説明

整形外科用インプラント

【課題】手術後の負荷に耐えうる充分な剛性を確保できるとともに、構造の簡易化を図ることで製造コストの低減或いは小型化・薄肉化を図ることのできる整形外科インプラントを提供する。
【解決手段】本発明の整形外科インプラントは、骨内に導入される軸状部材10と、該軸状部材を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔を備えたスリーブ部材30と、骨の外面に固定される、前記スリーブ部材の基端部に回動可能に連結された固定部材40と、を具備する整形外科用インプラントにおいて、前記スリーブ部材及び前記固定部材に対する嵌合構造により前記スリーブ部材と前記固定部材に共に係脱可能に構成され、その係合状態で前記スリーブ部材と前記固定部材の回動を規制し、前記スリーブ部材と前記固定部材の交差角度を前記嵌合構造の形状に応じた値に固定する係合規制部材50をさらに具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は整形外科用インプラントに係り、特に、骨内に導入される軸状部材と、該軸状部材を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔を備えたスリーブ部材と、骨の外面に固定される、前記スリーブ部材に対して回動可能に連結された固定部材とを有するインプラントの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ラグスクリュウと呼ばれる骨ネジ等からなる軸状部材と、この軸状部材を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔を備えたスリーブ部材と、該スリーブ部材に固定若しくは連結され、骨の外面に固定される固定部材とを有する骨手術用の整形外科用インプラントが知られている(例えば、以下の特許文献1参照)。
【0003】
上記のように構成された整形外科用インプラントでは、骨内に導入されて係合固定される軸状部材と、骨の外面上に固定されるプレート状の固定部材との間の交差角度が一般に120〜150度の範囲内とされるが、体格、年齢、性別、人種などによって上記交差角度にばらつきがあるため、スリーブ部材と固定部材の交差角度を可変にし、患者に合わせて当該交差角度を調整して用いるように構成された整形外科用インプラントが知られている(たとえば、以下の特許文献2及び3参照)。
【0004】
この種の交差角度可変式インプラントでは、スリーブ部材と固定部材の連結部位に螺合構造或いは歯車構造を設けることで、これらの構造に含まれる操作部材を回転操作することにより、上記交差角度を調整し、所定の交差角度値に設定することができるようになっている。
【特許文献1】特開2003−180704号公報
【特許文献2】特開平10−5238号公報
【特許文献3】特開2003−24344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の整形外科インプラントを用いた手術後には、スリーブ部材と固定部材の間に大きな負荷が加わることが多く、特に、高齢者に症例の多い大腿骨近位部の骨折固定を行う場合には機能の回復を目的として手術後早期に歩行訓練等を行う必要があるので、当初から体重に起因する大きな負荷が加わる。ところが、上記交差角度可変式の整形外科インプラントでは、上記交差角度を螺合構造或いは歯車構造によって保持しているので、ねじ山或いは歯に過大な負荷が加わることで当該構造に変形が生じたり、欠損が生じたりする虞がある。
【0006】
また、上記の整形外科インプラントでは、スリーブ部材と固定部材の間の連結部位の近傍に上記の螺合構造或いは歯車構造を組み込む必要があるため、構造が複雑になることから、製造コストが上昇するとともに、上記のような過大な負荷により変形や故障が発生する場合があるので、たとえば、スリーブ部材と固定部材の連結部位の近傍を厚肉に構成する必要が生ずるなど大型化し、近年の手術の低侵襲化の流れに逆行することとなるといった問題点がある。
