説明

整形外科的オーダーシューズの製造方法

本発明は、整形外科的オーダーシューズの製造方法に関する。この場合、負荷の加わった状態で患者の足が3次元で写真によりスキャンされ、スキャンにより求められた測定データがコンピュータに記憶され、足の3次元画像が得られるよう処理される。算出されたこの画像に患者の足のレントゲン画像が重畳され、はめこみ合成されたレントゲン画像の事前情報が考慮されながらスキャンにより得られた測定データに従い加工処理機械が制御され、靴型もしくはフットベッド、アッパーが自動的に作成され、さらにつり込みおよびソール作成が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科的オーダーシューズの製造方法に関する。
【0002】
日々使用される標準シューズを工業生産するのとは異なり、整形靴ないしは整形外科的オーダーシューズはその名称がすでに表しているように、これまで職人が手間をかけて個別に製造することによってしか生産できなかった。その際、このような旧式の方法によれば完全に決められた所定の順序で作業を進めていかなければならない。これは計測テープを用いて足を計ることから始められ、ここですでに不精確な測定が生じてしまう可能性があり、このような不精確さは以降のプロセスに引き継がれ、さらに増大してしまう。足の測定後、それに対応する靴型ないしはラストが形成される。次に個々のフットベッド(ベトン、中敷)が作成される。次に、手によって作成されたベースモデルに基づきアッパー(甲部)のための材料が裁断され、ついで縫合される。内側の底革が取り付けられた後、爪先革および月形芯の装備に応じてアッパーが靴型につり込まれて、靴釘で固定される。その後、つり込まれたアッパーが固着され、ついで靴釘チャンバから再び取り外される。このプロセスは著しく時間がかかる。このような靴を完全に仕上げるため、そのあとでソールが取り付けられる。
【0003】
したがって本発明の課題は、通常は手作業で製作されるこの種のオーダーシューズを自動化された手法によりいっそう速くかついっそう高い精度で製造できるようにすることである。
【0004】
製造時間を短縮することにより医学的に著しい利点が得られる。医師は自身の治療法を格段に徹底させることができ、治療全体の終わりになって初めて靴の供給を保証することができる。これについては、かかとの挫傷ないしは骨折およびそのためのシューズ供給を例に挙げて説明することができる。一般的にはこれまで、医学的な治療プロセスはかかとを損傷してから12週間後に終了するので、患者が12週目に自身の靴を手に入れることができるよう、8週目、遅くとも9週目には整形外科的シューズ製作のために寸法をとる必要があった。本発明による新たな方法を用いることでいまや11週目になってからシューズを作成することができる。このことによる利点とは、それまでには措置が減ることなどに伴い足の形状がよい方向に変化し、したがって他方ではこれまで3〜4週間はかかっていたシューズ製造期間の場合よりも当然ながらでき具合が著しく改善される。
【0005】
本発明の方法の特徴によれば、負荷の加わった状態で患者の足が3次元で写真によりスキャンされ、スキャンにより求められたデータがコンピュータに記憶され、それが処理されて足の3次元画像が生成され、計算されたこの画像に患者の足のレントゲン画像が重畳され、はめ込み合成されたレントゲン画像の事前情報を考慮しながらスキャンにより得られた寸法データに従い加工処理機械が制御されて、靴型ないしはフットベッド、アッパーが自動的に作成され、さらにはつり込み作業およびソールの作成作業が行われる。
【0006】
レントゲン画像をスキャンにより取り込む特殊性ゆえにこれまで知られていなかったかたちでくるぶしの解剖学的特質を考慮することができるので、医学的に著しい利点が得られる。
【0007】
胼胝または他の軟部の変形も考慮することができるので、押される部位が生じないようになる。この場合、(作業靴を製造しようとする場合に生じる)かぎ爪や爪先の高さの問題点もコンピュータにおいてダイレクトに識別することができ、必要に応じて相談することができる。従来はシューズが作成されてから患者が試す段になって初めて押される部分があるのに気がつき、その部分を変更するのは非常に難しくそのためにはかなりの時間をかけなければならなかった。本発明によるシューズ製造方法によれば、たとえばまえもって決められている鋼製先芯と足指変形がそもそも互いに整合しているのか否かを、前段階でコンピュータにおいてすでに識別することができる。このことから前段階で著しくコストが低減されるようになる。3次元表示により足の情報が裏側からそれ相応に取得され、しかもこれが足に負荷が加わった状態(場合によっては部分的な負荷)で行われることによって、負荷があるときの相応の変形を考慮することができる。靴型の3次元作成ならびに寸法コントロール(以下の記載を参照)によって、靴型と足の寸法との間の補償調整が可能となり、これによって整形外科的シューズ技術と治療および処方を行う医師とが互いに密に影響を及ぼし合うことができるようになり、その際に何らかのかたちで悪影響が及ぼされることがない。
【0008】
