説明

敷設用板材

【課題】 表面の水をスムーズに流し、表面に水を溜まりにくくする敷設用板材を提供する。
【解決手段】 一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、一方の主面は平坦であり、一方の主面の縁端部には、外側へ向うに従い一方の主面の反対側に傾斜する傾斜面とを備える。これにより、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、傾斜面を伝わって主面上の水が流れ落ちる。その結果、敷設用板材の表面の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルコニー等に敷設され、一方の主面が排水機能を有する敷設用板材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バルコニー等の美観や機能性を向上させるために、人工芝等に代えて、木製やプラスチック製、陶器製等のデッキパネルが敷設されることが多くなっている。このようなデッキパネルのうち、プラスチック製パネルは取り扱いが簡単で、腐食しないことから、特にプラスチック製パネルを部材としたバルコニーデッキの需要が増している。図12は、従来のデッキ材51の斜視図である。図8に示すように、従来のデッキ材51は、主面52、側面53、および側面54を有する直方体の板形状である。従来のデッキ材51の主面52には溝59が設けられ、それに平行して凸部60が形成されている。溝59は、主面の一方の縁端部55から他方の端部まで設けられており、溝59の縁部には、傾斜が設けられ、凸部60は上に丸く突出するように形成されている。このように、溝59および凸部60を設けているのは防滑性を向上させるためである。溝59の端部61は、溝59がそのままの形状で側面53によって切り取られた形状を有しており、略直角のエッジが形成されている。凸部60の端部65には、面取り加工を行ない、傾斜面を設けている。
【0003】
デッキ材に関する文献では、もっぱらデッキ表面から溢れた雨水をスムーズに流すための排水路に関する技術が提案されている(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1に記載されるデッキ材は、床板上の端部に敷設され、幅方向側部に長手方向に沿う凹状の排水溝部を有し、排水溝部の底面をデッキ材の幅方向側部からデッキ材中央部に向かう下り傾斜面に形成している。さらに、排水溝部のデッキ材中央側の側面の上部を側面の下部よりも排水溝部内方に張出するように形成し、溝上部に遮蔽部を形成している。このようにして、デッキ材の排水溝部に流れ込んだ雨水を排水溝部底面のいたるところに残存させることなく略一箇所に集積し、さらにはその集積した雨水が見えにくいようにデッキ材を構成している。
【0004】
また、特許文献2に記載されるデッキ材の排水溝構造は、デッキ材の幅方向側部に排水溝部を設け、この排水溝部の上面開口部を溝カバー部材により被覆している。そして、排水溝部は、溝底部の幅方向中間部に係合凹部と、両側部に段状の当接部を有し、溝カバー部材は、天板部と、天板部の幅方向中間部から下方に突出させた係合凸部と、側端部を有している。溝カバー部材の係合凸部を排水溝部の係合凹部に揺動可能に係合させた状態では、両側端部のいずれか一方が当接部に当接可能となっている。このようにして、押し出し成形後に長孔を穿孔することなく一工程で製造することができ、かつ容易に雨水をデッキ材の排水溝に流入させることができるデッキ材の排水溝構造を提案している。
【特許文献1】特開2001−132091号公報
【特許文献2】特開2001−27020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなデッキ材51の主面52には、降雨時に雨水が残りやすく、雨上がりには水が乾き難い。すなわち、主面52が水に濡れた場合に、溝59の端部61においては、水が溝59内に残りやすく、さらに表面張力により水が玉になって集まってしまう。このような場合に、バルコニーに洗濯物を干すと、洗濯物は乾き難くなる。また、水の溜まったデッキ材表面を、スリッパを履いて歩いた場合には、スリッパが濡れて滑りやすくなる。なお、凸部60の端部65には、面取り加工がなされているが、これは触れた物を傷つけないようにしたり、取り扱いや使用の際にけがの発生を防止したりするための加工である。デッキ材51の溝59には傾斜が設けられてはいない。
【0006】
これらのデッキ材51の主面52に設けられた凹凸は防滑性を向上させるためのものであり、排水性については効果が小さい。したがって、雨天時にはこれらの溝59の有無にかかわらず、表面に水が残る。また、上記特許文献に記載されているように、デッキ表面から溢れた雨水をスムーズに流すための排水路に関する技術はこれまでに提案されているが、デッキ材の表面に溜まった雨水を減らすという課題は未解決である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、表面の水をスムーズに流し、表面に水を溜まりにくくする敷設用板材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の敷設用板材は、一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、前記一方の主面は平坦であり、前記一方の主面の縁端部には、外側へ向うに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴としている。
【0009】
このように、本発明の敷設用板材は、一方の主面の縁端部に、外側へ向うに従いその反対側に傾斜する傾斜面を備えている。したがって、敷設用板材を、一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、傾斜面を伝わって主面上の水が流れ落ちる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0010】
(2)また、本発明の敷設用板材は、一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝と、前記溝の、前記一方の主面の縁端部側に、外側へ向うに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する第1の傾斜面と、を備えることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の敷設用板材は、溝の一方の主面の縁端部側に、外側へ向うに従い一方の主面の反対側に傾斜する傾斜面を備えている。したがって、敷設用板材を、一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた第1の傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、溝内を縁端部まで伝わった水が流れ落ちる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0012】
(3)また、本発明の敷設用板材は、前記第1の傾斜面は、前記溝が伸びる方向に平行で前記主面に垂直な平面による断面の輪郭が2mm以上の曲率半径を有する曲線、または長さが2mm以上で前記溝が伸びる方向と前記主面に垂直な方向との正接が0.5から2の直線であることを特徴としている。
【0013】
このように曲率半径が2mm以上の曲面、またはおよそ面取り幅2mm以上の面取りにより、表面張力で水が一方の主面の縁端部に留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を顕著にすることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0014】
(4)また、本発明の敷設用板材は、前記溝が、前記一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する形状に形成されており、前記第1の傾斜面には、切欠溝が形成されていることを特徴としている。
【0015】
このように溝端部で切欠溝が形成された第1の傾斜面により、溝端部まで流れ込んだ水が切欠溝に集まり、流れ落ち易くなる。すなわち、溝端部の水が切欠溝に流れ込むことで、表面張力で溝に水が留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0016】
(5)また、本発明の敷設用板材は、一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝を備え、前記溝は、前記一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する形状に形成されていることを特徴としている。
【0017】
このように、本発明の敷設用板材では、一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する。したがって、敷設用板材を、一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝内を縁端部まで伝わった水が溝幅の拡大する方向に流れ易くなる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0018】
(6)また、本発明の敷設用板材は、一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝を備え、前記溝は、前記一方の主面の縁端部側に向かうに従い深くなる形状に形成されていることを特徴としている。
【0019】
このように、本発明の敷設用板材では、溝が一方の主面の縁端部側に向かうに従い深くなる。したがって、敷設用板材を、一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝内の水は、溝が深くなる方向に伝わり、一方の主面の縁端部まで流れ易くなる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0020】
(7)また、本発明の敷設用板材は、前記溝の縁部に、前記溝の中央側に向かうに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する第2の傾斜面を備えることを特徴としている。
【0021】
