断熱基礎の施工方法及びその施工に用いる断熱型枠用支持具
【課題】ベース部及び該ベース部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有して捨てコンクリート上に敷設される基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工に当たり、基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部の一発打設を可能として、作業の省力化や工期短縮、コスト節減を達成し、併せて基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部の間に打ち継ぎが形成されないようにして水漏れのリスクを大幅に軽減する。
【解決手段】基礎コンクリートCの打設前の捨てコンクリートS上に少なくとも一方の断熱型枠K1を支持する支持具M,M′が、捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備える。
【解決手段】基礎コンクリートCの打設前の捨てコンクリートS上に少なくとも一方の断熱型枠K1を支持する支持具M,M′が、捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有する基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工方法、並びにその施工に用いる断熱型枠用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記断熱基礎の施工に当たり、従前は、図13に示すように、地盤E上に予め敷設した捨てコンクリートS上に生コンクリートNCを投入、固化させて、基礎コンクリートC′のベース部Cb′を一次的に打設、成形した後、そのベース部Cb′の平坦な上面に、互いに間隔をおいて並ぶ段熱型枠K,Kの下端を載置、固定し、しかる後に、断熱型枠K,K相互の対向間隙30′に生コンクリートNCを投入、固化させて、基礎コンクリートC′の立ち上がり部Ca′(布基礎部)を二次的に打設、成形するようにしていた(例えば下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−3333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記従来の施工方法では、先ず、基礎コンクリートのベース部Cb′を成形するための生コンクリートの一次的な打設、固化作業を行い、その作業の完了後にベース部Cb′上への断熱型枠K,Kの設置作業を行った上で、立ち上がり部Ca′を成形するための生コンクリートの二次的な打設、固化作業を行う必要があるため、全体として作業工程が複雑化し且つ作業時間(即ち工期)が長くなって作業効率が悪い不都合があった。
【0005】
また断熱型枠K,Kは、基礎コンクリートのベース部Cb′上に直接、載置させるため、その高さ調整作業が容易ではないといった不都合もあり、更に基礎コンクリートの、別々に打設したベース部Cb′と立ち上がり部Ca′との間に「打ち継ぎ」と言われる継ぎ目が生じて水漏れを起こし易いため、その水漏れ対策として当該打ち継ぎ部位に止水板を特設しなければならないといった不都合もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、従来の上記問題を簡単な構造で解決できるようにした、断熱基礎の施工方法、並びにその施工に用いる断熱型枠用支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有する基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工方法であって、地盤上に、前記ベース部よりも薄肉の捨てコンクリートを敷設する工程と、その捨てコンクリートの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠の何れか一方を支持束を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を該捨てコンクリートの上面に直接に或いは支持束を介して固定、支持する工程と、前記一対の断熱型枠の対向間隙および前記捨てコンクリート上に基礎コンクリート用の生コンクリートを打設して、その捨てコンクリート上に前記基礎コンクリートの前記ベース部及び前記立ち上がり部を成形する工程とを少なくとも含み、前記打設は、前記ベース部と前記立ち上がり部との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させることを特徴としている。
【0008】
尚、請求項1の発明において、「直接に」とは、支持束を介さずにという意味であって、後述する実施例のように薄肉の保持板を断熱型枠とベース部との間に介在させる実施形態を含むものである。
【0009】
また請求項2の発明は、地盤上に敷設される捨てコンクリートと、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有して捨てコンクリート上に敷設される基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工過程で、前記基礎コンクリートの打設前に前記捨てコンクリート上に少なくとも一方の前記断熱型枠を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具であって、前記捨てコンクリートの上面に載置、固定可能であって、該捨てコンクリート上より鉛直に起立する支持束と、前記少なくとも一方の断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体と、この型枠保持体を前記支持束に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項2の発明の前記特徴に加えて、前記型枠保持体は、前記少なくとも一方の断熱型枠の下端を載置し得る水平板部と、この水平板部の一端に立設されて前記少なくとも一方の断熱型枠の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部とを備えていることを特徴とし、また請求項4の発明は、請求項3の発明の前記特徴に加えて、前記高さ調節機構は、前記鉛直板部の外面に連設したハウジングと、前記支持束の少なくとも上部を構成して前記ハウジングを上下に貫通するネジ軸部と、そのネジ軸部に螺合されて前記ハウジング内に回転のみ可能に収容されるナット部材と、前記ハウジングの外側面に露出してその外側方より回動操作可能な被操作部材と、その被操作部材と前記ナット部材との間に介装され且つ前記ハウジング内に収容されて、該被操作部材の回転操作に連動して該ナット部材を回転させるギヤ機構とを備えることを特徴とし、さらに請求項5の発明は、請求項2〜4の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記支持束は、前記捨てコンクリートの上面に載置、固定可能な座部と、その座部に下部が螺挿されるネジ軸部とを備え、そのネジ軸部の座部への螺合位置が、該ネジ軸部に螺合されて前記座部に係合し得るロックナットでロック可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、捨てコンクリートの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠の何れか一方を支持束を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を捨てコンクリートの上面に直接に或いは支持束を介して固定、支持し、一対の断熱型枠の対向間隙および捨てコンクリート上に基礎コンクリート用の生コンクリートを打設し、その打設は、打設後の基礎コンクリートのベース部と立ち上がり部との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させるようにしたので、捨てコンクリート上に、基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部を比較的短期間の間に一挙に打設、成形可能となり、これにより、作業工程の単純化や省力化を図ることができて、工期短縮やコスト節減に大いに寄与することができる。しかもその基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部の境界部分に継ぎ目(打ち継ぎ)は形成されないため、その境界部分に止水板を特設しなくても水漏れのリスクを大幅に軽減することができる。
【0012】
また特に請求項2の発明によれば、断熱型枠用支持具が、捨てコンクリートの上面に載置、固定可能であって、捨てコンクリート上より鉛直に起立する支持束と、断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体と、この型枠保持体を支持束に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構とを備えるので、基礎コンクリートの打設前において、構造簡単な支持具を用いて捨てコンクリート上に断熱型枠を的確に支持することができ、これにより、請求項1の発明の効果をより確実に達成可能となり、しかもその支持具で支持される断熱型枠の高さ調整作業も容易に行うことができる。
