説明

断熱容器及びその製造方法

【課題】容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示す適量位置表示部の視認性を向上できる断熱容器を提供する。
【解決手段】胴部21を有する容器本体21を備え、この容器本体2の胴部21の外側がスリーブ3にて覆われた断熱容器1であり、胴部21の内周面には、容器本体2の内部へ注入する液体の適量位置を示す段差部21bが設けられ、かつ段差部21bを境界とした上側の加工範囲PSに限定して上下方向に延びる複数の突部41を含んだエンボス加工部4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は胴部を有する容器本体の外側が被覆部材にて覆われた断熱容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱湯等の高温液体の注入に適した断熱容器として、紙を主材料とした容器本体の外側にスリーブを被せ又は発泡ポリエチレン等の発泡部材を設けて断熱性を向上させたものが広く知られている。このような断熱容器では、容器本体へ注入する液体の適量位置の目安を設けることが要請される。例えば、容器本体の胴部の周方向に延びる突条を胴部の内周面に設けることにより、その適量位置を示すものが知られている。また、突条のように容器本体の胴部自体を加工するのではなく、胴部の周方向に延びる目印線を胴部の内周面に印刷しその目印線の上にポリエチレン等の被覆層を設けることにより、その適量位置を示すものも知られている(特許文献1)。また、この特許文献1には、カップの側壁を形成する紙製部材の端部に目印となる切り欠きを設けて適量位置を示すことが開示されている。更に、注入液体の適量位置を示すものではないが、容器本体の外側へ突出し、かつ胴部の周方向に延びる突条を胴部の内周面に設けることにより、胴部の外側に被覆される被覆部材との間に断熱層としての空間を確保する断熱容器が存在する(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−100075号公報
【特許文献2】特開2000−109144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような適量位置を示す適量位置表示部を単独で設けた場合、胴部の内周面に対する光の当たり具合によって適量位置表示部の視認性が悪化して液体の注入が不正確になるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示す適量位置表示部の視認性を向上できる断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、本発明の断熱容器及びその製造方法について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明の断熱容器は、胴部(21)を有する容器本体(2)を備え、前記容器本体の前記胴部の外側が被覆部材(3)にて覆われた断熱容器(1)において、前記容器本体の前記胴部の内周面には、前記容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示す適量位置表示部(10、11、21b)が設けられ、かつ複数の突部(41)を含んだエンボス加工部(4、24、34)が前記適量位置表示部を境界とした上側又は下側のいずれか一方の範囲(PS)に限定して設けられることにより、上述した課題を解決する。
【0008】
この断熱容器によれば、適量位置表示部を境界とした上側又は下側のいずれか一方の範囲に限定してエンボス加工部が設けられるので、複数の突部によって胴部の内周面に対する光の反射の具合が適量位置表示部を境界として変化する。つまり適量位置表示部を境界として胴部の内周面に明暗が形成される。これにより適量位置表示部の視認性が向上する。
【0009】
本発明の断熱容器において、前記胴部は、所定輪郭が与えられたブランク(21′)の両端部(21′a)が互いに重ねられて貼り合わされた胴貼部(21a)を有し、前記エンボス加工部は前記胴貼部を避けるようにして前記胴部の内周面に設けられていてもよい。この場合、突部が胴貼部に介在することがなく貼り合わせが確実になるので、胴貼部からの液体の漏れを防止できる。
【0010】
本発明の断熱容器において、エンボス加工部に含まれる複数の突部は容器本体の外側又は内側のいずれに突出してもよい。もっとも、複数の突部のそれぞれが容器本体の内側に突出するように構成されている場合には、胴部の内周面に光が当たったときに陰影が形成され易くなる。従って、エンボス加工部が設けられた部分とそれ以外との間で明暗差が大きくなるため、適量位置表示部の視認性がより向上する。この場合には、前記被覆部材は、前記胴部の外側に嵌め込まれた状態で前記胴部に接着されたスリーブであってもよい。この態様では突部が外側に突出しないので、胴部の外側にスリーブを嵌め込む際に突部が抵抗にならない。そのため、スリーブの嵌め込み作業が容易かつ正確になるので断熱容器の生産性が向上する。
