説明

整線用装置、及び、装置のケーブルを整線するための整線構造

【課題】建物の屋根に設置される太陽エネルギー利用装置などの装置について、ケーブル類を整線するための新規な技術について提案する。
【解決手段】太陽電池パネル3・3などの装置に設けられるケーブル5a・5bを整線するための整線用装置50であって、前記ケーブル5a・5bとかかり合う少なくとも二つの整線用部材51・52を有し、前記整線用部材51・52のうち、少なくとも一つの整線用部材51についての、他の整線用部材52に対する位置が、変更可能に構成される、こととする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根などに設置される太陽電池パネルなどの太陽エネルギー利用装置を設置する際において、発電された電力を送電するための電気ケーブルなどの各種ケーブル(線状部材)の配線を整えるための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の屋根などに設置される太陽電池パネルなどの太陽エネルギー利用装置においては、電気ケーブルなどの各種ケーブルが利用されるものであり、屋根の上においてこれらケーブルが配線されることが行われている。例えば、特許文献1においては、複数配列される各太陽電池パネルから引出される接続ケーブルを、結束バンドを用いることで束ねることが開示されている。このように結束バンドを用いることで、配線を整えた状態にする、つまり、整線することによって、屋根の上においてケーブル類が煩雑にならないようにすることが行われている。
【0003】
また、特許文献2に開示されるように、桟部材の上に太陽電池パネルが設置される構造も知られており、このような構造の場合には、結束バンドを桟部材に対して括り付けることで、ケーブル類を桟部材に対して固定するということも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4476071号明細書
【特許文献2】特開2010−261257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した屋根上における整線において、結束バンドは異なる種類のケーブルを束ねる際に用いられるほか、長さが余って弛んだケーブルを折り曲げ、束ねるといった用途にも用いられることがある。屋根上においてケーブルを弛ませたままでは、漏電、接触不良といった問題や、ケーブルへのゴミの滞積による雨漏りの問題といった不具合が生じることが懸念されるためである。
【0006】
しかしながら、結束バンドを使用する整線作業は、結束バンドを結ぶといった細かな手作業となるため、省略が望まれるものであった。特に、屋根の上という高所の作業環境において細かな手作業をする際には、部品を落下させないように注意を払うなど、より慎重になる必要があり、作業者に大きな負担を強いるとともに、作業時間も多く要してしまうことになる。また、作業者による施工のばらつきが生じることも懸念される。
【0007】
そこで、本発明は以上の問題に鑑み、建物の屋根に設置される太陽エネルギー利用装置などの装置について、ケーブル類を整線するための新規な技術について提案するものである。
【0008】
加えて、ケーブル類の弛み(たるみ)の程度は、太陽電池パネルを配置した後に決まるということが考えられる。つまり、「太陽電池パネルを架台などに設置してみないと、ケーブルが弛むのかが判らない」、或いは、「太陽電池パネルを架台などに設置して初めて弛みの程度がわかる」といったことである。
【0009】
しかしながら、ケーブル類は、太陽電池パネルの裏側に隠されるように配置されることになるため、太陽電池パネルを設置した後にケーブルをたぐり寄せ、折り曲げるなどした後に、結束バンドで括るといった作業は、困難を極めることになる。つまり、太陽電池パネルの裏側に手を入れつつ、ケーブルが見えない状態で手探りで作業をする必要があり、作業性の改善が望まれるものであった。
【0010】
そこで、本発明の他の課題は、整線作業の作業性の改善が図られた新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載のごとく、
装置に設けられるケーブルを整線するための整線用装置であって、
前記ケーブルとかかり合う少なくとも二つの整線用部材を有し、
前記整線用部材のうち、少なくとも一つの整線用部材についての、他の整線用部材に対する位置が、
変更可能に構成される、こととするものである。
【0013】
また、請求項2に記載のごとく、
前記整線用部材は、
前記装置を設置するための架台を構成する長尺部材に設けられるものであり、
前記整線用部材は、前記長尺部材に対してスライドすることにより、前記長尺部材に対する位置変更が可能とされる、
