説明

文書管理システム及び該システム用プログラム

【課題】研究機関等で各種データ(文書)を知的資産として活用するために用いられる文書管理システムにおいて、文書をフォルダに格納してフォルダをツリー表示する場合に、ユーザの希望する観点から文書を閲覧し、特定できるようにする。
【解決手段】ユーザに、予め用意されたマスターファイルに記載されている各分類を、該分類の数に対応する数から成る階層のいずれかに割り当てさせる。次いで、選択された階層毎の分類に基づき、対応するフォルダ及び文書をツリー形式で表示するようにする。これにより、従来は固定されていた階層構造を自由に変更することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子文書を管理するシステム、及び、コンピュータにおいてそのようなシステムを構成するための文書管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
研究開発の分野においては、論文などの研究開発の成果や、組織での研究活動結果に関する社会的説明責任の重要性がますます高まっている。これとともに、ナレッジマネジメント(知的資産の組織的共有による効率的な経営)の一環として、研究開発活動で生まれた知的資産を効果的に蓄積し、知識化・共有化を図りつつ、有効に活用することが重要となっている。
【0003】
このような、特に研究開発業務を対象とした電子文書の記録管理システムは既に開発されて実用に供されている。例えば非特許文献1に記載の研究開発向け記録管理システムでは、記録管理の国際標準であるISO5489のガイドライン(文書は組織内での活動が正確に反映され、また業務の支援だけでなく説明責任の目的に使われなければならない)に則って開発されている。この記録管理システムでは、研究におけるドキュメントに加え、実験や分析・計測データなどの研究開発活動で生産される様々なコンテンツにメタデータを付加して記録化することができ、プロジェクトのメンバー間での情報共有や、過去のプロジェクトで得られた知見の検索などを効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】水戸康敬、石橋功「研究開発向け記録管理システム“源藏”の開発」,島津評論, Vol. 64, No. 3・4 (2008.4), pp. 205-214
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したシステムを含め、従来の文書管理システムでは、各文書(レコードなど、文書管理システムで管理される各種の電子文書のこと)は、例えば大分類→中分類→小分類、のように階層化された管理構造の下に分類されている。文書を閲覧する場合には、通常、大分類、中分類、小分類の3階層から成るフォルダがツリー形式で視覚化されて表示される。
【0006】
しかし、このようなツリー形式によるファイル表示では、文書の閲覧の自由度に制限があるという問題があった。
【0007】
一例として、大分類、中分類、小分類が以下のように設定されていた場合を考える。
大分類:「医薬品分析市場」、「環境分析市場」
中分類:「日本」、「米国」、「欧州」
小分類:「GC(ガスクロマトグラフ)」、「LC(液体クロマトグラフ)」、「GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析装置)」、「LCMS(液体クロマトグラフ質量分析装置)」
この場合、医療品分析市場(大分類)→米国(中分類)→LCMS(小分類)とツリーを辿って文書を閲覧することはできても、医療品分析市場(大分類)→LCMS(小分類)→日本(中分類)のようにツリーを辿って文書を閲覧することはできない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、研究機関等で各種データ(文書)を知的資産として活用するために用いられる文書管理システムにおいて、文書をフォルダに格納してフォルダをツリー表示する場合に、ユーザの希望する観点から文書を閲覧し、特定できるようにする文書管理システム及び文書管理システム用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明は、分類が記載されたメタデータを有する電子文書を管理するためのシステムであって、複数の文書を、それぞれの分類に対応したフォルダによってツリー表示する機能を備え、
a)分類と各分類を構成する項目とが少なくとも記載されたマスターファイルを保存するマスターファイル保存部と、
b)ユーザに、前記マスターファイル保存部に保存されているマスターファイルに記載された各分類を、該分類の数に対応する数から成る階層のいずれかに割り当てさせる階層分類選択部と、
c)前記階層分類選択部によって選択された階層毎の分類に基づき、対応するフォルダ及び文書をツリー形式で表示する階層表示変更部と、
を有することを特徴とする。
【0010】
また、分類が記載されたメタデータを有する電子文書を管理するシステム用のプログラムであって、複数の文書を、それぞれの分類に対応したフォルダによってツリー表示する機能を備え、
分類と各分類を構成する項目とが少なくとも記載されたマスターファイルを保存するマスターファイル保存部にアクセス可能なコンピュータを、
ユーザに、前記マスターファイル保存部に保存されているマスターファイルに記載された各分類を、該分類の数に対応する数から成る階層のいずれかに割り当てさせる階層分類選択部、
