説明

断熱体

【課題】外装袋内における断熱層のずれを効果的に防止できる断熱体を提供する。
【解決手段】本発明に係る断熱体(1)は、エアロゲルが充填された繊維体である断熱層(10)と、不織布からなり、前記断熱層(10)と接触しつつ前記断熱層(10)を挟持する一対の保持層(21a,21b)と、織布からなり、前記断熱層(10)及び前記保持層(21a,21b)を収容する外装袋(30)と、を備え、前記外装袋(30)、前記保持層(21a,21b)及び前記断熱層(10)のうち、前記保持層(21a,21b)の一方又は両方と、前記外装袋(30)の一部と、が縫合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱体に関し、特に、外装袋に断熱層が収容された断熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外装袋に断熱層が収容された断熱体として、当該外装袋内における当該断熱層のずれを防止するために、当該外装袋と当該断熱層とを一体的に縫合するキルティング加工が施されたものがあった。すなわち、特許文献1には、薄いフェルトやウール状の断熱材をガラスクロス等の耐熱性織物の間に挟んで、これらをガラス糸で縫合したキルト状の断熱体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−106954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の断熱体においては、縫合糸を断熱層に貫通させる必要があったことから、硬いために縫合糸を貫通させることができない断熱層は採用することができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、外装袋内における断熱層のずれを効果的に防止できる断熱体を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る断熱体は、エアロゲルが充填された繊維体である断熱層と、不織布からなり、前記断熱層と接触しつつ前記断熱層を挟持する一対の保持層と、織布からなり、前記断熱層及び前記保持層を収容する外装袋と、を備え、前記外装袋、前記保持層及び前記断熱層のうち、前記保持層の一方又は両方と、前記外装袋の一部と、が縫合されていることを特徴とする。本発明によれば、エアロゲルが充填された繊維体である断熱層を採用しつつ、外装袋内における当該断熱層のずれを効果的に防止できる断熱体を提供することができる。
【0007】
また、一対の前記保持層は、前記外装袋内において前記断熱層を収容する袋を構成していることとしてもよい。こうすれば、外装袋内において、断熱層のずれをより効果的に防止することができる。また、前記保持層と前記外装袋との間に配置された、加熱用の発熱体をさらに有することとしてもよい。こうすれば、ヒータとして使用可能な断熱体を提供することもできる。また、前記外装袋、前記保持層及び前記断熱層のうち、一方の前記保持層と前記外装袋の一部とが縫合されるとともに、他方の前記保持層と前記外装袋の他の一部とが縫合されていることとしてもよい。こうすれば、外装袋内における断熱層のずれをより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る断熱体の一例を構成する部材の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る断熱体の一例についての平面図である。
【図3】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、その一例を示す断面図である。
【図4】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、発熱体が設けられた例を示す断面図である。
【図5】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、他の一例を示す断面図である。
【図6】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、さらに他の一例を示す断面図である。
【図7】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、さらに他の例を示す断面図である。
【図8】図2に示すIII−III線で切断した断熱体の断面の一部について、さらに他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る断熱体について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る断熱体(以下、「本断熱体1」という。)の一例を構成する部材の斜視図である。図2は、本断熱体1の一例についての平面図である。図3は、図2に示すIII−III線で切断した本断熱体1の断面の一部について、その一例を示す断面図である。
