説明

整圧装置

【課題】パイロット式整圧装置の駆動力を一次圧と二次圧の差圧に拘わらず十分に確保すること。
【解決手段】整圧装置10は、上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bの間に装備されるメインガバナ11と、上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bとを連通するパイロット流路12とを備え、メインガバナ11は、パイロット流路12から出力される駆動圧によって開度調整を行う駆動部11Aを備え、パイロット流路12に、パイロット流路12の流量を二次圧に基づいて調整するパイロットガバナ13と、パイロット流路12の流量に応じて駆動圧を設定する抵抗部12Aを設け、下流側流体導管1Bにおけるパイロット流路12の連通部12Bに、下流側流体導管1B内の圧力を部分的に二次圧より低下させる負圧発生手段20を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体導管に装備され、上流側流体導管の高圧流体を整圧して下流側流体導管に供給する整圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイプラインによる都市ガス等の流体供給方式としては、上流側の高圧流体を段階的に減圧して下流側に供給する方式が採用されている。この際、減圧のための各段階には流体導管に整圧装置(ガバナ)が装備され、下流側の圧力を設定圧力に調整することが行われている。以下の説明では、整圧装置の上流側流体導管内の圧力を一次圧といい、整圧装置によって設定される下流側流体導管内の圧力を二次圧という。
【0003】
整圧装置は、上流側流体導管の圧力変動や負荷流量に関係なく、下流側導管内の二次圧が設定圧力になるように調整する。この整圧装置は、一般的に、比較的小さい流量の流体導管に装備される簡易な構造のものとして直動式があり、比較的大きな流量の流体導管に装備されるものとしてパイロット式がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
図1は、従来のパイロット式整圧装置の構成例を示した説明図である。流体導管1に装備される整圧装置J10は、上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bの間に装備され、メインガバナ11、パイロット流路12、パイロットガバナ13を備えている。パイロット流路12は上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bとを連通する流路である。パイロットガバナ13は、パイロット流路12に設けられ、二次圧検出流路14を介して検出される二次圧に応じて開閉してパイロット流路12を流れる流体の流量を調整するものである。メインガバナ11は、パイロット流路12から分岐した駆動圧流路15を介して駆動圧が駆動部11Aに供給され、駆動圧が低下すると上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bとを連通する流通部の開度が大きくなるように作動する弁機構を備える。
【0005】
このような整圧装置J10によると、パイロット流路12で増幅された駆動圧によってメインガバナ11の開度を制御することができる。すなわち、下流側での流体消費によって二次圧が低下すると、パイロットガバナ13のダイヤフラムにかかる圧力が低下してパイロットガバナ13の弁が開き、パイロット流路12の流量が増加する。パイロット流路12には抵抗部(絞り)12Aが設けられているので、パイロット流路12の流量が増すと抵抗部12Aによる圧力損失が大きくなり、駆動圧流路15によってメインガバナ11の駆動部に供給される駆動圧が低下する。これによってメインガバナ11の流通部の開度が大きくなり、この流通部を介して二次側に流れる流量が増加する。二次圧が設定圧まで上昇すると新たな定常状態に達し、二次圧が設定圧に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−288124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の整圧装置では、メインガバナの開度を制御する駆動圧はパイロット流路から出力される。そして、パイロット流路に設ける抵抗部による圧力損失でどれだけ駆動圧を低下させることができるかで、メインガバナの開度を高めるための駆動力が確保されることになる。しかしながら、駆動圧は一次圧と二次圧の間の圧力になるので、一次圧が低下して一次圧と二次圧の差が小さくなった場合には、パイロット流路の流量を大きくできず、抵抗部の圧力損失によって十分に駆動圧を下げることができない。よって、メインガバナを全開にするだけの駆動力が得られない問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、メインガバナの開度を制御する駆動圧をパイロット流路から出力する整圧装置において、一次圧と二次圧の差が小さい場合であっても、メインガバナの開度を十分な駆動力で制御することができること、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明による整圧装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