こととするものである。
【0014】
また、請求項3に記載のごとく、
前記整線用部材は、
前記装置を設置するための架台を構成する長尺部材に対して着脱可能に設けられる、
こととするものである。
【0015】
また、請求項4に記載のごとく、
前記整線用部材が取付けられる前記長尺部材の下方には、
前記整線用部材を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間が確保される、
こととするものである。
【0016】
また、請求項5に記載のごとく、
請求項1乃至請求項5にいずれか一項に記載される前記整線用部装置を備える、装置を設置するための架台、
とするものである。
【0017】
また、請求項6に記載のごとく、
架台に設置される装置のケーブルを整線するための整線構造であって、
前記ケーブルとかかり合う少なくとも二つの整線用部材を有し、
前記整線用部材のうち、少なくとも一つの整線用部材についての、他の整線用部材に対する位置が、変更可能に構成され、
前記各整線用部材は、前記架台側に設けられる、
こととするものである。
【0018】
また、請求項7に記載のごとく、
前記各整線用部材は、
前記架台を構成する長尺部材に設けられ、
前記長尺部材の下方には、前記整線用部材を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間が確保される、
こととするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
整線用部材の位置を変更させることによって、ケーブルが伝う基点を直線で結ぶ経路(パス)を長くすることができ、これにより、ケーブルの弛みを解消することができる。また、結束バンドを用いる従来の形態と比較して、作業性の改善を図ることが可能となる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明においては、
整線用部材をスライドさせるだけで整線の作業を行うことができ、作業性を良好なものとすることができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明においては、
整線用部材が他の部材に突き当たるなどして、移動が規制される状況になった場合には、一旦、整線用部材を他の部材から取り外し、他の部材などを跨いだ位置に再度取付けたうえで、整線を行うことが可能となる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明においては、
太陽電池パネルなどの装置を設置した状態、つまりは、太陽電池パネルの最終的な固定位置が確定した状態としたうえで、整線用部材を移動させ、整線を行うことが可能となり、ケーブルの弛みを確実に解消することが可能となる。また、設置後の太陽電池パネルなどの装置を動かさずに整線を行うことが可能となり、作業性に優れた構成とすることができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明においては、
架台に設置される太陽電池パネルなどの装置について、ケーブルの整線を行うことが可能となる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明においては、
整線用部材の位置を変更させることによって、ケーブルが伝う基点を直線で結ぶ経路(パス)を長くすることができ、これにより、ケーブルの弛みを解消することができる。また、結束バンドを用いる従来の形態と比較して、作業性の改善が図られることが可能となる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明においては、
太陽電池パネルなどの装置を設置した状態、つまりは、太陽電池パネルの最終的な固定位置が確定した状態としたうえで、整線用部材を移動させ、整線を行うことが可能となり、ケーブルの弛みを確実に解消することが可能となる。また、設置後の太陽電池パネルなどの装置を動かさずに整線を行うことが可能となり、作業性に優れた構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の全体概要を示す図。
【図2】設置後における支持部材と、縦桟部材と、横桟部材の状態について示す図。
【図3】(a)は、軒側における太陽電池パネルの納まりについて示す図。(b)は、棟側における太陽電池パネルの納まりについて示す図。
【図4】(a)は、ケーブルが弛んだ状態について示す図。(b)は、ケーブルを整線した状態について示す図。
【図5】太陽電池パネルの施工の一形態について説明する図。
【図6】整線用部材の構造について示す図。
【図7】(a)は、整線用部材の取付について説明する図。(b)は、整線用部材の取り外し、移動について説明する図。
