説明

敷物の裏張り材、敷物及び自動車用マット

【課題】軽く、吸音性に優れ、しかも滑り難い敷物の裏張り材、それを用いた敷物及び自動車用マットを提供する。
【解決手段】モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸63を用いて編成されたパイル編物であって、前記ループ状パイル糸63がカットされており、そのカット端63aが敷物51を敷設する床面を係止する係止部として突出するパイル編物又はパイル織物61と、前記パイル編物又はパイル織物61に付設される発泡樹脂から構成され、前記パイル編物又はパイル織物61のループ状パイル糸63の基部を固定し支持する支持層62とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなどに適用される敷物の裏張り材、敷物及び自動車用マットに関する。詳細には軽く、吸音性に優れると共に優れたズレ防止機能を有する敷物の裏張り材、敷物及び自動車用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車床面や建物床面に敷設されるカーペット1の多くは、図7に示すように、フェルトや不織布などの繊維シート2にパイル糸3を打ち込むと共に、前記パイル糸3の抜け止めのためにプレコート層4を設けた繊維基材5と、この繊維基材5裏面に形成したバッキング6とから構成されていた。
【0003】
ところが近年、カーペット、特には自動車床面に敷設されるカーペットにおいては、自動車のハイブリッド化に伴い、軽量化、低コスト化が求められるようになってきている。その他の建物などの分野においても、省資源、省エネルギー化の流れの中で、カーペットに対する軽量化、低コスト化の克服は、大変に重要な課題となっている。
【0004】
一方、快適性の要求の高まりの中で、自動車内や建物内の静粛性に対する要求もあり、自動車床面や建物床面に敷設されるカーペットに対しても、そのような性能が求められるようになった。
【0005】
しかしながら従来のカーペット1にあっては、繊維基材5裏面に形成されているバッキング6が、ポリ塩化ビニルなどの未発砲の合成樹脂層からなるので重く、しかも該バッキング6は音の透過を遮断する遮音層として作用するので、自動車内や建物内に伝播まはた発生して当該カーペット1に衝突した騒音は、前記バッキング6に跳ね返されてしまい、室内に反響してしまうという欠点があった。
【0006】
そこで本発明者は、このような事情に鑑み、軽く、しかも吸音性に優れるカーペットを特許文献1において提案している。このカーペットは、繊維基材の裏面側に繊維質シートを樹脂成分で固めた繊維質バッキングを形成したことを特徴とするものである(特許文献1参照)。
【0007】
ところがこのカーペットは、裏面が繊維質バッキングからなるので突掛かりがなく滑りやすいという不具合があった。
【0008】
そこで、本発明者は、軽く、吸音性に優れ、しかも滑り難いカーペットを提案している(特許文献2)、図8に示すように、このカーペット11は、表面と裏面とを有する経編み緯糸挿入編物の前記表面と裏面とを接続するループ状経糸をカットした編物12が繊維質バッキング13裏面側に一体化されており、前記編物12のループ状経糸14のカット端14aが、該カーペットを敷設する床面を係止する係止部として突出していることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明者は、このカーペット1において、熱接着性繊維16を構成繊維として含む繊維質シート15を編物12に積層してこれらを絡合処理することで、繊維質シート15の熱接着性繊維16を編物22に絡み合わせて一体化し、その上で加熱処理することで繊維質シート15に含まれる熱接着性繊維16が熱融着して樹脂成分となり繊維質シート15が固められると共に、編物12と絡み合う熱接着性繊維16も同様に熱融着して樹脂成分となり、両者の一体性を高め、さらに編物12のカットされたループ状経糸14も樹脂成分でその基部(根本部分)が固められ、経糸14のカット端14aの強度も高くなり、床面への食い込み性、ズレ防止性も向上するようにしたものも提案している。
【0010】
同様な構造を有する敷物がその後も多数提案されている(例えば特許文献3及び4参照)。すなわち図9に示すように、ループパイルを有するネット状ラッセル編地22からなり、前記ラッセル編地の前記ループパイルを頂上近傍でカットし、そのカット端が該敷物21を敷設する床面を係止する係止部として突出している裏張り材22を敷物21の裏面に取り付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−019067号公報
【特許文献2】特開2003−102611号公報
【特許文献3】特開2006−175126号公報