これにより、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、一方の主面の溝を形成しない部分から溝内に水が流れ易くなる。そして、溝内に流れ込んだ水は溝を伝わって外部に排出され易くなる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0022】
(8)また、本発明の敷設用板材は、前記溝の底部が、前記溝の伸びる方向に垂直な平面による断面形状がU字状またはV字状となるように形成されていることを特徴としている。
【0023】
このように溝の底部の断面がU字状またはV字状に形成されているため、たとえば溝の底部の断面が矩形である場合と比較すると、溝に流れ込んだ水が溝の端部まで流れ易くなる。すなわち、溝の表面と水との接触による相互の分子間力や水の粘性により、溝に流れ込んだ水は溝に留まろうとするが、上記の溝の形状により、溝に流れ込んだ水を流れ易くすることができる。
【0024】
(9)また、本発明の敷設用板材は、前記敷設用板材の成分のうち、30重量%以上が樹脂であることを特徴としている。
【0025】
これにより、樹脂成分の撥水性が傾斜面における水の流れを促進し、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の敷設用板材によれば、一方の主面の縁端部に、外側へ向うに従いその反対側に傾斜する傾斜面を備えている。したがって、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、傾斜面を伝わって主面上の水が流れ落ちる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0027】
また、本発明の敷設用板材によれば、溝の一方の主面の縁端部側に、外側へ向うに従い一方の主面の反対側に傾斜する傾斜面を備えている。したがって、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた第1の傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、溝内を縁端部まで伝わった水が流れ落ちる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0028】
また、本発明の敷設用板材によれば、曲率半径が2mm以上の曲面、またはおよそ面取り幅2mm以上の面取りにより、表面張力で水が一方の主面の縁端部に留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を顕著にすることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0029】
また、本発明の敷設用板材によれば、溝端部で切欠溝が形成された第1の傾斜面により、溝端部まで流れ込んだ水が切欠溝に集まり、流れ落ち易くなる。すなわち、溝端部の水が切欠溝に流れ込むことで、表面張力で溝に水が留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0030】
また、本発明の敷設用板材によれば、一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する。したがって、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝内を縁端部まで伝わった水が溝幅の拡大する方向に流れ易くなる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0031】
また、本発明の敷設用板材によれば、溝が一方の主面の縁端部側に向かうに従い深くなる。したがって、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝内の水は、溝が深くなる方向に伝わり、一方の主面の縁端部まで流れ易くなる。これにより、敷設用板材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0032】
また、本発明の敷設用板材によれば、敷設用板材を一方の主面を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、一方の主面の溝を形成しない部分から溝内に水が流れ易くなる。そして、溝内に流れ込んだ水は溝を伝わって外部に排出され易くなる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0033】
また、本発明の敷設用板材によれば、溝の底部の断面がU字状またはV字状に形成されているため、たとえば溝の底部の断面が矩形である場合と比較すると、溝に流れ込んだ水が溝の端部まで流れ易くなる。すなわち、溝の表面と水との接触による相互の分子間力や水の粘性により、溝に流れ込んだ水は溝に留まろうとするが、上記の溝の形状により、溝に流れ込んだ水を流れ易くすることができる。
【0034】
また、本発明の敷設用板材によれば、樹脂成分の撥水性が傾斜面における水の流れを促進し、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、敷設用板材の排水性について鋭意検討した結果、傾斜に対して水の表面張力が勝る場合には、水が流れないことに鑑みてなされたものである。以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0036】