前記階層分類選択部によって選択された階層毎の分類に基づき、対応するフォルダ及び文書をツリー形式で表示する階層表示変更部、
として動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る文書管理システム及び文書管理プログラムによれば、ツリー表示における階層の分類を、ユーザが自由に変更することができる。従って、ユーザの興味のある角度からフォルダの階層を組み立てることにより、文書をより簡単に管理し、このような知的資産を一層効果的に活用することが可能となる。また、ユーザが必要としている文書をより素早く見つけることができるから、操作性の向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る文書管理システムの一実施形態の概略構成を示す図。
【図2】マスターファイルの一例。
【図3】階層分類選択画面の一例。
【図4】本発明に係る文書管理システムにおけるフォルダの表示例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る文書管理システムの実施形態の例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1に、本発明に係る文書管理システム1の一実施形態を示す。文書管理システム1の実態はコンピュータであり、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)10にメモリ12、LCD(Liquid Crystal Display)等から成るモニタ(表示部)14、キーボードやマウス等から成る入力部16、ハードディスク等の大容量記憶装置から成る記憶部20が互いに接続されている。
記憶部20には、文書管理システム用プログラム21、文書保存部22、マスターファイル保存部23が設けられている。記憶部20にはまた、OS(Operating System)24が記憶されている。
【0015】
本発明に係る文書管理システム1を示している図1においては、文書管理システム用プログラム21に係るように、階層分類選択部31、階層表示変更部32、及び文書分類変更部32が示されている。これらの階層分類選択部31、階層表示変更部32、文書分類変更部32は、いずれも基本的にはCPU10が文書管理システム用プログラム21を実行することによりソフトウエア的に実現される。なお、以下では適宜、文書管理システム用プログラム21を単に「プログラム21」と略記する。
【0016】
文書保存部22には、文書管理システム1が管理する種々のファイルが格納されている。本発明において言う「文書」は、例えば分析、測定の結果や研究の成果がまとめられたレポートをはじめ、様々なファイルのことを指すものとする。各文書には、その文書がどの分類に属しているかが記載されたメタデータが含まれている。
【0017】
マスターファイル保存部23には、マスターファイルが保存されている。このマスターファイルには、文書管理システム1において利用する分類と、各分類を構成する項目とが少なくとも記載されている。
図2に、マスターファイルの一例を示す。図2のマスターファイルでは、分類として、「大分類」、「中分類」、「小分類」の3つの分類が規定されている。そして、「大分類」という分類は「医薬品分析市場」、「環境分析市場」という2つの項目によって構成されており、「中分類」という分類は「日本」、「米国」、「欧州」という3つの項目によって構成されており、「小分類」という分類は「LC」、「GC」、「GCMS」、「LCMS」という4つの項目によって構成されていることが規定されている。
【0018】
図1に示す例では、文書保存部22及びマスターファイル保存部23が、実体がコンピュータである文書管理システム1の記憶部20に格納されているが、これら文書保存部22及び/又はマスターファイル保存部23は、文書管理システム1を構成するコンピュータに対してデータ通信可能に接続されていても、もちろん構わない。
【0019】
文書管理システム1は、文書保存部22に保存されている複数の文書を、それぞれの分類に対応したフォルダによってツリー表示する機能を備えている。例えば、ユーザが入力部16を適宜操作してモニタ14上に表示されている図示せぬ「フォルダ表示」ボタンを押下することにより、文書管理システム1はモニタ14における所定の位置に、フォルダをツリー形式で表示する。このツリー表示においては、階層形態を有するフォルダの各階層が、マスターファイルに規定されている各分類に対応する。
【0020】
図2に示すマスターファイルに基づき、「大分類」が第1階層、「中分類」が第1階層の直下階層である第2階層、「小分類」が第2階層の直下階層である第3階層であるという設定の下でツリー表示を行う場合には、図4の(A)のように、各フォルダがモニタ14上の所定のウィンドウに表示される。図4(A)に示されたフォルダの構成の場合、ユーザは、大分類→中分類→小分類という順序で分類を辿り、目的とする又は興味のある文書を特定する。
【0021】
以下、本発明における特徴的な構成である階層分類選択部31及び階層表示変更部32の動作について説明する。
【0022】
