説明

断熱屋根材

【課題】金属製屋根材の耐久性を上げると共に、断熱性及び防音性を金属成型瓦の表面に断熱塗材を塗布するのみで、裏面にシージーングボードなどを必要とせず、大幅に向上させた金属製の断熱屋根材を提供するものである。
【解決手段】金属薄板をプレス成型した金属成型瓦の表面に合成樹脂エマルジョンからなる塗膜防水材に、圧縮強度600kgf/cm以上、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、ガラス粉末、天然砕石粒子を混練した断熱塗材を表面層として塗布して乾燥後表面にフッ素樹脂を塗布する。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は景観を損なわず高級感を表出することのできる断熱性、及び防音性に優れた金属薄板を基材とした断熱屋根材である。
【0002】
【従来の技術】
金属屋根材は、カラー鉄板コイルの登場で瓦棒葺が長尺にして雨仕舞が良いという金属の特性をいかしもてはやされたが、デザインの単調さにあきられ、金属成型瓦が商品化された。金属成型瓦は意匠性はあるが瓦棒葺と同様、安物、暑い、雨音がうるさい、すぐ錆が出ると言う欠点を有していた。
【0003】
このような欠点を補うものとして長尺縦葺金属瓦が登場した。この長尺縦葺金属瓦には超耐久性保証鋼板である。フッ素樹脂鋼板を原板として波型にロール成型した後、特殊連続プレス成型したものである。しかし金属製屋根材は鉄板は安物で断熱性が無く暑く雨音がうるさい、すぐ錆が発生して耐久性がない等という種々の欠点があり不信感が根強く存在しているのである。
【0004】
フッ素樹脂を焼付塗装して耐候性を向上させた鋼板を使用して、この表面に珪砂をフッ素樹脂で焼き付けリシン仕上げをする技術があるが、フッ素樹脂を使用しているため耐候性は向上するが断熱性、防音性は良くならず鋼板の裏面側にシーリングボードを張らねば効果が出ないものであった。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
本考案はこのような事情に鑑みなされたもので金属製屋根材の耐久性を上げ特に最も大きな問題とされていた断熱性及び防音性を金属成型瓦の表面に断熱塗材を塗布するのみで、裏面にシーリングボードなど必要とせず大幅に向上させた金属製の断熱屋根材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案の金属製の断熱屋根材は、金属薄板をプレス成型した金属成型瓦の表面に合成樹脂エマルジョンからなる塗膜防水材に圧縮強度600kgf/cm以上、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、ガラス粉末、天然砕石粒子を混練した断熱塗材を表面層として塗布して乾燥後表面にフッ素樹脂を塗布する。
【0007】
【考案の実施の形態】
本考案に使用する金属薄板は、ステンレス、銅、アルミニウム、チタン、メッキ鋼板、クラッド鋼板、塩ビ鋼板、ガルバリウム鋼板等が使用でき、ガルバリウム鋼板がより好適である。
【0008】
ガルバリウム鋼板は溶融アルミニウム・亜鉛合金メッキ鋼板である。アルミニウムの有する耐食性、耐熱性、熱反射性と亜鉛の有する犠牲防食効果の両方を有するため本考案の金属屋根材には最適といえる。ガルバリウム鋼板は屋根構法によって0.35〜1.6mm厚のものを使用する。
【0009】
本考案の断熱屋根材の金属薄板表面に塗布する断熱塗材は、合成樹脂エマルジョンからなる防水塗材をバンダーにして、これに圧縮強度600kgf/cm以上、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子にガラス粉末それに天然砕石を混練したものである。この断熱塗材を塗布し乾燥後表面にフッ素樹脂を塗布する。
【0010】
使用する塗膜防水材の合成樹脂エマルジョンとしてはアクリル系樹脂エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、塩化ビニル系樹脂エマルジョン、塩化ビニリデン系樹脂エマルジョン、スチレン・ブタジエン系樹脂エマルジョン、エポキシ系樹脂エマルジョンおよびアクリル酸エステル。スチレン、エチレン、ビニルエステル、酢酸ビニル、合成ゴム等との共重合したものなどである。
【0011】