【0011】
エンボス加工部に含まれる複数の突部は、適量位置表示部を境界として胴部の内周面に明暗が形成される限りどのような態様でもよい。例えば、複数の突部のそれぞれは前記容器本体の上下方向に直線的に延びるように構成されてもよい。エンボス加工部を型部材を押し当てて形成する場合には、その型部材として直線的に延びる凹凸が形成されたものを使用すればよいため、型部材の製作が容易になりコストを抑えることができる。また、例えば、複数の突部のそれぞれは前記容器本体の上下方向に波状に延びるように構成されてもよい。突部が波状に延びている場合には、直線的に延びる場合よりも陰影が形成されやすいので、適量位置表示部を境界とした胴部の内周面の明暗差が大きくなり適量位置表示部の視認性が更に向上する。
【0012】
本発明の断熱容器においては、適量位置表示部として種々の態様を採用できる。例えば、前記適用位置表示部として、前記胴部の周方向に延びるピーター線(10、21b)が設けられていてもよい。この場合、ピーター線は所定の型部材を胴部に押し当てることにより形成されたものでもよいし、印刷によって形成されたものでもよい。また、断熱容器が胴貼部を備えている場合には、前記適量位置表示部として、前記ブランクの前記両端部のうち前記胴貼部において前記胴部の内周面側に位置する端部の一部が切除されることにより構成された切り欠き部(11)が設けられていてもよい。
【0013】
本発明の断熱容器の製造方法は、シート状部材に所定輪郭を与えてからその両端部(21′a)を互いに重ねて貼り合わせることにより胴部(21)を形成し、前記胴部の一端側に底部(22)を設けて容器本体(2)を得るとともに、前記容器本体の前記胴部の外側を被覆部材(3)にて覆う断熱容器(1)の製造方法において、前記胴部を形成する前に、前記シート状部材を平面状に保持しながら当該シート状部材の表面に複数の突部を所定範囲に限定して形成するエンボス加工工程と、前記複数の突部が形成された前記シート状部材にて前記胴部を形成した後に、前記胴部に型部材(5)を押し当てることにより、前記容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示し、かつ前記胴部の周方向に延びるピーター線を前記所定範囲に隣接するように形成するピーター線加工工程と、を備える。
【0014】
胴部が形成された後に複数の突部を形成する場合には、曲面に対して複数の突部を形成することになる。そのため、複雑な形状の突部を形成することは技術的又はコスト的に容易でない。本発明の製造方法によれば、シート状部材を平面状に保持した状態で複数の突部を形成するので、形成可能な突部の形状に関しての制約が緩和される。これにより、様々な形状の突部を容易に形成できるようになる。また、本発明の製造方法は、複数の突部が形成された後にピーター線を形成するので、一つの型部材でこれらを同時に形成する方法よりも型部材を押し当てる力が少なくて済み機械的な負荷を低減できる。また、複数の突部とピーター線とを同時に形成する方法よりも型部材の構造が簡素化されるので、型部材の製作コストを低減できる。
【0015】
特に、複数の突部のそれぞれがピーター線と交差する方向に延び、かつその一端がピーター線に接続されるように構成される場合には、これらを一つの型部材で同時に形成しようとすると、ピーター線と突部との接続位置周辺における型部材の押し付け力が不足する。その結果、明確なピーター線を形成する難易度が増す。本発明の製造方法によれば、複数の突部が上記のように構成される場合でも、複数の突部とピーター線とをそれぞれ明確かつ容易に形成することができるようになる。
【0016】
本発明の製造方法において、前記エンボス加工工程は、前記シート状部材に前記所定輪郭を与えると同時に、前記複数の突部を形成してもよい。この場合、シート状部材に所定の輪郭を与える工程と複数の突部を形成する工程とが別工程にならないので、工程数を削減できる。
【0017】
また、前記エンボス加工工程は、前記両端部を避けるようにして前記シート状部材に前記複数の突部を形成してもよい。この場合、両端部を互いに重ね合わせるときに突部が介在しないので両端部の密着性が向上する。
【0018】
