説明

整地ロータ

【課題】半割り体よりなる整地ロータのロータ軸に対する取付けの位置決めが正確かつ容易に行え、併せて整地ロータを強固に組み立て、頑丈な整地ロータを得ること。
【解決手段】ロータ片40のロータ軸23への嵌合面42に突起43を設け、この突起をロータ軸の取付け凹部45に差し込み、2個一対のロータ片相互をロータ軸に位置決めする。突起と2個のロータ片相互を固定する螺子止め部46,47を両端の連結部材42に設け、螺子止め部に装着した締具により整地ロータ22を組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は整地ロータに関し、詳しくは、ロータ軸に取り付けられて該ロータ軸の回転とともに回転し、圃場の表層部を整地する田植機等の整地ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
整地ロータを半割り体(ロータ片)より構成することは公知であるが、従来の半割り整地ロータのロータ軸への取付けにつき、ロータ片相互の位置決めと、整地ロータのロータ軸への位置決めとを別途行った後、これら3者(2つのロータ片、ロータ軸)を連結していたので、取付け作業が煩雑化していた。特開2006−158230号公報は、ロータ軸に貫通するボルト・ナットの連結用締具をもってロータ片相互を組み立て、部品点数の削減、取付け作業の容易化を図るものであるが、ロータ軸への位置決めが該整地ロータのロータ軸への固定と同時になされるので、依然として位置決めの正確及び位置決め作業自体の容易化に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−158230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑み、半割り体よりなる整地ロータのロータ軸に対する取付けの位置決めが正確かつ容易に行え、併せて整地ロータを強固に組み立て、頑丈な整地ロータを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は整地ロータに係り、例えば図3、図4(a)(b)を参照してみると、ロータ軸(23)と、半割り状の同一形状からなる2個のロータ片(40)と、を備え、前記ロータ軸(23)に前記2個のロータ片(40)を合せて一体に固定してなる整地ロータ(22)において、
前記ロータ軸(23)と嵌合する前記2個のロータ片(40)の嵌合面(42a)に、それぞれ内径方向に突出する突起(43)を一体に形成し、これら突起(43)を、前記ロータ軸(23)の外周面に一体に形成した取付け凹部(45)に差込んで、前記2個のロータ片(40)を互いに合わさるようにして、前記ロータ軸(23)に位置決めしてなる、
ことを特徴とする。
【0006】
前記各ロータ片(40)は、例えば図4(b)を参照してみると、その外周側に前記ロータ軸(23)の軸線方向に平行に配置された多数の整地部材(41)と、前記ロータ軸(23)の軸線方向に所定間隔隔てて複数配置され、前記整地部材(41)を連結する連結部材(42)と、を有し、前記複数の連結部材(42)の内の前記軸線方向両端の連結部材(42)に、前記突起(43)及び前記2個のロータ片(40)を互いに固定する螺子止め部(46,47)を配置してなる。
【0007】
前記ロータ片(40)の嵌合面(42a)の内径を、前記ロータ軸(23)の外径に対して僅かに小さく設定し、前記突起(43)を先細状のテーパ形状としてなる。
【0008】
なお、括弧内の符合は図面を参照するためのものであるが、これにより、特許請求の範囲に記載の構成を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、一対のロータ片は互いに独立してそれらの突起をロータ軸の取付け凹部に差し込んで取り付けられ、かつその取付けと同時に整地ロータの組立て体が形成されるので、整地ロータのロータ軸への取付けに際してロータ片とロータ軸との位置決め並びにロータ片相互の位置決めが正確かつ容易になされ、取付け作業が容易かつ迅速化される。更に、ロータ軸への加工は突起を受け入れる取付け凹部の形成で済み、連結具等の他の部材の貫通はないので、該ロータ軸の断面欠損は可及的小さくでき、ロータ軸の強度が維持される。
