別しない場合には単に「導光部材21」と表記する。同様に、受光素子20a〜20dを区別しない場合には単に「受光素子20」と表記する。
【0024】
CPU30は、受光素子20により検出された標本Aからの散乱光の強度分布から、標本Aの散乱係数を算出するようになっている。具体的な標本Aの散乱係数の算出方法については後述する。
【0025】
モニタ31は、CPU30より算出された標本Aの散乱係数や、波長可変レーザ25により選択されたレーザ光の波長等の情報を表示するようになっている。
制御装置38は、CPU30からの指令に基づいて波長可変レーザ25を動作させて、波長可変レーザ25から射出するレーザ光の波長を制御するようになっている。
【0026】
ここで、本実施形態に係る散乱係数測定装置1による標本Aの散乱係数の測定原理について以下に説明する。
図5に示すように、標本A面上に対して斜めにレーザ光を入射させると、レーザ光は標本A内に潜ってから反射されるため、その散乱反射光の強度分布は、レーザ光の入射方向にずれた形となる。
【0027】
なお、図5において、縦軸は散乱反射光の強度(光量)、横軸はレーザ光の入射方向の座標(レーザ光の入射位置を中心とした座標)を表わしている。符号Pは標本A面上におけるレーザ光の入射位置、符号Mは散乱反射光の強度分布、符号Cは散乱反射光の強度分布Mの中心線、符号xsはレーザ光の入射位置Pと散乱反射光の強度分布の中心線Cとのズレ量、すなわち標本A表面に投影された見かけの輝点の移動距離を示している。
【0028】
標本A表面に投影された見かけの輝点の移動距離xsは、標本Aへの入射角αt、標本Aの換算散乱係数μs’および吸収係数μaの関数として以下の式で表される(例えばV、L.V.Wang and H.−I Wu(2007),Biomedical Optics:Principles and Imaging,Wiley−Interscience,pp140参照)。
xs=sinαt/(μs’+μa)・・・(1)
【0029】
標本Aへの入射角αiは、標本Aの屈折角αt、導光部10と標本Aとの間の入射側媒質(本実施形態では空気)の屈折率nt、標本Aの屈折率niと以下の関係がある。
sinαi/sinαt=nt/ni・・・(2)
【0030】
ここで、標本Aの換算散乱係数μs’は、標本Aの散乱係数μsおよび異方性gを用いて以下のように定義される。
μs’=μs(1−g)・・・(3)
【0031】
上記の(1)〜(3)より、以下の式が導かれる。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)・・・(4)
したがって、標本Aの屈折率ni、導光部10と標本Aとの間の入射側媒質の屈折率nt、標本Aへの入射角αi、標本Aの吸収係数μaおよび異方性gは事前に測定することができ、本実施形態に係る散乱係数測定装置1により見かけの輝点の移動距離xsが求まるので、標本Aの散乱係数μsを算出することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る散乱係数測定装置1によれば、導光部10から標本A面に対してレーザ光を斜めに射出することで、標本A面においてレーザ光の入射点を中心として射出方向に複数配列された受光素子20により、標本Aからの散乱光の強度がそれぞれ検出される。そして、CPU30により、受光素子20により検出された散乱光の強度分布から、標本Aの散乱係数を算出することができる。
上記のように、本発明の第1の態様によれば、導光部10、受光素子20、およびCPU30により標本Aの散乱係数を算出することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
また、導光部10に入射させるレーザ光の波長を調節可能な波長可変レーザ25を備えることで、導光部10に入射させるレーザ光の波長を調節しながら、波長毎の標本Aの散乱係数を算出することができ、標本Aの散乱係数の測定精度を向上することができる。導光部10には、調節する波長範囲の広さに応じて、マルチモードファイバもしくはシングルモードファイバを用いればよい。
【0034】
なお、本実施形態において、レーザ光の波長を調節可能な波長可変レーザ25を備えることとして説明したが、これに代えて、広帯域な光を射出する白色光源と、該白色光源からの光のうち特定波長の光を選択的に透過させる波長調節装置とを備えることとしてもよい。この場合には、導光させたい光の波長帯域に応じてマルチモードファイバもしくはシングルモードファイバを用いれば良い。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、主に図1および図6を参照して説明する。本実施形態においては、前述の第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1を、例えば血糖値等を測定する濃度測定装置に適用した例について説明する。以下、本実施形態の濃度測定装置2について、第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0036】
本実施形態に係る濃度測定装置2は、図1に示すように、第1の実施形態に係る散乱係数測定装置1と同様の構成を有している。本実施形態において、受光素子20は、前述の第1の実施形態と同様の機能に加えて、標本A面からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部としての機能も有している。また、CPU30は、前述の第1の実施形態と同様の機能に加えて、標本Aの濃度を演算する演算部としての機能も有している。
【0037】
受光素子20は、波長可変レーザ25により選択的に射出されたレーザ光の波長毎に、標本Aからの散乱光の強度を検出するようになっている。これにより、受光素子20は、標本Aからの散乱光の波長スペクトルを測定するようになっている。
【0038】