本発明の製造方法において、前記ピーター線加工工程は、前記胴部の外側から前記型部材を押し付けることにより、前記ピーター線を前記容器本体の内側に突出するように形成してもよい。なお、型部材として凹型のものを使用する場合にはそのような型部材を胴部の内側から押し当てることにより、ピーター線を容器本体の内側に突出するように形成することも可能である。ピーター線を容器本体の内側に突出させる態様においては、前記被覆部材としてスリーブが設けられ、前記スリーブを前記胴部の外側に嵌め込んで前記胴部に接着してもよい。この場合、ピーター線が容器本体の内側に突出しているので、胴部の外側にスリーブを嵌め込む際に突部が抵抗にならない。そのため、スリーブの嵌め込み作業が容易かつ正確になるので断熱容器の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の断熱容器によれば、適量位置表示部を境界とした上側又は下側のいずれか一方の範囲に限定してエンボス加工部が設けられるので、適量位置表示部を境界として胴部の内周面に明暗が形成される。これにより、適量位置表示部の視認性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明に係る断熱容器としての紙カップを示している。紙カップ1は容器本体としてのカップ本体2とその外周を覆う被覆部材としてのスリーブ3とを組み合わせて構成される。カップ本体2は胴部21と底部22とを有する略円錐台形に形成される。胴部21の上端には外側に向かってカール部23が形成されている。また胴部21は所定輪郭が与えられたブランク21′の両端部21′a(図2参照)が重ねられて貼り合わされた胴貼部21aを有し、胴部21の内周面にはピーター線としての段差部21bが形成される。段差部21bは胴部21の周方向に沿って延びていて、カップ本体2の内部へ注入する液体(例えば湯)の適量位置を示すために設けられる。この段差部21bを境界として胴部21の内周面の高さが若干変化するようになっている。カップ本体2の素材には例えば坪量150〜400g/mの紙が使用され、少なくともその内面には耐熱性や耐水性を高めるための被覆層(例えばポリエチレン層)にて覆われる。
【0021】
スリーブ3は紙カップ1の断熱性を高めるために設けられる。スリーブ3は不図示の扇形のブランクの両端部を貼り合わせることにより形成され、その下端には内向きのカール部31が設けられる。紙カップ1は、カップ本体2のカール部23の直下に接着剤を塗布してカップ本体2とスリーブ3とを組み合わせ、スリーブ3の上端部とカップ本体2の胴部21とを相互に接着することにより形成される。スリーブ3の素材には例えば坪量150〜400g/mの紙が使用される。なお、スリーブ3においては、カップ本体2のような被覆層は省略してよい。
【0022】
カップ本体2の胴部21の内周面には、段差部21bを境界とした上側の加工範囲PSに限定してエンボス加工部4が設けられている。エンボス加工部4は胴貼部21aを避けるようにして胴部21の内周面に設けられている。エンボス加工部4は、上下方向に延びて下端が段差部21bに接続される複数の突部41を含んでおり、これらの突部41はカップ本体2の内側に突出している。そのため、カップ本体2にスリーブ3を嵌め合わせる際にこれらの突部41が抵抗となることはない。
【0023】
(製造方法について)
次に図1に示した紙カップ1の製造方法について、図2〜図5を適宜参照しつつ説明する。まず、上述した被覆層が設けられたロール状の原反を所定寸法に断裁することにより、シート状部材としてのシート状原紙を得る。そのシート状原紙を不図示のプラテン打ち抜き機にて平面状に保持しながら打ち抜くことにより図2に示すブランク21′を得る(エンボス加工工程)。この打ち抜き機はブランク21′の輪郭を形成するための打抜刃とエンボス加工部4を形成する押し罫刃とを有しており、その打抜刃にてシート状原紙を打ち抜いて所定輪郭を与えると同時に押し罫刃にて複数の突部41を形成できる。押し罫刃は図1に示した加工範囲PSに対応する範囲(所定範囲)に限定して複数の突部41を形成できるように設計されている。この範囲は、図2から明らかなようにブランク21′の両端部21′aを避け、かつカール部23が形成される領域を避けるように設定されている。これにより、胴貼部21aの密着性を保持し、かつカール部23の形成を阻害しないようになる。
【0024】
次に、図2に示したブランク21′の両端部21′aを互いに重ねて貼り合わせることにより筒状の胴部21を得るとともにその胴部21の下端に底部22を設ける。そして、所定の型押し部材を押し付けることで胴部21の上端にカール部23を形成する。次に、図3に示すように胴部21に段差部21bを形成する(ピーター線加工工程)。段差部21bは、胴部21の外周面に接しながら軸線Ax1回りに回転する段差加工ローラ5と、この段差加工ローラ5と対向するように配置されて胴部21と一体に中心線Ax2回りに回転するローラ受け(不図示)とによって胴部21を所定の力で挟み込むことにより形成される。段差加工ローラ5の外周面には段差部21bに対応する形状が付与されており、ローラ受けの外周面には段差加工ローラ5の外縁と互い違いの形状が付与されている。なお、胴部21とともにローラ受けを回転させずに、段差ローラ5を中心線Ax2回りに公転させるようにして段差部21bを形成してもよい。
