説明

散薬カセット及び分包機

【課題】様々な種類の散薬から適当な散薬を選択し、1包に対応する散薬量を精度良くかつ効率良く排出、計量、分包することが可能な散薬カセット及び分包機を提供する。
【解決手段】散薬カセット2は、散薬Aを収容するケース9と、ケース9の内側9aから外側9bへ貫通する筒状の排出部10と、ケース9の内側9aに収容された散薬Aを、排出部10からケース9の外側9bへ排出させる搬送機構11とを備える。排出部10は、大小異なる内径を有する2つの第1の排出部16と第2排出部17とで構成される。また、搬送機構11は、排出部10の第1の排出部16と第2の排出部17とに対応する2つの第1の搬送機構18と第2の搬送機構19とで構成される。搬送機構11の第1の搬送機構18と第2の搬送機構19とのそれぞれは、搬送部であるスクリューシャフト20、21と、伝達部22、23とを備え、駆動部4によって、駆動力が伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種散薬を収容する散薬カセット及び散薬カセットが組み込まれる分包機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類の散薬の中から、適当な散薬を選択し、1処方分の散薬量を計量して採取し、さらに、1処方の散薬を1服用分として分包する一連の分包作業に関して様々な装置が提案されている。例えば、複数の散薬収容器に収容された各種散薬の中から、適当な散薬を選択し、所望の1処方分の散薬量を計量して、排出する散薬供給装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、散薬を収容するカセットの排出部にスクリューを設けて、必要な散薬量を排出する散薬供給装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−170202号公報
【特許文献2】特開平5−170203号公報
【特許文献3】特開平7−100188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの散薬供給装置は、散薬収容器に収容された散薬から1処方分となる散薬量を排出し、この排出された1処方分の散薬を、改めて既存の分包機に投入し、1服用毎に分割して包装する必要がある。このため、散薬を所定の量に分包して、患者に処方するまでには、少なくとも2工程の計量、包装作業が必要であり、操作者の負担であり、かつ2工程分の装置を配置するスペースが必要になってしまう問題があった。また、排出部にスクリューを設けた散薬供給装置では、簡便な機構で、カセットの内部の散薬を排出させることが可能であるが、1包に対応する散薬量を精度良く排出させるためには、排出部及び対応するスクリューの径を小さくする必要があり、その場合排出効率が著しく低下してしまう問題があった。
【0004】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、様々な種類の散薬の中から適当な散薬を選択し、1包に対応する散薬量を精度良くかつ効率良く排出、計量、分包することが可能な散薬カセット及び分包機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、散薬を所定量ずつ分けて包み込む分包機本体に組み込まれる散薬カセットであって、散薬を収容するケースと、少なくとも2種類以上の大小異なる内径で、前記ケースの内側から外側へ貫通する筒状の複数の排出部と、前記ケースの内側に収容された前記散薬を、複数の前記排出部のそれぞれと対応して、前記排出部から前記ケースの外側へ排出させる複数の搬送機構とを備えることを特徴としている。
【0006】
この発明に係る散薬カセットによれば、ケースに収容された散薬は、大小異なる内径を有する複数の排出部からそれぞれ対応する複数の搬送機構によって所定の量だけ排出される。大きい内径を有する排出部では、それよりも小さい内径を有する排出部に比べて、搬送機構による1回の搬送作業で排出される散薬量は大きく、排出効率が良いといえるが、その分排出する散薬量の精度は低下する。