例えばこれらの共重合したものとしてアクリル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン/ブチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。合成樹脂エマルジョン組成物の使用量は5〜30重量%の範囲とする。5重量%以下では軽量タイルの物性が上がらず30重量%以上では安定性が低下する。
【0012】
又必要に応じて合成樹脂エマルジョンからなる防水塗材の性状を向上させるため、分散剤として各種の界面活性剤、エマルジョンを安定化させる乳化剤、エマルジョンのあわ立て防止剤、増粘剤、たるみ防止剤、沈降防止剤、凍結防止剤などを添加しても良い。さらに性能を向上させる目的でたわみ性を与える可塑剤、熱、光による劣化防止を図る安定剤、かびの発生を防止するかび止め剤等を添加しても良い。
【0013】
セラミック微細中空粒子を混入することによって、熱伝導率の低い粒子同士が結合し優れた断熱性を示すばかりか、光を柔らかく乱反射して落ち着いた風格のある仕上げ面とすることができる。加熱徐冷後フッ素樹脂を塗布することにより耐候性を一段と高めることができるのである。
【0014】
断熱塗材のフィラーには耐水圧強度600kgf/cm以上のセラミック微細中空粒子を使用する。耐水圧強度とはセラミック微細中空粒子の圧縮強度と同意語である。セラミック微細中空粒子の圧縮強度を測定する場合粒子を水に入れこの水に圧力を加え、水に加えられた圧力がセラミック微細中空粒子に伝わり圧縮強度を測定することができる。セラミック微細中空粒子の耐水圧強度が低いと原料の混練及びスプレー、ローラ塗布時に大半が破壊し、光輝度を有する石目調面となすことができない。
【0015】
使用するセラミック微細中空粒子は圧縮強度600kgf/cm以上、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のもので、このため断熱塗材製造工程におけるいかなる混練条件においても全く破壊されることがなく、基材への塗布工程及び塗布後の成型においても全く破壊されることはない。しかもその塗膜硬度および塗膜の衝撃強度を高めることができ、塗膜表面にセラミック微細中空粒子が均一に分散し、すぐれた光沢と光輝度を示す。即ちセラミック微細中空粒子は粒子径が小さく外観は透明又は半透明であり光が照射されると乱反射し、きわめて高い光沢及び輝度面を呈し石目調の風合い色彩を表出することができるのである。セラミック微細中空粒子は100%完全な球状である。従来の微細中空粒子の圧縮強度は80〜300kgf/cmであり、又完全中空球体が少ないためこのような効果が得られなかったのである。
【0016】
断熱塗材にセラミック微細中空粒子を使用する場合特に重要なことは熱伝導率である。セラミック微細中空粒子は、0.1(kcal/mhr℃)前後で非常に優れている。従来の各種微細中空発泡体では約半分が破壊されてしまうため熱伝導率は0.2〜0.3(kcal/mhr℃)に低下する。破壊されない耐圧強度の高い完全な微細中空発泡体が使用された場合にのみ断熱屋根材として断熱性及び防音性に優れた効果が発揮できるのである。
【0017】
セラミック微細中空粒子の融点は1500℃以上である。セラミック微細中空粒子はその材質に起因するのは当然であるが一般的に融点の高いもの程圧縮強度も高くなる。圧縮強度を600kgf/cm以上とするならばその融点は1500℃以上になるのである。
【0018】
以上により本考案において使用するセラミック微細中空粒子はシリカ50〜60%、アルミナ40〜45%、その他1.5〜2.5%からなるセラミック組成物を発泡生成せしめたもので、その物性は圧縮強度700kgf/cm、融点1600℃、嵩比重0.3〜0.5g/cm、熱伝導率0.1(kcal/mhr℃)で完全な中空粒子のみで構成されている。セラミック微細中空粒子の粒径は、5〜350μmの範囲のものを使用し、細目5〜75μm、中目75〜150μm、荒目150〜350μmとして粒度調整は細目20重量部、中目20重量部、荒目30重量部を混合して使用する。嵩比重は粒度の細かいものは重く、荒いものは軽くなる。このため嵩比重の範囲は0.3〜0.5g/cmであるが、粒度調整したものは0.36g/cm前後である。セラミック微細中空粒子の添加量は、合成樹脂エマルジョン100重量部に対して300〜900重量部である。300重量部以下では、高度の光沢及び輝度面を呈する風合いが表出されず又断熱性能も向上せず、900重量部以上では強度の低下を示すからである。