【0013】
また特に請求項3の発明によれば、前記型枠保持体は、断熱型枠の下端を載置し得る水平板部と、この水平板部の一端に立設されて断熱型枠の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部とを備えるので、簡単な構造で断熱型枠を支持束上に安定よく的確に支持することができる。
【0014】
また特に請求項4の発明によれば、前記型枠保持体に連設したハウジングの外側面に露出した被操作部材を、その外側方より回動操作することで、断熱型枠の高さ調整作業を側方から難なく行うことができるため、断熱型枠その他の障害物に邪魔されずに(例えば、断熱型枠を型枠保持体上に載置、支持した状態のままでも)断熱型枠の高さ調整作業を能率よく的確に行うことができる。
【0015】
また特に請求項5の発明によれば、前記支持束は、捨てコンクリートの上面に載置、固定可能な座部と、その座部に下部が螺挿されるネジ軸部とを備え、そのネジ軸部の座部への螺合位置が、ネジ軸部に螺合されて座部に係合し得るロックナットでロック可能であるので、その座部へのネジ軸部の螺合位置を調整することでも、断熱型枠の高さ調整を行うことができ、その調整作業を更に容易に且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る断熱基礎の主要部を示す水平断面図
【図2】前記断熱基礎の主要部を示す縦断面図(図1の2−2線拡大断面図)
【図3】図2の3矢視部拡大断面図
【図4】図2の4矢視部拡大断面図
【図5】図2の5−5線断面図
【図6】断熱型枠用支持具の要部縦断面図(図3の6矢視部の拡大断面図)
【図7】高さ調節機構の要部水平断面図(図6の7−7線拡大断面図)
【図8】断熱基礎の施工途中(第1,第2断熱型枠間への生コンクリート投入前)の状態を示す図3対応図
【図9】断熱基礎の施工途中(一対の第1断熱型枠間への生コンクリート投入前)の状態を示す図4対応図
【図10】断熱型枠相互の結合具(フォームタイ)の一例を示す拡大断面図
【図11】断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図1
【図12】断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図2
【図13】従来例の断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
先ず、図1〜5において、寒冷地用建物に適した本発明に係る断熱基礎DKは、地盤E上に敷設された栗石群1と、その栗石群1の上側に敷設される比較的薄肉の捨てコンクリートSと、その捨てコンクリートSの上側に敷設、積層される基礎コンクリートCとを備えている。
【0019】
その基礎コンクリートCは、捨てコンクリートSよりも厚肉に成形されて捨てコンクリートSの上面を覆うベース部Cbと、そのベース部Cbの一部より鉛直に起立してベース部Cbの縦横に延びる帯板状の立ち上がり部Caとを一体に有しており、各々の立ち上がり部Caの両側には、発泡スチロール等の断熱材より板状に成形された断熱型枠K1,K2がそれぞれ接合される。各々の断熱型枠K1,K2は所定の矩形サイズに形成され、これをベース部Cb上で帯板状となるよう縦列配置されて使用される。
【0020】
なお、基礎コンクリートCにおけるベース部Cb及び立ち上がり部Caの各中心部には、従来普通の鉄筋コンクリートと同様に、骨組みされた鉄筋(図示せず)が適宜配備されており、その鉄筋がコンクリート部分と協働して基礎コンクリートCに十分な強度を付与している。また、基礎コンクリートCにおける立ち上がり部Ca上には、建物の躯体壁W又は仕切り壁W′が直接或いは根太等を介して固定、支持される。
【0021】
基礎コンクリートCのベース部Cbは、図示例では、その外周部2が内側部分よりも厚肉に形成されており、そのベース部Cbの厚み変化に対応して捨てコンクリートS、栗石群1及び地盤Eもそれぞれ中高に形成され、これにより、基礎コンクリートCの、地盤E上への支持がより安定する。
【0022】
前記立ち上がり部Cbは、建物の外周に沿うようベース部Caの外周部2より起立する外周立ち上がり部CaOと、その外周立ち上がり部CaOの内側に連なり或いはそれから離れてベース部Caの内方側に配置される内側立ち上がり部CaIとを含む。そのうち、外周立ち上がり部CaOは、それの内側面に、ベース部Cb上面からの立ち上がり高さに形成された第1断熱型枠K1が接合され、またそれの外側面に、捨てコンクリートS上面からの立ち上がり高さに形成された(従って第1断熱型枠K1よりも背の高い)第2断熱型枠K2が接合される。一方、内側立ち上がり部CaIは、それの左右両側面に、ベース部Cb上面からの立ち上がり高さに形成された一対の第1断熱型枠K1,K1がそれぞれ接合される。
【0023】
比較的背の低い第1断熱型枠K1の各々とベース部Cbとの間には、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前の捨てコンクリートS上に第1断熱型枠K1を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具M,M′が起立状態で介装される。尚、本実施例では、捨てコンクリートSが中高に形成されていて、その捨てコンクリートSの上面高さが外周部分とその内方部分とで異なっているため、その上面高さの相違に対応して、外周部分に起立させる支持具Mを、内方部分に起立させる支持具M′よりも長く構成しているが、もし捨てコンクリートSが中高に形成されない場合には、同一高さの支持具を使用可能である。
【0024】
また各々の第2断熱型枠K2とベース部Cbとの間には、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前に第2断熱型枠K2の下端を捨てコンクリートS上に位置決めし且つ直接に(即ち前記支持具M,M′を介することなく)支持させるための横断面U字状の保持板3が介装される。尚、保持板3は、基礎コンクリートCの打設前に捨てコンクリートS上面の所定位置にボルトb3で固定され、その保持板3に第2断熱型枠K2の下端を嵌合、保持させることで第2断熱型枠K2の位置決め及び仮止めを行う。
【0025】
図6,7も併せて参照して、前記支持具M,M′は、捨てコンクリートSの上面に載置、固定可能であり且つ捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、第1断熱型枠K1の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを前記支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備える。尚、本実施例では、外周側の支持具Mの支持束Tの方が、内方側の支持具M′の支持束Tよりも長く形成されるが、本明細書及び図面では、便宜上、いずれの支持束も同じ参照符号「T」を用いて説明することとする。
【0026】
前記支持束Tは、捨てコンクリートSの上面に載置されボルトb1で固定される座部Tfと、その座部Tfに下部が螺挿されて上方に延びるネジ軸部Tbとを備えており、そのネジ軸部Tbの座部Tfへの螺合位置が、ネジ軸部Tbに螺合されて座部Tfに係合し得るロックナットTnでロック可能である。従って、ロックナットTnを緩めた状態でネジ軸部Tbを座部Tfに対し相対回転させて座部Tfへのネジ軸部Tbの螺合位置を調整した後にロックナットTnを締付ければ、ネジ軸部Tbの高さ、延いては断熱型枠K1に対する支持高さの調整を、制限された範囲内で行うことができる。
【0027】
また前記型枠保持体Hは、第1断熱型枠K1の下端を載置し得る水平板部Hhと、この水平板部Hhの一端に立設されて第1断熱型枠K1の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部Hvとを一体に有して、合成樹脂材より断面L字状に形成されており、その鉛直板部Hvの下部外側面には、高さ調節機構Aのハウジング10が一体に連設される。
【0028】
また鉛直板部Hvの上部には、これを第1断熱型枠K1の下部側面に固定するためのボルトb2の挿通孔4が複数、互いに間隔をおいて穿設されており、その挿通孔4を通して第1断熱型枠K1に螺挿されるボルトb2により第1断熱型枠K1の下部を鉛直板部Hvに固定することができる。尚、図示例では、相隣なる2つの第1断熱型枠K1,K1の隣接端部の下端を、その両断熱型枠K1,K1間に跨がるようにして1つの型枠保持体Hの水平板部Hh上に載置させ且つ鉛直板部Hvにそれぞれボルトb2により固定しているが、断熱型枠K1の被固定部位は任意に選択可能である。
【0029】