【0011】
図1〜図3に示すように、本断熱体1は、断熱層10と、一対の保持層21a,21bと、外装袋30と、を備えている。断熱層10は、エアロゲルが充填された繊維体(エアロゲル繊維体)である。このエアロゲル繊維体は、繊維基材にエアロゲルが充填されてなる断熱材である。
【0012】
エアロゲル繊維体を構成する繊維基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等の有機繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、ムライト繊維やアルミナ繊維等の無機繊維からなる繊維基材を用いることができ、耐熱性に優れた無機繊維からなる繊維基材を好ましく用いることができる。
【0013】
すなわち、繊維基材としては、無機繊維の織布又は不織布を好ましく用いることができる。ここで、不織布としては、例えば、無機繊維を抄造機により抄造して得られる紙状のものや、集綿した無機繊維をニードル加工してマット状に成形したブランケットや、無機繊維に有機バインダーを加えてマット状に成形したフェルト等のマットを用いることができる。繊維基材として、無機繊維がランダムに配向した不織布を用いることにより、当該繊維基材の無機繊維間にエアロゲルを効果的に保持することができる。
【0014】
また、繊維基材を構成する無機繊維としては、例えば、本断熱体1が、100℃未満といった、それほど耐熱性が要求されない環境で使用される場合には、エアロゲル繊維体に優れた柔軟性を付与できるPET繊維等の有機繊維を好ましく用いることができる。また、例えば、本断熱体1が、100〜150℃といった、ある程度の耐熱性が要求される環境で使用される場合には、安価なガラス繊維を好ましく用いることができる。また、例えば、本断熱体1が、150℃を超えるような高い耐熱性が要求される環境で使用される場合には、耐熱性の高いアルミノシリケート繊維、シリカ繊維、ムライト繊維やアルミナ繊維等のセラミックス繊維を好ましく用いることができる。
【0015】
エアロゲルとしては、例えば、無機材料からなるエアロゲル(無機エアロゲル)又は有機材料からなるエアロゲル(有機エアロゲル)を用いることができ、耐熱性に優れた無機エアロゲルを好ましく用いることができる。無機エアロゲルとしては、例えば、シリカエアロゲルやアルミナエアロゲルを用いることができる。特に、シリカエアロゲルを用いることにより、エアロゲル繊維体の断熱性を効果的に高めることができる。
【0016】
したがって、エアロゲル繊維体としては、無機繊維の不織布に無機エアロゲルが充填されたものを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、セラミックス繊維の不織布にシリカエアロゲルが充填されたエアロゲル繊維体や、ガラス繊維マットにシリカエアロゲルが充填されたエアロゲル繊維体を好ましく用いることができる。こうしたエアロゲル繊維体としては、例えば、Aspen Aerogels Inc.から「SPACELOFT2200」、「SPACELOFT2250」、「Pyrogel6650」といった製品が入手可能である。
【0017】
エアロゲル繊維体に含有されるエアロゲルと繊維基材との比率は、当該エアロゲル繊維体が備えるべき特性(例えば、断熱性、耐熱性、低発塵性、可撓性)に応じて適宜設定することができる。エアロゲル繊維体の密度は、例えば、20〜500kg/mの範囲とすることができ、好ましくは100〜300kg/mの範囲とすることができる。
【0018】
このようなエアロゲル繊維体は、繊維間の空隙を埋めるエアロゲル内の微細孔により、当該エアロゲル繊維体内における空気の対流が効果的に防止されるため、優れた断熱性を有する。
【0019】
具体的に、エアロゲル繊維体の25℃における熱伝導率は、例えば、0.024W/m・K以下とすることができ、好ましくは0.020W/m・K以下とすることができ、より好ましくは0.018W/m・K以下とすることができる。
【0020】
また、エアロゲル繊維体の80℃における熱伝導率は、例えば、0.035W/m・K以下とすることができ、好ましくは0.027W/m・K以下とすることができ、より好ましくは0.025W/m・K以下とすることができる。
【0021】
このように、エアロゲル繊維体は優れた断熱性を有するため、十分な断熱性を維持しつつ薄型化することができる。具体的に、エアロゲル繊維体の厚さは、例えば、1〜100mmの範囲とすることができ、好ましくは1〜50mmの範囲とすることができ、より好ましくは1〜20mmの範囲とすることができ、さらにより好ましくは1〜10mmの範囲とすることができる。断熱層10の厚さを低減することにより、当該断熱層10の可撓性を向上させることもできる。