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、手術後の負荷に耐えうる充分な剛性を確保できるとともに、構造の簡易化を図ることで製造コストの低減或いは小型化・薄肉化を図ることのできる交差角度可変式の整形外科インプラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明の整形外科インプラントは、骨内に導入される軸状部材と、該軸状部材を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔を備えたスリーブ部材と、骨の外面に固定される、前記スリーブ部材の基端部に回動可能に連結された固定部材と、を具備する整形外科用インプラントにおいて、前記スリーブ部材及び前記固定部材に対する嵌合構造により前記スリーブ部材と前記固定部材に共に係脱可能に構成され、その係合状態で前記スリーブ部材と前記固定部材の回動を規制し、前記スリーブ部材と前記固定部材の交差角度を前記嵌合構造の形状に応じた値に固定する係合規制部材をさらに具備することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、係合規制部材を嵌合させてスリーブ部材と固定部材に共に係合させることにより、スリーブ部材と固定部材の回動が規制され、スリーブ部材と固定部材の間の交差角度を嵌合構造の形状に応じた値に固定することができる。したがって、従来のねじ山や歯などに負荷を受ける場合に比べて、係合規制部材の嵌合構造によって応力が局部に集中しにくい支持構造を設けることができるので、インプラントの剛性の確保が容易になるとともに、嵌合構造によりスリーブ部材及び固定部材に対して共に係脱可能に構成されていることにより係脱操作がきわめて容易になり、しかも、構造を簡易に構成できるため、製造コストの低減及び連結部位近傍の薄肉化その他の小型化を図ることが可能になる。
【0010】
本発明において、前記係合規制部材は、前記スリーブ部材と前記固定部材の回動軸より外側にある部分にそれぞれ係脱可能に構成されていることが好ましい。これによれば、回動軸の外側にある部分に係合規制部材が係脱可能に構成されていることで、スリーブ部材と固定部材の連結部位の内面側に係合規制部材を配置するための空間を設ける必要がなくなるとともに、一般に回動軸の外側で計ったスリーブ部材と固定部材の間の交差角度は180度を越えるため、係合規制部材の係脱操作を容易に行うことができ、しかも、係合規制構造を簡易かつ小型に形成できるので、インプラントの実質的な薄肉化や小型化を図りやすくなる。
【0011】
本発明において、前記係合規制部材は、前記スリーブ貫通孔に連通する開口部を有することが好ましい。係合規制部材にスリーブ貫通孔に連通する開口部を設けることで、軸状部材の基端部が後退しても係合規制部材に干渉することないために支障なく軸線方向に移動可能にすることができるとともに、係合規制部材の位置及び形状に制約が少なくなり設計の自由度が高まるので、係合規制部材の最適設計が可能になる。
【0012】
本発明において、前記係合状態で前記スリーブ部材と前記固定部材の回動を相互に異なる交差角度で規制する複数の前記係合規制部材を含むことが好ましい。これによれば、複数の係合規制部材を選択して装着することで、スリーブ部材と固定部材の交差角度を複数の適宜の値に設定することが可能になる。
【0013】
なお、係合規制部材としては、スリーブ部材と固定部材の双方に対してそれぞれ回動軸周りの正逆両方向に係合する構造、たとえば、回動方向両側にそれぞれ係合面を有する溝構造を有することが望ましい。また、上記係合規制部材は、スリーブ部材及び固定部材に対してスライド可能に嵌合して係脱するように構成され、しかも、係合規制部材が装着された状態で上記交差角度が変化する方向に応力を受けても係合規制部材がスライドしないように構成されていることが好ましく、特に、直線状にスライドすることで係脱可能に構成されていることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。最初に、図3を参照して本発明に係る軸状部材、スリーブ部材、及び、固定部材からなる整形外科インプラントについて説明する。図3(a)はこの整形外科インプラントの組み立て状態を示す側面図、図3(b)は同組み立て状態の正面図である。
【0015】
この整形外科インプラントは、骨内に導入された状態で骨に係合固定される、例えば骨ネジ(ラグスクリュウ)等で構成される軸状部材10と、この軸状部材10を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔30aを備えたスリーブ部材30と、このスリーブ部材30の基端部に対して回動可能に連結された板状の固定部材40と、を含む。これらの各部は生体適合性を有する素材、例えば、ステンレス鋼、純チタン、チタン合金等によって構成することが好ましい。
【0016】
この軸状部材10は、先端に骨係合要素としてのスクリュウ11を有するとともに基端に工具係合部12を有し、先端から基端まで一様に伸びる軸孔10aを備えたものである。スクリュウ11は、骨の内部に係合するタッピングネジであり、骨に螺入された状態で骨に対して軸状部材10を軸線方向に固定する。また、工具係合部12には端部に開口する係合穴12aが設けられ、この係合穴12aが図示しない回転工具に係合した状態で回転駆動されるようになっている。軸孔10aは図示しないガイドワイヤを挿通可能にするためのものである。この軸孔10aを用いて当該ガイドワイヤを挿通させた状態で、軸状部材10は上記ガイドワイヤに案内されながら骨に螺入されるようになっている。
