説明

文書構造テンプレート用紙及び文書情報再生システム

【課題】学習障害者や失明者が、用紙に記載された比較的大量の情報を、バーコード読取再生装置の再生機能を通じて、体系的に、分かり易くしかも短時間で聞き取ることを可能とする文書構造テンプレート用紙を提供する。
【解決手段】文書構造テンプレート用紙は、二次元的に区画された複数の領域を表面に有するテンプレート用紙と、前記テンプレート用紙の表面に印刷された文書構造を示す記号または点字と、前記記号又は点字が印刷されている領域またはその近傍の領域に記録され且つ当該記号又は点字に対応して記録された不可視の二次元極小バーコードとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコード読取再生装置により文書情報を再生させるための文書構造テンプレート用紙、及び文書構造テンプレート用紙を用いた文書情報再生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
失明者が利用する点字では、ひらがな一文字を表すために6つのドットが用いられ、そのようなドットパターンを羅列することで文章が構成される。しかし、点字では、漢字や記号を表し難く、点字一字の大きさは一般に6mm×1cmという枠の制限があるため、通常文字のように文字サイズを小さくすることはできない。このため、点字情報は、通常文字で表した場合よりも紙面の面積を数倍多く必要としていた。したがって、例えば入学試験や資格試験などにおける筆記試験では、失明者は問題の把握に時間がかかり、問題の見直しにも多くの頁をめくり直す作業が必要であった。
【0003】
特許文献1には、書籍の所定の位置に、キーボードから入力させるための数字とこの数字を表す点字とが併記されており、点字が表す数字を情報提示器のキーボードから入力すると、点字の横に記載されている文章の内容が音声により再生される情報提示システムが開示されている。しかし、このシステムでは、書籍の所定の位置に印刷された点字が表す数字をキーボードに入力し、音声として再生するまでは、失明者はその点字の横に記載されている文章が、自分が読みたい文章であるか否かを判断することができない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−214939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、失明者や学習障害者等が、用紙に記載された比較的大量の情報を体系的に、分かり易くしかも短時間で把握し、その中から必要な情報を、バーコード読取再生装置の再生機能を通じて、効率的に再生可能とする文書構造テンプレート用紙、及び文書構造テンプレート用紙を用いた文書情報再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、文書構造テンプレート用紙であって、二次元的に区画された複数の領域を表面に有するテンプレート用紙と、前記テンプレート用紙の領域に印刷された文書構造を示す記号または点字と、前記記号又は点字が印刷されている領域またはその近傍の領域に記録され且つ当該記号又は点字に対応して記録された不可視の二次元極小バーコードとを備え、前記記号又は点字に対応して記録された二次元極小バーコードと、前記記号又は点字に対応する詳細情報とを関連付けて記憶させたバーコード読取再生装置を用いて、前記二次元極小バーコードを読み取り、当該バーコード読取再生装置に記憶された前記記号又は点字に対応する詳細情報を再生させるために用いる文書構造テンプレート用紙が提供される。
【0007】
本発明では、テンプレートの用紙に文書情報(詳細情報)を全て点字や文字で表すのではなく、文書構造だけを記号又は点字を用いて表す。ここで、文書構造は、例えば、文書の章番号、章見出し、節番号、節見出し、節を構成する段落の段落番号等を構成要素に有する、文書の構造を表したものを意味する。文書構造の構成要素を表す記号又は点字が印刷されている紙面の領域(用紙表面における二次元座標位置で特定される区画された領域)又はその近傍領域には、当該記号又は点字に対応付けられた、不可視の二次元極小バーコードが印刷されている。文書構造の構成要素を表す記号又は点字は、それぞれ詳細情報に対応付けられており、その詳細情報は、二次元極小バーコードと対応付けられてバーコード読取再生装置内に記憶されている。