散薬カセットに大小異なる複数の排出部と対応する複数の搬送機構を設ければ、排出効率の向上と排出精度の向上の両方を図ることができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の散薬カセットにおいて、複数の前記搬送機構は、それぞれ散薬を搬送させる搬送部と、該搬送部に駆動力を伝達させる伝達部とを備え、前記駆動力は、前記分包機本体に設けられた複数の駆動部からそれぞれ対応する複数の前記搬送機構の前記伝達部に伝達されることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る散薬カセットによれば、搬送機構を駆動させる駆動部を分包機本体に設けて、必要に応じて搬送機構の伝達部と接続することにより、搬送機構を駆動させることができる。このため、各散薬カセットに駆動部を設ける必要が無いので、散薬カセットに係る構成要素を簡略化することができ、簡便な構造で、効率良くかつ精度良く収容された散薬を排出する散薬カセットを提供することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の散薬カセットにおいて、複数の前記排出部は、大きな内径を有する前記排出部が上方となるように配列されることを特徴としている。
【0010】
この発明に係る散薬カセットによれば、複数の排出部が設けられる水平方向の範囲を狭めることができるので、必要以上に散薬カセットの幅が大きくなり、散薬カセットの大型化を防ぐことができる。また、分包機本体に設けられる排出された散薬を収容する計量皿の大型化も防ぐことができる。また、排出部と排出された散薬を収容する計量皿との鉛直距離が長くなると、排出された散薬が排出部から排出された時から計量皿に到着するまでに時間差が生じる。このため、搬送機構によって排出された散薬量と、計量皿で計量される散薬量との間には、この時間差の間に排出された散薬量分だけ誤差を生じる恐れがある。複数の排出部の内、大きな内径を有する排出部が上方となるように配列することで、上方に配置された排出部では、この誤差を生じる恐れがあるが、下方に精度を要求される小さい内径を有する排出部を配置して、小さい内径を有する排出部で最終の散薬量の調整を行えば、この誤差を解消することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の散薬カセットにおいて、複数の前記搬送機構の前記搬送部のそれぞれは、円柱状で、一端が回動自在に、対応する前記排出部に貫入され、外周部に一定の間隔でらせん状の溝が形成されるスクリューシャフトからなり、それぞれの前記スクリューシャフトの外径は、対応する複数の前記排出部のそれぞれの内径に従って、大小異なる大きさであることを特徴としている。
【0012】
この発明に係る散薬カセットによれば、搬送機構の搬送部としてスクリューシャフトを使用することで、簡便な機構で、散薬を搬送することができる。また、スクリューシャフトによる散薬の搬送は、スクリューシャフトの外径、回転力及び回転数に依存し、回転力及び回転数によって正確に搬送量を制御することができる。このため、単位時間当たりに排出部から排出される散薬量を一定に保つことができ、大小異なる外径を有するスクリューシャフトによる搬送を行えば、排出効率を確保して、1包単位のような微量な計量にも対応することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の散薬カセットにおいて、複数の前記搬送機構の前記搬送部である前記スクリューシャフトのそれぞれの外径は、該スクリューシャフトを対応する前記排出部にそれぞれ貫入した際に、該排出部の内面と前記スクリューシャフトの外面との間に所定の寸法の隙間が形成されるように設定されることを特徴としている。
【0014】
この発明に係る散薬カセットによれば、排出部とスクリューシャフトとの間に隙間が形成されているため、スクリューシャフトが回動することによって、搬送される散薬が、排出部の内面とスクリューシャフトの外面との間で擂り潰れて、細粒化する恐れが無い。このため、散薬の品質を保持することができるだけでなく、細粒化に伴って散薬の流動特性や密度が変わることがないので、排出される散薬量を一定に保つことができる。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項2から請求項6のいずれかに記載の散薬カセットを用いた分包機であって、前記散薬カセットを設置する設置部と、前記散薬カセットを前記設置部に設置した際に、前記散薬カセットの複数の前記搬送機構の前記伝達部のそれぞれに前記駆動力を与えることが可能な複数の前記駆動部を備えることを特徴としている。
【0016】