【0017】
なお、この軸状部材10は図示例の場合には骨ネジとして構成されているが、骨内に導入されて骨に係合固定される軸状の部材であれば如何なるものであってもよく、例えば、骨に係合固定される拡径可能又は膨張可能な先端係合部を備えたもの、或いは、骨に打ち込まれて係合固定される種々の断面を有する骨釘などで構成することも可能である。
【0018】
スリーブ部材30は、筒状部31と、この筒状部31の基端部に接続された鍔状のスリーブ側係合部32とを有している。スリーブ部材30には筒状部31及びスリーブ側係合部32を貫通するスリーブ貫通孔30aが設けられ、このスリーブ貫通孔30aは軸状部材10の工具係合部12及び軸部13が挿通可能となるように構成されている。ここで、筒状部31の先端部にはスリーブ貫通孔30aの内径が他よりも小径となるように構成された抜け止め部31aが形成され、この抜け止め部31aは軸状部材10の工具係合部12が通過できないように構成されている。これによって、図示例の場合には軸状部材10とスリーブ部材材30とが図3(a)に示す状態で出没自在に、しかしながら相互に分離しないように組み立てられている。
【0019】
また、抜け止め部31aの内面には、軸線を挟んで両側に一対の平坦な内面部(図示せず)が形成されている。この内面部は軸状部材10の軸部13に設けられた一対の外面部13aに係合することにより、軸状部材10が軸線周りに回転しないように規制する。ただし、軸状部材10の工具係合部12が上記抜け止め部31aに係合して、軸状部材10がスリーブ部材材30より最も突出した状態とされたときには、抜け止め部31aの内面が軸状部材10の小径のネック部13bに対向し、これによって上記内面部による軸状部材10の回転止め作用が解除されて、軸状部材10がスリーブ30部材に対して回転自在に構成されるようになっている。
【0020】
また、スリーブ部材30のスリーブ側係合部32は固定部材40の固定側係合部41と回動軸20を介して回動可能となるように連結されている。具体的には、スリーブ部材30の筒状部31の軸線と、固定部材40の後述するプレート形状の軸線との間の交差角度(通常は120〜150度の範囲内)が変化する態様で、図3(a)に示す図面の紙面と一致する仮想平面上でスリーブ部材30と固定部材40とが相互に回動するように構成されている。すなわち、スリーブ部材30と固定部材40を回動可能に連結する回動軸20は上記仮想平面と直交する軸線を有している。
【0021】
固定部材40は、上記固定側係合部41と、この固定側係合部41から伸びる固定プレート部42とを有している。固定側係合部41は上記スリーブ部材30のスリーブ側係合部32と上述のように連結している。一方、固定プレート部42には複数のネジ孔42aが形成されている。これらのネジ孔42aは図示しない骨ネジの軸部を通過させたときに当該骨ネジの頭部に係合するように構成され、この骨ネジによって固定プレート部42が骨の外側面上に固定される。
【0022】
図1(a)は上記スリーブ部材30と固定部材40の連結部近傍を示す概略斜視図である。スリーブ側係合部32は図1(a)に示すように回動軸20を中心とした回動方向両側にそれぞれ向いた係合面32s、32tを備えている。これらの係合面32s、32tは一つの溝(図示例ではV字断面を有するV溝)を構成し、この溝内にて相互に対向した内面部分として形成されている。また、固定側係合部41は図1(a)に示すように回動軸20を中心とした回動方向両側にそれぞれ向いた係合面41s、41tを備えている。そして、これらの係合面41s、41tは一つの溝(図示例ではU字断面を有するU溝)を形成し、この溝内にて相互に対向した内面部分として形成されている。
【0023】
本実施形態では、図1(b)に示すように、上記スリーブ側係合部32と固定側係合部41に共に係合する係合規制部材50を備えている。この係合規制部材50は、スリーブ側係合部32の上記係合面32s、32tに共に係合する(具体的には係合面32sと32tの間(係合面32s、32tを含む溝)に嵌合する)第1係合部51と、固定側係合部41の上記係合面41s、41tに共に係合する(具体的には係合面41sと41tの間(係合面41s、41tを含む溝)に嵌合する)第2係合部52とを備えている。当該係合規制部材50は、全体としては、上記回動軸20の両側にあるスリーブ側係合部32と固定側係合部41の間に嵌合するように構成されている。
【0024】
