説明

断熱シート

【課題】破損時のパーティクル問題が少なく、内部の圧力維持が容易で、広範な温度域に使用可能な断熱シートを得る。
【構成】断熱シート1は外側板2と内側板3とによって断熱層である密閉空間4を形成し、一端にガス排出管を装着することによって、密閉空間4を減圧層若しくは真空層とすることによって高い断熱性能を与えることができる。この密閉空間4は必要に応じて気体層としても良好な断熱性能を得ることができる。また密閉空間4内側には熱伝導率が空気(0.027W/mK)よりも低い例えば、アルゴン(0.018)、キセノン(0.006)などの気体を充填してもよい。外側板2と内側板3は薄板になるほど、熱の伝わる量が減るため、断熱効果が高くなる。したがって、できるだけ薄板で構成する必要があり、板厚は0.3mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に断熱シート、特に真空断熱シートは、発泡剤(例えば発泡ウレタン等)を用いた断熱材に比べて、断熱性能が格段に高いことが知られている。この真空断熱シートの断熱性能は、真空断熱シートの内部の真空度が低下すると悪化する。また、シート内部を真空にすると、シート外部の大気圧との差圧でシートが潰れてしまう。
【0003】
シートの潰れを防止するために、特許文献1,2では内部に芯材を充填する充填型方法が示され、特許文献3では、シート表面に凹凸を設けて突き合わせ、構造的に潰れを防止する方法が示されている。この充填型では真空断熱シートの内部にリフレクタを収納して放射伝熱量の低減が図られる。例えば充填材としてセラミックファイバを用いる場合には安価に製造でき、十分に減圧することによって申し分のない断熱性能が得られる。しかしこのセラミックファイバを充填材に用いた充填型真空断熱シートではガス放出量が比較的大きいため、封止後内部を高真空に保つのが困難であるという問題がある。また破損した場合にはセラミックファイバが飛散するためクリーン環境下での使用には注意を要するという問題がある。
【0004】
また充填材に含まれる水分の放出や充填材がポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の有機繊維により構成されている場合には、有機繊維からの微量のガスの放出によって真空度が低下する。シート表面に凹凸を設けるタイプは、表裏の凹凸を突き合わせて、柱のような構造を形成し、シートが差圧で潰れるのを防止している。
【0005】
特許文献1、2は水分やガスを吸着あるいは吸収によって取り込むゲッター剤を密封した断熱シートに関し、特に特許文献2は容易に使用することができるとともに、リサイクルを容易に行うことができる断熱シート、断熱シートの使用方法、及び断熱シートのリサイクル方法を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−281424号公報
【特許文献2】特開2002−48466号公報
【特許文献3】特開2004−211376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に示されている断熱シートでは、構造が複雑でありコストが増大する。また断熱シートを設置する部分の温度によっては、断熱シートに使用されている材料(例えば樹脂やプラスチック等)が溶けたり変質したりするおそれがある。さらに、断熱性能の向上のために真空断熱容器を発泡剤の断熱材で包んで使用する場合には、開閉弁が邪魔になり真空断熱容器の設置作業に手間がかかってしまう。
しかもこの特許文献1、2に示されている充填型真空断熱シートではその使用環境又は用途によっては真空差圧での変形(潰れ)を防止する構造が別途必要となる。逆に、潰れ防止が不要なほど、内部に材料を充填すると、断熱性能が悪化する。
【0008】
潰れ防止構造を有する特許文献3では、表裏の凹凸の位置が少しでもズレると、柱の役割をはたさず、シートは潰れてしまう。よって、表裏の凹凸を、高い精度で合わせる必要があり、製造コストが増大する。また、表裏が凹凸部で接触しているため、この接触部を通じて伝熱が発生する。このため、凹凸はできるだけ少なくする必要があるが、少なすぎると柱の役目が失われ、シートが潰れる。また、凹凸の突き合わせ部には力が集中するため凹凸先端の潰れが発生し、伝熱量が増大する。凹凸先端の潰れが発生しない程度に凹凸の数量を増やすと、伝熱量も増大し、断熱性能が悪化する。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、破損時のパーティクル問題が少なく、内部の圧力維持が容易で、広範な温度域に使用可能な断熱シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の断熱シートは、互いに貼り合わされた2枚の金属板間に断熱層を形成してなることを特徴とする。
【0011】
また本発明の断熱シートは、互いに貼り合わされた2枚の金属板間に断熱支柱を配置してなることを特徴とする。
断熱支柱を金属を用いた断熱積層体又は樹脂又はセラミックスとすることができる。
互いに貼り合わされた2枚の金属板の少なくともいずれか一方が断熱層に向けて凸となる起伏を有するようにすることができる。
【0012】
互いに貼り合わされた2枚の金属板のそれぞれが断熱層に向けて凸となる起伏を有し、それぞれの凸部の頂部を相互に接触させてなるようにしてもよい。
互いに貼り合わされた2枚の金属間に中間板を配置してなるようにすることができる。
さらに互いに貼り合わされた2枚の金属間にハニカム状の金属スペーサを複数積層してなるなるようにすることができる。
また金属板をステンレス板とすることができ、断熱層が気体層であるようにしてもよく、あるいは断熱層を減圧層としてもよい。
【0013】
[作用]