この発明に係る分包機によれば、様々な散薬が収容された多数の散薬カセットの中から、分包する必要のある種類の散薬が収容された散薬カセットを選択して、設置部に設置すれば、散薬カセットの搬送機構の伝達部に駆動部が接続し、散薬を排出することが可能となる。このため、この分包機では、所望の散薬を選択し、その散薬が収容された散薬カセットを設置部に設置し、駆動部を稼動させれば、排出効率と、1包単位で要求される精度を確保して、常に一定の散薬量を排出し、分包することができる。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の分包機において、複数の前記散薬カセットが設置可能であり、前記散薬カセットと対応する前記設置部及び前記駆動部も複数組み設けられることを特徴としている。
この発明にかかわる分包機によれば、複数の散薬カセットを設置して、排出することが可能であることで、分包する散薬が異なる毎に散薬カセットを交換する必要がない。このため、異なる散薬を1服用毎に順番に、連続して分包する場合、あるいは決まった数種類の散薬を数包毎連続して、包装する場合などに適している。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、散薬カセットに少なくとも2種類以上の大小異なる内径を有する複数の排出部を設けることによって、排出効率の向上と排出精度の向上の両方を図ることができる。このため、スクリューシャフトなどの簡便な構造で、微量な排出量を制御可能な搬送機構を用いれば、散薬が収容された散薬カセットから、1処方分の計量を行う必要がなく、直接1包分の散薬を、排出効率を確保して、排出、計量し、分包することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1から図3はこの発明に係る実施形態を示している。図1に分包機1の平面図を示す。また、図2に散薬カセット2の断面図、図3に散薬カセット2の斜視図を示す。
【0020】
図1に示すように、この実施形態の分包機1は、分包機本体1aと、分包機本体1aに組み込まれ、各々に任意の種類の散薬Aが収容された3つの散薬カセット2とを備えている。分包機本体1aは、散薬カセット2を設置する設置部3と、散薬カセット2に駆動力を伝達する駆動部4と、散薬カセット2に振動を与える起振手段5とを備えている。さらに、分包機1は、散薬カセット2から排出された散薬Aを1包単位毎に計量して、排出する計量手段6と、計量手段6によって排出された1包単位の散薬Aを1箇所に集合させる集合ホッパ7と、集合ホッパ7の下部に位置し、集合ホッパ7で集合された1包単位の散薬Aを包装する包装手段8とを備えている。
【0021】
図2、図3に示すように、散薬カセット2は、散薬Aを収容し、外郭を形成するケース9と、ケース9の下部に位置し、ケース9の内側9aから外側9bへ貫通し、外側9bへ突出する筒状の排出部10と、ケース9の内側9aに収容された散薬Aを排出部10からケース9の外側9bに排出させる搬送機構11とを備えている。
【0022】
ケース9は、上部9cが開放されていて、上部9cから投入された散薬Aが最初に収容される収容部12と、収容部12の下方に位置し、搬送機構11による搬送が行われる供給部13と、収容部12の下端12aから突設する脚部14とを備えている。供給部13は、収容部12に対して前後に幅が狭められていて、供給部13の前方13aには排出部10が突設する空間が、後方13bには、後述する駆動部4から搬送機構11に回転力が伝達される空間がそれぞれ設けられる。また、供給部13は、散薬カセット2が設置された際に、脚部14によって設置面と接触しないように設けられている。さらに、ケース9の内側9aにおいて、収容部12と供給部13との間には、テーパ部15が設けられている。このテーパ部15によって、収容部12から幅が狭められた供給部13に、ケース9の内側9aに収容された散薬Aは円滑に移動する。また、図3に示すように、ケース9の収容部12の平面形状は、前方に凸な形状を有していて、収容部12の先端部12bの角度θは、120度以内に設定されている。このため、図1に示すように、放射状に3つの散薬カセット2を配置させても、互いに干渉することが無い。
【0023】