前記高さ調節機構Aは、鉛直板部Hvに連設した前記ハウジング10と、支持束Tの少なくとも上部を構成して前記ハウジング10を上下に貫通するネジ軸部Tbと、そのネジ軸部Tbに螺合されて前記ハウジング10内に回転のみ可能に収容されるナット部材11と、ハウジング10の外側面に露出してその外側方より回動操作し得るようにしてハウジング10に回転のみ可能に支持される被操作部材12と、その被操作部材12とナット部材11との間に介装され且つハウジング10内に収容されて、被操作部材12の回転操作に連動してナット部材11を回転させるギヤ機構Gとを備えており、被操作部材12の外端面には、工具係合用の係合孔12aが形成される。尚、このような係合孔12aに代えて、被操作部材12の外端に回転操作用のノブを一体に連設してもよい。
【0030】
そのギヤ機構Gは、図示例では前記被操作部材12に同心状で嵌着されて一体に回転するウォーム13と、そのウォーム13に螺合するウォームホイール11wとで構成されており、そのウォームホイール11wはナット部材11と一体に構成され、即ち、そのナット部材11の外周部には、ウォーム13と螺合するネジ部が設けられる。
【0031】
尚、前記ハウジング10は、図示例では下端が開口するハウジング本体と、その本体の下端開口にビス等の結合手段で着脱可能に被着される開閉蓋とで分割構成される。
【0032】
また外周立ち上がり部CaOの両側にそれぞれ接合される第1,第2断熱型枠K1,K2の相互間、並びに内側立ち上がり部CaIの両側にそれぞれ接合される一対の第1断熱型枠K1,K1の相互間には、その各々の相互間の間隔を、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前において一定間隔に保持するための複数の結合具Jが各々介装されている。
【0033】
図8〜10も併せて参照して、各々の結合具Jは、コンクリート型枠の結合手段(一般にフォームタイと呼称)として従来周知の構造のものが使用される。即ち、その結合具Jは、図8,9に示すように相対向する断熱型枠K1,K2;K1,K1間を任意の間隔に保持し得る、長さ調整可能なセパレータ20と、そのセパレータ20の一端鍔部20aとの間で一方の断熱型枠K1を挟持する鍔21a付きの第1連結部材21と、同セパレータ20の他端鍔部20bとの間で他方の断熱型枠K1(K2)を挟持する鍔22b付きの第2連結部材22と、前記他方の断熱型枠K1(K2)の外側を支持する上下一対のパイプ状横杆23と、その横杆23を前記他方の断熱型枠K1(K2)との間で挟持、固定し得るようにして第2連結部材22に着脱可能に結合される受け枠24とを備える。
【0034】
第1,第2連結部材21,22はセパレータ20の両端部にそれぞれ短いネジ棒25,26を介して着脱可能に結合されており、従って、その基礎コンクリートCの成形後には、図2〜4,図11(G)に示すように両連結部材21,22をセパレータ20より取り外すことができ、これに伴い、横杆23も取り外すことができる。
【0035】
次に、図11,12を併せて参照して、本実施例の断熱基礎DKの施工工程の一例の概略を説明する。即ち、その施工工程は、地盤E上に多数の栗石群1を敷き、その上に、薄肉の捨てコンクリートSを敷設する工程(図11(A))と、その捨てコンクリートSの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠K1,K2の何れか一方(第1断熱型枠K1)を高さ調節可能な支持具M,M′を介して固定、支持すると共に、その何れか他方(第2断熱型枠K2或いは第1断熱型枠K1)を捨てコンクリートSの上面に直接に或いは支持具M,M′を介して固定、支持する工程(図11(B)〜(D))と、一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1の対向間隙30および捨てコンクリートS上に基礎コンクリートC用の生コンクリートNCを打設して、その捨てコンクリートS上に基礎コンクリートCのベース部Cb及び立ち上がり部Caを成形する工程(図11(E)(F))と、基礎コンクリートCの成形後に結合具Jの、断熱型枠K1,K2から張り出した部分を除去すると共に、断熱基礎DKの外周部の地盤Eを埋め戻す工程(図11(G))とを少なくとも含むものである。
【0036】
次に、以上の施工工程をより具体的に説明する。
[捨てコンクリート上への鉄筋及び断熱型枠の設置作業]
地盤Eに栗石群1を介して捨てコンクリートSを敷設した後、捨てコンクリートSの平坦な上面で墨出しを行い、その上面の外周部分においては、外周立ち上がり部CaOに対応した所定位置に保持板3をボルトb3で固定すると共に支持具Mの支持束Tの座部Tfをボルトb1で固定することで支持具Mを起立姿勢に保持し、一方、その上面の内方部分においては、内側立ち上がり部CaIに対応した所定位置に対をなす支持具M′,M′の支持束Tの座部Tfをボルトb1で固定することで、対をなす支持具M′,M′を起立姿勢に保持する(図11(B))。
【0037】
しかる後に、捨てコンクリートSの上面の外周部分においては、起立姿勢の支持具Mの型枠保持体Hを支持束Tに対し所望の高さに位置調整して、その型枠保持体H上に第1断熱型枠K1の下部を載置し且つボルトb2で固定すると共に、保持板3上に第2断熱型枠K2の下部を嵌合、保持させ、更に第1,第2断熱型枠K1,K2間を結合具Jを介して所定間隔をおいて結合し(図11(C))、更にまた一方の断熱型枠(図示例では第2断熱型枠K2)の外側を支持するパイプ状横杆23を前記結合具Jに固定する(図11(D))。
【0038】
一方、捨てコンクリートSの上面の内方部分においては、対をなす支持具M′,M′の型枠保持体H,Hを支持束T,Tに対し所望の高さに各々位置調整して、それら型枠保持体H,H上に対をなす第1断熱型枠K1,K1の下部をそれぞれ載置し且つボルトb2で固定し、更に対をなす第1断熱型枠K1,K1間を結合具Jを介して所定間隔をおいて結合し(図11(C))、更にまた一方の断熱型枠K1の外側を支持するパイプ状横杆23を前記結合具Jに固定する(図11(D))。尚、対をなす第1断熱型枠K1,K1間の対向間隙30の内端部分は、捨てコンクリートS上に固定した別の型枠K3(図1参照)で塞ぐようにし、この型枠K3は、コンクリートの打設完了後に取り外してもよいし、或いは第3の断熱型枠(この場合は断熱材で成形)として残すようにしてもよい。
【0039】
尚、上記(B)〜(D)とは別の施工手順として、例えば、相対向する一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1のうちの一方の断熱型枠K2(K1)を保持板3或いは支持具M′を介して捨てコンクリートS上に位置決め、固定した後で、該一方の断熱型枠K2(K1)に結合具Jを介して他方の断熱型枠K1を結合、支持し、しかる後に、支持具M或いはM′を捨てコンクリートS上の所定位置(前記他方の断熱型枠の直下位置)に設置、固定して、その支持具M或いはM′で前記他方の断熱型枠の下部を支持させるようにしてもよい。さらに別の施工手順として、例えば、上記(B)の工程後、相対向する一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1を結合具Jを介して予め結合した断熱型枠組立体を、捨てコンクリートS上に保持板3或いは支持具M,M′を介して一挙に設置するようにしてもよい。
【0040】
而して、以上のような第1,第2断熱型枠K1,K2の捨てコンクリートS上への設置作業と並行して、或いはその作業前もしくは作業後において、基礎コンクリートCのベース部Cb及び立ち上がり部Caに対応する空間には、コンクリート補強用の鉄筋を枠組みして設置、固定する配筋作業が行われるが、その配筋作業は従来周知であるので、鉄筋の図示を省略する。
[捨てコンクリート上へのコンクリート打設作業]
前記したように捨てコンクリートS上への鉄筋および断熱型枠K1,K2の設置作業が終了すると、次に、対をなす断熱型枠K1,K2;K1,K1の対向間隙30を通して基礎コンクリートC用の生コンクリートNCを一次的に投入する。その投入作業は、先ず、捨てコンクリートS上に投入コンクリートが所定レベルに達するまで行われ、これにより、基礎コンクリートCのベース部Cbとなる部分が成形される(図11(E))。この場合、生コンクリートNCの投入レベルがベース部Cbの予定高さと略一致する高さ(即ち第1断熱型枠K1の下端高さ)まで上昇するとコンクリート投入を一時中断させ、ベース部Cbとなる部分の上面を平坦に均す。
【0041】
上記コンクリートの一次投入の後、所定時間(例えば30分。但し、気温、湿度等の気象条件により多少前後する)が経過して先の投入コンクリートがある程度硬化すると(即ち完全硬化前に)、図11(F)に示すように前記対向間隙30への生コンクリートNCの二次的な投入を開始する。その投入作業は、投入コンクリートが前記対向間隙30を埋めて断熱型枠K1,2の上端に達するまで行われ、これにより、立ち上がり部CaO,CaIとなる部分が成形される。この場合、コンクリートの一次投入後においては、前記所定時間が経過して投入コンクリートが既にある程度硬化し粘度が増大変化しているため、ベース部Cbとなる打設コンクリートのレベルが、二次投入されたコンクリートの重量に押されて上昇することはない。
【0042】