【特許文献4】特開2009−247662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、先に提案した特許文献2に記載の軽く、吸音性に優れ、しかも滑り難いカーペットにおけるズレ防止性をさらに改良したものであり、軽く、吸音性に優れ、しかも滑り難い敷物の裏張り材、それを用いた敷物及び自動車用マットを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物であって、前記ループ状パイル糸がカットされており、そのカット端が敷物を敷設する床面を係止する係止部として突出するパイル編物又はパイル織物と、
前記パイル編物又はパイル織物に付設される発泡樹脂から構成され、前記パイル編物又はパイル織物のループ状パイル糸の基部を固定し支持する支持層とからなることを特徴とする敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0014】
請求項2に記載の発明は、支持層のパイル編物又はパイル織物が付設されない面には繊維層が積層され、該繊維層側からパイル編物又はパイル織物側へニードリング処理することで、前記繊維層が支持層を介して前記パイル編物又はパイル織物に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0015】
請求項3に記載の発明は、支持層が、繊維、羽毛、不織布、織物及び編物の少なくとも1種を含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0016】
請求項4に記載の発明は、支持層が、2枚の不織布間に羽毛層を挟んで一体化した複合シートを含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項3に記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0017】
請求項5に記載の発明は、支持層が、導電性材料を含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項3に記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0018】
請求項6に記載の発明は、導電性材料が、カーボン粉、カーボン繊維、放電紙及びカーボンナノファイバー不織布の少なくとも1種からなることを特徴とする請求項5に記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0019】
請求項7に記載の発明は、支持層が、連続気泡と独立気泡が20%:80%〜80%〜205の割合で混在する発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0020】
請求項8に記載の発明は、パイル編物又はパイル織物のループ状パイル糸表面に導電性材料からなる導電層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の敷物の裏張り材をその要旨とした。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の裏張り材を用いた敷物をその要旨とした。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の裏張り材と基布にパイル糸を打ち込んでなる表装材とが積層一体化された請求項9に記載の敷物をその要旨とした。
【0023】
請求項11に記載の発明は、基布の裏面に放電紙が積層されていると共にパイル糸に放電機能を有する導電繊維が含まれていることを特徴とする請求項9又は10に記載の敷物をその要旨とした。
【0024】
請求項12に記載の発明は、請求項9〜11のいずれかに記載の敷物からなることを特徴とする自動車用マットをその要旨とした。
【0025】
請求項13に記載の発明は、該自動車用マットを自動車床面に付設したときに、裏張り材のパイル編物又はパイル織物におけるループ状パイル糸のカット端が自動車の進行方向に向かって斜めに傾斜して突出していることを特徴とする請求項12に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0026】
請求項14に記載の発明は、該自動車用マットを自動車床面に付設したときに、裏張り材のパイル編物又はパイル織物におけるループ状パイル糸のカット端が自動車の進行方向に向かう程に高密度となるように設けられていることを特徴とする請求項12又は13に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0027】