【図8】横桟部材と屋根材の間に形成する隙間について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施形態の全体概要を示すものである。
図1に示すごとく、本発明は、屋根1の上に太陽エネルギー利用装置2が設置されるものなどについて適用されるものであり、実施形態として、複数の太陽電池パネル3・3・・・が配置されるものとしている。
また、屋根1に向かって奥行き方向を長手方向として配置される縦桟部材10や、屋根1に向かって横方向を長手方向として配置される横桟部材20などから架台4が構成され、この架台4に対し太陽電池パネル3・3・・・が載置固定されるものとしている。
なお、屋根の上に設置される太陽エネルギー利用装置としては、太陽電池パネルのほかにも、太陽光、太陽熱を利用する各種装置(例えば太陽熱温水器など)が想定される。
【0029】
また、図1に示すごとく、縦桟部材10・10は互いに間隔を開けて複数本が配置され、また、横桟部材20・20も互いに間隔を開けて複数本が配置される。そして、各縦桟部材10と横桟部材20は、互いに直交するように配置され、井桁状の架台4が構成されることとなっている。また、屋根1の屋根材の複数箇所には支持部材30・30が設置され、この支持部材30・30に対して縦桟部材10が固定され、この縦桟部材10の上に横桟部材20が固定されることとなっている。
【0030】
また、図2は、設置後における支持部材30と、縦桟部材10と、横桟部材20の状態について示すものである。屋根材1Aの上には、ボルトなど締結部材により、支持部材30が固定される。また、支持部材30には、ボルトなどの締結部材により、縦桟部材10が固定される。また、縦桟部材10の上面には、横桟部材20が載置されるとともに、横桟部材20が固定用部材71・72により縦桟部材10に固定される。また、横桟部材20には、太陽電池パネル3・3の端部下側が載置される。また、横桟部材20の上部には、キャップ材80が取付けられ、図における左側の太陽電池パネル3の端部上側は、キャップ材80によって押さえ込まれる。また、図における右側の太陽電池パネル3の端部上側は、横桟部材20に設けた押さえ片部81によって押さえ込まれる。以上のようにして、横桟部材20に対する太陽電池パネル3・3の固定がなされる。
【0031】
また、図2に示すごとく、横桟部材20には、太陽電池パネル3の端部が差し込まれ得る溝部25であって、側方が開放される略コ字状の溝部25が形成されるようになっている。これにより、太陽電池パネル3を設置する際には、太陽電池パネル3を傾けた状態で太陽電池パネル3の端部を溝部25に挿入するとともに、横面部20eに仮置きしたのち、太陽電池パネル3を倒すことによって太陽電池パネル3を設置することが可能となっている。なお、この実施形態では、押さえ片部81と横面部20eの間に、溝部25が形成されることとなっている。
【0032】
なお、図1及び図2に示す実施形態のほか、支持部材30・30に横桟部材20が固定され、この横桟部材20の上に縦桟部材10が固定されることとしてもよい。また、実施形態の説明において、「縦」「横」の用語は、位置関係の理解をし易いために便宜的に用いるものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、屋根1については、勾配を有する傾斜屋根とするほか、勾配を有しない平坦な屋根や、円弧状をなす屋根など、あらゆる態様の屋根が想定されるものである。また、支持部材30については、屋根材1Aの上に固定されるほか、他の金具や、架台、さらには、コンクリート表面など、他の部位に固定されることも想定される。
【0033】
また、図2は、縦桟部材10の長手方向中途部の箇所における横桟部材20の部位について示すものであるが、図3(a)に示すように、軒側においても(傾斜屋根の場合)、図2に示される横桟部材20と同様の構成とする横桟部材91を使用することにより、軒側における太陽電池パネル3の固定を実現することができる。この横桟部材91は、傾斜面91aを有する構成として水切りを行いやすくする構成としている。また、同様に、図3(b)に示すように、棟側においては(傾斜屋根の場合)、図2に示される横桟部材20と共通のものを使用するとともに、化粧材92を併用することで、棟側における太陽電池パネル3の固定を実現することができる。このように、縦桟部材10の長手方向における各部位において、各部位に適した横桟部材の実施形態とすることが可能である。
【0034】
次に、ケーブル類の整線をするための構造について説明する。
図4(a)(b)は、ケーブル5a・5bの弛み(たるみ)を解消して整線をするための整線構造の概要について示すものである。