係合規制部材50は、スリーブ部材及び固定部材に対してスライド自在に嵌合して両部材に共に係脱するように構成され、しかも、係合規制部材が装着された状態で上記交差角度が変化する方向に応力を受けても係合規制部材がスライドしないように構成されている。すなわち、係合規制部材50は、スリーブ部材30と固定部材40間にスライドして嵌合し、逆にスライドして離反する嵌合構造を備えているとともに、その嵌合状態が維持されるようになっている。特に、図示例では、係合規制部材50が直線状にスライド動作することでスリーブ部材30と固定部材0の双方に係合したり離脱したりするように構成されている。したがって、係合規制部材の装着及び取り外しをきわめて容易に行うことが可能である。
【0025】
また、係合規制部材50は、嵌合して装着された状態でスリーブ部材30と固定部材40の幅方向両縁から幅方向にはみ出さない形状、具体的には当該両縁にほぼ合致する両縁部を備えた形状を備えている。さらに、係合規制部材50は、スリーブ部材30と固定部材40の回動軸20より外側にある部分にそれぞれ係合する。ここで、回動軸20より外側とは、図1(a)に示す交差角度θが存在する側とは反対側を言う。すなわち、交差角度θを規定する側を内側とし、交差角度θの反対側を外側という。図示のように内側で測った交差角度θは通常は劣角であり、外側で測った角度は優角である。
【0026】
上記のように係合規制部材50が装着されると、図3(a)に示すように、スリーブ部材30と固定部材40の回動軸20を中心とした回動が正逆いずれの方向にも係合規制部材50によって規制され、スリーブ部材30の軸線と固定部材40の軸線との間の交差角度θが所定の値に固定される。係合規制部材50には、上記装着状態においてスリーブ部材30に設けられたスリーブ貫通孔30aと連通する開口部50aが形成されており、軸状部材10がスリーブ部材30の基端側に引き戻されてその基端部(工具係合部12)がスリーブ貫通孔30aから支障なく基端側に突出することができるように構成されている。図示例の開口部50aは、係合規制部材50が装着状態にある場合においてスリーブ貫通孔30aを基端側に仮想的に延長したときの開口部分を少なくとも含む開口形状を備えている。
【0027】
図2(a)乃至(c)は、異なる寸法・形状を備えた係合規制部材50′、50、50″を装着したときのスリーブ側係合部32及び固定側係合部41の状態を示す概略斜視図である。図2(a)に示す係合規制部材50′は、図2(b)に示す上記係合規制部材50(交差角度θ=135度)よりも上記交差角度θが小さく(θ=125度に)なるように構成されている。また、図2(c)に示す係合規制部材50″は、図2(b)に示す上記係合規制部材50よりも上記交差角度θが大きく(θ=145度に)なるように構成されている。
【0028】
上記のように、異なるスリーブ部材30と固定部材40の上記交差角度に対応する複数の係合規制部材50、50′、50″を予め用意しておくことで、患者に合わせていずれかの係合規制部材を選択して用いることが可能になる。
【0029】
上記のように構成された整形外科インプラントは、大腿骨の骨頭部近傍の骨折を治療する場合には例えば以下のように用いられる。まず、大腿骨の外側面から骨頭部内へ向けて図示しないガイドワイヤを刺入し、このガイドワイヤを案内手段としてリーマ等の穿孔器具で骨に穴を開ける。このとき、骨に開けられた穴は、奥の部分が軸状部材10に対応する小さな穴径を有し、浅い部分がスリーブ部材30の筒状部31の外径に対応する、より大きな穴径を有する段付穴形状とされる。その後、上記ガイドワイヤを軸状部材10、回動軸20、スリーブ部材30及び固定部材40の組み立て体に挿通させ、このガイドワイヤを案内手段として軸状部材10を骨に導入(螺入)する。そして、図示しない回転工具の先端の回転操作部をスリーブ貫通孔30aに挿入し、軸状部材10の工具係合部12と係合させる。このとき、スリーブ部材30を回転工具の手元側に引き出しておき、上記ネック部13bが筒状部31の抜け止め部31a及びその平坦部に対向することで軸状部材10がスリーブ部材30に対して回転自在に構成されるようにする。
【0030】
上記の状態で回転工具を回転させて軸状部材10を骨に導入(螺入)していく。軸状部材10が十分な深さに導入された(ねじ込まれた)こと(すなわち、スクリュウ11の先端が骨頭部内の皮質近傍に到達したこと)をX線画像等の透視画像などで確認してから、導入作業を終了する。
【0031】
しかる後に、スリーブ部材30を骨内に押し込み、筒状部31の抜け止め部31aの上記内面部が軸状部材10の外面部13aと係合し、軸状部材10とスリーブ部材30とが軸線周りに固定されるようにする。そして、スリーブ部材30のスリーブ側係合部32の裏面を骨面に密着させる。その後、スリーブ側係合部32と固定側係合部41の間に上記係合規制部材50を装着し、上記交差角度を固定した状態で、固定部材40の固定プレート部42を図示しない骨ネジによって大腿骨の外表面上に(管状骨の長手方向に沿って)固定する。