(実施形態1)
図1は、デッキ材1(敷設用板材)を示す斜視図、図2は、デッキ材1の平面図、図3は、デッキ材1の正面図、図4は、デッキ材1の側面図である。図に示すように、デッキ材1は、主面2、側面3および側面4を有する直方体の板形状である。主面とは、板形状において厚みに方向に対向する最も広い二対の面をいう。なお、図1に示すデッキ材1は、直方体の板形状であるが、このような形状に限定されず、主面2の輪郭が多角形や曲線である板形状であってもよい。
【0037】
デッキ材1の一方の主面2には、複数の溝9が平行して設けられている。このため、溝9に対して相対的に突出する凸部10が溝9に平行して形成されている。図1に示すように、溝9は、主面2の一方の縁端部5から他方の縁端部6まで直線的に形成されている。なお、これ以外の溝9の形状であっても、その一端が、主面2のいずれかの縁端部に到達するように形成されていれば、その縁端部に到達する部分から水が流れるため、発明の効果を奏する。たとえば、溝9が主面2の縁端部から中央まで伸びる形状であってもよい。
【0038】
図5は、デッキ材1の端部を拡大した斜視図である。図5に示すように、溝9の縁端部5側には、傾斜面11(第1の傾斜面)が設けられている。傾斜面11は、デッキ材1の外側に向かうに従い、デッキ材1に対して主面2の反対側に傾斜している。したがって、デッキ材1を、主面2を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面2の縁端部5に設けられた傾斜面11が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、溝9内を縁端部5まで伝わった水が流れ落ちる。これにより、デッキ材1の主面2上の水をスムーズに排水することが可能となる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。
【0039】
傾斜面11は、溝9が伸びる方向に平行な平面により切られた断面の輪郭が、曲率半径4mmの円弧である。傾斜面11の形状は特に限定されないが、溝9が伸びる方向に平行で主面2に垂直な平面により切られた傾斜面11の断面の輪郭が、曲率半径2mm以上の弧、または長さが2mm以上で溝9が伸びる方向と主面2に垂直な方向との正接が0.5から2の直線であることが好ましい。このように傾斜面11を曲率半径が2mm以上の曲面とするか、またはおよそ面取り幅2mm以上の面取りとすることにより、表面張力で水が一方の主面の縁端部に留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を顕著にすることができる。その結果、デッキ材1の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。さらには、溝9が伸びる方向に平行で主面に垂直な平面により切られた傾斜面11の断面の輪郭が、曲率半径4mm以上の円弧、または長さが4mm以上で溝9が伸びる方向と主面2に垂直な方向との正接が0.5から2の直線4であることが特に好ましい。このような形状では排水効果が特に顕著である。
【0040】
溝9は傾斜面11において、溝幅が外側に向かって扇形状に拡がっている。図2に示すように、主面2の中央から縁端部5にわたり溝9の溝幅はほぼ等しい。しかし、縁端部5付近では、外側に向かうに従い溝幅が大きくなっている。すなわち、傾斜面の上方の部分11aでは溝幅は小さいが、傾斜面の上方の部分11bでは溝幅が大きい。したがって、デッキ材1を、主面2を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝9内を縁端部5まで伝わった水が溝幅の拡大する方向に流れ易くなる。これにより、デッキ材1の主面2上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ等を提供することができる。
【0041】
また、溝9は主面2の中央から縁端部5側に向かうに従い、深くなるように形成されている。すなわち、溝9の主面中央側の部分9aより溝9の中央と端部の中間部分9bの方が溝の深さが大きい。さらに、溝9の中央と端部の中間部分9bより溝9の端部9cの方が溝の深さが大きい。したがって、デッキ材1を、主面2を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、溝9内の水は、溝が深くなる方向に伝わり、主面2の縁端部5まで流れ易くなる。これにより、デッキ材1の主面2上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ等を提供することができる。
【0042】
また、溝9の縁部12には、溝の中央側に向かうに従い、一方の主面2の反対側に傾斜する傾斜面(第2の傾斜面)が形成されている。言い換えれば、凸部10は上に丸く突出するように形成されている。これにより、デッキ材1を、主面2を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面2の溝を形成しない部分から溝9内に水が流れ易くなる。そして、溝9内に流れ込んだ水は溝9を伝わって外部に排出され易くなる。その結果、デッキ材1の主面2上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。なお、縁部12の傾斜面の形状は特に限定されないが、溝9が伸びる方向に平行で主面2に垂直な平面により切られた傾斜面11の断面の輪郭が、曲率半径2mm以上の円弧、または長さ2mm以上で溝9が伸びる方向と主面2に垂直な方向との正接が0.5から2の直線であることが好ましい。