まず、図4(a)に示すごとく、横方向において隣り合う太陽電池パネル3・3からは、それぞれ、陽極側のケーブル5a・5aと、陰極側のケーブル5b・5bが引き出されており、隣り合う太陽電池パネル3・3のケーブル5a・5bを接続することによって、太陽電池パネル3・3の間において電気的に直列の接続がなされ、ケーブル5a・5bを通じて発電された電力が出力されるようになっている。
【0035】
また、図4(a)の状態においては、各ケーブル5a・5bは弛んだ状態にあり、この弛んだ状態にあるケーブル5a・5bを、図4(b)に示すごとく、整線用装置50によって整線することができるようにしている。この整線用装置50は、ケーブルとかかり合う少なくとも二つの整線用部材51・52を有し、少なくとも一つの整線用部材(本実施例では二つの整線用部材51・52)が、桟部材(横桟部材20)に対し、その長手方向に対して移動可能に設けられることとしている。
【0036】
なお、整線用部材51・52について、「ケーブルとかかり合う」とは、「整線用部材とケーブルの一部が接触し、ケーブルを引っ張る荷重を付与させることができること」をいうものである。例えば、図4(b)においては、整線用部材51が図において左側に移動した際に、ケーブル5aが整線用部材51に引っ張られる状況をつくり出せることをいうものである。また、図4(b)において、整線用部材52が横桟部材20に対して移動できずに固定される構成とすることも可能である。この場合においても、整線用部材51が移動してケーブル5aが引っ張られることに伴い、整線用部材52がケーブル5bを引っ張ることとなり、整線用部材52がケーブル5bとかかわり合うこととなるものである。
【0037】
また、図4(a)に示すごとく、ケーブル5a・5bが伝う経路(パス)は、ケーブル5aのパネル側端部の位置となる基点3ak、整線用部材51の位置の基点51k、整線用部材52の位置の基点52k、もう一方のケーブル5bのパネル側端部の位置となる基点3bk、を結ぶ経路となるが、この各基点を直線で結ぶ経路の距離は、図4(a)の状態では距離L1(La・Lb・Lcの合計)となる。
【0038】
一方で、図4(b)のように整線用部材51・52を離すことによって、基点51k・52kをそれぞれ、基点51n・52nに変更することができ、距離L1よりも長い距離L2(Ld・Le・Lf)の合計)を実現することができる。なお、距離L1よりも距離L2が長くなる理由としては、基点3akと基点51kを直線で結ぶ経路よりも、基点3akと基点51nと基点51kを直線で結ぶ経路の方が長くなるためであり、同様に、基点3akと基点51kを直線で結ぶ経路よりも、基点3akと基点51nと基点51kを直線で結ぶ経路の方が長くなるためである。
【0039】
以上のようにして、図4(b)に示すごとく、二つの整線用部材51・52の間の距離を離すことによれば、接続された一連のケーブル5a・5bが伝う基点を直線で結ぶ経路(パス)を長くすることができ、これにより、ケーブル5a・5bの弛みを解消することができ、屋根上においてケーブル5a・5bの整線を行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、二つの整線用部材51・52がいずれも移動可能とすることとしたが、少なくとも一方の整線用部材が移動可能であれば、前述の距離L2(図4(b))を大きくすることが可能であるため、一方の整線用部材を固定し、他方の整線用部材を移動可能とする実施形態も考えられる。
【0041】
また、図4(a)(b)の実施形態では、横方向に隣り合う太陽電池パネル3・3同士をケーブル5a・5bにて直列に接続する構成であるため、横桟部材20に対して整線用装置50を配置することとしたが、縦方向に隣り合う太陽電池パネル同士をケーブルにて接続する場合においては、縦桟部材に対して整線用装置を配置する実施形態とすることが考えられる。なお、この場合、横桟部材の上に縦桟部材を設置する実施形態となる。
【0042】
また、図5に示すごとく、施工の作業形態において、太陽電池パネル3の一端側を横桟部材20に載置して傾斜させた状態(開いた状態)で、太陽電池パネル3の裏側にあるケーブル5aの配線、整線を行う作業形態を実施する場合には、図5の例の場合では、ケーブル5aについて、距離L3に比例する長さの余裕を持たせることが前提となり、仮に整線用装置50(図4(b))を設けない場合には、この距離L3に比例する長さ分だけケーブル5aが弛むことが想定される。このことから、図5に示される施工の作業形態が採用される場合においても、弛んだケーブル5aを整線するために上述の整線用装置50(図4(b))を設けることは有効なものとなる。
【0043】
次に、整線用装置の具体的構造の実施例について説明する。