【0010】
請求項2に係る本発明によると、ロータ片の突起によるロータ軸への位置決めと、螺子止め部によるロータ片相互の位置決めとを、軸方向両端の連結部材に集中して配置したので、2個のロータ片の取付けが容易になると共に、これらの位置決め誤差によるねじれが生じない。このため、整地ロータの両端部位の螺子止め部に装着される螺子(ボルト・ナット態様)を締込み、ロータ片相互を強固に締め付けることができ、強固な連結が行え、ひいては頑丈な整地ロータを得ることができる。
【0011】
請求項3に係る本発明によると、嵌合面の半径がロータ軸の半径より小さくされているので、螺子止め部に装着される螺子(ボルト・ナット態様)の締付けにより回転駆動力を伝達するロータ軸と整地ロータとの接触面の面圧が上り、当該接触面でも駆動力が分担され、突起への駆動力の負担が軽減される。更に突起はロータ軸の取付け凹部に対し食込み状に取り付けられるので、取付けのがた付きがなくなり、突起の強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る整地ロータを適用した乗用田植機の全体側面図。
【図2】本整地ロータ回りの機構を示す斜視図。
【図3】本整地ロータの拡大側面図。
【図4】本整地ロータのロータ片を示し、(a)はその側面図、(b)はその平面図、(c)は(b)図の中央部を示し、(d)は(b)図の右部の背面視を示す。
【図5】本整地ロータのロータ片の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の適用される乗用田植機の全体を示し、図2〜図5は本発明の整地ロータの各部の構成を示す。
【0014】
図1に示すように、本乗用田植機1は、操向自在の左右一対の前輪2と操向不能の左右一対の後輪3とを備えた走行機体5に搭乗運転部6が配され、該走行機体5の後部に苗の植付け作業機7が油圧シリンダによって作動する平行四連式のリンク機構9を介して昇降自在に連結されている。走行機体5には、ボンネット10で覆われたエンジンが搭載され、該エンジンの動力は前輪2を軸支するミッションケースに入力され、該ミッションケースより取り出される出力は後輪伝動軸11を介して後輪3を軸支する後部伝動ケース12に伝達される。走行機体5の搭乗運転部6には、前記前輪2を操向操作するためのステアリングハンドル、前記ミッションケースに連動する変速レバー類、機体停止ペダル(ブレーキペダル)、及び運転座席が配されている。更に、走行機体5前部の左右には、予備の苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台13が配されている。
【0015】
前記植付け作業機7は、(6条分の)植え付けられる苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗載せ台15が傾斜を保って配され、該苗載せ台15の下方には苗載せ台15の下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく(6組の)回転式の植付け装置16、及び整地フロート17が配される。該苗載せ台15の背面には前述したリンク機構9に連結されて昇降するフレーム体19が配され、該苗載せ台15は該フレーム体19の上端に取付け材20を介して固定され、また、植付け装置16及び整地フロート17もこのフレーム体19に所定の取付け材を介して固定され、これらの部材15,16,17はフレーム体19の動きと一体して動くものである。なお、これらの部材15,16,17の動力は前記したミッションケースより直接に取り出される伝動軸21より得る。
【0016】
本実施形態の整地ロータ22は、植付け作業機7と後輪3との間に配置され、横方向に配されるロータ軸23に取り付けられて該ロータ軸23の回転とともに回転し、かつ該ロータ軸23は一連の介装部材を介して前記フレーム体19に取り付けられ、上記の部材15,16,17と一体もしくは分離して動く。本整地ロータ22の駆動力は、前記した後部伝動ケース12より取り出される伝動軸25を介して得る。本整地ロータ22は、乗用田植機1のほぼ全幅にわたって配されるものであり、したがって該ロータ軸23もほぼ同等の長さを採る。