かくして、投入した生コンクリートNCが完全に硬化すれば、捨てコンクリートS上における基礎コンクリートCの打設、成形が完了する。その場合に、生コンクリートNCの二次投入が、一次投入の終了後、前記所定時間が経過する前(即ち完全硬化前)に開始されるので、一次投入されたベース部Cbに対応するコンクリート部分と、二次投入された立ち上がり部Caに対応するコンクリート部分とが互いによく馴染んだ状態で硬化するため、成形完了後の基礎コンクリートCにおいて、そのベース部Cbと立ち上がり部Caとの相互間に打ち継ぎ(継ぎ目)が形成されることはなくなり、その境界部分に止水板を特設しなくても水漏れのリスクを効果的に軽減できる。
[結合具の一部除去と地盤埋め戻し作業]
上記の如く基礎コンクリートCを成形した後には、図2〜4,図11(G)に示すように結合具Jの断熱型枠K1,K2から張り出した部分(即ち第1,第2連結部材21,22)及び横杆23をセパレータ20より取り外して断熱基礎DK外に除去すると共に、断熱基礎DKの周辺地盤を埋め戻す。
【0043】
尚、断熱型枠K1,K2は、そのまま基礎コンクリートCの立ち上がり部Ca(CaO,CaI)の両側にそれぞれ一体的な接合状態で残置されるため、それら断熱型枠K1,K2を基礎コンクリートCより特別に取り外す手間が省かれて作業性が良好であるばかりか、断熱基礎DKに優れた断熱性能を発揮させることができる。
以上のようにして捨てコンクリートS上に、基礎コンクリートCのベース部Cbおよび立ち上がり部Ca(即ちCaO,CaI)を比較的短期間のうちに一挙に打設、成形できるため、作業工程の単純化や省力化を図ることができて、工期短縮やコスト節減が達成される。
【0044】
また、本実施例に示される如く、基礎コンクリートCの打設工程前に捨てコンクリートS上で使用される断熱型枠用支持具M,M′が、捨てコンクリートSの上面に載置、固定可能であって捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、断熱型枠K1の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備えるので、構造簡単な支持具M,M′を用いて、捨てコンクリートS上に断熱型枠K1を的確に支持可能となり、しかもしかもその支持具M,M′で支持される断熱型枠K1の高さ調整作業も容易に行うことができる。
【0045】
さらに前記型枠保持体Hは、断熱型枠K1の下端を載置し得る水平板部Hhと、この水平板部Hhの一端に立設されて断熱型枠K1の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部Hvとを備えるので、簡単な構造で断熱型枠K1を支持束T上に安定よく的確に支持することができる。
【0046】
また本実施例に示すように、前記型枠保持体Hに連設したハウジング10の外側面に露出した工具係合孔12a付き被操作部材12を、その外側方より回動操作することで、断熱型枠K1の高さ調整作業を側方から難なく行うことができ、従って、断熱型枠K1その他の障害物に邪魔されずに(即ち断熱型枠K1を型枠保持体H上に載置、支持した状態のままでも)断熱型枠K1の高さ調整作業を能率よく的確に行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、前記実施例では、基礎コンクリートCのベース部Cbが地盤となる地面全面を覆う所謂ベタ基礎と呼ばれる構造のものを示したが、本発明のベース部は、地盤となる地面の一部だけを覆うようにしてもよい。
【0049】
また前記実施例では、第2断熱型枠K2の下端をベース部Cbに保持板3を介して直接(即ち支持束Tを介さずに)支持させるようにしたものを示したが、本発明では、保持板3を省略して第2断熱型枠K2の下端をベース部Cbに直接当接させた状態で固定するようにしてもよい。
【0050】
また前記実施例では、基礎コンクリートCの打設に当たり、断熱型枠K1,K2の対向間隙30を通してのみ生コンクリートを注入するようにしたものを示したが、本発明方法では、その対向間隙30のみならず、別の部位からも捨てコンクリートS上に生コンクリートを注入するようにしてもよい。
【0051】
また前記実施例では、支持束Tの主要部を、全長に亘り雄ネジ部が刻設されたネジ軸部Tbで構成したものを示したが、本発明では、ネジ軸部の少なくとも一部(例えば上半部及び下端部)だけに雄ネジ部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
A・・・・・高さ調節機構
C・・・・・基礎コンクリート
Ca・・・・立ち上がり部
Cb・・・・ベース部
DK・・・・断熱基礎
E・・・・・地盤
G・・・・・ギヤ機構
H・・・・・型枠保持体
Hh・・・・水平板部Hh
Hv・・・・鉛直板部
K1,K2・・第1,第2断熱型枠
M,M′・・断熱型枠用支持具
NC・・・・生コンクリート
S・・・・・捨てコンクリート
T・・・・・支持束
Tb・・・・ネジ軸部
Tf・・・・座部
Tn・・・・ロックナット
10・・・・ハウジング
11・・・・ナット部材
12・・・・被操作部材
30・・・・対向間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有する基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工方法、並びにその施工に用いる断熱型枠用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記断熱基礎の施工に当たり、従前は、図13に示すように、地盤E上に予め敷設した捨てコンクリートS上に生コンクリートNCを投入、固化させて、基礎コンクリートC′のベース部Cb′を一次的に打設、成形した後、そのベース部Cb′の平坦な上面に、互いに間隔をおいて並ぶ段熱型枠K,Kの下端を載置、固定し、しかる後に、断熱型枠K,K相互の対向間隙30′に生コンクリートNCを投入、固化させて、基礎コンクリートC′の立ち上がり部Ca′(布基礎部)を二次的に打設、成形するようにしていた(例えば下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−3333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記従来の施工方法では、先ず、基礎コンクリートのベース部Cb′を成形するための生コンクリートの一次的な打設、固化作業を行い、その作業の完了後にベース部Cb′上への断熱型枠K,Kの設置作業を行った上で、立ち上がり部Ca′を成形するための生コンクリートの二次的な打設、固化作業を行う必要があるため、全体として作業工程が複雑化し且つ作業時間(即ち工期)が長くなって作業効率が悪い不都合があった。
【0005】
また断熱型枠K,Kは、基礎コンクリートのベース部Cb′上に直接、載置させるため、その高さ調整作業が容易ではないといった不都合もあり、更に基礎コンクリートの、別々に打設したベース部Cb′と立ち上がり部Ca′との間に「打ち継ぎ」と言われる継ぎ目が生じて水漏れを起こし易いため、その水漏れ対策として当該打ち継ぎ部位に止水板を特設しなければならないといった不都合もあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、従来の上記問題を簡単な構造で解決できるようにした、断熱基礎の施工方法、並びにその施工に用いる断熱型枠用支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有する基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工方法であって、地盤上に、前記ベース部よりも薄肉の捨てコンクリートを敷設する工程と、その捨てコンクリートの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠の何れか一方を支持束を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を該捨てコンクリートの上面に直接に或いは支持束を介して固定、支持する工程と、前記一対の断熱型枠の対向間隙および前記捨てコンクリート上に基礎コンクリート用の生コンクリートを打設して、その捨てコンクリート上に前記基礎コンクリートの前記ベース部及び前記立ち上がり部を成形する工程とを少なくとも含み、前記打設は、前記ベース部と前記立ち上がり部との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させることを特徴としている。
【0008】
尚、請求項1の発明において、「直接に」とは、支持束を介さずにという意味であって、後述する実施例のように薄肉の保持板を断熱型枠とベース部との間に介在させる実施形態を含むものである。
【0009】