流体導管に装備され、上流側流体導管における一次圧を下流側流体導管における二次圧に整圧する整圧装置であって、前記上流側流体導管と前記下流側流体導管の間に装備されるメインガバナと、前記上流側流体導管と前記下流側流体導管とを連通するパイロット流路とを備え、前記メインガバナは、前記パイロット流路から出力される駆動圧によって開度調整を行う駆動部を備え、前記パイロット流路に、当該パイロット流路の流量を前記二次圧に基づいて調整するパイロットガバナと、当該パイロット流路の流量に応じて前記駆動圧を設定する抵抗部を設け、前記下流側流体導管における前記パイロット流路の連通部に、前記下流側流体導管内の圧力を部分的に前記二次圧より低下させる負圧発生手段を設けることを特徴とする整圧装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えた本発明の整圧装置によると、パイロット流路の下流側連通部の圧力が二次圧より低くなることで、一次圧と二次圧の差が小さい場合であっても、パイロット流路の流量を高めることができ、メインガバナの開度を十分な駆動力で制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のパイロット式整圧装置の構成例を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る整圧装置の全体構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る整圧装置の動作を説明する説明図である(本発明と比較するため示した負圧発生手段を備えない従来技術の動作例)。
【図4】本発明の実施形態に係る整圧装置の動作を説明する説明図である(負圧発生手段を備えた本発明の実施形態の動作例)。
【図5】本発明の実施形態における負圧発生手段の形態例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する(なお、従来と同一の部分には同一の番号を付して重複した説明は省略する。)。図2は本発明の一実施形態に係る整圧装置の全体構成を示す説明図である。
【0013】
流体導管1に装備される整圧装置10は、上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bの間に装備され、メインガバナ11、パイロット流路12、パイロットガバナ13を備えている。パイロット流路12はメインガバナ11を介することなく上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bとを連通する流路である。パイロットガバナ13は、パイロット流路12に設けられ、二次圧検出流路14を介して検出される二次圧に応じて開閉してパイロット流路12を流れる流体の流量を調整するものである。パイロット流路12には抵抗部(絞りなど)12Aが設けられ、抵抗部12Aの下流側のパイロット流路12が分岐して駆動圧流路15になっている。
【0014】
メインガバナ11は、上流側流体導管1Aと下流側流体導管1Bを連通する流通部11Bと、流通部11Bの開度を調整する主弁11Cと、主弁11Cを駆動する駆動部11Aを備えている。駆動部11Aは、駆動膜(ダイアフラム膜)11A3によって駆動圧室11A1と一次圧室11A2が分離されており、駆動圧室11A1には駆動圧流路15が連通し、一次圧室11A2には一次圧が供給されている。これによると、駆動膜11A3に接続された主弁11Cには、一次圧と駆動圧との差圧によって発生する駆動力が加わることになる。
【0015】
そして、本発明の実施形態に係る整圧装置10は、下流側流体導管1Bにおけるパイロット流路12の連通部12Bに、下流側流体導管1B内の圧力を部分的に二次圧より低下させる負圧発生手段20を設けている。負圧発生手段20は圧力損失が少ないもので、下流側流体導管1Bの流れによって固定的且つ部分的に二次圧が減圧されるものが好ましいが、多少の圧力損失が生じたとしても、その下流側の圧力が二次圧としてパイロットガバナ13に繋がる二次圧検出流路14に供給される。
【0016】
図3及び図4によって、本発明の実施形態に係る整圧装置の動作を説明する。ここで、図3は負圧発生手段20を備えない従来技術の動作例であり、図4は負圧発生手段20を備えた実施形態の動作例である。この図3及び図4は、整圧装置のパイロット流路を流れる流体の圧力状態と主弁を駆動する駆動力との関係を示している。
【0017】
図3において、一端が上流側流体導管1Aに接続され、他端側が下流側流体導管1Bに接続されるパイロット流路12は、一端側の圧力が一次圧P1になり、他端側の圧力が二次圧P2になる。パイロット流路12の一端から他端に至る流路には抵抗部12Aとパイロットガバナ13が存在するので、パイロット流路12の一端側における一次圧P1は、抵抗部12Aでの圧力損失とパイロットガバナ13での圧力損失を経て他端側の二次圧P2になる。パイロット流路12における抵抗部12Aより下流側でパイロットガバナ13より上流側の箇所から駆動圧流路15が分岐しているので、メインガバナ11の駆動圧室11A1に供給される駆動圧Pcは、一次圧P1と二次圧P2の間の圧力であって、一次圧P1から抵抗部12Aによる圧力損失を差し引いた値になる。