本発明の断熱シートは断熱部分を薄板で形成し、薄板になるほど、熱の伝わる量が減り断熱効果が高くなり、ケースのサイズを問わず高効率の断熱を行うことができる。また板厚が薄くなると、耐圧が下がり、外側板が潰れて、内側板に接触すると、その接触部分を通して伝熱するため、断熱性能が著しく低下する問題を外側板外面に起伏を有する形状効果によって解消することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の断熱シートは、は、金属性または金属とセラミックスの固形材で構成されているために、破損時のパーティクル問題がなく、内部の圧力維持が容易で、広範な温度域に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の断熱シートの平面図である。
【図2】(a)本発明の他の実施の形態の断熱シートの模式横断面図、(b)本発明のさらに他の実施の形態の断熱シートの模式横断面図である。
【図3】(a)本発明の別の実施の形態の断熱シートの模式横断面図、(b)本発明のさらに別の実施の形態の断熱シートの模式横断面図、(c)本発明のまた別の実施の形態の断熱シートの模式横断面図である。
【図4】(a)本発明のさらにまた別の実施の形態の断熱シートの分解平面図、(b)同部分分解斜視図、(c)図4(a)の部分拡大図である。
【図5】図5(a)本発明のさらにまた別の実施の形態の断熱シートの分解斜視図、(b)本発明のさらにまた別の実施の形態の断熱シートの他の分解斜視図、(c)本発明のさらにまた別の実施の形態の断熱シートの部分平面模式図、である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2(a)に本発明の一実施の形態の断熱シート1を示す。断熱シート1は外側板2と内側板3とによって断熱層である密閉空間4を形成し、一端にガス排出管5を装着することによって、密閉空間4を減圧層若しくは真空層とすることによって高い断熱性能を与えることができる。
【0017】
密閉空間4を、気体の対流が影響しない程度に減圧(真空)とした場合は、密閉空間4の厚みと断熱性能の関連は少なくなる。例えば、密閉空間4を減圧(真空)にした断熱シート1の厚みが10mmのものと、1mmのものを製作した場合、両者の断熱性能は、原理上、概ね等しくなる。
【0018】
この密閉空間4は必要に応じて気体層としても良好な断熱性能を得ることができる。
また密閉空間4内側には熱伝導率が空気(0.027W/mK)よりも低い例えば、アルゴン(0.018)、キセノン(0.006)などの気体を充填してもよい。
外側板2及び内側板3は薄板になるほど、熱の伝わる量が減るため、断熱効果が高くなる。したがって、できるだけ薄板で構成する必要があり、板厚は0.3mm以下とする。
【0019】
本実施の形態ではこの外側板2及び内側板3にはステンレス板が用いられる。
密閉空間4内部を気体層とした場合、内部の気体に対流が発生しないような、気体層の厚みとする必要がある。対流が発生すると、断熱性能は著しく低下する。例えば、断熱シート1を設置する部分の温度が500℃ならば、気体層を3mm以下にすることで、対流の防止が可能となる。設置する部分の温度が900℃ならば、気体層を2mm以下にする必要がある。
【0020】
また本実施の形態では外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6a、bを一体に形成する。
この様に外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6を形成することによって、できるだけ薄板で構成しても、その耐圧を向上してシートサイズを問わず高い断熱性能を発揮することができる。
【0021】
断熱シート1内部を減圧(真空)にした場合、外部は大気圧なので、断熱シート1表面には、約1.0 kgf/cmの差圧がかかる。例えば、1m×1mの断熱シート1の場合、断熱シート1は表裏面から、約10トンの力で押し潰される。このため、外側板2と内側板3の間に支柱構造がないと、外側板2と内側板3は、ほぼ全面にわたって接触する。その様に外側板2と内側板3が潰れて接触すると、その接触部分を通して伝熱するため、断熱性能が著しく低下する。そこで外側板2及び/又は内側板3に起伏6を形成することによって、その様な性能の低下、破損を防止する。
【0022】
起伏6の形状は断面波形状とすることができ、また螺旋状の起伏6を形成してもよい。さらに突起状の起伏6を形成することにより断熱シート1の耐圧を向上することができる。
この場合に実施の態様によって、外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6a,bを有し、一方の起伏6aの頂部が他方の起伏6bの頂部間に位置する領域を備えるようにしてもよい。これにより断熱シート1の断熱性能を向上することができる。
【0023】
図2(a)(b)に本発明の他の実施の形態の断熱シート1を示す。本実施の形態では断熱シート1の外側板2及び内側板3間に中間板7が配置される。外側板2及び内側板3に設けられた密閉空間4に向けて凸となる起伏6a,bの頂部は中間板7に当接し、それぞれ中間板7との接触点を有する。
【0024】
中間板7があるので、外側板2の凸部と内側板3の凸部が直接接触せず、凸部と平面の接触になるため、この部分に発生する力は、中間板7の無い凸部同士の接触に比べて、はるかに小さくなる。このため、凸部が変形することはない。
同時に、中間板7として、ステンレスやアルミ、銅など放射率の小さい材料を用いたり、中間板7の表面に銀メッキやアルミ蒸着して放射率を低減することで、外側板2及び内側板3相互間の放射伝熱量を低下させ、それにより断熱シート1の断熱性能が向上される。また外側板2及び内側板3と中間板7との3層構造であり構造がシンプルで製作コストを低くすることができる。中間板7としては前述したように金属性にしてもよいし、断熱性の高いセラミックス材を用いることもできる。
中間板7を金属性にした場合も、外側板2の凸部、内側板3の凸部と点接触となるので、伝熱量が大幅に上昇することはない。
【0025】