【0032】
本実施形態では、上記のように軸状部材10の外面部13aとスリーブ部材30の内面部が回転方向に係合することによって軸状部材10がスリーブ部材30に対して軸線10x方向にはスライド可能であるが、回転不能の状態になる。ただし、軸状部材10の回転による骨頭部の回旋を防止する必要がなければ、上述の軸状部材10とスリーブ部材30の回転方向の係合構造は不要であり、この場合には両者は常に回転自在に連結された状態とされる。
【0033】
なお、上記では手術中に係合規制部材を装着するように説明しているが、この場合には、手術中の状況に応じて(たとえばX線画像に基づいて)最適な交差角度を実現する係合規制部材を選択して適用できる、また、係合規制部材を装着する前には体内で交差角度が自在に変化可能となっているため、取り扱いが容易になるなどという利点がある。ただし、一般的には、予め患者に適合した交差角度を実現する係合規制部材を選定し、手術前に当該選定した係合規制部材を装着しておき、この状態でインプラントを体内に導入することで、体内において係合規制部材を装着するといった作業を行わなくてもすむ。
【0034】
本実施形態では、係合規制部材50をスリーブ部材30と固定部材40の両者に係合させることで上記交差角度が係合規制部材50の形状に応じた所定の値に固定されるため、インプラントの剛性を確保しつつ、簡単な操作で上記交差角度を設定することができるという顕著な効果が得られる。
【0035】
また、本実施形態では、係合規制部材50がスリーブ側係合部32と固定側係合部41に対して回転軸20の外側にある部分に係合するように構成されているので、係合規制部材50の係脱操作が容易になり、特に、スリーブ部材30及び固定部材40を体内に配置した状態でも係合規制部材50を装着したり、取り外したりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態の整形外科インプラントの連結部近傍の係合規制部材の装着前の状態を示す概略斜視図(a)及び係合規制部材の装着時の様子を示す概略部分斜視図(b)。
【図2】実施形態の整形外科インプラントの連結部近傍の複数の異なる係合規制部材を装着した状態を示す概略部分斜視図(a)乃至(c)。
【図3】実施形態の整形外科インプラントの組立て状態を示す概略側面図(a)及び概略正面図(b)。
【符号の説明】
【0037】
10…軸状部材、20…回動軸、30…スリーブ部材、30a…スリーブ貫通孔、31…筒状部、32…スリーブ側係合部、32s、32t…係合面、40…固定部材、41…固定側係合部、41s、41t…係合面、42…固定プレート部、50…係合規制部材、50a…開口部、51…第1係合部、52…第2係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨内に導入される軸状部材と、該軸状部材を軸線方向に移動可能に収容するスリーブ貫通孔を備えたスリーブ部材と、骨の外面に固定される、前記スリーブ部材の基端部に回動可能に連結された固定部材と、を具備する整形外科用インプラントにおいて、
前記スリーブ部材及び前記固定部材に対する嵌合構造により前記スリーブ部材と前記固定部材に共に係脱可能に構成され、その係合状態で前記スリーブ部材と前記固定部材の回動を規制し、前記スリーブ部材と前記固定部材の交差角度を前記嵌合構造の形状に応じた値に固定する係合規制部材をさらに具備することを特徴とする整形外科用インプラント。
【請求項2】
前記係合規制部材は、前記スリーブ部材と前記固定部材の回動軸より外側にある部分にそれぞれ係脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の整形外科用インプラント。
【請求項3】
前記係合規制部材は、前記スリーブ貫通孔に連通する開口部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の整形外科インプラント。
【請求項4】
前記係合状態で前記スリーブ部材と前記固定部材の回動を相互に異なる交差角度で規制する複数の前記係合規制部材を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の整形外科用インプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−212587(P2008−212587A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58147(P2007−58147)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(393024186)株式会社ホムズ技研 (35)
【Fターム(参考)】