説明

断熱圧縮空気エネルギー貯蔵システムのための補強された熱エネルギー貯蔵圧力容器

第1の圧力に耐えるように構成された圧力容器を備える熱エネルギー貯蔵システムであり、前記圧力容器は、その内部空間を取り囲む外面と内面を備える壁を有する。圧力容器の内部空間は、1つまたは複数の圧縮機および1つまたは複数のタービンと流体連通する第1の端部と、少なくとも1つの圧縮空気貯蔵要素と流体連通する第2の端部とを有する。内部空間には蓄熱媒体が配置されており、少なくとも1つの補強構造が、第1の圧力より大きな第2の圧力に耐えるように壁を補強するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は一般に、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)システムに関し、より詳細には断熱CAESシステムの熱エネルギー貯蔵(TES)圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
CAESシステムは、莫大な量の天然資源を実質的に排出および/または消費せずに電気を生成することを可能にする。CAESシステムは、一般に1つまたは複数の圧縮機を有する圧縮トレインを含む。この1つまたは複数の圧縮機は、圧縮段で吸気を圧縮して、地下の空洞、多孔質岩石地層、枯渇した天然ガス/石油地帯または他の圧縮空気貯蔵要素に貯蔵する。その後この圧縮空気を利用してタービンを駆動することでエネルギー生成段において電気エネルギーを生成し、これを電力系統に供給することができる。大抵の場合、公共エネルギーを使用して圧縮段階中に圧縮トレインを駆動する場合、圧縮トレインは公益設備のオフピーク時に作動する。CAESのエネルギー生成段は、一般にエネルギー需要が高い時間帯に作動する。あるいは風車や太陽電池パネルアレイからのエネルギーなど再生可能エネルギー源より生じるエネルギーを利用して圧縮段階中に圧縮トレインを駆動し、空気を圧縮し圧縮空気貯蔵場所(例えば地下の空洞)に送ることもできる。この方法では圧縮トレインをオフピーク時以外の時間に作動させることもでき、既存の公共エネルギーを使わずに済む。
【0003】
ある種のCAESシステムは、非断熱CAESシステムとして知られている。非断熱CAESシステムでは、圧縮トレインによって生成された熱が、通常、周辺環境に奪われる。すなわち圧縮の熱は、地下の空洞や他の圧縮空気貯蔵要素に入るとき大部分がそのままであり得るが、圧縮空気が地下の空洞の空気と混ざり、さらに貯蔵される間に周辺空気まで冷却されるためそのエネルギー値と有効性は低下する。したがって地下の空洞または圧縮空気貯蔵要素内に貯蔵された圧縮空気を利用して1つまたは複数のタービンを駆動し、電気エネルギーを生成する場合、圧縮空気は、通常、タービンに入る前に再加熱される。この再加熱工程は、通常、圧縮空気貯蔵要素と1つまたは複数のタービンとの間に配置された天然ガス燃料のレキュペレータを使用して行なわれる。この再加熱工程により非断熱CAESシステム全体の効率が低下し、天然ガスをレキュペレータの燃料に使用することにより、炭素が放出され、天然ガスが消費されることになる。
【0004】
断熱CAES、すなわちACAESシステムは、圧縮の熱を後で利用するために取り込んで貯蔵することによってシステムの効率を上げることが可能である。このようなシステムでは、圧縮機と地下の空洞の間に1つまたは複数の熱エネルギー貯蔵(TES)ユニットが配置される。一般に、TESユニットは、例えばコンクリート、石、流体(例えば石油)、融解塩または相変化物質など、蓄熱するための媒体を中に含む。圧縮段より生じた高温の空気がTESユニットを通り抜けることで、その圧縮の熱をこの工程において媒体に移動させる。したがって非断熱CAESシステムとは違ってACAESシステムは圧縮トレインによって生成された熱のすべてを必ずしも失わず、1つまたは複数のTESユニット内に一部の蓄熱する。圧縮空気はその後周辺温度でまたはそれに近い温度で地下の空洞に入る。
【0005】
地下の空洞または他の圧縮空気貯蔵要素に貯蔵された圧縮空気を取り出して1つまたは複数のタービンを駆動し電気エネルギーを生成する際、圧縮空気がTESユニットを通過するように戻ることによって1つまたは複数のタービン内に入る前に圧縮空気が再加熱される。この方法では、ACAESシステムは地下の空洞または他の圧縮空気貯蔵要素を出た圧縮空気を再加熱するために天然ガス燃料のレキュペレータを追加する必要がない。したがってACAESシステムによって非断熱CAESシステムより効率を改善させることができ、炭素の放出が(あったとしても)かなり少なく天然資源をほとんど消費しない。
【0006】