添付の図面からわかるように、本発明による方法は著しく可変性がある。スキャンプロセスならびにそれにより得られる測定データに基づき、靴型製造とアッパー(甲部)製造とフットベッド製造とを並行して開始することができる。また、スキャンが終わると同時にソール製造を開始することもでき、これによって精度が高いという点から著しく精密に加工されたシューズができあがるとともに、慣用の手法よりも著しく短い時間で製造することができる。
【0009】
以下、本発明による方法を用いて整形外科的オーダーシューズを製造するための方法の流れについて一例を挙げて説明する。
【0010】
患者は罹患もしくは負傷した足を5台のカメラから成る写真スキャナのガラス製フロアに置き、この場合、4台のカメラは対応する各コーナーに配置され、5台目は裏側から撮影されるよう配置されている。
【0011】
個々のカメラのキャプチャゾーンはオーバラップしているので、足の仮想画像が計算されるようコンピュータにおいてデータが処理される。このようにして最終画像により、足のシルエットがそれらの解剖学的特質すべてとともに示されることになる。
【0012】
この画像はすべての側から観察することができる。さて、本発明による方法の特殊性として、この3次元画像に患者の足のレントゲン画像がはめ込み合成され、その結果、作成すべき靴型にこの段階で骨格の特質を取り込むことができる。
【0013】
この場合、スキャンプロセスにより求められた測定データに基づき対応する靴型デザインがコンピュータにより計算され、コンピュータは足の外側における特質および足の骨格構造に基づき様々な位置で修正を施すことができる。
【0014】
足の測定データを仮想形状で示すいわゆる寸法コントロールにおいて、個々の測定データのコントロールが再度行われ、場合によっては手を使って取得したコントロールデータ(旧式の測定によるデータ)に対するコントロールも行われる。
【0015】
次のステップは仮想の中間テストである。この場合、計算済みの靴型が足のデータとコンピュータによって補償調整される。つまりこの場合、靴型が足の内側データと一致するか否かを判断する目的で、寸法コントロールが靴型に取り込まれる。やはりこの段階においても、場合によっては整形外科技術的または医学的にまえもって設定されていた特質を考慮することができ、これはまったく新規なことである。
【0016】
ついで、計算された靴型からコンピュータによってアッパーのための革の裁断が計算され、この場合にもやはり仮想靴型のコピーが取り扱われる。
【0017】
アッパーのデザインにあたり、当然ながら足の解剖学的特質も考慮される。
【0018】
コンピュータに格納されている測定データに基づくCAD制御型裁断台による革の裁断は、実際にはこれまでは十分な精度では行われていない。この裁断台により裁断、穴あけならびにアッパー組み立て用の目印の作成が完全に自動的に行われる。
【0019】
アッパー組み立てにおいて革の断片がまとめられ、ついで裏地(もしくは相応のクッション部材)が組み込まれる。さらにアイレットや必要とされる他の特有の装具類が革に装着される。タウンシューズであればその際に同時に先芯がいっしょに組み込まれる。
【0020】
新規であるのは、靴型の設計があとのフットベッドを含めて1単位として行われることである。その結果、整形外科的シューズの製造機械によりぴったりと合った組み立てが行われるようになる。したがって従来の製造のようにフットベッドを事前に作成することなく、シューズの組み立てをすでに始めることができる。次にコンピュータデータに基づき靴型が切削加工され、これとは時間的に無関係にフットベッドが切削加工される。これまで適用されてきた切削加工方法は以下の通りであった。単一の靴型が切削加工され、ついで帯鋸により分離され、ねじで固定される。この場合、シューズの製造後に靴型をシューズから取り外すために分割が必要とされる。新規の方法によれば、複数の靴型がいっそう大きな1つのブロックから切削加工される。サイズに応じて5つのペアまで1つの作業工程で作成される。同様に、靴型はすでに分割された形状で切削加工される。これには2つの格別な利点がある。その1つは、あとから分離することで生じてしまう寸法の不精確さがなくなることである。帯鋸による鋸挽きにあたり鋸刃の厚さの分だけ靴型の寸法が失われる。2つめの利点については以下で詳しく説明する。この場合、切削加工プロセスを2つの機械において同時に行うことができるし、あるいは1つの機械において順次連続して行うことができる。靴型に関して当業者は通常の材料を選択する。フットベッドについては様々な材料選択が適用される。ここでは種々のショアー硬度をもつゴムと類似した材料が選択される。医学的な指定条件に基づく要求に従い、剛性のフットベッド、半軟性のフットベッドあるいは軟性のフットベッドが選択される。ついで足の発汗等に関しておよび装着快適性に関してフットベッドを準備処理するために、さらに革または他の材料でフットベッドが覆われる。
【0021】
切削加工機械がコンピュータ制御されることによって、ここでも製造精度に関して著しい利点が得られる。
【0022】