【0043】
図6は、図2および図3で示す主面2に垂直な面Aによりデッキ材1を切断したときの断面図である。図6に示すように、主面2において複数の溝9はそれぞれ同一の形状に形成されている。溝の底部の断面形状は矩形であるが、これに限定されるものではない。主面2の反対側は、開口しており、溝9の伸びる方向に平行な仕切り21および溝9の伸びる方向に垂直な仕切り22により空隙20が形成されている。また、空隙20内部の主面2の裏側には、リブ24が形成されている。これにより、デッキ材1を軽量で強度の大きいものとすることができる。また、樹脂を用いて射出成形により形成した場合には、空隙20の容積分の原料が不要となるため、原料費を低く抑え低コストで製造することを可能にする。
【0044】
図7は、図2に示す面Bおよび面B' によりデッキ材1を切断したときの断面図である。面Bは、凸部10が伸びる方向に沿った主面2に垂直な面であり、面B'は、溝9が伸びる方向に沿った主面2に垂直な面である。図7に示すように、面Bに沿って、仕切り21と仕切り22とが交差する位置には、ビス孔26が設けられている。ビス孔26は、デッキ材1を台座(図示せず)に留めるためのものである。
【0045】
デッキ材1の材料は、特に限定されず、プラスチック、木、セラミックス等を用いることができる。ただし、樹脂成分が30重量%以上の材料を用いることが好適である。これにより、樹脂成分の撥水性が傾斜面における水の流れを促進し、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、デッキ材1の主面2上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。また、樹脂としては、特に撥水性の高いポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン系樹脂(ABS、AS、ASA、SAS、AES、PS、HIPS)を材料として用いることが好適である。また、木質感を向上させるために、樹脂に対し3重量%以上の木粉を混合させてもよい。ただし、デッキ材1の材料がこれらに限定されるものではない。
【0046】
上記のようなデッキ材1は、たとえば上記のような形状の金型を作り、この金型を用いてプラスチックを射出成形することにより製造される。特に製造方法に制限はなく、プラスチックをブロー成形してもよいし、押出成形後に研削等の加工を行なってもよい。また、木、セラミックスを原料とする場合でも、特に製造方法に制限はない。
【0047】
このようにして製造されたデッキ材1は、互いに連結させて敷き詰めることが可能な台座(図示せず)にビスで固定し、敷設用部材として用いる。台座は、デッキ材1をビス留め可能に形成されており、デッキ材1を数枚(たとえば4枚)固定したものを1ピースとする。これにより、バルコニーの広さに応じ、上記の敷設用部材を敷き詰めることが可能になる。
【0048】
たとえば、このようにデッキ材1が固定された敷設用部材を敷設したバルコニーに、雨が降ったときには、デッキ材1の主面2に雨水がかかる。このとき、凸部10の上にかかった水は、溝9の縁部12に設けられた傾斜面により、溝9に流れ込む。そして、溝9内の水は、溝9の傾斜により主面の縁端部5および6の方向に流れ、縁端部の傾斜面11を伝わって、側面3の上を流れ落ちる。さらに、端部において溝幅が扇状に拡大しているために、排水が促進される。このようにして、デッキ材1上の水がスムーズに排水される。
【実施例1】
【0049】
上記のデッキ材1を、主面2を鉛直上方に向けて載置し、主面2の上に水を撒いて排水の効果を検証した。比較例としては、図12に示すような従来のデッキ材51を用いた。
【0050】
以下に検証に用いた実施例としてデッキ材1の寸法を説明する。主面2の長手方向(溝の伸びる方向)の長さは、295mm、幅方向の長さは70mmである。デッキ材1の厚み方向の長さは、20mmである。主面2の上には同一形状の溝9が12本設けられている。それぞれの溝9の間隔は、5.5mmである。溝9の縁部12において、溝9の伸びる方向に垂直な断面の輪郭が、長径5mm、短径4mmで上に長い楕円の1/2π分の弧となっている。溝の深さは、主面2の中央部で2.5mm、縁端部で3.0であり、最深部は148mmあたり0.5mmの傾斜面となっている。この最深部の傾斜面は、主面2の中央部から縁端部にわたり幅1.5mmの平坦面である。溝9は、縁端部5付近では、主面2に垂直に見たときに曲率半径2.0で扇状に拡がる形状である。溝9の端部には傾斜面11が形成され、溝9が伸びる方向に平行な平面により切られた傾斜面11の断面の輪郭は、曲率半径5.0mmの弧である。検証に用いたデッキ材1は、ABS樹脂の混合物を射出成形により形成した。
【0051】