図2に示すように、排出部10は、第1の排出部16と第2の排出部17とで構成されている。第1の排出部16及び第2の排出部17は、ともに筒状であり、ケース9の下方に位置する供給部13において、ケース9の内側9aから外側9bに貫通し、外側9bに突出している。また、第2の排出部17は、ケース9の外側9bに突出している部分の先端部17aと、ケース9の内側9aから外側9bに貫通している部分の基端部17bとが分離されている。第2の排出部17の先端部17aと基端部17bとは、同軸上となるように、可撓性の筒状の連結部材17cによって、外嵌されて連結されている。また、第1の排出部16の内径は、第2の排出部17の内径に対して大に設定されていて、かつ第1の排出部16が第2の排出部17に対して上方に位置するように、鉛直方向に配列されている。さらに、散薬カセット2が、後述の設置部3の係合部3aに係合されるように設置された際に、後述の起振手段5の伝達部材35の送振部35cと、第2の排出部17の先端部17aの下面17eとが当接するように設定されている。
【0024】
また、図2に示すように、搬送機構11は、2つの排出部10である第1の排出部16及び第2の排出部17のそれぞれと対応する第1の搬送機構18と、第2の搬送機構19とで構成されている。第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19は、それぞれ搬送部である円柱状の大小異なる外径を有するスクリューシャフト20、21と、スクリューシャフト20、21に駆動力である回転力を伝達させる伝達部22、23とを備える。スクリューシャフト20、21は、一端部20a、21aにおいて、それぞれ対応する第1の排出部16あるいは第2の排出部17に貫入され、他端部20b、21bにおいて、同軸上に伝達部22、23が接合されている。ここで、第1の搬送機構18のスクリューシャフト20の外径は、第1の排出部の内径と第2の排出部の内径の大小関係と対応していて、第2の搬送機構19のスクリューシャフト21に対して大に設定されている。また、伝達部22、23は、それぞれスクリューシャフト20、21と接合する軸22a、23aと、軸22a、23aの同軸上に接合されるギア22b、23bとを備える。
【0025】
第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19を構成する搬送部であるスクリューシャフト20、21と、伝達部22、23である軸22a、23a及びギア22b、23bとは、それぞれ一体となっている。そして、それぞれ軸22a、23aで、排出部10が形成されるケース9の供給部13の前壁13cと対向する後壁13dを貫通し、ギア22b、23bは供給部13の後方13bに露出している。また、軸22a、23aは、それぞれ、ケース9の供給部13の後壁13dと、ケース9の収容部12の下端12aから突設する支持板12cとで、回動自在に軸着されている。さらに、スクリューシャフト20、21の外周部20c、21cには、一定の間隔で、らせん状の溝20d、21dが形成されている。
【0026】
また、スクリューシャフト20、21の外径は、対応する第1の排出部16あるいは第2の排出部17に貫入した際に、第1の排出部16あるいは第2の排出部17の内面16d、17dと、スクリューシャフト20、21の外面20e、21eとの間に、所定の寸法を有する隙間24、25が形成されるように設定されている。ここで、隙間24、25における所定の寸法とは、スクリューシャフト20、21が回動し、スクリューシャフト20、21に形成された溝20d、21dによって、散薬Aが搬送される際に、搬送効率が低下しない程度の大きさを上限とした隙間である。さらに、スクリューシャフト20、21が回動した際に、隙間24、25に位置する散薬Aが、スクリューシャフト20、21によって、擂り潰されることがない程度の大きさを下限とした隙間である。
【0027】
図1に示すように、設置部3には、散薬カセット2を定められた位置に位置決めし、係合する係合部3aが設けられている。この実施形態の分包機1では、3つの散薬カセット2が設置可能なように係合部3aが3組設けられている。また、駆動部4は、設置された3つの散薬カセット2のそれぞれに対応するように3組設けられ、それぞれの駆動部4は、散薬カセット2の第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19と対応するように、第1の駆動部26と第2の駆動部27とを備えている。第1の駆動部26及び第2の駆動部27は、それぞれ、駆動力として回転力を発生させるモータ28、29と、モータ28、29の回転力を伝達させる軸30、31と、軸30、31と同軸上に接合されるギア32、33とで構成される。軸30、31は、一端部30a、31aにおいて、モータ28、29と接合し、他端部30b、31bにおいて、ギア32、33と接合されている。また、ギア32、33は、散薬カセット2が設置部3の係合部3aに係合されて設置された際に、散薬カセット2の対応する第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19の伝達部22、23のギア22b、23bと噛み合うように配置されている。