同様に本発明による方法において新規なことは、靴型が最初に最も狭い既製ソールとなるよう加工処理されることである。ただし医師の指定した条件以外に患者には様々な要望があるので、ここで形状を可変にしておく必要があり、このことはいっそう幅の広いくつ型形状が得られるようプラスチック製カバーを装着させることによって保証される。このカバーはコンピュータにおいて設計され3次元プリンタにより作成される。必要とされるカバーの種類および形状によって計算された靴型が考慮されるので、本発明によるこのようなやり方により、この方法自体に時間が費やされたり時間に遅れが出たりすることなく、爪先領域におけるシューズ形状に関して多数の様々な形状が実現される。すでに述べたように、これは分割された形状で靴型が切削加工される第2の著しい利点である。この分割はコンピュータにおいて実践され持続的に記憶されているので、個々の靴型について変形された形状で新たな前部をいつでも切削加工することができる。両方の方法すなわちカバーもしくは交換型先端部は、変更の大きさに応じて適用される。このようなやり方によって、基本靴型の迅速な作成が依然として保証される。
【0023】
個々の患者と固有の靴型との対応づけは、1つのチップによって保証される。これについて以下で詳しく述べる。切削加工プロセス中に識別番号の彫り込まれた靴型には読み取り可能なチップが設けられ、このチップは読み取り装置によって読み取り可能であり、識別することができる。コンピュータはチップに記憶されている識別子に基づき、ネットワークを介してそれに属する患者を識別する。これによって個々の作業者は、自身に必要とされる患者データとシューズ製造データを得ることができる。
【0024】
ついで内側の底革が靴型に取り付けられる。この底革はすでにその最終形状を有している。なぜならばPCにおける靴型形状と既製ソールとの補償調整により底革は事前に設計され裁断台で裁断されたものだからである。同様のことは種々の踵ないしは月形芯についてもあてはまる。
【0025】
次に機械により爪先領域のつり込みが行われる。使用される機械は、側方および斜めの様々な問題点を解消することができるよう可変に構成されている。先端部つり込み機にはテフロンベルトが取り付けられている。足前部もしくはシューズの適切な形状を実現する目的で、この側方の挟み込みベルトを、器具における特定の技術的指定条件により整形外科的シューズ技術者が相応に変更することができ、しれもこれを固有の形状に依存して行うことができる。このベルトは負荷が加わった後に再びもの形状をとるようフレキシブルであるため、このような技術的機構によって、シューズを同じ形状で直接相前後させて加工処理することができるようになり、それぞれ異なる足前部の形状でもこのことを行えるようになる。この機械は、1日に200個のシューズペアを加工処理することができる。このつり込み機において、同時に大きな利点ももたらされるが欠点となるのは、前方の爪先革部分の領域全体を同時につり込むとき、裁断皮革のもとになる毛皮に欠陥があると、つり込み機により及ぼされる手では実現不可能な力によって、皮革もしくはアッパー(甲部)が損傷してしまうことである。手で行うのであれば、これを補償調整することができ、それ相応に考慮することができた。このことは、当然ながら毛皮が大切に扱われることを意味する一方、手によって低価格の材料を処理することができることも意味するが、このことは上述のつり込み機では不可能であり、したがってこの場合、機械は品質確保のため手を使ったつり込みよりも確実に高価になる。
【0026】
踵領域は固有の踵つり込み機によって作成される。このつり込み機は上述のものと同様の原理に従って動作する。前部領域についても後部領域についてもつり込み段階において、殊に踵のための裏地とヒールまたは整形外科的に必要とされる月形芯形式が事前にいっしょに取り込まれ、これによってつり込みプロセスにあたりこれらを同時にいっしょに加工処理することができる。これは鋼製先芯が必要なときには該当しない。この場合、前方爪先革をつり込むために最初に必要とされるのは、裏地をつり込むことである。その後、鋼製先芯に処理が加えられ、さらにその後、前方爪先革がつり込まれる。
【0027】
つり込みプロセスは両方の領域についてそれぞれ接着剤により実施される。したがって靴釘による手間のかかる取り付けならびにその後の取り外しは省略される。
【0028】
場合によっては先端と踵領域との間のアッパーに生じる自由開口領域を、側方包み込み機械によって取り付けることができる。
【0029】
ソール組み立てに際して、つり込まれている領域に既製ソールが取り付けられ、もしくは接着される。この段階において、ソール組み立てにおける特殊性が考慮され、たとえばソールに対し後部領域に所定の耐性をもたせるための鋼製ばねなどが考慮され、さらに他の整形外科的指定条件も考慮されるが、ただしこれらの指定条件はやはり医療的側面からまえもって与えられる。
【0030】
ソールプレスによって、ソールとシューズの残りの構造との間の固定的な一体性が保証される。
【0031】
ついで最終組み立てにおいて、調製されたフットベッドが出来上がったシューズに挿入される。
【0032】