ここで、標本Aにおける全反射の現象では、導光部10からのレーザ光は標本A内に少しだけ潜り込んで反射されるので、標本Aに吸収があるとこの影響を受けて反射光のエネルギーが減少する。したがって、レーザ光の波長を種々変えることにより、あるいは反射光を分光することにより、標本Aからの散乱光のスペクトルが得られる。これは減衰全反射法(ATR:attenuated total reflection)と呼ばれるスペクトル測定法である。
【0039】
本実施形態に係る濃度測定装置2において、CPU30は、受光素子20により測定された標本Aからの散乱光の波長スペクトルと、前述の第1の実施形態に記載に方法により測定した標本Aの散乱係数とから、標本Aの濃度を多変量解析により演算するようになっている。
【0040】
上記演算における情報処理の流れは図6に示すようになる。本実施形態に係る濃度測定装置2によれば、アルコール類、糖類、脂肪酸、ポリマーなど広範囲な溶質の濃度測定が可能であるが、ここでは血糖値測定を例に説明する。減衰全反射法によるスペクトル測定値と屈折率測定値はPLS法などの回帰分析手法を含む演算処理を経て血糖値として最終的な値を得る。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る濃度測定装置2によれば、前述の実施形態に係る散乱係数測定装置1により標本Aの散乱係数を算出するとともに、受光素子20により標本Aからの散乱光の波長スペクトルを測定することができる。そして、このように算出された波長スペクトルおよび標本Aの散乱係数から、CPU30により標本Aの濃度を多変量解析により演算することができる。このように標本Aの濃度を演算することで、単純に標本Aの散乱係数から濃度を演算する場合に比べて、その測定精度を向上することができる。
【0042】
[第1の変形例]
なお、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第1の変形例として、図7に示すように、導光部材21を設けずに、標本A面上に受光ユニット26,27を直接配置することとしてもよい。この場合には、レーザ光を標本Aに射出する射出ユニット14の前後(レーザ光の射出方向)に受光ユニット26,27をそれぞれ配置する。
【0043】
受光ユニット26,27は、例えばInSbセンサであり、標本Aの表面上において2次元方向に複数の受光素子が配列されている。
なお、図7において、導光部10と射出ユニット14との接続部には射出端16が設けられ、射出端16の射出光軸上には射出端16からのレーザ光をレンズL2,L3に向けて反射するミラー15が設けられている。
【0044】
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置3によれば、導光部材21による標本Aからの散乱光の光量の低下を防止することができ、標本Aからの散乱光の検出精度を向上することができる。
【0045】
[第2の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第2の変形例として、図8に示すように、受光ユニット26,27が、複数の受光素子をレーザ光の射出方向に1列のみ配列されていることとしてもよい。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0046】
[第3の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第3の変形例として、図9に示すように、受光ユニット26,27が、それぞれ1つの受光素子をレーザ光の射出方向に配列することとしてもよい。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、さらに装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0047】
なお、この場合において、例えば第1の変形例の濃度測定装置3による測定データを、図示しないメモリにバックデータとして有していることにより、このバックデータと受光素子により検出した標本Aからの散乱光の強度とから、散乱光の強度分布を推定することができる。このようにすることで、受光ユニット26,27として1つの受光素子を用いた場合でも、標本Aからの散乱係数の測定精度を向上することができる。
【0048】
[第4の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第4の変形例として、図10に示すように、波長可変レーザ25に代えて、それぞれ異なる波長で発光する単色LED25a〜25cを複数並べることとしてもよい。LED25a〜25cのうちのどれを発光させるかをCPU30により制御する。これにより、発光波長の選択が可能である。
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、高輝度な単色LEDを用いることができ、標本Aからの散乱光の検出精度を向上することができる。また、照明光学系を単純化して装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0049】
[第5の変形例]
また、第2の実施形態に係る濃度測定装置2の第5の変形例として、図11に示すように、ブロードな波長帯域を有する光源を用いるとともに、受光ユニット26,27として、例えばPbSeラインセンサ等の高い波長分解能を有するセンサを採用することとしてもよい。この場合において、受光ユニット26,27は、複数の受光素子がレーザ光の射出方向に1列配列されており、受光素子によって検出する波長が異なる。
【0050】
上記構成を有する本変形例の濃度測定装置によれば、照明光学系の波長制御のために必要な要素を少なくすることができ、照明光学系を単純化して装置の小型化を図るとともに、その製造コストを低減することができる。