【0028】
また、図2に示すように、起振手段5は、振動を発生させる振動モータ34と、板状の伝達部材35と、伝達部材35を一端部35aで設置部3に支持する支持部36とで構成されている。伝達部材35は、振動モータ34及び支持部36が設けられる受振部35bと、振動モータ34から受振部35bに伝達された振動を散薬カセット2に伝達させる送振部35cと、送振部35cと受振部35bとを連結する斜材部35dとで構成される。図2に示すように、起振手段5は、散薬カセット2が設置部3の係合部3aに係合されて設置された際に、散薬カセット2の第2の排出部17の先端部17aの下面17eと、起振手段5の伝達部材35の送振部35cとが当接するように配置されている。また、図1に示すように、起振手段5は、設置された3つの散薬カセット2のそれぞれに対応するように3組設けられる。
【0029】
図1、図2に示すように、計量手段6は、散薬カセット2の排出部10から排出された散薬Aを収容する計量皿37と、棒状で、一端38aで計量皿37を保持し、他端38bで設置部3に固定され、計量皿37に収容された散薬Aの重量を計量可能なロードセル38とを備える。計量皿37の底板37aは、壁部37bの一側縁部37cで、軸着され、所定の重量が計量された時に、下方に回動し、下方に散薬Aを投下することができる。また、計量皿37は、散薬カセット2が設置部3の係合部3aに係合されて設置された際に、第2の排出部17の先端部17aの直下に位置するように配置される。さらに、図1に示すように、計量手段6は、設置された3つの散薬カセット2のそれぞれに対応するように3組設けられる。
【0030】
図1、図2に示すように、集合ホッパ7は、上部開口7aよりも下部開口7bが小に設定されている漏斗状のものである。上部開口7aは、3組の計量手段6の計量皿37から投下される散薬Aを回収可能な大きさを有する。また、下部開口7bは、後述する散薬Aを包装する包装ロール紙40の1包単位の大きさに対応する大きさを有する。
【0031】
また、包装手段8は、回動機構39と、回動機構39に軸着された包装ロール紙40と、包装ロール紙40を散薬Aの投下位置41に誘導する誘導部42と、投下位置41の前後において、包装ロール紙40に1包単位の散薬Aが投下された後に、1包となるように包装ロール紙40を溶着させる溶着機構(不図示)とを備える。
【0032】
さらに、分包機1の分包機本体1aには、所望の1包単位の散薬量を設定する設定手段(不図示)や、駆動部4、起振手段5、計量手段6あるいは包装手段8の動作を制御する制御部(不図示)や、駆動部4、起振手段5、計量手段6、包装手段8及び制御部(不図示)等に電力を供給する電源部(不図示)などが備えられている。
【0033】
次に、この実施形態の分包機1の作用について説明する。図1に示すように、まず、各種の散薬から所定の散薬Aが収容された散薬カセット2を選択して、設置部3の係合部3aに係合して設置する。この実施形態の分包機1では、散薬カセット2は、3つまで設置可能である。図2に示すように、散薬カセット2を設置部3の係合部3aに係合して設置すると、散薬カセット2の第2の排出部17の先端部17aの下面17eと、起振手段5の伝達部材35の送振部35cとが当接した状態となる。さらに、散薬カセット2の第1の搬送機構18の伝達部22のギア22bと、第1の駆動部26のギア32とが噛み合った状態となる。同様に、散薬カセット2の第2の搬送機構19の伝達部23のギア23bと、第2の駆動部27のギア33とが噛み合った状態となる。また、散薬カセット2の第2の排出部17の先端部17aの直下に、計量手段6の計量皿37が配置される。
【0034】
この状態で、電源部(不図示)のスイッチ(不図示)をONにして、分包機1を稼動させる。第1の駆動部26と第2の駆動部27とは、設定手段(不図示)によって設定された散薬量に従って、散薬カセット2から所定の散薬量が排出されるように、所定の回転数分回動する。モータ28、29が稼動し、軸30、31からギア32、33に回転が伝達される。さらに、ここで散薬カセット2の第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19の伝達部22、23のギア22b、23bに伝達され、軸22a、23aを経由して、スクリューシャフト20、21が回動する。スクリューシャフト20、21には、溝20d、21dが、それぞれ一定の間隔と一定の深さで形成されているので、溝20d、21dの内部及びその周辺の散薬Aは、回転数に比例して、第1の排出部16及び第2の排出部17からそれぞれ排出される。順次搬送、排出されると、スクリューシャフト20、21が位置するケース9の供給部13、第1の排出部16及び第2の排出部17の散薬Aは無くなってしまうが、上方に位置するケース9の収容部12から、散薬Aの自重と、テーパ部15の誘導によって、順次供給される。