また請求項2の発明は、地盤上に敷設される捨てコンクリートと、ベース部及び該ベース部の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部を有して捨てコンクリート上に敷設される基礎コンクリートと、その基礎コンクリートの立ち上がり部両側にそれぞれ接合される断熱型枠とを備えた断熱基礎の施工過程で、前記基礎コンクリートの打設前に前記捨てコンクリート上に少なくとも一方の前記断熱型枠を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具であって、前記捨てコンクリートの上面に載置、固定可能であって、該捨てコンクリート上より鉛直に起立する支持束と、前記少なくとも一方の断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体と、この型枠保持体を前記支持束に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
また請求項3の発明は、請求項2の発明の前記特徴に加えて、前記型枠保持体は、前記少なくとも一方の断熱型枠の下端を載置し得る水平板部と、この水平板部の一端に立設されて前記少なくとも一方の断熱型枠の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部とを備えていることを特徴とし、また請求項4の発明は、請求項3の発明の前記特徴に加えて、前記高さ調節機構は、前記鉛直板部の外面に連設したハウジングと、前記支持束の少なくとも上部を構成して前記ハウジングを上下に貫通するネジ軸部と、そのネジ軸部に螺合されて前記ハウジング内に回転のみ可能に収容されるナット部材と、前記ハウジングの外側面に露出してその外側方より回動操作可能な被操作部材と、その被操作部材と前記ナット部材との間に介装され且つ前記ハウジング内に収容されて、該被操作部材の回転操作に連動して該ナット部材を回転させるギヤ機構とを備えることを特徴とし、さらに請求項5の発明は、請求項2〜4の何れかの発明の前記特徴に加えて、前記支持束は、前記捨てコンクリートの上面に載置、固定可能な座部と、その座部に下部が螺挿されるネジ軸部とを備え、そのネジ軸部の座部への螺合位置が、該ネジ軸部に螺合されて前記座部に係合し得るロックナットでロック可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、捨てコンクリートの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠の何れか一方を支持束を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を捨てコンクリートの上面に直接に或いは支持束を介して固定、支持し、一対の断熱型枠の対向間隙および捨てコンクリート上に基礎コンクリート用の生コンクリートを打設し、その打設は、打設後の基礎コンクリートのベース部と立ち上がり部との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させるようにしたので、捨てコンクリート上に、基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部を比較的短期間の間に一挙に打設、成形可能となり、これにより、作業工程の単純化や省力化を図ることができて、工期短縮やコスト節減に大いに寄与することができる。しかもその基礎コンクリートのベース部及び立ち上がり部の境界部分に継ぎ目(打ち継ぎ)は形成されないため、その境界部分に止水板を特設しなくても水漏れのリスクを大幅に軽減することができる。
【0012】
また特に請求項2の発明によれば、断熱型枠用支持具が、捨てコンクリートの上面に載置、固定可能であって、捨てコンクリート上より鉛直に起立する支持束と、断熱型枠の下部を載置、連結し得る型枠保持体と、この型枠保持体を支持束に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構とを備えるので、基礎コンクリートの打設前において、構造簡単な支持具を用いて捨てコンクリート上に断熱型枠を的確に支持することができ、これにより、請求項1の発明の効果をより確実に達成可能となり、しかもその支持具で支持される断熱型枠の高さ調整作業も容易に行うことができる。
【0013】
また特に請求項3の発明によれば、前記型枠保持体は、断熱型枠の下端を載置し得る水平板部と、この水平板部の一端に立設されて断熱型枠の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部とを備えるので、簡単な構造で断熱型枠を支持束上に安定よく的確に支持することができる。
【0014】
また特に請求項4の発明によれば、前記型枠保持体に連設したハウジングの外側面に露出した被操作部材を、その外側方より回動操作することで、断熱型枠の高さ調整作業を側方から難なく行うことができるため、断熱型枠その他の障害物に邪魔されずに(例えば、断熱型枠を型枠保持体上に載置、支持した状態のままでも)断熱型枠の高さ調整作業を能率よく的確に行うことができる。
【0015】
また特に請求項5の発明によれば、前記支持束は、捨てコンクリートの上面に載置、固定可能な座部と、その座部に下部が螺挿されるネジ軸部とを備え、そのネジ軸部の座部への螺合位置が、ネジ軸部に螺合されて座部に係合し得るロックナットでロック可能であるので、その座部へのネジ軸部の螺合位置を調整することでも、断熱型枠の高さ調整を行うことができ、その調整作業を更に容易に且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る断熱基礎の主要部を示す水平断面図
【図2】前記断熱基礎の主要部を示す縦断面図(図1の2−2線拡大断面図)
【図3】図2の3矢視部拡大断面図
【図4】図2の4矢視部拡大断面図
【図5】図2の5−5線断面図
【図6】断熱型枠用支持具の要部縦断面図(図3の6矢視部の拡大断面図)
【図7】高さ調節機構の要部水平断面図(図6の7−7線拡大断面図)
【図8】断熱基礎の施工途中(第1,第2断熱型枠間への生コンクリート投入前)の状態を示す図3対応図
【図9】断熱基礎の施工途中(一対の第1断熱型枠間への生コンクリート投入前)の状態を示す図4対応図
【図10】断熱型枠相互の結合具(フォームタイ)の一例を示す拡大断面図
【図11】断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図1
【図12】断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図2
【図13】従来例の断熱基礎の施工工程を説明する工程説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
先ず、図1〜5において、寒冷地用建物に適した本発明に係る断熱基礎DKは、地盤E上に敷設された栗石群1と、その栗石群1の上側に敷設される比較的薄肉の捨てコンクリートSと、その捨てコンクリートSの上側に敷設、積層される基礎コンクリートCとを備えている。
【0019】
その基礎コンクリートCは、捨てコンクリートSよりも厚肉に成形されて捨てコンクリートSの上面を覆うベース部Cbと、そのベース部Cbの一部より鉛直に起立してベース部Cbの縦横に延びる帯板状の立ち上がり部Caとを一体に有しており、各々の立ち上がり部Caの両側には、発泡スチロール等の断熱材より板状に成形された断熱型枠K1,K2がそれぞれ接合される。各々の断熱型枠K1,K2は所定の矩形サイズに形成され、これをベース部Cb上で帯板状となるよう縦列配置されて使用される。
【0020】
なお、基礎コンクリートCにおけるベース部Cb及び立ち上がり部Caの各中心部には、従来普通の鉄筋コンクリートと同様に、骨組みされた鉄筋(図示せず)が適宜配備されており、その鉄筋がコンクリート部分と協働して基礎コンクリートCに十分な強度を付与している。また、基礎コンクリートCにおける立ち上がり部Ca上には、建物の躯体壁W又は仕切り壁W′が直接或いは根太等を介して固定、支持される。
【0021】
基礎コンクリートCのベース部Cbは、図示例では、その外周部2が内側部分よりも厚肉に形成されており、そのベース部Cbの厚み変化に対応して捨てコンクリートS、栗石群1及び地盤Eもそれぞれ中高に形成され、これにより、基礎コンクリートCの、地盤E上への支持がより安定する。
【0022】
前記立ち上がり部Cbは、建物の外周に沿うようベース部Caの外周部2より起立する外周立ち上がり部CaOと、その外周立ち上がり部CaOの内側に連なり或いはそれから離れてベース部Caの内方側に配置される内側立ち上がり部CaIとを含む。そのうち、外周立ち上がり部CaOは、それの内側面に、ベース部Cb上面からの立ち上がり高さに形成された第1断熱型枠K1が接合され、またそれの外側面に、捨てコンクリートS上面からの立ち上がり高さに形成された(従って第1断熱型枠K1よりも背の高い)第2断熱型枠K2が接合される。一方、内側立ち上がり部CaIは、それの左右両側面に、ベース部Cb上面からの立ち上がり高さに形成された一対の第1断熱型枠K1,K1がそれぞれ接合される。
【0023】