圧縮トレインの圧縮サイクルにおいて生成された熱を効果的に貯蔵するために構築されたTESユニットは、ACAESシステムに関連する激しい熱変動と高圧に耐えるように構成されている。例えば圧縮トレインを出た圧縮空気の温度は250℃から750℃まで変動する可能性があり、一方、地下の空洞からTESユニットに入る圧縮空気の温度は、周辺温度またはそれに近い温度である。同様にTESユニットは65から85バールの圧力に耐えるように設計される。このような高温と高圧に耐えるために、TESユニットに関する現在の計画は、蓄熱する媒体が充填される大きなコンクリート製のシリンダを建造する必要がある。このようなTESユニットはその直径が大きいため、プレストレスが与えられ鋼により補強されたコンクリートの厚い壁を有するように形成され、これによりTESユニットは内部の圧力によって生じる壁内の高い引張力に耐えることができる。しかしながらこのような厚いコンクリート壁を建設することは技術的にかなり難しくコストが高くなるため、これより効率の低い非断熱CAESシステムではなくACAESシステムを実装する実現可能性が低下する。さらに作動温度が高く温度サイクルが激しいことによりコンクリートの壁にダメージを与える熱ストレスが誘発され、このようなストレスはコンクリート壁が厚くなるにつれて増幅される。
【0007】
したがってTESユニットの建設に関する上記の欠点を克服する装置と方法を設計することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第245839号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明の態様は、高圧と高温の両方に耐えることができるようにTESユニットに少なくとも1つの補強構造が固定された、TESユニットのためのシステムおよび方法を提供する。この少なくとも1つの補強構造によって、TESユニットの壁の厚さを最小限にすることができる。
【0010】
本発明の一態様によれば、第1の圧力に耐えるように構成された圧力容器を備える熱エネルギー貯蔵システムが開示され、この圧力容器は、外面、および圧力容器の内部空間を取り囲む内面を備えた壁を有する。圧力容器の内部空間は1つまたは複数の圧縮機および1つまたは複数のタービンと流体連通する第1の端部と、少なくとも1つの圧縮空気貯蔵要素と流体連通する第2の端部とを有する。この内部空間に蓄熱媒体が配置され、少なくとも1つの補強構造が壁の外面に固定されており、この少なくとも1つの補強構造は、第1の圧力より大きな第2の圧力に耐えるように壁を補強するように構成されている。
【0011】
本発明の別の態様によれば、熱エネルギー貯蔵圧力容器を形成する方法が記載されている。方法は、所定の高さと厚さを有する壁を形成するステップを含み、壁の内面が内部空間の境界を画する。方法はさらに、第1の位置で壁の表面に補強構造を固定するステップと、少なくとも1つの追加の補強構造を壁の高さに沿って別の位置で壁の表面に固定するステップと、内部空間に多孔質の蓄熱媒体を配置するステップとを含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様によれば、熱エネルギー貯蔵圧力容器が開示されており、この熱エネルギー貯蔵圧力容器は、内部空間の境界を画するコンクリートの円筒形の壁であって、その内部空間が空気が通り抜けることができるように構成される壁と、このコンクリートの円筒形の壁の外面に固定される少なくとも1つの補強構造とを備える。熱エネルギー貯蔵圧力容器はさらに、コンクリートの円筒形の壁の内部空間に配置される多孔質の熱マトリクス材を備えており、この多孔質の熱マトリクス材は、空気が通り抜けることができるように構成されている。
【0013】
様々な他の特徴および利点は以下の詳細な記載と図面から明らかになるであろう。
【0014】
これらの図面は、本発明を実施するために目下企図される好ましい実施形態を例示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態によるACAESシステムの概略的な配置図である。
【図2】本発明の一実施形態によるTESユニットの側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による図2のTESユニットの断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるTESユニットの側面図である。
【図5】本発明の別の実施形態による図4のTESユニットの断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態によるTESユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態により、高圧と激しい温度変動に耐えることができるように少なくとも1つの補強構造が固定されたTESユニットを備えたシステムが提供される。