それゆえ、例えば、失明者が点字を指で追いながらその点字が印刷された領域又はその近傍をバーコード読取再生装置でなぞると、その点字に表された文字又は記号に対応付けられた二次元極小バーコードをバーコード読取再生装置が読み取り、当該二次元極小バーコードに対応付けられた詳細情報をバーコード読取再生装置が再生する。すなわち、詳細情報はテンプレート用紙には記載されておらず、テンプレート用紙には文書構造だけが表されている。このため、学習障害者や失明者は文書構造を、記号や点字を通じて情報の体系として短時間で把握するとともに、それらの記号や点字が印刷されている場所から効率よく詳細情報を、バーコード読取再生装置を通じて再生することができる。また、再度、テンプレート用紙上に印刷された特定の記号や点字に対応する詳細情報が必要な場合には、全ての情報を再生する必要がなく、文書構造から認識できる特定の記号又は点字に相当する二次元極小バーコードだけを読み取ることで、その記号又は点字のみに対応する詳細情報に限定して再生することができる。
【0008】
本発明の文書構造テンプレート用紙において、前記二次元極小バーコードは、前記記号又は点字が印刷された領域の、前記テンプレート用紙における位置情報を含んでもよい。本発明の文章構造テンプレート用紙は、用紙表面に二次元座標位置で特定される複数の領域が区画されているので、各領域のテンプレート用紙における位置を、縦位置(行)や横位置(列)等に基づいて、一意に特定することができる。このため、テンプレート用紙の所定の領域に印刷された記号又は点字は、当該記号又は点字が印刷された領域の、テンプレート用紙における位置と一意に対応付けることができる。したがって、当該記号又は点字が印刷された領域又はその近傍領域に印刷される二次元極小バーコードに、当該記号又は点字が印刷された領域の位置情報を含ませることにより、当該記号又は点字と、当該二次元極小バーコードとを一意に対応付けることができる。つまり、テンプレート用紙に二次元極小バーコードを印刷する者は、テンプレート用紙の記号又は点字が印刷された領域を認識して、当該領域の位置情報を含んだ二次元極小バーコードを、当該領域又はその近傍領域に印刷すればよい。また、二次元極小バーコードが位置情報を含んでいる場合、バーコード読取再生装置には、詳細情報を位置情報と対応付けて記憶させておけばよく、位置情報は一意に特定されるので、詳細情報との対応付け作業も容易である。さらに、文書構造の修正などによる記号又は点字の印刷位置の変更にも、柔軟に対応することができる。
【0009】
本発明の文書構造テンプレート用紙において、前記詳細情報は、音声として再生されてもよい。バーコード読取再生装置の再生機能を通じて、詳細情報を音声として再生することにより、失明者や文字認知が困難な学習障害者及び高齢者であっても、詳細情報の内容を知ることができる。
【0010】
本発明の文書構造テンプレート用紙においては、前記二次元極小バーコードに、前記記号又は点字が重ねて印刷されてもよい。二次元極小バーコードは不可視であるため、その上に記号又は点字を重ねて印刷しても、学習障害者や失明者が、記号や点字を認識する妨げとならない。
【0011】
前記記号又は点字が印刷された領域に、当該記号又は点字に対応する二次元極小バーコードが複数記録されてもよい。この場合、二次元極小バーコードの上に記号や点字を重ねて印刷することにより、いくつかの二次元極小バーコードが破壊された場合でも、大半の二次元極小バーコードは読み取り可能であるため、高い読み取り信頼性を得ることができる。
【0012】
本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の文書構造テンプレート用紙と、バーコード読取再生装置とからなる文書情報再生システムであって、バーコード読取再生装置は、文書構造テンプレート用紙に記録された二次元極小バーコードを読み取るバーコード読取部と、二次元極小バーコードに含まれる、前記記号又は点字が印刷された領域の、前記テンプレート用紙における位置情報と、当該記号又は点字に対応する詳細情報とが関連付けて記憶された記憶部と、前記バーコード読取部が読み取った二次元バーコードに含まれる位置情報に基づいて、当該位置情報に関連付けられた詳細情報を前記記憶部から検索し、当該詳細情報を再生する再生部とを備える文書情報再生システムが提供される。
