説明

敷設台船牽引装置及びその牽引方法

【課題】 この発明は堤体頂部の路面幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、敷設台船の牽引作業、及び、移動作業が迅速、円滑、正確に行え、且つ、安全性・作業性・メンテナンス性・経済性に優れた敷設台船牽引装置及びその牽引方法を早期に開発・提供する事にある。
【解決手段】 堤体自体の重量を反力とし、且つ、横移動も兼用可能に設け、又、敷設台船牽引設備自体の重量を増加させずに、且つ、地盤との接地摩擦を利用せずに機械的に堤体の法面部に反力を持たせるよう設け、又、堤体の法面形状を利用して、堤体自体の重量を反力として利用することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、敷設台船牽引装置及びその牽引方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫土の吹き込みによる埋め立て工法では、外周の護岸を造り、その中に水を加えた浚渫土をポンプ等で吹き込む。そして、その後、その埋め立て地である池内で、浚渫土(軟弱地盤)の改良工法として、減容化や圧密促進のため、様々な排水工法が用いられる。
【0003】
この排水工法施工のために、池内に組立用の敷設台船等を浮かべ、施工機構を乗せて排水工のためのドレーン材を敷設、又は、打設する。
【0004】
又、前記排水工法の一つに、例えばラテラルドレーン工法の場合、ドレーン材を軟弱地盤内に水平に数段埋設し、負圧吸引をし、軟弱地盤内の間隙水圧を減少させ、減容化する。そして、施工のためには、軟弱地盤内に貫入させたマンドレルからドレーン材を繰り出し、水平、且つ、直線的に敷設台船を移動させながら埋設する。この為、通常の4点式係留方法では施工出来ず、埋設進行方向中心に、牽引のためのウィンチを設置し、直線的に移動させる。この牽引用ウィンチは、土中にマンドレルを貫入させているため、大きな牽引力を必要とする。例えば、4列4段施工では、牽引力は20tonfを超えることがある。又、隣接する施工箇所に順次移動するため、埋設法線が変わる度に、ウィンチを法線上に移動する必要がある。
【0005】
又、従来は大型ブルドーザー等、重機械を改造して、側面に大型ウィンチを乗せ、施工を行ってきた。そして、機体重量を利用して、地盤との接地摩擦力により、ウィンチの牽引力を得ていた。又、重機の走行装置としても利用していた。
【0006】
こうした状況の中、池内の作業では制限事項が多い為、例えば、最終的に軟弱地盤内の排水が目的なので、台船を浮かべる水底が浅い為、ウィンチ等の大型設備を陸上に配置することで、台船の積載重量を軽くして移動し易くしていた。又、外周護岸は、浚渫土を受け入れることを目的としている為、堤体の規模が小さく、堤体頂部の路幅が狭く、強度的にも弱い場合がある。又、堤体部分は、マサ土や砂、乾燥した改良土等、摩擦係数が少ない材質であることが多かったが、十分な背後地があり、ラテラルドレーンを施工する事を前提とした、余裕のある設計が行われていた為、問題にならなかった。しかし、別の方法として、予め、反力材を埋設しておく等の方法は考えられるが、移動の度に据え替える必要がある為、作業性に問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
そこで、これまでに出願されている敷設台船牽引装置及びその牽引方法に関する特許文献を参考の為、紹介する(特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開平5−230823
【特許文献2】特開平11−006140
【特許文献3】公開特許広報平4−203011
【特許文献4】公開特許広報平4−203012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記課題を解決する為に、この発明は堤体頂部の路面幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、敷設台船の牽引作業、及び、移動作業が迅速、円滑、正確に行え、且つ、安全性・作業性・メンテナンス性・経済性に優れた敷設台船牽引装置及びその牽引方法を早期に開発・提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決する為の手段として、堤体自体の重量を反力とし、且つ、横移動も兼用可能に設け、又、敷設台船牽引設備自体の重量を増加させずに、且つ、地盤との接地摩擦を利用せずに機械的に堤体の法面部に反力を持たせるよう設け、又、堤体の法面形状を利用して、堤体自体の重量を反力として利用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の効果として、堤体自体の重量を反力とし、且つ、横移動も兼用可能に設け、又、敷設台船牽引設備自体の重量を増加させずに、且つ、地盤との接地摩擦を利用せずに機械的に堤体の法面部に反力を持たせるよう設け、又、堤体の法面形状を利用して、堤体自体の重量を反力として利用することで、堤体頂部の路面幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事で、敷設台船を正確に、確実に円直方向に牽引する事が可能で、且つ、少人数で効率的に作業が出来る為、経済的にも安価であり、又、安全性・作業性・メンテナンス性に優れる等、極めて有益なる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施例を示し、敷設台船牽引時の斜視図である。
【図2】この発明の一実施例を示し、敷設台船横移動時の斜視図である。
【図3】この発明の使用例を示し、埋立排水工事現場全体の機器船舶設置状況を示す斜視図である。
【図4】この発明の従来例を示し、埋立排水工事現場全体の機器船舶設置状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明を実施するための形態として、堤体頂部の路面幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、堤体(1)自体の重量を反力とし、且つ、横移動も兼用可能に設けたことを特徴とする敷設台船牽引装置から構成される。