【0022】
一対の保持層21a,21bは、不織布からなるシート状体である。すなわち、保持層21a,21bは、例えば、無機繊維の不織布である。この場合、保持層21a,21bを構成する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を用いることができ、コスト的な面でガラス繊維やアルミノシリケート繊維を好ましく用いることができる。また、保持層21a,21bは、例えば、有機繊維の不織布である。この場合、保持層21a,21bを構成する有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PET繊維を用いることができ、コスト的な面でPET繊維を好ましく用いることができる。こうした不織布としては、例えば、ニチアス株式会社から「ガラスマット−GE」、「ファインフレックスブランケット」といった製品が入手可能である。
【0023】
保持層21a,21bの密度は、後述するような本発明による効果を発揮できれば特に制限はないが、例えば、20〜500kg/mの範囲とすることができ、好ましくは50〜300kg/mの範囲とすることができ、さらに好ましくは100〜250kg/mの範囲とすることができる。
【0024】
保持層21a,21bの厚みは、後述するような本発明による効果を発揮できれば特に制限はないが、例えば、5〜60mmの範囲とすることができ、好ましくは10〜50mmの範囲とすることができ、さらに好ましくは10〜25mmの範囲とすることができる。
【0025】
そして、一対の保持層21a,21bは、断熱層10と接触しつつ、当該断熱層10を挟持している。すなわち、断熱層10の一方側の表面11aと、一方の保持層21aと、は互いに接触している。また、断熱層10の他方側の表面11bと、他方の保持層21bと、もまた互いに接触している。
【0026】
また、図3に示す例において、一対の保持層21a,21bは、外装袋30内において断熱層10を収容する袋(以下、「保持袋20」という。)を構成している。すなわち、この保持袋20は、2つの保持層21a,21bから構成される袋状体である。
【0027】
具体的に、保持袋20は、互いに重なり合った、一方の保持層21aの外周部分22aと、他方の保持層21bの外周部分22bと、を縫合糸(例えば、ガラス繊維糸)で縫合することにより、又は熱融着することにより形成されている。そして、断熱層10は、この保持袋20によって、その表面の全体を被覆されている。
【0028】
外装袋30は、織布からなる袋状体であり、その中に断熱層10及び保持層21a,21bを収容している。この外装袋30は、織布から構成されるため、それ自身の発塵性が低い。
【0029】
また、外装袋30は、例えば、無機繊維の織布から構成することができる。この場合、無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、アルミノシリケート繊維、シリカ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を好ましく用いることができる。また、無機繊維の織布としては、フッ素樹脂コーティングが施されたものを好ましく用いることができる。外装袋30が無機繊維から構成される場合には、その耐熱性を優れたものとすることができる。また、外装袋30は、例えば、有機繊維の織布から構成することができる。この場合、有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、PET繊維を用いることができ、コスト的な面でPET繊維を好ましく用いることができる。こうした外装袋30を構成する織布としては、例えば、ニチアス株式会社から「マリンテックスクロス」、「インサルテックスクロス」、「シルテックスクロス」、「ルビロンクロス」といった製品が入手可能である。
【0030】
また、外装袋30は、2つの織布31a,31bから構成されている。すなわち、外装袋30は、互いに重なり合った、一方の織布31aの外周部分32aと、他方の織布31bの外周部分32bと、を縫合糸(例えば、ガラス繊維糸)で縫合することにより形成されている。
【0031】
そして、本断熱体1において特徴的なことの一つは、外装袋30、一対の保持層21a,21b及び断熱層10のうち、保持層21a,21bの一方又は両方と、外装袋30の一部と、が縫合されている点である。すなわち、図3に示す例においては、一方の保持層21aと、当該一方の保持層21aを覆う一方の織布31aと、が縫合糸40によって縫合されている。
【0032】