【0017】
先ず図1を参照すると、従来式のACAESシステムの主要な要素の概略的な配置が示されている。ACAESシステム100は、低圧圧縮機104に結合された電気モータ102を備える。電気モータ102は公益のオフピーク時に従来の手段、すなわち電力系統を介して電気により駆動することができる。あるいは風車、太陽電池または他の再生可能エネルギー源によって電気モータ102を駆動することもできる。電気モータ102が低圧圧縮機104を駆動することによって、低圧圧縮機104が吸気106を加圧する。低圧圧縮機104からの加圧された空気108はその後、高圧圧縮機112に供給され空気をさらに圧縮することができる。低圧圧縮機104と同様に高圧圧縮機112も、電気モータ110によって駆動される。電気モータ110もまた、電力系統によって、あるいは風車や太陽電池アレイなどの再生可能エネルギー源によって駆動される。ACAESシステム100は2つの圧縮機を「圧縮トレイン」の中で使用することを示しているが、より多くのまたはより少ない圧縮機を使用することもできることを理解されたい。
【0018】
空気が低圧圧縮機104と高圧圧縮機112をそれぞれ通過する際、空気は65〜85バールのレベルまで加圧され、その後650℃の温度まで加熱される。この加圧され加熱された空気114はこの後、熱エネルギー貯蔵(TES)ユニット116に入る。TESユニット116には、一般に多孔質の蓄熱媒体が配置されており、この多孔質の蓄熱媒体は、空気114がTESユニット116を通過する際、この空気114によって放出される熱のうちのかなりの量を保持することが可能である。多孔質の蓄熱媒体は、様々な固体物質であってよく、例えば天然石、セラミック、コンクリート、鋳鉄またはセラミックと塩を組み合わせたものであってよい。あるいは多孔質の蓄熱媒体は、硝酸塩と鉱油を組み合わせたものなどの液体物質でもよい。
【0019】
加熱された空気114がTESユニット116を通過した後、圧縮空気118が温度が下がった状態でTESユニット116を出ることにより、圧縮空気118を地下の空洞122または他の圧縮空気貯蔵要素に貯蔵することが可能になる。とはいえ圧縮空気118が、例えばおよそ50℃の最大温度で地下の空洞122に入るように、地下の空洞122に入る前に圧縮空気118を任意のインタークーラ120によってさらに冷却する必要がある場合もある。この地下の空洞122によって、およそ60〜80バールのレベルまで加圧された空気を圧縮を有意に損なわずに長期間にわたって貯蔵することができる。
【0020】
引き続き図1を参照すると、貯蔵された空気の使用が電気を生成するのに要求される場合、地下の空洞122から圧縮空気124を解放することができる。圧縮空気124は地下の空洞122を出て、およそ20〜50℃の温度でTESユニット116に再び入る。圧縮空気がTESユニット116の多孔質の蓄熱媒体を通過する際、それは600℃の温度、すなわちこれより前に高圧圧縮機112から放出された加熱された空気114の温度に近い温度まで再加熱される。この再加熱された圧縮空気126は、この段階ではおよそ55〜75バールのレベルまで加圧されており、その後蒸気タービン128に入り、このタービンは、再加熱された圧縮空気126によって駆動される。非断熱CAESシステムとは異なり、圧縮空気126は、TESユニット116の内部で再加熱されており、よって圧縮空気を再加熱するのに蒸気タービンでは熱の回復やガスの点火のための設備を追加する必要がない。蒸気タービン128が作動する際、そこから排気130が排出され、蒸気タービン128が電気生成器132を駆動する。生成器132によって生成された電気はその後、電力系統に供給されて消費することができる。容易に理解することができるようにACAESシステム100は、電気エネルギーの生成において、例えなくすことはできなくても天然資源の消費および/または炭素の放出をかなり抑えることができるような電気の生成方法を意味している。
【0021】
図1に関して上記で考察したように、TESユニット116は、ACAESシステム100が作動する間かなりの圧力(65〜85バール)と温度(650℃まで)を受ける可能性がある。結果としてTESユニット116は、高圧と高い温度レベルに耐えるように構築される。図2および図3を参照すると、本発明の一実施形態によるTESユニット116が示されている。図2はTESユニット116の側面図を示している。TESユニット116は所定の長さと厚さの壁202を有する円筒形の圧力容器として示されている。しかしながらTESユニット116は、円筒形状に限定されるのではなく、任意の好適な形状であってよい。壁202は一般にコンクリートで形成されるが、例えば鋼など好適な強度と剛性のいずれかの材料を利用して構築することもできる。TESユニット116の断面204はさらに、複数の補強構造206がTESユニット116の長さに沿って壁202の外面218に固定されているのを示している。複数の補強構造206が示されているが、本発明の実施形態は、示される補強構造206の数および配置に限定されないことを理解されたい。