【0017】
図2は本整地ロータ22回りの詳細機構(支持及び作動機構)を示す。前記フレーム体19は、2つの相隔てて配される縦フレーム19Aと、これらの縦フレーム19Aの下端に水平に掛け渡される横フレーム19Bとが一体的に組み立てられてなり、縦フレーム19Aの上端には前記取付け材20が固定され、横フレーム19Bには前記した植付け装置16及び整地フロート17が取り付けられる。横フレーム19Bの長さは本乗用田植機1のほぼ全幅に等しい。
【0018】
フレーム体19の縦フレーム19Aの中間部位に軸体26が回転自在に固設され、該軸体26の左右両側で、かつ縦フレーム19Aの近傍で該軸体26と一体的に回転するアーム材29が固設され、該軸体26の先端には型材よりなる支持杆30の上部がピンを介して回転自由に取り付けられる。支持杆30の下端には支持部材31を介して本整地ロール21のローラ軸22が回転自在に支持される。更に、縦フレーム19Aには、前記アーム材29と相並べて別なアーム材32がブラケット33によりピンを介して取り付けられるとともに、その先端はピンを介して前記支持杆30に枢着される。したがってアーム材29とアーム材32とは軸体26、縦フレーム19A、支持杆30とともに4節リンクを形成する。整地ロータ22の高さ調整は、軸体26をモータで回動する等により行われる。
【0019】
更に、本整地ロータ22のロータ軸23の中間部位には前記した伝動軸25に接続されるギヤケース33が装着され、伝動軸25からの動力が入力されてロータ軸23が回転駆動し、本整地ロータ22が回転駆動する。整地ロータ22の上方は、支持杆30に固定された長尺のカバー35によって覆われる。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態では中空管をなすロータ軸23に沿って6個の整地ロータ22が所定の位置関係を保って配される。
【0021】
図3〜図5に基づいて、本整地ロータ22の詳細構造をロータ軸23への取付け構造とともに説明する。
【0022】
整地ロータ22は、その側面構成(図3)より、ロータ軸23を抱持して2つの相対接するロータ片40の組合せ体からなる。各ロータ片40は整地ロータ22の半割り体であって、同一形状をなすとともに合成樹脂素材をもって一体成形される。その組合せ体は正6角形の篭形をなす。
【0023】
ロータ片40は、軸(ロータ軸23)方向に長く、かつ該ロータ軸23の軸方向に平行する3つの板状の整地部材41と、各整地部材41をそれらの両側及び中間部において連結する複数(本実施形態では3)の連結部材42とから構成される。
【0024】
整地部材41は整地ロータ22の回転方向側の端面に波状部41aを有し、該波状部41aは正6角形体より突出して配される。整地部材41は整地ロータ22の回転に伴って該波状部41aをもって圃場面を掻く。
【0025】
連結部材42はその中央に所定の半径R(符合のみ)の嵌合面42aが凹設され、また、嵌合面42aの両側面は平坦状の対接面42bとなっている。該嵌合面42aの半径Rは対応するロータ軸23の半径r(符合のみ)よりもわずかに小さくされている。そして、半割りのロータ片40相互が組み合わされたとき、対応する嵌合面42aは円形をなすとともにその空間部にロータ軸23を抱持嵌合し、また、対接面42b相互は互いに当接状態を採る。
【0026】
両側の連結部材42においては更に、半円状の嵌合面42aの中央部に内径方向に突起43が突設される。該突起43はテーパー状とされている。一方、ロータ軸23の管壁の対称位置に該突起43を受け入れる取付け凹部45が軸方向に所定間隔を保って開設される。該取付け凹部45も突起43のテーパーに対応して傾斜面となっている。
【0027】