ここで、仮に、保持層21a,21bを設けることなく、外装袋30内に断熱層10を収容した場合、当該外装袋30は織布であるため、当該断熱層10と当該外装袋30との摩擦は比較的小さく、当該外装袋30内において当該断熱層10は移動しやすい。
【0033】
したがって、特に、本断熱体1を施工すべき、断熱の対象となる表面(壁面や配管表面等)が広く、当該表面に沿って配置される断熱層10の表面11a,11bの面積が大きい場合(例えば、90cm以上)には、外装袋30内における当該断熱層10の位置決めが困難となる。しかしながら、断熱層10を構成するエアロゲル繊維体は硬いため、外装袋30と当該断熱層10とを貫通するよう縫合糸を配置する従来のキルティング加工を施すことができない。
【0034】
そこで、本断熱体1においては、断熱層10を覆う一対の保持層21a,21bを設けるともに、当該断熱層10に縫合糸を貫通させることなく、当該保持層21a,21bの少なくとも一方(すなわち、保持袋20の少なくとも一部)と外装袋30とを縫合することとした。
【0035】
したがって、本断熱体1においては、このような、断熱層10の外側における、表層部分のみの選択的な縫合により、外装袋30内における保持層21a,21bの移動が防止されている。
【0036】
さらに、本断熱体1において、断熱層10はエアロゲル繊維体であり、保持層21a,21bは不織布である。したがって、断熱層10の表面11a,11bと、保持層21a,21bと、が接触することにより生じる摩擦力は、当該断熱層10の当該保持層21a,21bに対する相対的な移動を妨げるために十分なものとなる。
【0037】
このように、本断熱体1においては、断熱層10であるエアロゲル繊維体との接触により大きな摩擦力を生じさせて当該断熱層10の移動を阻止でき、且つ、外装袋30と縫合可能な不織布からなる保持層21a,21bを採用している。
【0038】
したがって、本断熱体1においては、断熱層10として、縫合糸を貫通させることが困難なエアロゲル繊維体を採用しつつ、外装袋30内における当該断熱層10の移動を効果的に防止することができている。
【0039】
また、本断熱体1においては、外装袋30内において、断熱層10を保持袋20内に収容することによって、当該本断熱体1からの発塵を効果的に防止することができている。すなわち、例えば、仮に、保持層21a,21bを設けることなく、上述のように表面11a,11bの面積が大きい断熱層10を外装袋30内に直接収納した場合には、当該断熱層10及び外装袋30からなる断熱材の製造時や輸送時においては、当該断熱層10と外装袋30との相対的な移動により、当該断熱層10と外装袋30との間に空気が入り込みやすくなる。この空気は、断熱材の内部に空気溜まりを形成する。こうした空気溜まりは、断熱材の施工時に、当該断熱材をならすことにより除去される。このとき、断熱材の内部から外部へ、空気とともに断熱材内部の粉塵が排出されてしまう。したがって、このような断熱材は発塵を引き起こすため好ましくないものとなる。また、断熱層10と外装袋30とがずれる際の摩擦もまた、粉塵を発生させる要因となる。
【0040】
これに対し、本断熱体1においては、上述のとおり、断熱層10と外装袋30との間に保持層21a,21bを介在させ、さらに、当該保持層21a,21bと当該外装袋30とを選択的に縫合している。このため、断熱層10と保持層21a,21bとの相対的な移動、及び当該保持層21a,21bと外装袋30との相対的な移動を効果的に防ぐことができている。したがって、本断熱体1においては、その内部に空気溜まりが発生することを効果的に防ぐことができ、その結果、本断熱体1を施工する際の発塵を効果的に防止することができる。また、保持袋20を構成する保持層21a,21bは、ランダムに配向した繊維が三次元的に絡み合って構成された不織布であるため、外装袋30内において、断熱層10から発生した塵埃を効果的に捕捉することができる。
【0041】
また、保持袋20を構成する保持層21a,21bが断熱層10の表面11a,11bに直接接触して配置されることにより、当該保持層21a,21bと接触している当該断熱層10の表面11a,11bからの塵埃の発生を効果的に防止することができる。したがって、本断熱体1においては、断熱層10が保持袋20内に収容されることにより、当該断熱層10から発生した塵埃が当該保持袋20外に漏出することを効果的に防止できている。
【0042】
図4、図5、図6、図7及び図8は、図2に示すIII−III線で切断した本断熱体1の断面の一部について、他の例を示す断面図である。なお、これらの例では、上述の例と同様の部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図4に示す例において、本断熱体1は、保持層21bと外装袋30との間に配置された、加熱用の発熱体50をさらに有している。この例において、発熱体50は通電によって発熱する電熱線である。この発熱体50は、例えば、1又は複数の電熱線が、保持層21bの外表面に沿って互いに並行に配置され、又は格子状に配置されることにより構成される。