【0019】
本考案に使用するガラス粉末は、酸化物ガラス中の珪酸塩ガラスでNaO−CaO−SiO系のソーダ石灰ガラスを粉末にしたものが最適である。ガラス粉末の粒径は5〜100μmの範囲が好適で、断熱屋根材が加熱された場合の耐火性を向上させる結合材として効果を発揮する。ガラス粉末の添加量は合成樹脂エマルジョンからなる塗膜防水材100重量部に対して100〜250重量部である。100重量部以下では耐火性を示す結合材としての効果が発揮できず、250重量部以上では強度低下を示すからである。
【0020】
断熱塗材のフィラーに配合する天然砕石粒子の原料となる天然石は、御影石、安山岩、大理石、蛇紋岩等いずれのものでも良く限定するものではない。天然砕石粒子は細目、中目、荒目としそれぞれ粒子の径を細目は0.1〜0.5mm、中目は0.5〜1.5mm、荒目は1.5〜3.4mmに調整して使用する。天然砕石粒子の他珪砂、珪石粉、フライアッシュ、クレー、タルク、カオリン、陶磁器粉砕物、徐冷高炉スラグ粉砕物、シリカ質ダスト等を添加しても良い。天然砕石粒子の粒度調整は細目40〜60重量部、中目30〜40重量部、荒目10〜20重量部とする。天然砕石粒子の添加量は合成樹脂エマルジョンからなる塗膜防水材100重量部に対して100〜500重量部が断熱屋根材表面に塗布した場合、優れた軽量石目調の光沢と光輝度を最も効果的に表出することが出来る。
【0021】
断熱塗材を塗布後塗膜面にフッ素樹脂を塗布する。ここで使用するフッ素樹脂は、ポリ四フッ化エチレン(テフロン、ポリフロン)で断熱屋根材の耐候性、耐熱性、耐寒性を向上させることができる。
【0022】
【実施例】
以下本考案の実施例について詳述する。
【0023】
実施例 厚さ0.4mmのガルバリウム鋼板をプレス成型により全長1300mm、働き長さ1230mm、幅320mmの金属成型瓦を作製した。この金属成型瓦の屋外面となる表面に、合成ゴム変性アクリル共重合エマルジョンからなる塗膜防水材100重量部に圧縮強度700kgf/cm、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1600℃、熱伝導率0.1(kcal/mhr℃)で完全中空粒子のみで構成されているセラミック微細中空粒子の粒度調整したもの650重量部、天然砕石粒子として花崗岩を粉砕した砕石粒子350重量部、ガラス粉末200重量部、水若干量、その他混和剤に分散剤、安定剤等を各々適量加えて断熱塗材を作製し充分混練した後3mm厚に塗布した。断熱塗材乾燥後表面にフッ素樹脂を塗布して断熱屋根材を作製した。
【0024】
【考案の効果】
このようにして作製した断熱屋根材は、高度の断熱性能を有するセラミック微細中空粒子によって、鋼板裏面にシージングボードを張った従来の金属製屋根材と同等以上の優れた断熱効果及び防音効果を発揮することができた。又断熱屋根材表面は石目調の美麗な外観を呈しセラミック微細中空粒子により光を柔らかく乱反射して落ち着いた風格のある断熱屋根材とすることができ、表面にフッ素樹脂をコーティングすることにより、優れた耐候性、耐熱性、耐寒性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例断熱屋根材斜視図
【図2】実施例断熱屋根材施工図
【符号の説明】
1.断熱屋根材
2.金属成型瓦
3.断熱塗材
4.野地板
5.アスファルトルーフィング
6.むね
7.すみ当て

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項 1】 金属薄板をプレス成型した金属成型瓦において、金属成型瓦の表面に合成樹脂エマルジョンからなる塗膜防水材に圧縮強度600kgf/cm以上、嵩比重0.3〜0.5g/cm、融点1500℃以上のセラミック微細中空粒子、ガラス粉末、天然砕石粒子を混練した断熱塗材を表面層として塗布し乾燥後表面にフッ素樹脂を塗布することを特徴とする断熱屋根材。

【図1】
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【図2】
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