種々の専用のソールプレスによって、ソール側でまたは側面であるいはそれらの双方が組み合わさって作用を及ぼす高い押圧力に基づき、ソールとシューズの残りの構造との間の堅牢な結合が保証される。これらの作業ステップは、あらゆる種類の整形外科的シューズに適用される(作業シューズ、タウンシューズ、屋内シューズ、トレーニングシューズ等)。
【0033】
したがって以上要約すると、足のスキャンプロセスおよび足のレントゲン画像のはめ込み合成によりコンピュータは、様々な加工処理機械を制御し従来の慣用の方法で製造されたシューズよりも著しく大きいスケールで個々の状況を考慮するシューズの製造に必要とされるあらゆるデータを供給することができる。
【0034】
したがって本来の製造を開始するために、寸法どおりのシューズに関するすべての特徴ならびに特性が求められる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による製造方法の流れを示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科的オーダーシューズの製造方法において、
負荷の加わった状態で患者の足を3次元で写真によりスキャンし、
スキャンにより求められた測定データをコンピュータに記憶し、
該データを処理して足の3次元画像を生成し、
計算された該3次元画像に患者の足のレントゲン画像を重畳し、
はめ込み合成されたレントゲン画像の事前情報を考慮しながらスキャンにより得られた測定データに従い加工処理機械を制御して、靴型もしくはフットベッド、アッパーを自動的に作成させ、つり込みおよびソール作成を行わせることを特徴とする、
整形外科的オーダーシューズの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
スキャンにより得られた前記測定データを靴型デザインの計算に使用し、次に該靴型デザインをスキャンされた足の寸法と比較し、必要に応じて該靴型デザインを変更することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
スキャンされた前記測定データに基づき、靴型(コンパクトなユニットとしての靴型とフットベッド)とフットベッドを互いに並行して製造することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3記載の方法において、
同時に複数の靴型のペアを1つのブロックから切削加工し、該靴型に識別チップを備え付けることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、
スキャンされた前記測定データに基づき、前記靴型を最初に最も狭い既製ソール形状に合わせて加工し、患者固有の足形状と医学的な指定条件を、足前部領域において3次元プリンタにより作成されたカバーを用いて考慮することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項記載の方法において、
個々のモジュールから組み合わせられた複数の靴型を交換型先端部とともに使用することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法において、
自動つり込み機により爪先領域を、スキャンにより得られた測定データを考慮しながら足前部領域周囲に均等に加わる力によって靴型のまわりに張り巡らせて固定することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法において、
踵領域もつり込み機により作成することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の方法において、
つり込み段階においてまえもって爪先を加工処理することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項記載の方法において、
つり込み過程において機械により靴型のまわりにアッパーを張り巡らせて固定することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項記載の方法において、
靴型もフットベッドも切削加工されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載の方法において、
ソール作成において既製ソールをシューズの残りの構造部とソールプレスにより結合することを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−521836(P2006−521836A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501497(P2006−501497)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000256
【国際公開番号】WO2004/073441
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(505314479)
【Fターム(参考)】