【0044】
具体的に、発熱体50は、一対の保持層21a,21bのうち外装袋30と縫合されていない保持層21b、又は当該保持層21bを覆う外装袋30の一部に取り付けられている。すなわち、発熱体50は、例えば、ガラス繊維糸等の無機繊維糸(不図示)により、一方の保持層21b又は一方の織布31bに縫い付けられている。この場合、保持層21b及び織布31bは、耐熱性の点で、上述したような無機繊維から構成されることが好ましい。
【0045】
そして、図4に示す例において、発熱体50は、外装袋30を介して対象物を加熱することができる。したがって、発熱体50を有する本断熱体1は、ヒータとして利用することができる。すなわち、例えば、本断熱体1を、配管(不図示)を加熱するヒータとして用いる場合には、本断熱体1は、当該配管の外周を被覆するように施工される。具体的に、本断熱体1は、例えば、外装袋30のうち発熱体50を覆っている一方の織布31bを介して、当該発熱体50が配管の外周に沿って配置されるように施工される。この場合、本断熱体1と配管とを含む断熱構造においては、当該配管の径方向外側に向けて、当該配管の外表面、本断熱体1の外装袋30、発熱体50、保持層21b、断熱層10が順次積層されることとなる。
【0046】
図5に示す例において、本断熱体1は、一方の保持層21bと外装袋30との間に配置された、発熱体50を支持するための支持層60を有している。この支持層60は、無機繊維の織布からなる。支持層60を構成する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維や、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミックス繊維を好ましく用いることができる。すなわち、支持層60としては、例えば、ガラス繊維の織布であるガラスクロスを用いることができる。
【0047】
そして、発熱体50は、この支持層60に取り付けられる。すなわち、電熱線からなる発熱体50は、ガラス繊維糸等の無機繊維糸により支持層60に縫い付けられている。さらに、この支持層60は、ガラス繊維糸等の無機繊維糸により外装袋30に縫い付けられてもよい。
【0048】
発熱体50は、支持層60の表面のうち保持層21b側の表面又は外装袋30(織布30b)側の表面のいずれに取り付けることもできるが、図5に示すように、当該保持層21b側の表面に取り付けることが好ましい。この場合、発熱体50は、保持層21bと支持層60との間に配置される。
【0049】
発熱体50が取り付けられた支持層60を有する本断熱体1もまた、ヒータとして利用することができる。すなわち、本断熱体1は、例えば、配管の外周を被覆するように施工される。具体的に、本断熱体1は、例えば、支持層60、及び外装袋30のうち当該支持層60を覆っている一方の織布31bを介して、発熱体50が配管の外周に沿って配置されるように施工される。この場合、本断熱体1と配管とを含む断熱構造においては、当該配管の径方向外側に向けて、当該配管の外表面、本断熱体1の外装袋30、支持層60、発熱体50、保持層21b、断熱層10が順次積層されることとなる。
【0050】
図6に示す本断熱体1においては、外装袋30、一対の保持層21a,21b及び断熱層10のうち、両方の保持層21a,21bと、当該外装袋30の互いに異なる一部と、がそれぞれ局所的に縫合されている。すなわち、一方の保持層21aと外装袋30の一部(織布31a)とが縫合糸40により縫合されるとともに、他方の保持層21bと当該外装袋30の他の一部(織布31b)とが縫合糸40により縫合されている。この場合、外装袋30内における保持層21a,21bの移動をより効果的に防止することができる。
【0051】
また、保持層21a,21bと外装袋30との縫合の態様は、これらを一体的に保持できるものであれば特に限られない。すなわち、例えば、図3〜図5に示すように、互いに独立した縫合糸40のループを複数形成することとしてもよく、また、図7に示すように、連続した縫合糸40が保持層21a,21b側と外装袋30側とに交互に出入りすることとしてもよい。
【0052】
また、保持層21a,21bと外装袋30との縫合に加えて、断熱層10の一部に縫合糸40を通すこともできる。すなわち、例えば、矩形の板状成形体である断熱層10の角部分のうち、表面11a,11b近傍部分に縫合糸を通して、保持層21a,21b及び外装袋30の一方又は両方と縫合することもできる。これにより、外装袋30における断熱層10の移動をより確実に阻止することができる。