また、以下に比較例として検証に用いた従来のデッキ材51の寸法を説明する。主面52の長手方向(溝の伸びる方向)の長さは、295mm、幅方向の長さは70mmである。デッキ材1の厚み方向の長さは、20mmである。主面52の上には同一形状の溝59が12本設けられている。それぞれの溝59の間隔は、5.5mmである。溝59の縁部62において、溝59の伸びる方向に垂直な断面の輪郭が、長径5mm、短径4mmで上に長い楕円の1/2π分の弧となっている。溝59の深さは、2.5mmで一定であり、最深部は幅1.5mmの平坦面である。溝9の端部には傾斜面はなく、そのままエッジとなっている。従来のデッキ材51もデッキ材1と同様に、ABS樹脂の混合物を射出成形により形成した。
【0052】
以下に試験方法について説明する。まず、上記の寸法および形状のデッキ材1の重量を秤で計測した。秤には0.1まで計測可能で、市販の秤を用いた。次に、主面2に水を静かにかけて、水の動きが止まるまで待った。待ち時間は約5分であった。次に、主面2に残った水とともにデッキ材1の重量を秤で計測した。最後に水をかける前後の重量の差をとることにより、残存した水の重量を算出した。比較例のデッキ材51についても同様にして計測を行なった。
【0053】
上記の試験の結果、実施例のデッキ材1については、主面2に残存した水の重量が、5gであった。一方、比較例のデッキ材51については、主面52に残存した水の重量が、20gであった。したがって、排水性を向上するという本発明の効果が確認された。なお、上記の試験では溝幅を1.5mmとしたが、2mmに拡大して壁面抵抗を抑制するとさらに水の排出に効果的である。
【0054】
(実施形態2)
上記の実施形態1において、図5に示す傾斜面11は等高線が直線となるような緩い傾斜の形状であるが、傾斜面に切欠溝を形成してもよい。図8は、傾斜面に切欠溝を形成されたデッキ材31の斜視図、図9はデッキ材31の側面図である。図8および図9に示すように、デッキ材31の溝39の傾斜面41には、切欠溝45が形成されている。切欠溝45は、断面がU字状となる曲面により形成され、溝39に連続的につながっている。なお、切欠溝の形状は断面がV字状となるように形成されていてもよい。切欠溝45の底面と側面とは滑らかにつながった曲面である。
【0055】
デッキ材31の一方の主面32には、複数の溝39が平行して設けられている。このため、溝39に対して相対的に突出する凸部40が溝39に平行して形成されている。溝39は、主面32の一方の縁端部35から他方の縁端部まで直線的に形成されている。図10は、図8における平面Pによりデッキ材31を切断したときの断面図である。溝39の底部は、図10に示すように溝39の伸びる方向に垂直な平面による断面形状がU字状となるように形成されている。これにより、たとえば図6に示すように溝の底部の断面が矩形である場合と比較すると、溝に流れ込んだ水が溝の端部まで流れ易くなる。すなわち、溝の表面と水との接触による相互の分子間力や水の粘性により、溝に流れ込んだ水は溝に留まろうとするが、上記の溝の形状により、溝に流れ込んだ水を流れ易くすることができる。凸部40の断面形状の輪郭は、溝39方向へ緩やかに傾斜している。これにより、さらに凸部40上の水は溝39へと流れ易くなる。また、射出成形によりデッキ材31を形成する場合には、脱型が容易となる。溝39は浅く形成されており、水が溝39を流れる際に溝39の側面によって壁面抵抗が生じるのを防止している。また、壁面抵抗を抑制するためには、溝39の溝幅は2mm程度であることが好ましい。なお、溝39の伸びる方向に垂直な平面による断面形状は、V字状となるように形成されていてもよい。
【0056】
傾斜面41は、デッキ材31の外側に向かうに従い、デッキ材31に対して主面32の反対側に傾斜している。すなわち、デッキ材31を、主面32を鉛直上向きにしてバルコニー等に敷設したときには、主面32の縁端部35に設けられた傾斜面41が外側に向かうに従い下方に傾斜している。そして傾斜面41には、デッキ材31の本体側に窪むように切欠溝45が形成されている。溝39から切欠溝45まで溝は連続的につながっていてもよいし、つながっていなくてもよい。図11は、図8における平面Qによりデッキ材31を切断したときの断面図である。このように切欠溝45は下に窪んでおり、凸部40と切欠溝45の底部との境界46も断面形状が滑らかな曲線となっている。図10の溝39の断面と比較すると、底部において溝45の断面の方が深くなっている。
【0057】
このような切欠溝45が傾斜面41に形成されることにより、流れ込んだ水が切欠溝45に集まり、流れ落ち易くなる。すなわち、溝39の端部の水が切欠溝45に流れ込むことで、表面張力で溝39に水が留まるのを防ぎ、傾斜による排水の効果を高めることができる。その結果、敷設用板材の主面上の水をさらにスムーズに排水することを可能にする。
【0058】
(実施形態3)
上記の実施形態1では、デッキ材1の主面2に溝9を設けているが、一方の主面がまったく溝を設けない平坦な面で、その主面の縁端部の少なくとも一部に斜面を形成することとしてもよい。その場合、斜面は、その主面の外側に向かうにつれて、デッキ材に対してその主面の反対側に傾斜する。したがって、デッキ材を、一方の主面を鉛直上向きにしてデッキ等に敷設したときには、主面の縁端部に設けられた傾斜面が外側に向かうに従い下方に傾斜しているため、傾斜面を伝わって主面上の水が流れ落ちる。これにより、デッキ材の主面上の水をスムーズに排水することが可能となり、水の溜まり難いデッキ、浴槽マット、キッチンマット等を提供することができる。その結果、たとえば、バルコニーに干した洗濯物を乾き易くすることができ、スリッパの滑りを防止することができる。なお、斜面は、曲面であっても、面取りによる平面であってもよい。