【0025】
以上の各工程によりカップ本体2が形成され、このカップ本体2にスリーブ3を被せて互いに接着することにより紙カップ1が完成する。
【0026】
紙カップ1は上記以外の方法によっても製造できる。上記の方法では、突部41の形成と段差部21bの形成とを別工程で実施しているが、これらを同時に形成してもよい。例えば、上述したプラテン打抜き機の押し罫刃を突部41と段差部21bとを同時に形成できる形態に変更して、シート状原紙の打抜きと同時に突部41と段差部21bとを形成することができる。
【0027】
また、図4に示すように、カップ成形後に、即ち胴部21にカール部23を形成し底部22を設けた後に、胴部21の中心線Ax2と平行な軸線Ax3回りに回転できるエンボス加工ローラ6と、図3と同一の段差加工ローラ5とを胴部21の外周面に同時に押し付けることにより、突部41と段差部21bとを同時に形成することもできる。エンボス加工ローラ6の外周面は、胴部21の傾斜に対応した斜面で構成され、かつ突部41が胴部21の内側に突出するように径方向外側に突出する複数の突部6′が形成されている。なお、エンボス加工ローラ6と対向するように不図示のローラ受けが設けられていて、このローラ受けとエンボス加工ローラ6とで胴部21を所定の力にて挟み込むことにより突部41が形成されるようになっている。
【0028】
上記の各方法では、ロール状の原反を所定の断裁機でシート状に断裁したが、この工程を省略するために、ロール状の原反を周知のロータリーダイカッターへ供給して図2に示すブランク21′を得てもよい。この場合、突部41の形成と同時に段差部21bを形成できるようにロータリーダイカッターを構成してもよい。
【実施例】
【0029】
次に、上述した各種の製造方法を用いた紙カップの具体的な実施例を説明する。
【0030】
<実施例1>
坪量255g/mの紙にポリエチレンを押し出しラミネートにより25μmの厚さにコーティングしたロール状の原反を用意し、この原反から850mm×650mmの寸法を持つシート状原紙を断裁機にて断裁した。その後、プラテン打抜き機により、扇状のブランクを基準としてその上端から9mmの位置を起点とし36.5mmの位置までに、巾1mm、長さ27.5mmの罫線(突部41)を64本形成し、同時にブランク形状に打ち抜いた(図2参照)。なお、シート状原紙から複数のブランクを打ち抜くために、面付け数を15面(巾方向3面×流れ方向5面)とした。その後、上述した方法で紙カップ成形を行い、段差部21bを形成した(図3参照)。そして、このようにして得たカップ本体2にスリーブ3を装着して紙カップ1を形成した。
【0031】
<実施例2>
実施例1と同一仕様のロール状の原反を用意し、ロータリーダイカッターにて実施例1と同一の突部41を64本形成し、同時にブランク形状に打ち抜いた(図2参照)。その後上述した方法で紙カップ成形を行い、段差部21bを形成した(図3参照)。そして、このようにして得たカップ本体2にスリーブ3を装着して紙カップ1を形成した。
【0032】
(他の形態)
本発明は以上の形態に限定されず、種々の形態にて実施できる。本発明に係るエンボス加工部は上記のように容器本体の上下方向に直線的に延びる複数の突部を含む形態に限定されず、種々の形態で実施できる。例えば図5に示すように、容器本体2の上下方向に波状に延びる複数の突部241を含んだエンボス加工部24を設けてもよいし、その他、ピーター線を境界として胴部の内周面に明暗差を形成できる限度で格子状、ディンプル状等の各種模様を突部として含むエンボス加工部を形成してもよい。なお、容器本体の上下方向に延びる突部を設ける場合には、図1及び図5の各形態のようにピーター線に対して直交する方向に延びてもよいし、又はピーター線に対して傾斜する方向に延びてもよい。突部の突出方向は容器本体の内側であっても外側であってもよい。又は内側に突出するものと外側に突出するものとが組み合わされていてもよい。また、エンボス加工部を設ける加工範囲PSはピーター線の下側の範囲に設定してもよい。
【0033】