図2(a)に示すように外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6a,bを有し、それぞれの起伏6a,bの頂部が中間板7を介して対向するようにすることができる。これにより断熱シート1の耐圧を向上することができる。
一方、図2(b)に示すように外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6a,bを有し、中間板7を介して一方の起伏6aの頂部が他方の起伏6bの頂部間に位置する領域を備えるようにしてもよい。これにより断熱シート1の断熱性能を向上することができる。
【0026】
図3(a)(b)(c)に本発明の別の実施の形態の断熱シート1を示す。
図3(a)に示す断熱シート1は起伏の無い平板の外側板2及び内側板3間に断熱支柱8が配置される。断熱支柱8としては断熱性の高いセラミックス材を用いることができる。断熱支柱8が配置されることによって断熱シート1の断熱性を低下することなく耐圧を向上することができる。
【0027】
図3(b)に示す断熱シート1は外側板2及び内側板3に密閉空間4に向けて凸となる起伏6a,bを有し、起伏6bにはさらにその頂部に凹部6cが形成される。凹部6cにはスペーサ9が配置され、そのスペーサ9に外側板2の起伏6aの頂部が突き当てられる。本実施の形態ではスペーサ9にはセラミックス系接着剤が用いられる。実施の態様によってはフリットガラスを用いることもできる。この図3(b)に示す断熱シート1によれば断熱シート1の断熱性を低下することなく耐圧を向上することができる。
【0028】
図3(c)に示す断熱シート1は起伏の無い平板の外側板2及び内側板3間にセラミックス系接着剤層10と金属板11とを交互に積層したスペーサ12が配置される。セラミックス系接着剤層10はフリットガラス層とすることもできる。このようにスペーサ12が配置されることによって断熱シート1の断熱性を低下することなく耐圧を向上することができる。
【0029】
図4(a)(b)(c)に本発明のまた別の実施の形態の断熱シート1を示す。
図4(a)に示す断熱シート1は起伏の無い平板の外側板2及び内側板3間にハニカム状の金属スペーサ13が配置される。ハニカム状の金属スペーサ13は 図4(b)(c)に示すように多数の6角形孔部13aを備える金属製ハニカム材13bを複数積層してなる。
【0030】
ハニカム材13bを1層のみ設置した場合、ハニカム材13bの6角形の各部屋が独立しているので、図5(a)(b)に示すように各部屋をつなぐ穴14や切欠き15などを設ける必要がある。しかし、この穴14や切欠き15を大きくするとハニカム材13bの強度低下につながるため、大きくできない。例えば内部を真空にする場合、穴14が小さいとハニカム材13bの各部屋の圧力が均一にできない。これにより、圧力が十分に低下した部屋を構成する6角形孔部13a部分では十分な真空断熱性能が得られるが、圧力低下が不十分な部屋を構成する6角形孔部13aでは真空断熱の効果が得られない。内部に特殊な気体、例えばキセノンガスを充填する場合も、一部の部屋はキセノンが充填されるが、他の部屋はキセノンが入らずに空気が残留する。よって、図5(c)に示すようにハニカム材13bを用いる場合は、2層以上重ねて、各部屋を独立させないようにする必要がある。このようにハニカム状の金属スペーサ13が配置されることによって断熱シート1の断熱性を低下することなく耐圧を向上することができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・断熱シート、2・・・外側板、3・・・内側板、4・・・密閉空間、6・・・起伏。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに貼り合わされた2枚の金属板間に断熱層を形成してなることを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
互いに貼り合わされた2枚の金属板間に断熱支柱を配置してなることを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。
【請求項3】
断熱支柱が金属を用いた断熱積層体又は樹脂又はセラミックスであることを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。
【請求項4】
互いに貼り合わされた2枚の金属板の少なくともいずれか一方が断熱層に向けて凸となる起伏を有することを特徴とする請求項1に記載の断熱シート。
【請求項5】
互いに貼り合わされた2枚の金属間に中間板を配置してなることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の断熱シート。
【請求項6】
互いに貼り合わされた2枚の金属間にハニカム状の金属スペーサを複数積層してなることを特徴とする断熱シート。
【請求項7】
金属板がステンレス板であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の断熱シート。
【請求項8】
断熱層が気体層であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の断熱シート。
【請求項9】
断熱層が減圧層であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の断熱シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−225428(P2012−225428A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93871(P2011−93871)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(597100538)株式会社ミラプロ (22)
【Fターム(参考)】