本発明の敷物の裏張り材にあっては、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物であって、前記ループ状パイル糸がカットされており、そのカット端が敷物を敷設する床面を係止する係止部として突出するパイル編物又はパイル織物と、前記パイル編物又はパイル織物に付設される発泡樹脂から構成され、前記パイル編物又はパイル織物のループ状パイル糸の基部を固定し支持する支持層とからなるので、該裏張り材を取り付けた敷物を床面(カーペット)に敷設し、該敷物に荷重が加わったとき、前記パイル編物又はパイル織物のカットされたループ状パイル糸のカット端が床面(カーペット)内部に入り込んで、前記カット端が床面(カーペット)を係止することで、該敷物のズレを確実に防止するようになっている。
【0028】
また、例えば特許文献3〜4に記載されたカーペット又は裏張り材の場合、敷物に荷重が加わったとき、その荷重がそのままループ状経糸24のカット端24aに伝わり、該カット端24aが床面(カーペット)内部に入り込み、敷物のズレを防止するのであるが、そのように作用するのは、荷重が加わる部分に限定され、しかも荷重が加わる方向や大きさによってはカット端24aが床面(カーペット)内部に入り込まない場合もあることから、敷物のズレをより確実に防止するという技術的課題があった。
【0029】
これに対し、本発明の敷物の裏張り材にあっては、敷物に荷重が加わったとき、前記パイル編物又はパイル織物の前記ループ状パイル糸の基部を固定し支持する発泡樹脂から構成される支持層が弾性変形し、その支持層の復元力により前記ループ状パイル糸のカット端が床面(カーペット)内部に入り込むことになることから、その作用は荷重が加わる部分の周囲にまで拡がり、また、荷重が加わる方向や大きさによっても、敷物に加わる荷重で弾性変形した支持層の復元力によってカット端が確実に床面(カーペット)内部に入り込み、より効果的に敷物のズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の敷物の表面側から見た斜視図。
【図2】本発明の敷物の裏面側から見た斜視図。
【図3】本発明の敷物の要部拡大断面図。
【図4】図2に示す裏張り材の要部を拡大した平面図。
【図5】本発明の敷物を自動車用マットに適用したときの好ましい形態を断面図。
【図6】本発明の敷物を自動車用マットに適用したときの別の好ましい形態であって、該マットの裏面を平面図。
【図7】従来のカーペットを示す要部拡大断面図。
【図8】従来のカーペットの別例を示す要部拡大断面図。
【図9】従来のカーペットのさらに別の例を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の敷物の裏張り材、それを用いた敷物及び自動車用マットを図面に従ってさらに詳しく説明する。尚、以下は、敷物を説明する過程で裏貼り材、その用途の一つである自動車用マットについて説明する。本発明の敷物は、例えば自動車や列車、航空機などの乗り物の床面に敷設されるカーペットやマット、建物の室内や廊下の床面に敷設されるカーペットやマット、コンピュータのオペレーション用チェアマット、部屋の出入口に敷設される床面用マット、エレベータ内やエレベータホールの開閉扉前に敷設される床面用マット、玄関マットなど広範な用途に適用することができる。
【0032】
図1〜図4に示すように、本発明の敷物51は、基布にパイル糸を打ち込んでなる表装材52と、表装材52の裏面に取り付けた裏貼り材53とからなる。表装材52は、不織布、紙、布、フェルトあるいはこれらの複合物からなる基布54にパイル糸55を所定のボリュームで略U字状となるように打ち込み、抜け止めのためのプレコート56を施したものである。尚、本発明における基布54は、パイル糸55を打ち込まない基布54のみからなる形態を採ることもできる。
【0033】
また、表装材52を構成する基布54には、例えばチタン、セリウム、亜鉛、銅といった光触媒粒子表面をフッ素系多孔質層で被覆した抗菌性防臭粒子を繊維表面に付着させた抗菌性防臭繊維を含ませたもの、あるいは従来公知の抗菌剤をバインダーと共にシートの構成繊維表面に塗布または散布して付着させたものを用いることができる。この場合、表装材52は抗菌性を有するようになり、室内の悪臭を効率よく吸収しこれを分解または吸着除去するようになる。
【0034】
また、表装材52を構成する基布54には、図3に示すように導電性繊維を含んでいて静電気の空中放電機能を有する放電紙56を積層すると共に、これら放電紙56と基布54の積層物に導電性繊維を含むパイル糸55aを略U字状となるように打ち込んでなるものを用いることもできる。
【0035】
この場合、人が該敷物51に接触したとき、人体に帯電した静電気をパイル糸55aに含まれる導電性繊維が瞬時に敷物51側へと導き、敷物51内の放電紙56によって空中放電されるようになる。また、静電気の一部は、放電紙56を経由してパイル糸55aに含まれる導電性繊維を通じて空中放電されるようになる。
【0036】
尚、上記放電紙56及びパイル糸55aに含まれる導電性繊維としては、特に限定されず、例えば炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などを用いることができる。