【0022】
図2はさらにTESユニット116の切欠き断面208を示している。切欠き断面208によって見ることができるように、各々の補強構造206は、少なくとも1本のロッド210を備えており、これは内部空間212と壁202を完全に貫通している。内部空間212は、例えば天然石やセラミック物質など多孔質の蓄熱媒体を中に含んでおり、これは上記に記載したようにTESユニット116を通過する圧縮空気から熱を吸収しこの熱を保持するように設計される。各々のロッド210が壁202の外面に固定されることにより、TESユニット116の内部を構造上補強することができる。
【0023】
次に図3を参照すると、本発明の一実施形態よるTESユニット116の断面図が示されている。図3に見ることができるように、複数のロッド210は、壁202と内部空間212の両方を貫通するように構成されており、内部空間212の中にスポーク形状のフレーム構造を形成している。ロッド210は好ましくは鋼でできているが、高圧と高温に耐えることができるいずれかの好適な材料で作製することもできる。ロッド210はアンカ214によって壁202の外面218に固定式に固定されている。アンカ214は、任意の適切な手段、例えばボルト締めや溶接によって壁202の外面218に固定することができる。ロッド210はまた、内部空間212の中に配置された共通の中心点ハブ216で結合されている。好ましくはロッド210は、その両側で壁202を完全に貫通し、内部空間212と中心点ハブ216を貫通して2つの対向するアンカ214に固定するのに十分な長さである。例えば図3に示されるように、補強構造206は、中心点ハブ216によって相互に接続された4本のロッド210を有する。各々のロッド210は、壁202の両側に取り付けられた一対の各々のアンカ214を介して壁202の外面218に取り付けられている。
【0024】
別の実施形態によると、ロッド210が、1本のロッドとして壁202と内部空間212を完全に貫通して延在するのではなく、壁202を貫通し、中心点ハブ216に向かって延在するように構成される場合もある。この方法では各々のロッド210の一端は各々のアンカ214によって保持されており、他端は中心点ハブ216によって保持されるか、またはそれに結合されている。
【0025】
図3に示される構成は単なる例示であり4本または8本のロッド210が上記に記載されるように示されているが、本発明の実施形態は、各々の補強構造206においてより多くのまたはより少ないロッド210とアンカ214を利用することも含めることを理解されたい。
【0026】
図2および図3に示される様式のTESユニット116を補強することによって、壁202の内部の高い空気圧によって生じる壁のストレスをかなり緩和させることができる。結果として、補強構造206が、それ以前は壁の厚さを厚くすることによって対処していた壁202に対するストレスを緩和させるように働くため、壁202を全体の厚さを薄くして構築することができる。このように壁の厚さを薄くした場合、TESユニット116は、厚い壁を有する圧力容器内で生じる多大な熱ストレスも受けずに済むことになる。さらにTESユニット116は、従来のTESユニットより建設および搬送が容易であり、コストがあまりかからない。したがって本発明の実施形態によって、電気エネルギーを生成するための実現可能な代替案としてACAESシステムを構築し採用することが可能になる。
【0027】
次に図4および図5を参照すると、本発明の別の実施形態が示されている。図4は、所定の長さと厚さを有する壁402を備えたTESユニット416の側面図を示している。TESユニット416は円筒形であるように示されているが、これはそのように限定されるものではなく、任意の好適な形状であってよい。壁402は一般にコンクリートで形成されるが、例えば鋼などの好適な強度と剛性のいずれかの材料を利用して構築することもできる。TESユニット416の断面404はさらに、複数の補強構造406がTESユニット416の長さに沿って壁402の外面の周りに固定されているのを示している。図4は、TESユニット416に沿って固定された複数の補強構造406を示しているが、本発明の実施形態によると1つまたは複数の補強構造406を壁402に固定することが可能であるため、補強構造406の数と配置は示されるものに限定されない。
【0028】