【0013】
本発明の第2の態様による文書情報再生システムを利用することにより、学習障害者や失明者は、文書構造を、文書構造テンプレート用紙に印刷された記号や点字を通じて情報の体系として短時間で把握するとともに、それらの記号や点字に対応付けられた詳細情報を、バーコード読取再生装置を通じて効率よく再生することができる。
【0014】
本発明の文書情報再生システムにおいて、前記詳細情報は、音声として再生されてもよい。詳細情報を音声として再生することにより、失明者や文字認知が困難な学習障害者及び高齢者であっても、詳細情報の内容を知ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、学習障害者や失明者が、用紙に記載された比較的大量の情報を、体系的に、分かり易く、しかも短時間で把握し、その中から必要な情報を、バーコード読取再生装置の再生機能を通じて、効率よく再生することを可能とする文書構造テンプレート用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る文書構造テンプレート用紙を、入学試験等における試験問題用紙に適用した例について説明する。なお、以下の説明において、「文書構造」は、試験科目名や設問番号、問題文の段落番号、解答番号、選択肢の番号・記号等を構成要素として有する、試験問題の構造を意味するものとする。
【0017】
図1(a)は、本発明の文書構造テンプレート用紙の一部を示す図であり、図1(b)は、文書構造テンプレート用紙1の一つの領域aを拡大して示した図である。本発明の文書構造テンプレート用紙1は、二次元的に区画された複数の領域aを表面に有するテンプレート用紙Pと、テンプレート用紙Pの表面に印刷された点字2と、点字2が印刷された領域aに記録された二次元極小バーコード3とを備える。なお、説明の都合上、図1(b)では二次元極小バーコード3の輪郭を点線で示しているが、実際は不可視である。
【0018】
テンプレート用紙Pは、点字2や二次元極小バーコード3を印刷可能な紙であればよい。本実施形態では、図1(a)に示すように、テンプレート用紙Pの表面には、複数の領域a(以下「升目」という)がX方向、及びX方向に直交するY方向に区画されている。そしてこれらの升目aは、それぞれの大きさが均等になるように区画されている。具体的には、1つの升目の大きさは、縦約1cm、横約5mmである。本実施形態では、テンプレート用紙Pは、X方向に40列、Y方向に19行に区画されている。なお、説明の都合上、図1(a)及び図1(b)では升目の区画は実線によって示しているが、実際にはテンプレート用紙には印刷されない。
【0019】
テンプレート用紙Pの表面には、文書構造を構成する要素の1つを表す点字2が印刷されている。各点字2は、テンプレート用紙Pの表面に区画された1つの升目aに収まるように印刷される。
【0020】
そして、点字2が印刷されたテンプレート用紙Pの升目aには、不可視の二次元極小バーコード3が記録されている。二次元極小バーコード3は、約0.5mm四方の大きさを有する。このため、テンプレート用紙Pの1つの領域aに、同一の情報を含む二次元極小バーコード3を、複数印刷することができる。したがって、二次元極小バーコード3の上に点字2を重ねて印刷することにより、いくつかの二次元極小バーコード3が破壊された場合でも、大半の二次元極小バーコード3は読み取り可能であるため、高い読み取り信頼性を得ることができる。
【0021】
二次元極小バーコード3には、その二次元極小バーコード3が記録された升目aの、テンプレート用紙P上の位置に関する情報が含まれている。テンプレート用紙P上の位置に関する情報は、その升目aが、テンプレート用紙Pの何頁目の、何行目の、行頭から何升目か、あるいはその行内の何番目の情報かといった情報を、例えば10進数や16進数によってコード化したものである。
【0022】
次に、本発明の文書構造テンプレート用紙1とともに用いられる、バーコード読取再生装置10について説明する。
【0023】
バーコード読取再生装置10は、図2(a)の概略構成図に示すように、バーコード読取部11、記憶部12、及び再生部13を備える。バーコード読取部11は、二次元極小バーコード3を読取可能なものであれば、任意のものを用いることができるが、高い読取信頼性を確保するためには、読取可能範囲は狭いほうが好ましい。