比較的背の低い第1断熱型枠K1の各々とベース部Cbとの間には、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前の捨てコンクリートS上に第1断熱型枠K1を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具M,M′が起立状態で介装される。尚、本実施例では、捨てコンクリートSが中高に形成されていて、その捨てコンクリートSの上面高さが外周部分とその内方部分とで異なっているため、その上面高さの相違に対応して、外周部分に起立させる支持具Mを、内方部分に起立させる支持具M′よりも長く構成しているが、もし捨てコンクリートSが中高に形成されない場合には、同一高さの支持具を使用可能である。
【0024】
また各々の第2断熱型枠K2とベース部Cbとの間には、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前に第2断熱型枠K2の下端を捨てコンクリートS上に位置決めし且つ直接に(即ち前記支持具M,M′を介することなく)支持させるための横断面U字状の保持板3が介装される。尚、保持板3は、基礎コンクリートCの打設前に捨てコンクリートS上面の所定位置にボルトb3で固定され、その保持板3に第2断熱型枠K2の下端を嵌合、保持させることで第2断熱型枠K2の位置決め及び仮止めを行う。
【0025】
図6,7も併せて参照して、前記支持具M,M′は、捨てコンクリートSの上面に載置、固定可能であり且つ捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、第1断熱型枠K1の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを前記支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備える。尚、本実施例では、外周側の支持具Mの支持束Tの方が、内方側の支持具M′の支持束Tよりも長く形成されるが、本明細書及び図面では、便宜上、いずれの支持束も同じ参照符号「T」を用いて説明することとする。
【0026】
前記支持束Tは、捨てコンクリートSの上面に載置されボルトb1で固定される座部Tfと、その座部Tfに下部が螺挿されて上方に延びるネジ軸部Tbとを備えており、そのネジ軸部Tbの座部Tfへの螺合位置が、ネジ軸部Tbに螺合されて座部Tfに係合し得るロックナットTnでロック可能である。従って、ロックナットTnを緩めた状態でネジ軸部Tbを座部Tfに対し相対回転させて座部Tfへのネジ軸部Tbの螺合位置を調整した後にロックナットTnを締付ければ、ネジ軸部Tbの高さ、延いては断熱型枠K1に対する支持高さの調整を、制限された範囲内で行うことができる。
【0027】
また前記型枠保持体Hは、第1断熱型枠K1の下端を載置し得る水平板部Hhと、この水平板部Hhの一端に立設されて第1断熱型枠K1の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部Hvとを一体に有して、合成樹脂材より断面L字状に形成されており、その鉛直板部Hvの下部外側面には、高さ調節機構Aのハウジング10が一体に連設される。
【0028】
また鉛直板部Hvの上部には、これを第1断熱型枠K1の下部側面に固定するためのボルトb2の挿通孔4が複数、互いに間隔をおいて穿設されており、その挿通孔4を通して第1断熱型枠K1に螺挿されるボルトb2により第1断熱型枠K1の下部を鉛直板部Hvに固定することができる。尚、図示例では、相隣なる2つの第1断熱型枠K1,K1の隣接端部の下端を、その両断熱型枠K1,K1間に跨がるようにして1つの型枠保持体Hの水平板部Hh上に載置させ且つ鉛直板部Hvにそれぞれボルトb2により固定しているが、断熱型枠K1の被固定部位は任意に選択可能である。
【0029】
前記高さ調節機構Aは、鉛直板部Hvに連設した前記ハウジング10と、支持束Tの少なくとも上部を構成して前記ハウジング10を上下に貫通するネジ軸部Tbと、そのネジ軸部Tbに螺合されて前記ハウジング10内に回転のみ可能に収容されるナット部材11と、ハウジング10の外側面に露出してその外側方より回動操作し得るようにしてハウジング10に回転のみ可能に支持される被操作部材12と、その被操作部材12とナット部材11との間に介装され且つハウジング10内に収容されて、被操作部材12の回転操作に連動してナット部材11を回転させるギヤ機構Gとを備えており、被操作部材12の外端面には、工具係合用の係合孔12aが形成される。尚、このような係合孔12aに代えて、被操作部材12の外端に回転操作用のノブを一体に連設してもよい。
【0030】
そのギヤ機構Gは、図示例では前記被操作部材12に同心状で嵌着されて一体に回転するウォーム13と、そのウォーム13に螺合するウォームホイール11wとで構成されており、そのウォームホイール11wはナット部材11と一体に構成され、即ち、そのナット部材11の外周部には、ウォーム13と螺合するネジ部が設けられる。
【0031】
尚、前記ハウジング10は、図示例では下端が開口するハウジング本体と、その本体の下端開口にビス等の結合手段で着脱可能に被着される開閉蓋とで分割構成される。
【0032】
また外周立ち上がり部CaOの両側にそれぞれ接合される第1,第2断熱型枠K1,K2の相互間、並びに内側立ち上がり部CaIの両側にそれぞれ接合される一対の第1断熱型枠K1,K1の相互間には、その各々の相互間の間隔を、断熱基礎DKの施工過程で基礎コンクリートCの打設前において一定間隔に保持するための複数の結合具Jが各々介装されている。
【0033】
図8〜10も併せて参照して、各々の結合具Jは、コンクリート型枠の結合手段(一般にフォームタイと呼称)として従来周知の構造のものが使用される。即ち、その結合具Jは、図8,9に示すように相対向する断熱型枠K1,K2;K1,K1間を任意の間隔に保持し得る、長さ調整可能なセパレータ20と、そのセパレータ20の一端鍔部20aとの間で一方の断熱型枠K1を挟持する鍔21a付きの第1連結部材21と、同セパレータ20の他端鍔部20bとの間で他方の断熱型枠K1(K2)を挟持する鍔22b付きの第2連結部材22と、前記他方の断熱型枠K1(K2)の外側を支持する上下一対のパイプ状横杆23と、その横杆23を前記他方の断熱型枠K1(K2)との間で挟持、固定し得るようにして第2連結部材22に着脱可能に結合される受け枠24とを備える。
【0034】
第1,第2連結部材21,22はセパレータ20の両端部にそれぞれ短いネジ棒25,26を介して着脱可能に結合されており、従って、その基礎コンクリートCの成形後には、図2〜4,図11(G)に示すように両連結部材21,22をセパレータ20より取り外すことができ、これに伴い、横杆23も取り外すことができる。
【0035】
次に、図11,12を併せて参照して、本実施例の断熱基礎DKの施工工程の一例の概略を説明する。即ち、その施工工程は、地盤E上に多数の栗石群1を敷き、その上に、薄肉の捨てコンクリートSを敷設する工程(図11(A))と、その捨てコンクリートSの上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠K1,K2の何れか一方(第1断熱型枠K1)を高さ調節可能な支持具M,M′を介して固定、支持すると共に、その何れか他方(第2断熱型枠K2或いは第1断熱型枠K1)を捨てコンクリートSの上面に直接に或いは支持具M,M′を介して固定、支持する工程(図11(B)〜(D))と、一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1の対向間隙30および捨てコンクリートS上に基礎コンクリートC用の生コンクリートNCを打設して、その捨てコンクリートS上に基礎コンクリートCのベース部Cb及び立ち上がり部Caを成形する工程(図11(E)(F))と、基礎コンクリートCの成形後に結合具Jの、断熱型枠K1,K2から張り出した部分を除去すると共に、断熱基礎DKの外周部の地盤Eを埋め戻す工程(図11(G))とを少なくとも含むものである。
【0036】
次に、以上の施工工程をより具体的に説明する。
[捨てコンクリート上への鉄筋及び断熱型枠の設置作業]
地盤Eに栗石群1を介して捨てコンクリートSを敷設した後、捨てコンクリートSの平坦な上面で墨出しを行い、その上面の外周部分においては、外周立ち上がり部CaOに対応した所定位置に保持板3をボルトb3で固定すると共に支持具Mの支持束Tの座部Tfをボルトb1で固定することで支持具Mを起立姿勢に保持し、一方、その上面の内方部分においては、内側立ち上がり部CaIに対応した所定位置に対をなす支持具M′,M′の支持束Tの座部Tfをボルトb1で固定することで、対をなす支持具M′,M′を起立姿勢に保持する(図11(B))。
【0037】
しかる後に、捨てコンクリートSの上面の外周部分においては、起立姿勢の支持具Mの型枠保持体Hを支持束Tに対し所望の高さに位置調整して、その型枠保持体H上に第1断熱型枠K1の下部を載置し且つボルトb2で固定すると共に、保持板3上に第2断熱型枠K2の下部を嵌合、保持させ、更に第1,第2断熱型枠K1,K2間を結合具Jを介して所定間隔をおいて結合し(図11(C))、更にまた一方の断熱型枠(図示例では第2断熱型枠K2)の外側を支持するパイプ状横杆23を前記結合具Jに固定する(図11(D))。
【0038】