【0051】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および各変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
L1,L2,L3 レンズ
A 標本
1 散乱係数測定装置
2,3 濃度測定装置
10 導光部
11 入射端面
12 出射端面
20 受光素子
21 導光部材
25 波長可変レーザ(波長調節部)
26,27 受光ユニット
30 CPU(算出部、演算部)
31 モニタ
38 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本面に対して光を斜めに射出する導光部と、
前記標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、前記標本面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子と、
前記受光素子により検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出部とを備える散乱係数測定装置。
【請求項2】
前記算出部が、以下の式に基づいて前記標本の散乱係数を算出する請求項1に記載の散乱係数測定装置。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)
ここで、
αi:前記標本への入射角
αt:前記標本の屈折角
ni:前記標本の屈折率
nt:前記導光部と前記標本との間の入射側媒質の屈折率
xs:前記標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離
μs:前記標本の散乱係数
μa:前記標本の吸収係数
g:前記標本の異方性
【請求項3】
前記導光部に入射させる光の波長を調節する波長調節部を備える請求項1または請求項2に記載の散乱係数測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の散乱係数測定装置と、
前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、
前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える濃度測定装置。
【請求項5】
標本面に対して光を斜めに射出する導光ステップと、
前記標本面における光の入射点を中心とした射出方向の複数点において、前記標本からの散乱光の強度をそれぞれ検出する散乱光検出ステップと、
前記散乱光検出ステップにより検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出ステップとを含む散乱係数測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の散乱係数測定方法と、
前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む濃度測定方法。
【請求項1】
標本面に対して光を斜めに射出する導光部と、
前記標本面において光の入射点を中心として射出方向に複数配列され、前記標本面からの散乱光の強度をそれぞれ検出する受光素子と、
前記受光素子により検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出部とを備える散乱係数測定装置。
【請求項2】
前記算出部が、以下の式に基づいて前記標本の散乱係数を算出する請求項1に記載の散乱係数測定装置。
μs={(nisinαi/ntxs)−μa}/(1−g)
ここで、
αi:前記標本への入射角
αt:前記標本の屈折角
ni:前記標本の屈折率
nt:前記導光部と前記標本との間の入射側媒質の屈折率
xs:前記標本表面に投影された見かけの輝点の移動距離
μs:前記標本の散乱係数
μa:前記標本の吸収係数
g:前記標本の異方性
【請求項3】
前記導光部に入射させる光の波長を調節する波長調節部を備える請求項1または請求項2に記載の散乱係数測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の散乱係数測定装置と、
前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定部と、
前記スペクトル測定部により測定された波長スペクトルおよび前記算出部により算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算部とを備える濃度測定装置。
【請求項5】
標本面に対して光を斜めに射出する導光ステップと、
前記標本面における光の入射点を中心とした射出方向の複数点において、前記標本からの散乱光の強度をそれぞれ検出する散乱光検出ステップと、
前記散乱光検出ステップにより検出された前記標本からの散乱光の強度分布から、前記標本の散乱係数を算出する算出ステップとを含む散乱係数測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の散乱係数測定方法と、
前記標本からの散乱光の波長スペクトルを測定するスペクトル測定ステップと、
前記スペクトル測定ステップにより測定された波長スペクトルおよび前記算出ステップにより算出された前記標本の散乱係数から、前記標本の濃度を多変量解析により演算する演算ステップとを含む濃度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88137(P2013−88137A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225997(P2011−225997)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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