【0024】
記憶部12としては、例えば、不揮発性メモリ等を用いることができる。記憶部12には、二次元極小バーコード3に含まれる10進数又は16進数に変換されたテンプレート用紙P上の位置情報と、その位置に印刷された点字2に対応する詳細情報とが対応付けられて記憶されている。詳細情報を音声により再生する場合は、例えば図2(b)に示すように、詳細情報が録音された音声ファイルのファイル名を、テンプレート用紙P上の位置情報と対応付けて記憶させればよい。
【0025】
そして、再生部13は、バーコード読取部11が読み取った二次元極小バーコード3に含まれる位置情報に基づいて、当該位置情報に対応する詳細情報を記憶部12から検索し、再生する。詳細情報を音声により再生する場合は、当該位置情報に対応する音声ファイル名を検索し、当該音声ファイル名に該当する音声ファイルを再生すればよい。この場合、音声ファイルも、記憶部12に記憶させておけばよい。
【0026】
次に、通常文字で作成された試験問題から、文書構造テンプレート用紙1を作成する方法について、図を参照しながら説明する。
【0027】
図3及び図4は、通常文字で作成された試験問題の一部(2頁分)を示す図である。図3に示される試験問題の第1頁目には、試験科目名、設問番号及び、問題文が記載されている。そして、問題文は4つの段落から構成されており、第1段落には下線a、第2段落には下線b及び下線c、第3段落には下線d及び下線e、第4段落には下線f及び下線gが引かれている部分が存在する。そして、図4に示される試験問題の第2頁目には、小問番号、問題文、解答番号、及び選択肢が記載されている。
【0028】
文書構造テンプレート用紙の作成者は、まず、試験問題の第1頁目の文書構造を文書構造テンプレート用紙1上に点字2で表すために、文書構造の構成要素となる試験科目名、設問番号、段落番号、段落中の下線を示す記号を試験問題の第1頁目から抽出する。そして、抽出した構成要素をテンプレート用紙上の升目に対応付ける。具体的には、図3に示す試験問題の第1頁目から、試験科目名「現代社会A」、設問番号「第1問」、段落番号「1〜4」、及び段落中の下線を示す記号「a〜g」を抽出する。そして、これらの抽出した構成要素を、所定のルールに基づいてテンプレート用紙P上の升目aに対応付ける。例えば、問題文の1つの段落はテンプレート用紙P上では1行で表現し、1つの段落に含まれる1文をテンプレート用紙P上では「‐」で表現し、段落中の下線を示す記号をテンプレート用紙P上ではアルファベットの小文字で表現するというルールに基づいて、試験問題第1頁目の文書構造を文書構造テンプレート用紙1上に表現すると、図5の上から1〜5行目のように表現される。
【0029】
また、第1頁目の場合と同様に、試験問題の第2頁目の文書構造を文書構造テンプレート用紙1上に点字2で表すために、図4に示す試験問題の第2頁目から、文書構造の構成要素となる小問番号「問1」、問題文中の選択肢「ア〜エ」、解答番号「1」、及び解答選択肢「1〜6(図4中、丸付き数字1〜6)」を抽出する。そして、これらの抽出した構成要素を、所定のルールに基づいてテンプレート用紙P上の升目aに対応付ける。例えば、1つの小問はテンプレート用紙P上では1行で表現し、問題文が長い場合は2行で表現するというルールに基づいて、試験問題第2頁目の文書構造を文書構造テンプレート用紙上に表現すると、図5の上から7〜8行目のように表現される。このように、本発明の文書構造テンプレート用紙では、通常文字で記載された試験問題2頁分の文書構造を、わずか8行で表現することができるので、試験問題の文書構造を短時間で容易に把握することができる。なお、上記ルールで作成した文書構造の解読法については、予め、試験の受験者に知らせておく必要がある。
【0030】
次に、文書構造テンプレート用紙1の作成者は、文書構造の構成要素が対応付けられたテンプレート用紙P上の升目aの位置をコード化する。例えば、図6は、文書構造テンプレート用紙の頁番号(page)、テンプレート用紙における行番号(line)、その行内の何番目の情報であるか(item)、その行内の行頭からの位置(position)、その情報の文字数(length)を数字で表し、これらの数字を所定のルールにしたがって10進数及び16進数のコードに変換したテーブルの一部を示している。