図6は、整線用部材51の構造について示す図である。
図6に示すごとく、整線用部材51は、断面視において上側が開放される略コ字状のケーブル通し部53と、横桟部材20に取付けるための係合部54とを有し、横桟部材20の長手方向と同じ方向に長いトレイ状の部材として構成されている。なお、この図6に示すようなトレイ状の部材とする以外の実施形態も考えられ、例えば、リング状の部材、C字状(フック状)の部材、など、ケーブルとかかわり合うことができる形態であれば、整線用部材の構成については特に限定されるものではない。
【0044】
また、図6に示すごとく、ケーブル通し部53は、底面部53aと、底面部53aの両側端部から立ち上がる縦面部53b・53cと、一方の縦面部53bの上端部から他方の縦面部53cに向かって延出される上面部53dを有しており、これらの各部位によって囲まれる空間によってケーブル5aが通される空間53eが形成されるようになっている。また、上面部53dと縦面部53cの間には隙間53fが確保され、この隙間53fからケーブル5aを挿入することができるようになっている。なお、この隙間53f、及び、空間53eは、図4に示されるケーブル5a・5bのコネクタ部6a・6bを挿通させることができる大きさとすることが好ましい。
【0045】
また、図6に示すごとく、係合部54は、ケーブル通し部53の縦面部53cの下部において横桟部材20側に突出される下側係合片部54aと、同じく、縦面部53cの上部において横桟部材20側に突出される上側係合片部54bとを有している。この各係合片部54a・54bは、横桟部材20の側部に設けられる取付用溝部21であって、横側が開放される略コ字状の取付用溝部21に挿入、取付されるようになっている。
【0046】
また、図6に示すごとく、横桟部材20の取付用溝部21は、横桟部材20の側部の縦面部20bにおいて、その下端、及び、上端から、それぞれ下側面部21a、上側面部21bを突出させることで構成されている。また、下側面部21a、上側面部21bの端部には、それぞれ突条部22a・22bが設けられており、この突条部22a・22bに対し、整線用部材51の各係合片部54a・54bの端部に設けた突条部54c・54dが係合するようになっている。
【0047】
また、図7(a)(b)は、整線用部材51の着脱について説明する図である。
図7(a)に示すごとく、整線用部材51は、横桟部材20に対して着脱可能に設けられることが好ましい。即ち、上述したように、横桟部材20の取付用溝部21に対し、整線用部材51の係合部54を挿入する構成とするものであり、本実施形態では、取付の際には、下側係合片部54aの突条部54cを下側面部21aの突条部22aに乗り掛からせるとともに、整線用部材51を回動させることで、上側係合片部54bを取付用溝部21に挿入し、その先端の突条部54dを上側面部21bの突条部22bと係合させるものである。
【0048】
そして、図6に示すごとく、横桟部材20の取付用溝部21に取付けられた整線用部材51は、その係合片部54a・54bが取付用溝部21に挟持された状態となるため、整線用部材51を意図的に移動させようとする力が付与されない限りは、横桟部材20に対する取付位置を維持できるようになっている。一方で、整線用部材51を意図的に移動させる際には、整線用部材51に力を加えて移動させることができるようになっている。なお、整線作業を終了させた後は、ケーブルを動かす大きな力が作用することがないものと考えられるため、整線用部材51は横桟部材20に対して強固に位置固定される必要は無く、作業員が力を加えた際に整線用部材51を移動できる程度に、整線用部材51が横桟部材20に設けられることとすることが好ましい。また、整線用部材51の任意の位置で固定、固定解除するための手段を、別途設けるなどしてもよい。
【0049】
また、図7(b)に示すごとく、整線用部材51は、横桟部材20から取り外し/取り付け可能(着脱可能)に構成される。これにより、整線用部材51を横桟部材20に対して移動させた際に、整線用部材51が縦桟部材10などの他の部材に突き当たるなどして、移動が規制される状況になった場合には、一旦、整線用部材51を横桟部材20から取り外し、縦桟部材10などを跨いだ位置に再度取付けたうえで、整線を行うことが可能となる。この整線用部材51の取り外しは、図7(a)における上側係合片部54bを上から押して撓ませ、その先端の突条部54dについて、取付用溝部21の突条部22bに対する係合を解除し、整線用部材51を回動させることで行うことができる。
【0050】