また、両側の連結部材42には、それらの内側(中間の連結部材42に向く側)部でかつ両端部に2つの螺子止め部46,47が一体的に形成される。螺子止め部46は、所定(厚め)の肉厚を有するとともに外端面は平坦な対接面46aをなし、その肉厚部を貫通するボルト挿通孔46bが形成され、内端面にはナット把持部46cが凹設される。螺子止め部47は、螺子止め部46の肉厚よりも薄くされ、外端面は平坦な対接面47aをなし、その肉厚部を貫通するボルト挿通孔47bが形成され、内端面は平坦面とされる。上記の対接面46a,47aは連結部材42の対接面42bと面一をなす。図示(図3)されるように、一対のロータ片40を対接すると、螺子止め部46と螺子止め部47とは対応し、それらの対接面46aと対接面47aとは互いに当接し、かつそれらのボルト挿通孔46b,47bとは軸心が一致する。ナット把持部46cには締具の一方のナット(図示せず)が嵌め込まれ、螺子止め部47の内端面側からは締具の他方のボルト(図示せず)が挿入される。ナット把持部46cにはナットが密接状に嵌め込まれ、ボルトを受け入れた際にも妄動はない。
【0028】
更に、図5に示すように、螺子止め部46にはナット把持部46cより整地部材41側に延びる溝部46dが形成され、これに対応して整地部材41の後面には切欠き凹部41bが形成され、これら46d,41bにより締具のナットを装着する際の案内をなす。螺子止め部47は対応する整地部材41が垂直状をなすので、そのような手段はない。
【0029】
このように構成された本実施形態の整地ロータ22の組付けにつき、ロータ軸23には当該整地ロータ22が組み付けられる位置に予め取付け凹部45が穿設されるものであり、該取付け凹部45に対応して対向する一対のロータ片40の突起43がそれぞれ嵌め込まれる。これにより、本整地ロータ22のロータ片40はロータ軸23に自動的に位置決めがなされて容易かつ正確に取り付けられ、本整地ロータ22の組付け体が形成され、組立て作業の効率が向上する。
【0030】
次に、整地ロータ22のロータ軸23への固定がなされる。すなわち、一対のロータ片40相互において、両側の連結部材42の対応する螺子止め部46と螺子止め部47とで、螺子止め部46のナット把持部46cにナットを組み込み、螺子止め部47側よりボルトを装着して締め込む。ナットはナット把持部46cに密接状に嵌め込まれ、ボルトの締込みは容易かつ良好になされる。ボルトの締込みにより、ロータ片40相互は強く密着し、テーパー状の突起43は傾斜面を持つ取付け凹部45に強固に嵌入され、また、その嵌合面42aの半径R面はロータ軸23の半径r面を強く圧迫し、これにより本整地ロータ22はロータ軸23に強固に取り付けられる。
【符号の説明】
【0031】
22 整地ロータ
23 ロータ軸
40 ロータ片
41 整地部材
42 連結部材
42a 嵌合面
43 突起
46,47 螺子止め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ軸と、半割り状の同一形状からなる2個のロータ片と、を備え、前記ロータ軸に前記2個のロータ片を合せて一体に固定してなる整地ロータにおいて、
前記ロータ軸と嵌合する前記2個のロータ片の嵌合面に、それぞれ内径方向に突出する突起を一体に形成し、これら突起を、前記ロータ軸の外周面に一体に形成した取付け凹部に差込んで、前記2個のロータ片を互いに合わさるようにして、前記ロータ軸に位置決めしてなる、
ことを特徴とする整地ロータ。
【請求項2】
前記各ロータ片は、その外周側に前記ロータ軸の軸線方向に平行に配置された多数の整地部材と、前記ロータ軸の軸線方向に所定間隔隔てて複数配置され、前記整地部材を連結する連結部材と、を有し、
前記複数の連結部材の内の前記軸線方向両端の連結部材に、前記突起及び前記2個のロータ片を互いに固定する螺子止め部を配置してなる、
請求項1記載の整地ロータ。
【請求項3】
前記ロータ片の嵌合面の内径を、前記ロータ軸の外径に対して僅かに小さく設定し、
前記突起を先細状のテーパ形状としてなる、
請求項1又は2記載の整地ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−193805(P2011−193805A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64545(P2010−64545)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】