【0031】
そして、文書構造テンプレート用紙1の作成者は、テンプレート用紙P上の升目aの位置を表す10進数又は16進数のコードを二次元極小バーコード3に含ませ、当該升目aに印刷する。このとき、前述したように、二次元極小バーコード3は微小であるため、1つの升目aに同一の二次元極小バーコード3を多数印刷することができる。さらに、文書構造テンプレート用紙1の作成者は、当該升目aに対応付けられた文書構造の構成要素を表す点字2を、当該升目aに印刷する。つまり、当該升目aに印刷された二次元極小バーコード3の上から、点字2を印刷することにより、図1に示すような文書構造テンプレート用紙1を作成することができる。
【0032】
なお、文書構造テンプレート用紙1の作成者は、失明者が文書構造テンプレート用紙1から、バーコード読取再生装置10を通じて、必要とする情報を再生可能とするために、前述したように、バーコード読取再生装置10の記憶部12に対して、テンプレート用紙P上の升目aの位置を表す10進数又は16進数のコードと、その升目aに印刷された点字2に対応する詳細情報とを対応付けて記憶させておく必要がある。ここで、詳細情報は、例えば、試験問題の問題文の一つの段落の内容や、一つの選択肢の内容等、文書構造の構成要素の詳細情報を意味する。
【0033】
前述の、本発明の文書構造テンプレート用紙1では、用紙表面に二次元座標位置で特定される複数の升目aが区画されているので、各升目aのテンプレート用紙Pにおける位置を、縦位置(行)や横位置(列)等に基づいて、一意に特定することができる。このため、テンプレート用紙Pの所定の升目aに印刷された点字2は、当該点字2が印刷された升目aの、テンプレート用紙Pにおける位置と一意に対応付けることができる。そして、当該点字2が印刷された升目aに印刷される二次元極小バーコード3には、当該点字2が印刷された升目aの位置情報が含まれるので、当該点字2と、当該二次元極小バーコード3とは、当該升目aの位置情報を介して一意に対応付けられている。したがって、テンプレート用紙Pに二次元極小バーコード3を印刷する者は、テンプレート用紙P上の、点字2が印刷される升目aの位置を把握した上で、当該升目aの位置をコード化して二次元極小バーコード3に含ませ、当該升目aに印刷すればよい。また、二次元極小バーコード3が位置情報を含んでいるので、バーコード読取再生装置10には、詳細情報を位置情報と対応付けて記憶させておけばよく、位置情報は一意に特定されるので、詳細情報との対応付け作業も容易である。さらに、例えば文書構造の修正などにより、点字を印刷する位置が変更した場合でも、変更後の位置を容易に特定することができ、バーコード読取再生装置10に記憶されている位置情報を、変更後の位置情報に容易に修正することができる。
【0034】
次に、本発明の文書構造テンプレート用紙1の使用方法について説明する。まず、失明者は、テンプレート用紙Pの表面に印刷された複数の点字2を触読することにより、試験問題全体の構造を把握する。そして、試験問題全体の中から、詳細情報を知りたい箇所、例えば問題文中の一つの文を示す点字部分に、バーコード読取再生装置10のバーコード読取部11をかざす。すると、バーコード読取部11は、点字2が印刷された升目aに記録された二次元極小バーコード3を認識し、二次元極小バーコード3に含まれるテンプレート用紙P上の位置情報を読み取る。バーコード読取再生装置の記憶部12には、予め、テンプレート用紙P上の位置情報と、その位置に記録された点字2に対応する詳細情報の音声データとが関連付けて記憶されている。これにより、二次元極小バーコード3から読み取った位置情報と関連付けられている詳細情報の音声データが、バーコード読取再生装置10の再生部13によって再生される。
【0035】