【0037】
裏張り材53は、本発明の最大の特徴をなすものであり、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物61と支持層62とからなる。モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物61としては、例えばモノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成された経編(ラッセル編地)であって、前記ループ状パイル糸をカットした編物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成された表面と裏面とを有する経編緯糸入編物(ダブルラッセル編地)であって、前記表面と裏面とを接続するループ状パイル糸をカットした編物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて織成された二重織物の表織物と裏織物とを結合するループ状パイル糸をカットして分離した表織物又は裏織物、モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて織成されたパイル織物のループ状パイル糸をカットした織物を挙げることができる。
【0038】
パイル編物又はパイル織物61のカットされたループ状パイル糸63のカット端63aは、パイル編物又はパイル織物61から突出し、例えば図5に示すように該51敷物を床面(カーペット)上に敷設し、これに荷重が加わったときに、前記カット端63aが床面(カーペット)70内部に入り込み、これを係止する係止部として作用するようになっている。
【0039】
尚、パイル編物又はパイル織物61に用いるループ状パイル糸63として、太く硬めのモノフィラメントで構成されている。具体的にはポリエチレンモノフィラメント、ポリエステルモノフィラメント、ポリアミドモノフィラメントなどが望ましく、その繊度は100デニール以上、好ましくは300デニール以上である。また、1本限らず、複数本のモノフィラメントを束ねたものをループ状パイル糸63として用いることもできる。
【0040】
また、パイル編物又はパイル織物61の目の形態は任意であるが、例えば図1〜図4に示すように亀甲状、菱形状、角状などのネット状が好ましい。
【0041】
また、パイル編物又はパイル織物61のループ状パイル糸63表面には導電性材料からなる導電層を形成することもできる。例えば導電層は、カーボン粉や金属粉などの導電性粉末を塗料に混合したものをループ状パイル糸63表面にコーティングするなどして形成することができる。
【0042】
支持層62は発泡樹脂から構成されたものであり、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−酢ビ共重合体、ポリメタクリル酸メチル、フェノール、ユリアなどを素材とし、これらを熱分解型発泡剤を用いた気泡発生手段や揮発性溶剤を用いた気泡発生手段、あるいは高圧下で不活性ガスを高分子中に吸収させ、常圧で発泡させる気泡発生手段など従来公知の気泡発生手段を用いて発泡成形することにより得られるものを挙げることができる。図示の例では、発泡ポリウレタンを用いた支持層を採用した。
【0043】
支持層62を構成する発泡樹脂の発泡倍率としては任意であるが、好ましくは5〜50倍、より好ましくは10〜30倍である。また、発泡樹脂の気泡構造としても特に限定されないが、連続気泡と独立気泡が20%:80%〜80%:20%の割合で混在するものが好ましい。すなわち発泡樹脂中の連続気泡構造の割合が多い場合、吸音性はアップするがへたり易くなり、独立気泡が構造の割合が多い場合には、弾性力はアップするが吸音性能は小さくなるため、用途や使用状態に合わせて適宜選択するとよい。図示の例では連続気泡と独立気泡の割合を50%:50%とした。
【0044】
この支持層62が接着剤を介して前述のパイル編物又はパイル織物61に付設されているのである。これにより、敷物に荷重が加わったとき、前記パイル編物又はパイル織物61の前記ループ状パイル糸63の基部を固定し支持する発泡樹脂から構成される支持層62が弾性変形し、その支持層63の復元力により前記ループ状パイル糸63のカット端63aが床面(カーペット)内部に入り込むことになることから、その作用は荷重が加わる部分の周囲にまで拡がり、また、荷重が加わる方向や大きさによっても、敷物に加わる荷重で弾性変形した支持層の復元力によってカット端63aが確実に床面(カーペット)内部に入り込み、より効果的に敷物のズレを防止することができる。尚、支持層62をパイル編物又はパイル織物61に付設する手段としては接着剤に限らず、例えば支持層62の表層部分に熱融着性樹脂からなる層を設けておき、この層を熱融着させることでパイル編物又はパイル織物61に付設するなどの方法を採ることもできる。