図4はさらにTESユニット416の切欠き断面408を示している。図2に関して上記に記載した補強構造206とは異なり、補強構造406は、TESユニット416の内部空間412を貫通しない。代わりに補強構造406は、壁402の外側の面422に沿って固定されたトラスフレーム構造410を備える。したがって各々のトラスフレーム構造410によって、TESユニット416の壁402の外側の面422に沿って構造を補強することができる。内部空間412は、図2および図3に関して上記に記載した内部空間212と同様に中に多孔質の蓄熱媒体を含んでおり、これはTESユニット416を通過する圧縮空気からの熱を保持するように設計される。
【0029】
図5は、TESユニット416の断面図を示している。図5に見ることができるように、トラスフレーム構造410は、複数のアンカ418に固定された複数のロッド414を備えており、この複数のロッド414はさらにリム420に固定され、これによって範囲が決められている。アンカ418は任意の既知の手段、例えばボルトや溶接によって壁402に固定することができる。ロッド414およびリム420は鋼で作製することができるが、そのように限定されるものではなく、任意の好適な材料で作製することもできる。ロッド414がアンカ418とリム420の間に配置されることで、壁402の外側の面の周りにトラスフレーム構造を形成する。使用されるロッド414とアンカ418の正確な数は本発明に必ずしも必要ではないが、利用されるロッド414とアンカ418の数は、トラスフレーム構造が壁402を加圧することができるように十分な数でなければならない。
【0030】
図4および図5に示される実施形態に関して上記に記載したようにトラスフレーム構造410を使用した場合、壁402の内部で高い空気圧によって生じる壁のストレスをかなり緩和させることができるため、壁402の厚さを従来のTESユニットよりもかなり薄くすることができる。薄くなった壁の厚さは、圧力容器内に生じる熱ストレスを大いに軽減するように作用し、熱ストレスは壁が厚くなればなるほど広がることになる。その他の利点としてTESユニット416は、従来のTESユニットより建設し搬送するのが容易であり、コストがあまりかからないものとなり得る。
【0031】
次に図6は、本発明のさらに別の実施形態を示している。図6は、TESユニット516の断面図であり、これは図2、図3に示されるTESユニット116のスポーク状の補強構造の概念を図4、図5に示されるTESユニット416の外側にあるトラスフレーム構造と組み合わせたものである。具体的にはTESユニット516は、壁502と内部空間512を共に貫通するように構成された複数のロッド510を備えており、内部空間512内にスポーク状のフレーム構造を形成している。ロッド510は、アンカ518によって壁502の外面に固定式に取り付けられており、内部空間512内に配置された共通の中心点ハブ522で結合されている。TESユニット516はさらに、壁502の外部の面の周りに配置されたトラスフレーム構造524を含む。トラスフレーム構造524は、アンカ518に固定された複数のロッド514を備えており、この複数のロッド514はさらにリム520に固定されこれにより範囲が決められている。ロッド514がアンカ518とリム520の間に配置されることで、壁502の外部の面の周りにトラスフレーム構造を形成する。
【0032】
容易に理解することができるようにスポーク状の補強構造と、図6に示される外側にあるトラスフレーム構造を組み合わせることによって、従来のTESユニットの壁よりも薄い壁を使用して圧力に関連するストレスから大幅に壁502を保護することができる。したがって上記に記載したTESユニット116およびTESユニット416と同様に、TESユニット516が、従来のTESユニットよりも薄い壁を有するように建造されることにより、TESユニットのコストが削減され容易に建造することが可能になり、さらにACAESシステムの通常の作動を通して熱ストレスを被る可能性も低くなる。
【0033】
したがって本発明の一実施形態により、第1の圧力に耐えるように構成された圧力容器を備え、この圧力容器がその内部空間を取り囲む外面と内面を備える壁を有する熱エネルギー貯蔵システムが開示される。圧力容器の内部空間は、1つまたは複数の圧縮機および1つまたは複数のタービンと流体連通する第1の端部と、少なくとも1つの圧縮空気貯蔵要素と流体連通する第2の端部とを有する。この内部空間に蓄熱媒体が配置され、少なくとも1つの補強構造が壁の外面に固定されており、少なくとも1つの補強構造は、第1の圧力より大きな第2の圧力に耐えるように壁を補強するように構成されている。
【0034】