上記の各形態では、加工範囲PSはカール部23の下端から段差部21bまでの範囲に設定されているが、図6に示すように、この加工範囲PSを段差部21bの近傍に設定してもよい。換言すれば、段差部21bの側に偏るように加工範囲PSを設定してもよい。この場合、エンボス加工部34に含まれる突部341と段差部21bとが相まって段差部21bのピーター線としての機能が強化されるので、段差部21bの視認性が向上する。図6の形態では、加工範囲PSの巾が狭まるので、突部341と段差部21bとを同時に形成することが容易になる。これらを同時に形成する方法としては、上述のようにプラテン打抜き機を利用してシート状原紙の打抜きと同時に突部341と段差部21bとを形成することもできるし、ロータリーダイカッターを利用してロール状の原反からブランクを得ると同時に突部341と段差部21bとを形成することもできる。また、図7に示すように、カップ成形後に突部341と段差部21bとを同時に形成可能な外周面を持ち、軸線Ax4回りに回転可能な加工ローラ7を胴部21に押し付けることにより、突部341と段差部21bとを同時に形成してもよい。この場合にも、不図示のローラ受けが加工ローラ7と対向する位置に設けられる。
【0034】
図6の形態の具体的な実施例としては次の2例を例示できる。即ち、上記実施例1と同一仕様のロール状の原反をプラテン打抜き機により、扇状のブランクを基準としてその上端から34.5mmの位置を起点とし36.5mmの位置までに、巾1mm、長さ2mmの罫線(突部341)を64本形成し、同時にブランク形状に打ち抜き、その後、上述した方法で紙カップ成形を行い、段差部21bを形成した(図3参照)。また、他の例として、上記と同一の突部341を図7に示した加工ローラ7にて形成した。
【0035】
また、本発明に係るピーター線は段差部に限らず、例えば図8に示すように、このピーター線として、容器本体2の内側に突出しかつ胴部21の周方向に延びる突条10を設けてもよい。この突条10は上述した各形態の段差部21bに置き換えることが可能である。突条10は容器本体2の外側に突出してもよい。突条10は、段差部21bと同様の方法で形成することができる。即ち、突条10と対応した外周面を有する不図示の突条加工ローラを胴部21に押し当てることにより構成してもよい。また、胴部21の形成前の段階でこの突条10を形成する場合には、図9に示すように、ブランク21′の打抜きと同時に突部41と突条10とが形成できるようにプラテン打抜き機の押し罫刃を構成してもよい。この場合、プラテン打抜き機の代りにロータリーダイカッターを使用してもよい。
【0036】
また、段差部21b、突条10等のピーター線の代りに、図10に示すように適量位置表示部としての切り欠き部11を設けてもよい。この切り欠き部11は、図2に示すブランク21′の両端部21′aのうち胴貼部21aにおいて胴部21の内周面側に位置する端部の一部が切除されることにより構成されたものである。切り欠き部11の形状は図示の横V型のみならず、横U型等の各種の形状で実施できる。図10の場合においても、切り欠き部11を境界として胴部21の内周面に明暗が形成されるので、切り欠き部11の視認性が向上する。また、図10の形態においては、切り欠き部11を設けた位置に上述したピーター線としての段差部21b又は突条10を設けることもできる。
【0037】
上述した各突部41、241、341の下端(一端)が、ピーター線としての段差部21b、突条10に接続することは必須ではなく、ピーター線と突部とが互いに離れるようにしてもよい。なお、被覆部材としては、上記した紙製のスリーブに限らず、発泡材料にて胴部の外側を覆うことにより被覆部材として機能させて断熱性を高めてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の断熱容器としての紙カップの一形態を示した図。
【図2】胴部に対応するブランクを平面状に展開した図。
【図3】段差部の加工方法を説明する説明図。
【図4】段差部と突部とを同時に形成する一例を示した説明図。
【図5】突部の構成を変更した紙カップの他の形態を示した図。
【図6】加工範囲を変更した紙カップの他の形態を示した図。
【図7】図6の形態に係る突部と段差部とを同時に形成する一例を示した説明図。
【図8】ピーター線としての突条を設けた紙カップの他の形態を示した図。
【図9】図8の形態に係る突部と突条とを同時に形成したブランクを平面状に展開した図。
【図10】適量位置表示部としての切り欠き部を設けた紙カップの他の形態を示した図。
【符号の説明】
【0039】
1 紙カップ(断熱容器)
2 容器本体
3 スリーブ(被覆部材)
4、24、34 エンボス加工部
5 段差加工ローラ(型部材)
10 突条(ピーター線、適量位置表示部)
11 切り欠き部(適量位置表示部)
21 胴部
21′ ブランク
21′a 両端部
21a 胴貼部
21b 段差部(ピーター線、適量位置表示部)
22 底部
41、241、341 突部
PS 加工範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部を有する容器本体を備え、前記容器本体の前記胴部の外側が被覆部材にて覆われた断熱容器において、