一方、捨てコンクリートSの上面の内方部分においては、対をなす支持具M′,M′の型枠保持体H,Hを支持束T,Tに対し所望の高さに各々位置調整して、それら型枠保持体H,H上に対をなす第1断熱型枠K1,K1の下部をそれぞれ載置し且つボルトb2で固定し、更に対をなす第1断熱型枠K1,K1間を結合具Jを介して所定間隔をおいて結合し(図11(C))、更にまた一方の断熱型枠K1の外側を支持するパイプ状横杆23を前記結合具Jに固定する(図11(D))。尚、対をなす第1断熱型枠K1,K1間の対向間隙30の内端部分は、捨てコンクリートS上に固定した別の型枠K3(図1参照)で塞ぐようにし、この型枠K3は、コンクリートの打設完了後に取り外してもよいし、或いは第3の断熱型枠(この場合は断熱材で成形)として残すようにしてもよい。
【0039】
尚、上記(B)〜(D)とは別の施工手順として、例えば、相対向する一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1のうちの一方の断熱型枠K2(K1)を保持板3或いは支持具M′を介して捨てコンクリートS上に位置決め、固定した後で、該一方の断熱型枠K2(K1)に結合具Jを介して他方の断熱型枠K1を結合、支持し、しかる後に、支持具M或いはM′を捨てコンクリートS上の所定位置(前記他方の断熱型枠の直下位置)に設置、固定して、その支持具M或いはM′で前記他方の断熱型枠の下部を支持させるようにしてもよい。さらに別の施工手順として、例えば、上記(B)の工程後、相対向する一対の断熱型枠K1,K2;K1,K1を結合具Jを介して予め結合した断熱型枠組立体を、捨てコンクリートS上に保持板3或いは支持具M,M′を介して一挙に設置するようにしてもよい。
【0040】
而して、以上のような第1,第2断熱型枠K1,K2の捨てコンクリートS上への設置作業と並行して、或いはその作業前もしくは作業後において、基礎コンクリートCのベース部Cb及び立ち上がり部Caに対応する空間には、コンクリート補強用の鉄筋を枠組みして設置、固定する配筋作業が行われるが、その配筋作業は従来周知であるので、鉄筋の図示を省略する。
[捨てコンクリート上へのコンクリート打設作業]
前記したように捨てコンクリートS上への鉄筋および断熱型枠K1,K2の設置作業が終了すると、次に、対をなす断熱型枠K1,K2;K1,K1の対向間隙30を通して基礎コンクリートC用の生コンクリートNCを一次的に投入する。その投入作業は、先ず、捨てコンクリートS上に投入コンクリートが所定レベルに達するまで行われ、これにより、基礎コンクリートCのベース部Cbとなる部分が成形される(図11(E))。この場合、生コンクリートNCの投入レベルがベース部Cbの予定高さと略一致する高さ(即ち第1断熱型枠K1の下端高さ)まで上昇するとコンクリート投入を一時中断させ、ベース部Cbとなる部分の上面を平坦に均す。
【0041】
上記コンクリートの一次投入の後、所定時間(例えば30分。但し、気温、湿度等の気象条件により多少前後する)が経過して先の投入コンクリートがある程度硬化すると(即ち完全硬化前に)、図11(F)に示すように前記対向間隙30への生コンクリートNCの二次的な投入を開始する。その投入作業は、投入コンクリートが前記対向間隙30を埋めて断熱型枠K1,2の上端に達するまで行われ、これにより、立ち上がり部CaO,CaIとなる部分が成形される。この場合、コンクリートの一次投入後においては、前記所定時間が経過して投入コンクリートが既にある程度硬化し粘度が増大変化しているため、ベース部Cbとなる打設コンクリートのレベルが、二次投入されたコンクリートの重量に押されて上昇することはない。
【0042】
かくして、投入した生コンクリートNCが完全に硬化すれば、捨てコンクリートS上における基礎コンクリートCの打設、成形が完了する。その場合に、生コンクリートNCの二次投入が、一次投入の終了後、前記所定時間が経過する前(即ち完全硬化前)に開始されるので、一次投入されたベース部Cbに対応するコンクリート部分と、二次投入された立ち上がり部Caに対応するコンクリート部分とが互いによく馴染んだ状態で硬化するため、成形完了後の基礎コンクリートCにおいて、そのベース部Cbと立ち上がり部Caとの相互間に打ち継ぎ(継ぎ目)が形成されることはなくなり、その境界部分に止水板を特設しなくても水漏れのリスクを効果的に軽減できる。
[結合具の一部除去と地盤埋め戻し作業]
上記の如く基礎コンクリートCを成形した後には、図2〜4,図11(G)に示すように結合具Jの断熱型枠K1,K2から張り出した部分(即ち第1,第2連結部材21,22)及び横杆23をセパレータ20より取り外して断熱基礎DK外に除去すると共に、断熱基礎DKの周辺地盤を埋め戻す。
【0043】
尚、断熱型枠K1,K2は、そのまま基礎コンクリートCの立ち上がり部Ca(CaO,CaI)の両側にそれぞれ一体的な接合状態で残置されるため、それら断熱型枠K1,K2を基礎コンクリートCより特別に取り外す手間が省かれて作業性が良好であるばかりか、断熱基礎DKに優れた断熱性能を発揮させることができる。
以上のようにして捨てコンクリートS上に、基礎コンクリートCのベース部Cbおよび立ち上がり部Ca(即ちCaO,CaI)を比較的短期間のうちに一挙に打設、成形できるため、作業工程の単純化や省力化を図ることができて、工期短縮やコスト節減が達成される。
【0044】
また、本実施例に示される如く、基礎コンクリートCの打設工程前に捨てコンクリートS上で使用される断熱型枠用支持具M,M′が、捨てコンクリートSの上面に載置、固定可能であって捨てコンクリートS上より鉛直に起立する支持束Tと、断熱型枠K1の下部を載置、連結し得る型枠保持体Hと、この型枠保持体Hを支持束Tに高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構Aとを備えるので、構造簡単な支持具M,M′を用いて、捨てコンクリートS上に断熱型枠K1を的確に支持可能となり、しかもしかもその支持具M,M′で支持される断熱型枠K1の高さ調整作業も容易に行うことができる。
【0045】
さらに前記型枠保持体Hは、断熱型枠K1の下端を載置し得る水平板部Hhと、この水平板部Hhの一端に立設されて断熱型枠K1の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部Hvとを備えるので、簡単な構造で断熱型枠K1を支持束T上に安定よく的確に支持することができる。
【0046】
また本実施例に示すように、前記型枠保持体Hに連設したハウジング10の外側面に露出した工具係合孔12a付き被操作部材12を、その外側方より回動操作することで、断熱型枠K1の高さ調整作業を側方から難なく行うことができ、従って、断熱型枠K1その他の障害物に邪魔されずに(即ち断熱型枠K1を型枠保持体H上に載置、支持した状態のままでも)断熱型枠K1の高さ調整作業を能率よく的確に行うことができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0048】
例えば、前記実施例では、基礎コンクリートCのベース部Cbが地盤となる地面全面を覆う所謂ベタ基礎と呼ばれる構造のものを示したが、本発明のベース部は、地盤となる地面の一部だけを覆うようにしてもよい。
【0049】
また前記実施例では、第2断熱型枠K2の下端をベース部Cbに保持板3を介して直接(即ち支持束Tを介さずに)支持させるようにしたものを示したが、本発明では、保持板3を省略して第2断熱型枠K2の下端をベース部Cbに直接当接させた状態で固定するようにしてもよい。
【0050】
また前記実施例では、基礎コンクリートCの打設に当たり、断熱型枠K1,K2の対向間隙30を通してのみ生コンクリートを注入するようにしたものを示したが、本発明方法では、その対向間隙30のみならず、別の部位からも捨てコンクリートS上に生コンクリートを注入するようにしてもよい。
【0051】
また前記実施例では、支持束Tの主要部を、全長に亘り雄ネジ部が刻設されたネジ軸部Tbで構成したものを示したが、本発明では、ネジ軸部の少なくとも一部(例えば上半部及び下端部)だけに雄ネジ部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
A・・・・・高さ調節機構
C・・・・・基礎コンクリート
Ca・・・・立ち上がり部
Cb・・・・ベース部
DK・・・・断熱基礎
E・・・・・地盤
G・・・・・ギヤ機構
H・・・・・型枠保持体
Hh・・・・水平板部Hh
Hv・・・・鉛直板部
K1,K2・・第1,第2断熱型枠
M,M′・・断熱型枠用支持具
NC・・・・生コンクリート
S・・・・・捨てコンクリート
T・・・・・支持束
Tb・・・・ネジ軸部
Tf・・・・座部
Tn・・・・ロックナット
10・・・・ハウジング
11・・・・ナット部材
12・・・・被操作部材
30・・・・対向間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部(Cb)及び該ベース部(Cb)の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部(Ca)を有する基礎コンクリート(C)と、その基礎コンクリート(C)の立ち上がり部(Ca)両側にそれぞれ接合される断熱型枠(K1,K2;K1,K1)とを備えた断熱基礎の施工方法であって、