【0035】
ここで、第1の搬送機構18のスクリューシャフト20の外径に対して、第2の搬送機構19のスクリューシャフト21の外径は小に設定されているので、第1の搬送機構18と比較して、第2の搬送機構19の散薬Aの搬送量は少ないが、微量な搬送量の調整には適している。このため、稼動開始時は、第1の搬送機構18によって、散薬Aを搬送、排出し、計量手段6によって、計量された散薬量が所定の1包分に至らないある程度の量に達した後、第2の搬送機構19による搬送に切り替える。このようにすることによって、1包分の排出作業について、排出効率と、排出精度の双方を確保することができる。また、第1の排出部16と、第2の排出部17とが鉛直方向に配列されていることにより、双方から散薬Aが排出される範囲を小さくすることができ、散薬カセット2の幅、計量手段6の計量皿37の大きさを必要以上に大きくする必要がない。また、計量手段6の計量皿37と、排出部10との鉛直距離が長いと、排出部10から排出された後、計量手段6で計量されるまでの時間差が大きくなり、その時間差の間に排出された分によって、散薬量に誤差が生じる。しかし、最終的に微量な散薬量を調整する第2の排出部17を第1の排出部16より下方に設けることで、この問題を解消することができる。ところで、散薬Aはスクリューシャフト20、21の回動に伴う圧力や分包機1の周辺の湿気、静電気などによって塊状になってしまうことがある。散薬Aが塊状になってしまうと、スクリューシャフト20、21による搬送、排出が正確に行われても、排出の際に、塊状となって排出されてしまい、その精度は、塊状になってしまった散薬Aの重量の範囲にとどまってしまう。しかし、起振手段5によって、第2の排出部17の先端部17aは振動を与えられているので、第2の排出部17の先端部17aから排出される直前に、散薬Aは振動を受けて再び分解されて、粉状に戻る。このため、散薬Aが塊状になることによる排出精度の低下を防止し、スクリューシャフトの回転数に従って、排出量をむらなく一定に保つことができる。さらに、塊状になることで、目詰まりや搬送抵抗が増大することによる駆動部4の焼き付きなどを防止することもできる。さらに、第2の排出部17においては、振動が与えられる先端部17aが、基端部17bと可撓性のある連結部材17cで連結されていることで、先端部17aのみが効果的に振動を散薬Aに伝達させることができる。
【0036】
また、第1の排出部16及び第2の排出部17と、第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19のスクリューシャフト20、21との間には、隙間24、25が形成されている。このため、第1の排出部16及び第2の排出部17の内部を搬送される散薬Aが、第1の排出部16及び第2の排出部17の内面16d、17dと、対応する第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19のスクリューシャフト20、21の外面20e、21eとで擂り潰されて、細粒化する恐れが無い。搬送される散薬Aの細粒化を防止することで、第1の排出部16及び第2の排出部17の内面16d、17dと対応する第1の搬送機構18及び第2の搬送機構19のスクリューシャフト20、21の外面20e、21eとの間で目詰まりを防止する、さらに搬送抵抗が増大し、駆動部4の焼き付くことを防止することができる。また、散薬A自体の流動特性や密度の変化を防止し、正確な搬送、排出を維持し、散薬Aの品質も保持することができる。
【0037】