具体的には、図1(a)に示す文書構造テンプレート用紙1を触読した失明者は、上から第1行目(最上段を第0行とする)には、試験問題第1問の問題文の第1段落の構成が表されており、第1行目の行頭から第7升目のa1(行頭は0升目とする)に印刷された点字2aが、第1段落における一つ目の文を意味することを把握することができる。そして、第1段落の一つ目の文の詳細な内容を知りたい場合、失明者は、当該点字2aが印刷された升目a1に、バーコード読取部11をかざす。升目a1は、図6に示すように、テンプレート用紙第1頁目、第1行目、行頭から第7升目と特定でき、テンプレート用紙上の位置を所定のルールで10進数にコード化すると「530」と表すことができるので、升目a1に記録された二次元極小バーコード3には、位置情報「530」が含まれている。バーコード読取部11が、二次元極小バーコード3から位置情報「530」を読み取ると、バーコード読取再生装置10の再生部13は、位置情報「530」と関連付けられた詳細情報の音声ファイルを記憶部12から検索し、当該音声ファイルを再生する。これにより、失明者は、試験問題第1問の問題文の第1段落第1文「「宇宙船地球号」の船体は腐食し、船の燃料は底をつきつつあり、乗組員はこれまで経験したことのない状況に追い込まれようとしている。」を、音声により聞くことができる。
【0036】
本発明において、バーコード読取再生装置10としては、例えば、既に市販されている、先端にバーコードリーダが取り付けられたICレコーダを用いることができる。また、パソコンにバーコードリーダを接続し、バーコードリーダが読み取った位置情報と関連付けられた音声情報を、パソコンに内蔵されている音声再生装置によって再生させてもよい。これらの場合、ICレコーダやパソコンには、予め、テンプレート用紙上の位置情報と、その位置に記録された点字に対応する詳細情報の音声データとを関連付けて記憶させておく必要がある。
【0037】
このように、本発明は、文書構造テンプレート用紙と、バーコード読取再生装置とからなる文書情報再生システムとして利用することができる。失明者は、文書情報再生システムを利用することにより、試験問題の全体構造を体系的に、短時間で把握できるとともに、当該試験問題の中から、必要な部分についての詳細情報のみを、バーコード読取再生装置10の再生機能を通じて効率的に再生させることが可能となる。なお、本発明の文書情報再生システムを用いた試験を実施する際は、文書構造テンプレート用紙1、及びバーコード読取再生装置10の使用方法について、受験者が予め練習する機会を設けることが望ましい。
【0038】
以上説明してきた本発明の実施形態では、文書構造テンプレート用紙1の表面に点字2が印刷されていたが、点字2ではなく、文書構造の構成要素である設問番号や選択肢の記号等が、通常文字あるいは記号で印刷されていてもよい。この場合、試験問題の長文を全て読まなくても、試験問題の構造を把握できるので、文字認知に障害を有する学習障害者も受験することが可能となる。また、点字と通常文字あるいは記号とが、両方とも文書構造テンプレート用紙に印刷されていてもよい。この場合、失明者も、学習障害者も、一つの文書構造テンプレート用紙を利用することができ、文書構造テンプレート用紙が汎用的となる。
【0039】
上記実施形態では、詳細情報が音声として再生される例について説明したが、詳細情報の再生は、音声による再生に限られない。例えば、詳細情報を、パソコン等のディスプレイに通常文字により表示してもよい。この場合は、健常者が、通常文字あるいは記号が印刷された文書構造テンプレート用紙を用いて、必要とする部分のみをパソコン等のディスプレイ上で文字として読むことができる。また、パソコン等のディスプレイに通常文字で表示するとともに、音声で再生してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、点字が印刷された升目内に、当該点字に対応付けられた同一の二次元極小バーコードが複数記録されていたが、二次元極小バーコードを記録する場所は、点字が印刷された升目と同一の升目に限られない。例えば、点字が印刷された升目の上下左右いずれかの升目、即ち、点字が印刷された升目の近傍に二次元極小バーコードを記録するという所定のルールに基づいて、文書構造テンプレート用紙を作成してもよい。この場合、失明者は、バーコード読取部を点字の印刷位置の所定の近傍に合わせればよく、点字に触れながらその近傍に記録された二次元極小バーコードを、バーコード読取部に読み取らせることができる。
【0041】