【0013】
又、堤体頂部の路面(1a)幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、敷設台船牽引装置(S)自体の重量を増加させずに、且つ、路面(1a)との接地摩擦を利用せずに機械的に堤体(1)の法面部(1b)に反力を持たせるよう設けたことを特徴とする敷設台船牽引装置から構成される。
【実施例1】
【0014】
そこで、この発明の一実施例を図1〜図2に基づいて詳述すると、最初に敷設台船牽引装置(S)について、説明すると、まず、敷設台船牽引装置(S)は、2台の敷設台船牽引用ウィンチ(WI1)と、牽引用ウィンチを設置して移動するための架台フレーム(F2)から成り、且つ、堤体の上面部に、堤体の長手方向に沿って複数の横移動用の横行レール(R)をそれぞれ敷設し、且つ、該横行レール(R)上面部に移動式ウィンチ設置用架台フレーム(F2)を乗駕し、且つ、該移動式ウィンチ設置用架台フレーム(F2)上部の岸側端部に1台、又は、複数台の敷設台船牽引用のウィンチ(WI1)(WI1)をそれぞれ設置し、且つ、敷設台船(SH)を牽引する時は、図1に示すように、ショベルカー(SC)のバケット(B)の底部に、接触面圧を拡大すると共に、ワイヤーロープ(WR1)を固定するための、ジョストン等のI型鋼(F1)をそれぞれ係止する。そして、ショベルカー(SC)のキャタピラ部を堤体(1)の長手方向と平行、且つ、移動式ウィンチ設置用架台フレーム(F2)の法面側に跨がせて設置し、且つ、ショベルカー(SC)のアームを堤体の法面(1b)と直角に成るように旋回させ、更に、ショベルカー(SC)のアームを立てて、バケット(B)底部を堤体の法面(1b)上部に設置し、且つ、移動式ウィンチ設置用架台フレーム(F2)と、バケット(B)底部に係止したI型鋼(F1)の間の左右両端を、ワイヤーロープ(WR)でそれぞれ堅固に固定する。
【0015】
そして、牽引装置を堤体の長手方向に沿って、横移動する時は、堤体の法面部に固定していたショベルカー(SC)のバケット(B)を持ち上げてアームを移動方向に旋回させ、図2に示すように、移動式ウィンチ設置用架台フレーム(F2)をショベルカー(SC)に固定して、横移動させる。又、横移動する時の牽引方法については、ショベルカー(SC)に限定することなく、その時の作業状況に応じてブルドーザー(BD)やウィンチ(WI1)を使用して牽引しても構わない。
【0016】
又、図3は、本発明の機器船舶設置状況を示す全体斜視図を示し、敷設台船牽引用のワイヤーロープ(WR2)には、牽引抵抗を減少させる為の、複数の浮力性の優れた玉ブイ(BU)をそれぞれ係止し、且つ、牽引側のワイヤーロープ(WR2)(WR2)は左右2本設けて、牽引方向の調整を可能に出来る構造に改良したものである。又、更に蛇行や、ワイヤーの乱巻きを防止する為に、牽引用ウィンチ(WI1)と、引き戻し用ウィンチ(WI1')と、ガイド用ウィンチ(WI2)をそれぞれ設置している。
【0017】
更に、本発明による敷設台船の牽引に使用するウィンチは、無騒音タイプを使用することで、これまで騒音による誘導指示の聞き取り難さを解消し、更に、これまでは、ワイヤーロープの内角部が多く、非常に危険であったが、内角部を無くすることで、作業が安全に効率良く出来るように成った。又、更に移動滑車固定用の重機が、牽引作業中に動いて非常に危険であったが、重機を大型化する事で全て解決出来きる。又、ドレーン材を敷設船上のリールにセットするのに、時間が掛かっていたが、事前に準備する事で、作業性が改善された。
【0018】
参考までに、従来例の埋立排水工事現場全体の機器船舶設置状況を図4に示す。
【0019】
上記、図4は試験工事の現場状況を示したものである。
【0020】
そこで、上記の試験工事で判明した問題点は、敷設船牽引する際の鉛直性が悪く、敷設レーンを変更する時、牽引ワイヤが泥に埋まって作業性が悪く、又、牽引時に移動滑車を固定する為の重機が軽く、重機が動いて作業が捗らず、ワイヤーの内角部が多くて危険であり、更にはドレーン材をリールにセットするのに時間が掛かり、ワイヤーの乱巻き、牽引時の蛇行、騒音問題等、様々な問題点が生じた為、これらの問題を解決するために、本発明の敷設台船牽引装置及びその牽引方法が発明されたものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明の敷設台船牽引装置は、敷設台船の牽引作業、及び、移動作業が迅速、円滑、正確に行え、且つ、安全性・作業性・メンテナンス性・経済性に優れている為、多くの土木建設工事等の関連市場に寄与する点で産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0022】
1 堤体
1a 堤体の路面
1b 堤体の法面
B バケット
BU 玉ブイ
BD ブルドーザー
F1 I型鋼
F2 移動式ウィンチ設置用架台フレーム
R 横行用レール
S 敷設台船牽引装置
SC ショベルカー
SH 敷設台船
WI1 敷設台船牽引用ウィンチ
WI1' 敷設台船引き戻し用ウィンチ
WI2 敷設台船ガイド用ウィンチ
WR1 牽引装置固定用ワイヤーロープ
WR2 敷設台船牽引用ワイヤーロープ
WR2' 敷設台船牽引用ワイヤーロープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体頂部の路面幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、堤体(1)自体の重量を反力とし、且つ、横移動も兼用可能に設けたことを特徴とする敷設台船牽引装置。
【請求項2】
堤体頂部の路面(1a)幅が狭い軟弱地盤の埋立排水工事現場において、敷設台船牽引装置(S)自体の重量を増加させずに、且つ、路面(1a)との接地摩擦を利用せずに機械的に堤体(1)の法面部(1b)に反力を持たせるよう設けたことを特徴とする敷設台船牽引装置。
【請求項3】
堤体(1)の法面形状を利用して、堤体(1)自体の重量を反力として利用することを特徴とする敷設台船牽引方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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