地盤(E)上に、前記ベース部(Cb)よりも薄肉の捨てコンクリート(S)を敷設する工程と、
その捨てコンクリート(S)の上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠(K1,K2;K1,K1)の何れか一方を支持束(T)を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を該捨てコンクリート(S)の上面に直接に或いは支持束(T)を介して固定、支持する工程と、
前記一対の断熱型枠(K1,K2;K1,K1)の対向間隙(30)および前記捨てコンクリート(S)上に基礎コンクリート(C)用の生コンクリート(NC)を打設して、その捨てコンクリート(S)上に前記基礎コンクリート(C)の前記ベース部(Cb)及び前記立ち上がり部(Ca)を成形する工程とを少なくとも含み、
前記打設は、前記ベース部(Cb)と前記立ち上がり部(Ca)との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させることを特徴とする、断熱基礎の施工方法。
【請求項2】
地盤(E)上に敷設される捨てコンクリート(S)と、ベース部(Cb)及び該ベース部(Cb)の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部(Ca)を有して捨てコンクリート(S)上に敷設される基礎コンクリート(C)と、その基礎コンクリート(C)の立ち上がり部(Ca)両側にそれぞれ接合される断熱型枠(K1,K2)とを備えた断熱基礎(DK)の施工過程で、前記基礎コンクリート(C)の打設前に前記捨てコンクリート(S)上に少なくとも一方の前記断熱型枠(K1)を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具(M,M′)であって、
前記捨てコンクリート(S)の上面に載置、固定可能であって、該捨てコンクリート(S)上より鉛直に起立する支持束(T)と、前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下部を載置、連結し得る型枠保持体(H)と、この型枠保持体(H)を前記支持束(T)に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構(A)とを備えることを特徴とする、断熱型枠用支持具。
【請求項3】
前記型枠保持体(H)は、前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下端を載置し得る水平板部(Hh)と、この水平板部(Hh)の一端に立設されて前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部(Hv)とを備えていることを特徴とする、請求項2に記載の断熱型枠用支持具。
【請求項4】
前記高さ調節機構(A)は、前記鉛直板部(Hv)の外面に連設したハウジング(10)と、前記支持束(T)の少なくとも上部を構成して前記ハウジング(10)を上下に貫通するネジ軸部(Tb)と、そのネジ軸部(Tb)に螺合されて前記ハウジング(10)内に回転のみ可能に収容されるナット部材(11)と、前記ハウジング(10)の外側面に露出してその外側方より回動操作可能な被操作部材(12)と、その被操作部材(12)と前記ナット部材(11)との間に介装され且つ前記ハウジング(10)内に収容されて、該被操作部材(12)の回転操作に連動して該ナット部材(11)を回転させるギヤ機構(G)とを備えることを特徴とする、請求項3に記載の断熱型枠用支持具。
【請求項5】
前記支持束(T)は、前記捨てコンクリート(S)の上面に載置、固定可能な座部(Tf)と、その座部(Tf)に下部が螺挿されるネジ軸部(Tb)とを備え、そのネジ軸部(Tb)の座部(Tf)への螺合位置が、該ネジ軸部(Tb)に螺合されて前記座部(Tf)に係合し得るロックナット(Tn)でロック可能であることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載の断熱型枠用支持具。
【請求項1】
ベース部(Cb)及び該ベース部(Cb)の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部(Ca)を有する基礎コンクリート(C)と、その基礎コンクリート(C)の立ち上がり部(Ca)両側にそれぞれ接合される断熱型枠(K1,K2;K1,K1)とを備えた断熱基礎の施工方法であって、
地盤(E)上に、前記ベース部(Cb)よりも薄肉の捨てコンクリート(S)を敷設する工程と、
その捨てコンクリート(S)の上面に、互いに間隔をおいて並ぶ一対の断熱型枠(K1,K2;K1,K1)の何れか一方を支持束(T)を介して固定、支持すると共に、その何れか他方を該捨てコンクリート(S)の上面に直接に或いは支持束(T)を介して固定、支持する工程と、
前記一対の断熱型枠(K1,K2;K1,K1)の対向間隙(30)および前記捨てコンクリート(S)上に基礎コンクリート(C)用の生コンクリート(NC)を打設して、その捨てコンクリート(S)上に前記基礎コンクリート(C)の前記ベース部(Cb)及び前記立ち上がり部(Ca)を成形する工程とを少なくとも含み、
前記打設は、前記ベース部(Cb)と前記立ち上がり部(Ca)との相互間に継ぎ目が生じないよう所定時間のうちに完了させることを特徴とする、断熱基礎の施工方法。
【請求項2】
地盤(E)上に敷設される捨てコンクリート(S)と、ベース部(Cb)及び該ベース部(Cb)の一部より鉛直に起立する帯板状の立ち上がり部(Ca)を有して捨てコンクリート(S)上に敷設される基礎コンクリート(C)と、その基礎コンクリート(C)の立ち上がり部(Ca)両側にそれぞれ接合される断熱型枠(K1,K2)とを備えた断熱基礎(DK)の施工過程で、前記基礎コンクリート(C)の打設前に前記捨てコンクリート(S)上に少なくとも一方の前記断熱型枠(K1)を高さ調節可能に支持するための断熱型枠用支持具(M,M′)であって、
前記捨てコンクリート(S)の上面に載置、固定可能であって、該捨てコンクリート(S)上より鉛直に起立する支持束(T)と、前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下部を載置、連結し得る型枠保持体(H)と、この型枠保持体(H)を前記支持束(T)に高さ調節可能に連結、支持させる高さ調節機構(A)とを備えることを特徴とする、断熱型枠用支持具。
【請求項3】
前記型枠保持体(H)は、前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下端を載置し得る水平板部(Hh)と、この水平板部(Hh)の一端に立設されて前記少なくとも一方の断熱型枠(K1)の下部側面に当接、固定し得る鉛直板部(Hv)とを備えていることを特徴とする、請求項2に記載の断熱型枠用支持具。
【請求項4】
前記高さ調節機構(A)は、前記鉛直板部(Hv)の外面に連設したハウジング(10)と、前記支持束(T)の少なくとも上部を構成して前記ハウジング(10)を上下に貫通するネジ軸部(Tb)と、そのネジ軸部(Tb)に螺合されて前記ハウジング(10)内に回転のみ可能に収容されるナット部材(11)と、前記ハウジング(10)の外側面に露出してその外側方より回動操作可能な被操作部材(12)と、その被操作部材(12)と前記ナット部材(11)との間に介装され且つ前記ハウジング(10)内に収容されて、該被操作部材(12)の回転操作に連動して該ナット部材(11)を回転させるギヤ機構(G)とを備えることを特徴とする、請求項3に記載の断熱型枠用支持具。
【請求項5】
前記支持束(T)は、前記捨てコンクリート(S)の上面に載置、固定可能な座部(Tf)と、その座部(Tf)に下部が螺挿されるネジ軸部(Tb)とを備え、そのネジ軸部(Tb)の座部(Tf)への螺合位置が、該ネジ軸部(Tb)に螺合されて前記座部(Tf)に係合し得るロックナット(Tn)でロック可能であることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載の断熱型枠用支持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−79510(P2013−79510A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219406(P2011−219406)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(311011092)株式会社 ダンネツ (1)
【出願人】(509264350)株式会社ロゴスホーム (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(311011092)株式会社 ダンネツ (1)
【出願人】(509264350)株式会社ロゴスホーム (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]