さらに、図8に示すごとく、整線用部材51が取付けられる横桟部材20と、屋根材1Aの間には、整線用部材51を移動(スライド)させるための手段を挿通可能とする隙間7が確保されることとすることが好ましい。本実施形態では、縦桟部材10の上に横桟部材20が設置されることとしているため、屋根材1Aから横桟部材20までの高さ寸法H1に対応する幅を有する隙間7が形成されることになり、この隙間7に手8を挿入することで、直接的に整線用部材51に触れて、整線用部材51を移動させることが可能となっている。
【0051】
そして、図8に示すごとく、このような隙間7を確保することによれば、太陽電池パネル3を設置した状態、つまりは、太陽電池パネル3の最終的な固定位置が確定した状態としたうえで、整線用部材51を移動させ、整線を行うことが可能となり、ケーブルの弛みを確実に解消することが可能となる。これは、仮に、太陽電池パネル3の最終的な固定位置が確定する前に整線をした場合には、太陽電池パネル3の位置がずれることで再度ケーブルに弛みが生じることが懸念されるが、太陽電池パネル3の最終的な固定位置が確定した後に整線を行えば、このような懸念が無くなるためである。
【0052】
なお、隙間7が小さく、手を入れることが困難な場合には、工具などを適宜用いることで、整線用部材51を動かすことを可能としてもよい。また、このほかにも、整線用部材51から操作用部位を隙間7を介して延出させ、この操作用部位を摘むなどして整線用部材51を移動させる実施態様なども考えられる。
【0053】
以上が本発明の実施形態であり、本発明を以下の内容とすることができる。
即ち、図1及び図4(a)(b)に示すごとく、
太陽電池パネル3・3などの装置に設けられるケーブル5a・5bを整線するための整線用装置50であって、
前記ケーブル5a・5bとかかり合う少なくとも二つの整線用部材51・52を有し、
前記整線用部材51・52のうち、
少なくとも一つの整線用部材51についての、他の整線用部材52に対する位置が、変更可能に構成される、
こととするものである。
【0054】
これにより、図4(a)(b)に示すごとく、整線用部材51・52の位置を変更させることによって、ケーブル5a・5bが伝う基点を直線で結ぶ経路(パス)を長くすることができ、これにより、ケーブル5a・5bの弛みを解消することができる。また、結束バンドを用いる従来の形態と比較して、作業性の改善が図られることが可能となる。
【0055】
また、図1に示すごとく、
前記整線用部材51は、前記太陽電池パネル3・3などの装置を設置するための架台4を構成する長尺部材としての横桟部材20に設けられるものであり、
前記整線用部材51は、前記横桟部材20に対してスライドすることにより、前記横桟部材20に対する位置変更が可能とされる、
こととするものである。
【0056】
これにより、整線用部材51をスライドさせるだけで整線の作業を行うことができ、作業性を良好なものとすることができる。
【0057】
また、図6に示すごとく、
前記整線用部材51は、
前記太陽電池パネル3・3などの装置を設置するための架台4を構成する長尺部材としての横桟部材20に設けられる、
こととするものである。
【0058】
これにより、整線用部材51が他の部材(縦桟部材10)に突き当たるなどして、移動が規制される状況になった場合には、一旦、整線用部材51を他の部材から取り外し、他の部材などを跨いだ位置に再度取付けたうえで、整線を行うことが可能となる。
【0059】
また、図8に示すごとく、
前記整線用部材51が取付けられる前記長尺部材としての横桟部材20の下方には、
前記整線用部材51を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間7が確保される、こととするものである。
【0060】
これにより、太陽電池パネル3などの装置を設置した状態、つまりは、太陽電池パネル3の最終的な固定位置が確定した状態としたうえで、整線用部材51を移動させ、整線を行うことが可能となり、ケーブルの弛みを確実に解消することが可能となる。また、設置後の太陽電池パネル3などの装置を動かさずに整線を行うことが可能となり、作業性に優れた構成とすることができる。
【0061】
また、図1及び図4(a)(b)に示すごとく、
前記整線用部装置50を備える、太陽電池パネル3・3などの装置を設置するための架台4、とするものである。
【0062】
これにより、架台4に設置される太陽電池パネル3・3などの装置について、ケーブル5a・5bの整線を行うことが可能となる。
【0063】
また、図1及び図4(a)(b)に示すごとく、
架台4に設置される太陽エネルギー利用装置2のケーブル5a・5bを整線するための整線構造であって、
前記ケーブル5a・5bとかかり合う少なくとも二つの整線用部材51・52を有し、
前記整線用部材51・52のうち、
少なくとも一つの整線用部材51についての、他の整線用部材52に対する位置が、変更可能に構成され、
前記各整線用部材51・52は、前記架台4側に設けられる、