【0053】
また、保持層21a,21bと外装袋30との縫合に用いられる縫合糸40は、これらを固定できるものであれば特に限られない。すなわち、この縫合糸40としては、例えば、ガラス繊維糸、フッ素樹脂糸、フッ素樹脂コーティング糸を好ましく用いることができる。こうした縫合糸としては、例えば、ニチアス株式会社から「マリンテックス縫糸」、「インサルテックスヤーン」といった製品が入手可能である。
【0054】
図8に示す本断熱体1においては、一対の保持層21a,21bは、断熱層10を収容する袋を構成していない。すなわち、一方の保持層21aと他方の保持層21bとは、断熱層10の一方の表面11a側と他方の表面11b側とに、それぞれ互いに独立して配置されている。
【0055】
ただし、この例においても、まず、一方の保持層21aと、断熱層10の一方の表面11aと、は接触しており、且つ他方の保持層21bと、当該断熱層10の他方の表面11bと、もまた接触している。
【0056】
このため、断熱層10の表面11a,11bと、保持層21a,21bと、が接触することにより生じる摩擦力は、当該断熱層10の当該保持層21a,21bに対する相対的な移動を妨げるために十分なものとなっている。
【0057】
さらに、一方の保持層21aと、外装袋30のうち当該一方の保持層21aを覆う部分(すなわち、織布31a)と、が縫合されるとともに、他方の保持層21bと、当該外装袋30のうち当該保持層21bを覆う部分(すなわち、織布31b)と、が縫合されている。このため、この断熱層10の外側における、表層部分のみの局所的な縫合により、外装袋30内における保持層21a,21bの移動が防止されている。
【0058】
したがって、図8に示す例においても、上述の例と同様に、本断熱体1においては、断熱層10として、縫合糸を貫通させることが困難なエアロゲル繊維体を採用しつつ、外装袋30内における当該断熱層10の移動を効果的に防止することができている。
【0059】
なお、図6〜図8に示すように、一対の保持層21a,21bの両方(図6〜図7に示す例では保持袋20の両面)が外装袋30と縫合される本断熱体1においても、例えば、当該一対の保持層21a,21bの少なくとも一方と、外装袋30と、の間に発熱体50を設けることができる。また、図5に示したような支持層60をさらに設けて、当該支持層60に発熱体50を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 断熱体、10 断熱層、11a,11b 断熱層の表面、20 保持袋、21a,21b 保持層、22a,22b 保持層の外周部分、30 外装袋、31a,31b 織布、32a,32b 織布の外周部分、40 縫合糸、50 発熱体、60 支持層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲルが充填された繊維体である断熱層と、
不織布からなり、前記断熱層と接触しつつ前記断熱層を挟持する一対の保持層と、
織布からなり、前記断熱層及び前記保持層を収容する外装袋と、
を備え、
前記外装袋、前記保持層及び前記断熱層のうち、前記断熱層に縫合糸を貫通させることなく、前記保持層の一方又は両方と、前記外装袋の一部と、が縫合されている
ことを特徴とする断熱体。
【請求項2】
一対の前記保持層は、前記外装袋内において前記断熱層を収容する袋を構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱体。
【請求項3】
前記保持層と前記外装袋との間に配置された、加熱用の発熱体をさらに有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱体。
【請求項4】
前記外装袋、前記保持層及び前記断熱層のうち、一方の前記保持層と前記外装袋の一部とが縫合されるとともに、他方の前記保持層と前記外装袋の他の一部とが縫合されている
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載の断熱体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−211697(P2012−211697A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−124229(P2012−124229)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【分割の表示】特願2008−203098(P2008−203098)の分割
【原出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】