【0059】
なお、以上はデッキ材を例に挙げて、敷設用板材の実施形態について説明したが、デッキ材に限定されず、浴槽マット、キッチンマット等についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す側面図である。
【図5】第1の実施形態の敷設用板材の端部付近を拡大した斜視図である。
【図6】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明に係る敷設用板材の第1の実施形態を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態の敷設用板材の端部付近を拡大した斜視図である。
【図9】本発明に係る敷設用板材の第2の実施形態を示す側面図である。
【図10】本発明に係る敷設用板材の第2の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明に係る敷設用板材の第2の実施形態を示す断面図である。
【図12】従来の敷設用板材の端部付近を拡大した斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1、31 デッキ材(敷設用板材)
2、32 主面
3、4 側面
5、6、35 縁端部
9、39 溝
10、40 凸部
11、41 傾斜面(第1の傾斜面)
12 縁部(第2の傾斜面)
45 切欠溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、
前記一方の主面は平坦であり、
前記一方の主面の縁端部には、外側へ向うに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする敷設用板材。
【請求項2】
一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、
前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝と、
前記溝の、前記一方の主面の縁端部側に、外側へ向うに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する第1の傾斜面と、を備えることを特徴とする敷設用板材。
【請求項3】
前記第1の傾斜面は、前記溝が伸びる方向に平行で前記主面に垂直な平面による断面の輪郭が、2mm以上の曲率半径を有する曲線、または長さが2mm以上で前記溝が伸びる方向と前記主面に垂直な方向との正接が0.5から2の直線であることを特徴とする請求項2に記載の敷設用板材。
【請求項4】
前記溝は、前記一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する形状に形成されており、
前記第1の傾斜面には、切欠溝が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の敷設用板材。
【請求項5】
一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、
前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝を備え、
前記溝は、前記一方の主面の縁端部側において溝幅が扇形に拡大する形状に形成されていることを特徴とする敷設用板材。
【請求項6】
一方の主面が排水機能を有する敷設用板材であって、
前記一方の主面に、前記一方の主面の縁端部から設けられた少なくとも1つの溝を備え、
前記溝は、前記一方の主面の縁端部側に向かうに従い深くなる形状に形成されていることを特徴とする敷設用板材。
【請求項7】
前記溝の縁部に、前記溝の中央側に向かうに従い前記一方の主面の反対側に傾斜する第2の傾斜面を備えることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の敷設用板材。
【請求項8】
前記溝の底部は、前記溝の伸びる方向に垂直な平面による断面形状がU字状またはV字状となるように形成されていることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれかに記載の敷設用板材。
【請求項9】
前記敷設用板材の成分のうち、30重量%以上が樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の敷設用板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−169848(P2006−169848A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365109(P2004−365109)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】