【0018】
一方、メインガバナ11の主弁を作動させる駆動力Fは、駆動部11Aの駆動圧室11A1に供給される駆動圧Pcと一次圧の差圧である。この駆動力Fは、パイロット流路12を流れる流量を大きくして、抵抗部12Aによる圧力損失を増大させ、駆動圧Pcをより小さくすることで、大きな駆動力Fが得られる。すなわち、設定圧力である二次圧にP2(例えば、150kPaG)に対して一次圧P1が十分に高い圧力(例えば、700kPaG)である場合には、一次圧と二次圧の差圧を利用してパイロット流路12の流量を増大させることができ、十分に大きな駆動力Fを発生させることができる。
【0019】
しかしながら、設定圧力である二次圧P2(例えば、150kPaG)に対して、一次圧が低下した場合(例えば、低下した一次圧P1’=300kPaG)には、駆動力F’(F’=P1’−Pc’)は一次圧が高い場合に比べて小さくなって、メインガバナ11の主弁を全開にするだけの駆動力を得ることができない場合が生じる。
【0020】
これに対して、図4に示したように、下流側流体導管1Bに負圧発生手段20を設けた本発明の実施形態では、負圧発生手段20の圧力低減効果によって、パイロット流路12と下流側流体導管1Bとの連通部12Bの圧力P2Sを二次圧P2より低下させることができる。これによると、一次圧P1が十分に高い場合には、一次圧P1と連通部12Bの圧力P2Sとの間に駆動圧Pcを設定して十分な駆動力FSを得ることができる。更に、一次圧が低下して二次圧P2に近い圧力P1’になったとしても、一次圧P1’と連通部12Bの圧力P2Sとの差圧によってパイロット流路12の流量をある程度大きくできるので、主弁11Cを作動させる駆動力FS’を、負圧発生手段20を設けていない従来例の駆動力F’に比べて十分に大きい値にすることができる。これによって、一次圧P1と二次圧P2の差が小さい場合であっても、十分な駆動力によって主弁11Cを全開にして、整圧装置10の送出能力を十分に発揮することができる。
【0021】
図5は、本発明の実施形態における負圧発生手段20の形態例を示した説明図である。同図(a)に示した例は、下流側流体導管1B内に配備されるアスピレータ20Aによって負圧発生手段20を構成している。同図(b)に示した例は、下流側流体導管1B内に配備されるノズル20Bによって負圧発生手段20を構成している。同図(c)に示した例は、下流側流体導管1B内に配備されるベンチュリ20Cによって負圧発生手段20を構成している。アスピレータ20A、ノズル20B、ベンチュリ20Cは、何れも圧力損失が小さい負圧発生手段であるため、整圧装置10の二次圧送出能力に影響を与えることが少ない。また、何れの例も、パイロット流路12と下流側流体導管1Bとの連通部12Bが下流側流体導管1B内で流速を高められた部分になっている。これによるとベンチュリ効果によって、二次圧P2に対して低い圧力P2Sをパイロット流路12の下流側端部の圧力にすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1:流体導管,1A:上流側流体導管,1B:下流側流体導管,
10:整圧装置,
11:メインガバナ,11A:駆動部,11B:流通部,11C:主弁,
12:パイロット流路,12A:抵抗部,12B:連通部,
13:パイロットガバナ,14:二次圧検出流路,15:駆動圧流路,
20:負圧発生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体導管に装備され、上流側流体導管における一次圧を下流側流体導管における二次圧に整圧する整圧装置であって、
前記上流側流体導管と前記下流側流体導管の間に装備されるメインガバナと、前記上流側流体導管と前記下流側流体導管とを連通するパイロット流路とを備え、
前記メインガバナは、前記パイロット流路から出力される駆動圧によって開度調整を行う駆動部を備え、
前記パイロット流路に、当該パイロット流路の流量を前記二次圧に基づいて調整するパイロットガバナと、当該パイロット流路の流量に応じて前記駆動圧を設定する抵抗部を設け、
前記下流側流体導管における前記パイロット流路の連通部に、前記下流側流体導管内の圧力を部分的に前記二次圧より低下させる負圧発生手段を設けることを特徴とする整圧装置。
【請求項2】
前記負圧発生手段は、前記下流側流体導管内に配備されるノズルであることを特徴とする請求項1記載の整圧装置。
【請求項3】
前記負圧発生手段は、前記下流側流体導管内に配備されるアスピレータであることを特徴とする請求項1記載の整圧装置。
【請求項4】
前記負圧発生手段は、前記流側流体導管内に配備されるベンチュリであることを特徴とする請求項1記載の整圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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