本発明の別の態様によれば、熱エネルギー貯蔵圧力容器を形成する方法が記載されている。方法は、所定の高さと厚さを有する壁を形成するステップを含み、壁の内面が内部空間の境界を画する。方法はさらに、第1の位置で壁の表面に補強構造を固定するステップと、少なくとも1つの追加の補強構造を壁の高さに沿って別の位置で壁の表面に固定するステップと、内部空間内に多孔質の蓄熱媒体を配置するステップとを含む。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、熱エネルギー貯蔵圧力容器が開示されており、この熱エネルギー貯蔵圧力容器は、内部空間の境界を画するコンクリートの円筒形の壁であって、その内部空間が空気が通り抜けることができるように構成される壁と、このコンクリートの円筒形の壁の外面に固定される少なくとも1つの補強構造とを備える。熱エネルギー貯蔵圧力容器はさらに、コンクリートの円筒形の壁の内部空間に配置される多孔質の熱マトリクス材を備えており、この多孔質の熱マトリクス材は、空気が通り抜けることができるように構成されている。
【0036】
本書は、例を使用して、最良の形態を含めて本発明を開示し、また任意の装置またはシステムの製造および使用ならびに組み込まれた方法の実施を含めて、当業者が本発明を実施することができるようにしている。本発明の特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が思い付く他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが請求項の文字通りの言い回しと相違のない構造上の要素を有する場合、あるいはそれらが請求項の文字通りの言い回しとはごくわずかに異なるにすぎない等価な構造上の要素を含む場合、この特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0037】
100 ACAESシステム
102 電気モータ
104 低圧圧縮機
106 吸気
108 加圧された空気
110 電気モータ
112 高圧圧縮機
114 加圧され加熱された空気
116、416、516 TESユニット
118 圧縮空気
120 インタークーラ
122 地下の空洞
124 圧縮空気
126 再加熱された空気
128 蒸気タービン
130 排気
132 電気生成器
202、402、502 壁
204、404 断面
206、406 補強構造
208、408 切欠き断面
210、414、510、514 ロッド
212、412、512 内部空間
214、418、518 アンカ
216、522 中心点ハブ
218 壁の外面
410、524 トラスフレーム構造
420、520 リム
422 外側の面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力に耐えるように構成された圧力容器であって、外面、および圧力容器の内部空間を取り囲む内面を備えた壁を有し、前記内部空間が、
1つまたは複数の圧縮機および1つまたは複数のタービンと流体連通する第1の端部、および
少なくとも1つの圧縮空気貯蔵要素と流体連通する第2の端部を有する、圧力容器と、
前記内部空間に配置された蓄熱媒体と、
前記壁の前記外面に固定された少なくとも1つの補強構造であって、前記第1の圧力より大きな第2の圧力に耐えるように前記壁を補強するように構成された少なくとも1つの補強構造とを備える熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの補強構造が、前記壁の前記外面の周りにトラスフレーム構造を形成するように相互に接続された複数の鋼のロッドを備える、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項3】
前記トラスフレーム構造の外周の周りに配置された鋼のリムをさらに備える、請求項2記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの補強構造が前記圧力容器の前記内部空間内に延在する、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの補強構造が、前記圧力容器の前記内部空間内にスポーク状のフレーム構造を形成する複数の鋼のロッドを備える、請求項4記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの補強構造が、
壁に設置された複数のアンカと周辺リムの間で相互に接続され、前記壁の前記外面の周りにトラスフレーム構造を形成する複数の第1のロッドと、
前記圧力容器の前記内部空間内にスポーク状のフレーム構造を形成する複数の第2のロッドとを備える、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの補強構造が、前記圧力容器の長さに沿って配置された複数の補強構造である、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項8】