こととするものである。
【0064】
これにより、図4(a)(b)に示すごとく、整線用部材51・52の位置を変更させることによって、ケーブル5a・5bが伝う基点を直線で結ぶ経路(パス)を長くすることができ、これにより、ケーブル5a・5bの弛みを解消することができる。また、結束バンドを用いる従来の形態と比較して、作業性の改善が図られることが可能となる。
【0065】
また、図1及び図4(a)(b)に示すごとく、
前記各整線用部材51・52は、前記架台4を構成する長尺部材である横桟部材20に設けられ、
前記長尺部材としての横桟部材20の下方には、
前記整線用部材51を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間7が確保される、こととするものである。
【0066】
これにより、太陽電池パネル3などの装置を設置した状態、つまりは、太陽電池パネル3の最終的な固定位置が確定した状態としたうえで、整線用部材51を移動させ、整線を行うことが可能となり、ケーブルの弛みを確実に解消することが可能となる。また、設置後の太陽電池パネル3などの装置を動かさずに整線を行うことが可能となり、作業性に優れた構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の構成は、建物の屋根などに設置される太陽電池パネルなどの太陽エネルギー利用装置において、ケーブル類を整線するための手段として幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 屋根
1A 屋根材
2 太陽エネルギー利用装置
3 太陽電池パネル
4 架台
5a ケーブル
5b ケーブル
7 隙間
10 縦桟部材
20 横桟部材
21 取付用溝部
30 支持部材
50 整線用装置
51 整線用部材
52 整線用部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に設けられるケーブルを整線するための整線用装置であって、
前記ケーブルとかかり合う少なくとも二つの整線用部材を有し、
前記整線用部材のうち、少なくとも一つの整線用部材についての、他の整線用部材に対する位置が、
変更可能に構成される、
整線用装置。
【請求項2】
前記整線用部材は、
前記装置を設置するための架台を構成する長尺部材に設けられるものであり、
前記整線用部材は、前記長尺部材に対してスライドすることにより、前記長尺部材に対する位置変更が可能とされる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の整線用装置。
【請求項3】
前記整線用部材は、
前記装置を設置するための架台を構成する長尺部材に対して着脱可能に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の整線用装置。
【請求項4】
前記整線用部材が取付けられる前記長尺部材の下方には、
前記整線用部材を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間が確保される、
ことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の整線用装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項5にいずれか一項に記載される前記整線用部装置を備える、装置を設置するための架台。
【請求項6】
架台に設置される装置のケーブルを整線するための整線構造であって、
前記ケーブルとかかり合う少なくとも二つの整線用部材を有し、
前記整線用部材のうち、少なくとも一つの整線用部材についての、他の整線用部材に対する位置が、変更可能に構成され、
前記各整線用部材は、前記架台側に設けられる、
装置のケーブルを整線するための整線構造。
【請求項7】
前記各整線用部材は、
前記架台を構成する長尺部材に設けられ、
前記長尺部材の下方には、前記整線用部材を位置変更させるための手段を挿通可能とする隙間が確保される、
請求項6に記載の装置のケーブルを整線するための整線構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−149401(P2012−149401A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7467(P2011−7467)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(510285791)LIXILエナジー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】