以上のようにして、散薬カセット2から排出される散薬Aは、計量手段6の計量皿37に排出され、計量される。設定手段(不図示)で設定される1包分の散薬量となるよう、駆動部4から搬送機構11に回転を与えて、散薬Aは散薬カセット2から排出されて、計量手段6で計量し、誤差が無いことを確認した時点で、駆動部4は制御部(不図示)から停止の信号を受けて、散薬カセット2からの排出を停止する。次に、制御部(不図示)は、計量手段6の計量皿37の底板37aを回動させて、計量皿37に収容された1包分の散薬Aを集合ホッパ7に投下する。集合ホッパ7に投下された散薬Aは、さらに集合ホッパ7の下方の投下位置41に位置する包装ロール紙40の上に投下される。すべての散薬Aが投下されたのが確認された後、すなわち計量手段6の計量値が0となった後、計量手段6の計量皿37の底板37aは再び閉合し、包装ロール紙40は回動機構39及び誘導部42によって1包分移動し、投下された散薬Aは、溶着機構(不図示)によって、1包分に封印される。この工程を1工程とし、順次散薬カセット2から1包分ずつ排出し、包装していく。
【0038】
前述のように、この実施形態の分包機1では、散薬カセット2を3つ設置することができる。このため、この実施形態の分包機1では、次のような分包作業が可能となる。例えば、1回に服用する散薬AがA1、A2、A3の3種類とし、これを数回分服用可能なように処方するものとする。この場合、3つの散薬カセット2に、1つずつ散薬A1、A2、A3が収容されたものを選択する。そして、1服用に対して、散薬A1、A2、A3を1包ずつ所定量服用することを設定手段(不図示)に入力して、制御部(不図示)によって制御すれば、A1、A2、A3を順番に1包分ずつ排出、包装することで、(A1、A2、A3)、(A1、A2、A3)、(A1・・・と1服用毎に分包することが可能である。また、散薬A1、A2、A3をそれぞれ10包分複数人に処方する場合などでは、散薬A1を連続10包分包して、散薬A2を連続10包分包して、散薬A3を連続10包分包して、再び散薬A1から開始する方法なども可能である。勿論、これらの分包方法に限ることなく、様々な方法に対応することができる。
【0039】
以上、この発明に係る実施形態の分包機1の作用について説明したが、大小異なる2つの排出部10及び対応する2つの搬送機構11を設け、搬送機構11の搬送部として、スクリューシャフト20、21を使用することにより、簡略な機構によって、排出効率を確保して、精密な散薬Aの搬送、排出を実現することができる。このため、散薬Aがまとまって収容された散薬カセット2から直接1包分の散薬量を、排出効率を確保して、計量し、分包することができ、作業効率の向上、装置の縮小及び装置コストの低減を図ることができる。また、起振手段5によって排出される散薬Aの再粉状化を図ることで、散薬Aが塊状となって排出されることによる排出精度の低下を防止することができる。さらに、散薬カセット2の搬送機構11を駆動させる駆動部4、散薬カセット2に振動を与える起振手段5を分包機本体1aに設けることによって、散薬カセット2の低コスト化、軽量化を図ることができる。このような散薬カセット2及び分包機1を採用することによって、膨大な種類の散薬を保管し、顧客の症状によって、保管された散薬の中から必要な散薬を選択し、分包する必要がある薬局などでは、分包作業の軽減、省スペース化、低コスト化を同時に図ることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0041】
なお、分包機1の設置部3には、3つの散薬カセット2が設置可能としたが、これに限ることは無い。装置の小型化を図るのであれば、1つの散薬カセット2のみ設置可能としても良いし、3つ以上設置可能としてもよい。また、排出部10は大小異なる内径を有する2つの第1の排出部16及び第2の排出部17とで構成されるとしたが、これに限るものではない。少なくとも2種類以上の大小異なる内径を有する複数の排出部が設けられていれば良く、例えば3種類の内径の3つの排出部で構成しても良いし、大小異なる2種類の内径を有する排出部がそれぞれ2つ、計4つの排出部で構成しても良い。さらに、排出部が複数設けられれば、それぞれの排出部に対応する搬送機構及び搬送機構の伝達部に接続される分包機本体の駆動部もまた、複数設けられる。さらに、大小異なる内径を有する排出部が鉛直方向に配列されるとしたが、これに限るものではない。少なくとも大きな内径を有する排出部よりも小さい排出部が相対的に下方となるように設けることにより、排出効率と排出精度を向上させることができる。また、搬送機構11の搬送部をスクリューシャフトとしたが、これに限るものではない。また、起振手段5による振動は、第二の排出部17の先端部17aにのみ与えられるものとしたが、これに限るものではない。例えば、第1の排出部16にも振動を与えても同様の効果を得ることできる。また、第2の排出部17の先端部17aのみだけでなく、基端部17bにも振動を与えても良いし、搬送機構11に振動を与えても同様の効果を期待することができる。