前記圧力容器の前記壁がコンクリートで形成される、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項9】
前記蓄熱媒体が、前記圧力容器の前記内部空間内に配置された多孔質の蓄熱媒体である、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項10】
前記多孔質の蓄熱媒体が、天然石、セラミック、コンクリート、鋳鉄、硝酸塩および鉱油のうちの少なくとも1つである、請求項9記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項11】
前記圧力容器が円筒形形状である、請求項1記載の熱エネルギー貯蔵システム。
【請求項12】
熱エネルギー貯蔵圧力容器を形成する方法であって、
所定の高さと厚さを有する壁を形成するステップであり、前記壁の内面が内部空間の境界を画する、ステップと、
第1の位置で前記壁の表面に補強構造を固定するステップと、
少なくとも1つの追加の補強構造を前記壁の高さに沿って別の位置で前記壁の表面に固定するステップと、
前記内部空間内に多孔質の蓄熱媒体を配置するステップとを含む方法。
【請求項13】
前記壁の表面に補強構造を固定するステップが、
前記壁の外部の面に複数のアンカを固定するステップと、
前記ロッドの第1の端部において前記アンカに複数のロッドを取り付けるステップと、
前記ロッドの第2の端部において前記複数のロッドをリムに取り付け、それにより前記複数のアンカと、前記複数のロッドと、前記リムとが前記壁の外部の面の周りにトラスフレーム構造を形成するステップとを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記壁の表面に前記補強構造を固定するステップが、
前記壁の外部の面に複数のアンカを固定するステップと、
前記複数のアンカに複数のロッドを固定するステップであって、前記複数のロッドが前記壁を貫通し、前記壁の前記内部空間内でスポーク状のフレーム構造を形成するステップとを含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記壁の表面に前記補強構造を固定するステップが、
前記壁の外部の面に複数のアンカを固定するステップと、
前記第1のロッドの第1の端部において前記アンカに複数の第1のロッドを取り付けるステップと、
前記第1のロッドの第2の端部において前記複数の第1のロッドをリムに取り付け、それにより前記複数のアンカと、前記複数の第1のロッドと、前記リムとが前記壁の外部の面の周りにトラスフレーム構造を形成するステップと、
前記複数のアンカに複数の第2のロッドを固定するステップであって、前記複数の第2のロッドが前記壁を貫通し、前記壁の前記内部空間内にスポーク状のフレーム構造を形成するステップとを含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
空気が通過することができるように構成された内部空間の境界を画するコンクリート製の円筒形の壁と、
前記コンクリートの円筒形の壁の外面に固定された少なくとも1つの補強構造と、
前記コンクリートの円筒形の壁の前記内部空間内に配置され、空気が通過することができるように構成された多孔質の熱マトリクス材とを備える熱エネルギー貯蔵圧力容器。
【請求項17】
前記少なくとも1つの補強構造が、相互に接続された1つの鋼のリングと複数のトラスを備え、前記コンクリートの円筒形の壁の前記外面の周りにフレーム構造を形成する、請求項16記載の熱エネルギー貯蔵圧力容器。
【請求項18】
前記少なくとも1つの補強構造が、前記コンクリートの円筒形の壁の前記内部空間内に延在する、請求項16記載の熱エネルギー貯蔵圧力容器。
【請求項19】
前記少なくとも1つの補強構造が、前記コンクリートの円筒形の壁の前記内部空間内で共通の中心点で固定された相互に接続された複数の鋼のロッドを備える、請求項18記載の熱エネルギー貯蔵圧力容器。
【請求項20】
前記少なくとも1つの補強構造が、複数のアンカによって前記コンクリートの円筒形の壁の前記外面に固定される、請求項16記載の熱エネルギー貯蔵圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−509527(P2013−509527A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536805(P2012−536805)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/047076
【国際公開番号】WO2011/053402
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】