以上、本発明の文書構造テンプレート用紙を、入学試験等における試験問題用紙に適用した例について説明してきたが、本発明の文書構造テンプレート用紙は、入学試験等に限らず、教科書、教材、あるいは通常の書籍等にも適用することができる。例えば、本発明の文書構造テンプレート用紙の1頁に、書籍の1章に含まれる節番号、節見出し、及び各節を構成する段落の段落番号等を点字、あるいは通常文字で印刷するとともに、それらの点字、あるいは通常文字が印刷された領域、又はその近傍領域に当該点字、あるいは通常文字に対応付けられた二次元極小バーコードを印刷する。そして、バーコード読取再生装置には、当該二次元極小バーコードと対応付けられた詳細情報を、音声情報として記憶させる。これにより、失明者、及び文字認知が困難な学習障害者、並びに高齢者等は、文書構造テンプレート用紙の、段落番号等が印刷されている領域をバーコード読取再生装置で触れることにより、当該段落番号に該当する段落の内容を、音声情報としてバーコード読取再生装置によって再生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)本発明の文書構造テンプレート用紙の一部を示す図である。(b)文書構造テンプレート用紙の一つの升目を拡大して示す図である。
【図2】(a)バーコード読取再生装置の概略構成図である。(b)バーコード読取再生装置の記憶部に記憶される位置情報と音声ファイル名の一例を示す図である。
【図3】通常文字で記載された試験問題の第1頁目を示す図である。
【図4】通常文字で記載された試験問題の第2頁目を示す図である。
【図5】図3及び図4に示す試験問題の文書構造を、テンプレート用紙の升目に対応付けた様子を示す図である。
【図6】テンプレート用紙上の升目の位置情報をコード化するためのテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 文書構造テンプレート用紙 2 点字 3 二次元極小バーコード 10 バーコード読取再生装置 11 バーコード読取部 12 記憶部 13 再生部 P テンプレート用紙 a テンプレート用紙上の升目(領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書構造テンプレート用紙であって、
二次元的に区画された複数の領域を表面に有するテンプレート用紙と、
前記テンプレート用紙の領域に印刷された文書構造を示す記号または点字と、
前記記号又は点字が印刷されている領域またはその近傍の領域に記録され且つ当該記号又は点字に対応して記録された不可視の二次元極小バーコードとを備え、
前記記号又は点字に対応して記録された二次元極小バーコードと、前記記号又は点字に対応する詳細情報とを関連付けて記憶させたバーコード読取再生装置を用いて、前記二次元極小バーコードを読み取り、当該バーコード読取再生装置に記憶された前記記号又は点字に対応する詳細情報を再生させるために用いる文書構造テンプレート用紙。
【請求項2】
前記二次元極小バーコードは、前記記号又は点字が印刷された領域の、前記テンプレート用紙における位置情報を含む請求項1に記載の文書構造テンプレート用紙。
【請求項3】
前記詳細情報は、音声として再生される請求項1又は2に記載の文書構造テンプレート用紙。
【請求項4】
前記二次元極小バーコードに、前記記号又は点字が重ねて印刷されている請求項1〜3の何れか一項に記載の文書構造テンプレート用紙。
【請求項5】
前記記号又は点字が印刷された領域に、当該記号又は点字に対応する二次元極小バーコードが複数記録されている請求項1〜4の何れか一項に記載の文書構造テンプレート用紙。
【請求項6】
請求項2に記載の文書構造テンプレート用紙と、バーコード読取再生装置とからなる文書情報再生システムであって、
バーコード読取再生装置は、文書構造テンプレート用紙に記録された二次元極小バーコードを読み取るバーコード読取部と、
二次元極小バーコードに含まれる、前記記号又は点字が印刷された領域の、前記テンプレート用紙における位置情報と、当該記号又は点字に対応する詳細情報とが関連付けて記憶された記憶部と、
前記バーコード読取部が読み取った二次元バーコードに含まれる位置情報に基づいて、当該位置情報に関連付けられた詳細情報を前記記憶部から検索し、当該詳細情報を再生する再生部とを備える文書情報再生システム。
【請求項7】
前記詳細情報は、音声として再生される請求項6に記載の文書情報再生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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