前記容器本体の前記胴部の内周面には、前記容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示す適量位置表示部が設けられ、かつ前記適量位置表示部を境界とした上側又は下側のいずれか一方の範囲に限定して複数の突部を含んだエンボス加工部が設けられていることを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記胴部は、所定輪郭が与えられたブランクの両端部が互いに重ねられて貼り合わされた胴貼部を有し、前記エンボス加工部は前記胴貼部を避けるようにして前記胴部の内周面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の断熱容器。
【請求項3】
前記エンボス加工部に含まれる前記複数の突部のそれぞれは、前記容器本体の内側に突出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱容器。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記胴部の外側に嵌め込まれた状態で前記胴部に接着されたスリーブであることを特徴とする請求項3に記載の断熱容器。
【請求項5】
前記エンボス加工部に含まれる前記複数の突部のそれぞれは、前記容器本体の上下方向に直線的に延びるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項6】
前記エンボス加工部に含まれる前記複数の突部のそれぞれは、前記容器本体の上下方向に波状に延びるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項7】
前記適量位置表示部として、前記胴部の周方向に延びるピーター線が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項8】
前記適量位置表示部として、前記ブランクの前記両端部のうち前記胴貼部において前記胴部の内周面側に位置する端部の一部が切除されることにより構成された切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の断熱容器。
【請求項9】
シート状部材に所定輪郭を与えてからその両端部を互いに重ねて貼り合わせることにより胴部を形成し、前記胴部の一端側に底部を設けて容器本体を得るとともに、前記容器本体の前記胴部の外側を被覆部材にて覆う断熱容器の製造方法において、
前記胴部を形成する前に、前記シート状部材を平面状に保持しながら当該シート状部材の表面に複数の突部を所定範囲に限定して形成するエンボス加工工程と、前記複数の突部が形成された前記シート状部材にて前記胴部を形成した後に、前記胴部に型部材を押し当てることにより、前記容器本体の内部へ注入する液体の適量位置を示し、かつ前記胴部の周方向に延びるピーター線を前記所定範囲に隣接するように形成するピーター線加工工程と、を備えることを特徴とする断熱容器の製造方法。
【請求項10】
前記複数の突部のそれぞれは、前記ピーター線と交差する方向に延び、かつその一端が前記ピーター線に接続されるように形成されていることを特徴とする請求項9に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項11】
前記エンボス加工工程は、前記シート状部材に前記所定輪郭を与えると同時に、前記複数の突部を形成することを特徴とする請求項9又は10に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項12】
前記エンボス加工工程は、前記両端部を避けるようにして前記シート状部材に前記複数の突部を形成することを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項13】
前記ピーター線加工工程は、前記胴部の外側から前記型部材を押し付けることにより、前記ピーター線を前記容器本体の内側に突出するように形成することを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の断熱容器の製造方法。
【請求項14】
前記被覆部材としてスリーブが設けられ、前記スリーブを前記胴部の外側に嵌め込んで前記胴部に接着することを特徴とする請求項13に記載の断熱容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−18996(P2008−18996A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194955(P2006−194955)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】