【0045】
またこの支持層62には、繊維、羽毛、不織布、織物及び編物の少なくとも1種を含ませることができる。これらを含ませることで該支持層の強度が強化されることになる。尚、その含有量が余りに多くなると、弾性が低下するために、用途や使用状態、床面(カーペット)の種類に合わせて適宜選択するとよい。
【0046】
また支持層62には、2枚の不織布間に羽毛層を挟んで一体化した複合シートを含む発泡樹脂層を用いることもできる。この場合、羽毛層自体が軽量であり、この羽毛層を2枚の不織布間に羽毛層を挟んで一体化していることから、該支持層62の強度も高く、この結果、強度に優れ、かつ軽量な支持層62となる。
【0047】
また支持層62には、導電性材料を含む発泡樹脂層を採用することもできる。発泡樹脂層に含ませる導電性材料としては、例えばカーボン粉、カーボン繊維、放電紙及びカーボンナノファイバー不織布の少なくとも1種を挙げることができる。導電性材料を含む発泡樹脂層を採用することで、静電気を空中放電させる機能を持つ前述の表装材52と組合わせたとき、該支持層62自体に静電気を吸収する機能が生じ、人体に帯電した静電気をより効果的に吸収除去できるという効果を奏することになる。図示の例では、カーボン繊維64とカーボンナノファイバー不織布65を発泡樹脂中に混入したものを採用した。
【0048】
また、図1〜図4に示す例では、支持層62のパイル編物又はパイル織物61が付設されない面には繊維層57を積層し、該繊維層57側からパイル編物又はパイル織物61側へニードリング処理することで、前記繊維層57が支持層62を介して前記パイル編物又はパイル織物61に一体化されている。
【0049】
繊維層57は、通気性を確保しながら、しかも裏張り材53の強度を高めて取り扱い性を向上させると共に、敷物としたとき、該敷物に適度な腰を造り出す機能を有する層である。この繊維層57は熱接着性繊維を含む形態を採ることができ、この場合、表装材52との間を接着する接着剤として機能するようになる。
【0050】
繊維層57に含ませる熱接着性繊維としては、例えば高融点重合体を芯成分、低融点重合体を鞘成分に配した芯鞘型複合繊維からなるものを好ましいものとして挙げることができる。特に、高融点重合体の融点と低融点重合体の融点との差が15℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。高融点重合体/低融点重合体の組み合わせとしては、ポリエステル/ポリオレフィン、高融点ポリエステル/低融点ポリエステル、ポリアミド/ポリオレフィン、高融点ポリアミド/低融点ポリアミド、ポリプロピレン/ポリエチレン、高融点ポリエチレン/低融点ポリエチレン等が挙げられる。
【0051】
また繊維層57には、カーボン繊維や金属繊維などの導電性繊維を含ませることができ、静電気を空中放電させる機能を持つ前述の表装材52と組合わせたとき、該繊維層57自体に静電気を吸収する機能が生じ、人体に帯電した静電気をより効果的に吸収除去できるという効果を奏することになる。図示の例では、カーボン繊維64と熱熱接着性繊維を繊維層57の構成繊維中に含ませたものを採用した。
【0052】
次に、上記敷物を自動車用マットに適用した場合について説明する。尚、敷物の説明で使用した符号をそのまま自動車用マットの符号として使用する。図5に示す形態は、自動車用マット51を自動車床面(カーペット)70に敷設したときに、裏張り材53のパイル編物又はパイル織物62におけるループ状パイル糸63のカット端63aが図5中黒塗りや印に示す方向、すなわち自動車の進行方向に向かって斜めに傾斜して突出している。このため、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方)に荷重が加わったときに、同じ方向にカット端63aが斜めに傾斜して突出しているので、カット端63aが確実に自動車床面(カーペット)70内に入り込み、該自動車用マット51のズレを防止するようになる。また、図5中白抜き矢印に示す自動車の進行方向に向かう方向(前方)とは逆の方向(後方)には、カット端63aが係止部として作用しないため、簡単に該自動車用マット51を移動させることができ、自動車用マット51の取り外し、位置決めを簡単に行うことができるようになっている。
【0053】
図6に示す形態は、同じく上記敷物を自動車用マットに適用した場合であり、図6に示す形態は、該自動車用マット51を自動車床面(カーペット)70に敷設したときに、裏張り材のパイル編物又はパイル織物62におけるループ状パイル糸63のカット端が自動車の進行方向に向かう程に高密度となるように設けたものである。自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車用マット51に加わる荷重は、該自動車用マット51の前方部分の方が後方部分よりも大きい。このため、図6の例では、自動車用マット51の前方部分のカット端63aの密度を高くし、後方部分のカット端63bの密度を低くして密度勾配を設け、効率的にズレ防止性能が発揮されるマットとした。