ユーザが入力部16を適宜操作(例えば画面に表示されている「階層分類選択」ボタンを押下する)と、階層分類選択部31は、図3に示すような階層分類選択画面をモニタ14の所定の位置に表示する。階層分類選択部31は、マスターファイル保存部23に保存されているマスターファイルに記載された分類(「大分類」、「中分類」、「小分類」)が3種類であることに基づき、第1階層、第2階層、第3階層という、分類の数に対応する数の階層のそれぞれに対し、分類をユーザが割り当てることができるように表示する。図3に示す階層分類選択画面では、プルダウンメニューを用いて、ユーザが第1階層に「大分類」、第2階層に「小分類」、第3階層に「中分類」を割り当てた例が示されている。異なる階層に同一の分類を割り当てることはできないため、万一、そのような設定がされた場合には、割り当てが無効である旨の警告を表示することができる。または、上位の階層から下位の階層に向かって一段階ずつ割り当てを許可し、既に割り当てられた分類については選択できないよう構成してもよい。
【0023】
次いで、ユーザが入力部16を適宜操作(例えば画面に表示されている「階層表示変更」ボタンを押下する)と、階層表示変更部32は、階層分類選択部31によって選択された各階層の分類に基づき、対応するフォルダ(及び文書)をツリー形式で表示する。例えば図4の(B)のように各フォルダをモニタ14の所定のウィンドウに表示する。この図4(B)に示されたフォルダの構成の場合、ユーザは大分類→小分類→中分類という、図4(A)に示されたフォルダの構成の場合とは異なる順序で分類を辿ることができる。
【0024】
以上、本発明に係る文書管理システムについて実施例を用いて説明したが、本発明の趣旨の範囲内で適宜に変更や修正、又は追加を行っても構わない。
【0025】
例えば、ユーザによる指示に基づき、ある文書が、その文書が格納されているフォルダから他の異なるフォルダに移動された場合に、その文書のメタデータに記載されている分類を移動先のフォルダの分類に合わせて書き改める文書分類変更部33を設けることもできる。これにより、より柔軟に文書の管理を行うことが可能となる。
なお、文書管理システム1は、文書が移動されたことに基づき、これを移動履歴として記録することが望ましい。
【0026】
また、図4においては全てのフォルダが展開された状態が示されているが、もちろん、一般的に知られているオペレーティングシステムのように、フォルダを折り畳んだり展開させたりできるようにしてもよい。
【0027】
さらにまた、各フォルダの横に、そのフォルダの内部にある文書の数を表示させる等、各種のユーザが使い易い環境を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…文書管理システム
10…CPU
12…メモリ
14…モニタ
16…入力部
20…記憶部
21…文書管理システム用プログラム
22…文書保存部
23…マスターファイル保存部
24…OS
31…階層分類選択部
32…階層表示変更部
33…文書分類変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分類が記載されたメタデータを有する電子文書を管理するためのシステムであって、複数の文書を、それぞれの分類に対応したフォルダによってツリー表示する機能を備え、
a)分類と各分類を構成する項目とが少なくとも記載されたマスターファイルを保存するマスターファイル保存部と、
b)ユーザに、前記マスターファイル保存部に保存されているマスターファイルに記載された各分類を、該分類の数に対応する数から成る階層のいずれかに割り当てさせる階層分類選択部と、
c)前記階層分類選択部によって選択された階層毎の分類に基づき、対応するフォルダ及び文書をツリー形式で表示する階層表示変更部と、
を有することを特徴とする文書管理システム。
【請求項2】
ユーザによる指示に基づき、ある文書が、該文書が格納されているフォルダから他の異なるフォルダに移動された場合に、該文書のメタデータに記載されている分類を移動先のフォルダの分類に合わせて書き改める文書分類変更部
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の文書管理システム。
【請求項3】
分類が記載されたメタデータを有する電子文書を管理するシステム用のプログラムであって、複数の文書を、それぞれの分類に対応したフォルダによってツリー表示する機能を備え、
分類と各分類を構成する項目とが少なくとも記載されたマスターファイルを保存するマスターファイル保存部にアクセス可能なコンピュータを、
ユーザに、前記マスターファイル保存部に保存されているマスターファイルに記載された各分類を、該分類の数に対応する数から成る階層のいずれかに割り当てさせる階層分類選択部、
前記階層分類選択部によって選択された階層毎の分類に基づき、対応するフォルダ及び文書をツリー形式で表示する階層表示変更部、
として動作させることを特徴とする文書管理システム用プログラム。
【請求項4】
前記コンピュータを更に、
ユーザによる指示に基づき、ある文書が、該文書が格納されているフォルダから他の異なるフォルダに移動された場合に、該文書のメタデータに記載されている分類を移動先のフォルダの分類に合わせて書き改める文書分類変更部
として動作させることを特徴とする請求項3に記載の文書管理システム用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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