さらに、第二の排出部17のみ先端部17aと、基端部17bとが分離され、可撓性の連結部材17cで連結されるとしたが、これに限らず、第一の排出部16も同様の構成として、先端部に振動を与えても良い。また、散薬カセット2の搬送機構11と、分包機本体1aに設けられた駆動部4とは、ギア機構によって伝達されるものとしたがこれに限るものではない。例えば、ころなどを利用した摩擦駆動でもよいし、ベルト伝動によるものでもよい。また、この実施形態の分包機1は、散薬のみに使用するものとしたが、これに限らず、錠剤の分包と併用する装置としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施形態の分包機の平面図である。
【図2】この発明の実施形態の散薬カセットの断面図である。
【図3】この発明の実施形態の散薬カセットの斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 分包機
1a 分包機本体
2 散薬カセット
3 設置部
4 駆動部
9 ケース
9a 内側
9b 外側
10 排出部
11 搬送機構
16 第1の排出部
17 第2の排出部
18 第1の搬送機構
19 第2の搬送機構
20、21 スクリューシャフト(搬送部)
22、23 伝達部
24、25 隙間
26 第1の駆動部
27 第2の駆動部
A 散薬


【特許請求の範囲】
【請求項1】
散薬を所定量ずつ分けて包み込む分包機本体に組み込まれる散薬カセットであって、
散薬を収容するケースと、少なくとも2種類以上の大小異なる内径で、前記ケースの内側から外側へ貫通する筒状の複数の排出部と、前記ケースの内側に収容された前記散薬を、複数の前記排出部のそれぞれと対応して、前記排出部から前記ケースの外側へ排出させる複数の搬送機構とを備えることを特徴とする散薬カセット。
【請求項2】
請求項1に記載の散薬カセットにおいて、
複数の前記搬送機構は、それぞれ散薬を搬送させる搬送部と、該搬送部に駆動力を伝達させる伝達部とを備え、前記駆動力は、前記分包機本体に設けられた複数の駆動部からそれぞれ対応する複数の前記搬送機構の前記伝達部に伝達されることを特徴とする散薬カセット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の散薬カセットにおいて、
複数の前記排出部は、大きな内径を有する前記排出部が上方となるように配列されることを特徴とする散薬カセット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の散薬カセットにおいて、
複数の前記搬送機構の前記搬送部のそれぞれは、円柱状で、一端が回動自在に、対応する前記排出部に貫入され、外周部に一定の間隔でらせん状の溝が形成されるスクリューシャフトからなり、それぞれの前記スクリューシャフトの外径は、対応する複数の前記排出部のそれぞれの内径に従って、大小異なる大きさであることを特徴とする散薬カセット。
【請求項5】
請求項4に記載の散薬カセットにおいて、
複数の前記搬送機構の前記搬送部である前記スクリューシャフトのそれぞれの外径は、該スクリューシャフトを対応する前記排出部にそれぞれ貫入した際に、該排出部の内面と前記スクリューシャフトの外面との間に所定の寸法の隙間が形成されるように設定されることを特徴とする散薬カセット。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれかに記載の散薬カセットを用いた分包機であって、
前記散薬カセットを設置する設置部と、
前記散薬カセットを前記設置部に設置した際に、前記散薬カセットの複数の前記搬送機構の前記伝達部のそれぞれに前記駆動力を与えることが可能な複数の前記駆動部を備えることを特徴とする分包機。
【請求項7】
請求項6に記載の分包機において、
複数の前記散薬カセットが設置可能であり、前記散薬カセットと対応する前記設置部及び前記駆動部も複数組み設けられることを特徴とする分包機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−137446(P2007−137446A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331111(P2005−331111)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(390010582)株式会社エルクエスト (33)
【Fターム(参考)】