【0054】
尚、本発明の裏張り材及び敷物は、図面に示した例に限定されず、例えば、裏張り材や敷物を構成する繊維層に撥水剤、抗菌剤、防ダニ剤、防かび剤及びフタロシアニン化合物の少なくとも1種を含ませて、該裏張り材や敷物に、撥水性、抗菌性、防ダニ性及び防かび性といった性能を付与するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
51・・・敷物
52・・・表装材
53・・・裏張り材
54・・・基布
55・・・パイル
57・・・繊維層
61・・・パイル編物又はパイル織物61
62・・・支持層
63・・・ループ状パイル糸
63a・・・カット端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノフィラメントで構成されたループ状パイル糸を用いて編成又は織成されたパイル編物又はパイル織物であって、前記ループ状パイル糸がカットされており、そのカット端が敷物を敷設する床面を係止する係止部として突出するパイル編物又はパイル織物と、
前記パイル編物又はパイル織物に付設される発泡樹脂から構成され、前記パイル編物又はパイル織物のパイル糸の基部を固定し支持する支持層とからなることを特徴とする敷物の裏張り材。
【請求項2】
支持層のパイル編物又はパイル織物が付設されない面には繊維層が積層され、該繊維層側からパイル編物又はパイル織物側へニードリング処理することで、前記繊維層が支持層を介して前記パイル編物又はパイル織物に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の敷物の裏張り材。
【請求項3】
支持層が、繊維、羽毛、不織布、織物及び編物の少なくとも1種を含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物の裏張り材。
【請求項4】
支持層が、2枚の不織布間に羽毛層を挟んで一体化した複合シートを含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項3に記載の敷物の裏張り材。
【請求項5】
支持層が、導電性材料を含む発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項3に記載の敷物の裏張り材。
【請求項6】
導電性材料が、カーボン粉、カーボン繊維、放電紙及びカーボンナノファイバー不織布の少なくとも1種からなることを特徴とする請求項5に記載の敷物の裏張り材。
【請求項7】
支持層が、連続気泡と独立気泡が20%:80%〜80%〜205の割合で混在する発泡樹脂層からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の敷物の裏張り材。
【請求項8】
パイル編物又はパイル織物のループ状パイル糸表面に導電性材料からなる導電層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の敷物の裏張り材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の裏張り材を用いた敷物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の裏張り材と基布にパイル糸を打ち込んでなる表装材とが積層一体化された請求項9に記載の敷物。
【請求項11】
基布の裏面に放電紙が積層されていると共にパイル糸に放電機能を有する導電繊維が含まれていることを特徴とする請求項9又は10に記載の敷物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載の敷物からなることを特徴とする自動車用マット。
【請求項13】
該自動車用マットを自動車床面に敷設したときに、裏張り材のパイル編物又はパイル織物におけるループ状パイル糸のカット端が自動車の進行方向に向かって斜めに傾斜して突出していることを特徴とする請求項12に記載の自動車用マット。
【請求項14】
該自動車用マットを自動車床面に敷設したときに、裏張り材のパイル編物又はパイル織物におけるループ状パイル糸のカット端が自動車の進行方向に向かう程に高密度となるように設けられていることを特徴とする請求項12又は13に記載の自動車用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−157496(P2012−157496A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18718(P2011−18718)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】